給水竪坑 配管竪坑 作業トンネル
水封トンネル
頂設トンネル 底設トンネル
水封トンネル
水封ボーリング
▽EL-160m
▽EL-140m
▽EL-184m
倉敷基地 水封式 LPG 岩盤貯槽における空洞 掘削時の岩盤挙動と空洞安定性評価について
菊井孝利
1*・田坂嘉章
1・畝田 篤志
2・征矢雅宏
3・小川智宏
4・前島俊雄
51東電設計株式会社 地下環境技術部(〒135-0061 東京都江東区東雲一丁目7-12)
2鹿島建設株式会社 土木設計本部 地下空間設計部(〒107-8348 東京都港区赤坂六丁目5-30)
3清水建設株式会社 土木技術本部 地下空間総括部(〒104-8370 東京都中央区京橋二丁目16-1)
4元(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構 石油ガス備蓄部(〒105-0001 東京都港区虎ノ門二丁目10-1)
5(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構 石油ガス備蓄部(〒105-0001 東京都港区虎ノ門二丁目10-1)
*E-mail: [email protected]
水封式LPG 地下岩盤貯槽は,貯槽掘削から操業期間を通して水封機能を維持するため,掘削時から水 封ボーリングによる水封水の加圧給水を実施し,貯槽周辺岩盤は所定の水理場を保持したまま工事が進め られる.空洞の安定性については,高水圧下での貯槽掘削時のゆるみ領域をひずみ軟化FEM解析により把 握し,ゆるみ領域を十分に包含する範囲を対象に均質な水理場となるグラウト改良を実施した.また,断 層や亀裂の多い箇所などの地質不良部に対しては高耐力ロックボルトと鋼繊維補強吹付けコンクリートな どの支保を情報化施工により実施した.その結果,掘削後に貯槽空洞への作用水圧が最大となる水封昇圧 試験時においても,貯槽周辺間隙水圧や空洞変形に異常はなく,空洞の安定性が確認された.
Key Words : hydraulic containment rock cavern, rock mechanical stability, high hydrostatic pressure
1. はじめに
倉敷LPG備蓄基地の貯槽空洞1)は,水封貯蔵方式を採 用している.周辺岩盤はH級の岩盤であるが,断層や亀 裂の多い地質不良部が分布する.貯槽は幅18m,高さ24m のたまご形で,設置深度は,天端位置でEL.-160mである.
施工時から水封ボーリングを用いた水封供給や貯槽周辺 へのグラウトによる貯槽湧水量の抑制を行っている(図 -1).掘削はゆるみ領域を十分に包含する範囲をグラウ ト改良し,地質不良部に対しては高耐力ロックボルトと 鋼繊維補強吹付けコンクリートの岩盤補強を実施してい る.掘削完了後には,貯槽空洞への作用水圧が最大とな る水封昇圧試験を実施し,空洞の安定性を確認している.
本論文では,高水圧下における水圧を考慮した挙動予 測解析,支保設計について説明し,掘削時や断層部にお ける水圧上昇時の岩盤計測挙動に基づき,同解析・設計 手法の有効性ならびに空洞安定性について述べる.
2. 岩盤貯槽掘削時の支保設計と施工
(1) 地質概要と岩盤力学特性
倉敷基地は,図-2に示すように,埋立地の下部EL.-
図-1 貯槽空洞と周辺トンネル鳥瞰図
図-2 地形・地質横断面図
地上タンク
グラウト改良範囲
第 42 回岩盤力学に関するシンポジウム講演集 公益社団法人土木学会 2014 年1月 講演番号 25
・ロ ックボルト Fs < 1.0領域 ・吹付けコン クリート
【水圧考慮】
・アーチ部吊下げ検討
・側壁部すべり検討
・キーブ ロ ック検討
挙動解析(全応力解析)
岩盤物性値設定
支保仕様決定
重力場の安定性照査 緩み領域 支保断面力
応力照査
支保部材健全性評価 START
浸透流解析による水圧分布 掘削時
水封水圧一定
(0.65~0.7MPa)
F6
No.1貯槽
No.2貯槽
No.3貯槽
No.4貯槽
:粘土 H級岩盤 M級岩盤 ML級岩盤 L級岩盤 岩盤等級
70m程度まで新第三紀鮮新世~第四紀完新世の堆積層で 覆われ,さらにその下部には,中生代白亜紀の花崗岩が 分布し,EL.-120m程度まで風化しており,それ以深に新 鮮花崗岩が分布する.貯槽は,平均透水係数3×10-6cm/s 程度の新鮮花崗岩内EL.-160m以深に位置し,周辺岩盤は H級岩盤であり,割れ目密度は,0.5~2本/mである.
図-3に貯槽掘削完了時の岩盤等級平面図を示す.貯槽 を横断する5本の断層が確認されており,貯槽と斜交す る50°~70°傾斜のF2,F3断層と貯槽と直交する高角度 傾斜のF4~F6断層が分布する.断層部は強い変質を被り,
粘土を挟在し,M~L級の岩盤等級である.また,一部 にM~L級の非常に微細な割れ目から構成されるマイク ロフラクチャー発達部(MT,WT,GT)が分布する.
図-3 岩盤等級平面図(EL.-167.5m)
岩盤の力学特性は,原位置における岩盤せん断試験,
孔内載荷試験および平板載荷試験により,表-1 に示す 設計値を設定した.初期地圧は,円錐孔底ひずみ法によ り,図-4に示す側圧係数K0=1.39(最大水平応力4.9MPa,
鉛直応力 3.5MPa)を設計値とし,挙動予測解析では
K0=1.39一定で土かぶり圧に応じた初期応力を与えた.
表-1 岩盤物性の設計値
L級 1.5 0.7 40 0.45 40
46 0.45 46 1.5 4.5 M級
49 0.75 49 3.0 8.0 H級
内部摩擦角 φr(°) 粘着力
Cr(MPa) 内部摩擦
角 φp(°) 粘着力 Cp(MPa)
残留強度 ピーク強度
弾性係数 E(GPa)
40 0.45 40 0.7 L級 1.5
46 0.45 46 1.5 4.5 M級
49 0.75 49 3.0 8.0 H級
内部摩擦角 φr(°) 粘着力
Cr(MPa) 内部摩擦
角 φp(°) 粘着力 Cp(MPa)
残留強度 ピーク強度
弾性係数 E(GPa)
図-4 初期地圧測定結果
(2) 空洞支保設計 a) 支保設計の考え方
岩盤貯槽の掘削は,周辺岩盤に所定の水圧場を保持し,
湧水量を抑制するため,水封水圧を作用させている状態 で,貯槽周囲(8m)をグラウトしながら実施するが,
掘削に伴い,貯槽周辺岩盤にゆるみ領域が発生する.掘 削後の水封昇圧試験時には水圧が外力として空洞に作用 する.そこで,空洞の安定性は,高水圧下での掘削時,
水圧上昇時のゆるみ領域を挙動予測解析により把握し,
ゆるみ領域を十分に包含するグラウト範囲と均質な水理 場となるグラウト改良を実施することとした.ゆるみ領 域の岩盤はロックボルトと吹付けコンクリートにより補 強した.
b) 支保設計の流れと挙動予測解析手法
図-5に掘削時の空洞の支保設計のフローを示す.挙動 予測解析によりゆるみ領域を求め,ゆるみ領域内の岩塊 の重力場における安定性を照査した.重力場の安定性は アーチ部において吊下げ,側壁部においてすべり岩塊を 想定した.想定岩塊への作用荷重は別途,周辺間隙水圧 挙動を再現した浸透流解析2)にて検討して得られた最終 段階における水圧とした.支保工については,挙動予測 解析により支保工(ロックボルト,吹付けコンクリー ト)に発生する支保断面力を照査し,支保工の健全性を 評価した.
挙動予測解析手法は,岩盤のひずみ軟化特性を考慮し たFEMとし,掘削時は,水封水圧1.1MPaの一定で掘削を 進めていることから,解析は,土圧と静水圧が足された ものが初期応力であると仮定して,掘削解放力を掘削面 に作用させる全応力解析とした.
図-5 掘削時の支保設計フロー
ロック ボルト 吹 付 け
コ ン ク リ ー ト
α β 岩塊W
すべり面 水圧u/2・e
水圧u/2・l l lc
e
重力場の安定性照査 側壁部すべり検討の模式図 浸透流解析による水圧 P OC-2,3,4
3 点総合
σ1’= 5.0 MPa σ2’= 3.4 MPa
σy = 4.9 MPa σz = 3.5 MPa τyz = -0.3 MPa 側圧係数 K0=1.39
←(土被り圧 3.6 MPa 相当)
← ①北
← ①南
②
← ③
← ④南 ④北 →
底設連絡トンネル 頂設連絡トンネル
:粘土 H級岩盤 M級岩盤 ML級岩盤 L級岩盤 岩盤等級
MT③ GT①
WT① MT①
MT①
MT④
WT③ F6
F5 F5-2,3 F4
F5
F3
F3
F3
F2
F3-1
F5-1
F3-1
F6
F2-2F2-1
F2
MT① MT①
WT②
F3-1
TD.100
TD.200
TD.300
TD.400
TD.500 TD.100
TD.200
TD.300
TD.400
TD.500
TD.600 TD.100
TD.200
TD.300
TD.400 TD.200
TD.300
TD.400
TD.500
TD.600 TD.0
TD.100
L=4m@1.5m
L=3m
@1.5m
S.L.
吹付けコンクリート t=12cm
吹付けコンクリート t=8cm 吹付けコンクリートt=8cm
[email protected] [email protected]
L=4m@1.5m
L=3m
@1.5m
:管理値 :実測値
図-6に掘削後の水封昇圧試験(水圧上昇)時の空洞の 支保設計フローを示す.解析は,掘削時からの応力・変 位を引き継ぐ全応力解析である.この解析では,水封水
圧が1.1MPaから最終段階(1.35MPa)に昇圧する際のグ
ラウト外周面(空洞壁面から8m深度)での間隙水圧の 増分値を浸透流解析により求め,これをグラウト外周面 に外力としてさせることで水圧上昇による岩盤挙動を模 擬することとした.ここで得られた挙動予測解析により 最終段階におけるゆるみ領域および支保断面力の照査し,
最終的なグラウト範囲および支保仕様を決定した.
図-6 水封昇圧試験時の空洞の支保設計フロー
なお,断層等が分布する不均質な地質不良部に対して は,貯槽周辺が高水圧になることにより,有効応力が減 少して岩盤が塑性化し易くなるリスクを評価するため有 効応力解析3) を実施し,支保量や空洞安定性を精査し ている.
c) 支保パターン
挙動予測解析に基づき,事前に設定した支保パターン を図-7に示す.断層部は高耐力ボルト(PC鋼棒φ23mm,
[email protected])とファイバーコンクリート25cmの部分補強 とし,それ以外は一般部(H級岩盤)と同様に,ロック ボルト3~[email protected],吹付けコンクリート12cm(アーチ 部),8cm(側壁部)とした.
図-7 H級岩盤,断層部の支保パターン
3. 岩盤貯槽の空洞安定性評価
(1) 貯槽空洞掘削時の全体変形挙動
図-8に加背割りとベンチ掘削の順序を示す.基本的に 第1段ベンチ盤において,それより下方の側壁周辺に対 するプレグラウトを実施後,第3段ベンチまで掘削し,
その後底盤向けのプレグラウトを施して第4段ベンチを 掘削した.底設連絡トンネルと貯槽との貫通を優先して
②~④の順に掘削している.
図-8 加背割りと掘削ステップ
図-9 掘削時における1ベンチ内空変位分布 掘削時の挙動解析
浸透流解析による水圧増分⊿ p
水封昇圧時の挙動予測解析
・⊿ p をグラウト境界(壁面から 8m)に荷重として載荷
⊿p
END
・ゆるみ領域の進展の有無
・支保工の健全性評価
水封昇圧時の解析模式図
7.5 3.5 4.5 4.5 4.0 ベンチ高さ
(単位:m)
グラウト 8m
1 ベンチ内空 No.1 貯槽
No.2 貯槽 No.3 貯槽
No.4 貯槽
010 2030 40
0 10 20 30 40
0 10 20 30 40
0 10 20 30 40
38.0 40.3
37.046.0 17.0
15.0 16.0
15.0
21.3 15.0 15.0
15.0 16.0
7.0
15.0 28.0
15.0
15.0
24m 11m 吹付けcon
t=12cm 吹付
けcon t=
15 cm 吹付
け con t
=1 2cm 地質不良部
13m
18m 吹 付 けcon t=8
cm
吹付けcon t=8cm 吹付けcon
t=25cm (ファイバー入り)
[TD24]L=3m@1.2m×1.2m
[TD24]
L=4m@1.2m×1.2m
[TD24][email protected]×1.2m
[PC鋼棒Φ23] L=4m
@1.2m×1.2m
変位量(mm)変位量(mm)変位量(mm)
変位量(mm)
(a) H 級岩盤 (b) 断層部
連結トンネル
H級岩盤 M級岩盤 ML級岩盤 L級岩盤 岩盤等級 -14
-12 -10 -8 -6 -4 -2 0 2
08/4/1 08/9/28 09/3/27 09/9/23 10/3/22 10/9/18
変位量(mm)
アーチ 1B 2B 3B 4B 掘削完了
アーチ 1B 2B 3B 4B
天端沈下
イベント
掘削時
6 11/7/6 11/7/26 11/8/15 11/9/4 水封昇圧時
アーチ:-7.4 1B:-6.9 2B:-3.8 3B:-2.0 4B:0.7
天端沈下:-2.1
図-9に掘削完了時の1ベンチ内空変位を示す.内空変 位は,貯槽に断層が斜交するF2断層(40mm),F3-1断層 (15mm),No.2貯槽のF3断層(21mm)の各部位を除くと,マ イクロフラクチャ(WT)発達部やH級岩盤では,最大 で8mm程度であり,H級岩盤の予測値以内である.上記 のF2,F3断層部は,増しボルト,増し吹付けコンクリー トおよびポストグラウトなどの対策工を実施し,掘削完 了時には予測値以内の変位量になっている.
(2) 一般部(H級岩盤)における空洞安定性評価 図-10に一般部の内空変位の経時変化を示す.掘削時 の内空変位は,予測値(15mm)以内であり,掘削後も 安定した挙動になっている.掘削完了後の水封昇圧試験 において水封水圧を1.1MPaから1.35MPaに昇圧させた時 の内空変位の増分値は,1mm程度となっており,予測値 相当である.
図-11に地中変位計測による変位分布を示す.変位発 生箇所は,壁面深度2m程度の範囲内であり,ゆるみ領 域はこの範囲内にあると推察され,ロックボルト長
(3m)以内に抑え込まれ,掘削を完了している.なお,
掘削完了後のロックボルト軸力,吹付けコンクリートの 発生応力は基準値(設計基準強度)内であり,支保工の 健全性が確保されている.
図-11 地中変位計による掘削完了時の変位分布
以上より,一般部では,水封水圧1.35MPaによる高水 圧が周辺岩盤に作用しているものの,解析,計測ともに 変位量も1mm程度であることから,水圧の影響は小さ く,ここで示した高水圧条件下でのグラウト,支保工の 設計,施工により空洞の安定性を確保できていると考え られる.
また,挙動予測解析では,水圧上昇増分をグラウト外 周面に外力として作用させる全応力解析を実施したが,
解析および計測による昇圧時変位増分は対応しており,
本手法の有効性が確認された.
(3) 断層部の空洞安定性評価
a) 掘削時~水封昇圧試験時のF3断層部の岩盤挙動 No.2貯槽のF3断層部では,最終ベンチ掘削完了後,水 封カーテンを仕上げるため水封を追加した結果,F3断層 周辺の間隙水圧計B-8において水圧が20m程度上昇し,
湧水量も40L/min程度増加した.また,F3断層に設置し た地中変位変位計では3mm程度の変位増加が認められた.
このため,水封昇圧試験に先立ち,貯槽内湧水量を抑制 しグラウト改良域を仕上げるポストグラウトを行うとと もにF3断層部の空洞安定性をチェックし支保設計を見直 した.F3断層部の計測配置を図-12に,各計測結果を図- 13に示す.
B-6
B-7.5 B-7
B-8
B-9
B-5
図-12 F3断層部の計測配置
拡大 間隙水圧計
図-10 一般部(H級岩盤)における内空変位の経時変化の例
-78
-96
-109 -119
-102 -100
-86 -86
-130 -120 -110 -100 -90 -80 -70
ピエゾ水頭(EL.m)
間隙水圧 B-08
132
164 180
202 245
163
187 187
0 50 100 150 200 250 300
湧水量(ℓ/分)
No.2貯槽 TD.28~285m 区間湧水量
-8.9 -12.7
-14.7 -17.2
-28.2 -28.5 -28.5 -7.2
-12 -13
-15.8
-25.5 -26.5 -26.5
-40 -35 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0
1B掘削 2B掘削 3B掘削 4B掘削 追加水封 ポストグラウト 水封昇圧 水封水圧保持時
壁面変位量(mm) (1.1→1.35MPa) (1.35MPa)
(-1.0)
(-0.3)
計測値 解析値
地中変位計(壁面) TD.215m
逆解析 予測解析
30m
30m
30m 30m
20m
10m
E =8GPa C =3MPa φ=49°
H級 E =1.5GPa*
C =1.5MPa φ=45°
L級 ML級 E =0.15GPa*
C =0.7MPa φ=40°
* 4ベンチ掘削までの 変形挙動の逆解析値
岩級凡例
:H・M級
:ML級
:L級 グラウト範囲:8m
図-13 F3断層部における掘削から水封昇圧試験までの 間隙水圧,区間湧水量および地中変位のステップ図
b) F3断層部の岩盤挙動解析
追加水封による間隙水圧の上昇で生じた変形に対し,
逆解析を行い変形の要因を分析した.解析は,FEMによ る全応力解析であり,掘削時,追加水封作用時のステッ プ解析を行った.追加水封時には断層部周辺のグラウト 外周面に実測に基づく間隙水圧増分(0.1~0.3MPa)を分 布荷重として載荷させた.
図-13に示した解析値と計測値の比較により,力学モ デルの妥当性を確認した.逆解析で得られた断層部の弾 性係数は,既往のL級岩盤物性値,水封トンネルおよび アーチ掘削時の計測変位の逆解析結果に基づき設定した 設計値(E=1.5GPa)よりも低い値(E=0.15GPa)が得ら れた.
このため,水封昇圧試験時の予測解析をこのモデルに より行い,水封水圧1.1MPaから1.35MPa時の間隙水圧増 分を浸透流解析により算出した.図-14に予測解析モデ ルを,解析による水封昇圧時の局所安全係数分布を図- 15に示す.解析結果から,ゆるみ領域は5m程度が想定 される.
c) 対策工
挙動予測解析結果からゆるみ領域は最大で5m程度で あることから,図-16に示す増ロックボルト(L=7m)を 配 置 し , 頭 部 被 覆 と し て 増 吹 付 け コ ン ク リ ー ト
(t=12cm)を実施した.
追加水封時の湧水発生に対しては,ポストグラウト
(カバーロック:4m深度とし,注入圧:2MPa)により 対策工前の最大2Lu程度から0.35Lu未満に改良し,幅8m のグラウト改良域を形成した.
図-14 水封昇圧試験時におけるF3断層部の力学モデル
図-15 予測解析による水封昇圧試験時のゆるみ領域
図-16 F3断層部の追加補強支保工,ポストグラウト範囲 ゆるみ
5.0m
1.00 1.10 1.25 1.50 2.00
[局所安全係数]
F3 H級岩盤M級岩盤
ML級岩盤 L級岩盤 岩盤等級
d) 水封昇圧試験時の空洞安定性評価
水封昇圧試験では,水封ボーリング圧を1.1MPaから最 大作用水圧となる1.35MPaに昇圧した後に,水封トンネ ルの水位をEL.-134mからEL.-15mに上昇させた.
図-13に示したように,F3断層部の地中変位計の水封 昇圧時の増分変位は,0.5mm以下となり予測値の1㎜以 内に抑えられた.また,水封水圧1.35MPa保持時におい てもF3断層部の地中変位,間隙水圧および湧水量は変動 も無く安定している.図-17に地中変位計測に基づくひ ずみ分布を示す.水封昇圧時において,F3断層部が分布 する区間(4.4~6.1m)のひずみは発生していない.よっ て,F3断層部のゆるみ領域は進展していないと推察され,
補強工内に抑え込まれていることを確認した.
また,貯槽全体においても水封昇圧に伴う変位増分は,
最大でも2mm程度であり,解析による予測値以内で安定 している.
図-17 地中変位計測に基づくひずみ分布
(掘削から水封昇圧試験まで)
以上より,貯槽内が大気圧状態で貯槽空洞への作用水 圧が最大となる水封昇圧試験においても空洞の安定性が 確保されていることを確認した.
4. まとめ
高水圧下での貯槽掘削時,水圧上昇時においては,ゆ るみ領域を十分に包含するグラウト範囲と均質な水理場 となるグラウト改良を実施し,ゆるみ領域をロックボル トと吹付けコンクリートにより補強することで,掘削後 に貯槽空洞への作用水圧が最大となる水封昇圧試験時に おいても,空洞の安定性を確保できることを示した.
高水圧下の岩盤挙動については,一般部(H級岩盤)
では,水圧上昇時の影響は小さく,断層部などの地質不 良部では,その影響により変形が生じた.このような地 質条件に対し,ゆるみ域の外側にグラウト改良域を確実 に形成することが重要で,本検討で示した水圧を考慮し た挙動予測解析および支保設計により空洞の安定性を確 保できることを確認した.
参考文献
1)前島俊雄:我が国初の LPG 地下岩盤貯槽の建設,土木 技術,Vol.67,No.11,pp.103-108,2012.
2) 藤井健知,小渕考晃,西琢郎,金戸辰彦,前島 俊雄:倉敷 基地 LPG 岩盤貯槽における水封カーテンの構築と気密試験 時の地下水挙動評価について,第 42 回岩盤力学に関する シンポジウム講演集,2014.(投稿中)
3) 畝田篤志,森孝之,横尾敦,手塚康成,宮嶋保幸,高岸哲 哉,前島俊雄:地下高水圧条件下での岩盤空洞における支 保設計事例-LPG 国家備蓄倉敷基地-,土木学会年次学術 講演会,2013.
ROCK MECHANICAL EVALUATION AND MANAGEMENT ON EXCAVATION OF HYDRAULIC CONTAINMENT LPG STRAGE CAVERN.
-A CASE OF KURASHIKI LPG STOREGE CAVERN-
Takatoshi KIKUI,Yoshiaki TASAKA, Atsushi UNEDA, Masahiro SOYA,Tomohiro OGAWA and Toshio MAEJIMA
For the hydraulic containment LPG storage cavern, the hydraulic containment ability is maintained by water injection from the surrounding water curtain boreholes to provide stable hydraulic condition in the vicinity of LPG storage cavern from cavern excavation throughout the operation phase. In this study, the authors have evaluated the cavern deformation under high surrounding water pressure by an FEM rock mechanical analysis tool.For the countermeasures, the authors applied grouting to cover the weak zone for permeability and geological improvement. The authors also applied high tension rock-bolt and short concrete as reinforce for the fractured and fault zone.
グラウト範囲 8m 図中の数値
赤字:掘削から水封昇圧試験までのひずみ 黒字:水封昇圧試験時のひずみ