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自動車産業におけるサプライチェーンと 地域産業集積に関する一考察

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日産自動車九州工場とトヨタ自動車九州に加え,24年のダイハツ車体大 分工場,05年のトヨタ自動車九州第2工場の操業,さらにダイハツの第2工 場建設の具体化によって九州の自動車生産能力は10万台規模に達した。

自動車生産が順調に拡大基調を辿っているのに対して,「九州の完成車 メーカーは繁忙を極めているが,九州経済にとっては単に土地貸し・人貸し に過ぎないのではないか」,つまり地元経済,地元企業への波及効果が目に 見えた成果となって表れてきていないと言う声も囁かれている1)。九州経済

自動車産業におけるサプライチェーンと 地域産業集積に関する一考察

―― 自動車産業における開発・部品調達・

組立生産機能のリンケージから ――

居 城 克 治

はじめに

九州の自動車産業とサプライチェーン 拡大する九州の自動車生産 九州自動車産業の域内部品調達 域内部品調達率50%が示す意味

自動車産業における開発・部品調達・組立生産機能のリンケージ 日本自動車メーカーの開発・部品調達システム

トヨタ自動車における自動車・部品開発と調達システム 地域における開発・調達機能形成の向けての検証

−35−

( 1 )

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産業局の調査によると九州自動車産業の域内部品調達率は50%に留まってお り,完成車メーカーに自動車部品を供給する1次部品メーカー,さらにこの 生産を下支えする地場の2次,3次のメーカーの市場参入が思うように高ま らないという,発展途上国と同様なサポーティングインダストリー未形成と いう産業集積上の問題点がここに来て表面化している。

グローバル企業はグローバルサプライチェーンの最適化を推し進め,トー タルな形での世界的な国際競争力の構築を目指している。一方,このサプラ イチェーンに組み込まれた一国あるいは一地方の産業集積は限定的な生産機 能の役割を担う形となっている。現在,九州域内で操業している自動車メー カー3社の役割は完成車の組立である。これらの工場は生産機能を有するの みで,現在生産されている車種の開発・部品調達権限は関東,中京地域に集 中しているのが実態である。本稿では,九州の自動車産業集積の構造的脆弱 性,生産の川上工程の不在が及ぼす低水準の域内部品調達の実態を把握する とともに,自立型の産業集積形成を目指す地域産業政策のあり方を検証して みる。

九州の自動車産業とサプライチェーン

拡大する九州の自動車生産

九州における自動車生産は15年に開始された。10年台後半には60万台 前後の生産規模で推移してきたが,20年以降拡大のペースを上げ01,02年 には70万台水準,03,04年には80万台水準,05年に90万台規模に達している。

(図表1)

現在,九州には3社の自動車組立工場が稼動しているが,このうち生産能 力が最も大きいのが,日産自動車九州工場(以下日産九州)である。日産九 州は15年にエンジン生産で工場をスタートさせ,76年にダットサントラッ クの生産に着手した。92年に第2工場を立ち上げ,現在の生産能力は年産5

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万台である。生産車種は時代ごとの変遷している。スタート当初はサニー,

パルサーといった小型乗用車が生産の中心をなしていたが,24年時点では ブルーバード・シルフィー,X‐トレイルに加え追浜工場からプリメーラ,

村山工場(21年工場閉鎖)からティーノが生産移管され,さらに新型車の ラフェスタ,ムラーノ,ティアナ等が投入される等,中型乗用車とSUV 種の生産を担当する日産最大の量産拠点となっている。現在の生産規模は4 万台前後で推移している。

第2の生産能力を保有するのがトヨタ自動車九州(以下トヨタ九州)であ る。トヨタ九州では,12年の生産開始当初はマークⅡ専用工場であったが,

その後チェイサー,ウインダム,ハリアーと生産車種を拡大させていった。

現在,第1工場ではクルーガー,ハリアー(ハイブリッド車を含む)の生産 を担当しており,定時生産能力は年産22万台である。現在,最大の量産車種

図表1 九州の自動車生産と全国シェアーの推移

注)全国シェア:九州の乗用車生産台数が全国の乗用車生産台数に占める割合を指す 資料)九州経済産業局調査課

自動車産業におけるサプライチェーンと

地域産業集積に関する一考察(居城) −37−

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はクルーガーで月産1万台のペースで生産が行われており,タクトタイムが 5秒と日本で最も忙しい工場である2)。25年に第2工場が立ち上がり,第 1,2工場をあわせた定時生産能力は05年の30万台から06年には43万台に拡 大,残業を実施すれば年産50万台の能力を有することになった。第2工場で はレクサスブランド車種のISRXが現在生産されている。さらに,06年 にはエンジン工場(年産20万機)を稼動させており,自動車の一貫生産体制 を整えつつあったが,このエンジン工場の生産規模を倍増の年産40万機体制 に拡張する計画が06年12月に発表され,同社はエンジンと車体組立が九州域 内で両立する生産体制となった。

3番手に位置するのがダイハツ九州(元ダイハツ車体大分工場)である。

ダイハツ九州は24年末に生産を開始した(群馬県前橋工場を閉鎖)。生産 開始当初は年産15万台の規模で操業していたが,05年半ばから生産増強を行 い現時点では年産20万台に拡張されている。さらに,06年末には25万台規模 にまで生産能力を拡張する計画で,既に拡張工事が開始された。生産車種は 商用車系のハイゼットカーゴ,ハイゼットトラック,アトレーワゴンに加え,

6年よりコンパクトSUVのビーゴ(トヨタへラッシュとしてOEM供給)

の生産を開始したが,さらに新車種の立ち上げが計画されている。組立ライ ンのタクトタイムは当初1.9分でスタート,その後1.5分,1.5分と短縮し,

現在は1.2分のスピードにアップ,順調に生産を拡大させてきた3)。さらに0 年10月にダイハツ九州は第2工場の建設を発表した。生産規模は23万台で0 年末の操業開始を目指しており,同社の生産能力は約50万台に達する。また,

エンジン工場新設が発表される等,同社においても九州内に軽自動車の一貫 生産体制が構築される。

近年の活発な自動車メーカーの生産能力拡張により,北部九州の自動車産 業集積は10万台強の生産能力を有する,関東・中京地区に次ぐ第3の自動 車生産拠点としての地位を確立したことになる。(図表2)

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( 4 )

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九州の自動車産業集積と域内部品調達

1)九州の自動車産業集積

九州におけるカーアイランド構想が現実味を帯びてきていることを受けて,

自動車部品メーカーや自動車関連企業の九州進出も活発化してきている。

(財)九州経済調査協会の調査では,九州7県への自動車部品産業の新規立 地や増設・移転件数は26年1〜10月期だけをみても42件を数えており,九 州の自動車産業集積は一層厚みを増して来たと指摘している4)。トヨタ九州 のレクサス工場やエンジン工場の立ち上げを受けて,トヨタ系列のデンソー,

アイシン精機,トヨタ紡織,トヨタ合成,小糸製作所,フタバ産業,シロキ 工業,豊田鉄工等が新規進出,新工場建設,設備増強に乗り出している。さ らに,トヨタ九州はエンジン第2工場の建設を発表した。同社は九州域内で

図表2 九州の自動車メーカーの生産車種推移

1992 1995 1998 2001 2004 2005

日産自動車 九州工場

サニー テラノ シルビア パルサー ダットサントラック サファリ

サニー(全面移管)

テラノ シルビア パルサー ダットサントラック

サニー テラノ シルビア パルサー

ブルーバードシルフィ テラノ エクストレイル シルビア パルサー サニー プリメーラ ティーノ

ブルーバードシルフィ テラノ エクストレイル ティアナ アルメーラ サニー ラフェスタ プリメーラ プレサージュ ムラーノ

ブルーバードシルフィ テラノ エクストレイル ティアナ アルメーラ ラフェスタ プリメーラ プレサージュ ムラーノ

トヨタ自動車 九州

マークⅡ マークⅡ チェイサー

マークⅡ チェイサー ウィンダム ハリアー

チェイサー ウィンダム クルーガー ハリアー

クルーガー ハリアー

クルーガー ハリアー レクサスIS

ダイハツ車体

大分工場 ハイゼット ハイゼット

アトレー 注)パルサーは国内向け出荷は打ち切り。アルメーラの名前でヨーロッパに輸出

原資料)九州経済調査月報18.2,各メーカーへの聞き取り

資料)「九州の自動車産業の現状と部品調達構造」26年(財)九州地域産業活性化センター 自動車産業におけるサプライチェーンと

地域産業集積に関する一考察(居城) −39−

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0万機のエンジン生産を行うことなり,今後エンジン部品関係の企業進出も 予想される。

6年時点において,九州域内(山口県を含む)では83の自動車関連事 業所が活動している。この内,関東・中京・関西等からの進出企業が43事 業所,九州域内の地場企業が42事業所とほぼ半々の構成となっている5)

こうした九州の自動車産業集積は,大別して3期の時期に集中的に形成さ れてきた。第1期は15年以前で,本田技研熊本製作所や日産自動車の進出 に合わせる形で88件の進出を数えることが出来る。第2期はトヨタ九州の進 出時に符合する16年〜97年にかけてであり,19件の進出を数える。第3 期は18年以降でダイハツ九州の進出に呼応した形で企業進出が拡大,91件 を記録している6)。これら企業の進出先を九州各県別に見ると,第1期は熊 本,福岡両県で65%以上を占め,次いで大分県の順である。第2期は福岡,

鹿児島,大分,宮崎,熊本の各県に分散。第3期は福岡県に過半数近くが集 中し,次いで大分県に進出している。この様に,九州の自動車産業集積は福 岡,大分,熊本の北部九州地域に集中する形で形成されてきている。

2)九州自動車産業の域内部品調達

!

トヨタ九州の域内部品調達

九州域内での部品調達体制

トヨタ九州では,クルーガー,ハリヤーに加えレクサスシリーズの生産を 担当しているが,生産拡大のペースは急で50万台に届く勢いである。トヨタ 九州の役割は,トヨタ自動車の国内5番目の組立工場であり,基本的には生 産機能を有するのみである。現在生産されている車種の開発,部品調達の決 定は中京地区で行われている。

最大量産車種であるクルーガーでみると,トヨタ自動車が開発・設計した 主要自動車部品はエンジンの他,車体部品,バンパー等の化成品,プレス部

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品,樹脂製品等で,主に車体のデザインを形づくる部品である。これに対 してトランスミッション,電装品,駆動・懸架部品,内装部品はティア1

(Tear1:T1)の1次自動車部品メーカーが開発・設計・生産・納入・品質保 証を担当している7)

生産指示に従って各自動車部品はトヨタ自動車九州にJITで納入されるが,

自動車部品自体の生産拠点をどこに置くかはトヨタ自動車自身で意思決定で きる部品とT1の1次部品メーカーの意思決定に左右される部品に大別され る。現状では多くの自動車部品が中京地区で生産された後,トヨタ自動車の 愛知県内の部品デポに集結され,九州に搬送されてきている。

九州域内での調達先を見ると,1993年当初41社であった九州内の取引先

(山口,広島地区を含む)は25年時点では85社に,将来は10社に達すると 見られ,九州域内調達率の向上に伴い,九州域内に立地する自動車部品メー カーとの取引は拡大して来ている。今後の調達方針であるが,第1に高機能 部品・電子部品の域内調達の拡大が掲げられており,具体的には中京地域の T1の1次部品メーカーの九州進出,既九州進出の1次部品メーカーによる 生産品目の拡大,中京地域の1次部品メーカーと技術提携して九州地場企業 をサプライヤーとして育成していく方向が打ち出されている。

域内部品調達比率

トヨタ九州では,これまで九州で生産される車種に必要な自動車部品の九 州域内調達率の向上を部品調達戦略の基本に置いてきた。車両台当たり原価 比でみた九州域内調達率の推移を見ると,生産開始時の13年時点では30%

に留まっていたものが,第2工場を立ち上げた25年には48%に拡大してき ている。さらに26年には福岡県苅田にエンジン工場を建設し,V6型エン ジンを年産22万機の規模で九州工場向けに供給を始めたことから,近い将来 0%にまで高まっていくことが想定される。

自動車産業におけるサプライチェーンと

地域産業集積に関する一考察(居城) −31−

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域内調達部品

トヨタ九州における自動車部品の域内調達状況は,先述したように現状で 8%,エンジン生産を開始して60%に引き上げられている。この域内調達さ

れる自動車部品の中でトヨタ自動車が開発・設計した主要自動車部品の中で,

車体プレス部品,化成品,機械加工部品等に関しては相当程度九州への生産 移管が行われてきており,これ以上トヨタ自動車1社の意思決定だけでは域 内調達率を引き上げが困難な水準にあるといえる。トヨタ自動車が関与する 自動車部品の中で残された最大の部品はトランスミッションである。

クルーガーを例に現在域内調達されている部品を見ると,エンジン部品で はエキゾーストパイプ,エアクリーナ。駆動・懸架系部品ではステアリング ホイール,ブレーキチューブ。電装品・電気部品ではヘッドランプ,ターン シグナルランプ,リヤコンビネーッションランプ,リヤワイパー,ヒータコ ントロール・ユニット,クーラーユニット,A/Cコンプレッサ,エアバッグ。

これに対して車体部品ではフロアパネル,ダッシュパネル,シートベルト等 一部を除いて大半が域内調達に切り替わっている8)9)

!

日産九州の域内部品調達

九州域内での部品調達体制

九州日産では第1・2工場を併せて年産52万台の生産能力を保有している が,近年は40万台水準の生産実績に留まっている。九州工場の年間出荷額は 0億円規模で,この内輸出が40億円に達している。地域経済の貢献で見 ると福岡県内からの自動車部品購入金額は40億円,物流費・エネルギー費 は30億円,材料購入費は60億円に達している。

自動車部品の調達状況を見ると,高機能部品の多くが日産自動車本体から の供給となっており,日産自動車いわき工場,日産工機からエンジンが,ま た日産自動車横浜工場からエンジン,アクスルが送られてきている。これら

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( 8 )

(9)

の高機能部品はその他の関東地区から調達される機能部品と併せて船便で送 られてきており,物流は九州急行フェリーが追浜・御前崎・苅田・大分の ルートで周3回の運行で行われている。この他,足回り部品等はJRによる 鉄道便で日1,2便の輸送となっている。

日産九州の九州域内の調達先は,その多くが九州工場を中心とした半径5 km圏内に位置している。主要な1次部品メーカーの集積地を見ると,苅田 地区にはアルティア橋本(モール・ホィールキャップ),矢崎総業(ワイ ヤーハーネス),パイオラックス(クリップ・ブラケット),九州ホイール工 業(ロードホイール),日立金属工業(ロードホイール),臼井国際産業(ブ レーキチューブ)等が,中津地区にはCKK(マフラー・ヒーター),ヨロズ

(フロントメンバー・エンジンブラケット),キヌガワ大分(ホース・ラ バー),市光工業(アウターミラー),富士機工(ステアリングメンバー) リズム九州(スタビロッド)等が,宇佐地区には河西工業(ドアトリム) CKK(インストルメントパネル・コンソール),住友電気工業(ワイヤーハー ネス)等が,築上地区にはナガタコウギョウ(ペダルブラケット・パネル部 品),日本プラスト(ステアリング・内装部品),ユニシア九州(ステアリン グリンケージ)等が集積している。この他,北九州の小糸製作所(ヘッドラ ンプ),勝山地区のユニプレス九州(パネル部品),犀川地区の大井製作所

(ドアロック・インサイドハンドル),豊津地区の錦陵工業(シート)等,現 在43社,46事業所を数える。これらの主力取引先は九州地域の協力会組織と して新浜会を組織している。

域内部品調達比率

日産九州では,現在50%程度に留まっている域内調達率を将来的に60%か ら70%程度にまで高めたいとしており,工場内の組織として地場調達専門 チームを発足させた。組織は3人の専門スタッフと生産部門,品質保証部門 から20人程度の兼任スタッフからなり,地場企業に対して生産改善や品質保

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地域産業集積に関する一考察(居城) −33−

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証体制の構築に向けての指導や本社の購買部門への紹介等を通じて有力地場 企業の発掘を進めていく方針を打ち出している。

サンルーフ,ドアミラー,ラジエータグリル等も九州域外からの調達部品 であるが,必ずしも九州で調達できない部品ではない。部品メーカーは物流 費と九州への新規投資との経済効率を常に検討している。例えば,ユニプレ スで生産を担当しているフーエルチューブは特殊な溶接設備が必要であり,

現時点では全量関東で生産し,九州に送られてきている。このコストとして 年間2〜30万円の物流費が計上されているが,フーエルチューブを九州で 生産するためには新たな設備投資費用として70万円が必要となるが,現状 ではどちらが得策と判断するのは難しい水準にある。

域内調達部品

日産九州の最大量産車種であるエクストレイルを例に見ると,エンジン関 係ではエアクリーナ・ダクト,フーエルタンク,フーエルパイプ,ラジエー タ,エンジンマウントといった周辺部品が域内調達されているもののエンジ ン本体関連の部品は全て域外からの調達となっている。こうした傾向はパ ワートレイン・シャーシ関係,エレクトリカル関係にも当てはまる。これに 対して車体部品の多くは域内調達に切り替わっており,トヨタ九州と同様な 域内調達構造を見せている10)11)

!

ダイハツ九州の域内部品調達

ダイハツ九州は24年末に生産を開始したが,逐次生産増強に取り組んで おり06年末には25万台規模にまで能力拡張されている。部品調達先は,関東,

中京,関西,広島,北九州,中津近郊の6地域に分布しているが,工場から 半径1km以内の広島,北九州,中津近郊の3地域からの調達が荷量ベー スで75%,金額ベースで50%に達している。

現在,九州域内に立地している自動車部品メーカーは40〜45社である。主

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要自動車部品で見ると,エンジン,トランスミッション,足周り部品はダイ ハツ工業竜王工場で生産され,大阪の池田デポから船便で送られてくる。そ の他の機能部品は中京地区での調達が多く,トヨタ九州へ送られてくる船便 に同乗して送られてきている12)

ダイハツ九州の域内調達構造も基本的にはトヨタ九州,日産九州と同様で あり,輸送効率の悪い大型の車体部品から域内調達が展開されてきている。

域内部品調達率50%が示す意味

1)50%に留まる九州域内部品調達比率

これまで見たように,九州に立地する3大完成車メーカーの九州域内調達 率は押しなべて50%前後の数値に留まっているのが実態である。

世界最高レベルの国際競争力を保有する日本自動車産業の強さは,自動車 の開発・最終組立を行う完成車メーカーと自動車部品の供給を担う部品・材 料メーカーさらに自動車部品の生産を下支えする中小企業群が有機的に連携 し,かつ単に生産活動の分業を行うのではなく,製品開発・試作,生産設 備・技術の高度化,VA/VE活動を通じての生産コスト低減等,幅広い分野 で企業間の協力関係が構築されている点にある13)

事実,トヨタ自動車の企業集積地である中京地区,日産自動車,ホンダ技 研の企業集積地である関東地区においては,完成車メーカーを頂点として自 動車部品メーカー,さらに多くの中小企業群が高度な生産分業システムを構 築しており,非常に高い地域生産能力を有している。

トヨタ自動車では,自社の協力会組織として協豊会(自動車部品担当) 栄豊会(生産設備担当)を組織している。協豊会それまで関東・東海・関西 の地域別に組織されていた体制を1999年以降一本化し,ユニット部品部会

(エンジン,パワートレイン関連部品,足回り,タイヤ,ホイール,オーディ オ等の自動車部品担当)とボディ部品部会(内外装品,塗料,接着剤,原材

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料等の担当)2部会に再編成した。24年現在,ユニット部品部会には1 社が,ボディ部品部会には94社の,合計で23社が組織されている。栄豊会 は生産設備に関する協力会組織で,ボディ設備部会20社,ユニット設備部会 8社,施設部会32社,物流部会23社で,合計13社が協力会に加盟している。

このような協力企業群の組織化は協豊会に所属する有力自動車部品メー カーにおいても同様に行われており,トヨタ自動車傘下のデンソーでは直接 取引のある製品,部品,型,治工具,設備等生産を担う,完成車メーカーか ら見て2次の取引先に当たる81社をデンソー飛翔会として,中京地区を中心 に組織している。協力会の中では,経営課題等を意見交換する経営研究部会 QCサークル発表会,品質研究会が行われる品質研究部会,技能競技大会 や技術研修,モノづくり研究会が行われるモノづくり研究部会,海外進出研 究会や中国・アセアン研究会が行われる海外研究部会といった活動が展開さ れており,相互の競争力向上が図られている14)

こうした自社の調達先を近隣の地域内で組織化する動きは,さらに下部構 造にまで及んでいる。デンソー飛翔会加盟各社もそれぞれ完成車メーカーか ら見て3次の取引先を組織化しており,日本の自動車生産システムは完成車 メーカー,自動車部品の生産を担当する1次部品メーカー,自動車部品のユ ニット生産や部品加工を担当する第2次の協力企業群,さらに鋳・鍛造,プ レス加工,機械加工,プラスチック成型加工,電機・電子部品加工,熱処理,

メッキ加工等の専門加工を担当する3次,第4次の協力企業群が連なる重層 化,多層化された生産構造を地域の産業集積として形成してきており,特に 中京,関東の2地域に顕著に見られる。

九州経済産業局の調査によると,それぞれの地域内の完成車メーカーと自 動車部品メーカーとの緊密な取引依存関係の存在を示す指標としての域内部 品調達率は,日産自動車,ホンダ技研の生産拠点である関東,トヨタ自動車 の生産機能が集中する中京地域で特に高く84%に達しており,またダイハツ

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の主力工場がある近畿,三菱自動車,マツダの生産拠点である中国地域にお いても67〜68%に達している。これに対して,九州地域における域内部品調 達率は51%という低水準に留まっており,自動車産業集積,特に自動車部品 産業の集積が未だ不十分の状況にあるという結果が示されている15)(図表 3)

つまり,九州で必要な多くの自動車部品が関東や中京地区の生産機能に依 存しており,部品生産の中核を担うメーカーが九州に存在していないという 九州の自動車産業集積の構造的脆弱性が表面化してきている。このことはト ヨタ,日産,ダイハツ各自動車の協力会組織加盟企業の九州進出状況からも 裏付けられる。トヨタ自動車の協力会組織であり協豊会加盟企業は23社,

内九州進出企業は53社,26.1%である。ボデー部品部会では94社中34社,

6.2%の進出比率であるのに対して,ユニット部品部会では19社中19社,

7.4%の進出に留まっている。日産自動車の協力会組織日翔会では15社中 7社,30.8%の進出比率,ダイハツ自動車の協力会組織協友会では18社中 3社,26.8%と同様の傾向を示している。(図表4)

図表3 地域別に見た部品調達におけ る域内からの調達比率

(%)

域内調達率(%)

原資料)九 州 経 済 産 業 局「24 九 州経済Rebiew & Preview」

資料)「九州の自動車産業の現状と部品調 達構造」26年(財)九 州 地 域 産 業 活性化センター

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地域産業集積に関する一考察(居城) −37−

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トヨタ九州の最大生産車種であるクルーガーの事例で述べたように,域内 調達されている自動車部品の中でトヨタ自動車が開発・設計を行った車体プ レス部品,化成品,機械加工部品等に関しては相当程度九州への生産移管が 行われている。

しかし,現在域内調達できていない自動車部品の多くがエンジン部品,電 装部品,駆動・懸架系部品といった高機能部品と呼ばれる部品群で,その多 くがT1の自動車部品メーカーが開発・設計・生産の主導権を握っている部 品で占められている。小糸製作所が佐賀県に進出しヘッドランプの生産拠点 を確立したことによって,これまで九州域内で調達できなかったヘッドラン プ現地調達化が可能になったように,九州域内調達の鍵を握っているのは T1自動車部品メーカーの九州戦略のあり方で,その鍵を握っているのは九 州での現地生産化に必要となる投資の採算性の問題である。九州全体では年 産10万台に自動車生産規模が達成されるが,自動車部品メーカーにとって は1社の納入先自動車メーカーで1車種,数アイテムの自動車部品生産では

図表4 協力会加盟部品メーカーの九州進出状況

(単位:社,%)

加盟企 業数

九州進出 企業数

九州未進出 企業数 トヨタ自動車:協豊会 3(26.1%) 10(73.9%)

(ボデー部品部会) 4(36.2%) 0(63.8%)

(ユニット部品部会) 9(17.4%) 0(82.6%)

日産自動車:日翔会 7(30.8%) 18(69.2%)

ダイハツ自動車:協友会 3(26.8%) 15(73.2%)

(鋳鍛切削部会) 5(13.2%) 3(86.8%)

(プレス部品部会) 1(57.9%) 8(42.1%)

(機能部品部会) 2(16.7%) 0(83.3%)

(車体部品部会) 5(36.2%) 4(63.8%)

資料)「九州経済調査月報」25年10月(財)九州経済調査協会

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新規投資を採算ラインに乗せるのは困難であり,逆にコストペナルティーの 問題が発生してくる。電装品,サスペンション,ブレーキといった機能部品 の多くが比較的小型で荷姿が良いため,コストに占める物流費の割合が軽微 といわれており,部品に納入価格に対する物流費の割合が1%以下であれば 九州進出のメリットは発生しないと指摘されている16)(図表5)

自動車産業における開発・部品調達・組立生産機能のリンケージ

前章で述べたように,九州の自動車産業集積は組立・生産機能に集中して いる。九州域内からの部品調達比率が低率に留まるという構造的脆弱性は,

自動車産業のサプライチェーンの川上組織である開発・調達機能の不在にそ 図表5 九州地域を中心とした自動車産業の全体図

原資料)ヒアリング,資料等より作成

資料)「九州の自動車産業の現状と部品調達構造」26年(財)九州地域産業活性化センター 自動車産業におけるサプライチェーンと

地域産業集積に関する一考察(居城) −39−

( 15 )

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の多くが起因していると指摘することが出来る。以下では,日本自動車メー カーにおける自動車開発・部品調達・組立生産という一連のサプライチェー ンがどのようなシステムでリンケージされているのか,また九州における自 動車・部品開発機能の醸成がどのような方向で可能性を見出すことだ可能と なるのか,検証してみる。

日本自動車メーカーの開発・部品調達体制

自動車メーカーにおける自動車開発と自動車部品調達は密接な関係を持っ ている。新型車の開発は,販売・マーケッティング部門からの情報を基に,

製品企画部門が具体的な新型車の開発を企画し,経営トップの正式承認を受 けた後に,開発部門に開発指示が出される。開発部門では新型車に要求され る性能,外形や室内のデザイン,機械構造の検討を行い,さらに部品ごとに 要求される機能,性能,目標原価が決定される。

世界の自動車メーカーにおける自動車・自動車部品の開発・調達活動は基 本的に2つの方式で行われている。

第1は貸与図面方式と呼ばれる部品調達である。この開発・調達方式は,

自動車メーカーが必要とする自動車部品の開発・基本設計,詳細設計を自ら 行い,自動車部品メーカーに作成した図面を供与して生産を委ねる方式で,

主に欧米の自動車メーカーで広く採用されている。

第2は承認図面方式と呼ばれる部品調達である。この開発・調達方式は,

自動車メーカーは必要とする自動車部品の構想や必要スペックを提示するの みで,自動車部品メーカーがその要求を基に部品を開発・製品設計・生産設 計。品質保証を行い,自動車メーカーの承認を得て生産を行う方式であり,

主に日本の自動車メーカーで採用されている方式である13)

日本の自動車メーカーは,ユーザーニーズの多様化と需要変動に素早く対 応するために,数多くの新型車を同時並行で且つ短期間で効率的に開発する

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( 16 )

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体制を構築している。これまで既存車種のフルモデルチェンジに際して必要 とされる開発期間は24ヶ月とされてきたが,現在では18ヶ月程度に短縮され てきており,また既存車種を活用して(同一のエンジン,プラットフォーム をベースとして)派生車種を開発するケースでは12ヶ月程度の開発期間で新 型車を立ち上げている16)

こうした短期間の間で新車開発に要求される品質,原価目標等を達成して いくためには,設計の基本構想策定期から自動車メーカーの設計・購買・製 造部門に自動車部品メーカーも参画して開発・設計内容の検討を行う必要が ある。この作業をスムースに行うために,日本の自動車メーカーでは新型車 の開発当初からT1の自動車部品メーカーからゲスト・エンジニアと呼ばれ る開発人員を参画させて,共同で新規に必要となる自動車部品を開発するデ ザイン・インと呼ばれる開発体制がとられている。デザイン・インに際して は,自動車部品メーカーが保有している開発技術,マーケティング技術,生 産技術,ソフトウエア技術等が全面的に投入され,基本計画の立案・製品の プロフィール作り・設計・試作・実験・生産ライン設計・コスト計画・納入 計画等を自動車メーカーと共同で行うことによって,新型車の開発コンセプ トと必要部品の完全なマッチングが図られる。また,開発期間を通じて

VA/VE技術を駆使することによって目標価格の達成を図り,さらにデザイ

ン・開発・試作・量産化の各段階で徹底した品質追及を行うことによって高 度な品質水準の維持,徹底が図られている。

新車開発におけるゲスト・エンジニアの投入状況は自動車メーカーによっ て異なるものの,トヨタ自動車ではエンジン,駆動系の部品開発では自社の 開発スタッフが中心戦力を構成しているものの,車体設計では半数近くがゲ スト・エンジニアで占められ,内装部品においてはデンソー,アイシン精機,

トヨタ紡織,豊田合成等T1の内装部品メーカーの開発要員が中心となって 開発が進められ等,自動車・部品開発においてゲスト・エンジニアは非常に

自動車産業におけるサプライチェーンと

地域産業集積に関する一考察(居城) −31−

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重要な役割を担っている。(図表6)

こうした新車開発時における共同開発の体制は,自動車部品メーカーとそ の下部の生産機構として位置づけられる地域の中小企業を中心とした2次,

3次の協力企業群との間でも緊密な関係で展開されている。自動車部品の トータルとしての開発や機能設計は自動車部品メーカーの担当領域であるが,

部品単体や部品ユニットの試作・開発・生産設計を協力企業が担当するケー 図表6 自動車部品開発における承認図・支給図方式の差異

資料)「機械産業の取引慣行に関する国際比較研究」12年(財)機会振興協会経済研究所

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スも多く見られ,また共同開発期間を問わず新規の製品技術,新規の加工技 術,品質・価格へのVA提案等が積極的に求められる。

九州の自動車産業集積を形成する企業にとっては,各自動車メーカーの本 社地区で展開される開発・調達・組立生産のサプライチェーンに対して,開 発スケジュールを先取りできる段階から自動車部品メーカーにアプローチを 行ってコミットしていくかが,直近の課題となっている。

トヨタ自動車における自動車・部品開発と調達システム

トヨタ自動車における新車開発と部品調達システムは,以下の様な状況に ある。

自動車生産に必要な全部品の内外製比率は,内製30%・外製70%の比率と なっている。現在,他の自動車メーカーが外製比率をより高めていく傾向を 強めている中で,トヨタ自動車は技術のブラックボックス化を回避するため 内製比率を維持し続けている。

5年におけるトヨタ自動車の全世界における部品・資材・材料等の調達 は11兆10億円の規模に達しており,この内自動車部品が8兆90億円を占 めている。調達先の国内外比率は国内が56%で5兆円規模,海外調達が44%

の3兆90億円となっているが,近年海外での自動車生産が急拡大を受けて 部品調達の海外比率も急上昇してきている。

調達先企業数は全世界で30社に達しており,この内自動車部品メーカー が20社を占めている。トヨタ自動車では有力自動車部品メーカーが協力会 を組織しているが,日本における協豊会と同様な組織が世界的に構築されて おり,北米地域では10社が,欧州で46社,タイで12社が参画,フィリピン,

インドネシア,南アフリカでも同様な組織が存在している。

トヨタ自動車の調達組織は,全世界で10名の規模で組織されている。日 本本社には40名,北米のシンシナチ統括会社に27名,欧州のブラッセル統

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括会社に10名,タイに10名,中国・天津に70名,広州に40名の規模で展開 されている。これらの組織は基本的に当該地域で生産される車種の部品調達 権限を保有している。しかし,調達戦略の決定権は本社が保有しており,か つ重要保安部品や承認部品に関しては本社技術部が保有している世界有力自 動車部品メーカーの情報をベースに,部品アイテムごとに数社が選定されプ レゼンテーションを基に1社に絞り込みが行われる。

以下では,トヨタ自動車における新車開発と部品調達の流れを整理してみ る。

第1段階である企画段階での作業は以下のように進められる。

新型車両開発構想を基にトヨタ自動車社内の設計技術者によって形状コン セプト・性能コンセプトが決定され,これを基に要求性能と目標原価が決定 される。この技術開発を担当するセクションは技術部で,技術部から仕入れ 先の選定,決定依頼が調達部に出される。調達部は調達に関わるすべての権 限を保有しており,開発・調達・量産化に至る一連の作業は技術部・調達部 の共同作業で展開される。この時期からトヨタ自動車と自動車部品メーカー とのコンタクトが開始されるが,まず調達部が部品アイテムごとに,仕入れ 先データベースを基に,世界の有力自動車部品メーカーの中から(例えば ヘッドライトのケースでは小糸,スタンレー,フィリップス,ビステオン,

デルファイ,ボッシュ等)3〜4社がピックアップされ,見積価格,デザイ ン力,開発力を競うコンペが行われる。自動車部品メーカーからの技術プレ ゼンテーッションを基に,さらにデザインの煮つめ,仕様の掘り下げ,図面 精度の引き上げが行われ,技術部・調達部の両者による総合判断によって1 社が決定される。総合判断材料として,見積依頼,サンプル品評価,候補自 動車部品メーカーの品質,原価,納入・生産対応力,技術力,経営状況等が チェックされる。その後,選定された自動車部品メーカーからのゲストエン ジニアとトヨタ自動車との間で,設計日程,図面・要求性能等の発行日程

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(試作から量産にいたる)が決定される。次いで,要求性能・目標原価の提 示と達成方法の検討が行われる。さらに,試作品生産日程や評価項目・内容・

日程・役割分担等の項目が両者の間で検討される。

第2段階である試作段階では以下のような作業が行われる。

自動車部品メーカーは合意されたスケジュールに沿って試作品を開発し,

トヨタ自動車における性能・機能評価,品質・造り易さ・組み付け作業性評 価を受ける(例えば原価経歴を追いかけ目標原価にミートしているかチェッ クを行い)。技術評価,目標原価の達成状況により改良が必要な場合,双方 が原因追求,対策立案,VE活動を行い,再度設計・試作・評価が行われる。

トヨタ自動車からの承認が得られた後,生産準備が行われ,さらに量産ベー スの原価見積もりが行われる。

最終段階である量産準備・量産段階では以下のような作業が展開される。

試作段階での技術・コスト評価を基に,採用車種,採用時期,生産量を勘 案して量産手配が可能な自動車部品メーカーに型発注が行われる。その後量 産型,量産設備,量産工程において量産時と同じ作業者,作業手順,量産時 のタクトタイムで製造トライが行われる。同時に部品搬入車両や部品の生産 指示,部品の荷姿,収容数等の手配・物流トライが行われ,量産時点での問 題点の抽出が行われる。取引基本契約には,発注,納入,価格,支払い,品 質保証,知的財産権,機密保持等の項目が盛り込まれ,量産が開始される。

(図表7)

トヨタ自動車では,このように技術部・調達部・自動車部品メーカーの3 者が共同で開発作業を展開している。トヨタ自動車では全自動者部品アイテ ムに技術者が存在しており,自動車部品メーカーからのゲストエンジニアと 技術的な摺り合わせが行われるとともに,調達部との間で目標価格に対する チェックが行われる。このように,技術部と調達部はリンクした形で活動を 行うため,同一あるいは非常に近接した地域(建物)で作業が行われている17)

自動車産業におけるサプライチェーンと

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図表7トヨタ自動車における自動車開発・部品調達プロセス 資料)トヨタ自動車「サプライヤーズガイド」

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地域における開発・調達機能の形成に向けての検証

九州の自動車産業集積が組立生産機能に特化した集積から脱却し,自立し た産業集積を形成していくためには,自動車のサプライチェーンの川上行程 である開発・調達機能を九州域内で育成・醸成していく視点が必要となって くる。

トヨタ自動車の世界各地に展開された開発・調達機能の役割は,以下の様 に整理される。

本社の開発・調達機能は,全世界で展開される開発・調達機能の戦略立案 と調整。日本市場向けに開発される新型車(輸出車を含む)の開発・調達機 能。Allトヨタ社の開発・調達人材の教育・育成等があげられる。

北米・欧州における開発・調達機能は,それぞれ北米,欧州市場向け車両 の開発・調達を担当している。

タイに新設された開発・調達機能は,アジア及び他の発展途上国市場向け であるIMV車両の開発・調達を担当している。

トヨタ自動車におけるトヨタ九州の位置づけは,基本的に車両組立会社で あり,トヨタ系列の車体メーカーであるセントラル自動車,トヨタ車体,関 東自動車と同列におかれている。

九州で生産される車種の80%は海外市場向けの輸出車で20%が国内市場向 けに出荷されている。これらの車両の開発・調達機能は本社に所属するもの で,九州地域が役割分担する可能性を見いだすことは困難である。このため,

九州地域内で形成を目指す開発・調達機能の方向性は別の視点からのアプ ローチが必要となってくる。以下で,2ケースの事例を検証してみる。

[事例研究1 台湾 国瑞汽車]

国瑞汽車は,14年にトヨタ自動車,日野自動車と台湾資本の合弁企業と して設立され,日本からの技術移転が積極的に展開された海外子会社である。

JIT方式に代表されるトヨタ・プロダクション・システム(TPM)の国瑞 自動車産業におけるサプライチェーンと

地域産業集積に関する一考察(居城) −37−

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汽車に対する技術移転は,90年代に入って積極的に展開され,特に94年から 8年にかけて日本から専門家を招聘し,現地への一層の定着化が図られてき た。98年以降TPMはかなりの水準で技術的に消化されてきており,プレス 部品の在庫も2.0〜2.5日分の保有と,同社の管理水準の高さを裏付けている。

現在,国瑞汽車では原価・品質・納期管理技術の高度化と輸出開拓を目標に 掲げているが,トヨタ自動車の海外生産プラントの中でもPPM管理水準で 0以下を達成している工場は国瑞汽車のみである。同社はPPM40の水準を 目標に置けるほど,管理水準は高まっており,完成車の品質レベルで世界の トップクラスを争える力をつけてきている。

また,こうした管理技術の高度化を目指す動きは,部品サプライヤーに対 する技術指導となってTPMの企業間移転が進められている。国瑞汽車の生 産体制を見ると,必要部品の70%が現地調達,30%が国瑞汽車の内製となっ ており,車体,車体部品,インストゥルパネル,樹脂バンパーの他,治工具 等が内製されている。台湾製自動車部品は64社から調達されているが,この 内純粋に台湾メーカーと呼べる企業は9社のみで,残りの55社は何らかの形 で日本企業との繋がりを有している。このため,TPMへの対応能力は高く,

現在全サプライヤーの直行率目標,すなわちラインオフの時点で手直しなし の比率,を90%に置いており,また国瑞汽車が磁気テープによって出す発注・

納入データにしたがって1日8便の納入体制が確立されている。

また,国瑞汽車ではこうした生産技術の移転だけではなく,研究開発機能 の移転にも注力し始めている。同社では,台湾市場に投入されている車種に 日本とは異なった台湾テイストを付加し,台湾市場及びアジアの華人市場に おける,競争力の向上を図っている。台湾テイストの三種の神器として,皮 製のシート,木目のインパネ,アイボリー色の内装があげられるが,これら に必要な車両・部品開発・調達施のためにR & D棟を建設した。商用車と して開発されたZaceRV車仕様への変更やCorona,Tercelに加え21年

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