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001  海水中の放射性核,主として希土類元素,の 吸着挙動について

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Academic year: 2021

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(1)

001  海水中の放射性核,主として希土類元素,の 吸着挙動について

合田四郎,西川泰治,屋敷幹雄*,重松恒イ言**

A b s o r p t i o n  b e h a v i o r  o f  r a d i o  n u c l i d e ,  m a i n l y  Rare  Earth e l e m e n t s ,  i n   s e a   w a t e r .  

by Shiro Goda, Yasuharu Nishikawa,  MikioYashiki, Tsunenobu Shigematsu. 

Abstract 

Adsorption behavior of yttrium and rare earth elements in  sea  water  on the  wall  of the vesse1was studied as a function of  pH and standing time. 

These  e1ements  in  sea water may be  presented  in  the  colloida1 state above pH 5  and adsorbed  on to  vesse1‑wa, 1l fi1ter  paper  or  suspended  matter from the solution of  pH 5.....8. 

Adsorption and desorption rate on to  various materials  was observed  to  reach  an  equi1ibrium in about 5.....7 days. 

In order to  avoid the  adsorption  10ss  of  those  elements, sample water  should be  kept acidic mediun (pHぐ3)

1 .

.F=.. 

海水中の微量成分について考察する場合,その存在 量,存在状態,生物の生活との関係,沈積過程での挙 動など地球化学的,海洋学的な問題あるいは鉱物資源 としての利用など種々の観点からとり上げるととがで きょう。

海水中には極めて多数の元素が含まれていて,徴量 成分の量についてはまだ明らかでないものもあり,ま た研究者によって相当差のある数値のたたえられてい るものが多い。

希土類元素についてもGoldbergらDは計算値とし て 0.01'‑‑;0.04μgREjlを, Wattenberg2l 0.4μg Cejl,0.3μg Lajlなる値,あるいは Balashov3)ら は1.0.....4. 5μgREjlを報告している。

乙れらのことから試料海水の採取,貯蔵法などが分 析結果に大きな影響を与える乙とが考えられる。

これら微量元素のうち,特に希土類元素の海水中で

の挙動を知る目的と海水試料の採取,取扱い方を考え る資料を得る目的でイットリウム,ランタン,ユーロ ピウムおよび、Jレテチウムについてその吸着挙動を調査 した。

本実験では 90Y,140La, 152. 154Euおよび 177Luをト レーサーとして使用し容器,炉紙,浮活字懸濁物への吸 着挙動を検討した。

2 . 実 験 2 ‑ 1 .

試薬および試料

海水;白浜沖採取海水 pH8.2.....8.3, Cl18.3.....

18.7%0

90Y, 140La;英国より輸入した 90Sr,140Baよりラ ジオコロイド法により分離精製して使用した。

申広島大学医学部 制京都大学化学研究所

(2)

152, 154Eu, 177Lu ;日本原研より入手した (10mCi  Eujg) , (47 mCi Lujg)を希釈して使用した。

いづれのトレーサーも塩化物として加えた。

その他の試薬はすべて特級品を使用した。

i

戸紙;東洋炉紙 NO.5A(平均孔径 15μ)

ミリポアフィJレター;LC 10μ, SM 5p,R A  1.2μ, 

DA 0.65μ 

2 ‑ 2 .

放射能の測定

P

紙への吸着;試料溶液を

F

過した炉紙, ミリポア フィJレターは 20...50mlの水で洗糠し, 試験管に入 れて

1 U "

x 2"  NaI (Tl)井戸型シンチレーションカ ウンターでγ線を測定する。

90yの場合は炉紙を細かくして試料皿に入れ, G M   カウンターで測定した。

容器への吸着;容器は 50mlの水で洗糠し, 全壁 を 5mlの濃塩酸で注意深く洗う。洗った酸の 2ml を試験管あるいは試料皿に入れて放射能を測定する。

。ヨ液中の残存量;炉過した試料溶液の 2mlをとり 放射能を測定する。

分配率;各部分の全放射能を求めその強度比から算 出した。

2 ‑ 3 .

試料溶の調製

200ml又は1lのガラスビーカーまたはポリエチレ ンビーカーに海水 100mlをとり,各トレーサーを 90Y, 140La については10‑S‑‑10M,152,154Eu; 10‑7M,  177Lu ; 1O‑8M になるように加える。塩酸または水酸 化ナトリウムで一定の pHに調製後, 密封容器に保 存し外気の影響をできるだけさけるようにした。

3 .   結果および考察

3‑1濃紙および容器への吸着

溶存している炭酸ガスを抜気することなく試料海水 に140La,152,154Eu, 177Luおよび 90Yをトレーサー として加え,.pHを調節した。一定時間放置したのち 東洋

P

紙No.5Aで

P

過し ,1ft紙,容器等への吸着率 を測定した。しかし実際には pH4.5...7に調製した 溶液では調製後5日間程度の聞はかなりpH移動が認 められる。したがって

P

過時のpHで

P

紙に対する吸 着挙動を示すと Fig.lのごとくである。

炉紙に対してJレテチウムはpH3附近から吸着をお 乙し,イットリウム,ユーロピウム,ランタンのI}買に 吸着pHは高い方へ移行している。また, )レテチウム ではpH6.5, Eu, YではpH7...7.3, LaではpH 7.5附近で最大吸着を示し,希土類元素間で若干吸着

近畿大学原子力研究所年報

301

(pHl 

‑10 

9宮

0

‑ 8 

‑ 7 $  

‑ 6  

‑ 5  

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U

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ロ ︒一 三

田司︿災' E

Fig. 1  Relation of Adsorption behavior  of Ln.  on Filter paper with ζ  potential of the paper. 

挙動l乙差が認められる。 pHが8附近で吸着率が減少 するのはShweitzer4)5) 6)らく説く炭酸ガスの影響お よび塩類効果によるものと考えられる。

一方,1ft紙の海水に対する流動電位を測定した結果 もFig. 1に示したが, pH2...8ではその電位はい づれも負の電位を示し, pH 7附近で負の電位は最小 値を示す。一方,希土類元素は

P

紙に対して最大吸着 量を示す。乙の乙とから希土類元素は中性附近では,

そのイオンの粒子半径が大きく正の荷電も大きく9)な っているために負のζ電位が小さくとも炉紙によく吸 着するものと考えられる。しかし pHく3では希土類 元素は吸着されず溶液として存在すると考えられる。

また,放置時聞による吸着率の変化を Fig.2I乙示 した。何れの場合も時間経過とともに吸着量は一般に 増加するが,大きな吸着量を与えるpH領域でも5日 程度の放置で平衡に達すると考えられ,吸着率は大約 30%である。

トレーサーの濃度から考えて

P

紙に対する吸着はイ オン交換吸着4)5)による寄与が大きいと考えられる。

このことについてはあらためて報告する。

容器としてガラス,ポリエンレン製ビーカーを使用 し,吸着挙動を Fig3に示した。

ガラスに対する吸着も中性附近で最大値を示すが,

イットリウムは他の希土類元素に比較してはるかに酸

‑ 2 ‑

(3)

δ 

+

J

0..  ..... 

30 

20 

10 

~ 30 

: < e  

ミ更

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20 

10 

10  8 

~ 50  40  30  20  10 

J

》 ム サ ‑ ‑ 0 La‑177 

仏 ‑ 0

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D  e 

pH7.0  pH 7 

pH5.5

e

pH5.0 30 

20 

10 

30 

20 

o  o 

A pH7.0  Eu‑152,154 

pH6.5 

pH6.0  pH5.0 

pH7.5 

pH 6  pH 5  pH 4  3  5  7  10  15  3  5 

standing  time  (days) 

Fig.  2  % Adsorption of La, Eu, Luand Y on filter  paper at various  pH as a function of standing time. 

εlass 

polyethylene 

3  4 

, 、

¥ 

/01L11 

La 

司 1 ‑ ‑ ー

7  8 

Fig.  3  ~ぢ Adsorption on glass and  polyethylene as a function of pH. 

性側に最大吸着pHが認められる。

ポリエチレンビーカーの場合は非イオン交換体と考 えられるのでイオン交換吸着というよりは中性附近で はイットリウムおよび希土類元素が中性分子として吸 着されるのではないかと考えられる。

吸着はpH5附近からお乙るが,その吸着率はガラ スに比べてはるかに大きく,放置時聞により大きく増 大する (Fig. 4)0  1週間程度の放置で Y,La, Eu  は大約30必に達し, Luのごときは70必に達した。

その最大吸着pHはガラスに比べてややアノレカリ側に 移行する。

なお,比較のため 89Sr,65Znの No.5A iP紙,ガ ラス,ポリエチレンへの吸着を Fig̲5 ~と示した。

89Srはいづれの pHにおいてもほとんど吸着は無視 できる程度であり, Mn, Znも希土類元素とはかな り違った挙動を示し, pH~6 ではほとんど吸着せず

pH>7で急激に吸着量が増大する。

(4)

n u 

y' A 

F 2

﹄ E

︒ 毛

︿ ぷ

近畿大学原子力研究所年報

polyethy lene 

50 

40 

30 

20 

La

ロ ロ

'  7 

standing time (days)  15 

Fig.  4.  ~話 Adsorption of  Rare Earth elements on Glass and Polyethylene Beaker.  5 

11‑ 168Hr 

Mn‑S4  30 

168hr  20 

五 。

z10  20 

Zn‑65 

15 ベt‑No.5A filtrpaper ベ}‑glass 

10

ー ・ ̲

qolyethylene  24168hl¥ 

金活証=

pH 

3 ‑ 2 .

浮瀞懸濁物質への吸着

1

昨懸濁物質に対する吸着挙動を海水のpH8附近 で調査した。調製溶液を一定時開放置後, ミリポアフ ィルター(孔径 10,'1 5 p, 1. 2p, 0.65p)を用いてそ の分散粒子径にしたがって順次倖い分け分布状態を検 討したのが Fig.6‑A, 6‑Bである。

Fig. 6より明らかに希土類元素聞においてかなり の差異が認められる。軽希土のランタンでは吸着量が かなり低くなっているのに対し,重希土のノレテチウム では吸着量が極めて大きく,とくに1旬以上のような 大粒子に対する吸着は著しく15日程度で60必にもおよ ぶ。イットリウムが比較的ユーロピウムによく似た挙 動を示す乙とは容器等への吸着の場合とよく似てい る。

一方,仮想浮静懸濁物として Kaolinite,sea sand  を選びこれに対する吸着挙動を調べたのが Fig.7で ある。

Kaoliniteのような粘土鉱物では吸着量もpHと共 9 ζ増大し, pH 8附近では100必近い吸着率を示す。

sea sand にあっても pH8附近ではかなりの吸着量 Fig.  5.  Adsorption of Sr, Mn and Zn 

on to  Glass and Polyethylene.  を示すことがわかった。

一方,乙れら仮想懸濁物に吸肴された希土類元素の

‑ 4 ‑

(5)

o '  

1. 2:p 

Eu  A 

10ト

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‑ ‑ ‑ ‑ 一 ‑ ‑ A ‑ ‑ ‑ ‑ 4 . ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ . 6

L 一て受ニz f と=e 10~l

~ 0.65μ 

5  10  15  S  l()  lS  standing  time  (days) 

Fig.  6‑A.  Effect of  standing time on partic1e size distributon of  La and Eu. 

60 

Y  •

10 

4 0  

i

1

20 

5).1 

-一ーーー--å--ー一一ーーコ~-

一 ー ー ・ ‑ . . . . . . . , o 

0.651.1 

] 一 ‑ 一 ‑ 一 口

l. 1μ 2

10  15  市EE& ハU 15 

standing  time  (days) 

Fig.  6‑B.  Effect of standing time on particle size  distribution of  Lu and Y. 

(6)

100 

5r

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.

Jb

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Sra メ日Illl

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AU5

ぅ ︑υ

Fig.  7. 惣 Adsorptionof Lu on to  kao1inite  and sea sand as a function  of pH. 

脱者について検討した。実験は希土類元素を吸着した 1......100 mgの Kaoliniteを500mlの海水中に加 え,一定時間毎に溶液部をFe(OH)3でスカベンジし て放射能を測定し脱着率を求めた。 その結果を Fig. 8‑

A

,に示したした。吸着剤が多い場合は10日程度の 放置ではほとんど完全に吸着されているが,吸着剤の 少ない場合には粒子が溶解,分散するのか若干減少し ている。

一方,希土を吸着した!琵濁物質を新しい海水で洗糠 し,その液量と脱着率の関係、を求めFig.8‑Bに示し た。吸着剤の少ないときはやはり50ml程度から若干

100 

ハUU

υ

t'j 

<li  80

ベ)‑Kaol inite 

E ι  

¥

l

oomz 

50mg 

10m

1 mg 

ラ +

ーとト

し ー 」

L・一一一ー」

4  6  (days) 

1E・‑‑' 8  10  Fig. 8‑A.  96 Adsorption of Eu;'from 

Kaolinite in  sea water as a funcLion  of standing time. 

近畿大学原子力研究所年報 吸着量は減少するが 500ml程度の液量では溶出され る量は20お程度であり,完全に脱者するにはかなりの 液量を少要とすることがわかる。

100 

80 

ル 1 

IハU

U

EE‑

. 300  500 

(ml) 

Fig.  8‑B. タbDesorption of  Eu from  Kaolinite as a function of eluant  volume. 

いづれにしても,乙の様なシリケート鉱物にはかな り多くのものが吸着されることが明らかとなった。

以上のことからすると容器,懸濁物等への吸着が分 析結果にかなり大きな影響をおよぼし,徹量元素の存 在量,存在状態に大きな支配をもたらすことが考えら れる。

4 . 結 語

イットリウム,希土類元素,マンガン,EE.鉛などは 元素によって吸着する pH,吸着量lζ多少の差はある が全体としてpH>4では相当部分がコロイド状とな り,容器,i,P紙あるいは浮瀞懸濁物などへの吸着がお こり,分析結果を大きく左右する乙とが予測きれる。

したがって,海水試料の採取直後に分析することが不 可能な場合には分散しているコロイド部分を溶解する 可能性はあるが酸を添加して,少くとも pHく3以下 にしておき,可及的速やかに分析する必要がある。

また, ミリポアフィJレターを用いることにより吸着 の影響を受けることなく試料中の分散コロイドを,そ の粒子径により筒い分ける乙とが可能であることを認 めた。したがって,分散コロイドを

P

別した後,溶液 部のpHを3以下安全のためにpHぐ1とすれば吸着 による影響を防ぐことができる。

(木研究は日木化学会第21年会において発表) 文 献

1)  E, D. Goldberg, M. Koide, R. A. Schmidt.  R. H. Smith, 

J .  

Geophys. Res., 68, 4209  (1963) 

‑ '6 

, ‑

(7)

2)  H. Wattenberg, Z.  anorg. Chern., 25 ,1 86  6)  G. K. Schweitzer, W. M. Jackson, J. Arn.  (1943)  Chern. S

. o

c., 74, 4178 (1952) 

3)  Yu. A. Balashov, L. M. Khitrov, Geo‑ 7)  G. K. Schweitzer, W. M. Jackson, J. Arn.  chernistry, a translationn  of  Geokhirniy  Chern. Soc., 76. 941 (1954) 

a, 

9

,877 (1961)  8) 1. D. Kurbatov, M. H. Kurbatov, J.  Phys. 

4)  G.K.Schweitzer, H.E.Scott, ].Arn.Chem.  Chern., 46, 44 (1942) 

Soc., 77, 2743 (1955)  9)  W. Ostwald und R. Lorenz, Kol1oid z.,  5)  G. K. Schweitzer, B. R. Stein, W. M. 

1 1 9

, 195 (1923) 

]ackson, ]. Arn. Chern, Soc., 75,793 (1953) 

参照

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