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1 2 X X X X X X X X X X Russel (1) (2) (3) X = {A A A} 1.1.1

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(1)

1

1

章 集合の記号に慣れる

1.1

集合とは

• 集合に関する参考書: 永田雅宜「集合論入門」(森北出版) 稲垣武「集合論」(共立出版) 松村英之「集合論」(?) ブルバキ「数学原論集合論」(東京図書) • 集合論の先駆者:G.Cantor (1845–1918) ロシア生まれのユダヤ系デンマーク人で主にドイツで活躍。 1874 年 最初の集合論の論文における集合の定義

Unter eines Menge verstehen wir jede Zusammenfassung M von bestimmten wohlunterschiedenen Objekten in unserer Anschauung oder unserers Denkens (welche die Elemente von M genannt werden) zu einem ganzen.

(In English) A set is a collection into a whole of definite, distinct objects of our intuition or our thought. The object are called elements (members) of the set.

(日本語)集合とは明確でかつ互いによく区別された感覚又は思考の対象をひとまとめにしたものの 集まりで、それらの対象は集合の元(要素)という。 • A が集合であるとき、a が A の要素であることを a ∈ A と書く。 上記の集合の定義は、任意の対象 a について、a ∈ A であるか a 6∈ A であるかが明確に確定しなけ ればならないということ。 • 集合を表す方法; A = {1, 3, 5, 7} 外延的 (explicit) な定義 A = {x|x は 1 以上 8 以下の奇数 }  内包的 (implicit) な定義 • 集合の等号と包含; A と B を二つの集合とするとき、「x ∈ A ⇒ x ∈ B」が成り立つとき A j B 又は B k A  と書く。 A j B かつ B j A であるとき A = B と書いて、集合 A と B は等しいという。 • 集合論の危機;B.Russel のパラドックス (1902) 集合 X = {A|A は集合であって A 6∈ A} を考える。

(2)

第 1 章 集合の記号に慣れる 2 X 6∈ X なら、X の定義より X ∈ X となり矛盾。 X ∈ X なら、やはり X の定義より X 6∈ X となり矛盾。 いずれも矛盾?! • Russel のパラドックスのおもしろヴァージョン; (1) 村の床屋が言ったとさ:「自分で自分のひげを剃らない村人全員のひげだけを剃る。」この床屋の ひげは誰が剃る?(ラッセル) (2) 図書館の図書目録の中、自分自身を載せていないものだけを集めて、その全てを載せた図書目録 を作る。この目録自身はその中に載せる?(ゴンセス) (3) ある学校の校則に曰く「全ての生徒は必ずどれかのクラブに属さなくてはいけない。」ところが どのクラブにも入りたくない生徒が集まって帰宅クラブなるものを作った。帰宅クラブの規則には、 「この帰宅クラブにはどのクラブにも属さない者だけが入ることができる」とある。帰宅クラブはク ラブとなりうるか? • ラッセルのパラドックスにいう X = {A|A 6∈ A} は定義は可能だが、集合とはなりえない。 対象をひとまとめにして定義することができない性質がある。それらを完全に知る方法はない。(ゲー デルの不完全性定理) • 上の様な矛盾を排除するために公理論的集合論が構成された。しかし、代数の研究するにあたっては 知らなくても問題はない。 問題 1.1.1 ある先生が「来週月曜から金曜の間に必ず抜き打ち試験をする。」と予告した。(ただし、抜き 打ち試験とは前日の晩に試験実施の予知が不可能な試験をいう。)すると、ある生徒がこれが不可能である ことを次の様に証明した。 (1)先生が金曜に試験をすると考えたと仮定する。すると、木曜までは試験がないのだから、木曜の晩に は明日試験があることが分かってしまう。したがって、金曜に抜き打ち試験をすることはできない。 (2)先生が木曜に試験をすると考えたと仮定する。すると、水曜までは試験がないのだから、水曜の晩に は試験は木曜か金曜に行われることが予想できる。しかし(1)で示したように金曜には試験はできないの だから木曜に絶対試験があることが予知できる。したがって、木曜に抜き打ち試験をすることもできない。 (3)(2)と同じ論法で、水曜、火曜、月曜にも試験実施は不可能であるが示せる。 その生徒は試験がないと楽観していたが、火曜日に試験が行われて、まさに抜き打ちを食らった。 さて、上の論理はどこが間違っているのか指摘せよ。

(3)

第 1 章 集合の記号に慣れる 3

1.2

集合算

• とりあえず必要な集合; N = {1, 2, 3, . . .} Z = {0, ±1, ±2, ±3, . . .} Q = ½ q p ¯ ¯ ¯ ¯ p, q ∈ Z, p 6= 0 ¾ R = {x| x は実数である } C = {x + iy | x, y ∈ R} • A ∩ B = {x| x ∈ A かつ x ∈ B}、A ∪ B = {x| x ∈ A または x ∈ B} • 集合の集合(集合族){Ai|i ∈ I} に対して、 ∩i∈IAi= {x| どの i に対しても x ∈ Ai}、∪i∈IAi= {x| どれかの i に対して x ∈ Ai}. • A j B である時、Ac= {x ∈ B| x 6∈ A} を集合 A の B における補集合という。

ドモルガンの法則;Aij B (i ∈ I) のとき、(∩i∈IAi)c= ∪i∈IAic, (∪i∈IAi)c= ∩i∈IAci.

• 空集合 ∅ ; どのような対象 x についても x 6∈ ∅ となる集合。

問題 1.2.1 任意の集合 A に対して、∅ j A となることを証明せよ。 問題 1.2.2 空集合 ∅ はただ一つであることを示せ。

問題 1.2.3 集合 B の部分集合族 {Ai|i ∈ I} において、I = ∅ のとき、∩i∈IAi, ∪i∈IAi はそれぞれ何か。

問題 1.2.4 実数の集合 R の部分集合 A ついて、A の上限 c = sup A とは、任意の A の上界 x (任意 の y ∈ A に対して x = y を満たす x )について c 5 x が成立し、かつ c 自身も上界であるようなもので ある。一般に、A j B のとき sup A 5 sup B を示せ。また、空集合 ∅ については sup ∅ をどのような値 として定義するのが適当か議論せよ。

1.3

写像

• 写像; 集合 A から集合 B への写像 f とは、集合 A の任意の要素 x に対して集合 B の要素 y をただ一つ 対応付ける「規則」のことである。このとき、f : A → B とか y = f (x) と表わす。 f : A → B であるとき、集合 A を写像 f の定義域、B を f の値域という。また、数の集合に値を 持つ写像を一般的に関数という。

(4)

第 1 章 集合の記号に慣れる 4 • 写像 f : A → B が、条件「x 6= y ならば f(x) 6= f(y)」を満たすとき、f を単射(または一対一写 像)という。対偶をとって、「f (x) = f (y) ならば x = y」と言っても同じことである。また、写像 f : A → B が条件「任意の y ∈ B に対して y = f(x) となる x ∈ A が存在する」を満たすとき、f を全射(または上への写像)という。 f が単射かつ全射であるとき、これを全単射(または一対一上への写像)という。f が全単射である ときには、集合 A の要素と集合 B の要素が f によって過不足なく対応しているのだから、逆の対 応 g : B → A が、y = f (x) のとき x = g(y) と定義することによって一通りに定まる。この g を f の逆写像といって、f−1 という記号で表わす。 • 二つの写像 f : A → B と g : B → C があるとき、それらの合成 g · f : A → C が g · f(x) = g(f(x)) と定めることによって定義される。 集合 A 上には、恒等写像と呼ばれる写像 idA : A → A がある1。これは、任意の x ∈ A 対して idA(x) = x として与えられる写像である。上記の逆写像の定義は、f : A → B が全単射のとき、 f · f−1= id B, f−1· f = idA を満たす f−1: B → A であると言っても良い。 • 集合 A から集合 B への写像の全体を BAという記号で表す。また、集合 A の部分集合の全体の集 合を 2Aと書く。 • 写像 f : A → B とその定義域 A の部分集合 A0 があるとき、写像 f の定義域を A0 に制限して考え た写像 f |A0 : A0 → B が、x ∈ A0 に対して f |A0(x) = f (x) として定義される。f|A0 を f の A0 へ の制限写像という。 問題 1.3.1 f : Z → N ∪ {0} が絶対値によって f (x) = |x| と与えられているとき、この f の N ∪ {0} へ の制限写像を考えると、 f |N∪{0}= idN∪{0} である。これを確かめよ。 問題 1.3.2 集合 A の要素の個数が有限個のとき A を有限集合という。有限集合 A からそれ自身への写 像 f : A → A に対しては、次の3条件は同値であることを証明せよ。 (1) f は全単射、 (2) f は全射、 (3) f は単射 また、無限集合 A に対してはこの同値性は成り立つとは限らない。このような例をあげよ。 問題 1.3.3 集合 A から A 自身への全射でない単射が存在するための必要十分条件は、A が無限集合であ ることである。これを証明せよ。 問題 1.3.4 空集合 ∅ からそれ自身への写像ただ一つ存在することを示せ。 問題 1.3.5 有限集合 A に対して、その要素の個数を ]A という記号で表わす。A, B, C が有限集合である とき、次の等式が成立することを確かめよ。

](A ∪ B ∪ C) = ]A + ]B + ]C − ](A ∩ B) − ](B ∩ C) − ](C ∩ A) + ](A ∩ B ∩ C)

一般に n 個の有限集合 A = i (i = 1, 2, . . . , n) があるときに、この等式を一般化せよ。

問題 1.3.6 A と B が有限集合の時、](BA) = ]B]A となることを示せ。特に、](2A) = 2]A である。

(5)

第 1 章 集合の記号に慣れる 5

1.4

同値関係と類別

• 集合 A 上の2項関係 ∼ が、次の3つの条件を満たすとき、この ∼ を A 上の同値関係という。          (反射律)a ∼ a (対称律)a ∼ b ⇒ b ∼ a (推移律)a ∼ b, b ∼ c ⇒ a ∼ c • 集合 A をその互いに素な部分集合の和集合として表すことを A の類別(クラス分け)という。 A = ∪i∈ICi (ただし、Ci∩ Cj= ∅ (i 6= j)) このとき、各 Ci を類という。また、αi∈ Ciとなる αi をとったとき、これを Ci の代表元という。 また、S = {αi| i ∈ I} をこの類別の代表系という。 • 集合 A 上において同値関係を与えることと A の類別を与えることは同値である。この場合、各類を 同値類という。 • 集合 A の類別が同値関係 ∼ によって与えられているとき、その同値類の集合を A/ ∼ と書く。x ∈ A について x が属する同値類を [x] と書く。自然な写像 π : A → A/ ∼ が π(x) = [x] によって定まる。 代表系 S とは、S j A であって π|S が全単射になるようなものである。 問題 1.4.1 集合 A 上に次の様にして2項関係 ∼ を定義するとき、それが同値関係になるかどうか判定 せよ。 (1) 任意の集合 A 上に x ∼ y を x 6= y と定義する。  (2) A = R 上に x ∼ y を x = y と定義する。 (3) A = Z 上に x ∼ y を 「x = y 」または 「x = 0 かつ y = 1 」または 「x = 1 かつ y = 0 」と定義 する。 (4) A = R 上に x ∼ y を ex= ey と定義する。 (5) A = C 上に x ∼ y を <(x2) = <(y2) (2乗の実部分が等しい)と定義する。 (6) 平面上の直線全体の集合 A 上に x ∼ y を 「直線 x と直線 y は1点で交わる」と定義する。 問題 1.4.2 次の内 R の類別を与えているものはどれか? (1) Aq= {x ∈ R| q 5 x < q + 1} (q ∈ Q) (2) Br= {x ∈ R| x − r ∈ Q} (r ∈ R) (3) Cs= {x ∈ R| xs ∈ Z} (r ∈ R − {0}) (4) Dn= {x ∈ R| n − 1 < x25 n} (n ∈ Z)

(6)

第 1 章 集合の記号に慣れる 6 問題 1.4.3 次のようにして与えられる2項関係 ∼ が同値関係になることを確かめよ。さらに、その同値 関係によって集合の類別を与えよ。また、そのときの代表系としてどのようなものがとれるか? (1) 集合 Z 上に、「x ∼ y ⇔ x − y が偶数」と定義する。 (2) 集合 R 上に、「x ∼ y ⇔ x − y ∈ Z」と定義する。 (3) 集合 [0, 1] 上に、「x ∼ y ⇔ (x = y) または (x = 0, y = 1) または (x = 1, y = 0)」と定義する。 (4) 集合 [0, 1] × [0, 1] 上に、「(x, y) ∼ (x0, y0) ⇔ ((x, y) = (x0, y0)) または (x = 0, x0 = 1, y = y0)」と 定義する。 (5) 集合 [0, 1] × [0, 1] 上に、「(x, y) ∼ (x0, y0) ⇔ ((x, y) = (x0, y0)) または (x = 0, x0= 1, y = 1 − y0)」 と定義する。 (6) L を平面上の全ての直線の集合として、ここに「` ∼ `0 ⇔ ` と `0 は平行」と定義する。 (7) 複素数係数の n 次行列の全体の集合を Mn(C) として、この上に 「A ∼ B ⇔ ある n 次正則行列 P があって P−1AP = B」と定義する。 問題 1.4.4 R 上のベクトル空間 V とその部分空間 U があるとき、V 上の同値関係を「x ∼ y ⇔ x−y ∈ U 」 と定義する。このとき、その同値類の集合を V /U と表すのが通例である。V /U に自然には R ベクトル 空間としての構造が入ることを確かめよ。

(7)

7

2

章 無限を数える

2.1

集合の濃度

• 集合 A から集合 B に全単射な写像が存在するとき A と B は対等な集合であるという。 • 集合 A に対して,その濃度 cardA なるものを考える。集合 A と集合 B が対等であるとき,かつそ のときに限り,cardA = cardB であると定義する。 • (この定義は次のように言っても良い。) 集合を要素とする集合 F があるとき,その元 A, B ∈ F に 同値関係 A ≡ B を,「A と B が対等である」と定義する。このとき,cardA とは A の属する同値 類であるところの F/ ≡ の元である。 • 集合 {1, 2, . . . , n} と対等な集合 A に対しては,cardA = n と表し,n を有限濃度という。その濃度 が有限濃度ではない集合のことを無限集合といい,その濃度を無限濃度という。 • 自然数の集合 N と対等な集合 A に対しては,cardA = ℵ0 と表し,ℵ0 を可算無限,または可付番 無限,の濃度という。 • 実数の集合と対等な集合 A に対しては,cardA = ℵ と書き,ℵ を連続体濃度という。

• 集合 A から集合 B に単射が存在するとき,cardA 5 cardB と書き表す。cardA 5 cardB かつ

cardA 6= cardB であるときに,cardA < cardB と表し,A の濃度は B の濃度より小さいという。 命題 2.1.1 (1) A が無限集合であれば,N から A への単射が存在する。 (2) 可算無限濃度は無限濃度のうち最小の濃度である。 (3) (1) とは逆に,集合 A が N と対等な部分集合を含めば A は無限集合である。 問題 2.1.2 (ヒルベルトのホテル) 少なくとも可算無限個の部屋を持つホテルはたとえ満室でも,もう一 人泊まることができる。 命題 2.1.3 集合 A, B, C について,

cardA 5 cardB, cardB 5 cardC =⇒ cardA 5 cardC 定理 2.1.4 (Bernstein の定理) 集合 A, B について,

cardA 5 cardB, cardB 5 cardA =⇒ cardA = cardB 問題 2.1.5 cardQ = ℵ0 であることを示せ。

(8)

第 2 章 無限を数える 8

2.2

濃度の和,積,べき

• cardA × cardB = card(A × B)

もっと一般に,Qc∈Ccard(Ac) = card(

Q

c∈CAc) と定義する。

• (cardA)cardB= card(AB) と定義する。ただし, AB は B から A への写像の全体の集合を表す。

• A ∩ B = のとき cardA + cardB = card(A ∪ B)

もっと一般に A = ∪c∈CAc が互いに素な和集合のときに,

P

c∈Ccard(Ac) = cardA と定義する。

問題 2.2.1 cardA × cardA = (cardA)2であることを示せ。すなわち一般の濃度 α に対して,α × α = α2.

命題 2.2.2 cardA = ℵ0 のとき,card(A × A) = ℵ0. いいかえれば, ℵ20= ℵ0. 定理 2.2.3 濃度 α に対して,2α> α が成立する。 証明 Cantor の対角線論法。 命題 2.2.4 20 = ℵ • 「ℵ0 より大きくて ℵ より小さい濃度はない」というのが連続体仮説。これは他の集合論の公理と独 立であることが示されている。すなわち,正しいと仮定しても,正しくないと仮定しても別に矛盾は 起こらない。どちらをとるかは各自の自由。 問題 2.2.5 cardC = ℵ であることを示せ。 問題 2.2.6 A を代数的な数の全体。すなわち,整係数多項式 = 0 という形の方程式の解になっている複 素数の集まりを A とする。cardA = ℵ0 となることを示せ。 問題 2.2.7 次の等式を示せ。 (1) ℵ0+ ℵ0= ℵ0 (2) ℵ + ℵ0= ℵ (3) 2 × ℵ0= ℵ0 (4) ℵℵ = 2 (5) ℵ2= ℵ (6) ℵℵ0 = ℵ

問題 2.2.8 集合 A ⊂ B について,cardA = ℵ0 かつ cardB > ℵ0 とするとき, card(B − A) = cardB で

(9)

9

3

章 無限を並べる

物の個数を数える数 one, two, three, .., ℵ0, ℵ に対して,物の順番を数える数(順序数)first, second,

third,.. がある。この本質を考えよう。

3.1

順序集合

• 「順序集合の定義」集合 S の2元の間の関係 ≤ について,次の条件が満たされているとき,集合 S はこの順序 ≤ による順序集合であるという。 [反射律]   a ≤ a [推移律]   a ≤ b, b ≤ c ⇒ a ≤ c [半対称律]   a ≤ b, b ≤ a ⇒ a = b • 「全順序集合,半順序集合の定義」 全ての2元 a, b の間に a ≤ b または b ≤ a が成立するとき,この順序集合を全順序集合 (totally ordered set) であるという。

必ずしも全順序ではない順序集合のことを半順序集合 (partially ordered set) という。有限半順序集 合を表すには Hasse 図式というものがある。

例題 3.1.1 集合 A の部分集合の集合(べき集合) P (A) において,包含関係を順序として,順序を入れる ことができる。これは,半順序集合の重要な例である。A が4元からなる有限集合のとき,P (A) の Hasse 図式を描いてみよ。 • 「順序集合の部分集合の最小元,最大元」 S が順序集合,A がその部分集合のとき,a が A の最小元であるとは次の2条件を満たすこと。 – a ∈ A – a ≤ b for any b ∈ A. 最大元も同じ。 • 「順序集合の部分集合の極小元,極大元」 S が順序集合,A がその部分集合のとき,a が A の極小元であるとは次の2条件を満たすこと。 – a ∈ A – If b ≤ a for b ∈ A, then b = a.

(10)

第 3 章 無限を並べる 10 極大元も同じ。 例題 3.1.2 極小元と最小元の違いを十分に理解すること。 • 「上界,下界,上限 (sup),下限 (inf)」 順序集合 S の部分集合 A に対して,集合 B = {b ∈ S | a ≤ b for any a ∈ A} を A の上界集合と いい,B の元を A の上界という。上界集合 B に最小元が存在するとき,それを A の上限といい, sup A と表す。下界,下限についても同様。 例題 3.1.3 最大元が存在すれば,それが上限に一致する。極大元があるとき,それは上限に一致すると言 えるか。 • 「直前の元,直後の元」 順序集合 S の2元 a, b について,a < b であって,かつ a < x < b となる x ∈ S は存在しないとき, a は b の直前の元, b は a の直後の元という。 直前の元,直後の元が無い場合もあるので注意。 例題 3.1.4 a ∈ S に対して,S の部分集合 A = {x ∈ S| x < a} 考える。もし,a の直前の元が存在すれ ば,それは sup A に等しい。もし。a の直前の元が存在しなければ, sup A = a である。

• 「順序集合の同型」

二つの順序集合 S, T の間に全単射 f : S → T があって,a, b ∈ S に対して,a ≤ b ⇔ f (a) ≤ f (b) が成立するとき, S と T は順序同型であるといい, A ∼= B と表すことにする。

定義 3.1.5 (整列集合の定義) 順序集合 S において,S の任意の空でない部分集合 A に最小元が存在す るとき,この順序集合 S は整列集合 (well ordered set) であるという。または,この順序 ≤ は整列順序で あるという。 例題 3.1.6 整列集合は全順序集合である。 例題 3.1.7 N は整列集合であるが,Z や Q は通常の順序関係で整列集合でない。 例題 3.1.8 整列集合の部分集合はまた整列集合である。 命題 3.1.9 (超限帰納法) 整列集合 S の元 a に対応して,ひとつの命題 P (a) が対応していて,各 a ∈ S に対して,「x ∈ S, x < a なる任意の x について P (x) が真ならば,P (a) も真である」が成立していると する。このとき,任意の a ∈ S に対して P (a) は真である。 例題 3.1.10 二つの整列集合 S と T の間の順序集合としての同型があるとき,その同型写像は一通りし かないことを超限帰納法を用いて証明せよ。(ヒント:二つの同型写像 f, g があるとき,各 a ∈ A に対し て命題 f (a) = g(a) を考えよ。)

(11)

第 3 章 無限を並べる 11

3.2

順序数

• 各整列集合の同型類にひとつずつ「名前」をつける。与えられた整列集合が属する同型類の名前をそ の整列集合の順序数という。 • 有限整列集合 {1, 2, . . . , n} の順序数を n と書く。(心は nth の意味。) • 整列集合 N の順序数を通常 ω で表す。 • 辞書式順序の定義。 • S と T が整列集合のとき,辞書式順序で S × T もまた整列集合である。 • 順序集合の合併。 • S と T が整列集合のとき,その合併 S + T もまた整列集合である。 • S と T が整列集合で,それぞれの順序数が α, β のとき,その和 α + β を S + T の順序数,その積 α · β を S × T の順序数として定義する。 例題 3.2.1 n ∈ N について,n + ω = ω である。一方, ω + n 6= ω である。理由を考えよ。 例題 3.2.2 n ∈ N について,n · ω 6= ω · n である。実際,ω · 2 = ω + ω, 2 · ω = ω である。 • 整列集合 S とその元 a について,S < a >= {x ∈ S| x < a} とおいてこれを切片と呼ぶ。切片それ 自身も整列集合である。 定理 3.2.3 (整列集合の比較定理) 二つの整列集合 S と T があるとき,つぎのどれかひとつだけが必ず 成立する。 (1) S と T は順序同型である。 (2) a ∈ S が存在して,S < a > と T は順序同型である。 (3) b ∈ T が存在して,S と T < b > は順序同型である。 • S と T の順序数がそれぞれ α, β であるとする。(1) ∼ (3) の状況のとき,それぞれ α = β, α > β, α < β と定義する。 系 3.2.4 (順序数の比較可能定理) α, β が順序数のとき,α = β, α > β, α < β のどれかひとつだけが必 ず成立する。 例題 3.2.5 1 < 2 < · · · < ω < ω + 1 < · · · < ω · 2 < ω · 2 + 1 < · · · < ω · 3 < · · · < ω · ω < · · ·

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第 3 章 無限を並べる 12

3.3

選択公理と

Zorn

の補題

命題 3.3.1 (選択公理) 集合 A を添え字にもつ集合族 W = {Xa | a ∈ A} があるとき,写像 f : A → W

で,f (a) ∈ Xa for any a ∈ A を満たすものがひとつは存在する。この f を選択関数ということもある。

• A が無限集合で,各 Xa には何ら構造らしきものがないとき,選択関数 f を決めるには,「神の手」 が必要であろう。実際,f (a1) ∈ Xa1 を選び, f (a2) ∈ Xa2 を選び....,とやっていくと,人では無 限の時間がかかる。つまり,いつまでたっても f を完全に決めることはできないのである。 • 選択公理は他の集合論の公理と独立であることが証明されている。すなわち,これを正しいとして も,正しくないとしても矛盾は生じない。アメリカ流の pragmatism から選択公理は正しいと仮定 することが多い。 定義 3.3.2 S を(空でない)順序集合が次の条件を満たすとき, S を帰納的順序集合であるという。 「S の空でない任意の整列部分集合 A について,その上限 sup A が必ず存在する。」 定理 3.3.3 (Zorn の補題) 帰納的順序集合にはかならず極大元が存在する。 証明 (証明のアイデア) S を帰納的順序集合とする。極大元が存在しないとして矛盾を見る。まず,任 意に a1 ∈ S をとる。S には極大元がないのだから,この a1 は極大元でない。したがって, a1 < a2 となる a2 ∈ S がとれる。同様にして,a1 < a2 < a3 となる a3 ∈ S がとれる。これを繰り返して, a1< a2< a3< · · · なる列(整列部分集合)が作れる。人がこれを続けた場合,いつまでたってもこれは 終わらないかもしれない。しかし,ここで「神の手」(選択公理)を使うと,一気に最終段階までこの操作 がやり遂げられる。出来上がった集合 A = {a1< a2 < a3< . . . } は整列部分集合である。帰納的集合の 定義より,この A には上限 x がある。しかし,A は上の操作をやり遂げたものであるから x ∈ A でなく てはならない。すると x は S の極大元になってしまう!? 2 • 逆に Zorn の補題を使って選択公理を証明することもできる。

3.4

Zorn

の補題の応用

定理 3.4.1 (整列可能定理) 任意の集合は,その上に適当な順序を定義して整列集合とすることができる。 定理 3.4.2 (濃度の比較可能定理) 任意の濃度 α, β に対しては,α 5 β または β 5 α のどちらかが成立 する。 その他に,Zorn の補題の応用例として次のようなことが示される。 • 任意のベクトル空間には基底が存在する。 • 任意の可換環には極大イデアルが存在する。

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