対話による学びの質と協同学習への認識に関する研究
人間教育専攻 人間形成コース 藤 井 拓 也
[本研究の目的と意義}
学習指導要領の改訂に際して,
r
主体的@対話 的で深い学びJと示され(文部科学省, 2016), 学習における対話による学びが重野見されてい る。対話に基づく学習として展開されているの もののーっとして協同学習が挙げられる。協同 学習の学びの質は,学習者がし功ミなる学習行動 を取るかが重要な視点(Jonson&Jonson,20 10)として示唆されており3 効果的な相互作用を生 む他者との学び方に着目し,検討することとし た。
まず,他者との効果的な相互作用をもたらす 学習者として,
r
能動的な聞き手J,I情報を提供 する話し手J',r
知識を構築する相手としての他 者jの3点が示されており(藤田, 2018),他 者への関与が自己の考えの構築に影響があることが示唆されている。また,伊藤・垣花(2015) は,対面状況での説明時に聞き手の理解伏況の モニターを多く行う人の方が,そうでない人よ りも,意味を付与する発言による説明を多く行 うことを明らかにした。自己調整学習において も他者の視点が注目されており,他者と自己の 理解伏態をモニターする学習者の相主が挙げら れている(上淵, 2006)。 ま た 共 調 整 学 習J や「社会的に共有された調整」としりた調整し ていく過程をHadw由人F吋&Oshige,M (2010) は,検討・分類しており,このような概念が先 行研究によって迫る知見として考えられる。そ して,長慣ら包009)は,対言曲句な学習行動は,
‑ 9
指導教員 皆 川 宜 凡
協同活動の認識によって影響を受けることを示 しており,野中 (2017)は3 協同作難志識を複 眼的に検討するため,大学生の学習者のタイプ の事理化を行っている。
本研究では,対話的な学習行動への積極的に 参加@関与を測定する質問紙を作成し対話的 な学習行動の概念構築および質問紙作戒と協同 作業喜志識との関連を検討する。
[方法}
質問紙の構成および作成
協同学習における対話的な参加@関与を測定 する質問紙の作成を調査者の主観が入らないよ うに9 心理学専攻の大学教員と多角的に協議し 作成した。協同学習における主な学習行動とし て 話 す こ とJ,I聞くことJ,
r
協力することJ の3つの要素を捉えた。そして,積極的な認知 プ ロ セ ス を 踏 ま え 活 動 促 進J,I発信J,昨日互 理解J,r
内省」の 4つの概念の構築を行った。そこから質問項目を選定し対話的な学習行動 尺度は, 20項目を選定した。
研究協力者
O府の私立大学 1校の大学生262名で、あっ た。質問紙の有効回答者数251名(男子151名, 女子106名)であり,調査は, 2018年12月 四
日に行った。同大学の樹受に協力を求め,授業 の最初の部分を利用して実施した。そして,調 査責任者が研究趣旨と質問紙の説明をし2 無記 名方式計甥リp 年齢)により集団実施し,回収
を行った。
調査材料 れた。以上のことから,協同効用と互恵懸念に 自身が作成した対話的な学習行動尺度,長蹟 おいて,対話的な学習行動との関連が見られ,
ら(2009)が作成した協同作喋認識尺度を使用 協同学習場面での他者との学びに関与した学習 した。
{結果及び考察]
対話的な学習行動尺度について3 記 述 縮 瞳 と因子スクリープロットのデータを算出した。
そして、これらを判断材料として4因子構成を 採用し因子分析(主因子法)を実施した。因 子分析の結果を受け,因子の角械を行いヲ「運営J,
「茸胡平の統合J,I理騨の共有J,I発信Jからな る下位尺度目項目で構成された。想定されて いた相互理解と内省が因子分析の結果から3 理 解を深める行動として理解の統合,王里解を広げ る行動として瑚卒の共有と鱗尺した。これらは3
共調整9 社会的に共有された調整で示唆された 十既念として捉えることができる。因子間の相関
は中程度の相関がみられた。
次に,対話的な学習行動尺度の信頼性の検討 において,全体および男女別のα係数はど、の因 子においても一定の内的整合性を備えていた。
次に協同作難居識との関連を検討し,対話的 な学習行動尺度の下位尺度と協同効用とで有意 な正の相関がみられた。また3 運営と理解の共 有において互恵懸念と負の相関がみられた。 個 人志向との関連はみられなかったO
次
l
こ9協同作業認識尺度の協同効用と個人志 向の得点をもとに、 HL群(協同高群,互恵低 群) ,田王群(協同高群,1iJ曹高群) ,LL群(協同 {期主互恵低群)LH群(協同間主互曹、高群)に 分類し,1要因の分散分析を行った。その結果,運営,瑚卒の共有,発信に関して匹群が日 群より高く、 HL群がLL群より高く,HH群が
LL群よりも有意な差が見られた。珪鮮の統合 においてHL群がLL群よりも有意な差が見ら
行動であることが示された。
{本研究の課題とまとめ}
本研究では9 協同学習における対話的な学習 行動を測定する尺度作成を行ったが協同活動へ の認識を一時点、で測ったもので、あるため,今後 は,経H寺的に対話的な学習行動と協同活動への 認識を追及していく必要がある。
また,今回の調査で協同作業認識の個人志向 のα係数が低く算出されたこともあり,野中 (2017)で示された学習者のタイプを群分けを することが不可能であると判断したコ調査方法 も踏まえた学習者の学習観を詳細に捉えた検討 が求められる。
また,本研究で,対話的な学習行動をグルー プ学習で、どの程度行っているか回答を求めたが,
対話的な学習行動に肯定的カミ否定的カミに捉えて いたかによって調査結果の差異が生むもので、あ ったと推察されるO したがって,今後の研究で は,対話的な学習行動に積極的に関与するとい うことを明確に捉えた質問紙が作成されること を期待する。しかし9本研究で得られた結果は,
今後の課題を指し示す新たな知見となると考え られる。
円U
1i