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第1章 汎用ガスの計量について

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(1)第1章. 1-1 1-2 1-3. 汎用ガスの計量について. 1-7. 序論 本研究の目的 本研究の背景と課題(意義). 流量(体積)標準器. 1-7-1. はじめに. 1-7-2. 立方瓶・置換法. 1-7-3. ベルプルーバー. 1-7-4. ピストンプルーバー. 1-3-1. 課題と背景(研究開発の動機). 1-7-5. 音速ノズル. 1-3-2. 研究課題. 1-7-6. その他の流量標準器. 1-3-3. 研究・開発の結果 1-8. 1-4. 計量と精度(トレーサビリティ). 1-4-1 1-5. 気体流量の標準供給. 本研究の内容. 1-5-1. はじめに. 1-5-2. 研究内容. 1-6. 湿式ガスメータの開発の沿革. 1-6-2. 近年の湿式ガスメータ. 1-6-3. 基準ガスメータ. 1-6-4. 日本初期の湿式ガスメータ. 1-6-5. 計量法の歩み. 1-6-6. 日本の近代. 1-8-1. はじめに. 1-8-2. 膜式ガスメータの沿革. 1-8-3. 初期の膜式ガスメータ. 1-8-4. 近代から今日の膜式ガスメータ・ H 型(T 型). 1-8-5 参考文献. 湿式ガスメータの歴史. 1-6-1. 乾式ガスメータ. 1. 原理・構造と性能.

(2) 第1章. 汎用ガスの計量について. 1-1. 序論. 1). gas meter の語源は、 「うそつき」 「ほら吹き」と lie, like a gas meter・・・・のようにいわれ るくらいに不正確なものの代名詞とされていた。 別の見方をすると、ガス・気体を計測することの難しさの比喩といえる。 2)〜7). 地球上の多くの物質は、固体、液体、気体の三態に変化するが、. 固体で測ることが最も簡易. で正確である。さらに、質量保存則により質量で計ることが最も正確であるというふうに考えら れるが、この場合、ガスの配合成分が変化したりすると、逆に大きな誤差となる。特に燃料ガス を計量するということを別の表現をすると、消費エネルギーを計量することになり社会生活に欠 くことのできない重要な要素である。 20世紀に入り、前半世紀は戦争による人類の殺戮を、後半は大量生産と大量消費により地球 規模でのエネルギー消費が拡大、そして、自然が大きく破壊され、地球温暖化現象が顕著になっ てきている。21世紀を迎えた今日、炭化系代替エネルギー研究・開発も盛んであるが、LNG(天 然ガス)を中心とした家庭用ガスエネルギーは、無公害でもあることから、今世紀中に枯渇する ことなく、これからも長く使用されるに違いない。 炭化系エネルギーの中にも、物質の状態により、固体(石炭) 、液体(石油、LPG) 、気体(LNG) と三態に分類される。エネルギーを精度良く計測するという視点からすると、先ず長さ測定で分 子が最も強く結合した固体は、三次元の寸法測定でより正確に測定できるが、液体であれば、そ の容器の測定が必要となる。さらに、気体となると当然容器の測定も必要であるが、分子間結合 が最も弱い状態であることから、ボイル・シャールルの法則に則り、同時に温度・圧力の測定も 必要となる。また一方、分子量すなわち質量を測る方法にあっても、液体・気体は容器が必要と 8). なる。いずれの方法でも、気体を精度良く計測するには最もコストがかかり、測定が困難である。. この物質エネルギー、固体、液体、気体で最も効率良く低コストで消費者へ届けることができ るのは、都市ガスなどの配管を通して送る気体輸送方式である。 この方式は、気体分子が自由に運動していることから、次のような性質を持っている。 ①封じ込めに密閉容器が必要、②封じ込められた気体分子は、容器の内壁にぶつかって圧力を 生じる、③分子間の結合が極めて弱く、加わる圧力の増減によって体積が変化する。以上のよう な気体の性質から、ガス体エネルギーは固体である石炭、液体である石油と比べて次のような利. 2.

(3) 9). 点が生まれる。 ①分子間の結合が弱いので、不純物を排除しやすい。 ②空気と自由自在に混合するので、燃焼コントロールが容易。 ③流体なので、低エネルギー損失(圧力損失)でパイプ輸送ができる。 ④何種類ものガスを混合出来るので、熱量や成分の調整が容易である。 ⑤万一漏れても、拡散してしまう。 その反面、 ①同一体積内の分子の数が少ないので、体積当たりの発熱量が少ない。 ②輸送や貯蔵には密閉系が必要。 ③目にも見えず、漏れた場合、気付きにくい。 などの性質を持っている。 このように、ガス体エネルギーも長所・短所を有し、万能ではないが、輸送に対するエネルギ ーロスが小さく、総合的に判断すると環境に優しく、その上、経済性に富んでいると言える。し たがって、ガス需要はここ半世紀伸び続けている。 導管で運ばれたガスの各需要家は、ガスメータで量り、代金が支払われていることから、各家 庭用のガスメータの誤差は、全供給量からすると各戸別に見ると、微小であったとしても、総計 して考えると大量の誤差に繋がってゆくことになる。 このことから、各家庭用のガスメータの容積(流量)を検査するガスメータには湿式ガスメー タ(基準器)が使用されており、その基となる基準器誤差は全家庭の流量誤差へと連動するもの である。 このような観点から、いかに湿式ガスメータ(基準器)の精度向上が大事であるかが認識でき るると思われる。物質の三態の中でも、気体エネルギーを計測することは最も難しく、大変な課 題であるが、燃焼ガスを中心としたガスをより正確に計量するための本研究・課題である。 そのために、まず、湿式ガスメータの歴史的経緯について論説し、また、ガス計量の標準とし てきた各種容器(ベルプルーバー等)についても調査し、現在の湿式ガスメータの基本性能や誤 差要因を明らかにする。さらに、より良い計測の方法も含め、改良改善・開発の結果、高精度な 湿式ガスメータの開発ができた。その上、新しい計測精度の表現「不確かさ」についても誤差解 10). 析と実験により不確かさ評価ができ精度向上の確認ができたので、これらの研究成果を報告する。 また、湿式ガスメータがこのような重要なところに使用される割には、我が国では計量法(法 定計量)という規制、すなわち検定制度に守られ、湿式ガスメータに関する研究・開発者も非常 11)〜13). に少ないため、過去・現在の論文や文献も少ない。. 筆者は、唯一人、この研究に当たって来. た使命感に燃え、浅学非才そのものであるが、ガスの計量業界に少しでも役立つことを願い、筆 を執る次第である。 ガスが発見されたのは 1600 年で、オランダの化学者ファン・ヘルモント(Van Helmont)が 石炭の燃える成分を発見し、「ゆうれい」独語で 14) (Khaos)の意〕と名付けた。. 3. ガイスト (Geist)、〔ギリシャ語の混沌.

(4) 1667 年、英国の化学者トーマス・シャーレー(Tomas Shirley)が英国の炭田ランカシャー町 の. 燃える不思議な井戸. を調査した。. 1761 年、ロバート・ボイル(Robert Boyle)は石炭を乾留して可燃性ガスの発生を確認した。 1792 年、英国の化学者ウイリアム・ムルドック(William Murdoch)が石炭を鉄製の炉で蒸し 焼き(乾留)してガスを製造し、工場や街頭の照明用として実用化し、今日のガス事業の基礎を 築いた。 1801 年、フィリップ・ボン(Philip Le Bon)がパリの町に初めてガス灯をつけた。1807 年、 これを見た英国人フレドリック・アルバート・ウィンザーがロンドンの町の一部にガス灯を付け、 ガス事業の基礎を築いた。 1812 年、世界最初のガス会社がロンドンに設立された。その後、ヨーロッパでは 1815 年ベル リン、1826 年、ハノーバーでそれぞれガス会社が設立された。 我国では 1857 年、安政 4 年、薩摩の藩主島津斉彬邸内石灯篭にガス灯が付けられたのが我が 国の最初のガス使用である。1871 年、昭和 4 年、大阪造幣局で金銀の分析にガスが使用された。 1872 年、明治 5 年、横浜にガス製造所が作られ、開港間もないミナトヨコハマにガス灯が点灯さ れ、日本のガス事業の始まりとなった。 1874 年、明治 7 年、神戸瓦斯、東京瓦斯がガス事業を開始、いずれも、もっぱら照明用に使用 された。1897 年、明治 30 年 4 月 10 日、大阪瓦斯(株)設立。初めて調理用、暖房用としてガ スが使用されるようになった。 このような背景により、ガスを計量することが必要となっていった。最初はもっぱら照明用に 使用されることから、ガスメータの計量能力は○○灯という表わし方をしていた。 本章では、本研究の目的、その背景と課題、計量と精度、本研究の内容、そして湿式ガスメー タ各種流量標準器および乾式ガスメータの概論について述べる。. 4.

(5) 1-2. 本研究の目的. 湿式ガスメータは使用の歴史も長く、しかもガスの性質(粘度、比重、密度)が変わっても、 実量式であることから、比較的精度良く量れるため、取扱いが少々面倒でありローテクと言われ ながらも、今日でも幅広く使用されている。 中でも、年間 400 万台の家庭用ガスメータを検定する基準器として使用されているが、その精 度や理論に関して今日明確な研究解析がされていないと言っても過言ではない。そこで、本研究 は論理的解析を行い、課題を明らかにし、高精度な湿式ガスメータ(基準器)を開発するととも に、測定方法についても研究することを目的とする。 湿式ガスメータの製作方法を含む精度向上のため、以下の内容について調査研究を行う。最初 に.湿式ガスメータの実態および現状理論の構築、次に課題を論理的に解析、さらに理論に基づ く湿式ガスメータ本体の開発および計測方法による改善、最後に「不確かさ」解析評価する。 また、具体的には基本特性および誤差要因の解析から始め、以下の内容について研究・開発す る。 1.湿式ガスメータの基本特性(概論)、2.ドラム隔室数と計量体積および駆動力の解析、3. 計量誤差要因の解析。 そして、測定環境の研究による精度の向上については、1.最適封液の 研究調査、2.水蒸気圧補正式確立の実験研究、3.温度・湿度の正しい計量の確立、について 実験研究をする。 さらに、高精度化については1.樹脂化ドラムの研究開発、2.高精度湿式基準器の研究開発 (中流量域)、3.微小流量湿式基準器の開発、4.ゆらぎ防止の研究(パルスリニアライザー) 、 5.ワーキングスタンダードメータ(実用標準器)の研究開発、について研究・開発を行う。. 1-3 1-3-1. 本研究の背景とその課題. 課題と背景(研究開発の動機). 1.湿式ガスメータは体積式(実量式)流量計の中でも古く、イギリスのサミエル・クレック 兄弟により約180年前に発明実用化された。そのときは、もっぱらガス灯のガス消費量の計量 に使用していた。 今日では、各種流量計の校正用標準器や、家庭用ガスメータの検定用基準器として、また、公 害ガスの流量やガス機器の燃焼検査用流量の測定に使用、比較的低流量域の標準器として使用さ れている。その他ガス発生量の計量や、研究室での気体計測に一部使用されている。 湿式ガスメータは、ガスの比重、密度、粘度の影響を受けずにこれ等の異なるガス体を比較的 正確に計量できることが大きな特徴である。前述のような用途に用いられていることから、今日 では特に湿式ガスメータの測定精度の要求が高まってきている。. 5.

(6) 2.このような湿式ガスメータの用途の変遷から、今日では時代と共に生産台数は減少、特に ここ半世紀では大幅に減少した。我国における湿式ガスメータのメーカーは(株)シナガワが唯 一となってしまった。筆者はそんな環境下で仕事をさせて頂いた関係上、当社が開発・研究しな ければ、との産業会への社会的責任と使命を感じて、その重要性を認識、今日まで湿式ガスメー タの研究・開発から目をそらさずに、研究・開発に従事する機会を多く与えて頂いた。 3.しかし、湿式ガスメータは長年の歴史があるにもかかわらず、筆者の知る限り技術文献は 11)〜13). 国内・外を含め、非常に少なかった。. よって、湿式ガスメータの精度の向上を目指すために. は、先ず基礎理論解析から始めなければならない状況下にある。 4.一方、比較的湿式ガスメータが多く使用されていた約30〜40年前以前であっても、湿 式ガスメータの研究・開発に力が入らなかった理由として、以下のことがあったと思われる。 圧縮性流体であるガス体の計量目体の評価が大変むずかしかった、その上、我国における計量 法では、検定に合格すれば国のお墨付きが頂けることで、精度(計量誤差)に関係なく使用でき たことから、積極的研究・開発が実施されなかった。 5.次に、湿式ガスメータの原理・構造上の課題については、以下の内容があった。 ①湿式ガスメータ計量エレメントであるドラムの製作には高度の熟練を要する。半田付技能者 によってのみ製作が可能であった(他産業からの浸入がむずかしい) 。 ②計量ドラムはスパイラル状で通常 4 室から成り、 1回転中の計量体積のゆらぎが大きいため、 正確な計測にあっては計量ドラムを数回転以上、または整数回転しなければならなかった。 ③原理は、メータ内に封入された封液(水)と計量ドラムを置換することでガスを計量する。 そのため、計量ドラムの回転により自由表面を有する封液の揺動や、液位測定精度により計量 誤差として影響を及ぼすことになる。 ④一方、封液に水を用いる場合は、水蒸気圧を含んだガスが液化し水滴となり、大きな体積変 化が生じ、計量の大きな誤差要因となっていた。 (水蒸気圧補正の問題) ⑤この水蒸気圧補正は大変にむずかしく、測定者によっては水蒸気圧補正の有無があったり、 また湿式ガスメータを通ったときの湿度は飽和水蒸気圧の100%とするもの(公害ガス測定、 およびガス機器の検査) 、や計量法では95%(90%)とするとう、まちまちである。 ⑥水蒸気圧の問題を防止するために用いられた封液がオイルの場合は、オイルの酸化、ガス溶 解、オイルの臭気等の課題があった。 ⑦封液量が湿式ガスメータの計量体積を決定するにもかかわらず、ガスメータ本体の設置姿勢 を決定する水準器の感度誤差が大きかったために、設置による誤差が比較的大きかった。 6.世界的に、1980 年代に入り従来の体積標準(ベルプルーバ−等)に代る高精度な音速ノズ ル標準器の研究開発が進み、流量計測の精度向上が図られるようになってきた。我国においては、 平成5年計量法が改正され、実質上新計量法が制定された。この新計量法の大きな違いは、国際. 6.

(7) 標準に対処するため基準器制度(法定計量)とは別に流量のトレーサビリティー制度が発足、流 量においても精度は従来の『器差○.○%表示』からあらゆる誤差を含んだ測定の再現性ともい 15). える『不確かさ』をもって国家標準にトレサーブルでなければならない、ということになった。 この『不確かさ』を明示するためには、流量の場合、質量・長さ・時間・温度・圧力の測定環 境も含めた各物理量毎の誤差解析『不確かさ』を確立する必要が生じてきた。 7.我が国における流量の標準供給は、従来、法定計量では、(A)質量→体積(基準タンク) →流量標準器(湿式ガスメータ)→湿式ガスメータ・一般流量計であった。 ところが、トレーサビリティー制度では、 (B)質量(国家標準)→音速ノズル(特定2次標準 jcss)→湿式ガスメータ・一般流量計の流れに変わった。すなわち、湿式ガスメータから上位標準 器を見た場合にピストンやベルプルーバーから音速ノズルに変わった。 しかし今日、トレサービリティー制度の立遅れから法定計量の中で依然として(A)のシステ ムが実質上稼動しているのが実態である。 8.平成5年、新計量法の制定にあっては、湿式基準器の精度(再現性)に問題ありとのこと から、我が国の法定計量における湿式基準器に代わって音速ノズルを用いることが検討され、一 時は湿式基準器の廃止論まで大きく浮上したこともあったが、そんなとき、筆者は湿式基準器の 精度(再現性)向上を図るため、論理的に誤差要因を洗い出し、解析とその解明に全力で取り組 み、高精度湿式基準器(10L型)を研究・開発した。 結果、 (財)日本計量器工業連合会のガスメータ検定調査会で当湿式基準器は再現性が良く、コ ストを含めると音速ノズルより優位であることが検証され、新計量法においても、家庭用ガスメ ータの検定用基準器は湿式ガスメータを用いることが決定した。 9.1970年代に入ると、我が国におけるガスメータの検定制度(法定計量)は、ある意味 で計量法に守られ、検定が合格すれば良いということであったが、その後大手ガス会社が家庭用 ガスメータの受入れ検査制度の導入の中で、ガス会社がベルプルーバー等の標準器を導入し、受 入れ検査が実施されることになり、被受験メータである家庭用膜式ガスメータが改良・改善され、 性能・精度の向上が図られてきた。 16). 一方、ヨーロッパを中心としたOIML(国際計量機構)により国際的にも検定制度が見直さ れ、家庭用ガスメータを中心とした検定は従来の1流量点から3流量点となった。 我が国においても、OIMLに対処すべき検討が進められて来たが、平成 5 年の新計量法では 2点検定の実施に留まってしまった。 10.その後、我国では3点検定を基本的に実施すべく、法改正の準備を進めて来た。 しかし、平成13年度の省庁再編成により、旧計量研究所が独立行政法人・産業技術総合標準研 究所となったため、人事異動等で当初の予定より遅れている。しかし、OIMLの国際勧告とし て、我国はさらに、3点検定とするべく方向性で2000年に欧州へ調査団を派遣、3点検定の. 7.

(8) 実態やその使用基準器について視察した。しかし、現在まだ実施されていない。 11.ここで3点検定とその流量ポイントについての課題を明らかにする。 数量の多い4号メータ(4m3/h. max)を例に挙げてみると、一つは Qmax:4m3/h、. 1/20Qmax:0.2m3/h、Qmin:0.016m3/h の3流量点となる。ここで問題になるの は、我国の法定計量における基準器の器差(値付)は最小0.1m3/h である。すなわち、これ以 下のトレーサブルされた流量の校正はできないという大きな課題が生じている(勿論、高価な音 17). 速ノズルを用いれば可能である) 。従って、法改正をしても、その流量(微小流量)を測定する基 準器が存在しない。現行計量法における最小の湿式基準器は、1回転2L型である。1回転の排 出量が大きいため、微小流量の計測にあっては長時間を必要とし、現行のガスメータ検定ライン (工場のライン)で行うことは大変難しい状況下にある。 筆者はこの課題に「微小流量湿式基準ガスメータの開発」を提案、(独)産業技術総合研究所 のご指導の下に中小企業総合事業団よりいたく開発を受託した。この研究開発により課題の微小 流量の検定(校正)を可能にしたのが微小流量湿式基準器で、1L型5室ドラム微小流量湿式基 準器である。 1-3-2. 研究課題. 前述のような背景に基づき、湿式ガスメータを用いた基準器は以下の課題がある。 1. 計量ドラム開発研究、2. 誤差解析では①水平度(設置姿勢温差) 、②液位(液面と温差)、 3. 計量ドラムの隔室数とゆらぎの解析、4. 湿式ガスメータの基礎解析、5. 最適封液の選定研究、 6. 水蒸気圧補正実験及び補正式の確立、7. 高精度基準器の研究開発、8. ゆらぎ防止の研究開発 (パルスによる)、9. 微小流量湿式基準器の研究開発、及び 10. 最高精度の湿式実用標準器の開 発と不確かさ(精度)解析。 1-3-3. 研究・開発の結果. 前述の課題研究の結果、以下の研究成果を得た。 1.湿式ガスメータ精度向上のための湿式ガスメータ基礎解析(誤差解析と基礎理論) 2.高精度湿式基準器の研究開発と精度評価① 3.高精度湿式ワーキングスタンダードメータ(実用標準器)の研究開発② 4.微小流量湿式基準器の研究開発(5室ドラム(特許) ) 5.湿式ガスメータの最適封液の調査研究(シリコーンオイル) 6.水蒸気圧補正実験による水蒸気圧補正式の確立 7.ゆらぎ低減パルス補正器の開発(特許) 8.セパレート式樹脂ドラムの開発(特許) (樹脂化ドラムメータ) 9.湿式ガスメータの不確かさ解析 10.流量の標準供給. 認定事業(JCSS)の取得(油封式湿式ガスメータ). 8.

(9) 1-4 1-4-1. 計量と精度(トレーサビリティ). 気体流量の標準供給. (1)SI 単位と標準 計測の単位として国際単位系(SI)では、以下 7 つが SI の基本単位、長さ(m) 、質量(Kg) 、 時間(s) 、電流(A) 、熱力学温度(K)、物質量(mol) 、光度(cd)で表わしている。この 7 つ の基本単位は、国際的にその値は不確かさをもって絶えず確認、検証されている。 さらに固有の名称を用いた SI 組立単位で表わしている。流量の単位では、m3/h、L/min、g/s などの SI 組立単位で表わされる。したがって、流量は長さ、質量、時間の標準から導かれるが、 その過程で温度、圧力、湿度、密度、モル数の物理量の測定が必要となる。すなわち、流量・体 積は組立量が多くなるので、標準供給のトレーサブルについては多くの正確な計測器、時間、お よびマンパワーを必要とすることが JCSS 標準供給の面で障害になっている。 (2)標準供給の重要性 今日では、ベルプルーバーなどの体積標準から 秤量タンク、音速ノズルを用いた質量標準へと移 行しつつあり、日本では認定事業(JCSS)とし 流量の標準供給は質量標準すなわち、音速ノズル 17). (ソニックノズル)である。 旧計量研究所の今井所長の年頭所感「2000 年 代これからの計量界で必要な物」の中にメッセー ジがあったので、その一部を次に紹介する。 「・・・別の見方をすれば、学術のみならず、 産業分野、さらには人間の健康安全、地域環境の 保護の立場からも正しい計量、 そしてその根元と なる国際並びに国家計量標準の供給に高度化が 世界的に再認識されてきているともいえます。. Fig. 1-1. 流量標準のスキーム17). そのためには国際的なトレーサビリティの体 系を構築することが基本的な要求であり、校正技術を基本とする計量標準の供給のみならず、そ こにつながる試験所認定、法定計量においてもその根源には、基幹となる量ごとの国際比較によ る現実の結果と技術能力を基本とした、真のトレーサビリティ体系を確立することが要求されて います。 ・・・そして、これらの基盤として計量標準のトレーサビリティの確認と信頼性評価の手 段としての不確かさ解析(従来の誤差評価に代わるもの)技術の導入が要求されています。 ・・・」 と、トレーサビリティ制度の重要性について述べている。. 9.

(10) 1-5 1-5-1. 本研究の内容. はじめに. 本論文の主研究テーマは、湿式ガスメータの誤差を論理的に解析し、より高い信頼性のある精 度の高い(不確かさの小さい)湿式ガスメータの研究・開発と測定方法による精度の向上を図る ものである。次節に、各章毎に内容を示す。 1-5-2 第1章. 研究内容 汎用ガスの計量について. 本論文全体の概要、目的、本研究の歴史的背景と意義、そして本研究の課題を挙げる。そし て湿式ガスメータ、乾式ガスメータ及び各種流量標準器の概論について述べる。 第2章. 湿式ガスメータの原理・構造と基本的特性の解明. 前半は、過去の実績に基く湿式ガスメータの原理・構造・主要部品の機能と役割、一般性能 について述べ、後半では、新しい視点から計量誤差要因について解析する。 第3章. 計量誤差の解析(体積誤差の要因解析). 本研究のテーマは、湿式ガスメータの高精度化である。そのためには、湿式ガスメータの誤 差について論理解析をし、第10章で議論する「不確かさ」への理論的裏付をする。第3章以 降は、すべて過去にない新しい研究・開発についての議論である。また、一部実験で検証する。 第4章. ドラムの隔室数とゆらぎの解析. 湿式ガスメータの短所ともいえる回転のゆらぎを、3、4、5、6の隔室数別にシミュレー ション解析を行う。また、ゆらぎを計測するためのドラム解析装置の開発についても述べる。 第5章. 樹脂化ドラムメータの研究開発. 計量ドラムの軽量化と併せ、在来の板金加工に半田付という方式を払拭するために、新しい 製作方法の計量ドラムが開発できた。これについて述べる。 (特許) 第6章. 高精度湿式基準器の研究開発. 第3章に於ける誤差解析より、湿式ガスメータの精度に関する課題を明らかにし、その問題 点を改良・改善された高精度 10L 型湿式基準器の開発および評価実験について述べる。 第7章. 最適封液の調査・研究*. 湿式ガスメータに使用する置換液について、早稲田大学. 土田英俊教授のご指導に基き調. 査・研究を実施した。結果、シリコーンオイルが最も良いことが分かった。その調査・研究 結 果について報告する。. 10.

(11) 第8章. 水蒸気圧補正の実験研究*. 封液に水を使用した場合は、水蒸気圧分圧の補正をすることにより、高精度計測が可能と なる。計量法では、20 年前に法規定しているが、その実験報告もなく、また実施されていな い場合が多いことがわかった。水蒸気圧補正実験より補正式を確立したのでその内容について 報告する。 第9章. 微小流量湿式基準器の開発*. 計量ドラム数を4室から5室にすることにより、湿式ガスメータの回転のゆらぎを大きく低 減できた。しかし、ゆらぎが完全に消滅した訳ではないので、ソフト面からのゆらぎ防止装置 (パルスリニアライザー)を開発し特許を取得した。ゆらぎの大幅低減を可能にし、計測精度 の向上、計測時間を短縮した。結果、OIML(法定国際機構)で求められている Qmin 計測 を可能にした。1〜300L/h 計測出来る湿式基準器の研究開発について報告する。 第10章. ワーキングスタンダードメータの研究開発(不確かさ解析). jcss といって、国家と繋がった音速ノズル標準器に代って流量標準器として使用できる最も 高精度の湿式ガスメータの開発について述べ、その精度を新しい表現「不確かさ」の解析に ついて述べる。 第11章. 結論. 全章をまとめ、結論として湿式ガスメータは流量標準や家庭用ガスメータの基準器として充 分な精度向上が図られ、研究改良の結果音速ノズルに近接した「不確かさ」が得られた事に ついて記述する。 使用記号 研究業績 感謝の辞 本論文は、湿式ガスメータに関する学位論文として纏めたものであるが、湿式ガスメータに 関する研究論文、書籍が非常に少ないことを鑑みて、今後流量計測業界で広くご活用戴ければ との思いで解説的論調も多く記述した事を付記する。なお、*印は、中小企業総合事業団の委 託開発による成果である。. 11.

(12) 1-6 1-6-1. 湿式ガスメータの歴史 18), 19). 湿式ガスメータ開発の沿革. Fig.1-2 に示すように、世界最初に開発されたのは、湿式ガスメータである。1815 年、英国の サミエル・クレッグ(Samuel Clegg)とサミエル・クロスレー(samuel Crosley)兄弟によって、 初めて実量式湿式ガスメータが考案された。これは回転式ドラムではなく、一対の現在のベルプ ルーバータンクのようなものであった。 次いで、1816 年〜1817 年にサミエル兄弟とその助手、ジョン・マラム(John Malam)によ って、湿式回転ドラムガスメータが改良された。この三人によって湿式ガスメータの基礎が確立 されたのである。 (Fig. 1-3 参照) 1820 年にサミエル・クロスレーがさらに改良し、基本的構造を作り上げ、 クロスレードラム として知られている。また、この大型のものが ハイマンドラム(Hinman Drum) と呼ばれて いる。 湿式ガスメータは、ほとんどのガス製造所のガス製造量と送出量の測定に使用された。小型の ものは最初ガス灯に使用されたことから、ガスの計量能力は. 灯. で表わされていた。その後、. 需要家のガス計量用として使用されるようになった。湿式ガスメータは、メータ内に 3 分の 2 程 度水を封入して計量回転ドラムで水とガスを置換してガスを計量する原理であるため、精度はと もかく、時折天候(凍結)に左右されたり、使いづらさなどの点で不評をかっていた。また、価 格も高価であった。. Fig. 1-2 1-6-2. Fig. 1-3. 初期のドラム式湿式ガスメータ. 近年の湿式ガスメータ. 英国で当初開発された湿式ガスメータは、A型(B型)家庭用ガスメータの実用化に伴い、家 庭用ガスメータとしては使用されず、もっぱらガス製造量を計測する超大型メータとして、ステ ーションメータと呼ばれ、欧州、米国で 1950 年代まで長期にわたり使用されてきた。その後、 ガス製造量を計量する大容量ガスメータはルーツ式メータや、タービン式メータなどに代わり小 型化され今日に至っている。. 12.

(13) 一方、湿式ガスメータは原理構造上ガスを非 常に精度良く計測できることや、ガスの比重、 粘度、密度の影響を受けないなどの特徴から、 以下のように使用されるようになった。 ガスカロリーメータと呼ばれ、ガスの発熱量 の計測に使用のもの。また、実験用ガスメータ と呼ばれているものは、大学や研究所でのガス 計測用として使用されるようになった。 その他、湿式基準ガスメータと呼ばれている このメータは、欧州で乾式ガスメータの検査用 として使用されるようになった。 これらの湿式ガスメータは、今日に至るまで 幅広く使用されている。しかし、精度を必要と. Fig. 1-4. 湿式ステーションメータ. しないガスの計量には、浮子式流量計(各種の推量式瞬間流量計)などが多く使用され、世界的 に湿式ガスメータの生産量は今日大幅に低下している。 1-6-3. 基準ガスメータ. 乾式ガスメータを検査する基準器として、欧州ではもっぱら湿式ガスメータを使用しているが、 米国ではベルの形をしたガスタンク、いわゆるベルプルーバーを主に使用している。 近年では、これらに代わってソニックノズル式基準器の導入が試みられているようである。こ れらは、在来の実量式とは異なり、瞬間流速計測方式であり、短時間計測を特徴とし、精度も更 に向上しているが、検査する環境の影響を大きく受けるため、高精度の恒温、恒湿の試験環境下 で、温度、圧力などセンサー類の高精度化が条件となる。 1-6-4. 日本初期の湿式ガスメータ. (1)液面の調整 20) 湿式ステーションメータ(Fig. 1-4 参照)は、常時水を注入するオーバーフロー方式であった ので、液面調整は不用であった。実験用および基準器用は初期設定の際にオーバーフローパイプ 方式で水位の調整をしていたが、1960 年代に入り、ガラス管を用いたゲージグラス方式、その後 ゲージボックス方式に変わり、今日ではピンポイント反射方式が主流で、最も精度が良い。 (2)封液 通常は水を用いていた。また、水の防錆のためや凍結防止のために、カルシューム塩類などを 入れたりした。水は水蒸気圧の影響でガスの体積が変化し、計測誤差が生じるので、水の代わり に炭化水素系オイル、流動パラフィン油などを使用している。. 13.

(14) 21). (3)日本の初期の実験用ガスメータ1L型. Fig. 1-5 は、大正から昭和 40 年頃まで、半世紀に わたって使用されたもので、1L、3L、5Lのタイプ があり、液面の調整はすべてオーバーフローパイプ方 式である。ドラム材質は黄銅板、ケースはブリキ板で 接合は半田付けとしている。 21). (4)日本初期の湿式ガスメータ(10 灯型). Fig. 1-6 は、大正から昭和 35 年頃まで使用された もので、3、5、10、20、30、50、100 灯型で今日の ドラム排出量に換算すると、それぞれ 4、2、7、14、 Fig. 1-5. 28、42、70、140L型となる。 ドラムは単式で、ケースは鉄鋳物製、構造は前室. WT 型 5L 湿式実験用 ガスメータ. が二つに分離され、前室と後室の連絡パイプを有し、 計量ドラム内の液面(水位)を制御することにより 器差の右肩下がりを防止した。 本器は吹込管の構造とあわせ、少し右肩下がりの 誤差(器差)性能であった。液面調整はすべてオー バーフローパイプ方式であった。. Fig. 1-6 1-6-5. 10 灯用湿式基準器. 計量法の歩み. (1)湿式ガスメータと計量法の歩み 1909 年(明治 24 年)3 月 6 日、改正度量衡法でガスメータは事業規制の対象となり、湿式ガ スメータは、1916 年(大正 5 年)に度量衡法に基き、検定が開始された。そのときの検定有効期 間は、乾式ガスメータと同じく 5 年間であった。以来、今日の新計量法(1993 年)に至るまでの、 湿式ガスメータの特筆すべき項目についてのみ記述する。 ・1916年(大正5年) 、7月1日:検定開始、検定公差±2%、使用公差±3%、有効期間5 ・年、基準器の有効期間は1年。 ・1944年(昭和19年)10月:有効期間7年となる(戦争で物資不足のため) 。 ・1952年(昭和27年). 3月:使用公差は±4%となる。. 14.

(15) ・1968年(昭和43年) 7月:検定公差は±1.5%になる(大、小の流量域では±2.5%)。 ・1975年(昭和50年). 22). 7月:封液は水以外にオイルなどの使用を認める。. 22). ・1979年(昭和54年)10月:湿式基準器の有効期間が 1 年から 2 年に延長。 (封液はオイルの使用を前提として). :100m3/h を超える実測式ガスメータは、通産省計量研 究所から都道府県の検定所に委譲された。 :水封式湿式ガスメータで膜式メータを検査する場合は、 水蒸気圧を補正する。補正値は、ガスの湿度が 50〜60% のときは 0.95 を、10%以下のときは飽和水蒸気に 0.9 を 乗ずる。 ・1983年(昭和58年). 9月:ピストンプルーバー、ベルプルーバーが基準タンクとし て基準器に追加された。有効期間は 5 年。 :湿式基準器には 3 ヶ所の水準線(水盛り線)を設けるこ ととなる。 :20L以下の湿式基準器の検定は、都道府県に委譲された。. ・1993年(平成. 10) 5年)11月:新計量法により、実測湿式ガスメータは、特定計量器か. ら免除され、検定の対象外とされた。 :平成 3、4 年(1991〜2)にかけて、湿式ガスメータ の技術委員会が発足、検定有効期間、実態調査などを検 討したが、料金対象としての使用が少ない等々から、検 定は除外されることになる。なお、このとき決まった湿 式ガスメータの有効期間は 5 年であった。 ・乾式ガスメータの検定には、初期より実ガスにて行う旨、度量衡法では定められていたが、 1935 年(昭和 10 年)から 1938 年(昭和 13 年)の研究により、1940 年(昭和 15 年)から空 22) 気を用いることが認められた。しかし、空気で検査する場合は、−0.4%の補正をしていた。こ. の補正は、1945 年代(昭和 20 年)まで続いたが、膜式B型ガスメータの改良により解消した。 当然のことながら、湿式ガスメータの場合はガス体の成分の影響を受けないので、初期より空 気で検定が行われた。 ・1998年(平成10年). :新計量法によるトレーサビリティ制度に基き、基準湿式 ガスメータの国家検定は、法定計量器のみとなる。 (ガス メータメーカ以外には国家検定ができなくなった。 ). (2)日本の初期ステーションメータ 大正から 1965 年(昭和 40 年)頃まで、ガス会社のガス供給量計測用として、半世紀にわたり 使用されてきた湿式ステーションメータは、100 灯(130L/rev)から 10,000 灯(16.6m3/rev) のものが鋳物製で出来ており、高さ 1.2m から最大 4m もあった。(Fig. 1-4 参照。 )正に、大きい. 15.

(16) ことは良いことだ、との時代の象徴と言えよう。なお、水面調整はオーバーフロー型で、常時小 量の水を供給していた。また、前室がないことが構造上の特徴である。 (3)二重指針型実験用ガスメータ 2.5L型 23) Fig. 1-7 は、トータル積算指針と観測積算指針 (上向き)からなるメータで、昭和初期から昭和 20 年代まで約 30 年間製造されたメータである。 2.5L型と 14L型の 2 機種で、観測指針はリセッ トができ、当時としては大変重宝がられたようで ある。. Fig. 1-7. 二重指針式 2.5L 型. 23). (4)WT型湿式実験用ガスメータ. 本器の外観は、前回日本の初期の湿式ガスメータとして紹介したものとほとんど変わらないが、 液面調整は、オーバーフロー方式を止め、ゲージグラス方式になっている。 1955 年(昭和 30 年)から 1985 年(昭和 60 年)まで、約 30 年間生産された。1L、3L、5L、 10L 型ブリキケースに半田付け加工で製作、20L、33L、100L、200L 型の大型メータは鋳物ケー スで製作されていた。1965 年(昭和 40 年頃)からは耐腐食製のオールステンレス製も生産され、 特に 1L 型並びに 5L 型は公害ガスの測定用として、JIS Z 8808、JIS K 0130 などで規格化され、 湿式ガスメータが推奨されており、公害日本の汚名を払拭する一翼をにない今日も活躍しつづけ ている。 (Fig. 1-8 参照). Fig. 1-8. Fig. 1-9 WE−1型. WT−5L型. 16.

(17) 23) (5)携帯用 1L 湿式ガスメータ(WE−1型). 本器は 1955 年代(昭和 30 年代)初頭、自動車エンジンのシリンダーから漏れるガス、いわゆ る、ブローバイガスの測定用として、自動車会社のニーズに応え、開発したメータである。在来 の丸形の概念を打ち破り、角形にした。しかも、携帯用にしたことなどにより、自動車業界に止 まらず、幅広く使用され、ヒット商品となった。 1975 年(昭和 50 年)代まで生産され、今日でも、大学の実験室などで使用されている。(Fig. 1-9 参照) このメータの特色は、1.ケーシングが角形、斬新なデザインで、湿式ガスメータで初の携帯 用、2.ケース、ドラムを始め、オールステンレス製メータとして、耐腐食性ガスの計測を可能 にした(ステンレス製メータの先駆け)、3.液面計、温度計を内装にした、4.流量調整コック を取り外した(計測ラインで流量調整)、5.ドラムの回転ムラも小さく、高精度。6.拡大指針 を設け、最小読み取り単位は 1mL となった。このことから、別名、精密型 1/1000L 型と呼ばれ た。 ブローバイガスとは、自動車エンジンのシリンダー、ピストンリングから漏れたガスを言い、 24) ガス化した不燃ガソリンだけでなく、同様のエンジンオイルも含む。. このガスの成分は、75〜80%は未燃焼の混合気や酸化した炭化水素ガス(CH)で、残りの 20 〜25%が燃焼ガスである。このガスには、強い酸性の水分が含まれており、一酸化炭素(CO)、 炭化水素ガス(HmCn)窒素酸化物(NOx)の 3 つが有害物質である。 昔は、このガスを自動車の排気ガスとして大気に放出していた。そして米国では、自動車の排 出ガスによる大気汚染が問題となり、1963 年ブローバイガスの規制が敷かれ、1970 年にマスキ ー法により、本格的な規制が始まった。この排ガスは、現在では燃焼室に還元し、完全に燃やす ことが義務付けられている。このような状況下で、ガソリンやオイルで汚れたブローバイガスの 計測用として、最も適した流量計が湿式ガスメータである。これに代わる流量計が今日まで種々 検討されてきたが、これに優るものはないようである。かくして、日本の自動車産業に、そして 環境汚染に対してWE−1を含め、湿式ガスメータは今も貢献し続けている。 その後、シナガワでは湿式ガスメータを搭載した、ブローバイガス自動計測システムを開発、 各自動車会社に納入実績がある。このWE−1型は、1958 年に(株)シナガワの山田佐田男氏が 開発した。 1-6-6. 日本の近代. 1965 年(昭和 40 年)に入ると、家庭用の乾式ガスメータはB型からH型(T型)へ、さらに NH型へと代わっていった。その主たる要因の一つは3Kで、しかも特殊技能を要する半田付け 作業の軽減にあった。湿式ガスメータにあっても、ケーシングの組立性の向上を図るため、同時 期に抜本的改良、開発が行われた。その結果、10L 型以下のケーシングの半田付けを簡略化する ために、角形ケーシングを採用した。 その当時はWK型、その後改良され、現在生産しているのはWNK型である。その特徴は以下. 17.

(18) のとおりである。 ①角形ケーシングの採用、ガスケット方式の採用 (半田付けを止め、ねじ組立へ) ②各プラグ類にOリングの採用 ③流量調整コックの廃止 ④ドラム軸受けにベアリング、オイルシールの採用 ⑤ダブル吹き込み管の採用(現在はシングル) ⑥高感度水準器の採用 ⑦ピンポイント式液面計の採用 ⑧デジタルカウンターの採用、発信器の搭載 ⑨最大計量範囲の拡大(300〜600rev/h) Fig. 1-10. ⑩計量ドラムの改良、ステンレス材の採用. 1965 年代のWK−1型. 23). その他に 0.5L 型の開発、オールステンレス製の耐腐食型が商品化された。機種は、0.5、1、2、 2.5、5、10L 型がある。. 18.

(19) 1-7 1-7-1. 流量(体積)標準器. はじめに. 我国では、1993 年(平成 5 年)の新計量法では、流量の標準の原器は質量からトレースされた 音速ノズル標準器となった。それ以前は、升(マス)すなわち体積をもって流量の標準としてい た。海外では質量にトレースされていれば、音速ノズルでも体積を量るベルプルーバーなどでも 良いとされている。 ここでは、体積標準器の歴史から、音速ノズル流量標準器に至るまで、主に原理と構造につい て述べる。中でも、ベルプルーバーについては、今日も法定計量(特定計量器)の標準器として 使用していることから、詳しく述べる。 1-7-2. 立方瓶・置換法. (1)標準用立方瓶(standard cubic bottle) 気体体積標準器の歴史の第一歩は、容器に入った水との置換であったようである。 この容器を升(マス)といい、Fig. 1-11 は、中国漢代の標準によったといわれる王莽(オウボ 25). ウ)の容器を示す。. 計量びん. 水入れ. Fig. 1-11. Fig. 1-12. 升. 立方瓶. 立方瓶は、この原理を気体用の升に実用化したもので、文献によると、湿式ガスメータなどの 校正用標準器として欧米で開発、使用されていた。容器内の容積を水の質量により換算して用い られていた。Fig.1-12 参照 日本においては、1914 年頃(大正の初期)より、1954 年(昭和 20 年代)まで実際に使われて いたが、その間ベルプルーバーが開発され、1935 年(昭和 10 年)頃より徐々にベルプルーバー に代わっていった。. 19.

(20) (株)品川製作所では、20L 型、40L 型の 2 機種を製作していた。これは、立方瓶の本 体部と水槽タンクとポンプからできていた。 (Fig. 1-13 参照). Fig. 1-13. 21). 昭和初期の標準用立方瓶(40L). (2)置換法 Fig. 1-14 は、高架水槽を用いたもので、水槽の水を秤量 タンクに落下させることによって、被校正メータを通して、 ガス(空気)を吸入し、落下した水の質量を天秤で計りガ ス体積を校正する方法である。この方法は、大変精度は高 いが、オペレーションが面倒なため、実用的ではなく、気 体の体積、流量の高位の体積標準器として昔は工業技術院 計量研究所にあった。 今日の日本においては、これは音速ノズルに代わり、こ の置換法装置は今日、日本では見ることができない(新計 量法では音速ノズルが特定標準器となっている) 。 1-14 水の代わりに 一方、欧州のドイツ、オランダ、スイス、フランス、では、この原理Fig. を用いて、 蒸気圧の低い特殊なオイルを用いるなどの改良を加え、質量からトレースされた第一標準器とし て、気体の体積、流量の校正の骨格をなしている。ISOのトレーサビリティの柱となっており、 この標準器より、ベルプルーバーや湿式ガスメータを校正し、湿式ガスメータの不確かさはそこ で 0.1%以下であるといわれている。 Fig. 1-14 は写真はオランダのNMIの置換法による校正装置である。 1-7-3. ベルプルーバー(bell prover). (1)概要 ガスを計量する容器がベルの形をしていることから、一般にベルプルーバーと呼んでいる。日 本では、ガス会社が製造ガスの貯蔵と圧力の調整を行っているものと同じ構造をしていたことか ら、湿式ガスホルダーやガスプルーバーとも呼ばれている。 日本では、湿式ガスメータを標準器(計量法では基. 20.

(21) 準器と呼んでいる)として、5〜6 台の家庭用乾式ガス メータを直列接続して、器差試験を行っている。 欧米、特にアメリカではベルプルーバー1 基に対し て、被検査メータ 1 台を接続して行っている。アメリ カのメータ工場の検査室には、今日でも大小、数十台 のベルプルーバーがずらっと並んでいる。 すべて手動操作で計量する時代では、不器用な欧米. Fig. 1-15. ベルプルーバー. 人は、数台を一気に検査すると観測誤差が多くなるため、1 対 1 の検査をベルプルーバーを用い 26). て行っていたことから来ているようである。. もともと、ガスメータの誤差性能に対する、法的拘束が出来たのは、ガスが実用化に供されて から約 100 年後である。英国では 1861 年、米国では 4 年後の 1865 年であった。ちなみに日本で 26) は 1916 年(大正 5 年)に、ガスメータの国家検定が開始された。. 日本のベルプルーバーの大きさは、100L、120L、150L、300L 型が製作、使用されている。す べて家庭用のガスメータの検査流量範囲である。現在このベルプルーバーの新計量法での位置づ けは、トレーサビリティ制度から外れ、法定計量の第一基準器として、もっぱら湿式基準器の校 正、検定に使われている。校正周期は、ピストンプルーバーと同様で 5 年間である。 アメリカでは、約 100L 型から大流量用の 14m3L 型が、製作、使用されている。(Fig. 1-15〜 17 参照). Fig. 1-16. 21). 昭和 10 年製 150L ベルプルーバー. Fig. 1-17. 26). 大型ベルプルーバー. (2)ベルプルーバーの原理、構造 ベルプルーバーの構造の概要を Fig. 1-18 に示す。また、外観の一例を写真に示す。Fig. 1-18 に示すように、体積目盛板を取り付けたベル(浮鐘とも呼ぶ)が、水、または油を封入した内筒 形のタンク内を上下する。作動中のベル内圧は、インボリュートカーブをもった浮力補正カムと. 21.

(22) 重り、および浮力補正用重りにより一定に保たれている。 目盛はベルの体積を表し、ベルから排出される気体の体積を直接読み取ることができる。 図のように、タンク内は二重構造になっているものが多い。すなわち、シール用封液は外側タ ンクと内側タンク(ドライウェル)の間の環状部に入っている。二重構造のものは一重タンクに 対して以下の点が優れている。 タンク内に入る封液が小量ですむ。よって、温度の追従性が良くなる。また、ベルの降下によ り液面変化が大きく表れるので、液面の測定精度が上がる。そして研著な効果として、計量終了 時ベルが降下したときの残留体積が小さくなるので、計量中の温度変化による影響が小さい。特 に、流速の遅い計量の場合の効果は大きい。 ホイール. 封液は、開発当初、水を用いていたが、 水は水蒸気圧によるガスの体積変化があ. 浮力補正カム ベル. ることや、ベルに付着している水の気化. スケール. 熱により、ベル内温度が変化するための 誤差が生じるので、今日ではオイルを用 いている。. 浮力補正おもり. 封液用オイルとしては、粘度・蒸気圧 が低く、引火点の高い石油系オイルを一 通気管. 般的に用いている(校正に使う場合) 。. 封液. 内圧調整おもり. タング. ただし、使用するガス体によってはそ. ドライウェル. の中のガス成分がオイルに吸収されるの Fig. 1-18. で、計量誤差に繋がる。. ベルプルーバーの構造図. 26), 27), 28). (3)ベルプルーバーの校正方法. 体積目盛板. 1)倒立衡量法. 0L. Fig. 1-19 に示すように、倒立させたベ. ベル. 40L ・・・・. ゲージグラス. ルの中に水を満たす。次に目盛板と平行 に取り付けたゲージグラスで一定の目盛. 緩衝材(砂). 150L. 分の排水をする。その排水した水の質量. 排水コック. を天秤で測定し体積に換算する。 この方法は、ベル内に水を入れるため、 ベルの肉厚が薄いとベルが変形するので、 板厚の厚いものに限られる。衡量法と呼んでいる。. 耐圧ゴム管. Fig. 1-19. 風袋. 衡量法による校正. 2)置換法 原理的には、標準立方瓶(Fig. 1-13 参照)を標準器とし、液体で置換された基準タンク内の空 気をベルに通して校正する方法である。. 22.

(23) アメリカではボトリング法と呼ばれている。この方法は、ベルの作動状態のまま校正できるの で、ベルの肉厚による液面補正は不用であるという利点があるが、空気をベルで校正するので、 校正精度は温度管理に左右される。 3)寸法測定法(測長法) ベルの外周、スケールの長さ、ベルが下降するときの液面上昇高さの寸法を測定することによ って、ベル内の体積を求めるものである。置換法に比べ温度の影響を受けにくい。ベルの肉厚が 薄いものは、水を入れる衡量法では計測出来ないので、薄肉ベル用に適している。 この方法は、1953 年頃からボトリング法に代わる方法として、アメリカンメーター社で開発し たもので、ベル内筒を測るのに鋼鉄のテープ(Strapping tape)を用いることから、別名ストラ ッピング法と呼ばれている。校正精度は文献によると、±0.1%以内とある。 現在、アメリカではこの方法が主流をなしている。日本ではベルの肉厚により衡量法とストラ ッピング法により、計量法に基き特定計量器の第一基準器として、もっぱら湿式基準器の校正に 用いている。 (4)計測の自動化 これまでは、ベルプルーバーの原理、構造について 述べた。今日では当然のことであるが、各種センサー を取り付け、自動計測をしている。 計量体積のセンサーは、ホイール軸にロータリーエ ンコーダーを付けたり、ベルのスケールと平行にマグ ネスケールを付けたものがある。 写真 Fig.1-20 は㈱シナガワの 300L 型ベルプルーバ ーである。マグネスケールなどのセンサーとパソコンに より、計量法に基づいた基準器検定が自動で行える。. Fig. 1-20 (5)ベルプルーバーの正しい使用方法. シナガワの 300L 型ベルプルーバー. 26). 1)温度環境 ベルプルーバーの計量するベルは、直接部屋の空気に触れるため、温度環境により測定精度が 大きく左右される。恒温室の温度は±0.5℃以内、湿度は 50〜60%±5%以内であること。 2)残留体積 計測終了時のベル内体積をいう。この体積が大きいとほど、温度の影響を受け誤差の増大に繋 がるので、計測の開始はベルの最上位からするのではなく、終了時が最下位となる位置からの計. 23.

(24) 測が望ましい。特に計測時間の長い微小流量では、温度による影響で誤差要因が大きい。 3)計測のレイアウト 一般には、Fig. 1-21 のような接続となる。 校正用ベルプルーバーの封液は、当然オイルでなければならない。ブロワーから空気をベル内 に送り、ベルを上げる。ベルに付着したオイルが十分に落ちた後、ベルを降下させ、計測を行う。 水封式の湿式ガスメータを校正する場合は、一般的には図の増湿用ダミーメータを介して湿潤 した空気をベル内に送り、計量するとされている。しかし、筆者の今日的見解では、湿潤しない で別途水蒸気圧補正をしたほうがより正しい計量ができる。その理由については第8章で述べる。. Fig. 1-21. ベルプルーバーの計測レイアウト図. (6)精度(不確かさ) 新計量法のトレーサビリティ制度での精度は、「不確かさ」をもって評価しなければならない。 日本では、ベルプルーバーの不確かさを確立したという実績はまだない。欧米では、トレーサビ リティ体系の上位にベルプルーバーが位置し、不確かさは確立されている。日本では、これに代 わって音速ノズルが標準器となっている。 15). 諸外国での不確かさは以下のようである。 オランダNMi. 0.06〜0.2%. 29) 29). PTB. 0.1%. アメリカNIST. 0.172%. ドイツ. 1-7-4. 30). ピストンプルーバー(piston prover). (1)ピストンプルーバーの概要 ピストンプルーバーは、ベルプルーバーとよく似ている。気体・体積標準器の1つで、シリン ダー内のピストンが移動することから、このように呼ばれている。 現在日本では、トレーサビリティ制度から除外され、法定計量の第一基準器として、もっぱら. 24.

(25) 湿式基準器の校正、検定に使われている。欧米では ISO GUID 25 に基づき、トレーサビリティ 制度の上位にあり、精度は. 不確かさ. で表わされ、体積、流量の標準器となっている。. これは、ベルプルーバーの精度をさらに上げるために、1960 年代にアメリカで開発、実用化さ れたようである。日本では、大阪の旧計量研究所が 1976 年に 400L 型横型の開発に成功したのを 31). 機に、ガスメータメーカーが開発、実用化した。 (Fig. 1-22 参照) このような開発経緯のため、大きさの規格はない。関西ガスメータでは、1984 年に 200L 縦・ 横兼用型を開発、実用化し、輸出の実績もある。その他、日本では 80、100、900L 型がある。 アメリカでは、1970 年代に開発された 32m3 型の超大型のものがある。これは 4500 m3/h ま で計測が可能で、ルーツメータ、タービンメータの校正検査用に使用され、ピストンの直径は 2.8m、 ストロークは 5.2m もある。 (Fig. 1-23 参照) (2)原理、構造 断面積が一様なシリンダー容器で、それに内接するピストンを移動させれば、その移動距離に 相当する体積のガスが排出されるので、これを正確に校正して体積標準器とするものである。 ピストンプルーバーは、シリンダー、ピストン、ピストンロッド、駆動モーター、信号検出器 (ロータリーエンコーダー)、そしてモーター制御部と計測部で校正されている。シリンダーとピ ストンのガス漏れをシールするために、オイルシールやOリングが用いられている(水銀のもの もある―後述) 。また、シール性の向上と摺動抵抗を軽減するために、蒸気圧の小さい潤滑油を塗 布している。 図のように、縦置型横置型がある。また、ピストンの駆動は小型では、モーター、大型では油 圧およびピストンの自重を用いて動かしている。 (Fig1-22, Fig1-24 参照). ロータリエンコーダ プリセットカウンタ サイリスタ 制御装置. ピストン. 受検器または標準周波数発信器の出力. 回転止め. セルフシール パッキング モータ. シリンダ. Fig. 1-22. ギヤ. 400L 横型ピストンプルーバー. Fig. 1-23. (3)校正. 25. 200L 縦型ピストンプルーバーの構造図.

(26) ピストンプルーバーの校正は、寸法測定法(測長法)を主に置換法でも行われている。その 他は、ベルプルーバーの校正方法にほぼ同じである。 (4)特徴と課題 1)計量部はシリンダーとピストンからなり、 精密な機械加工により製作されているの で、理論上大変精度は良い。 2)精度はベルプルーバーより高い。 3)ベルプルーバーのように、液体の自由表 面が存在しないので、体積変動の要素が 少ない。 4)ピストンの滑りが悪くなると、ノッキン グ現象を誘発する場合がある。特に微小 流量で起きやすい。この場合は、分解修 理が必要である。 5)機械部分が多いので、定期的な給油やメ ンテナンスを怠ると、精度の低下や破損. Fig. 1-24. に至る。校正時のオーバーホール費がベ. (関西ガスメータ製)200L 型ピストン プルーバー計測システム. ルプルーバーに比べて高い。 6)通常ピストンプルーバーは、体積・流量 発生装置であるがため、被校正器からの 流量は計測できない。したがって、日本 のトレーサビリティの標準器である音速 ノズルによる校正ができない。これは、 大きな課題である。 7)ベルプルーバー同様、温度の影響を受け るので、残留体積と温度の関係に注意す る必要がある(ベルプルーバーの残留体 積、温度環境の項参照) 。欧州では、温 度の影響を防止するために、シリンダー 部分を水封にして、温度環境の影響を防 止しているものもある。 Fig. 1-25 (5)小型ピストンプルーバー. 微小流量用ピストンプルーバー (関西ガスメータ製). 関西ガスメータが開発した、微小流量用ピストンプルーバーである。2L、20L 容量のダブルシ リンダーからなり、0.2〜300L/h の微小流量の校正ができる。 (Fig1-25 参照) (6)水銀シール式ピストンプルーバー. 26.

(27) この方式は、シリンダーにガラス管を用い、ピストンシリンダーのガスシールを水銀で行う方 式である。前述の通常のピストンプルーバーと同時期に開発された。構成上、小型ピストンは軽 量な高分子材で出来ている。通常は、駆動源はなく、差圧で動いている。 計測は、シリンダーの上下限部にそれぞれ設けられた、光学センサーでピストンのスタート、 ストップを検出して、その移動時間より体積を計測するものである。 36). 以下、アメリカの NIST の仕様である。 Table 1-1 小型 中型 大型. アメリカ NIST ピストンプルーバーの仕様. 容量(L) 0.13 0.7 7.4. 測定範囲(L/min) 0.037〜 0.52 0.20 〜28.4 2.1 〜297. (L/h) 2.22〜3.12 12〜1704 126〜17820. 拡張不確かさ(%) 0.192 0.160 0.176. Fig. 1-26 は、アメリカの Sierra Instrument 社のもので、ベルプルーバーのようにウェイトバ ランスと取り付けたガラス管、水銀式ピストンプルーバーである。. Fig. 1-26 1-7-5. 水銀シール式ピストンプルーバー. 17). 音速ノズル. (1)概要 気体流量標準のトレーサビリティについて、先に述べてきたとおり、長さ、体積を基本単位と したプルーバー方式が今日まで主役をなしてきた。しかし、計測の自動化、コンピューターの発 展に伴い、音速ノズルのように質量を基本単位とした校正方法が、旧計量研究所の研究開発によ り、多く使用されるようになってきた。音速ノズルの利点は、高精度でしかも長期安定性があり、 小さなノズルを運ぶだけで標準流量の移転が容易であることである。 欠点としては、高度な計測のノウハウと付帯設備を入れると高価なことであり、また、標準流 量発生装置的存在であるがため、ピストンプルーバーなどとは直接校正できない。また、計量ガ ス質により流出係数が異なるなどの問題もある。 (2)音速ノズルの原理17). 27.

(28) 流体が流れる管路の一部を絞って流路断面を細 くすると、絞りの部分では流れが速くなる。流れ. Sub‑Sonic Flow. をいったん絞って拡大する管はラバルノズル、そ. Flow. Sub‑Sonic Flow Super‑Sonic Flow. のノズルの最小断面積の部分はスロートと呼ばれ. Shock Wave Velocity of Sound Nozzle Throat Mach No. = 1. ている。気体の流れがラバルノズルを通過すると き、ノズル下流側の圧力を真空ポンプや吸引ブ ロアなどで下げていくと、Fig. 1-27 に示すスロー トでの流速は加速されて、ついには音速に到達する。. Fig. 1-27. 音速ノズル内の流れ. ノズル内の流れが音速に到達してからも、さらにノズル下流側での吸引力を増大させて圧力差 を大きくしていくと、スロートでの流速は(マッハ数=1)が維持されたままで、Fig.1-27 に示す ように、その下流側の一部が超音速(マッハ数>1)に加速されるようになる。すなわち、いった ん音速が達成されると、ノズルを通過する流量は、スロート断面積と音速との積で規定され、も はや下流側の状態でその流量が影響を受けることはなくなる。したがって、ノズル下流側の圧力 をいくら下げても流れはチョークしたままで、ノズル上流側の流れは一定のまま維持される。元々、 音速ノズルの呼び名は、ラバルノズルのスロートでの流速が音速に維持されている状態で使用さ れることから由来しており、音速ノズルでは、ノズル上流側の流体の状態で一点に定まるスロー トでの音速とスロート断面積の積で与えられる。一定量の流れを発生させることが出来るため、 流量の基準としては非常に適した特性を持っている。 理論質量流量計算式は以下のとおりである。 Q=S×a×ρ・・・・・・ (1-1) (a は音速、S はスロートの断面積、ρはガスの密度) なお、ノズルの形状は ISO 型、トロイダルスロートソニックベンチュリーノズルといって規格 化されている。 精度(不確かさ)はノズル本体で±0.1%、校正システムとして±0.15〜0.2%と高精度である。 流量範囲はノズルの直径で決まり、2L/h〜3000m3/h のものがある。 (3)音速ノズル校正装置17) 音速ノズルは上流側に被校正器を置く方式と、 下流側に置く方式の二つの方法がある。 上流側方式では、音速ノズルにゴミなどの付着 が懸念されることから、今日では下流側設置が良 いとされている。特に湿式ガスメータを校正する 場合は、下流側設置方式に限られる。 Fig. 1-28 は、校正システムのブロック図である。. Fig. 1-28. (4)シナガワ導入の音速ノズル装置. 28. Sonic nozzle calibration system.

(29) 2000 年 3 月に旧計量研究所にて jcss 値付 10 本のノズルとその装置を導入した。もっぱら計 測システムとして確立し、不確かさの検証も完 了、2003 年 12 月認定事業 JCSS を取得した。 10 本のノズルを組み合わせて使用することに より、2.8 L/h〜6m3/h までの校正ができる。 使用ガスは N2 ガスである。さらに、この音速ノ ズルを用いて、30m3/h までの校正が可能なシ Fig. 1-29. ステムを構築中である。. シナガワの音速ノズル標準器. 37). (5)音速ノズルの校正方法. ・秤量タンクと天秤(質量法) ノズルを通過したガスをタンクに入れ、そのタンクを天秤で質量を計測することによって校正 する方法という。この方式は小流量用に用いられる。 (Fig. 1-30 参照) ノズルホルダ (被試験流量計). 圧力制御装置 試験気体. 真空ポンプ. (a) 高流量ライン. (b). 低流量ライン 天秤 測定用ボンベ ノズルホルダ (被試験流量計). Fig. 1-30. 秤量タンクと天秤による小型音速ノズルの校正. ・定積槽 あらかじめ容積が計られたタンク(定積槽) に加圧、または減圧により比較校正する方法で ある。もっぱら、大流量の音速ノズル等の校正 に用いる。. 1-7-6. Fig. 1-31. その他の流量標準器 25), 32). 29. 産業技術総合研究所の定積槽を 用いた大流量校正装置.

(30) (1)回転子型メータ a. ルーツ式 ルーツ式は Fig. 1-32 に示すとおり、二つのま ゆ型をした回転子が高速回転をして、ガスを計量 する。産業の発展に伴い、ケーシングおよび回転 子の加工精度の向上により 1970 年代頃より基準 器として使用されるようになった。 最大計量能力は、50〜1000m3/h で、計測範囲 は 1:10 程度である。. Fig. 1-32. ルーツ式メータの原理. b. オーバルギヤー式 原理は、ルーツ式に同じであるが、回転子自体. P1. が楕円形ギヤーで出来ているので、ルーツ式のよ. P2. うにタイミングギヤーが不用である。その分、ル ーツ式より圧力損失が低いので、精度が良い。. P1>P2. Fig. 1-33. c. CVM 式 このタイプは米国で 1950 年代に生産開始し、 日本では 1970 年代より輸入して、今日におい. オーバルギヤー式 Outlet. Flow Gate. ても大容量基準器として使用している。. B. Casing. A. ルーツ式より脈流が少なく、精度も良い。し Vane. かし、1990 年代に入ると、基準器としての輸 入はできなくなったが、関西ガスメータでは N 大型メータの検定用基準器として、現在も使用. Fig. 1-34. している。. CVM meter at two stages in its operating cycle. 構造は Fig. 1-34 に示すとおり、4 枚のベー ン(羽根)と一つの小さな回転子、そして円筒形のケーシングからなり、構造上ルーツ式に比べ 出口側へのガスリークが少ないので、小流量域の計測範囲も広く、脈流の発生も少ない。 d. ベーン式 構造は CVM 式と同じであるが、ベーンが 2 枚 からなることに違いがある。CVM と同時期に生. S. 産開始されたが、今日では見ることができない。. V1 V2. V1 V2. Fig. 1-35. 30. ベーン式.

(31) (2)直接法 20) 標準用立方瓶や置換法については、1-7-2 項で述べたとおりである。直接法は測定原理 として、それらと同じであるが、日本におい ては過去に図を示すような、標準タンクを用 い水と置換してガスを校正・検査した経緯が ある。. Fig. 1-36. 基準タンクを使用するガスメータの検査例. 20) (3)仲介法(折り畳みガス容器). これまで述べてきた校正方法はいずれも比較法(以前は A 法と呼んでいた)といって、実流量 のガスを流し直接校正する方法である。 (Fig. 1-36 参照) これに対し、この仲介法は、いったん大容量の被校正ガスメータを通して、大きな容器にガス を貯め、後に小容量の湿式ガスメータで、ガス容器に入ったガス容積を量る方法で、小容量のメ ータで大容量のルーツメータなどを校正・検査出来ることが特徴である。このことから、仲介法 は別名を B 法または折り畳みガス容器とも呼ばれており、1950 年代に旧計量研究所が開発、1980 年代までは大容量の基準器として校正に使われてきたが、その後は CVM やルーツ式に代わって いった。 米国では、前述のとおり、大容量の校正には大型ベルプルーバーやピストンプルーバーを用い てきたが、日本では設備費の安価なこの方法を長く用いてきた。具体的には Fig.1-37 に示すよう に、運搬可能な折り畳み式のガス容器、切替弁と湿式基準器の組み合わせからなっており、折り 畳み容器は、合成ゴム製で蛇腹構造、5m3/h から 30m3/h の大きさで最大 6〜10m3/h の湿式 基準器を用いて最大 200m3/h の流量の校正ができる。その上、当時の計量研究所の報告書によ ると、A 法より折り畳み容器を用いた B 法の法が精度が良いというメリットもあった。 折たたみ式 ガス容器. 切換弁(3) 流量調整コック. 送風機(1) 受栓メータ(2). バイパス. 流量調整コック. 排出コック 排出 湿式ガスメータ(4). Fig. 1-37. 排風機(5). ガス容器を用いたガスメータの検査例. 31.

参照

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