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<総説>聴器と加齢-老人性難聴(Presbycusis) 利用統計を見る

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聴器と加齢一老人性難聴(Presbycusis)

  村 上 嘉 彦 山梨医科大学耳鼻咽喉科学教室 抄録:聴器における加齢に基づく退行性変化とその機能的障害(老人性難聴)は、他の全身の臓 器組織系の老化による病変と平行して現れるとは限らず,その障害の発現はその大きな部分を遺伝 的要因により規定されるものと考えられるため,発症年齢や障害の進行の程度などに大きな個体差 があることが知られている。共通の特徴としては,聴覚機構のうちもっぱら感音系の障害として両 耳にほぼ対称的に起こり,通常緩徐ながらも常に進行性であること,さらにはその進行増悪を阻止 する治療的手段で有効なものがないために,リハビリテーションのみが唯一の臨床的対応策とされ ている。  老人性難聴は,その病態と機能的障害の現れ方から,現在4型の病型分類が病理組織学的に可能 であることが知られており,それぞれ①蝸牛感覚細胞障害型(高音急墜型感音難聴),②蝸牛神経 障害型(純音聴力に比し語音聴取能の著明な低下を示す),③血管条変性型(平坦な純音聴力の低 下と比較的良好な語音聴力を示す),④蝸牛伝音障害型(高音漸傾型感音難聴)に分類される。補 聴器による音圧増幅効果は,③の病型で最:も期待できるが②の病型ではきわめて困難であり,①, ④の二型では症例により適応となることもある。これらの4二型は,それぞれ単独の形で出現する こともあれば複合的な病態を示すこともあるが,後者の場合は,各三型の特異的機能障害が相加的 に累積した形式で現れるとみなされている。 キーワード 加齢,聴覚障害,老人性難聴,病型分類  聴器の中には,聴覚の末梢受容器官のほかに, 平衡感覚をつかさどる前庭諸器官も含まれるの で,加齢に基づく聴器の機能障害としては,聴 覚機能の障害(難聴)とともに平衡機能障害も 加わることになるが,本稿では加齢の過程で生 ずる聴覚機能障害について,その臨床症状や検 査成績と,聴器の病理組織学的所見(病理型) との関連について概説するとともに,これらの 聴覚障害に対する臨床的対応(主としてリハビ リテーションに属する)の可能性についてもふ れてみたいと思う。 1.全身の老化と聴覚系における加齢による障 害との関連性について  生物学的加齢現象は,各種属の共通の遺伝子 〒409−38 山梨県中巨摩郡玉穂町下河東ユUO 受付:1991年3月19日 受理:1991年4月10日 型によって規定された生理学的過程のひとつと みなされるが,聴覚系においても,他の全身の 臓器組織系統と同様に,時間の経過とともに加 齢による形態学的変化とそれに基づくと考えら れる機能障害が出現してくる。一般的にはヒト では40歳代までにはすでに一定の器官系統にお いてその効率的な働きが個体全体のそれととも に徐々に減退する兆しが現れ始め,50歳代には これらの働きの障害が明らかに示されるように なるが,さらなる時間の経過によってこれら老 化による変化は一連のものとなり,通常70から 80歳代に起こる死とともにその終焉を迎えるこ とになる。  ただし現時点においては,ある個体の老化な いし加齢による変化や障害が,ある一定の臓器 組織系統,例えば心脈管系のみの加齢による変 化からそれを基盤として一元的に説明すること

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84 村 上 嘉 彦 はできないことははっきりしてきており,これ までよく言い古されてきた常套句に,人はその 血管とともに老いるという表現があるが,血管 系における加齢に基づく変化と,他のそれぞれ の臓器や組織系統あるいは全身の老化との間に は必ずしも明確な平行関係は認められないとす る考え方が一般的といえる。また個々の細胞レ ベルにおける加齢による変化や障害はきわめて 複雑であって,各個体の多くの器官や組織系統 を構成するそれぞれの細胞群の態度はそれぞれ 異なり,絶えず入れ替えられるものもあれば後 述のように生後から死に至るまで細胞そのもの の分裂が固定されてしまっている組織系統もあ り,さらにはこれら加齢によるとみなされる変 化や障害と,後天的な障害や疾病によって生じ た変化とを厳密に区別することが困難な場合

もしばしば起こりうるとされている

(Schuknecht,1),その他)。  老人性難聴(presbycusis)という名称は, 加齢(老化)に基ずく退行性変化によって生じ る聴覚機能障害(難聴)を意味しており,その 障害の発症時期や経過,障害の程度などに関し ては,個体によってきわめてまちまちであるが, 両側耳ともほぼ対称的に起こることと,程度の 差はあれ常に進行性で,当然のこととはいえ自 然緩解は認められないことが知られている。聴 覚機構の持続性ないし耐久性といわれるもの は,他の臓器組織系統と同様その大きな部分 を遺伝的要因により規定されるものと考えられ ており,これに生存期間中に受ける物理的スト レスによる影響も多少追加されるものとされ る。後者に関してはおもに環境因子的要素,例 えば気候や食餌など,また騒音の有無などがか ねてから指摘されているところでもあるが (Roseaら2)),この点に関しては明確な結論 はえられていないのが現状である。前者の個体 における遺伝的ないし素因的要素に関しては, 老人性難聴という加齢による聴覚機能の障害が 個体によってその出現時期や障害の進行などに きわめて大きな差異があることの説明として説 得力があるが,一方ではこの事実が逆に老人性 難聴と遺伝性難聴との間の明確な鑑別が必ずし も容易ではないことをも端的に示唆している結 果となっている。 2.聴器における加齢による障害の発現部位(三 音系か感音系か)と臨床的対応の可能性  聴覚機構は周知のように外耳,中耳ならびに 耳小骨連鎖により構成される伝音機構と,内耳 に含まれる蝸牛感覚上皮系とそれに属する聴覚 伝導路から聴皮質に至る神経系より成る二子機 構に2大別される。これら両機構のいずれにお いても加齢による退行変化は起こりうるが,前 者の伝音響で加齢による聴覚機能の障害が発生 すれば当然伝音系難聴が,後者の障害では三音 系難聴が生ずることになる。  難聴の伝音機構における障害がその機能的障 害すなわち難聴に結びつく形態学的に重要な部 位は,音波により効率よく振動する鼓膜と,そ れに連なり音波を内耳に伝える耳小骨連鎖であ り,これらが中耳三音機構の主体をなすことは よく知られている。GlorigとDavis3), Nixon ら4>は,高齢者には高周波数音域においてしば しば気門骨導差(伝音難聴)が認められるとし, これは加齢とともに鼓膜は肥厚してその弾性が 失われ,耳小骨連鎖の結合部分やそれに付着す る耳小骨筋や腱も老化によりその剛性が減弱す る結果であるとする仮説を提唱したが,このよ うな伝音障害の存在を否定する報告もその置数 多く発表されただけでなく,組織学的にこのよ うな病的変化が証明されておらず1),さらには 耳小骨連鎖の関節部分には加齢によるとみられ る関節炎様病変が確かにあって,線維化や石灰 化,高度の場合には関節固着すら認められるに もかかわらず,聴覚機能への有意な影響は観察 されなかったとする報告もあって(Etholm and Bda15), Belal and Stewart6)),現時点では, 伝音系への加齢による機能的障害はたとえ認め られたにしてもわずかで,ほとんど無視できる とする考え方でほぼ合意がえられている。した がって,老人性難聴と呼ばれる聴器の加齢によ る機能障害は,もっぱら感音系難聴として出現 し,内耳蝸牛の感覚器官とそれに附随する神経

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系を構成する部分の病態として認められると結 論されているのが現状である。  聴覚系の感覚系器官やそれに連なる聴覚伝導 路を構成する神経系の諸細胞は,固定性分裂終 了細胞群,すなわち“fixed postmitotics”と呼 ばれ,身体において最も高度に分化し成熟した 細胞群に属しており1),他には網膜の感覚細胞 や心筋・骨格筋細胞,骨細胞や象牙質芽細胞  (odontoblast)などがこの系列に入っている。 これら細胞群は,その特異的発生分化が胎生期 ないし生後まもなくまでに確立し終了すると, その後再生されることなく生涯そのまま加齢と 死への道のみをたどることになる。したがって 聴器の加齢による退行性変化に基づく機能的障 害である老人性難聴の場合,その主たる病的変 化が感音系(sensorineural system)に出現す ることが明らかである以上は,出現した機能的 器質的障害は,増悪することはあってもその改 善を期待することはできないことになる。事実, この老人性難聴に対して臨床的に効果的な治療 手段はその増悪進行を阻止する手段すら確立さ れておらず,適応となる一定の症例に対するリ ハビリテーションのみが実際的な臨床的対策と して採用されているのが現状である。 3.加齢による聴器の病態と機能障害との関連 性(老人性難聴の病型分類)  聴覚機構における老化に由来する退行性病変 によりもたらされる機能障害である老人性難聴 が,もっぱら感音系難聴として出現することは 前述したが,感晶系を構成する解剖学的部位は, 蝸牛の感覚系器官からこれに付随する蝸牛神経 とその中枢性聴覚志すなわち脳幹部から聴皮質 に至る広汎な部位が含まれており,これらいず れの部分においても加齢による変化か現れるこ とが知られている(Hinchcliff7), Willeford8)そ の他)。これらの感音系を構i成する解剖学的部 位の中で,臨床的にその病歴や耳科学的所見な らびに各種の定量的聴覚機能検査成績からえら れた機能的障害の特徴的所見と,その病理形態 学的変化との関連性において詳細に検討が加え られた結果から,蝸牛の感覚上皮系とそれに連 なる蝸牛の第1次求心神経系における病態が重 要であり,これらの病理組織学的所見から老人 性難聴の九型分類がSchuknecht1)によって報 告されている。このような蝸牛感覚上皮とその 神経系に認められる老化に基ずくとみなされる 退行性変化と,老人性難聴として示される聴覚 機能障害との問に認められる明確な関連性につ いては,多くの肯定的評価がえられて現在に 至っているが,筆者らの追試検討(1979)9>に よっても基本的に裏付けられているので以下に その二型を列挙し,それぞれについて概説を加 えてみたい。  老人性難聴の三型分類(pa宅hologic types of presbycusis)  ①蝸牛感覚細胞障害型老人性難聴(sensory presbycusis)

 ②蝸牛神経障害型老人性難聴(neural

presbycusis)

 ③血管条変性型老人性難聴(s宅rial

presbycusis)  ④蝸牛伝音障害型老人性難聴(cochlear con− ductive presbycusis) ①蝸牛感覚細胞障害型老人性難聴:この病型と 次に示す②の蝸牛神経障害型の老人性難聴の病 型については,すでに古くから多くの報告がな されており(Croweらlo), Saxen11)その他), このような老化による蝸牛ラセン(Corti)器 の感覚細胞(有毛細胞)とその支持細胞の変性 消失という病理学的変化はほぼ確認されてい る。この病型においては,病理組織学的には蝸 牛基底回転の末端に始まるラセン器の感覚細胞 の変性消失が認められることと,その聴覚機能 の障害としては高周波数音域の急墜型難聴 (abrupt hlgh一£one hearing loss)を呈するこ とが特徴:であり,しかも感覚細胞の消失の範囲 や程度がそのまま純音聴力に反映され,その悪 化の周波数の範囲や程度に直接対応していると いう特異性を有する((Fig.1参照)。このよう なラセン器における感覚細胞の蝸牛基底端から の変性消失は,中年初老期に始まるとされ,そ

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86 村 上 嘉 彦 。め2◎3◎⑳5◎60”8090鵬 12525◎   5◎◎    鱒く     2K    期く    8K    l6K       Frequency i n HZ Discr1旧: 76箔 コ寺 × ご ハユの   ゆほ  010203◎4◎5060沁お9◎に0 sτ麗顕 30  匹 Q5 ゐ 9』 1も 占 燃翼 Fig・1・       3ASε     O奮SτA臼Cε  嶽  撫. Sensory presbycusis(Age 69, female)・ Abrupt high−tone hearing loss and severe atrophy of the Organ of Corti(loss of hair cells)and cochlear neurons at the baSal end Of the COChlea.(FrequenCy lS Plotted in the anatomical frequency scale and distance a正ong the cochlear duct in mm. is shown in the lower scale. The fil− led area indicates the estimated percen− tage loss of hair cells, coch豆ear neurons and Stria VaSCUIariS) の進行は通常緩徐で,高年齢に達してもその障 害が蝸牛基底回転下半部に限局する場合には, 会話音:域(500∼2000Hz)の聴力障害を来さず, 日常生活に不自由を感じないが,障害の範囲が 中周波数音域に及ぶ時には語音聴力に影響がみ られることはいうまでもない。  蝸牛の感覚細胞の変性消失とともにラセン器 を構成する支持組織も障害されて,ラセン器全 体の崩壊へと進行するような場合には,その部 位に相当する蝸牛求心性神経線維とラセン神経 節細胞の変性消失が続発することが知られてお り,このような神経系の障害を二次性神経変性 (secondary neural degeneration)と呼び1), 次の②の病型の神経障害と区別される。 ②蝸牛神経障害型老人性難聴:この二型も①の 蝸牛感覚細胞障害型と同様,かなり古くから知 られていた病理組織学的所見であるが10)」1>, 聴器病態としては,ラセン神経節細胞とその軸 索突起(axon)ならびに樹状突起(dendrite) の高度の変性消失がその特徴として示される。 この病型が純粋な形で認められる場合は,蝸牛 の感覚細胞や血管条などの形態は正常に保たれ る。この病型に属する老人性難聴の機能障害の 特徴的所見として,蝸牛神経系の変性消失が軽 度または中等度の場合はほとんど難聴を自覚す ることはないが,70∼80%以上に達する時期, つまりかなり高年齢層になってから著明な語音 聴力(語音明瞭度,discrimination score, Dis− crimと表示)として現れ始め,それに比較し て純音に対する聴覚域値への影響は少なく,か なり良好のまま保たれるという現象が認められ ている(Fig.2参照)。このような純音聴力で 比較的安定し良好な域値が保たれていながら, 語音聴力の進行性悪化が認められる場合を “phonetic regressiOn”と呼んでおり,純音のよ うなごく単純な音信号はきわめて少ない蝸牛神 経系によっても識別できるが,語音のような複 雑な音シグナルの伝導解読には不十分なために 語音聴力の障害となって現れると考えられてい る1)。したがってこの種の病型の老人性難聴で は,音圧を増強させても語音聴取能に改善は期 待できず,補聴器の装用の効果はきわめて限定 されることになる。  一方このような蝸牛神経系の変性消失と,語 音聴力に及ぼす影響との関連性については, Otte12)によれば,蝸牛基底回転末端に限局す る変性消失ではたとえ高度の病変であっても, 語音聴力への影響はほとんど認められないが, 頂回転に及ぶ広い範囲における高度の病変で は,語音明瞭度の悪化に大きな影響を及ぼすこ とが知られており,このことは蝸牛の頂回転や 中回転における蝸牛第1次求心神経系の状態

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88 村 上 嘉 彦 波数音域にみられる平坦な聴覚即値の悪化とし て現れ,しかも純音聴力の悪化に比較してきわ めて良好な語音聴力が保たれていることであ り,通常純音三値が50dBを超えない限りは, ほぼ正常範囲の語音明瞭度(Discrimと表示) を示すことが一般的である(Fig.3参照)。  したがってこの病型では,②の蝸牛神経障害 型とは逆に,音圧の増幅効果を補聴器などの装 用によって期待することが可能であり,この種 の老人性難聴ではリハビリテーションがもっと も有効な適応症例とみなされている。  また病理組織学的所見で,血管条の変性萎縮 は蝸牛の基底回転よりも中,頂回転に出現しや すい傾向があって,感覚細胞障害型や神経障害 型とは異なった変性パターンを呈するのが典型 的と考えられている!)’13)。 ④蝸牛伝音障害型老人性難聴:蝸牛管における 感覚器官やそれに附随する蝸牛神経系にはほと んど病理組織学的変化を認めないか,あるいは ある程度の病変が存在したにしてもその聴覚機 能の障害には影響を及ぼさない程度の軽子な病 的所見のみに止まる症例において,加齢に基づ くと考えられる感音難聴として,低・中周波数 音域から高周波数音域にかけてゆるやかで直線 的な高音漸傾型の聴力像を呈する症例群が存在 する。この病型では蝸牛感覚細胞障害型と異な り,急峻な高音門下型を示さずになだらかな高 音難聴を呈し,高周波数音域でも感覚細胞障害 型にしばしばみられるオージオメータで測定不 能のような高度の聴覚障害を示さないことが多 い(Fig.4参照)。また語音聴力(語音明瞭度, Discrimと表示)は,会話音域に含まれる周波 数の聴覚丁丁の悪化が少なければ良好であり, 感覚細胞障害型の多くで陽性となる補充現象 (recruitment)も通常陰性であるために,大 多数の症例で音圧増幅効果(補聴器装用)もか なりの程度に期待できる。  このような加齢に基づくとみなされる高音漸 傾型感音難聴は,通常の病理組織学的検索から これを説明することはほとんど不可能である が,必ずしも稀な存在ではなく,筆者ら9>の検 ◎鴎2◎3◎4◎5◎6◎沁8◎9◎㎜ 125 250   5◎◎    IK     2K     4K     8K     l6K      Frequency in Hz          ×   

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QΩ ナ¢甲 [Φ﹀ω﹂曾℃而Φエ Oisc¥・i鑓1: 90考 はこなこピしもお   ヒ  さ 。ゆ2。3。葡珊拝領8。9。に。  ユル       O聖STA門Cε  1艦  M鰯. Fig.4. Coch}ear conductlve presbycusls(Age 61, male). Desccnding pure tone thresho1(玉s with good speech d量cr三min飢ion scores, an(玉 alm・st n・rmal hist・1・gical structures in the cochlear duct as well as cochlear neurons. 討でも少くとも老人性難聴の10%以上はこの範 疇に属するものとみなされている。このような 感音系難聴の発症に関する説明として,蝸牛管 においては生理的に音刺激により振動する基底 板(basilar membrane)を中心とする蝸牛内壁 音機構が,基底回転方向ほど厚く幅も狭い上に 剛性(stiffness)を増すことはよく知られてお り,これらの構造が加齢によってその物理的な 運動力学(motion mechanics)的性質が変化し てこれが基底回転末端ほど顕著な影響を受けや すい結果,このような高音漸傾型難聴を呈する ものと理解すれば論理的説明として説得力をも つと考えられるD’9)。  事実,このような老化による蝸牛管の運動力

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学的障害に基因するとみなされる感音難聴の存 在については,聴覚機能の面からの研究ではか なり古くから提唱されてきており(Gbrigと Davis3), H:inchcliffe7),その他),ごく最近の 報告(Hinchcliffe14),1991)においても,昨今 の機能的診断技術の進歩発展によって,病理形 態学的には証明が困難な前述の推論(老化によ る蝸牛管の運動力学的障害)を機能的に証明で きるのではないかと述べている。  本病型の高音漸傾型峰町難聴を呈する聴器に おいて認められる唯一の病理組織学的所見とし て,基底板に連なる組織構造であるラセン靱帯 (spiral ligament)の変性萎縮が高頻度に認め られるとする報告(Wright and Schuknecht15>) がある。蝸牛の基底板とともにこの部位の退行 性病変は,蝸牛管の物理的性質の変化に直結す る部分と考えられるので,このような部位・構 造の質量(mass),剛性(stiffuess)などが加 齢によってどのように変動するかを今後明らか にする必要があると思われる。 oめ鱒3◎⑳5◎6コ口8◎9◎ 絶ゆ 12525◎  5◎O    IK     2K    4K    81く    16K       Frequer℃y ln Hz       ◎ 曽 ξ        0蒸scrlm: 88実;        。 $ ね−−2030−葡5◎6◎ 的9◎ は ゆ  ゆ   薯◎◎  以上,蝸牛の感覚器官ならびに蝸牛神経系に おける加齢に基づく病的変化については,4型 の病型分類と,それぞれの墨型において特徴的 な聴覚機能障害(難聴)の表現パターンが明ら かにされてきているが,これらの尊閣型が純粋 な単独の形で出現することもあれば複合したも のとして現れることもある。したがって例えば 前述の①蝸牛感覚細胞障害型と,③血管条変性 型の解悟が混在して認められるような個体で は,③の特徴であるほぼ全周波数にわたる骨導 域値の低下に,高周波数音域のみの急墜型難聴 が加わるような聴力像を呈することになる (Fig.5参照)。このように各病型は程度の差 は一定ではないものの,複合的に現れることも しばしばであって,この場合にはそれぞれの病 型の特徴的機能障害が相加的に累積した型式で 表現されるものとみなされている1)9)。  一方,これら聴器における老化による難聴と いう機能障害に結びつく各種病態のほかに,蝸 牛神経障害型難聴の項でも指摘したように,感 3猟1A

Fig・5・ 25  ゐ  1』  1も    O書Sマ《鰍3ε  書麗  M翻し ム  ゐ  8嶋ε Combined sensory and strial presbycusls (Age 83, male)・ Abrupt high−frequency hearing loss量n associatlon with a 40−50dB pure tone 出reshold loss for lower frequencles・Hls− tological studies show severe atrophy of the・rgan・f C・rti(1・ss・f hair cells)and secondary neural degeneration at the bas− al en(玉of the cochlea, a貧d there is a韮so patchy atrophy of the stria vascularis in the apical half of the cochlea・ 音機構は脳幹部の蝸牛神経核から聴皮質に至る 中枢性聴覚伝導路を広く含んでおり,これらの 分野にも加齢による退行性病変が当然出現す る。しかしながら臨床的にこれらの中枢性聴覚 障害に関しては,複雑な神経線維の交又や吻合 などの要素もあって,定量的で再現性のある機 能的検査法が十分に確立されているとはいえな い現状でもあるので,今後の中枢性聴覚伝導路 障害の解析と検討が必要と考えられる。

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Yeshihiko Murakami, M.D.

DePartment of Otolaryngology, Yamanashi Medical Collage

The term "Presbycusis" refers to the hearing loss cattsed by the degenerative chaRges with aging. The time of onset and rate of progression vary widely. The heariRg loss is seRsorineural in Rature, usually symmetrical in the two ears and s}owly progressive. Since the cel}s of the anditory system belong to the "ffxed postmitotic" group of the body and their durability is mainly determined by genetic factors, there appear to be no therapeu-tic measures that alter the course of presbycusis.

Four distinct histopathologica} types of presbycusis have been shown to occur a}one or in combination: sen-sory, neural, stria} and cochlear conductive. The sensory type of presbycusis is characterized by degeneration of

the organ of Corti beginning at the basal end of the cochlea and progressiRg toward the apex, and is

man-ifested by an abrupt high tone hearing loss. The neural type is due to degeneration of cochlear neuroRs most severe in the basal turn but involving also the middle turn and eventually the apical region, and is expyessed fuRctionaliy by a loss ofspeech discrimiRation out of proportion to the }oss for pure tone thresholds. The strial type is caused by degeneration of the stria vascularis, resulting in a flat audiome£ric pattern aRd excel}ent speech discrimination. The cochlear condLictive type is presumed to be caused by stif}fbning of the basilar

mem-brane which interferes with the motion mechanics of the cochlear partition and produces a descending

au-diometric pattern.

参照

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