「新・会社法」で何が変わるか
~企業・産業界の活性剤となるか~
日本経済情報課 【要旨】 2005 年 6 月に成立した「新・会社法」は、90 年代半ば以降続いた会社法制再構築の総仕上げとな るものである。そのコンセプトは、多くの点について規制緩和的な改正を盛り込み、会社の「定款自治」を 重視するという姿勢をより明確に打ち出す一方で、コーポレートガバナンスの見地やコンプライアンス強化 の観点から必要と考えられる事項に関してはむしろ規制強化的なスタンスを打ち出すなど、現代のビジネ ス環境に対応した改正となっている。「新・会社法」の制定により、会社の設立・運営・組織再編、さらに 企業再建をより迅速かつ円滑に実施することが可能となり、企業・産業界の新陳代謝を促すことになると 期待されている。1. 新・会社法が成立
2005 年 6 月 29 日、「会社法」(以下、「新・会社法」と表記する)が参議院にて可決、成立した。 新・会社法はこれまで商法第 2 編、有限会社法、商法特例法(「株式会社の監査等に関する商法 の特例に関する法律」)などにまたがって配置されていた会社(株式会社、有限会社、合資会社、合 名会社)に関する規程を、一つの法典としてまとめたもので、同時に実質的な改正や、現代語化も行 われている。以下では、企業の設立・運営・組織再編などにかかる改正点・規制緩和などを中心に 「新・会社法」の内容を紹介する。2. 新・会社法制定までの経緯と実質的改正の内容
(1)これまでの商法改正と新・会社法制定の経緯
90 年代前半までは、商法の大幅な改正は 4 年~5 年に一度といわれてきたが、90 年代 後半には経済環境の急速な変化や、実務界 からの要望などを背景に、ほぼ毎年のように改 正が行われてきた。90 年代半ば以降の主な 改正を拾ってみても、自己株式取得制限の緩 和(94 年)、ストックオプション制度の導入(97 年)、委員会設置会社制度の導入(2003 年) のほか、特に企業再編法制(合併・分割など) については、97 年の合併手続きの簡素化に始 まり、99 年の株式交換・株式移転、2000 年の 会社分割制度の導入など、重要な改正が相 次いで行われた。ただ、これほど多くの改正が 短期間に行われたことで、全体的な整合性を 図表1 商法改正の歴史(一部関連法を含む) 年 法改正の内容 94 自己株式取得規制の緩和 97 合併手続きの簡素化(合併報告総会の廃止など) ストックオプション制度の導入 98 資本準備金による自己株式消却の解禁 99 株式交換・株式移転の導入 2000 会社分割制度の導入 2001 金庫株の解禁 単位株制度を廃止し単元株制度へ移行 法定準備金の減少手続きの簡素化 ストックオプションの規制緩和、種類株式の範囲拡大 種類株式の種類の拡大、新株予約権の定義導入 (ワラント債と転換社債を統合して規程) 2002 委員会設置会社の導入 連結会計の導入 2003 自己株式取得規制の緩和(定款授権での取締役会決議で可) 2004 電子広告・株券不発行制度の創設2005 日本版LLP(Limited liability partnership)の創設 2006 会社法施行 (予定) ・最低資本金制限の撤廃 ・合同会社(日本版LLC:人的有限責任会社)の創設 ・柔軟な機関設計 2007 会社法のうち、組織再編の際の対価柔軟化にかかる規程施行 (予定) (会社法本体施行の1年後)
図る必要性が生じたため、会社法制全般を改めて整理し規定しなおすこととし、同時に、実質的な改 正も行われることとなった。また、より利便性を高めるために、カタカナの文語体表記となっている商法 (1899 年制定)の規定を平仮名・口語体へと表記しなおす作業も行われた。
(2)施行期日
新・会社法は、公布の日より 1 年 6 カ月を超えない日より施行されることとなっているが、立法担当 者は 2006 年 5 月ごろの施行を目途としているということである。また、後述する合併対価の柔軟化に 関する規程は新・会社法本体より 1 年の後に施行されることとなっている。(3)新・会社法で何が変わるか
新・会社法では、実務界の要望などを踏まえつつ、より規制緩和的な方向での実質的改正がなさ れている。新・会社法の創設により、利便性が高まる点としては以下の点をあげることができる。 (ア) 会社設立に関する規制が緩和され、会社設立のための時間やコストが圧縮できる。 (イ) 企業規模やその性質(公開会社か否か)によって機関設計を柔軟にすることができ、運営コス トの圧縮・企業経営の効率化を図ることが可能となる。 (ウ) 企業再編の選択肢が増えたほか、簡易な手続きで再編を行うことが可能となる。 (エ) 会社再建を円滑に行い、経営者に再挑戦の機会を与える仕組みが導入された。 (オ) 新たな会社形態が導入され、起業に際しての選択肢が増えた。 他方で、コンプライアンスの観点から、大会社における内部統制システム構築の義務付けなどの点 では規制強化的な改正も行われている。以下では、これらの点を中心に、実質的な改正点について 触れていく。3.設立に関する規制緩和
株式会社の設立に関しては、最低資本金規制の撤廃、各種手続きの簡素化などを通じ、現行法 に比べ低コストかつ短期間での会社設立が可能となっている。これにより、ベンチャー創業などの起業 活動をより活性化させるものと期待されている。(1)最低資本金規制の撤廃・・・資本金 1 円の株式会社設立が可能に
従来、株式会社および有限会社については、それぞれ、1,000 万円、300 万円の最低資本金規制 が存していたが、新・会社法のもとでこれらの規制は撤廃される。したがって、設立時には出資額を 1 円 とすることも可能である1。ただし、純資産額が 300 万円を下回る場合には、剰余金の配当が禁止され る点には留意を要する。 1 この結果、株式会社を設立する際の最低コストは従来の 1,030 万円程度から 24 万円程度へ大きく引き下げられる(資 本金+公証人の認証手数料(5 万円)+公証人が保存する定款原本の印紙税(4 万円)+登録免許税(資本金 1 円の場 合は 15 万円)(後掲 相澤 33 ページ)。(2)現物出資に関する規制の緩和・・・検査役調査の要件緩和
現行の商法のもとでは、現物出資(有価証券や不動産、動産など金銭以外の財産により出資を 行うこと)については、裁判所が選任する検査役の調査を受けなければならないとされており、例外とし て、設立時の資本金の 5 分の1以下、かつ 500 万円以下の小額出資に関しては検査役調査が免除 されている。新・会社法の下では、資本に対する比率の規制が撤廃され、500 万円以下の現物出資 であれば検査役調査が免除される。(3)その他の見直し・・・発起設立の際の手続き緩和
会社設立に際して、出資財産の保管状況証明のために必要とされていた銀行等による払込金保 管証明については、発起設立の場合には必要でなくなり、銀行口座の残高証明等、任意の方法で 証明すればよいこととなった。これまで、払込金保管証明については銀行等がその発行に慎重で、審 査に「時間を要するといわれていたが、今後は発起設立にかかる時間がより短縮できることになる。4.機関設計の柔軟化、経営の意思決定の迅速化・効率化のための改正
(1)株式会社は規模・性質に応じて柔軟な機関設計が可能に
従来の会社法制における会社の機関設計のあり方は、株式会社については資本金あるいは負債 金額の水準により定められ、有限会社は別途定められていた。しかし、新・会社法のもとでは、有限会 社を株式会社へと一本化したうえで、会社の規模および株式譲渡制限の有無により会社を区分し、 一定のルールを設けたうえで、それぞれの実態に応じて機関設計が出来るようにしている。 このような柔軟化を認めたのは、(ア)従来の商法のもとでは、会社の規模により機関設計が定めら れていたが、仮に大会社に該当するとしても、他の企業の完全子会社である場合にまで、公開会社と 同様の厳格な機関設計を要求するのは合理的ではない、(イ)また逆に、小規模な会社であっても、 任意に大会社と同様の機関設計をすることは差し支えないとするべき、との観点による。 具体的には、図表2のような機関設計をなすことが可能となる。 図表2 会社法制下における会社の区分と機関設計のあり方(主要部分) 現行 新・会社法 取締役の 員数 取締役の 任期 会社形態 譲渡制限 の有無 取締役 の員数 取締役の任 期 監査役設 置会社 取締役会+監 査役会+会計 監査人 無し 2年 委員会等 設置会社 取締役会+三 委員会+会計 監査人 有り 2年、但し10年まで延長可 中会社 無し 2年 小会社(資 本金1億円 以下) 有り 2年、但し10年まで延長可 有限会社 1名でも可 無期限 ⇒ ※取締役会設置会社は3名以上必要 会社形態 株式会社へ統合。 機関設計 ⇒ ⇒ 1名でも 可(※) 監査役会設置又 は委員会設置 上記と、取締役 (会)+監査役+会 計監査人 上記と、取締役会 +監査役(会) 上記に加え、取締 役のみでも可 株 式 会 社 2年(定款 で短縮 可) 大会社 (資本金5億円 以上、又は負 債200億円以 上) 大会社 (資本金5 億円以上、 又は負債 200億円以 上) 取締役会+監査役(監査役 の権限は会計監査権限に 限定) 取締役会+監査役 機関設計 取締役。監査役設置は任 意 3名以上 中小会社 (大会社以 外)(2)会計参与制度の導入・・・中小企業の計算書類の正確性確保のための選択肢
上記のような、機関設計の柔軟化のための改正の一環として導入されたのが、会計参与制度であ る。会計参与は計算書類の作成に携わる役員であり、その資格は公認会計士(監査法人)あるいは 税理士(税理士法人)に限られている。この制度が導入されたのは、特に中小企業においては計算書 類作成実務を税理士や公認会計士が行っているという実態を制度的に取り込み、これら中小企業の 計算書類の正確性を確保することを目的としたものである。会計参与制度の導入は株式会社のみに 認められているが、設置を義務付けるものではなく、会社の裁量にゆだねられている。これは、法自体 が株式会社の信用性を担保するのではなく、信用性を確保させるための仕組みの構築を会社に委ね るという、今回の法改正のコンセプトを端的に示しているものといえよう。(3)取締役会の書面投票による決議が可能に・・・迅速な意思決定が可能に
もともとは、取締役が不在で決議が取れない際にも、書面で可能にしようとして導入された制度であ る。他方で、すべての取締役の参加が必要とされるため、かえって経営判断がより慎重となる(書面決 議が通常の決議より重いものとして扱われる)効果が期待される。(4)剰余金の配当決議・・・配当政策の柔軟性が拡大
現行の商法では、利益配当の回数は通常の配当と中間配当の 2 回に限られており、かつ配当に際 しては、委員会設置会社を除き、株主総会の決議が要求されている。しかし、新・会社法では、一定 の要件のもと、取締役会決議によって配当をなすことが可能とされたほか、配当の回数についても制限 を設けないこととしている。これにより、迅速・かつ柔軟な利益の配当をなすことが可能となっている。(5)内部統制システムの構築に関する決定・開示・・・内部統制は強化へ
規制緩和的な改正が主となっている新・会社法のなかで、数少ない規制強化型の改正の一つが、 内部統制システム構築の決定・開示に関する義務の範囲を拡大したことである。従来、委員会設置 会社にのみ要求されていた内部統制システム構築の基本方針に関する取締役会の決定および開示 義務が大会社(資本金 5 億円以上、あるいは負債 200 億円以上)すべてに課せられることとなった。こ れは、コーポレートガバナンスやコンプライアンス重視の観点から設けられたものである。具体的な内容 は、法務省令において定められることとなっているが、この点について、2005 年 7 月 17 日には、経済産 業省に設置された企業行動の開示・評価に関する研究会より「コーポレートガバナンス及びリスク管 理・内部統制に関する開示・評価の枠組について-構築及び開示のための指針-」(案)が公表され ている。5.組織再編の円滑化のための改正
新・会社法の目玉とも言える組織再編に関する改正点は、主に再編の選択肢を増やすとともに、そ の手続きを簡素化するなど、総じて規制緩和的な内容が主となっている。合併対価柔軟化に関する規 程の施行は会社法本体より 1 年遅れることにはなったものの、日本国内における企業再編のみならず、 外国企業による日本企業の合併をも促進し、ひいては企業・産業界活性化に資するものと期待されている。
(1)合併対価の柔軟化・・・企業再編の選択肢が増える
現行法では、合併・会社分割等の実施に際して、消滅会社の株主に対して交付されるのは、原則 として存続会社・承継会社等の株式であるとされている。このため、存続会社・承継会社の親会社株 式を交付する「三角合併」や現金を対価とする「キャッシュ・アウト・マージャー(現金合併)」を行うことが 出来なかったが、新・会社法では、これらを可能とするための手当てがなされた。この規程については、 会社法本体の施行より 1 年後に施行することとされている(2007 年中にも施行の見込み)。なお、株 式交付の際の税制上の手当てについては、今後検討されることとなっている。(2)簡易組織再編の見直しと略式組織再編制度の導入
・・・より簡易な手続きの再編が可能に
簡易組織再編は吸収合併などの際に、存続会社の株主総会を省略できるもので、現行法では、 組織再編の対象となる資産(株式)が総資産(発行済株式総数)の 5%以下であることが要件である が、新・会社法では 20%まで引き上げられている。また、すでに強固な資本関係にある企業間(一方 の会社が他方の会社の議決権を 90%以上有している場合)の再編については、「略式組織再編」に よって、消滅会社の株主総会も省略できるため、より迅速なM&Aが可能となる。(3)企業防衛策の観点から見た新・会社法・・・使用可能なツールがある
近年、日本では敵対的買収や企業防衛策に対する関心が急速に高まっている。この点、新・会社 法においては、いくつかの利用可能なツールが盛り込まれている。 現行の商法のもとでは、(ア)新株予約権をあらかじめ既存株主に対して発行し、敵対的買収の事 態が発生した場合には、権利行使することにより、買収者の持株比率を希薄化させる、(イ)第三者 割当増資により、買収者の持株比率を希薄化させる、などの手法を取り得る。新・会社法のもとでは、 発行する株式に、さまざまな条項を付することが可能になるなど、株式設計の柔軟性を大幅に増して いることから、これを活用した防衛策の導入がしやすくなっている。具体的には(ウ)黄金株(株主総会 の決議に対して拒否権を持つ株式)を友好的企業に発行した上で、株式の譲渡制限を付ける、(エ) 一定の事由(特定株主の持株比率が、一定の比率を超過した場合など)が発生した場合に、他の株 主に対して株式を交付できる新株予約権を付与する(ポイズン・ピルの一種)、などの手法である。 この点、衆議院においては「敵対的企業買収防衛策の導入又は発動に当たり、防衛策が経営者 の保身を目的とする過剰な内容とならないよう、その過程で株主を関与させる仕組みなど、早急に具 体的な指針を策定し提案すること」とする附帯決議が行われている。(4)事後設立の見直し・・・企業再編をより迅速に
事後設立とは、会社成立後 2 年以内に会社成立前の財産で、営業のために使用すべきものを資 本の5%以上の対価で取得する契約を指す。従来の法制下では、資本充実の観点から、株主総会 の特別決議および裁判所が選任する検査役の調査が必要であるとされていた。しかし、営業譲渡など 企業再編に際しては、新会社を設立したうえで、営業用の財産を移転するケースは頻繁に生じうる一方、検査役の調査には時間とコストを要するため、実務上では、この規制を回避するため、契約を小 額に分割したり、休眠会社を活用したりするといった手法が用いられてきたと言われる。このように過剰 な規制が組織再編に際しての障害となっていること、さらに事後設立規制が日本の独自のもので、国 際的にも例がないことから検査役の調査を廃止した。
6.会社再建の円滑化と経営者に再挑戦の機会を与えるための改正
会社再建を迅速に実現するための仕組みとしては、既に民事再生法(2000 年施行)、改正会社更 生法(2003 年施行)、改正破産法(2005 年施行)などにおいて申立要件の緩和や手続きの簡素化 などの手当てがなされているところであるが、新・会社法においても再建の迅速化を視野にいれた改正 が行われている。(1)全部取得条項付種類株式の導入・・・会社再建の際の減資を円滑に
全部取得条項付種類株式とは、複数の種類の株式を発行する株式会社が、一つの種類の株式 全部を株主総会の特別決議によって取得することが出来る旨の定款の定めがある株式である。この制 度が導入された背景には、会社の再建に際し、100%減資を行う(株主をすべて入れ替えて、新たな 株主を募る)場合、現行法の解釈上、株主全員の同意を得る必要があるとされ、円滑な再建の妨げ となっていると指摘されていたことがある。この点、新・会社法では、株主総会の特別決議を要件として 会社による株式全部の取得が可能となるため、再建をより円滑に行うことになる。この条項に反対する 株主については、株式の買取請求権を与えることによって、株主保護の手当てをしている。(2)取締役の欠格要件の緩和・・・経営者の再起を促す
現行の商法のもとでは、破産手続開始決定を受け、復権していないものは株式会社の取締役とは なれない。しかし、中小企業が破産した場合、経営者が個人保証をしていることにより、経営者自身 が破産に追い込まれるケースが多いといわれる。既に、2005 年 1 月施行の破産法において、債務者が 自由に処分できる自由財産の上限を引き上げたほか、免責制度を抜本的に変更するなどの手当て がなされているが、新・会社法においても、取締役の欠格要件を緩和し、破産宣告を受けている者で も経営者となる途が開かれた。7.新しい会社形態「合同会社」(日本版 LLC)の導入
・・・ベンチャー起業等における企業形態の選択肢広がる
(1)合同会社(日本版 LLC)とは
新・会社法では、ベンチャービジネス等に活用しうる新たな会社形態「合同会社」(日本版 LLC)も 導入されることとなった。LLC(limited liability company)は、もともと米国ワイオミング州において 1977 年に創設され、その後法人税法上組合としての取り扱い(パススルー:法人そのものには課税されず、 構成員に対して課税される)が認められたことから急速に普及し、ベンチャー企業、合弁企業・企業買 収の受け皿会社、投資ファンドなどさまざまな局面において利用されている。その特徴は、(ア)債権者 を含む第三者に対しては全社員(出資者)が有限責任のみを負う、(イ)会社内部の意思決定等については、原則として社員全員の一致によるほか、社員自らが会社の業務執行に当たること、などであり、 内部的には従来の組合組織の特徴を有しつつ、外部的には有限責任という、日本では従来なかった 新しい人的有限責任会社形態である。現時点で、「合同会社」について、パススルー課税としての扱 いが認められるかどうかは不明であるが、ベンチャービジネスが起業する際の組織の選択肢が増えること になり、今後の活用が期待されるものである。ちなみに、出資額 1 円で合同会社を設立する際には、 登録免許税として 6 万円が必要となるものの、定款認証などの手続きは必要とされず、前述した株式 会社よりも低コストでの創業が可能となる。 (2)
有限責任事業組合(日本版 LLP)との違い
2005 年には、新・会社法の成立に先行する形で「有限責任事業組合」(日本版 LLP、limited liability partnership)が導入された(8 月1日施行)。これは、ベンチャービジネスなど新規事業創出の 観点から、(ア)従来、日本の法制下では認められなかった、有限責任の組合組織の組成を可能とし た、(イ)会社内部の関係については、内部関係として、柔軟な機関設計を可能とした、(ウ)パススル ー課税の扱いを認めた、といった特徴がある。 合同会社は、内部的には組合組織の特徴を有し、外部的には有限責任であるという点で、LLP と 共通しているが、(ア)法人格を有するため、法律上の権利義務の主体となりうる、(イ)合同会社は構 成員が一人でも存続可能とされている(LLP は契約であるため、一人では存続できない)、(ウ)合同 会社は株式会社等、他の会社への組織変更が可能となっているが、LLP はそもそも法人ではなく、会 社組織への変更はできない、などの点で性格を異にしている。8.その他の改正点・論点
(1)擬似外国会社について・・・従来の規程からの大幅な変更無し
参議院において、主な論点となったのが、「擬似外国会社」に関する規程である。「擬似外国会社」 とは、日本に本店を置き、または日本において事業を行うこととを目的とする外国会社のことで、日本の 会社法制の潜脱を防止すべく、新・会社法では日本において取引を継続することは出来ないと規定し ている(現行商法の規定では「日本ニ於テ設立スル会社ト同一ノ規定ニ従ウコトヲ要ス」とされている)。 この点について、一部の外国証券会社から、日本における事業活動に支障を来たすのではないか、と の懸念が生じ、海外の報道機関等も交えて政治問題化するに至った。しかし、参議院における大臣 等の答弁において、擬似外国会社の意義を変更するものではないことが言明され、かつ附帯決議にお いて、「既存の外国会社および今後の外国会社を通じた投資に何ら悪影響をあたえるものではないこ とについて、周知徹底を図ること」などの項目が盛り込まれた。(2) 社債について・・・株式会社以外でも発行可能に
これまで社債の発行が可能なのは、株式会社に限られていたが、新・会社法のもとでは、有限会社 が株式会社へと統合され、さらに後述する持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)も社債の発 行が認められた、同法に規程するすべての会社が社債を発行できることとなる。(3) 合名・合資会社制度の改善
・・・社内ベンチャー・ジョイントベンチャーの受け皿として活用可能に
現行法のもとでは、合名会社の社員が 1 名となった場合には、当然に解散するものとされているが、 新・会社法では、この点を改め、一人会社を許容している。また、法人が合名会社や合資会社などの 持分会社の無限責任社員となることは禁止されていたが、これも許容されることになった。これらの改 正により、合名・合資会社を社内・グループ内ベンチャーや、ジョイントベンチャーの受け皿として活用で きることになる。 以上 参考文献など 相澤 哲(法務省大臣官房参事官)「一問一答 新・会社法」2005 年 7 月 商事法務 および同氏による 2005 年 7 月 15 日講演会「新・会社法について」(商事法務、経営法友会、全 国株懇連合会共催) 江頭 憲治郎 「『会社法の現代化に関する要綱案』の解説Ⅰ~Ⅷ」旬刊商事法務 商亊法務 研究会 太田 達也 「新会社法とビジネス実務への影響」 2005 年 2 月 商事法務 小川 一夫 「新会社法による財務への影響」 企業会計 2005 年 8 月 中央経済社 神田 秀樹 「会社法 第六版」 2005 年 4 月 弘文堂 久世 洋一 「敵対的M&A防衛策と財務への影響」 企業会計 2005 年 6 月 中央経済社 成和共同法律事務所 野村インベスター・リレーションズ(株)編 「会社法現代化要綱案のすべて」2005 年 2 月 商事法務 中央経済社編 「新『会社法』詳解」 2005 年 7 月 中央経済社 衆議院・参議院ホームページ 関連記事日本貿易振興機構 「活発化する日本の企業再編」(1・2) Japan Economic Monthly ,2004 年 11 月・12 月 和文:http://www.jetro.go.jp/jpn/reports/05000834、http://www.jetro.go.jp/jpn/reports/05000859
英文:http://www.jetro.go.jp/en/market/trend/jem/0411_jeme.pdf、http://www.jetro.go.jp/en/market/trend/jem/0412_jeme.pdf 同 「日本のベンチャービジネスを巡る環境変化」 Japan Economic Monthly ,2005 年 5 月
和文:http://www.jetro.go.jp/jpn/reports/05000963、
英文:http://www.jetro.go.jp/en/market/trend/special/pdf/jem0505-1e.pdf
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