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超低出生体重児を持つ母親のナラティブ(語り)と母親に対するケア

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(1)

〔原著〕

超低出生体重児を持つ母親のナラティブ(語り)と母親に対するケア

池内 和代

,内藤 直子

香川大学医学部附属病院

香川大学医学部看護学科

Narratives of Mothers with Extremely Low Birth Weight Infant

(ELBWI)and the Care to Them

Kazuyo Ikeuchi

,Naoko Naitoh

Division of Nursing, University Hospital, kagawa University

School of Nursing, Faculty of Medicine, kagawa University

要 旨

目的:本研究の目的は超低出生体重児を育てている母親のナラティブ(語り)を傾聴しその意味と母親に対するケアを検討すること である.

方法:母親へのナラティブアプローチによる,母親のナラティブ(語り)の内容を検討する帰納的質的研究方法を用いた.対象者は 超低出生体重児を出産し本研究参加に同意した母親7名とした.逐語録として収集したナラティブデータから母親の物語を抽出し,

母親の思いの過程を概念図として示した.

結果:超低出生体重児を持つ母親のナラティブから,【子どもが生きている】・【母親と周囲との良好なつながり】・【母親の児の 受け入れ】・【母親の子どもからの学び】という4つの前向きな物語のテーマと,<母親の自責>・<母親の思いを周囲には理解し てもらえない>・<子どもの不確かさ>という3つの後ろ向きの物語のテーマが抽出された.後ろ向きの物語は前向きな物語に助け られて【母親の児の受け入れ】【母親の子どもからの学び】という前向きな物語に進んでいた.

結論:超低出生体重児の母親は前向きな物語と後ろ向きの物語を語っており,その分析により,母親を前向きな思いに変化させるに は母親に子どもが生きていると感じさせ,母親としての自信を持たせることが重要であると考えられた.そして超低出生体重児を持 つ母親はナラティブ(語り)を通して,母親自身の思いを理解してくれると感じた看護者との共同作業によって母親はケアされて,

母親がさらに前向きに進めるきっかけに繋がっていると考えられた.

キーワード:超低出生体重児,母親,ナラティブ(語り),ケア

Summary

Purpose : The purpose of this study is to listen to the narratives of mothers with extremely low birth weight infant(ELBWI)attentively and to assess the meaning of mothers’ narratives and the care to them.

Method : Narrative approach for mothers(an inductive−qualitative approach)was used to assess the significance of their narratives. Seven mothers with ELBWI were involved in this study. They all consented to this study. The process of mothers’ thought was figured with notions which were extracted from their narratives.

Result : The four positive notions of “Child is alive,” “good connection between the mother and those around her,” “the mother’s acceptance of her child,” and “the mother’s learning from her child.” and the three negative 連絡先:〒761―0793 香川県木田郡三木町池戸1750―1 香川大学医学部附属病院看護部 池内和代

Reprint requests to : Kazuyo Ikeuchi, Division of Nursing,University Hospital, kagawa University 1750―1 Ikenobe, Miki―cho, kita―gun, kagawa 761―0793,Japan

−4 3−

(2)

はじめに

近年,新生児医療の進歩に伴い超低出生体重児の救命 率は高くなってきている

1)

が,超低出生体重児の成長・

発達において,神経学的合併症の頻度が高く,学童期に おける学習障害や行動障害も表面化してきている.そし て,超低出生体重児の健やかな成長・発達を願って,

NICU

入院中のケアや家族への援助,退院後の継続的な 育児支援など種々の取り組みが行われている.しかし,

超低出生体重児を持つ母親の否定的な感情を深く理解し,

母親の心のケアを十分行えているとはいえない.石田

2)

はナラティブアプローチについて「その人の言葉に耳を 傾ける姿勢があれば人は変わっていける可能性を秘めて いるのです」と述べ,田中

3)

は,「ナラティブ(語り)

を通して体験を知ることは実践を変化させる」と述べて いる.これらにより,看護者が対象のナラティブを傾聴 することは対象を変化させる可能性があり,そのナラテ ィブを丁寧に解釈することから明らかにされたものは,

臨床現場の実践を変化させる手がかりとなることが確認 できる.また,極低出生体重児を持つ母親に関しての研 究では,横尾ら

4)

が「未熟児出産後の母親は,児との関 わりにより,否定的感情から立ち直り,育児意欲を培っ ていく」と母親の心の変化を報告している.そして,要 田

5)

は,障害児受容過程として「葛藤」「受容」「変革」

の3段階を示し,「人間の価値とは何か」それをどのよ うに考えるかという価値観の変化に力点をおいて述べて いる.今回はこのような研究をてがかりに,超低出生体 重児を育てている母親を対象に,母親のナラティブ(語 り)を傾聴し,その母親のナラティブ(語り)のなかか ら母親の思いを知り,母親に実践すべきより良きケアを 検討したいと考えた.

目的

本研究の目的は超低出生体重児を育てている母親のナ ラティブ(語り)を傾聴しその意味と母親に対するケア を検討することである.

方法

母親のナラティブ(語り)の内容を逐語録し,内容分 析によって要素とその関係性を探索する,帰納的質的研 究方法を用いた.

1.用語の定義

1)超低出生体重児とは,出生時体重が1 0 0 0

g

未満の新 生児.

2)ナラティブ(語り)とは,事実にもとづく物語,話

(名) . 人が物語を語る(形) .

3)ケアとは,人間としての条件もしくは生活様式を改 善したり,高めようとする明白なニードあるいは予測 されるニードをもつ他の個人あるいは集団を援助した り,支援したり,あるいは能力をあたえることを目指 す行為である

6)

(Leininger,M.M. 1 9 8 8) .

2.対象とその選定

1)対象の選定基準としては,2 0 0 1年4月〜2 0 0 2年1 0月 に

A

病院で超低出生体重児を出産し,本研究参加に 同意した母親とした.

2)分析対象者は同意を得た9名のうち2名にプレテス トを実施し,プレテストを基に他の7名の母親を本研 究の分析対象者とした.

3.研究方法 1)データ収集期間

2 0 0 4年3月にプレテストを開始して,同年8月まで本 研究を実施した.

2)データ収集方法

面接場所:対象者がリラックスでき物語が表出でき

notions of “the mother’s self−reproach,” “those around the mother do not understand her thoughts,” and

“uncertainty of the child.” were extracted from the narratives of mothers with ELBWI. The positive notions helped the negative ones develop into the positive ones “the mother’s acceptance of her child” and “the mother’s learning from her child.”

Conclusion : Some of the notions which were extracted from the narratives of mothers with ELBWI were positive, and others were not. The analysis gave the following results that it is important for them to feel their children are alive and to gain self−confidence in order to change their negative notions into positive ones. And they feel the care to themselves and helped to make a further advance by their collaboration with nurses who they feel understand their thoughts with narratives.

Keywords: Extremely low birth weight infant(ELBWI)

Mother, Narrative, Care

−4 4−

(3)

る場所として,例えば対象者が指定した対象者の自 宅などとした.

面接者の姿勢:面接の信頼性に関しては,斎藤7)

示す面接方法を参考に傾聴(耳を傾けて聴く)と支 持・共感(感情を受け止め言語化する) , 要約・確認

(物語を共有する)態度で面接を実施した.そして,

事前にロールプレイングで練習を実施し,スーパー バイザーのアドバイスを受け,面接に臨んだ.服装 は清潔感のある服装で色は相手の感情を触発するよ うな原色は避け落ち着いた色とした.

プレテスト:2事例プレテストの面接内容をテープ に録音し逐語録で表した.逐語録を事例毎にまとめ てスーパーバイザーの指導を受けた.その結果,半 構成的な質問をしなくても,2事例共に子どもを育 ててきた母親の思いを吐露するかのごとく面接者に 語っていたため,本研究では研究対象者が種々の思 いを自由に「語る」面接方法を取り入れた.面接者 の誘導的質問の有無や回答者の発言内容には問題は 見られなかった.

面接内容:1回目の面接時間は6

0分程度で,質問内

容は「妊娠中から現在にいたるまで,お子さまを育 ててきたお母様のいろいろな思いをお話していただ けますか」 の開かれた質問内容とした.そして, 「妊 娠中はどのような思いでしたか」「出産された時,

お産後の思いはどうでしたか」「退院してからはい かがでしたか」と大きく3時相の経過に沿って母親 自身の心の高まりを阻害しないように自由に語って もらった.

2回目は1 5分程度で,1回目に対象者が語った逐語 録の内容の確認と対象者のナラティブ後の気持ちの 変化について質問した.面接の内容は対象者の同意 のもとテープに録音した.

3)本研究の信頼性と妥当性を確保するための留意点 本研究の信頼性・妥当性を確保するためにホロウェ イとウィーラー

8)

の示す質的研究方法を参考に以下 を留意点とした.

信頼可能性

:「長いかかわりあい」 :「持続的な観察」に おいては,面接者は母親の出生時から子どもが退院す るまで母親と

A

大学病院で関わっていた.子どもが 退院後は面接者の病棟に母子そろって面会にきた時等 にかかわり信頼関係を築いていた.また,面接時間は 約6 0分から9 0分であり,長時間持続面接時間であった.

:「専門家間の審議」は,データの分析や結果を 母性領域での臨床経験豊かな臨床経験1 0年以上の大学 院生や指導教員の評価を受け,さらに本研究の結果解

釈に関して指導教員のスーパーバイズを厳粛に受けた.

:「参加者のチェック」は,7事例中5事例は2

回目の面接時に,研究者がまとめた内容を説明し,研 究参加者に確認を得た.しかし,他の2事例は研究参 加者との時間調整ができず,確認を得ることができな かった.

:「トライアンギュレーション」においては面接 を重視しながら,面接対象者の表情や感情の表出状態 の観察も行った.

移転可能性

研究対象者の選定は,研究方法で述べたごとく研究 対象者の選定をできるだけ詳細に示した.

明解性

研究プロセスは,可能な限り詳細に示した.結論に いたるあしあとを理論的,方法論的,分析論的選択 を明白に論じる努力をした.

確認可能性

本研究の結論や解釈は対象者が語った内容から直接 引き出されていることが,読み手にも確認できるよ うに努めた.

4.分析方法

1)3時相を通してナラティブアプローチをもって母親 のナラティブをテープに録音する.

2)逐語録として収集したナラティブデータをテキスト 化する.

3)繰り返しテキスト化されたナラティブデータを1事 例ずつ読み,対象者のおかれた状況や文脈,世界を 十分味わう.

4)次に,テキストが示す状況や文脈から母親の物語を 抽出し,抽出した物語の内容に合致したサブテーマ をつける.

5)サブテーマをグルーピングし,テーマとしてネーミ ングする.

6)さらにネーミングしたテーマをグルーピングし物語 のタイトルとする.

7)母親のナラティブ時の表情,面接者の姿勢を抽出す る.

母親のナラティブの録音テープを1事例ずつ繰り返 し聞き,母親の声のトーンや面接者の語りかけ等を くみ取りながら,その場の雰囲気を面接者が振り返 り抽出する.

8)2回目の面接から母親のナラティブ後の気持ちを抽 出する.

9)母親のナラティブから,母親の思いとケアに関する 概念図を作成する.

5.倫理的配慮

−4 5−

(4)

本研究の倫理的配慮については,面接対象者全員に面 接内容に関して厳重に秘密を守り,学術的目的以外には 使用しないことを約束し,調査で得られた結果について は個人が特定できないように処理した.また面接調査内 容が個人の心の状態を語ることになるため,話したくな い場合には拒否や中断をしてもかまわないこと,研究へ の不参加の場合も治療への影響は全くないことを前もっ て文書と面接調査直前に口頭で説明した.さらに,研究 参加に同意を得られた対象者に,同意書への署名を行っ てもらい研究協力の明確化を図った.

尚,本研究実施前に当該大学の研究倫理委員会に提出 し平成1 6年5月,方法について承認を得た.

結果

1.対象者の背景と面接の環境

研究対象者の背景は(表1)に示す通りであった.面 接の環境は,母親の思いが十分面接者に吐露できる場所 や時間であった.その環境つくりは対象者が自ら積極的 に行っていた.また面接者も対象者の思いが吐露できる 環境をつくるための努力をしていた(表2) .

2.超低出生体重児を持つ母親の思いに関する要素 超低出生体重児の母親のナラティブから前向きな物語 と後ろ向きの物語が抽出できた.前向きな物語は母親の 自分自身及び周囲に対する気持ちや状態を肯定的・積極 的に受け止めて母親が成長していく物語の内容であった.

前向きな物語には「母親の新たな自分の成長への物語」

というタイトルをつけた.また,後ろ向きの物語は母親 の自分自身及び周囲に対する気持ちや状態が不安定で悩 み苦しむ内容の物語であった.後ろ向きの物語には「ま どいの物語」というタイトルをつけた.「新たな自分の 成長への物語」と「とまどいの物語」を構成するそれぞ れのテーマとサブテーマを(表3)に示した.

「新たな自分の成長への物語」のテーマとそのサブテ

ーマ,「とまどいの物語」のテーマとそのサブテーマが 分かりやすくするために文中にそれぞれのテーマを以下 の括弧で示した.

新たな自分の成長への物語のテーマ:【】

新たな自分の成長への物語のサブテーマ:«»

とまどいの物語のテーマ:<>

とまどいの物語のサブテーマ:≪≫で示す.

超低出生体重児で出生した子どもを持つ母親が,その 子どもを現在まで育ててきた母親(7名)のナラティブ から抽出された物語は,3時相に関係なく,新たな自分 の成長への物語のテーマを4つ,【子どもが生きてい る】・【母親と周囲との良好なつながり】・【母親の児 の受け入れ】・【母親の子どもからの学び】ととまどい の物語のテーマを3つ,<母親の自責>・<母親の思い を周囲には理解してもらえない>・<子どもの不確かさ

>であった.各テーマとその抽出したサブテーマの内容 を以下に示す.

1)新たな自分の成長への物語のテーマとそのサブテー マ

【子どもが生きている】というテーマは「こん なに小さいのに触っていんかなって思ったけど触ら せてくれてよかった安心しました」 , 「生まれたとき はうれしかった泣いたんですよ,よかたって気持ち でいっぱい・・・」等の母親のナラティブから抽出 された.《胎動を感じた思い》《元気で無事に生ま れてきてくれた思い》《とりあえず助かった思い》

《子どもの状態が徐々に良くなっていくことで子ど もの生きる力を実感する思い》《子どもに会う・触 れることで子どもを実感する思い》《子どもが順調 に育ってくれている思い》というサブテーマからな っていた.【子どもが生きている】というテーマの 内容は母親が子どもが生きていると感じ,母親自身 のありかたが確かなものとなり超低出生体重児を持 つ母親の心の安寧につながるものであった.

分娩形態 母親の出産まで の入院期間(日)

児の年齢

(歳) 性別 出生順位 出生週数

(Wーd)

出生時体重

(g)

退院時体重

(g)

児の入院 期間(日)

カンガルーケア 開始時期(日齢)

母子入院

期間(日)家族構成 帝王切開 23 3.1 男 2 32ー6 598 2530 214 126 4 核家族 帝王切開 4 1.7 男 1 28ー6 909 2505 109 57 8 核家族 経腟 20 2 女 1 26ー0 720 2460 126 66 4 核家族 経腟 15 3 男 3 24ー3 665 2820 180 86 7 拡大家族 経腟 12 2.1 女 1 25ー6 763 2640 121 57 3 拡大家族 経腟 44 2.5 男 4 25ー2 655 2530 115 73 6 拡大家族 帝王切開 22 2.7 女 2 33ー6 960 2360 58 19 13 核家族 表1 対象者の背景

−4 6−

(5)

1回目 2回目

氏名 語り始め 語り中の態度 語り終わり 場所 前回語った後の気持ち 備考

MA 辛い体験の思い を 語 り始めた

語り始めから涙 を 流 しながら感情が 表 出 していた

感情の高ぶりを 抑 え ず,涙 を 流 し,時 々 声をつまらせな が ら 語った

・今までのことをもう一度 振り返り気持ちを整理して いた

・子どもの今までの写真を 面 接 者 に み せ,面 接 者 と NICUでの思い出やここま で大きくなった子どもへの 思いを共感した

・微笑みを浮かべて,気持 ちの落ち着きがあった

新築した自宅 今までのことを 振 り 返れて整理がで き て 前向きな気持ち に な った

同じ立場の母親 と の 交流の機会がほしい

面接者に対する 対 応 は1回 目 と 同 様 で あ り面接者が訪れ る の を家族で待って い た くれた

Mo 落ち着いた声で ゆ っ くり語りはじめた

感情の高ぶりを 抑 え ず,涙 を 流 し,時 々 声をつまらせな が ら 語った

・今までのことをもう一度 振り返り気持ちを整理して いた

・面 接 者 とNICUで の 思 い出やここまで大きくなっ た子どもへの思いを共感した

・微笑みを浮かべて,気持 ちの落ち着きがあった K 落ち着いた声で ゆ っ

くり語りはじめた

感情の高ぶりを 抑 え ず,涙 を 流 し,時 々 声をつまらせな が ら 語った

今までのことをもう一度振 り返り気持ちを整理していた

・微笑みを浮かべて,気持 ちの落ち着きがあった

・面 接 者 とNICUで の 思 い出やここまで大きくなっ た子どもへの思いを共感した

面接者の勤める 施設のカンファ レンスルーム

分かってくれる 相 手 に聞いてもらえ て よ かった

「ゆう の を 忘 れ た こ とがあるような 気 が していたのでも う 一 度 話 し た か っ た」と 面接者に語った

F 落ち着いた声で ゆ っ くり語りはじめた

常に 冷 静 な 表 情 で,

時々思いつめる 表 情 で語った

・今までのことをもう一度 振り返り気持ちを整理して いた

・夫に初めて子どもを預け て,面接に来ていることを 語り,良い機会を与えてく れた感謝の気持ちを面接者 に語った

・微笑みを浮かべて,気持 ちの落ち着きがあった

面接者の勤める 施設のカンファ レンスルーム

上の子と話す機 会 を も う け,生 ま れ て き てくれてよかっ た と 思う

「夫は み て く れ て た ゆうても夫の友 達 の ところで子供をみよt っ た み た い」「ま あ え ん や け ど」と 微 笑 ん で い た「前 こ こ で 話をしたあと家 に 帰 って上の子に聞 い た ん や」と 前 回 の 面 接 が上の子と本研 究 対 象児との話をし よ う というきっかけ に な っていた

M 落ち着いた声で ゆ っ くり語りはじめた

感情の高ぶりを 抑 え ず,涙 を 流 し,時 々 声をつまらせな が ら 語った

・今までのことをもう一度 振り返り気持ちを整理して いた

・面 接 者 とNICUで の 思 い出やここまで大きくなっ た子どもへの思いを共感した

・微笑みを浮かべて,気持 ちの落ち着きがあった

面接者の勤める 施設のカンファ レンスルーム

今までのことを 振 り 返れて整理がで き て 前向きな気持ち に な った

MK 目に触れないよ う に 配慮していた録 音 テ ープを母親自ら 自 分 の 前 に お き,一 気 に 語りはじめた

感情の高ぶりを 抑 え ず,涙 を 流 し,時 々 声をつまらせな が ら 語った

・今までのことをもう一度 振り返り気持ちを整理して いた

・子どもの順調に成長して いる様子を面接者に伝えた

・微笑みを浮かべて,気持 ちの落ち着きがあった

面接者の勤める 施設のカンファ レンスルーム

O 落ち着いた声で ゆ っ くり語りはじめた

感情の高ぶりを 抑 え ず,涙 を 流 し,時 々 声をつまらせな が ら 語った

・今までのことをもう一度 振り返り気持ちを整理して いた微笑みを浮かべて,気 持ちの落ち着きがあった

・面 接 者 とNICUで の 思 い出やここまで大きくなっ た子どもへの思いを共感し た

・微笑みを浮かべて,気持 ちの落ち着きがあった

小児科外来の面 談室

今までのことを 振 り 返れて整理がで き て 前向きな気持ち に な った

同じ立場の母親 に 役 立ててほしい気持ち 表2 母親のナラティブ(語り)時の表情・態度

−4 7−

(6)

【母親と周囲との良好なつながり】というテーマ は「夫がもう悩むな・・先のことは考えてもどうに もならんし前むいてみんなで一生懸命がんばろう」 ,

「(看護婦さんが)○ちゃん,お母さんがきてくれ るんまっとるで・・おかあさんがくるんすごい楽し みにしているんでっていってくれて」等の母親のナ ラティブから抽出された.夫,家族(両親)(上の 子) , 同じ境遇の母親,医師・看護師,親戚,友人,

他人からの《共感》《支持》《肯定》《傾聴》《援 助》をされている思いというサブテーマからなって

いた.【母親と周囲との良好なつながり】というテ ーマは夫,家族(両親)(上の子)等とのそのとき その時の良好な関係であり母親が周囲との共感や支 持されている思いが語られ母親はその良好な関係の なかで母親自身ケアされている内容であった.

【母親の児の受け入れ】というテーマは「一歳く

らいから表情が出てきてかわいいと思うようになっ た」 , 「もう必死ですよね,どうにかこの子を大きく せんといかん,普通の子にできるだけ近づけたいと 思うんです」等の母親のナラティブから抽出された.

タイトル テーマ テーマの内容 サブテーマ

新たな自分の 成長への物語

【子どもが生きている】 子どもの生きる力と子どもの成 長・発達から母親が子どもを生き ていると実感した内容

《胎動を感じた思い》

《元気で無事に生まれてくれた思い》

《とりあえず助かった思い》

《子どもの状態が徐々に良くなっていることで子どもの生き る力を感じる思い》

《子どもに会う,触れることで子どもを実感する思い》

《子どもが順調に育ってくれている思い》

【母親と周囲との良好 なつながり】

看護者・医師,夫,家族(両親), 同じ境遇の母親,上の子,友人と のその時々での母親との良好な関 係の内容

夫,家族(両親)・(上の子),同じ境遇の母親,

医師・看護師,親戚,友人,他人からの

《共感》《支持》《肯定》《傾聴》《援助》 等 をされて いる思い

【母親の児の受け入れ】 母親として子どもを育てていくな かでの子どもを受け入れる思いの 内容

《命を助けてほしい思い》

《元気で生まれてほしい思い》

《障害があっても自分が育てる思い》

《自分で子どもを産めた自信を持つ思い》

《普通の子どもに近づけたい思い》

《自分しかこの子をみてやれない思い》

《子どもをかわいいと思う》

《元気で大きく育ってほしい思い》

【母親の子どもからの 学び】

子どもから学びによって,母親が 前向きな思考へと変化した思いの 内容

《障害に関心がなかったが今は平気で障害児を持つ母親と話 ができる思い》

《子どもが生まれてきてくれてよかった思い》

《今が一番幸せという思い》

《育児が楽しい思い》

《この子に合わせて進んでいこうという思い》

《仲間と集まる機会を提供してほしい思い》

《同じ境遇の母親を配慮する思い》

とまどいの物語 <母親の自責> 突然の入院や早産,帝王切開の体 験から,超低出生体重児を産んで しまった自分を責める思いの内容

≪仕事や生活での無理を悔やむ思い≫

≪上の子に母親役割が果たせない思い≫

≪小さく産んでしまったことを悔やむ思い≫

≪普通の出産ができなかった喪失感≫

≪母親としての自信のない思い≫

<母親の思いを周囲に は理解してもらえない

超低出生体重児を持つ母親の気持 ちは周囲には理解してもらえない という思いの内容

≪入院生活の辛い思い≫

≪経験のない人からの励ましに憤りを感じる思い≫

≪家族には心配かけたくない思い≫

≪育児の大変さを理解してもらえない思い≫

≪他人から孤立している思い≫

≪小さいという他人からの評価に対する苦痛な思い≫

≪家族は子どもの状態を安易に考えているという思い≫

≪夫・親(家族)は出産に対し否定的であった思い≫

<子どもの不確かさ> 子どもが順調に成長・発達できる かどうかの不安と不確かな思いの 内容

≪早産の不安と恐怖の思い≫

≪脆弱な子どもの命の不安定な思い≫

≪お腹の子に実感が湧かない思い≫

≪子どもを一人で育てる不安な思い≫

≪子どもの成長・発達・病気に対する不安な思い≫

≪子どもが普通に育たない可能性への不安と悲嘆な思い≫

表3 超低出生体重児を持つ母親の「新たな自分の成長への物語」と「とまどいの物語」のテーマとサブテーマ

−4 8−

(7)

《命を助けてほしい思い》《元気でうまれてほしい 思い》《障害があっても自分が育てる思い》《自分 で子どもが産めた自信を持つ思い》《普通の子に近 づけたい思い》《自分しかこの子をみてやれない思 い》《子どもをかわいいと思う》《元気で大きく育 ってほしい思い》というサブテーマからなっていた.

【母親の児の受け入れ】というテーマは出産前から 始まり出産後母親と子どもとの接触や母親が子ども を世話をすることで母親は子どもに対する愛情を深 め母親は子どもを受け入れている内容であった.

【母親の子どもからの学び】というテーマは「お そいながらも○と私は亀さんでいこなってよんやけ ど・・そのときに大事なことをちゃくちゃくとやっ ていこうとおもとんです・・」 , 「今になって思った ら迷って産んだんやけど○が生まれてきてくれてよ かったって思う」等の母親のナラティブから抽出さ れた.《障害に関心がなかったが今は平気で障害児 を持つ母親と話ができる思い》《子どもも成長する が母親も成長する思い》《子どもが生まれてきてく れてよかった思い》 《今が一番幸せという思い》 《育 児が楽しい思い》《この子に合わせて進んでいこう という思い》《仲間と集まる機会を提供してほしい 思い》《同じ境遇の母親への配慮の思い》というサ ブテーマからなっていた.【母親の子どもからの学 び】というテーマは母親がポジティブな思考へと前 向きに変化した思いが語られており,母親が子ども を育てていくことで母親の人格発達・成熟へとつな がっていく重要な内容であった.

2)とまどいの物語のテーマとそのサブテーマ

<母親の自責>というテーマは「もっとはやく気 付いていればよかったって・・自分を責める気持ち がありました」 , 「自分には何の異常もなかったんで す・・.すぐ帝王切開するからゆうて,普通のお産 と違うかった,自分でも何がなんやらわからんまま で・・・」等の母親のナラティブから抽出された.

≪仕事や生活での無理を悔やむ思い≫≪上の子に母 親役割が果たせない思い≫≪小さく産んでしまった ことを悔やむ思い≫≪普通の出産ができなかった喪 失感≫≪母親として自信のない思い≫というサブテ ーマからなっていた.<母親の自責>というテーマ は突然の入院や早産・帝王切開の体験から超低出生 体重児を産んでしまったことを悔やみ自分の果たす 役割を果たせなかった喪失感や罪悪感という思いが 語られており,母親は子どもを育て,子どもが成長

・発達していくことでその思いは軽減されながらも 引き続き残っており,今後も幾度と想起される内容

であった.

<母親の思いを周囲には理解してもらえない>と

いうテーマは「看護婦が小さくても育ちますよとか 平気でゆんですよ」 , 「よく近所の人にご飯食べさせ てるの・・ご飯食べさせてあげなさいっていわれる んです」等の母親のナラティブから抽出された.≪

入院生活の辛い思い≫≪経験のない人からの励まし に憤りを感じる思い≫≪家族には心配をかけたくな い思い≫≪育児の大変さを理解してもらえない思い

≫≪他人から孤立している思い≫≪小さいという他 人からの評価に対する苦痛な思い≫≪家族は子ども の状態を安易に考えている思い≫≪夫・家族は出産 に対し否定的であった思い≫というサブテーマから なっていた.<母親の思いを周囲には理解してもら えない>というテーマは超低出生体重児を持つ母親 の体験は稀であり誰とも共有できない思いがあり,

他者からの励ましやアドバイスも聞き入れることが 難しいく母親の気持ちが周囲には伝わらない,分か ってもらえない母親の思いの内容であった.

<子どもの不確かさ>というテーマは「びっくり

しました.呼吸器がついていて痛々しいくてもう泣 いてばかりいました,皮膚が透き通っていて・・も う次の日はいないんじゃないかって・・」 , 「その時 そのときで歩くんが遅いし,体重ふえんし・・いっ ぱい不安はあります」等の母親のナラティブから抽 出できた.≪早産の不安と恐怖の思い≫≪脆弱な子 どもの命の不安定な思い≫≪お腹の子に実感がわか ない思い≫≪子どもを一人で育てる不安な思い≫≪

子どもの成長・発達・病気に対する不安な思い≫≪

子どもが普通に育たない可能性への不安と悲嘆な思 い≫というサブテーマからなっていた.<子どもの 不確かさ> は子どもが育つ過程で軽減・消失する 内容もあったが,母親の妊娠中から現在に至るまで 子どもの命の不安定な思いや成長・発達・病気に対 する思いは継続しており今後も持ち続けていく母親 の思いの内容であった.

3.超低出生体重児を持つ母親のとまどいの思いを前向 きな思いに変化させた物語

次に,超低出生体重児を持つ母親のナラティブの中か ら母親が前向きな思いに変化させる特に重要と思われる 物語が抽出できた.

1)母親の<子どもの不確かさ>を【子どもが生きてい る】思いに変化させた物語

「帝王切開時傍で先生が手を握ってくれていてよか ったよかったって一緒に喜んでくれて本当によかった です」と語った母親は帝王切開で子どもを出産したに

−4 9−

(8)

もかかわらず,普通の出産ができなかった喪失感の思 いは語らなかった.また「子どもが生まれた時看護婦 さんにお父さんに似ているっていわれて夫がうれしく なったみたいで夫の喜ぶ顔をみてほっとしました」

「同じ境遇の母親の息しとるし,いきとるだけましで す・・という言葉に母親は「このお母さん強い」と思 い,「それから1つ下がって呼吸器のいたけん大丈夫 とか下から上がっていくそんな気持ちになりました」

という語りや「カンガルーケアっていいですよね,な んかぬくもりが伝わってきて」という母親の語りは母 親の<子どもの不確かさ>という思いから【子どもが 生きている】という前向きな思いに変化させた内容で あった.そしてその母親の語りは【母親と周囲との良 好なつながり】・【子どもが生きている】というテー マの内容から抽出された.

2)母親としての自信を持つ思いに変化させた物語

「生まれる前に障害があるって言われていたから・

・でも産みたかった.その時実家の母親がまあ大丈夫 やろって言ってくれた」という語りや「夫はここまで

(子ども)を大きくしてくれたと感謝している」とか

「お母さん達と結構いっぱい話したけどみんなおなじ ことをおもっているんやなって思いました」という母 親の語りは母親として自信を持つことにつながり母親

を前向きな思いに変化させた内容であった.そしてそ の母親の語りは【母親と周囲との良好なつながり】と いうテーマの内容であった.

4.超低出生体重児を持つ母親のナラティブ(語り)後 の母親の思いと面接者へのナラティブ(語り)時の母 親の表情

母親は3時相の流れのなかで,母親の思いを面接者に 吐露していた.そして最後にもう一度母親自身の語った 内容を整理し,まとめて母親の思いを語っていた.特に

F

は面接者に思いを語る機会を得たことで,夫に初めて 子どもを預ける行為をとり,子どもの存在が意味のある ものであるということを対象者自身が気づくことができ ていた.そして,全ての母親は面接者を快く迎えてくれ,

一生懸命に話を聞いてもらおうとする態度が見られ,語 りの後は明るい表情となっていた(表2) .

2回目の面接で母親に1回目の面接時に母親が語った 後の思いの内容は,[分かってくれる相手に聞いてもら えてよかった思い]・[自分の今までのことを振り返れ て前向きになる思い]・[同じ立場の母親に役立てて欲 しい思い]・[生まれてきてくれてよかった思い]であ った(表4) .

分かってくれる相手に聞いてもら えてよかった思い

自分の今までのことを振り返れて 前向きになる思い

同じ境遇の母親に役立てて欲しい 思い

生まれてきてくれてよかった思い 人には言ってもわからないってゆ

うのがあって同じお母さんでも,

それぞれ違うんで,分かってくれ るってゆうのがあったので,聴い てくれてよかったっと思いました.

(K)

自分の今までを振り替えれてまた 改めてがんばろうってゆう気持ち にはなりました。 (M

7月の末に引越ししたんです.(新 築)いろんな人に支えてもらった,

役に立ちたいみんなに教えられて,

本当に波は激しい,落ち込んだり,

立ち直ったり,みんなを元気付け たり・・自分がいろんな人から支 えて,もろたからやっぱり落ち込 んでいる人に「こんなことがあっ た,でも頑張ろう」みたいなこと があった,でも頑張ろう」みたい なことが言えたらね・・・」私と 同じように立ち直ってくれたらい いなって,あの子あんなにちいさ かったんやなってわかるし,お母 さんの大変やたなってわかるし・

・・(MA

今日ははじめて主人にこども預け てきたんです.主人が行って来い って言ってくれて・・・愚痴ばっ かりゆうて・・・でもやっぱり生 まれてきてくれてよかった.死に そうな思いして助かったやろ・・

がんばったんや・・まだ3歳しか 生きてない.もっともっと,幸せ にならんといかん.(F) 何も隠してきたわけではないので,

昔のことを思い出しながら・・あ あ大変だったなってよくここまで 大きくしたなって改めて思い返す ことができました.ちっちゃかっ たねえとか,本当にこんなにやん ちゃ坊主になったわってあんな小 さかったのに・・・って思うんで す. (MA)

病気しないで大きくなってくれる のが親としては一番の望みです.

子どもが生まれてきてくれてよか った.産んでよかった・・・・.

MK) 話を終えてすっきりしました.こ

の子はお陰で順調に大きくなって いるので,その話を他の人の悩ん でいる人に役立ててくれたらとい う気持ちです.上の子がいたので,

その成長を見ているんでYちゃ んを育てられたと思います.この 子も保育所行くようになって,行 動的になっているし,そんなこと をみんなにしって欲しいと思って います.(O)

表4 2回目の面接からの母親のナラティブ(語り)後の気持ち

−5 0−

(9)

考察

本研究では,超低出生体重児を持つ母親が現在までど のような思いで子どもを育ててきたかを知り,母親がど のようなケアを必要としているかを明確にするために母 親のナラティブを傾聴しその母親のナラティブから重要 と思われる内容を抽出し分析した.そして母親のナラテ ィブが母親をどのように変化させているかを母親のナラ ティブ時の様子とナラティブの内容から分析した.その 結果母親の【子どもが生きている】・【母親と周囲との 良好なつながり】・【母親の児の受け入れ】・【母親の 子どもからの学び】という4つの新たな自分の成長への 物語のテーマと,<母親の自責>・<母親の思いを周囲 には理解してもらえない>・<子どもの不確かさ>とい う3つのとまどいの物語のテーマが抽出できた.そして 母親の思いを前向きな思いに変化させるには<子どもの 不確かさ>を【子どもが生きている】思いに変化させる こと,及び母親としての自信を持つことが重要であるこ とが明確になった.さらに母親は母親の思いを語ること で母親の気持ちが整理でき前向きに進むきっかけとなっ ていたことが明らかになった.以上の結果より以下の2 つの視点で考察する.

1.超低出生体重児を持つ母親の思いの変化とケアの意 味

ケアという意味を秋元

9)

は「排泄・食事などに関わる 看護ケアにおいて,共有・共感・支持・強化・尊重を基 盤に置いた看護ケアを行うとき,ケアの受け手に,心身 の安寧が生じ,また看護師の気持ちに応えたいという意 識が生じ,それにより安寧や回復を求める意欲が向上し て,実際に食事摂取が促され,抱えていた問題を自ら解 決していく行動が明らかになった」としてケアによって 受け手が安寧や回復を求め意欲が向上すると述べている.

また岡本

0)

は,「ケアという言葉には 人の面倒をみる こと という行為の次元と 他者に関心を持ち,気配り し,慈しむ という心理的次元の2つの意味がふくまれ ている」と述べている.そして,「他者が苦悩している のをみて,近くに寄り添いその苦しみに耳を傾けるとき,

他者の苦しみは自己の苦しみになって返ってくる.その ように自分の苦しみとして他者に関わるとき,ケアとい う行為が開始されたという意味を含んでいるように思わ れる.すなわち他者の苦悩にかかわる援助者が,共苦・

共感的なかかわりを築こうとしないで,他者の苦悩をい わば効率的な方法で処置するだけだとすれば,たとえ原 因を取り除いて苦しみを解消できても,それはここでい うようなケアにはあたらないといえるとして,ケアとは 本来他者の苦悩・共感するかかわりを示すのであろう. 」

と述べている.本研究においても母親のナラティブから,

母親の思いがとまどいの思いから前向きな思いに変化し た場面が抽出できた.その場面を母親に対するケアと捉 え考察する.

母親が【子どもが生きている】と感じる思いに変化 させるケア

超低出生体重児を持つ母親は,先行研究

1〜14)

と同様,

罪悪感や喪失感,孤立感,成長・発達への不安の思いが 生じていた.しかし,これら先行研究が示す内容は,出 産後の母親の感情が中心となっている.本研究では,母 親は突然の入院や早産への不安や恐怖(小さい子ども,

障害児を産んでしまう)に戸惑いを感じながらも,出産 前から「子どもに障害があっても自分が育てていこうと 決心する」という【母親の児の受け入れ】が抽出された.

超低出生体重児を出産しようとしている母親が出産に前 向きになるためには,子どもが生きていると実感できる 胎動を母親が感じることは重要であった.そして,少な い時間であろうとも夫婦・家族でこれから生まれてくる 子どもに対する思いを語り合う環境を提供することが重 要であると考えられた.加えて,看護師の一生懸命に患 者に尽す看護の姿勢は,母親が(胎児も含めて)大切に されていると感じ,母親の気持ちを前向きな思いにする 重要なケアになっていると考えられた.

また,出産前に「子どもに障害があっても自分が育て ていこうと決心」していた母親は,無事に子どもが生ま れたことに喜びを感じ,無事に子どもが生まれたことが 子どもを育てていく支えになっていた.一方,緊急帝王 切開で出産した母親は普通の出産ができなかった喪失感 を語っていた.しかし,帝王切開で出産した母親でも出 産時医師とともに喜びを共感した母親は普通の出産がで きなかった喪失感は語らなかった.三枝

5)

は「出産経験 を肯定的に捉えている母親は,否定的に捉えている母親 よりも,母親役割獲得がスムースに行える.そして出産 体験の捉え方は,出産時の看護者の関わり方の影響がお おきいことを三枝は検証している」と述べ,前原

6)

は「出 産時の看護者による直接ケアが多いことと,共感的発言 が多いと出産体験を肯定的に捉え

Maternal Identity

も 高くなる.このことは看護者のみの言動ばかりでなく,

夫や家族員の妊婦に対する共感的発言も影響を与えるで あろう」と,出産体験を肯定的に捉えることの重要性を 述べている.本研究においても,家族の母親を心配する 気持ちや子どもが無事に生まれた喜びを夫や家族,医師

・看護師と共感することで,超低出生体重児を出産した 母親は子どもを無事に産んだ母親を認め母親自身への尊 敬の気持ちを感じ,母親を前向きな思いにさせていた.

これは,その後母親が子どもを育てていく上での大きな

−5 1−

(10)

支えとなり,母親役割獲得においても重要な意味がある と考えられる.

そして,緊急帝王切開で喪失感を語った母親も,同じ 境遇の母親の言葉で子どもが生きていることに価値をみ いだし,そこから1つずつ子どもの回復や成長を認めて いくという,超低出生体重児の母親が子どもを育ててい くうえでの支えとなっていた.そして,他の本研究対象 の母親においても子どもが入院中に知り合った母親との 交流で支えられていることを語っていた.先行研究にお いても「退院後○○の会と称して

NICU

の卒業生の会 を設けその意義として, 同じ境遇の親子と親しくなり 心強かった いつでもスタッフに相談できることが安 心につながった 」等を述べている

7)

.先行研究に加え て本研究からは,退院後の親の支援としての同じ境遇の 母親(仲間)の存在のみならず,子どもの入院中からの 同じ境遇の母親の効果的な働きかけの検討が必要である と考えられた.

さらに,全ての母親は子どもとの面会,触れる,カン ガルーケアで子どもを実感し子どもを「生きている」と 感じていた.中島は「カンガルーケアを実施した早期産 の母親は辛さのとらわれを持ちながらケアを通して子ど もの生きる力に気づくことで現実との対峙が生じ子ども との関係性を築いていた.その上に母親としての存在す る確かさを得て早期産体験を受け止め癒されていること が明らかになった. 」

7)

とカンガルーケアの有効性を述べ ている.本研究の対象者も全ての母親がカンガルーケア を受けており,カンガルーケアを通して母親は子どもを 実感し,母親の早期産体験を受け止め癒されていく一助 になっていたことが確認できた.

母親に母親としての自信を持たせるケア

子どもの兄弟を持つ母親は,上の子の成長を指標にし て,子どもの成長・発達を見出していた.そして,子ど もの成長・発達を夫や家族と共感し,さらに親戚,看護 師,あるいは他人によって,小さく生まれた子どもがこ こまで大きくなったことへの共感や肯定・支持されるこ とで母親は周囲から肯定や尊敬されていると感じ,それ が母親としての自信につながっていたと考えられた.子 どもの成長を共に喜び,育ててきた母親を尊敬する気持 ちを母親に示すことは重要な母親へのケアであると考え る.

以上本研究において母親の物語から,超出生体重児を 持つ母親の<母親の自責>・<母親の思いを周囲には理 解してもらえない>・<子どもの不確かさ>というとま どいの物語は,子どもへの愛情を深め母親は【母親の児 の受け入れ】から,わが子のあるがままを受け止め一つ 一つ前進していこうという思いの【母親の子どもからの

学び】という新たな自分の成長への物語へと進んでいた と考えられた.このとまどいの物語から新たな自分の成 長への物語へと進む過程は母親が超低出生体重児である 子どもを持つことを劣等感として捉えず超低出生体重児 であるわが子を人間として価値のある存在として捉え,

子どものあるがままに受け入れた母親の姿に変動してい く過程であると考えられた.その過程を進んでいくため には,【子どもが生きている】と感じることで母親は母 と子の絆が形成され【母親の児の受け入れ】へと進み,

母親としての自信を持つことで母親は子どもの立場に立 った視座が持て【母親の子どもからの学び】を得,子ど もの成長を見守るという母親の前向きな思いへと促進さ せるケアを提供することが重要であると考えられた.

2.母親のナラティブの意味

母親は3時相で面接者に語り,もう一度今までの母親 の思いをまとめなおしていた. 母親のナラティブ (語り)

の時間は,母親が前に進む重要な時間であったと考える.

本研究において,面接者は母親の子どもが生まれた直後 から子どもが

NICU

を退院するまで,子どもの成長・

発達を母親と共にみつめてきた施設の看護者であった.

面接者を母親は自分自身のことを理解してもらえる者と してとらえており,その面接者に母親自身の思いを吐露 できたことは,今までの母親の子どもに対する思いを,

母親が面接者に「語る」ことで,気持ちの整理ができ,

さらに前向きに進んでいけるきっかけになっていたと考 える.母親の思いのナラティブ(語り)と面接者(聞き 手)の共同作業により母親自身の思いが整理され母親は 前向きな思いになっており,母親のナラティブは母親の ナラティブアプローチとなり母親へのケアにつながって いたと考える.

さらに,本研究において母親はナラティブ(語り)の 後の感想で,[同じ立場の母親に役立てて欲しい思い]

を語っており,母親の面接者に語るという能動的な姿勢 から自己と他者の受容,さらには自分の体験を他の人々 のために役立てようという状態まで母親は思いを成熟さ せていたと推察できた.超低出生体重児を持つ母親は,

ケアされることで前向きな思いになり,母親自ら子ども をケアすることで,母親は自己実現を遂げ,母親として 成熟していっていることが推察された.しかし,母親が 人間的に成長していく過程は直線的,段階的良好な方向 に向かうのではなく,何回も新しい危機に遭遇すること によって揺り戻されながらも,母親が新しい態度を形成 していくと考える.超低出生体重児を育てている母親も 常にアンビバレントな思いと共に,何回も危機に遭遇し ながら母親は新しい態度を形成し母親として成熟してい くものと考える.最後に本研究で明らかになった超低出

−5 2−

(11)

生体重児を現在までそだててきた母親の思いの概念図を 示した (図1) .

今回の研究対象者は子ども虐待が多い年齢とされてい る2歳から3歳の子どもを持つ母親であったが,子ども の成長・発達に不安を感じながらも,愛情豊かに子ども を育てていた.そしてこれからさまざまな困難に遭遇し ても,母親は子どもの価値を認め,夫・家族・仲間から の共感・支持を支えとし,「子どもが小さく生まれたこ とに誇りを持ちながら」困難に立ち向かっていくだろう と推測された.

研究の限界

本研究において,超低出生体重児を育てている母親の ナラティブから,母親の思いの物語が抽出でき,母親を 前向きな思いへと変化させるケアとその意味が明らかに なった.そして研究者自身が母親のナラティブを傾聴す ることで母親と共感することや寄り添う看護の必要性を あらためて教えられたことに大きな意味を感じている.

しかし,7事例と少ない対象数であったため,一般化す るには限界がある.また,面接者は母親が出産し子ども

が入院していた施設の助産師であった.このことは信頼 関係が築かれている半面,施設や看護職者に対する率直 な思いが吐露できなかった可能性も考えられるためバイ アスがあったことは否定できない.さらに母親のナラテ ィブ(語り)の中からのみの考察であり,その母親の性 格や育った環境,家族関係等が検討されていないため一 人一人の母親の成熟度は不明確である.今後は個々の事 例をより深く検討することと共に,事例数を増やし,縦 断的に研究を進めていく必要があると考える.

結論

1.超低出生体重児を持つ母親の子どもへの思いの要素 として,【子どもが生きている】・【母親と周囲との良 好なつながり】・【母親の児の受け入れ】・【母親の子 どもからの学び】という4つの新たな自分の成長への物 語と,<母親の自責>・<母親の思いを周囲には理解し てもらえない>・<子どもの不確かさ>という3つのと まどいの物語が抽出された.

2.超低出生体重児を持つ母親は時間の流れと共に,と まどいの物語が新たな自分の成長への物語に助けられて

図1 超低出生体重児を持つ母親の思い概念図

−5 3−

(12)

【母親の児の受け入れ】へ進み,そして【母親の子ども からの学び】を得ていた.

3.超低出生体重児を持つ母親が【母親の児の受け入 れ】へ進み,そして【母親の子どもからの学び】へと進 んでいくためには,【子どもが生きている】・【母親と 周囲との良好なつながり】という新たな自分の成長への 物語を促進することで母親はケアされて,子どもが生き ていると感じ,母親として自信を持つという思いになる ことが重要であった.

4.超低出生体重児を持つ母親のナラティブ(語り)は,

母親自身の思いを理解してくれると感じている看護者と の共同作業によって母親はケアされて,母親の今までの 思いを整理し,母親がさらに前向きにすすめるきっかけ につながっていた.

5.母親はケアされ母親は子どもをケアすることで,母 親は子どもからの学びを得て母親としての成熟へと進ん でいた.

提言

特に超低出生体重児を持つ母親に関わる看護者は,そ の時々の母親の思いを十分に理解することが重要である.

そして母親とかかわる時,今回の研究で明らかになった 母親を前向きな思いに変化させるケアを提供することが 必要である.看護者は母親がいつでも母親のナラティブ を傾聴する姿勢を持ち,母親の思いが吐露できるわずか な時間と場の提供が必要であると考える.そして数ヶ月 の間母親と共に子どもの成長を見つめていた入院施設の 看護者が,継続して地域に帰った母親を訪問し,外来受 診時には母親のナラティブを傾聴する時間を設けること も必要であると提言したい.

看護者は,超低出生体重児を持つ母親の支援者として,

母親が周囲との良好な関係を保てる環境であるかどうか のアセスメントと周囲と母親との良好な関係への支援が 重要である.そして看護者は自らが母親により良いケア の提供者になるべく,技術と心の成長,つまり感性の育 みが必要であると考える.

謝辞

母親として妻として主婦,そして職業人として多くの 役割を持ちつつ,日夜邁進しておられるにもかかわらず,

快く本研究にご協力いただいたお母さま方に深く感謝申 し上げます.そして,本研究を遂行するにあたりご助言 いただきました香川大学医学部看護学科大森美津子先生,

佐々木睦子先生に深く感謝申しあげます.

引用文献

1)中村肇:我が国の新生児医療体制の現状と今後の課 題,周産期医学,3 2(5) , 5 8 5−5 8 9,2 0 0 2.

2)石田登紀子:対象の 力 を信じる 力 出会いか ら得たものー産む力,生まれる力に寄り添って」を 読んで,助産雑誌,5 7(1 0) , 2 0−2 4,2 0 0 3.

3)田中美恵子:語りを通して体験を知る,日本看護研 究学会誌,2 3(2) , 5 6−6 4,2 0 0 3.

4)横尾京子:極小未熟児の親子関係―入院にいける両 親の心理的・情緒的変化,母性衛生2 6(1) , 1 1 0−

1 1 6,1 9 8 2.

5)要田洋江:障害者差別の社会学,岩波書店,8 4−

9 0,1 9 9 9.

6)筒井真優美:ケア/ケアリングの概念, 看護研究, 2 6

(1) , 2−1 1,1 9 9 3.

7)斎藤清二:はじめての医療面接, (第1版)医学書 院,2 0 0 2.

8)Holloway, I. and Wheeler, S. :ナースのための質 的 研 究 入 門(第1版) ,野 口 美 和 子 監 訳,医 学 書 院,2 0 0 3.

9)秋元典子:語りを通して体験を知る,日本看護研究 学会誌,2 3(2) , 5 6−6 4,2 0 0 3.

1 0)岡本裕子:女性の生涯発達とアイデンティティ(初 版) , 北大路書房,1 4 3−1 5 4,2 0 0 2.

1 1)荒木孝治,和田恵美子:ナラティブ現象学アプロー チの方法論的基礎付けについて,日本看護研究学会 誌,2 7(3) , 1 3 1,2 0 0 4.

1 2)吉村精世:看護ケアにナラティブを導入した老年患 者の語りの構造及び変化の研究,香川大学大学院医 学系研究科修士論文,2 0 0 2.

1 3)Ramona T.M.:The process of maternal role attainment

over the first year, Nursing Research,34

(4) , 1 9 8

−2 0 3,1 9 8 5.

1 4)梶山祥子,野間千香穂,小林明子:極低出生体重児 の発達援助と育児支援,家族看護学,5(2) , 1 1 9

−1 2 4,2 0 0 0.

1 5)三枝清美:出産体験のとらえ方が自尊感情に及ぼす 影響,千葉看護会誌,3(2) , 9 1−9 7,1 9 9 7.

1 6)前原澄子:ライフサイクルと豊かな子育てへの支援,

家族看護学,5(2) , 1 1 4−1 1 7,2 0 0 0.

1 7)中島登美子:カンガルーケアを実践する母親の体験,

看護研究,3 2(5) , 5 7−6 5,1 9 9 9.

−5 4−

参照

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