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松田 剛 論文内容の要旨

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Academic year: 2022

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松田 剛 論文内容の要旨

主 論 文

Pathological significance and prognostic role of LATS2 in prostate cancer

前立腺癌における LATS2 の病理学的意義と予後予測因子としての役割

松田剛、宮田康好、中村裕一郎、大坪亜紗斗、迎祐太、原田淳樹 光成健輔、松尾朋博、大庭康司郎、古里文吾、酒井英樹

The Prostate 2021;81:1252-1260

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻

(主任指導教員:酒井 英樹教授)

緒 言

前立腺癌は男性で最も罹患率の高い癌であり、新規治療薬の開発と治療法の進歩に より進行癌の予後は改善されてきた。手術においても根治的前立腺全摘除術(radical prostatectomy:RP)前の neoadjuvant hormonal therapy (NHT)により、一部の患者で は予後が改善されたものの、依然として有用な予測マーカーはない。したがって、新 しい治療戦略を構築するために、前立腺癌の病理学的特徴と分子調節メカニズムを詳 細に分析し理解することはきわめて重要である。

Hippo pathway は前立腺癌の発癌と進行において重要な役割を果たしている。

Large tumor suppressor 2(LATS2)は、Hippo pathway の重要な調節因子であり、細 胞の生存と働きに重要な役割を果たすことが知られているが、前立腺癌における LATS2 の病理学的役割に関してはほとんど解明されていない。そこで本研究では、前 立腺癌における LATS2 発現と、細胞増殖、転移、浸潤、NHT の組織学的効果および生 化学的再発(biochemical recurrence:BCR)との関連を検討した。

対象と方法

2 つの前立腺癌細胞株(アンドロゲン依存性の LNCaP およびアンドロゲン非依存性 の PC3)において、siRNA を介して LATS2 発現をノックダウンし、細胞増殖、遊走能 および浸潤能をそれぞれ MTT assay、wound healing assay および cell invasion assay で評価した。

次に臨床組織検体(生検および手術標本)を用いて LATS2 の発現を検討した。対象

(2)

は RP 症例 133 人を含む 204 人の前立腺癌患者であり、RP 症例のうち 60 人は NHT を 受けていた。また、前立腺肥大症に対して経尿道的前立腺切除術が施行された 60 人 の良性前立腺組織をコントロールとした。これらの標本における LATS2 の発現を免疫 組織化学的に評価し、臨床病理学的特徴、増殖指数(PI;抗 KI-67 抗体を使用して測 定)、および BCR との関係を検討した。

結 果

LATS2 のノックダウンにより、LNCaP 細胞の増殖能(P< 0.01)、遊走能(P= 0.033)お よび浸潤能(P= 0.039)は有意に亢進したが、PC3 細胞では増殖能(P= 0.344)および浸 潤能(P= 0.890)に有意差がなく、遊走能(P< 0.001)のみが亢進した。

前立腺癌組織では、51%(104/204)が LATS2 陽性であり、コントロール群の 80%(48/60)

よりも低かった。 LATS2 の発現は、組織学的 Grade Group(P< 0.001)、T stage(P<

0.001)、N stage(P=0.038)、M stage(P< 0.001)、および PI(P< 0.001)と負の相 関があった。ロジスティック回帰分析を用いて、前立腺生検組織における LATS2 発現 の有無と PI、Grade Group、T stage および転移の有無との関連を検討した。多変量 解析の結果、LATS2 発現陰性と高 PI であることが有意に関連ある因子であった(odds ratio = 6.34、95% confidential interval = 3.24-12.39、P< 0.001)。さらに、LATS2 陽性組織では陰性組織と比較して NHT による組織学的治療効果が Grade3(ほとんどす べての癌細胞が検出不能であるか、検出されず )と判定 される割合が高かっ た

(P=0.013)。

RP 症例 133 人のうち、診断時生検標本において LATS2 発現が陰性であった患者の 無 BCR 生存期間は陽性患者に比べて有意に短かった(P< 0.001)。同様に、NHT なしの 手術標本において LATS2 発現が陰性であった患者の無 BCR 生存期間は陽性患者に比べ て有意に短かった(P=0.002)。Cox 比例ハザード解析を用いて、前立腺生検組織にお ける LATS2 発現の有無、Grade Group、T stage、NHT の有無と無 BCR 期間との関連を 検討した。多変量解析の結果、LATS2 発現の有無は無 BCR 期間と有意に関連していた

[hazard ratio(HR)=2.95、95% CI=1.60-5.41、P=0.001]。同様に、NHT を施行して いない RP 組織標本における LATS2 発現の有無、Grade Group、pT stage と無 BCR 期 間との関連を検討した。多変量解析の結果、LATS2 発現の有無は無 BCR 期間と有意に 関連のある因子であった(HR 3.00、95% CI=1.24-7.28、P=0.012)。

考 察

アンドロゲン依存性前立腺癌細胞における LATS2 発現は増殖能、遊走能および浸潤 能を抑制していたが、アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞では遊走能のみを抑制して いたことから、LATS2 はアンドロゲン依存性に前立腺癌の抑制因子として機能してい ることが示唆された。前立腺癌組織における LATS2 発現は Grade Group、TNM stage および PI と負の相関があり、LATS2 は前立腺癌の腫瘍抑制因子である可能性が示唆 された。また、LATS2 が発現した組織ではホルモン療法の組織学的効果が増強されて いたことから、LATS2 は NHT の組織学的効果を予測する有用な因子と考えられた。さ らに、LATS2 発現は長い無 BCR 生存期間と関連していたことから、有力な予後予測因 子であると考えられた。また、LATS2 は前立腺癌患者の予後改善に繋がる治療標的と なり得る可能性が示唆された。

参照