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寝返り性向上マットレスの開発

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は投稿論文(受付′:2004年7月14日)∫

寝返り性向上マットレスの開発

Development of the Mattress improved in the performance of turning over in bed

山田浩 上西園武良 角谷明子

Hiroshi YAMADA Takeyoshi KAMINISHIZONO Akiko SUMIYA

寝返り性向上と軽量化をねらいとして、エラストマーを弾性体に利用したマットレスを開発した。弾 性体としてオイル含有スチレン系エラストマーを採用し、形状・特性を柔軟性・弾性力が最適となるよう に設計した。身体の荷重を受けた際に隣接する弾性体どうLが互いに指し合い1つの面として体を支え、

3次元の動きに対しても柔軟に対応することができる。その結果、寝返り性を向上し、良好な体圧分散 性を確保できた。併せて、一般の金属スプリングマットレスと同等まで軽量化することができた。

Wehave developed a flexible-fit mattress to achieve the improvement of turning over in bed and the weight reduction by utilizing the elastomer blocks. The shape and characteristics of the elastomer blocks are optimally designed to support human body by the flexible plane. Since the flexible mattress can adjust to the 3-dimensional motion of the human body, we improved not only the basic mattress performance of turning over in bed but also the pressure distribution.

In addition, we realized the mattress weight equivalent to the conventional spring mattress.

1.はじめに

′1日8時間眠るとして、人生80年のうち合計27 年間は眠っていることになる。人生の3分の1近く を占める睡眠時問をより質の高い睡眠にすることは、

健康なからだと豊かな人生を得ること七もある。

睡眠には脳の疲労回復とからだの疲労回復の2.つ の役割があり、それらをどちらもうまく回復させる ことが重要である。この睡眠は、ノンレム睡眠(深 い眠り)、レム睡眠(浅い眠男 と呼ばれ、一晩に 数回繰返され、その切り替り時に寝返りが無意識に 行なわれる。これが必要な寝返りと言われるもので ある。

寝返りには必要な寝返りと不要な寝返りがあり、

不要な寝返りとはマットレスの基本特性として一般 的な体圧分散性、寝姿勢、寝床内環境が悪い場合に 引き起こされるもので、主にマットレスの硬さや寝

具の通気、保温性に起因している1)。

寝返り時にからだの動きがスムーズになされるこ とが、よりよい睡眠を得るための条件である。寝返 りが適度に正しく行なわれないと、寝返りのための からだの動きにより逆に体力を消耗してしまう。今 回、マットレス弾性体にエラストマーを利用し、良 好な体圧分散性と寝返りのし易さを両立できるマッ トレスを開発した。本稿では、体圧分散性および筋 電図によって客観的な評価結果を報告する。

2.開発マットレスの構成 2.1樹脂弾性体の配列

開発マットレスは図1の様に、ベースウレタンの 内部に3つの樹脂弾性体ユニットを配置する構成で ある。

*1アイシン精機株式会社 ライフ&アメニティ技術部

*2 アイシン精機株式会社 材料技術部

30 人間生活工学Vbl.5 No.4(2004.10)

(2)

鼎纂華 薙! ‑ 禍纏賢 観階聾艶擁濫輔 竃 ヨ 轡塵亀 等 茅 図 1 マッ トレス断面の構成

図 2 受圧時の樹脂弾性体の変形

樹脂弾性体形状はマ ッ トレス表面から弾性体の凹 凸が背中、腎部に違和感のない円柱形状 ¢D とし千 鳥配列にしたO材質は非常t t柔軟なエラス トマーを 使用 し、その硬度は円柱形状 ¢D X高さ H を自己保

持できる最小の硬度で樹脂弾性体の荷重一変位特性 を決定 した。エラス トマーの柔軟で伸びのある特性 は樹脂弾性体として新感触を有するものになった

樹脂弾性体は受圧面 ¢D を増加させながら樽状変 形できる ( 図 2) 。 成人男子体重 65k g 2

)

「 の腎部体 荷重比率より樹脂弾性体 1 個の分担荷重 F を求め、

荷草 F時に隣接する矧 生体の変形によって増加 した 受圧 面 ¢D どうLが互いに接 し合うように樹脂弾性 体ピッチ A , B,C , Dは最適位置に設定されている

( 図 3) 0

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図 3 樹脂弾性体ユニッ ト構成

これにより必要最小数の樹脂弾性体配列であ りな がら体荷重の高い腎部では、受圧面 ¢D が多数の荷 重支持から人体に沿った曲面受けにすることができ るため、弾性体からの反力が小さくなり優れた体圧

分散性を有するマッ トレスができると考えられる。

曹 ・・

図 4 マ ットレス特性の基軸方向

「般的に体圧分散性や寝姿勢はマ ッ トレスに対 し 上下方向の特性を評価する基軸であるが、寝返 り性 は左右方向を評価する基軸である ( 図4) 。 エラス

トマーの柔軟な特性により、使用者の身体の凸凹や 動きに対 してエラス トマーの変形が追従できるため ( 図 5) 、寝返 り時のからだの回転を小さな力で容 易に行えると考えられる。

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図 5 樹脂弾性体の変形

2. 2 樹脂弾性体ユニッ ト

弾性体 ユニ ッ トの分割位置は成人男子身長 170 cm 3) 仰臥時の人体凸部である肩甲骨部、腎部、脹 歴部を支持できるよう 3 等分割されている ( 図 6)

0

樹脂弾性体は前述の図 2 の様に'荷重増力ロに応 じ受 圧面積を増加できるため最大荷重分担部である腎部 ユニッ トにおいて人体凸部形状に柔軟に追従 した連 結面を形成 し、マ ッ トレスの基本特性である体圧分 散性を良好に確保できると考え られる。

人間生活工学 Vol . 5 No . 4 (2004. 1 0) 31

(3)

図6 人体と樹脂弾性体ユニッ ト位置

3. 樹脂弾性体材料 3. 1 選定経緯

′ マットレスの基本特性である体圧分散性や寝姿勢 を確保 しつつ、優れた寝返 り性を確保するために樹 脂弾性体の材料としてエラス トマーを検討 した。工 'ラス トマ‑とはゴムのように軟らかく、樹脂のよう な加工のできる材料である。ゴムとは異なり、熱可 塑性樹脂であるため、リサイクル しやすい材料であ る。エラス トマーの種類と特性を表 1に示す。

表 1 エラス トマーの特性

種類 柔軟性 耐熱性 低温特性 ‑ 引裂 き強度

スチ レン系 ○ 0

++ 、

○ ○

シ リコーン系 ○ ○ ○ ×

ウレタン系 ○ × ‑ ‑

オ レフィン系 × × ‑ ‑

‑壇 ビ系 △ × ‑ ‑

柔軟性をもつエラス トマーとして、スチレン系、

シリコーン系、ウレタン系が挙げられる。 衰 1 より 引裂き強度、耐熱性に優れているオイル含有スチレ ン系エラス トマーを選定 した.‑

一般的に有機物の柔軟性はガラス転移温度を境に 一

変化する。スチレン系エラス トマーの場合、近年マ ッ トレス材料で多く見 られる低反発ウレタンとは異 なり、ガラス転移点が室内環境温度領域にはないた め硬くならず、低温特性が良いO低反発ウレタンの ガラス転移点は 25℃ 付近であるが、スチレン系エ ラス トマーの場合は ‑ 50℃ であるため通年で一定の 柔軟性を維持することができる。

3. 2 樹脂弾性体の分子形態モデル

スチレン系エラス トマーにオイルを添加 し、柔軟 性を更に向上させる。図7はオイル含有スチレン系 エラス トマーの模式図である。

樹脂弾性体はプラスチックの性質をもつポリスチ 32 人間生活=学 Vol . 5 No . 4 ( 2 0 0 4. 1 0)

レンブロックが架橋点となり、ゴム性質をもつエラ ス トマーブロックによりゴム弾性を発現する 3 次元 架橋体である。その 3 次元架橋体の中に、オイルを 添加 し、非常に柔軟な感触窄持たせ亭ことができるC

オイルを添加 した場合、熱あるいは繰り返 し圧縮 により使用中にオイルが潜み出すとと ( ブリー ド現 象)が懸念される。そこで、エラス トマーの親油基 とパラフィン系鉱物油の分子が馴染みやすく、分子 間力により保持できるように高分子量であるパラフ ィン系鉱物油 ( 飽和炭化水素)を採用 した。その結 果、ブリー ド現象が起こりE Fくい材料とすることが できた。

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図 7 オイル含有スチレン系エラス トマーの模式図

4 .マッ トレス弾性体への適用結果 4. 1 樹脂弾性体の温度依存性

一般家庭室内温度範囲 0℃〜50℃ での樹脂弾性

体の荷重一変位特性 ( 図 8) は温度依存性がほとん

ど現れないため、年間を通 してマッ トレス硬さを変

わらずに確保できる。

(4)

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図 8 荷重一変位特性 ( 供試品形状 :樹脂弾性体形状)

4. 2 マッ トレス質量

前述の樹脂弾性体配列により樹脂弓 到生体は必要最 小個数に設定されているため、‑ 図9 に示すように開 発マ ッ トレスの質量は一般的な金属スプリングマ ッ トレスと同等の 23k g になっている

この軽量化に よりフレームの補強などを必要とせず、フレームと の組合せにおいて汎用性をもたせることが可能にな った。

最 深策 鏑肇欝姻 転義 開発等 藤摘 図 9 マッ トレス質量の低減

4. 3 体圧分散性

計測は AW D社の体圧分布測定機 「 エルゴチェッ ク 」 (図 10) にて実施 した。身体にかかる圧力が 毛細血管内圧 ,( 32mmHg) 以上になると血管が漬 され正常な血流が阻害される4) 。この状態が続くと 皮膚組織には血が通わなくな り裾癒 ( 床ずれ)が発 生する場合がある

図 11 に体圧分散測定結果を示す二 被験者は設計 標準の成人男子 ( 170bm/65k g) で、データの再 現性は複数回の測定にて確認 している。開発マ ッ下 レスの体圧は人体腰部の最大値でも 25mmHg 以下 になっており、金属スプ リングマッ トレスに比べ体 圧分散性に優れた特性を得ることができる。

図 10 体圧分布測定機 「 エルゴチェック」

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t l : 1 b)金属スプリングマットレス

図 11 体圧分散性 ( 被験者 :成人男子 1 70cm/ 65kg)

4. 4 寝返 り性 、 4. 4. 1 主観評価

開発マ ッ トレス A 、金属スプリングマ ッ トレス B 、 低反発ウレタンマ ッ トレス C の 3 種類にて 「 寝返 り 性」の主観評価を実施 した。各マ ッ トレス上で被験 者に数回寝返 りを実施 してもらい、 ‑ 3‑+3 の 7 段 階で評価点を記入 してもらった

結果 ( 被験者数 ∩

‑26) を図 12 に示す。チューキーの方法により多 重比較を行なうと rAC,BC 間で有意差があり ( 有 意水準 5%) 、 AB 間では有意差が見 られなかった

そこで筋電位により主観評価で有意差が見 られなか った A , B の違いを確認 した。

人間生活工学 VOL 5 No . 4 (2004. 1 0) 33

(5)

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図 12 寝返 り性 ( 寝返 りし易さ)の主観評価結果

4. 4. 2 筋電位による評価

生体電気情報として心電図、脳波、筋電図などが 代表的なものである。その信号は神経細胞や筋細胞 が発生する膜電位であり、寝返 り性の検証には筋電 位を測定 ( TEAC社製基礎医学研究用機器携帯多用 途生体アンプPol ymat eAP1124)し、その電位の 出方、大きさ、時間より寝返り時の人体への負荷を 検討 した。

一般的に筋肉への負荷、疲労を見るときに筋電図 を用いる。筋肉に何 らかの活動電位が生 じるとそれ

! ま筋の両端へ向かって伝搬する

この活動電位を記 録 したものが筋電図である。特に皮膚上に貼 りつけ た電極を用いて測定 した筋電図を表面筋電図といい、

表面筋電図の測定に使用する電極を表面電極という ( 図 13) 。 表面電極を用いると、貼 り付けた皮膚

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図 13 筋電位測定方法

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下にある多くの筋線維の活動電位が重畳 したものが 測定されるため、ー 表面筋電図は筋全体の活動状況を 把握するのに適 している

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筋電図の見方として、電位 ( 波形)\ が大きいとい うことは蛎肉の収縮が強く、負荷が大きいと判断で / ノ ー きる。また、疲労 前 に比べ疲労 した筋肉に負荷をか けると電位は小さ い 。これらより、今回の筋電位測 定時の測定精度を上げるため被験者は皮下脂肪の少 ない設計標準の成人男子 ( 170cm/ 65k g) 1 名に そ実施 し、データの再現性は複数回の測定にて確琴

している。寝返 り動作は、 90 度回転 しマッ トレス に対 して仰臥姿勢から横向き姿勢になる‑挙動の例 を図14に示 した。

図 14 は各部骨格筋の筋電位データを筋電図とし て出力 したものである。測定にあた り、事前測定に て寝返 り時に筋電位が大きくでる筋の選定を実施 し 抽出 したものである。

低反発ウレタンマッ トレスは、ウレタンの中に肩、

謂 畳 静 観

藩 藍 歴梅 島慧

鷹島 宅 渡鑑嫉き 観 宅 洗顔惑慧 感感 電 酵廉添書

鱒 藍 威背筋き

義 軍 豊 泉最藍 轟き 東盈藍 衰 隈 慧蘭馬茅

背藤 藍 底舘脇∋

韓蒋苛離陸 票 癒露露髄穿き 守沖

魚層盈F智紺巧守 癖艶黒

碗 毒 牽

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図 14 筋電位による寝返 O性の評価 ( 被験者 :成人男子 170cm/ 65kg 、1 名)

34 人 間生 活工学 Vol . 5 No. 4 ( 2 0 0 4. 1 0)

(6)

腰が埋まり込んでしまい、身体を回転させるために はウレタンを潰していかなければならない。そのた め、首、胸、背筋の筋電位変化が大きくなり、身体 に負荷がかかっている。

硬めの金属スプリングマッ トレスは、身体が沈み 込まないため、寝返りの回転支点が肩の端となる。 , そのため、首、胸、背筋の筋電位変化が大きくなり、

全身に負荷がかかっている。

開発マットレスは、寝返り時の筋電位がどのマi y トレスよりも小さ い 。 これは、身体の負荷が少なく、

容易に寝返りが可能であることを示 している。この ように、開発マットレスでは、柔軟な円柱形状の樹 脂弾性体を千鳥配列させており、水平 ・垂直方向の 荷重に対 して 3 次元の動きで身体の動きに対 してフ レキシブルに追従できるため、寝返り時の回転の動 きを容易にしている。

5 .まとめ

( 1)オイル含有スチレン系エラス トマーをマッ トレ ス弾性体として採用することにより、縦 ・横 ・ 斜めのどの方向においても柔軟に変形可能であ

り、体形にフイットできるマットレスを開発で きた。

( 2) 開発マットレスは、シングルサイズで重量 23 k g と、一般の金属スプリングマットレスと同等 までの軽量化を達成できた。

( 3) 筋電団 ( 筋電位データ)より、寝返り時の身体 への負荷がマッ トレスにより異なって現われる

ことが確認できた。その結果、開発マットレス は既存マットL j L スと比較して寝返り時の負荷が / 最も少ないマットレスであることが確認できた。

6 ∴謝辞 .

本開発にあたし り、多大なご協力をいただいた社内 外の関係各位に深く感謝の意を表 します。特に、武 庫川女子大学生活環境学部 梁瀬度子教授、東海ゴ ム株式会社殿、東海化成工業株式会社殿には多大な ご協力を頂き厚くお礼申し上げます。

1)日本睡眠学会編 :睡眠学ハン ドブック :朝倉書店、

97‑ 100,1994

2) 日本人の人体計測データ :人間生活工学研究センター、

80,1997

3) 日本人の人体計測データ :人間生活=学研究センター、

142,1997

4)Landi s E.: Mi c「 O‑ i n j ec t i ons t udi esofcap‖a「 y b1 0odpr essur ei nhumansk i n:Hear t

l5, 209‑ 228.1930

5) 原良昭、吉田正樹、松村雅史、市橋則明: 長時間生体

信号計測による身体活動量の総合評価 :大阪電気通信 大学研究論集自然科学編 、NO.38,43‑ 48,2003

連絡先

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人間生活工学 Vol . 5 No . 4 (2004. 1 0) 35

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