• 検索結果がありません。

(Microsoft Word - \215\221\214\352\212w\212T\230_A.doc)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "(Microsoft Word - \215\221\214\352\212w\212T\230_A.doc)"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

0. 授業の進め方について 今後の予定 第 1-3 回(10/2・9・16) …… 音声と音調 第 4-5 回(10/23・30) …… 語彙 第 6 回(11/6) …… 意味 第 7 回(11/13) …… 文法 第 8 回(11/20) …… 表現と文体 第 9-10 回(11/27・12/4) …… 文字表記 第 11 回(12/11) …… 言語生活 第 12 回(12/18) …… 日本語史 第 13 回(1/15) …… 日本語学史 第 14 回(1/22) …… 方言学(※授業の進行状況により行わない場合あり) 第 15 回(1/29) …… 総括 ※ 2/4 学年末試験 授業目標 国語学・日本語学の様々な分野についてその概要を学び、言語学的な考え方の多様性に触れること で、自ら日本語を客観的に考え学ぶための基礎を身につける。 注意事項 受講者全員が予習(前もって指定テキストを読んでくること)をしている前提で授業を進める。テ キストの重要事項をピックアップして解説し、またテキストを読む際の注意点・修正点を述べる形と するため、予習なしで授業を聞いても十分な学習効果は得られないことになる。また、結果として試 験で合格点を取ることも難しくなる。各自十分な準備をした上で授業に臨むこと。 なお、前期分の小試験および実施されなかった前期試験については、全員が満点(50%)と見なし、 これに後期の成績(3 回程度の小課題 10%+後期試験 40%)を加算して通年の評点を決定する。 授業のフォロー(出席カード等で寄せられた質問への個別回答・レジュメの再配布など)は講師ホ ームページ(ブログ)で行う。 http://satoyou.net/ 1. 日本語の音声と音韻(テキストのまとめと部分修正)

音声学:三杯さんばい [sambai] ・三台さんだい [sandai] ・三階さんがい [saŋgai]1 の「ん」はすべて別の音おん [m]、[n]、[ŋ]

音韻論:三杯 /saNbai/ ・三台 /saNdai/ ・三階 /saNgai/ の「ん」はすべて同じ音素 /N/ ☆同一の音素であるが、環境によって音声学的には異なる音となる=条件異音

日本語の音声と音韻は、概略、以下のようにまとめられる2

1 話者によって [saŋŋai] となる場合もある。

(2)

○音節と拍 日本語において、1 つの音節はおおむね等しい長さ(1 拍)で発音される。 日本語の音節の成り立ち方は、以下の 5 種類に分類される。 ・1 母音音素 ・1 子音音素+1 母音音素 ・1 半母音音素+1 母音音素 ・1 子音音素+1 半母音音素+1 母音音素 ・1 特殊音素 以下、それぞれの成り立ち方について順に概観する。 ○日本語の母音(1 母音音素)

あ /a/ い /i/ う /u/ え /e/ お /o/ を認める3

音声学的には、一般に[ä]4 [i˕]5 [ɯ̹˕]6 [e˕] [o̜]となる。厳密には異音(自由異音)も存在する(たとえ ばテキスト p.36 参照)が、十分に統一的な見解は得られていないため詳細は割愛する。

以下、音声表記はそれぞれ [a] [i] [ɯ] [e] [o] で代用する。

○日本語の子音と半母音(1 子音音素+1 母音音素/1 半母音音素+1 母音音素) 子音音素には、/k/ /g/ /s/ /z/ /t/ /ch/ /c/ /d/ /n/ /h/ /b/ /p/ /m/ /r/の 14 音素、 半母音音 素として /y/ /w/の 2 音素を認める。(※本稿では、子音音素および半母音音素を /k/ /g/ /s/ /z/ /t/ /d/ /n/ /h/ /b/ /p/ /m/ /r/ と /y/ /w/の 12 音素+2 音素のみとする立場も併せて概観する) 主な調音法によって分類すると、以下のようになる。 ・破裂音 /k/ (無声・軟口蓋) /g/ (有声・軟口蓋) /t/ (無声・硬口蓋) /d/ (有声・硬口蓋) /b/ (有声・両唇) /p/ (無声・両唇) ・摩擦音 /s/ (無声・歯茎/歯茎硬口蓋) /h/(無声・声門/硬口蓋/両唇) ・破擦音 /z/ (有声・歯茎/歯茎硬口蓋) /ch/ (無声・歯茎硬口蓋) /c/ (無声・歯茎) 分や、明らかに事実に反すると判断された部分など)を適宜修正・再編した上で概要を提示する。 3 テキストでは「う」を /ɯ/ とする等、音声学的な発想に重点が置かれているが、現在では慣例的にラテン文字が用いられ、IPA(国 際音声記号)にしか存在しないような文字は避けられる傾向にある。本レジュメでは、こうした実情に合致し、かつ古くから今日に 至るまで広く受け入れられている服部四郎説(「う」の母音を /u/ で表記する)に主として従う。 4 ̈ は「中舌化」を表す。以下ではこのような補助記号を多用した厳密な表記は行わないが、特に母音についてどのような表し方を するかは立場によってそれぞれであり、どれが正解でどれが誤りということは一概には言えない(これらの補助記号はつける・つけ ないのどちらかで一貫していれば問題ない)。 5 右の˕は「下寄り」を表す 6 下の,は「(弱めの)円唇」を表す。正確には、 [ɯ]は純粋な「非円唇後舌狭母音」であり、朝鮮語などに見られる「口の形を『い』 にして『う』と発音する」と言われるような母音であり、厳密な音声表記を志すのであればこれらの補助記号は不可欠になる。

(3)

・鼻音 /n/ (硬口蓋) /m/ (両唇) ・弾き音 /r/ (歯茎) ・接近音 /y/ (硬口蓋) /w/ (両唇) 以下、それぞれの用いられ方について、カ行から順に五十音図の行ごとにまとめる。 ・カ行

か /ka/ き/ki/ く/ku/ け/ke/ こ/ko/ を認める。

音声学的には、一般にそれぞれ[ka] [kʲi] [kɯ] [ke] [ko]となる。

(→無声軟口蓋破裂音 [k] は母音 [a] [ɯ] [e] [o] の前、口蓋化した [kʲ]7 は母音 [i] の前に表れる条件 異音である。)

語頭の [k] は有気音 [kʰ] として実現する傾向が強い8

(もっとも、[k]と[kʲ]の相補分布ほど厳密ではなく、どちらでも実現しうる自由異音である。)

・ガ行

が /ga/ ぎ /gi/ ぐ /gu/ げ /ge/ ご /go/ を認める。 音声学的には、一般にそれぞれ[ga] [gʲi] [gɯ] [ge] [go]となる。

(→有声軟口蓋破裂音 [g] は母音 [a] [ɯ] [e] [o] の前、口蓋化した [gʲ] は母音 [i] の前に表れる条件 異音である。)

語中の [g] は摩擦音(有声軟口蓋摩擦音)化して [ɣ] となることもあるが、どちらでも実現しうる 自由異音である。また、話者によっては鼻音(軟口蓋鼻音)化して[ŋ] となる場合もあるが(いわゆ る鼻濁音)、近年急速に衰退している9

・サ行

さ /sa/ し /si/ す /su/ せ /se/ そ /so/ を認める。 音声学的には、一般にそれぞれ[sa] [ɕi] [sɯ] [se] [so]となる。

(→無声歯茎摩擦音 [s] は母音 [a] [ɯ] [e] [o] の前、無声歯茎硬口蓋摩擦音 [ɕ]10 は母音 [i] の前に表 れる条件異音である。) 語頭と語中・語末で音声に差異は生じない。 7 補助記号 [ʲ] で口蓋化(=「中舌化」)を表す。口蓋化/中舌化とは、ある子音について、元々の調音点は同じだが、同時に舌の前 面が硬口蓋に向かって盛り上がる現象で、 [i] の母音の前で通言語的に広く起こる。これは、ある音が(硬)口蓋音に変化するとい う意味ではなく、元の調音点は保たれる(後に述べるように、硬口蓋音にも口蓋化は起こりうる)ので注意する。 8 テキスト(p.37 上)では有気音について、息の出る量により [‘] と [ʰ] が使い分けられる旨が述べられているが、現在の IPA 表記 ではこれらの区別はなくなり [ʰ] に統一されている。 9 なお、テキスト p.41 にあるような/g/と/ŋ/の音素としての区別は、実際にはほぼ認められない。 10 テキストで用いられる無声後部歯茎摩擦音 [ʃ] は日本語の「し」の音よりも調音点が前寄りで、英語の“she”などに見られる音 である。

(4)

・ザ行

ざ /za/ じ /zi/ ず /zu/ ぜ /ze/ ぞ /zo/ を認める。

音声学的には、一般にそれぞれ[ʣa] [ʥi] [ʣɯ] [ʣe] [ʣo]となる。

(→有声歯茎破擦音 [ʣ]は母音 [a] [ɯ] [e] [o] の前、有声歯茎硬口蓋破擦音 [ʥ]は母音 [i] の前に表 れる条件異音である。)

語頭では [ʣa] [ʥi] ……、語中・語尾では有声歯茎摩擦音([a] [ɯ] [e] [o] の前)ないし有声歯茎硬 口蓋摩擦音([i] の前) [za] [ʑi] ……というように発音が区別される傾向はかなり強いが、究極的に はどちらの場合にどちらで実現しても問題ないため、摩擦か破擦かの違いは自由異音と考えられる。

・タ行

大別して、以下の 2 通りの考え方がある。

・た /ta/ ち /chi/ つ /cu/ て /te/ と /to/ を認める。(音声学的見地を優先した表記①) ・た /ta/ ち /ti/ つ /tu/ て /te/ と /to/ を認める。(日本語話者の直感を優先した表記②) 音声学的には、一般にそれぞれ[ta] [ʨi] [ʦɯ] [te] [to]となる。

(→無声歯茎破裂音 [t] は母音 [a] [e] [o] の前、無声歯茎硬口蓋破擦音 [ʨ] は母音 [i] の前、無声歯 茎破擦音 [ʦ] は母音[ɯ]の前にそれぞれ表れる。表記①の(「ち」「つ」を /chi/ /cu/ とする)立場では、 これらは条件異音ではなく、それぞれ別の子音音素を持つものと考える。表記②の(「ち」「つ」を /ti/ /tu/ とする)立場では、それぞれ[i] [ɯ] の前で表れる条件異音とする。) 語頭の [t] は有気音 [tʰ] として実現する傾向が強い。 (もっとも、相補分布というほど厳密ではなく、どちらでも実現しうる自由異音である。) 補足 タ行の音韻表記に関して 「ち」「つ」は「た」「て」「と」と発音上かけ離れており、また近年外来語の増加などにより音素 /ti/ /tu/ (cf. レモンティー、トゥーロン)を別に立てる必要が出てきた。これらについては、音 声学的に考えると、 /t/ 以外の音素を立てる道理がない。こういった事情により、「ち」「つ」はい わば別の音素へと追いやられた恰好になる。 このあたりの扱いについては、はっきりとした定説は存在せず、様々な表記法がありうるが、厳 密に言えば以下のような体系(cf. 先述の「表記①」)を考えるのが、音声学的な観点を余さず取り 入れたことになる(ただし、これは言うまでもなく、五十音図に表されるような直感的な日本語の 音韻体系とはずれが生じてくる)。

歯茎破裂音 /t/ : たたたた /ta/ta/ta/ta //// てぃ /ti/ とぅ /tu/ てて /te/てて /te//te//te/ ととと /to/と /to//to/ /to/

歯茎硬口蓋破擦音 /ch/ : ちゃ /cha/ ちちちち ////chchchi/chi/i/ ちゅ /chu/ ちぇ /che/ ちょ /cho/ i/ 歯茎破擦音 /c/ : つぁ /ca/ つぃ /ci/ つつつつ /cu//cu//cu//cu/ つぇ /ce/ つぉ /co/

なお、服部音韻論では「ち」「つ」いずれも /c/ で表記されているが、当時はツァ行の音がほぼ問題 になることがなかったため混同されたものと考えられる。現代においては、こうした音も大きく関 わってくるため(ピッツァ、ベネツィア、フィレンツェ、カンツォーネ)、それらに /c/ の表記を 当て、「ち」の音素はまた別に立てるのが妥当と判断した。歯茎硬口蓋破擦音は、歯茎破擦音 /c/ と は調音点が異なる別の音であり(双方にイ段音が存在し、各々異なる音韻となるのもその証左であ る)、拗音(=口蓋化した音)を表す /y/ を用いた /cy/ ではなく /ch/ というまったく別の音素 を立てることとした。この表記については、一般的なローマ字表記(ヘボン式)に従い、わかりや すさを優先する(ただし、こうすることでサ行の /si/ ・ザ行の /zi/ などについて訓令式を用いる

(5)

のとは不一致が生じる)。

これらと異なり、形態論的見地(たとえば「タ行五段活用」に注目するなど)から直感的な日本 語の音韻感覚を優先した表記(cf. 先述の「表記②」)としては、以下のように考える。

歯茎破裂音 /t/ または /tw/ : たたたた /ta/ta/ta/ta //// てぃ /twi/ とぅ /twu/ てて /te/てて /te//te//te/ とととと /to//to//to/ /to/

歯茎硬口蓋破擦音 /ty/ または /t/ : ちゃ /tya/ ちちちち /ti//ti//ti//ti/ ちゅ /tyu/ ちぇ /tye/ ちょ /tyo/ 歯茎破擦音 /c/ または /t/ : つぁ /tsa/ つぃ /tsi/ つつつつ /tu//tu//tu//tu/ つぇ /tse/ つぉ /tso/

これらについて、詳しくは後で「拗音の問題」を扱う際に再度確認するが、どういう立場に立つに せよ、日本語の音韻標記については何かしらいびつな部分が出てこざるを得ないものである。

・ダ行

だ /da/ で /de/ ど /do/ を認める。

音声学的には、一般にそれぞれ[da] [de] [do]となる。

「ぢ」「づ」は発音が「じ」「ず」と変わらなくなっており、また「じ」「ず」に比べるとごく限ら れた場合にしか用いられない(最小対11もなさない)ため、別の音素としては認められない12

「だ」「で」「ど」は、語頭と語中・語末で音声に差異は生じない。

・ナ行

な /na/ に /ni/ ぬ /nu/ ね /ne/ の /no/ を認める。 音声学的には、一般にそれぞれ[na] [nʲi] [nɯ] [ne] [no]となる。

(→歯茎鼻音13 [n] は母音 [a] [ɯ] [e] [o] の前、口蓋化した[nʲ]14 は母音 [i] の前に表れる条件異音で

ある。)

語頭と語中・語末で音声に差異は生じない。

・ハ行

は /ha/ ひ /hi/ ふ /hu/ へ /he/ ほ /ho/ を認める。 音声学的には、一般にそれぞれ[ha] [çi] [ɸɯ] [he] [ho]となる。

(→無声声門摩擦音 [h] は[a] [e] [o] の前、無声硬口蓋摩擦音 [ç] は母音 [i] の前、無声両唇摩擦音 [ɸ] は [ɯ]の前に、それぞれ表れる条件異音である。) [h] は語頭で強調的な発音になるとき無声軟口蓋摩擦音 [x] 、語中でややぞんざいな発音になる場 11 たとえば「かば」[kaba]と「かま」[kama] の 2 語は、[b]と[m]を除きすべての音が共通しているが、この 1 音の違いが両者の意味 の違いを生み出している。このような語のペアを最小対(ミニマルペア)と呼び、これが存在することは [b]、[m] という 2 つの子 音音素が立てられるための重要な手がかりとなる。 12 いわゆる「四つ仮名」の問題である。詳しくは文字表記について扱う際に再度述べる。 一例として、「肉付き(のいい身体)」と「肉好き(で野菜嫌いの彼)」は仮名表記において「にくづき」「にくずき」と書き分けら れるが、発音上は区別されないためこれらは同音異義語として扱われる、という事実がある。(⇔「野菜炒めセット、今なら肉付き」 /「肉すきうどん」) 13 鼻音は日本語を含め、大多数の言語で有声音としてしか実現し得ないため、通常「有声」「無声」の呼び分けはされない(なお、 無声鼻音が存在する言語でも通常の鼻音が「無声化する」という表記法が取られる)。 14 テキストで用いられている [ɲ] は [n] とは調音点が異なる別の音であり、補助記号を用いた [nʲ] の表記がより正確である。

(6)

合に有声声門摩擦音 [ɦ] として実現する場合があるが、これらも自由異音である。

・バ行

ば /ba/ び /bi/ ぶ /bu/ べ /be/ ぼ /bo/ を認める。

音声学的には、一般にそれぞれ [ba] [bʲi] [bɯ] [be] [bo] となる。

(→有声両唇破裂音 [b] は母音 [a] [ɯ] [e] [o] の前、中舌化した [bʲ] は母音 [i] の前に表れる条件異 音である。) 語中の [b] は有声両唇摩擦音 [β] として実現することもあるが、やはり自由異音である。 他の濁音(ガ行・ザ行・ダ行)の場合と異なり、他の濁音(ガ行・ザ行・ダ行)の場合と異なり、他の濁音(ガ行・ザ行・ダ行)の場合と異なり、他の濁音(ガ行・ザ行・ダ行)の場合と異なり、調音点が共通で音声学的に対をなすのは調音点が共通で音声学的に対をなすのは調音点が共通で音声学的に対をなすのはハ行では調音点が共通で音声学的に対をなすのはハ行ではハ行ではハ行では なく なく なく なく、、、、下のパ行である。下のパ行である。下のパ行である。下のパ行である。 なお、外来語や日本以外の人名・地名について、原語の“v”音を区別するために「ヴァ・ヴィ・ ヴ・ヴェ・ヴォ」の表記が用いられることもあるが、日本語において「バ・ビ・ブ・ベ・ボ」と発音 上の区別は存在しない。 ・パ行

ぱ /pa/ ぴ /pi/ ぷ /pu/ ぺ /pe/ ぽ /po/ を認める。 音声学的には、一般にそれぞれ [pa] [pʲi] [pɯ] [pe] [po] となる。

(→無声両唇破裂音 [p] は母音 [a] [ɯ] [e] [o] の前、中舌化した [pʲ] は母音 [i] の前に表れる条件異 音である。)

語頭の [p] は有気音 [pʰ] として実現する傾向が強い。

(もっとも、 [p] と [pʲ] の相補分布ほど厳密ではなく、どちらでも実現しうる自由異音である。)

・マ行

ま /ma/ み /mi/ む /mu/ め /me/ も /mo/ を認める。

音声学的には、一般にそれぞれ [ma] [mʲi] [mɯ] [me] [mo] となる。

(→両唇鼻音 [m] は母音 [a] [ɯ] [e] [o] の前、中舌化した [mʲ] は母音 [i] の前に表れる条件異音であ る。)

語頭と語中・語末で音声に差異は生じない。

・ヤ行

や /ya/ ゆ /yu/ よ /yo/ を認める。

音声学的には、一般にそれぞれ硬口蓋接近音 [j] と母音の組み合わせで、 [ja] [jɯ] [jo] となる。後 に扱う拗音などとの関係上、/y/ は半母音と考え、他の子音とは区別する。

・ラ行

ら /ra/ り /ri/ る /ru/ れ /re/ ろ /ro/ を認める。

音声学的には、一般にそれぞれ [ɾa] [ɾʲi] [ɾɯ] [ɾe] [ɾo] となる。

(7)

る。) 語頭や「ん」の直後に表れた場合、 [ɾ] は歯茎側面接近音 [l] として実現する傾向が強い。 (もっとも、相補分布というほど厳密ではなく、どちらでも実現しうる自由異音である。) ・ワ行 わ /wa/ を認める。 音声学的には、一般に両唇接近音 [β̞]15 と母音の組み合わせで、 [β̞a] となる。後に扱う特殊音な どとの関係上、 /w/ は /y/ と同様、半母音と考え、他の子音とは区別する。 なお、ワ行の「を」は発音上ア行の「お」との区別がないため、別の音素とは考えない。 ○拗音とその周辺(1 子音音素+1 半母音音素+1 母音音素/1 子音音素+1 母音音素/1 半母音音素+ 1 母音音素) 子音+半母音+母音の組み合わせ=拗音について、服部音韻論ではタ行(ちゃ /ca/ ちゅ /cu/ ちょ /co/)を除き元の子音+ /j/ で標記される(許可→kjoka、百→hjaku……)。しかし、これは慣用的な ローマ字表記等(kyoka、hyaku……)とはかけ離れたものである。 そもそも、厳密に「こういうもの」と覚えなければいけないものでもないのに、わざわざわかりに くくするのも得策ではないため、拗音については便宜を優先して /y/ を用いたテキストの案を採る。 ・カ行(キャ行、「くゎ」)

きゃ /gya/ きゅ /gyu/ きょ /gyo/ を認める。

音声学的には、一般にそれぞれ [kʲa] [kʲɯ] [kʲo]となる。 その他、拗音に準じるもの(合拗音)として、 くゎ /kwa/ が認められうる。 音声学的には、円唇化を伴い [kʷa]16 となる。ただし、現代日本語では「シークヮーサー」の 1 語 でしか用いられない17、きわめて用途の限られた音素である。 その他、外来語について「クィ」「クェ」「クォ」の表記が用いられることもあるが(クィック、シ ークェンサー、クォリティ……)、現状ではほとんど「クイ」「クエ」「クオ」のように 2 音節で発音 される(あるいは「シーケンサー」のように直音化する)ため、音素としては立てないでおく。 ・ガ行(ギャ行)

ぎゃ /gya/ ぎゅ /gyu/ ぎょ /gyo/ を認める。

音声学的には、一般にそれぞれ [gʲa] [gʲɯ] [gʲo]となる。

・サ行(シャ行)

しゃ /sya/ しゅ /syu/ しぇ /sye/ しょ /syo/ を認める。 音声学的には、一般にそれぞれ [ɕa] [ɕɯ] [ɕe] [ɕo]となる。

15 [ ̞]は「下寄り」を意味し、両唇の摩擦が発生するほど下唇は持ち上がらない、ということを表す。

16 補助記号 [ʷ] が「円唇化」を意味する。 17 『大辞泉』による。

(8)

・ザ行(ジャ行)

じゃ /zya/ じゅ /zyu/ じぇ /zye/ じょ /zyo/ を認める。 音声学的には、一般にそれぞれ [ʥa] [ʥɯ] [ʥe] [ʥo]となる。

サ行・シャ行はそれぞれサ行の「し」・ザ行の「じ」と音声学的には共通した子音を持つが、タ行の 拗音が直音と複雑に絡み合っているのと異なり、各々独立した体系を立てる必要がない(日本語にお いて、通常 [sʲi] [ʣʲi] と発音され、かつ /si/ /zi/ と区別されるような音素は存在しない)。そのため、 五十音図的な体系(②に即した表記)を優先する。 ただし、音声学的にはいずれも[ʲ] を伴う口蓋化(拗音の条件)ないし [ʷ] を伴う円唇化(合拗音の 条件)は見られず、1 子音音素+1 母音音素と考えるべきものである。 ・タ行(チャ行、ツァ行、「てぃ」「とぅ」) タ行に関連する、一般に拗音とされる音素には、以下のようなものもある。 ○チャ行 大別して以下の 2 通りの考え方がある。

・ちゃ /cha/ ちゅ /chu/ ちぇ /che/ ちょ /cho/ を認める。(表記①) ・ちゃ /tya/ ちゅ /tyu/ ちぇ /tye/ ちょ /tyo/ を認める。(表記②) 音声学的には、一般にそれぞれ [ʨa] [ʨɯ] [ʨe] [ʨo] となる。

①の立場では、これらの音は仮名表記上ではタ行の拗音として表されるが、子音音素としては「ち /chi/」と共通である、とする。 ②の立場では、これらの音はタ行子音に半母音を加えたものとし、他の行の拗音と同じように考え る。 これも厳密には、何らかの子音音素が [ʲ] を伴う口蓋化(拗音の条件)ないし [ʷ] を伴う円唇化(合 拗音の条件)を起こしているわけではないため、1 子音音素+1 母音音素と考える(したがって、① の立場の方が事実に即している)。 ○ツァ行 大別して以下の 2 通りの考え方がある。

・つぁ /ca/ つぃ /ci/ つぇ /ce/ つぉ /co/ (表記①) ・つぁ /tsa/ つぃ /tsi/ つぇ /tse/ つぉ /tso/ (表記②)

音声学的には、一般にそれぞれ [ʦa] [ʦʲi] [ʦe] [ʦo] となる。

①の立場では、これらの音は仮名表記上ではタ行の拗音の一種だが、子音音素としては「つ /cu/」 と共通である、とする。

(9)

これも厳密には、イ段以外で18 [ʲ] [ʷ] のような半母音が介在することがないため、①の見方の方が 事実に即している(したがって、1 子音音素+1 母音音素と考えるのが正確である)。 ○「てぃ」「とぅ」 大別して以下の 2 通りの考え方がある。 ・てぃ /ti/ とぅ /tu/ (表記①) ・てぃ /twi/ とぅ /twu/ (表記②) 音声学的には、一般にそれぞれ [tʲi] [tɯ] となる。 ①の立場では、これらの音は仮名表記上ではタ行の拗音の一種だが、子音音素としては「た /ta/」 「て /te/」「と /to/」と共通である、とする。 ②の立場では、これらの音はタ行子音に半母音 /w/ を加えたものとし、他の行の拗音に準じて考 える。 これも厳密には、イ段以外で [ʲ] [ʷ] のような半母音が介在することがないため、①の見方の方が事 実に即している(したがって、1 子音音素+1 母音音素と考えるのが正確である)。 タ行がこのように複雑な体系をなしているのは、元々 [tʲi] [tɯ] のように発音されていた「ち」「つ」 の音が変化し、一度失われたこれらの発音が、外来語を導入する際などの必要性から復活したという 経緯による19。すなわち、[tʲi] [tɯ] という音韻上の「空き間」に、「てぃ」「とぅ」という新たな音素が 入り込んだ、ということである。 ・ダ行(ヂャ行・「でぃ」「どぅ」) 「ぢ」を「じ」と別の音素としては立てないのと同様、「ぢゃ」「ぢゅ」「ぢょ」も音素としては認め ない。 一方、以下の 2 つは音素として認める必要がある。 でぃ /di/ どぅ /du/ 音声学的には、一般にそれぞれ [di] [dɯ] となる。 「ぢ」「づ」が音素としては認められないため、①②の立場を問わず上に挙げるような表記で十分 と考えられるが、表記②の「てぃ」「とぅ」との一貫性を保つため、あえて以下のような表記をすると いう立場も考えられる。 でぃ /dwi/ どぅ /dwu/ いずれにせよ、これも厳密には [ʲ] [ʷ] のような半母音が介在することがないため、1 子音音素+1 母音音素と考えるのが正確である。 18 イ段の場合、硬口蓋が調音点でない子音の口蓋化は不可避である。むしろ元の「直音」の体系におけるものとは別のイ段音「つぃ」 が存在する時点で、ツァ行を「拗音」に引きつけて考えるのは正確ではない、ということが言える。 19 こうしたことは、古い時代の日本語を外字で記録した外国の書物(たとえば『日葡辞書』や各種キリシタン資料など)によって確 認できる。

(10)

・ナ行(ニャ行)

にゃ /nya/ にゅ /nyu/ にょ /nyo/ を認める。

音声学的には、一般にそれぞれ [nʲa] [nʲɯ] [nʲo]となる。

・ハ行(ヒャ行、ファ行) ○ヒャ行

ひゃ /hya/ ひゅ /hyu/ ひょ /hyo/ を認める。 音声学的には、一般にそれぞれ [ça] [çɯ] [ço]となる。 ハ行の「ひ」と音声学的には共通した子音を持つが、タ行の拗音と異なり、各々独立した体系を立 てる必要がない(日本語において、通常 [hʲi] と発音され、かつ /hi/ と区別されるような音素は存在 しない)ため、五十音図的な体系(②に即した表記)を優先する。 これも厳密には [ʲ] [ʷ] のような半母音が介在することがないが、[ç] は [hʲ] の口蓋化がさらに進ん だ音とも考えることができ、1 子音音素+1 母音音素と考えるべきか、1 子音音素+1 半母音音素+1 母音音素と考えるべきかは微妙な問題である。 ○ファ行

ふぁ /hwa/ ふぃ /hwi/ ふぇ /hwe/ ふぉ /hwo/ を認める。 音声学的には、それぞれ [ɸa] [ɸʲi] [ɸe] [ɸo] となる。

ハ行の「ふ」と音声学的には共通した子音を持つが、タ行の拗音と異なり、各々独立した体系を立 てる必要がない(日本語において、通常 [hɯ] と発音され、かつ /hu/ と区別されるような音素は存 在しない)ため、五十音図的な体系(②に即した表記)を優先する。

・バ行(ビャ行)

びゃ /bya/ びゅ /byu/ びょ /byo/ を認める。 音声学的には、一般にそれぞれ [bʲa] [bʲɯ] [bʲo]となる。

・パ行(ピャ行)

ぴゃ /pya/ ぴゅ /pyu/ ぴょ /pyo/ を認める。 音声学的には、一般にそれぞれ [pʲa] [pʲɯ] [pʲo]となる。

・マ行(ミャ行)

みゃ /mya/ みゅ /myu/ みょ /myo/ を認める。 音声学的には、一般にそれぞれ [mʲa] [mʲɯ] [mʲo]となる。

・ラ行(リャ行)

りゃ /rya/ りゅ /ryu/ りょ /ryo/ を認める。

(11)

・その他

うぃ /wi/ うぇ /we/ うぉ /wo/

音声学的には、一般にそれぞれ [β̞ʲi] [β̞e] [β̞o] となる。

「わ」と共通の半母音と母音との組み合わせであり、元々日本語に存在した音(古典語における「ゐ」 「ゑ」「を」)が消失した後、外来語(ウィザード、ウェンブリー、ウォッチ……)を導入する必要か ら復活したものである。これも仮名表記だけを見ると拗音的であるが、音韻的にはワ行に準じるもの である。 なお、これらの他、外国語の発音を忠実に再現するために「スィ」「ズィ」などを用いる話者もいる が、上述したような音韻と異なり一般的とは言えないため割愛する。 ○日本語の特殊音素(1 特殊音素) 特殊音素として、 /Q/ (促音) /N/ (撥音) /R / (長音)を認める。これらの特徴として、こ れまでに挙げた各音素と同様、1 音節をなす(他の音素とほぼ等しい、1 拍分の長さを持つ)という ことが指摘できる。 ・促音 後続する子音の閉鎖ないし摩擦を 1 音節分長くする特殊音素として20、促音 /Q/ を認める。これ は開音節言語(子音+母音の組み合わせを音韻の基本とし、子音だけの音韻が限定的な言語)である 日本語において、数少ない閉音節の一つである。ひらがな・カタカナでは「っ」「ッ」で表記する。 促音は、元々は無声子音 /k/ /s/ /t/ /ch/ /c/ /p/ の前にのみ表れていた。近年は外来語の増加 により、これらに対応する有声子音 /g/ /z/ /d/ /b/ の前にも表れるようになっているが、発音上は 「ベッド」「バッグ」などが「ベット」「バック」と同じようになってしまうことが少なくない21。な

お、母音 /a/ /i/ /u/ /e/ /o/ ・半母音 /y/ /w/ および鼻音 /n/ /m/ の前に表れることはない。

・撥音 鼻音が 1 音節続く特殊音素として撥音 /N/ を認める。これも促音と並び、数少ない日本語の閉音 節の一つである。ひらがな・カタカナでは「ん」「ン」で表記する。 表れる環境により、以下のような異音が存在する。 [子音の前] [ŋ] …… /k/ /g/ の前(/ki/ /gi/ の前では[ŋʲ])

[m] …… /b/ /p/ /m/ の前(/bi/ /pi/ /mi/の前では[mʲ])

[n] …… /s/ /z/ /t/ /ch/ /c/ /d/ /r/の前(/si/ /zi/ /ti/ /chi/ /ci/ /di/ /ri/の前では[nʲ])

20 基本的に直後の子音が重複するが、 /ch/ /c/ については閉鎖部分にあたる [t] の子音で実現する。 21 なお、「ブルドックソース」の社名などは、今以上にこうした発音に馴染みがない時期に生まれたため、仮名表記においても「ド ッグ」にはなっていないという事情が考えられる。 また、「バッジ」が「バッチ」のように発音されるのは、仮名表記だけ見ると一見妙な現象であるが、音声学的には当然の帰結で ある。

(12)

[母音・半母音の前] 母音が鼻音化する、いわゆる鼻母音である。 ※テキストでは後続母音の鼻音化とされているが、実際は前の母音が鼻音化するのが一般的である。 [ä̃] …… /a/ の後 [i˕̃] …… /i/ の後 [ɯ̹˕̃] …… /u/ の後 [e˕̃] …… /e/ の後 [õ̜] …… /o/ の後 [語末] [N] (口蓋垂鼻音) ・長音(引く音) 直前の母音を 1 音節長く伸ばす特殊音素として長音 /R/ を認める。音声表記は、母音の種類を問 わず [:] で表す([a:] [i:] [ɯ:] [e:] [o:] のように用いる)。ひらがな・カタカナとも「ー」で表記する。

参考 早口言葉と口蓋化・口蓋音 調音点の往復が大変

東京特許許可局

→と う きょ う とっ きょ きょ か きょ く [to : kʲo : tokʲ kʲo kʲo ka kʲo kɯ] シャア少佐、杏酒ソーダさ

→しゃ あ しょ う さ あ ん ず しゅ そ お だ さ [ɕa : ɕo : sa a n ʣɯ ɕɯ so : da sa]

テキストの修正・補足点まとめ

・母音は正確には [ä] [i˕] [ɯ̹˕] [e˕] [o̜] (ただし、音声表記では通常、テキストと同様 [a] [i] [ɯ] [e] [o] で代用する)

・有気音は[‘]→[ʰ]に統一(cf. テキスト p.37 上) ・「し」は [ɕi] (× [ʃ])、「に」は [nʲi](× [ɲ])

・タ行は /ta/ /chi/ /cu/ /te/ /to/ または /ta/ /ti/ /tu/ /te/ /to/ が妥当か(服部音韻論・テキス トの立場に近いが、ツァ行の扱いまで考えると、 /ta/ /ci/ /cu/ /te/ /to/ では不十分)

・拗音の詳述

・鼻母音は後続する母音ではなく前接する母音が基準(テキスト p.47→レジュメ p.12)

なお、最新版の国際音声記号(IPA)の一覧表は以下の URL で閲覧可能である。

参照

関連したドキュメント

問についてだが︑この間いに直接に答える前に確認しなけれ

存在が軽視されてきたことについては、さまざまな理由が考えられる。何よりも『君主論』に彼の名は全く登場しない。もう一つ

大きな要因として働いていることが見えてくるように思われるので 1はじめに 大江健三郎とテクノロジー

式目おいて「清十即ついぜん」は伝統的な流れの中にあり、その ㈲

対象期間を越えて行われる同一事業についても申請することができます。た

今回、新たな制度ができることをきっかけに、ステークホルダー別に寄せられている声を分析

討することに意義があると思われる︒ 具体的措置を考えておく必要があると思う︒

検討対象は、 RCCV とする。比較する応答結果については、応力に与える影響を概略的 に評価するために適していると考えられる変位とする。