ココンマ圏と profunctor
alg-d
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2021 年 7 月 15 日
これまで見てきた通り,圏論ではコンマ圏が非常に重要な役割を果たす.そうすると気 になるのは,コンマ圏の双対となる「ココンマ圏」は存在するのであろうか,ということ である.
定義. 圏C の図式a ←c →bをaからbへのspanという.双対的に,図式a →c←b をaからbへのcospanという.
定義. C を圏,a, b ∈ C を対象とする.aから bへのspanがなす圏SpanC(a, b)を以下 のように定める.
• Ob(SpanC(a, b)) :={⟨f, g⟩ ∈Mor(C)2 |c∈C, a←−f c−→g b}
• ⟨f, g⟩,⟨k, l⟩ ∈ SpanC(a, b)とする.c:= dom(f),d:= dom(k)とする.⟨f, g⟩か ら⟨k, l⟩への射は,次の図式を可換とする射h: c→dで定める.
a b
d c
k l
f g
h
圏C が文脈から明らかな場合は添え字を省略して単にSpan(a, b)と書く.また同様にし てcospanがなす圏CospanC(a, b)が以下のように定まる.
• Ob(CospanC(a, b)) :={⟨f, g⟩ ∈Mor(C)2 |c∈C, a−→f c←−g b}
• ⟨f, g⟩,⟨k, l⟩ ∈CospanC(a, b)とする.c:= cod(f),d := cod(k)とする.⟨f, g⟩か
ら⟨k, l⟩への射は,次の図式を可換とする射h: c→dで定める.
d c
a f g b
k h l
ここでは小圏の圏Catにおけるspan,cospanを考える.
A −→F C ←−G BをCatのcospanとしたとき,コンマ圏G↓F はspanA ←G↓F →B を与えるのであった.*1
命題 1. コンマ圏を取る操作は関手↓: Cospan(A, B)→Span(A, B)を与える.
証明. A−→F C ←−G B,A−→K D ←−L Bをcospan,H: ⟨F, G⟩ → ⟨K, L⟩をCospan(A, B) の射とする.このとき関手↓H: G↓F →L↓K をコンマ圏の普遍性により定める.
C′
A B
G↓F L↓K
⇐=
= =
K L
P1 ↓H P0
=
C′ C
A B
G↓F
⇐=
= =
K L
P1 P0
F G
H
普遍性により,これは明らかに関手↓: Cospan(A, B)→Span(A, B)を与える.
そこで,もしこの関手が左随伴を持つとすると,それが「ココンマ圏を与える関手」で あるとみなすことができる.というのも「コンマ圏の普遍性」の双対バージョン(定理2) が成り立つからである.
それを説明するため,関手↓が左随伴↑: Span(A, B)→Cospan(A, B)を持つとして,
そのunitをηとする.A ←−F C −→G Bをspanとすると↑⟨F, G⟩はcospanであるから,
それをA −−→Q0 F ↑G ←−−Q1 Bと書くと,これのコンマ圏を考えることができる.このとき
*1後の構成の都合上,F↓GではなくG↓F を考える.ここをF ↓Gに変えた場合は,後で出てくる Prof(A, B)がProf(B, A)になる.
S :=η⟨F,G⟩はSpan(A, B)の射C →Q1↓Q0 (次の図式の点線の射)のことである(ここ でP0, P1, θはコンマ圏Q1↓Q0 から得られる関手と自然変換である).
A F ↑G
Q1↓Q0 B C
⇒ =
θ Q0
Q1 F
G P1
P0
S
=
=
これらを合成して得られる自然変換をρ: Q1G⇒Q0F とする.
定理 2. 関手↓が左随伴↑: Span(A, B) → Cospan(A, B)を持つとする.このとき上の ように定義した図式
A F ↑G
C B
⇒ =
ρ Q0
Q1
F
G
は次の普遍性を満たす: X を圏,R0: A →X,R1: B →X を関手,α: R1G ⇒R0F を 自然変換とする.
X A
C B
⇒ =
α R0
R1
F
G
このとき関手H: F ↑G→X が一意に存在して以下を満たす.
(1) HQ0 =R0,HQ1 =R1 である.
(2) 次の自然変換の等式が成り立つ.
X A F ↑G
C B
⇒ =
ρ
=
=
R0
R1
F
G Q0
Q1
H
= A
X
C B
⇒ =
α R0
R1
F
G
証明. まずH の存在を示す.そのためにコンマ圏R1↓R0 を取り,そこから得られる関 手と自然変換をP0′, P1′, θ′ とする.普遍性により次の図式の点線の関手M: C →R1↓R0 が得られる.
X A
R1↓R0 B C
⇒ =
θ′ R0
R1 F
G P1′
P0′
M
=
= =
X A
B C
⇒ =
α R0
R1 F
G
このとき随伴Hom(↑⟨F, G⟩,⟨R0, R1⟩) = Hom(∼ ⟨F, G⟩,↓⟨R0, R1⟩) により,M の随伴射 となる関手H: F ↑G →X が取れる.これが条件(1)(2)を満たすことを示す.
まず条件 (1)は,定義よりH がCospan(A, B)の射であるからよい.条件(2)を示そ う.随伴のunitの性質から↓H◦S =M が成り立つ.従って
X A
B C
⇒ =
α R0
R1
F
G
=
X A
R1↓R0 B C
⇒ =
θ′ R0
R1
F
G P1′
P0′
M =
=
=
X A
R1 ↓R0 B Q1↓Q0
C
⇒ =
θ′
=
=
R0
R1 F
G P1′
P0′ P1
P0
=
=
S
↓H
=
X A F ↑G
B Q1↓Q0
C
R0
R1
F
G P1
P0
=
=
S
⇒ =
θ
=
Q0 =
Q1
H
=
X A F ↑G
B
C
R0
R1 F
G
⇒ =
ρ
=
Q0 =
Q1
H
となり条件(2)が成り立つ.
後はH の一意性を示せばよい.Hが条件(1)(2)を満たすとするとH はCospan(A, B) の射F ↑G→X だから,随伴射M: C →R1↓R0 が取れる.従ってこのM が一意であ ることを示せばよい.再びunitの性質から,これは↓H ◦S =M を満たす.故に
X A
R1↓R0 B
C
⇒ =
θ′ R0
R1
F
G P1′
P0′
M
=
=
=
X A
R1↓R0 B Q1↓Q0
C
⇒ =
θ′
=
=
R0
R1
F
G P1′
P0′ P1
P0
=
=
S
↓H
=
X A F ↑G
B Q1↓Q0
C
R0
R1
F
G P1
P0
=
=
S
⇒ =
θ
=
Q0 =
Q1
H
=
X A F ↑G
B
C
R0
R1 F
G
⇒ =
ρ
=
Q0 =
Q1
H
=
X A
B
C
⇒ =
α R0
R1
F
G
となるから,R1↓R0の普遍性によりM は一意である.
そこで問題は↓: Cospan(A, B)→Span(A, B)が左随伴を持つか,ということになる.
答えは存在する,であるが,これを構成するためにprofunctorというものを導入する.
定義. C, D を圏とする.C から D への profunctor (もしくは distributor もしくは correspondenceもしくはbimodule)とは関手P: C → Db のことである.profunctor を 記号P: C −◦→ Dなどで表す.
自然同型HomCat(A×B, C)∼= HomCat(A, CB)により,profunctorP: C −◦→ D即ち 関手P: C →Dbと関手P: Dop×C →Setを同一視することができる.以下,特に断らず この同一視を行う.またCからDへのprofunctorがなす圏をProf(C, D) :=SetDop×C で定める.
定義. P: A −◦→ B,Q: B −◦→ C に対して profunctor の合成Q⊗P: A −◦→ C を関手 (y†Q)◦P: A→Cbで定める.
A B
Bb Cb
P
Q y
y†Q
圏Cに対して米田埋込y: C →Cbが定めるprofunctorをidC: C −◦→ Cで表す.米田 埋込と左Kan拡張の性質から容易に分かるようにP: C −◦→ Dに対してP ⊗idC ∼= P, idD⊗P ∼=P である.
命題 3. P: A−◦→ B,Q: B−◦→ Cをprofunctorとするとき Q⊗P(a)∼=
Z b∈B
P(b, a)×Q(−, b).
証明. X ∈Bbに対してy†Q(X)∼= Z b∈B
HomBb(y(b), X)×Qb∼= Z b∈B
Xb×Qbである からQ⊗P(a) =y†Q(P a)∼=
Z b∈B
P a(b)×Qb= Z b∈B
P(b, a)×Q(−, b). F: C →Dを関手とする.このときprofunctor F∗: C −◦→D,F∗: D−◦→C が
F∗(d, c) := HomD(d, F c), F∗(c, d) := HomD(F c, d)
により定まる.つまりF∗(c) =y◦F(c) =F−1y(c),F∗(d)∼=F†y(d)である.
そこでcospan A−→F C ←−G Bに対してprofunctor Φ(F, G) : A−◦→ Bを Φ(F, G) :=G∗ ⊗F∗ ∼= (G†y)⊗(y◦F)∼=y†(G†y)◦y◦F
により定義することができる.
Cb
C Bb
A B
F
G G†y
y†(G†y)
y y
ここでyが忠実充満よりy†(G†y)◦y ∼= G†y となるから結局Φ(F, G)∼= (G†y)◦F が分 かる.従ってΦ(F, G)(a)∼=G†y(F a)∼= HomC(G−, F a)となる.
命題 4. Φ : Cospan(A, B)→Prof(A, B)は関手となる.
証明. Cospan(A, B)の射H: ⟨F, G⟩ → ⟨K, L⟩ (次の図式を参照)を取る.
D
C
A F G B
K H L
既に見た通りΦ(F, G),Φ(K, L) : A −◦→Bは次で与えられる.
Φ(F, G)(b, a)∼= HomC(Gb, F a) Φ(K, L)(b, a)∼= HomC(Lb, Ka) そこでΦ(H)ba: Φ(F, G)(b, a)→Φ(K, L)(b, a)を合成
Φ(F, G)(b, a)∼= HomC(Gb, F a)−→H HomC(HGb, HF a)∼= Φ(K, L)(b, a) により定義する.これはb∈B,a ∈Aについて自然である.
...
) f: a→a′,g: b′ →bとする.次の図式が可換であることを示せばよい.
HomC(Gb, F a) HomC(HGb, HF a)
HomC(Gb′, F a′) HomC(HGb′, HF a′)
H
HF f◦−◦HGg F f◦−◦Gg
H
それはH が関手であるから明らか.
これによりΦ : Cospan(A, B)→Prof(A, B)は明らかに関手である.
逆に profunctor P: A −◦→ Bに対して cospan Σ(P) = (A −−→FP CP GP
←−− B)を以下の ように定義することができる.まず圏CP を次により定める.
• Ob(CP) := Ob(A)⊔Ob(B)
• HomCP(u, v) :=
HomA(u, v) (u, v ∈Aのとき) HomB(u, v) (u, v ∈Bのとき)
∅ (u∈A, v ∈Bのとき) P(u, v) (u∈B, v ∈Aのとき)
• 射f: u →v,g: v→wの合成g◦f を次で定める.
g◦f :=
g◦f (u, v, w ∈Aのとき) g◦f (u, v, w ∈Bのとき)
P(f,idw)(g) (u, v∈B, w ∈Aのとき.下図参照) P(idu, g)(f) (u∈B, v, w∈Aのとき)
u
v
w f
g g◦f
Hom(u, w) =P(u, w)
Hom(v, w) =P(v, w)
P(f,idw)
∈∈
A B
関手FP: A → CP,GP: B → CP を自然な埋込で定めれば Σ(P) ∈ Cospan(A, B) で ある.
命題 5. Σ : Prof(A, B)→Cospan(A, B)は関手となる.
証明. Prof(A, B)の射θ: P ⇒ Qに対してCospan(A, B)の射Σ(θ) : Σ(P) → Σ(Q), 即ち次の図式が可換となるような関手Σ(θ)を定める.
CQ
CP
A FP GP B
FQ GQ
Σ(θ)
そのためには対象a∈A,b∈Bに対して写像Σ(θ) : HomCP(b, a)→HomCQ(b, a) をう
まく定めればよい.HomCP の定義からΣ(θ) := θba: P(b, a)→ Q(b, a)と定義すること ができる.これによりΣ(θ)は関手になる.
...
) 定義からΣ(θ)(id) = idは明らかである.従ってf: u→v,g: v →wとしたと きにΣ(θ)(g◦f) = Σ(θ)(g)◦Σ(θ)(f)となることを示せばよい.
(i) u, v, w ∈Aまたはu, v, w ∈Bの場合,明らか (ii) u, v∈B,w ∈Aの場合,定義から
Σ(θ)(g◦f) =φuw(g◦f), Σ(θ)(g) =φvw(g), Σ(θ)(f) =f であり,一方φが自然変換だからθuw(g◦f) =θvw(g)◦f が分かる.
P(u, w) Q(u, w)
P(v, w) Q(v, w)
φuw
Q(f,idw) P(f,idw)
φvw
g◦f θuw(g◦f) θvw(g)◦f
g φvw(g)
φuw
Q(f,idw) P(f,idw)
φvw
(iii) u∈B,v, w ∈Aの場合,定義から
Σ(θ)(g◦f) =φuw(g◦f), Σ(θ)(g) =g, Σ(θ)(f) =φuv(f) であり,一方θが自然変換だからθuw(g◦f) =g◦θuv(f)が分かる.
P(u, v) Q(u, v)
P(u, w) Q(u, w)
φuv
Q(idu,g) P(idu,g)
φuw
f θuv(f) g◦θuv(f) g◦f θuw(g◦f)
φuv
Q(idu,g) P(idu,g)
φuw
以上によりΣ(θ)は関手であることが分かった.
これによりΣが関手になることを示す.Σの定義よりΣ(id) = idは明らかである.そこ でθ: P ⇒Q,σ: Q⇒Rに対してΣ(σ◦θ) = Σ(σ)◦Σ(θ)を示す.そのためにはa∈A, b∈Bに対して(σ◦θ)ba =σba◦θbaを示せばよいが,それは自然変換の合成の定義であ る.
命題 6. 随伴Σ ⊣ Φ : Prof(A, B) → Cospan(A, B)が成り立つ.更にこれのunitは同 型である.
証明. 随伴であることを示すため,P ∈Prof(A, B),(A −→F C ←−G B) ∈Cospan(A, B) について自然な全単射
φ: HomCospan(A,B)(Σ(P),⟨F, G⟩)→HomProf(A,B)(P,Φ(F, G)) を定義する.
まずprofunctor P: A −◦→Bに対して
Φ(Σ(P))(−,□) = Φ(FP, GP)(−,□)= Hom∼ CP(GP−, FP□) =P(−,□)
だからΦ◦Σ ∼= idである.この自然同型を η: id ⇒ Φ◦Σとする.このとき φを,射 H: Σ(P)→ ⟨F, G⟩に対してφ(H) := Φ(H)◦ηP: P ⇒Φ(F, G)と定める.Φの定義に より,φ(H)baはb∈B,a∈Aに対して合成
P(b, a) = HomCP(GPb, FPa)−→H HomC(Gb, F a)
で与えられる.このφは全単射Hom(Σ(P),⟨F, G⟩)→Hom(P,Φ(F, G))を与える.
...
) 単射であることはφ(H)ba の定義から明らかである.よって全射性を示せばよ い.そこでθ: P ⇒HomC(G−, F□)を自然変換とする.このときH を
• 対象x ∈CP に対してHx:=
( F x (x∈A) Gx (x∈B).
• 射f: u →vに対してHf :=
F f (u, v ∈A) Gf (u, v ∈B) θba(f) (u∈B, v ∈A).
と定義する.このH: CP →C は関手である.
...
)H(id) = idは明らかなのでf: u→v,g: v→wとしてH(g◦f) =Hg◦Hf を示す.
(i) u, v, w ∈Aまたはu, v, w ∈Bの場合,明らか (ii) u, v∈B,w ∈Aの場合,定義から
H(g◦f) = θuw(g◦f) Hg = θvw(g)
Hf = Gf
であり,一方θが自然変換だからθuw(g◦f) =θvw(g)◦Gf である.
Ψ(u, w) HomC(Gu, F w)
Ψ(v, w) HomC(Gv, F w)
θuw
−◦Gf Φ(f,idw)
θvw
g◦f θuw(g◦f) φvw(g)◦Gf
g θvw(g)
θuw
Φ(f,idw) −◦Gf
θvw
(iii) u∈B,v, w ∈Aの場合,定義から
H(g◦f) = θuw(g◦f)
Hg = F g
Hf H = θuv(f)
であり,一方θが自然変換だからθuw(g◦f) =F g◦θuv(f)である.
Ψ(u, v) HomC(Gu, F v)
Ψ(u, w) HomC(Gu, F w)
θuv
F g◦−
Ψ(idu,g)
θuw
f θuv(f)
F g◦θuv(f) g◦f θuw(g◦f)
θuv
F g◦−
Ψ(idu,g)
θuw
以上によりH は関手であることが分かった.
このとき明らかにHFP = F,GPH = G だからH は射Σ(P) → ⟨F, G⟩であり,
φ(H) =θである.
このφが自然であることを示す.即ちθ: P ⇒Q,M: ⟨F, G⟩ → ⟨K, L⟩に対して Hom(Σ(Q),⟨F, G⟩) Hom(Q,Φ(F, G))
Hom(Σ(P),⟨K, L⟩) Hom(P,Φ(K, L))
φ
θ◦−◦Φ(M) Σ(θ)◦−◦M
φ
が可換であることを示す.H: Σ(Q) → ⟨F, G⟩として,まず右回りで送った先を考える と,そのba成分は(θ◦φ(H)◦Φ(M))ba =θba◦φ(H)ba◦Φ(M)ba =θba◦H◦M である.
一方左回りの ba成分は(φ(Σ(θ)◦H ◦M))ba = Σ(θ)ba ◦H◦M = θba ◦H◦M であ る.よって可換性が分かった.
以上によりΣ⊣Φである.φの定義よりこの随伴のunitはηであり,これは同型であ る.
unit が同型だから Σ : Prof(A, B) → Cospan(A, B) は忠実充満である (「随伴」の PDFを参照).
次にspan A←−F C −→G Bに対してprofunctor Ψ(F, G) : A−◦→Bが
Ψ(F, G) :=G∗⊗F∗ ∼= (yG)⊗(F†y)=∼y†(yG)◦F†y ∼=F†(yG)
により定まる.ここで各点左Kan拡張の一般論によりy†(yG)◦F†y ∼=F†(yG)となるか ら結局Ψ(F, G)∼=F†(yG)である.
Cb Bb
A B
C
⇒ = ⇒ =
F G
F†y
y†(yG)
y
y
=
Bb
A B
C
⇒ =
F G
y F†(yG)
命題 7. Ψ : Span(A, B)→Prof(A, B)は関手となる.
証明. そのためにSpan(A, B)の射H (次の図式を参照)を取る.
A B
D
C
K L
F H G
Ψ(F, G),Ψ(K, L) : A −◦→ B はΨ(F, G) ∼= F†(yG),Ψ(K, L) ∼= K†(yL) を満たすので あった.よって左Kan拡張の普遍性により自然変換Ψ(H) : Ψ(F, G) ⇒Ψ(K, L)が得ら れる.
A B
Bb
C
=⇒
Ψ(H)⇒
F G
K†(yL)
F†(yG) y
= A B
Bb
D
C
⇒ =
K L
F G
H K†(yL)
y
これによりΨが関手となることを示そう.
まず明らかにΨ(id) = idである.よってΨが合成と交換することを示せばよい.そこ で(A←−F C0 −→G B)−→H (A←−K C1 −→L B)−−→H′ (A←−S C2 −→T B)をspanの射とすると
A B
Bb
C0
⇒ =
Ψ(H⇒ ′) Ψ(H)⇒
F G
S†(yT)
K†(yL) F†(yG)
y
=
A B
Bb
C1
C0
⇒ =
Ψ(H⇒ ′)
K L
F G
H S†(yT)
K†(yL) y
=
A B
Bb
C2
C1
C0
=⇒
S T
K L
F G
H′
H S†(yT)
y
=
A B
Bb
C0
=⇒
⇒ =
Ψ(H′◦H)
F G
S†(yT)
F†(yG) y
より普遍性からΨ(H′◦H) = Ψ(H′)◦Ψ(H)が分かる.
逆に関手Λ : Prof(A, B)→ Span(A, B)がΛ :=↓ ◦Σにより定まる.(後にΨ⊣Λ が 分かる(命題12).)
Span(A, B) Prof(A, B) ⊥ Cospan(A, B)
Ψ
Λ
Σ
Φ
↓
profunctor P: A−◦→ Bに対してΛ(P) = (A F
←−−P CP G
−−→P B)と書く.
CP
A B
GP ↓FP
CP
⇐=
FP GP
FP GP
命題 8. 圏CP は以下のようになる.
• Ob(CP) ={⟨a, b, f⟩ |a ∈A, b ∈B, f ∈P(b, a)}
• ⟨a, b, f⟩,⟨a′, b′, f′⟩ ∈Ob(CP)に対して HomCP(⟨a, b, f⟩,⟨a′, b′, f′⟩) =
(
⟨g, h⟩
g: a→a′, h: b′ →b, P(h, g)(f) =f′
)
命題 9. Λ : Prof(A, B)→Span(A, B)は忠実充満である.
証明. P, Q∈Prof(A, B)とする.
まず忠実であることを示すため,θ, σ: P ⇒QがΛ(θ) = Λ(σ)を満たすとする.定義 より
CQ
CP
A B
CP
⇐=
= =
FQ GQ
FP GP
FP GP
Σ(θ)
=
CQ
A B
CP CQ
⇐=
= =
FQ GQ
FP Λ(θ) GP
=
CQ
CP
A B
CP
⇐=
= =
FQ GQ
FP GP
FP GP
Σ(σ)
である.よって対象⟨a, b, f⟩ ∈ CP に対してΣ(θ)(f) = Σ(σ)(f)となる.これはθ = σ を意味する.
次に充満であることを示すためH: Λ(P) →Λ(Q)とする.θ: P ⇒ Qを定義しよう.
そのためにb ∈ B,a ∈ A を取りf ∈ P(b, a)とする.このとき⟨a, b, f⟩ ∈ CP だから
H⟨a, b, f⟩ ∈CQ である.圏CP の定義よりH⟨a, b, f⟩=⟨a, b, θba(f)⟩と書ける.これに より写像θba: P(b, a)→Q(b, a)が定まる.θba はb∈B,a ∈Aについて自然である.
...
) g:a →a′,h: b′ →bとする.次の図式が可換であることを示せばよい.
P(b, a) Q(b, a)
P(b′, a′) Q(b′, a′)
θba
Q(h,g) P(h,g)
θb′a′
f ∈ P(b, a)を取り f′ := P(h, g)(f)とする.このとき⟨g, h⟩: ⟨a, b, f⟩ → ⟨a′, b′, f′⟩ は CP の射である.故に H⟨g, h⟩: H⟨a, b, f⟩ → H⟨a′, b′, f′⟩ は CQ の射であり H⟨g, h⟩ = ⟨g, h⟩ である.よって Q(h, g)(θba(f)) = θba(f′) = θba(P(h, g)(f)) と なる.
よってθ: P ⇒Qとなる.このときΛ(θ) =H である.
命題 10. Λ◦Φ∼=↓である.
証明. H: (A −→F C ←−G B) → (A −→K D ←−L B)をCospan(A, B)の射とする.定義より Λ(Φ(H))は
CQ
A B
CP CQ
⇐=
= =
FQ GQ
FP Λ(Φ(H)) GP
=
CQ
CP
A B
CP
⇐=
= =
FQ GQ
FP GP
FP GP Σ(Φ(H))
で与えられる関手である.ここで
Φ(F, G)∼= HomC(G−, F−), Φ(K, L)∼= HomC(L−, K−)
でありΣ(Φ(H))は H: HomC(Gb, F a) → HomC(Lb, Ka) により定まる関手である.
よってΛ◦Φ∼=↓である.
命題 11. ⟨L, η⟩がF: C →Dに沿ったE: C →U の各点左Kan拡張であるとする.任 意の圏X と関手G: X →Dに対して合成
X D
F ↓G ⇒ = FC η =⇒ U
E L G
P1
P0
は左Kan拡張である.
証明. 任意の関手S: X →U に対して HomUX(LG, S)∼=
Z
x∈XHomU(LGx, Sx)
∼= Z
x∈XHomCb(HomD(F−, Gx),HomU(E−, Sx))
∼= Z
x∈X
Z
c∈Cop
HomSet(HomD(F c, Gx),HomU(Ec, Sx))
∼= Z
⟨c,x⟩∈Cop×X
HomSet(HomD(F c, Gx),HomU(Ec, Sx))
∼= HomProf(X,C)(HomD(F−, G□),HomU(E−, S□))
∼= HomProf(X,C)(Φ(G, F),Φ(S, E))
∼= HomSpan(X,C)(Λ(Φ(G, F)),Λ(Φ(S, E))) (命題9)
∼= HomSpan(X,C)(F ↓G, E↓S) (命題10)
∼= HomUF↓G(EP0, SP1) (コンマ圏の普遍性) だからP1†(EP0)∼=LGである.
命題 12. 随伴Ψ⊣Λ : Span(A, B) →Prof(A, B)が成り立つ.更にこれのcounitは同 型である.
証明. 随伴であることを示すため,(A←−F C −→G B)∈ Span(A, B),P ∈ Prof(A, B)に ついて自然な全単射
φ: HomSpan(A,B)(⟨F, G⟩,Λ(P))→HomProf(A,B)(Ψ(F, G), P) を定義する.そのためにまず自然同型ε: Ψ(Λ(P))⇒P が存在することを示す.
...
) 定義よりΨ(Λ(P))∼= (FP)†(y◦GP)である.一方A F
←−−P CP G
−−→P Bはコンマ 圏GP ↓FP として与えられていたから,命題11により G†Py◦FP はFP に沿った y◦GP の左Kan拡張である.故に自然同型ε: Ψ(Λ(P))⇒P が存在して次の等式が 成り立つ.
A
CP B Bb
=⇒
y FP
GP
Ψ(Λ(P))
=⇒ε
P
=
A CP
CP ⇒ = B =⇒ Bb
∼=
GP
y G†Py FP
FP
GP P
H: ⟨F, G⟩ →Λ(P)を射とする.即ちH は次を可換とする関手である.
A B
CP C
FP GP
F H G
このとき自然変換φ(H) : Ψ(F, G)⇒P をφ(H) := ε◦(Ψ(H))で定める.つまりφ(H) は
A B
Bb
C
=⇒
⇒
ε Ψ(H)⇒
F G
P
Ψ(Λ(P))
F†(yG) y
=
A B
Bb
CP C
=⇒
⇒
ε
FP GP
F G
H P
Ψ(Λ(P)) y
=
A B
Bb
CP C CP
=⇒
∼
=
FP GP
F G
H P
y FP GP
G†Py
により定まる自然変換である.これは全単射φ: Hom(⟨F, G⟩,Λ(P))→Hom(Ψ(F, G), P) を与える.
...
) 単射性は明らかだから全射性を示す.そのためにσ: Ψ(F, G) ⇒ P を自然変換 とする.このときθ :=σF ◦ηと定義し(次の図式を参照),
Bb
A B
C
⇒σ
⇒ η=
F G
y F†(yG)
P
H を
• 対象c∈C に対してHc:=⟨F c, Gc, θc⟩
• 射f: c→c′に対してHf :=⟨F f, Gf⟩
で定義する.これは明らかに関手 H: C → CP を定める.また明らかに H は射
⟨F, G⟩ →Λ(P)でありφ(H) =σである.故にφは全射である.
このφが⟨F, G⟩, P について自然であることを示す.そのためにM: ⟨F, G⟩ → ⟨K, L⟩, θ: P ⇒Qとする.
Hom(⟨K, L⟩,Λ(P)) Hom(Ψ(K, L), P)
Hom(⟨F, G⟩,Λ(Q)) Hom(Ψ(F, G), Q)
φ
Ψ(M)◦−◦θ M◦−◦Λ(θ)
φ
が可換であることを示す.
以上により↑:= Σ◦Ψと定義すれば
Span(A, B) ⊥ Prof(A, B) ⊥ Cospan(A, B)
Ψ
Λ
Σ
Φ
↑
↓
より↑ ⊣ ↓となる.従って次の定理を得る.
定理 13. 関手↓: Cospan(A, B)→Span(A, B)は左随伴↑を持つ.
Λ,Σが忠実充満だから↑ ⊣ ↓は冪等随伴である(「随伴関手」のPDFを参照).そこで 充満部分圏Comma(A, B)⊂Span(A, B),Cocomma(A, B)⊂Cospan(A, B)を
Ob(Comma(A, B))
:={x ∈Span(A, B)|あるz ∈Cospan(A, B)が存在して↓(z)∼=x}, Ob(Cocomma(A, B))
:={x ∈Cospan(A, B)|あるz ∈Span(A, B)が存在して↑(z)∼=x} で定義すれば圏同値Comma(A, B)≃Prof(A, B)≃Cocomma(A, B)が得られる.
参考文献
[1] Jean Bénabou, Distributors at Work, http://www.mathematik.tu-darmstadt.
de/~streicher/