長野大学 紀要 第15巻 第1号 94-110頁 1993
財務会計 と税務会計の連接 に関す る考察
Tax Accounting: Its Role in Financial Accounting
は じめ に 企業会計 と税務会計は、その 目的や理念におい て必ず しも一致す るものではないが、今 日の財務 会計の生成は両者が密接に関連 し、互いに影響 を 与え合 って成熟 して きているもの と考 えられる。 本稿では、企業会計原則に示 され る財務会計の 指導的原理 と、法人税の計算構造に示 される税務 会計の基本理念 との両者の接点にスポッ トをあて、 会計処理の実践の場 における両者の依存関係 を明 らかに してみたい。 「会計」の模式概念 可 -_:二二 If 商法会計 (商法) 企業会計 (企業会計原則) 人税法)
§
1.財 務会 計 と税務 会 計の計算構 造 1.財務会計 と法人課税の関係 財務会計は、株主 ・債権者の保護 とその利害調 整の もと、配当可能利益の測定 を目的 とす る商法 会計 と、投資者保護 と適正 な期間損益計算の計測 を主なテーマ とす る証券取引法会計 との調整的集 大成であ り、企業会計におけ る対外的報告会計 と して、制度的に確立、成熟 しつつある会計秩序 で あると考 える。 これに対 し税務会計は、それ 自体 として独立的、 自己完結的な会計組織体 をもつ ものではな く、例 えば税務会計独 自の会計帳簿、あるいは独 自の税 務財務諸表などの作成原理 は存在 しない。 しか し税務会計には、公平 に して適正 な租税負 担の配分 を内容 とす る課税公平の租税理念が根底 にあ り、そのためには会計の悪意性の排除、計算中
島
弘
人
Hiroto Nakajima
の客観性の指向が要求 され、また、租税当局 と納 税者 との利害調整、産業 ・社会政策に対す る配慮 や行政執行上の便宜性の考慮な ど、 もろもろの要 請 を税務会計は充足す るものでな くてはな らない。 財務会計又はその果実である財務諸表は、記録 と慣習 と判断の総合的表現であるといわれ る。財 務会計が制度的な法規範、公正 なる会計慣行によ って成熟 しつつある会計組織体 であるとはいえ、 租税理念の立場か らすれば、企業会計における会 計慣習 と会計判断 をその まま無批判的に容認 しえ ない要素が 多分に存在す る。 か くて税務会計 とは、一般に公正妥当 と認め ら れた企業会計の原理 を尊重 しなが らも、財務会計 の原則に準拠 して計算 された企業利益 をそのまま 課税所得 とす るのではな く、租税理念を充足す る ための実行手段 である税法か らの諸規制によって、 この企業利益 に修正 を加 え、誘導的に課税所得 を 計測す ることを主 な内容 とす る会計機構であると い うことができる。 2.法人税法22桑にみ る税務会計の骨格 財務会計に対す る税務会計の依存 と調整の具休 的な関連 は、法人税の課税標準である各事業年度 の課税所得の計算に関す る法人税法22条の規定に おいて要約的に表現 されている もの と考 える。 法人税法22条の骨子は、 ① 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当 該事業年度の益金の紙か ら当該事業年度の損 金の額 を控除 した金額 とす る。 ② 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算 上 、当該事業年度の益金の額 に算入すべ き金 額は、別段 の定めがあるもの を除 き、資産 の 販売 、役務の提供 、その他の取引で、資本等 取 引以外の ものに係 る当該事業年度の収益の 額 とす る。(以下、本稿における下線は筆者)中島弘人 財務会計と税務会計の連接に関する考察 ③ 内国法人の各事菓年度の所得 の金額の計算 上 、当該事業年度の損金の額に算入すべ き金 名引ま、別段 の定めがあ る もの を除 き、次に掲 げる金筋 とす る。 7. 当該事業年度の収益 に係 る売上 原価 、完 成工事 原価 、その他 これ らに準ず る床価 の 額 ィ.当該事 業年度の販売費、一般管理 費、そ の他の費用 (償却 費以外の費用 で、当該事 業年度終 了の 日までに債務 の確定 しない も の を除 く)の額 ク. 当該事業年度の損失の額 で、資本等取 引 以外の取 引に係 る もの ④ (卦に規定す る当該事業年度の収益 の訴及び ③ 各号に掲 げる金額 は、一般 に公正 妥当 と認 め られ る会計処理の基準 に従 って計算 され る もの とす る。 この規定 中に明示 されている税務会計におけ る 基本的構造部分 を列挙 して コメン トしてお く。 ㊦ 商法その他の法令 の規定 に基づ いて法人が 定め た営業年度 を、その まま、税法上の課税 所得 の計算期 間 と一致せ しめている。 ④ 一般 に公正妥当な会計処理基準 を尊重す る 趣 旨の規定 をお き、財務会計に よる損益計算 に税法上の法的規範 を与 えている。 (近)1税法 と企業会計 との調整意見書 (以下調整 意見書 という)(昭.41): 「納税者の各事業年度 の課税所得は納税者が継続的に健全な会計慣行 によって企業利益 を算出している場合には、当 該企業利益に基づいて計算するものとする (後 略)旨の規定を設けることが適当である。」 ⑳ 益金、損金は税法独得の用語 であるが、内 容的には、売上等の収益 の額か ら、これ らに 対応す る売上 尉 面、販売費 ・管理 費等の費用 の額 を控 除 して、課税標準 となる所得の額 を 計算す るのであ り、財務会計におけ る企業利 益 の計算 と基本的には同一 システムに乗 るも のである。一般 に公正妥 当な会計処理 の基準 を尊重す る立て前か らすれば、あえてこの種 の規定 を設け るまで もない とも思 えるが、例 示 的、確認的な意味において(卦各号 の項 目が 掲 げ られてい るもの と解 したい。
9
5-95 ㊤ 課税所得の概 念 としては、かつては純財産 の増加 を包括的に捉 える純財産 増加説が有力 であった といわれ る。 しか し、前掲条文に表われた課税標準の計 算体系は、 益金 (収益 )-損金(費用 )-利益 とい う損益 法的思考に よる ものであ り、 期末財産 一期首財産 -利益 とい う財産法的体系 を示 していない。 近代会計理念が適正 な期 間損益計算 の実現 を主要 な命題 とす る損益法的思考 に重 点 を移 して きている実情において、税務会計におけ る所得概念 も、純財産増加分 とい う捉 え方か ら、近代的な損益法に基づ いて計算 され る所 得概念へ と変化 して きているこ とが うかがわ れ るのである。 ㊥ 条文 中の 「別段 の定め」 は、財務会計 と税 務会計 との関係 において、決定 的に重要 な意 味 をもつ。 適正 な財務会計の基準 に従 って計算 された 企業利益 を前提 とし、租税 目的の見地か らす る税法独 自の理 念か ら、これに所定 の計算的 規制 を加 え、課税所得 を誘導、算出す る とい う計算方式につ いては前述 した ところである が 、この 「別段 の定め」はこの税法独 自の計 算 的規制の具体的内容 をなす もの と考 えられ、 端 的にいえば 「別段 の定め」 は税務 会計の主 要 な実践的計算要素 をなす もの と考 えること が できる。 「別段 の定め」につ いて項 目的に詳述す るの は、本稿の 目的 とす るところではないので、次 にその内答 を類型的に分類す るに止めてお く。 a.財務会計では明示 されていないが 、税法理 念か ら企業の任意に委ね るこ とが適 当でない もの (例 えば減価償却 、諸 引当金等 の限度計 算 、寄付金、交際費等 の規制 )b.
財務会計 では特に問題 とされない事 項であ って も、租税 目的の見地か ら規制が 必要 とさ れ るもの (例 えば租税 回避行為 に対す る否認 措置等 )C.
財務会計では認め られ る原則であ って も、 租税理 念 と相容れない ものにつ いて は これ を 排 除す る規制 (例 えば保守主義 的経理処理の9
6
長野大学紀要 第15巻 第1号 1993 抑制等) d.産業 、経済政策的な立場 に基づ いて、租税 政策上 、特に配慮 を必要 とす るもの (例 えば 租税特別措置法に定 め られ る特例等 )§2.
企 業 会 計 原 則 と税 法 理 念 の 接 点 1.企 業会計原則 と財務会計 企業会計原則は 「企業会計の実務 の中に、慣 習 として発達 した もののなかか ら、一般 に公正妥 当 と認め られた ところを要約 した もの」(前文 )であ るが 、商法32条2項において 「商業帳簿 ノ作成二 間スル規定 ノ解釈二付 テ-公正ナル会計慣行 ヲ掛 酌 スベ ン」 とす る規定が設け られている とお り、 企業会計原則は財務会計の指導的原理 を構成す る もの と考 えられ る。 ところで、税務会計におけ る課税所得の計算 も 公正妥 当な会計処理の基準に従 って算 出された企 業利益 を基本 とす るものであるこ とは前述 した と お りであるが、その企業会計の諸原則の中には、 租税理念に立脚 した税務会計の中にその まま共通 的に準拠 しうる原理 、税務会計においてはむ しろ 強調 されねばな らない原理 、両者には開差があっ て調整的に補正が加 え られなければな らない原理 等が混在 している。 以下 、企業会計原則におけ る指導的原則 をピッ クア ッ7oL、これ と税務会計理 念 とのかかわ り、 それ らに まつわる諸々の会計処理 の実践の態様等 につ いて整理 してみたい。 2.企業会計原則 と税務会計 第- 1般原則 - 、真実性 の原則 企業会計は企業の財政状態及び経営成績 に関 して、真実な報告を提供するものでな ければならない。 これは財務会計 を貫 く基本思想 である。 ここに い う真実性 の意味は、会計諸規範 、公正 な会計慣 行 の範囲内で許容 され る、いわゆ る相対 的真実性 を意味す る もの とされているが 、税務会計が企業 会計 を基本的に尊重す る立場 を とり、 しか も租税 理 念 を全 うすべ きものである以上 、真実性 の原則 は よ り重要 な意味において税務会 計の中枢的原理 をなす もの といえる。 す なわち、税務会計において最 も排斥 され る会 計行為 は、粉飾決算 、利益 の過少表示 な ど、会計 事実 の仮装 隠ペ いに よる租税 回避行為や 、期 間損 益 を歪め る利益操作的な会計処理 であ り、これ ら の会計行為が著 しく真実性 を担 うものであるこ と は明 らか である。 この意味か らすれば、税務会計 上 の真実性 の原則は、単 な る会計事実の真実性 、 利益計算の真実性 を超 えた もの として、独 自の意 味 をもつ原則 とな る。 以下 、真実性 の原則に関連 し、税務会計 の基本 的理 念 を構成す る諸原理 について列挙 、論述 して み たい。(
1
)
実質課税の原則 税務会計 におけ る実践的運用 において、特筆、 強調 されねばな らない基本原理 であ る。租税公平 の理 念等か ら、経済行為 の外見的表装 に とらわれ ず 、その奥 にひそむ経済的実態に着 目して、真実 の所得者が誰であるか、取 引の経済的実体が何 で あ るか を探 り出 し、課税の ター ゲ ッ トを見極め よ うとす る税法独 自の基本的態度 を示す。 (近)2 法人税法11条:「資産又は事業か ら生ずる 収益の法律上帰属するとみ られる者が単なる名義 人であって、その収益 を享受せず、その者以外の 法人がその収益 を享受する場合には、その収益は これを享受する法人に帰属するもの として、この 法律の規定を通用する。」 また、その経済行為 自体 はいわゆ る契約 自由の 原則に よ り、法形式において違 反す るものでない として も、その経済的実体が表見的事実 と異なる 場合 (た とえば低廉譲渡の経済行為 に贈与の実質 が含 まれているのではないか な ど)、税法はその実 質 をさび し く追求す る。 (2) 同族会社の行為計算否認の原則 同族会社 とその役員又は関係会社 間においては、 通常 の取 引にはあ りえない不合理 、不 自然な経済 行為が しば しば行 われ るが 、それが た とえ事実に 反 した ものではな く、法律的に も成 り立つ もので あろ うとも、「これ を容 認 した場合 には、法 人税中島弘人 財務会計と税務会計の連接に関する考察 の負担 を不 当に減少 させ るような結果にな ると認 め られ るものが あ る ときは」公正 な租税政策運営 上 、これ を認めない とす る 「同族会社 の行為 又は 計算 の否認」 (法 人税法132条 )の原則がある。 二 、正規 の簿記の原則 企業会計はすべての取引につき、正規の 道記の原則に従って、正確な会計帳簿を作 成 しなければならない。 真実性 の原則 を技術的に補完す る原則であ り、 財務 会計構築上 の基礎構造部 門 をなす。 商法32条1項 には会計帳簿 と貸借対照表の作成 義務 が うたわれ 、同33条
2
項 には貸借対照表が会 計帳 簿に基づ いて作成 されなければな らない旨規 定 されているように、商法会計 において も正規 の 簿記の計算 技術 に基づ く、誘導法による損益計算 体系が明 らか にされている。 正規の簿記 とは複式簿記が予定 されてお り、税 務会計において も基本的に同様 である。 (1)重要性 の原則 と税務会計 との調整 企業会計原則において、正規 の簿記の原則、明 瞭性 の原則、財務諸表の表示等に関連 して、重要 性 の原則 〔注解1
〕が掲 げ られている。 企業会計の実践において、いたず らに精密であ るこ とは、費用 と効果 を評量 した場合 、実際的で ない場合が 多い。企業会計の 目的は企業の財務 内 容 を明 らか に し、利害関係者の判断 を誤 らせ ない ようにす るこ とにある。従 って、重要性 の乏 しい もの については、本来の厳密 な会計処理 に よらな いで、簡便 な方法に よるこ とも正規の簿記の原則 に反す るものではない として、〔注解 1〕では数個 の事例が挙 げ られている。 税務会計 において も、この ような実務上の要請 か ら、課税上弊害がない次の ような項 目について は簡便 な処理が認め られ、企業会計 におけ る重要 性 の原則 と妥協 的調和がはか られている。 ① 前払費用の資産計上 の弾力化 (支払時損 金計上 ) ② 少額減価償却 資産 、少額繰延資産の支払 時損金計上 ③ 事務用消耗 品、少筋副産物 、作業層等の 資産 計上 の弾力化 97 ④ 原価差額調整の弾力化 ⑤ 棚卸資産 の取得 に関す る少額付随 費用の 損金計上 三 、資本取 引 ・損益取 引区別の原則 資本取引と損益取引を明瞭に区別 し、今寺 に資本剰余金 と利益剰余金 とを混同 しては ならない。 抹主等か らの資本提供 と、営業活動か ら生 じた 利益 とを区別す ることに よ り、適正 な期 間損益の 算定 を求め る企業会計 の基本思想である。 税法 において も、資本に対 して課税す ることは 所得課税の本質か らみて妥 当でない との見地か ら、 前掲法人税法22条の規定 でみた とお り、各事業年 度 の所得の金額の計算上 、資本等取 引に係 るもの は除外 されている。 しか し、貸借対照表の資本の部の表示様式の相 違 に端 的にあ らわれているように、商法会計 、企 業会計、税務会計の間では、資本取 引の概 念につ いて若干の相違があ り、私 見に よれば、会計理論 上 、三者の調整の最 も遅 れている部分 と思 われ る。(
1
)
資本等取 引の概要 税法上の資本等取 引 とは資本金 と資本積立金の 増加 又は減少 を生ず る取 引 とされ るが 、資本積立 金 とは株式払込剰余金 、減資差益 、再評価積立金 の資本組入額 、合併差益等 、商法上 の資本準備金 、 企業会計原則上の資本剰余金 と内容的にほぼ照応 す る部分が 多い。 しか し、企業会計原則におけ る資本取 引は、株 主等か らの資本提供以外の もの を資本剰余金 とし て認め ない商法又は税法におけ る資本取 引概念 よ りもかな り範囲が広いOす なわち、企業会計政則 では、資本的支 出に充て られた国庫補助 金、建設 助成金 、工事負担金、資本補填 を目的 とす る贈与 剰余金 、債務 免除益 、保険差益等、資本助成的な 資産 の受贈益 は、本来的には企業の利益 を構成す るものではない として、その他の資本剰 余金 とし て位 置づ けている。いわば資本補填の役 割 を果 た す ものは資本取 引であ り、これ らを配 当可能利益 として社外流出せ しめ るのが妥 当であ るか どうか の点 で、資本取 引か損益取 引か を律す るのが、企 業会 計政則の基本的理 念 と考 え られ る。98 長野大学紀要 第15巻第1号 1993 (注)3. 調整意見書 (昭.27):「保険差益は財産 損失の補項である限 り、会計理論上において も租 税理論上においても、真の意味における所得 を構 成す るものでないことは明らかである。 (中略) とくに著 しい貨幣価値変動の発生 した時期におい ては、固定資産の帳簿価餌 と保険金 との間に相当 の差額 を生ずるのは当然である。この差額は、元 の固定資産の再建設のために再投資される限 り、 単に損失 を補充 したに とどまり、何人も利得す る ものではない。この種の保険差益は (中略)会計 美里論上、資本剰余金であることについては疑問の 余地はない。」 一 方 、税法 では資本概 念 を対資本主 との関係 に 限定 して とらえ、企業主資本 としての法律上 の手 続 きを踏 まない、その他の者か らの贈与 的 な金銭 等の受 入れにつ いては、会計理論上 は ともか く、 資本概念の外にあるもの として、課税益金 として把 握す るの を原則的な態度 とす る。た とえば無償 によ る資産の譲受けや低額譲受けにおける実質的受贈部 分の益金算入の規定が法人税法にも明定 されている。 また、商 法では 、これ らの資本提供 を配 当可能 利益 の源泉 と考 えて、資本 に計上す るこ とを認め ていない。資本の浸蝕 を極 力防止 しよ うとす る保 守的性格 の強 い商法理 念 を考 えれば 、 この資本概 念に関す る企業会 計原則 との重雄 はか な り奇 異に 感ぜ られ るO (注)4. 調整意見書 (昭.41):「(前略)税法にお いては株主のみが資本の提供者であるとす る考え 方 を堅持 して 「その他の資本剰余金」 を資本積立 金 とは認めていない。 このことについては、企業会計原則 と税法の思 考の根底が基本的に異なっているのであって、税 法に村 しては今後さらに、企業会計原則の考 え方 を検討す ることを希望する (後略)o」 (2) 資本概 念 と会計処理 の調整 上述の よ うに税法 においては、受贈 的要 素 の強 い資本提供 につ いて、課税益 金 を構 成す る もの と す る原則 を堅持 しなが らも、その利益 の性 質 、利 益供与者 の 目的等 を勘案 し、主 として政 策 的見地 か ら数 多の調 整的処理方法が設け られてい る。 い わゆ る圧縮 記帳 に よる課税繰延 の措置が その代表 的 な もの であ る。 つ ま り、国庫補助 金 、建 設助成金等 に対 して課 税す る とす れ ば、その交付 目的が損 われ 、災害 に 対す る保 険金 に課税す る とすれば 、失 われ た資産 の再取得が 困難 にな る。圧縮記帳 は受 贈 的資本に よって取得 した資産 の実際の取得価額か ら、 これ ら資本相 当額 を減額 (圧縮 ) し、減額分 を損金算 入す るこ とに よ り受贈益相 当額 と相殺 して 、即 時 課税 とな る益 金 をひ とまず消去す る。以後 、圧縮 された取得価 額 を基 として計算 され る減価償却 費 を通 じて 、な し崩 しに課税 を実現 してい くとい う 課税 の繰延べ が行 われ るこ とにな る。 圧縮 記帳 に関 し、調 整意見書 (昭
.
2
7)では、「会 計処理 の見地か らいえば、かか る圧 縮記帳 は資産 をその現実 の取得価額 を以て記帳せ しめず 、交付 された国庫補助 金 を財務諸表 に記載す るこ とを阻 止す る もの であ るか ら、公正 表示 の原則に反す る 好 ま し くない会計処理方法 であ る といわねば な ら ない。かか る会計処理方法の強制 は税法が企業の 会計方法 その もの を支配す るこ とに他 な らない」 として批判 して いた。 しか し、企業会計 原則 も数 次の改訂 を経 て、現 行 ではその 〔注解24〕において、「国庫補助金、工 事 負担金等 で取得 した資産 につ いては、国庫補助 金等に相 当す る金額 をその取得原価か ら控 除す る こ とが で きる」 として 、税法 におけ る圧 縮 記帳 の 処理 に よ り、資産 の貸借対照表価 額 の表示 を認め るに至 って い る。 一方 、圧 縮 記帳方式が財務諸表 の公正 表示 を歪 め る とす る意 見に対 しては、税法 で も損金経理方 式 に代 えて、利益処分方式に よって損金算 入が可 能 とな る措 置 も講ぜ られてい る。 四、明瞭性 の原則 企業会計は財務諸表によって、利害関係 者に対 し必要な会計事実を明瞭に表示 し、 企業の状況に関する判断 を誤 らせないよう に しなければならない。 課税所得計算 の基礎 とな る企業 の財務 諸表 に関 しては 、利害 関係者 の一員た る国家 、地方公共 団 体等課税 当局 において も、最 も関心 の深 い ところ であ り、その明瞭性 につ いて強い要請が あ る。 企業会 計 原則 〔注解1-2〕において、重要 な 会計方針 の開示 に関す る提 言が な されてお り、た中島弘人 財務会計と税務会計の連接に関する考察 とえば、たな卸 資産や 有価証券 の評価方法 、減価 償却 の方法 、引 当金 の計上基準 な ど、重要 な会計 事 項 は財務諸 表 に注記す るこ とが求め られ てい る が 、 これ らは税務 会計上 の処理 と最 も深 く係 りを 持つ ものであ る。 五 、継続性 の原則 企業会計はその処理の原則及び手続 きを 毎期継続 して適用 し、みだりにこれを変更 してはならない。 企業会計 におけ る相対 的真実性 を支 える実 践的 要請 である。企業会計 原則 〔注解3〕 にお いて 、 一つ の会計事 実 に二つ以上 の会計処理 の選択が認 め られてい る場 合 、「企業が選 択 した会計処理 の原 則及び手続 を毎期 継続 して適 用 しない ときは、同 一 の会計事実 につ いて異な る利益 額が算 出 され る こ とにな り、財務諸表 の期 間比較 を困難 な らしめ 、 この結果 、企業 の財務 内容 に関す る利害関係者 の 判 断 を誤 らしめ るこ とになる。従 って 、い ったん 抹用 した会計処 理 の原則又は手続 きは、正 当な理 由に よ り変更 を行 う場合 を除 き、財務諸表 を作 成 す る時期 を通 じて継続 して適用 しなければ な らな い」 と提 言 して い る。 税務会計 にお いては、課税の公平性 あ るいは徴 税 技術上 、数 多の会計処理方法 を無制 限に認め る こ とは困難 であ るが 、 しか し、企業 の個別 的事情 をで きるだけ尊重 し、特定 の範囲 で選択 しうる会 計処理基準 を定 め 、その選択 にあた っては継続通 用 を条件 として許容 す る としてい る事 項が極め て 多い。 語意 的計算や 利益操作 の排除、適正 な期 間損益 の計 算 とい う税務会計 の最大の理 念 を実現す るた めの大 きな役割 を担 うのが継続性 の 原則であ り、 この 原則は企業会計 におけ るよ りもむ しろ税務会 計にお いて、数段 、強調 され るべ き大原則 と考 え て よいであ ろ う。 (注 )5. 調整意見書 (昭.41):「(前略)税法の各 種の規制は企業会計をゆがめ、又、企業の実態に 即応しない結果 を生ぜ しめるので、これを大幅に 緩和す ることとし、可能な限 り、課税所得の計算 を継続性 を重視 した企業の 自主的判断に基づ く適 正 な会計処理にゆだねることとすることが適当で ある。(中略)税法が企業利益 を基礎 とす るために 99 は、企業が 自ら適正な会計方法によって会計処理 を行 うことは もちろん、会計方法の継続的適用 を 特に厳守 し、適正な企業利益の算出に努力 しなけ ればならない。」 また、企業会計原則では、正 当な理 由に よって 会計処理 の方法 に重要 な変更 を加 えた ときは 、こ れ を財務 諸表 に注記す るこ とを指示 してお り、正 当な理 由 とは、経済状 況の変化 、法令 の改廃 、企 業 目的 の変更 、 よ り合理 的 な方法の発見 な どが挙 げ られ てい る。 税務 会計 では、会計処理基準 の変更 を許容す る 条件 として 、 さ らに税務 署長 の許可 を要 す るな ど、 正 当理 由の濫用 を規制す る措 置が講ぜ られて いる。 六 、保守主義 の原則 企業の財政 に不利な影響を及ぼす可能性 がある場合には、これに備 えて適 当に健全 な会計処理 をしなければならない。 見込 の収益 を計上 してはな らないが 、見込 の費 用 は計上 しなければな らない とす る思想 であ り、 収益 又 は費用 の計上 につ いて期 間利益 を内輪 に計 上す るこ とを認め る実務 的な原 則であ る。特 に商 法 にお いては債権者保護 の立場 か ら、低価 主義や 繰延 資産 の限定 な ど、保守主義 的経理 規定 が 多 く 設け られてい る。 しか し、企業会計におけ る保 守主義 は 、他 の諸 原則の ように無 条件 、至上 の もの として認 め るの ではな く、〔注解4〕において 「企業会計 は予 測 さ れ る将 来の危険 に備 えて、憤重 な判 断に基づ く会 計処理 を行 わなければな らないが 、過 度 に保守的 な会計処理 を行 うこ とに よ り、企業 の財 政 状態及 び経営 成績の真実 な報告 をゆがめてはな らない」 として 、真実性 の原則 を損 うこ とを戒め て い る。 いわば見込みの費用 の計上 を許容す る保 守主義 の原則は、費用の認識 において債務確定 基 準 を と る税法 原則 とは、本来的には相容れ ない ものがあ る。 しか し、保守主義 的性格 を有す る多 くの重要 な会計方法が財務会計のなか に定着 して い る とい う事実 があ り、税務会計 において も、税 法理 念に 著 し く背反 しない限 りこれ を容 認 し、財 務 会計 と 調和 的 な会 計措 置が講ぜ られて い る。 以下 に述べ るよ うに、資産評価 におけ る低価基 準の認容 、諸 引当金の計上基準 、割 賦販売 等の 回 -9
9-100 長野大学紀要 第15巻 第1号 1993 収基準の認容等が その事例 として挙げ られ よう。 (1) 資産評価におけ る低価法の問題 商法会計 も企業会計 も税務会計 も、資産評価 に は取得 原価主義が採 用 され、評価益 、評価損 を計 上す ることは原則 と して認め られていない。投下 費用の期間配分に よる損益計算 目的のためには、 取得原価が基本 とな らなければな らないか らであ る。 株主 、債権者の利害 調整 を念頭にお き、資産 の 財産価値に も配意す る商法では、流動 資産 につ い ては回復不能の場合 の低価法の強制 、回復不能 で ない場合の低価法 の選 択適用 、上場株式に もこれ を準用 、取 引所相場 な き株式は財産状態が著 し く 悪化 した ときは相 当の減額、固定資産 につ いては 毎期 「相 当ノ償却」 をなす とともに、予想 しない 減損 を生 じた ときは相 当の減額 をす るこ と、金銭 債権 につ いては取立不 能見込額 を控除す るこ と等 の財産評価 に関す る多 くの規定が定め られている。 企業会計原則 も、た な卸資産の評価 、有価証券 の評価 について、子 会社株式 を除 き、商法におけ る低価法の強制又は選 択通用 と同趣 旨の処理方法 が示 されている。 企業会計原則連続意 見書では、低価主義は販売 実現 の前に評価損が計上 され、対応す る収益が存 在 しないので、期 間損益計算 の見地か らす る と、 合理性 をもたない面 が あるが 、各国において古 く か ら行 われて きた慣行 的評価思考 であ り、現在で も実務 界か ら広 く支持 されている、 と述べ ている。 税務会計においては 、上記の ように定着 した会 計慣行 の一部 を認め 、 回復不能 と認め られ る減損 で、商法において強制 評価減が通用 され る場合 に つ いては、原則 として これ を容認す る。 しか し、 棚卸資産等の評価減 については、災害 で著 しい減 損 を生 じた場合等に限定がな され、又 、上場有価 証券 の評価損が損金計上 を認め られ るためには、 その価額が帳簿価額 の概ね50%を下 回 り、かつ 、 近 い将来その回復が見込 まれない場合等 とい う実 務 的限定がなされてい る。 また、金銭債権の取 立不能 見込が現実化 した貸 倒損失の計上 につ いて も、相手方において破産 、 会社更正法の通用の場 合等、詳細な実務 的処理指 針が設定 され、過度 な保守主義的会計処理の濫用 に歯止めがかけ られてい る。 (2) 諸 引当金の会計基準 将来 、発生が予測 され る費用又は損失 で、当期 間に帰属す ると見込 まれ る金額 については、これ を予め見積 って、各会計期間の費用 として割 りつ け る とい う会計処理が 、財務会計において慣行 と して定着 してい る。 企業会計原則 〔注解18〕 では引当金について、 ①将来の特定の費用又は損失 であって、② その発 生が当期以前の事 象に起 因 し、(卦発生 の可能性 が 高 く、④ その金額 を合理 的に見積 ることがで きる 場合 には、当期 の負担に属す る金額 を当期の費用 又は損失 として引当金に繰入れ るもの とし、製 品 保証 引当金 、売上割戻 引当金、返品調整引当金 、 賞与 引当金 、工事補償 引当金、退職給与 引当金、 修繕 引当金 、特別修繕 引当金、債務保証損失 引当 金 、貸倒 引当金等が これに該 当す る と述べ ている。 いわば この会計基準は保守主義の原則に裏 うち されつつ 、む しろ発生主義会計 に根 ざした近代会 計理 念たる期間損益計算のための費用配分の原則 や 、費用収益対応の原則 を色濃 く顕現 してい る も の と考 え られ る。 一方 、商法会計においては、 「特定 ノ支 出又-損失二備 フル為 ノ引当金-其 ノ営業年度 ノ費用又 -損失 卜為 ス コ トヲ相 当 トスル額二限 り之 ヲ貸借 対照表 ノ負債 ノ部二計上 スル コ トヲ得」 (商法287 条
2
) と規定 し、従来、解釈上不明瞭であった利 益留保性 引当金の計上 はすべ て排除すべ きこ とが 明 らかに されている。 もともと商法理念では、正 確 な期 間損益 の計算 とい うよ りも、債権者保護 の ための保守主義 的思考か ら、債務性のあ る見越費 用は引当金 としてではな く、当然に負債 の部 に計 上す るこ とを要請す る ものであ るか ら、この引当 金規定 では債務性 のない引当金 の計上の条件が明 らか に された もの と考 え られている。 税法においては、損金の額に算入 すべ き費用の 計上基準 は、償却 費 を除いて 「当該事業年度終了 の 日までに債務 の確定 しない もの を除 く」 と明宝 されてお り、引当金の よ うな費用の見越計上 は本 来的には容 認 されない性 質の ものであろ う。 しか しなが ら、発生主義会計 の もとで、損益の 期 間帰属 の問題 を追求す るため には、その計算 に中島弘人 財務会計と税務会計の連掛 こ関する考察 つ いて客観 的な経験値 の裏付 けが あ り、 また、当 期収益 に対 応 し、かつ 、翌期 以降の支 出が確実 で あ るな どの根拠 が認め られ る場合 には、合理 的な 計算基準に よって引当金 の設定 を認め るこ とは、 税務会計 において も適正 な課税所得 の計算上 、む しろ必要 ではないか と考 えるこ とが で きる。 ところで、各種 引当金 の具体 的 な計算基準につ いては、商法規定 に指示 はな く、公正 な る会計慣 行 にゆだね られ るこ とにな るが 、企業会計 におい て も具体 的 な提 言に乏 し く、 もっぱ ら、企業 の 自 主 的計算 に依 存す る姿勢 とな ってい る。 (近 )6. 企業会計上の個別問題に関する意見書第 2で、退職給与引当金の設定に関 しては、退職金 費用の期末配分の基準や、同引当金設定の方法 と して将来支給額予測方式、期末要支給額計上方式、 現価方式等、税法計算 ともやや通ずる、具体的な 計算基準が示されている。 そこで税法 では 「別段 の定め」 として 、上記企 業会計原則で例示 されてい る引当金の うち、退職 給与 引当金等6項 目に限定 して 、企業の悪意的計 算 の排 除 と公平 の原則の理 念の もとで、それ ぞれ の 引当金 につ いて、各企業 、各業種 に共通す る最 大公約数 的 な計算基準 を設定 し、引当金繰 入賃の 損 金計上 限度額 の計算が法定 されてい る。 また、税法上 の 「別段 の定め」 として 、引当金 に頬す る もの に、価格変動 準備金 を始 め とす る各 種 の準備金 の計上 に関す る租税特別措置法の規定 や 、 特別法上 の準備 金の規定が 設け られているが 、 これ らの準備金 は特定支 出 としての蓋然性が 引当 金 の場合 よ りも低 く、利益 留保 的な性格 の強い も の が 多い。商法 においては、利益留保性 引当金 の 計上 は排 除 されてお り、企業会計原則 もその 〔注 解18〕の後段 で、発生 の可能性 の低 い偶発事 象に 係 る費用又 は損失 につ いては引当金 を計上す るこ とはで きない としてい るのであ り、租 税特別 措置 法上 の準備金 をその まま引当金 と同類 に財 務表示 す るこ とは 、会計理論上妥 当でない面が確 か にあ る。 これ らは税務行政上 、特定 の政策 目的 の配慮 が徴税 目的や会計理論 を超越 して設け られ た もの と考 え られ 、会計理論 、租税理論 の何れか らも例 外的 な措 置 と認め られ るものであろ う。 (注)7. 負債性引当金等に係る企業会計原則注解 の修正に関す る解釈指針 (昭
.
5
7)
:「租税特別措 101 置法上の準備金であっても、その実態が修正後の企 業会計原則〔注解18〕に定め られる引当金に該 当す ると認め られるものについては損金処理方式によ り、負債の部に計上することが妥当である. しか しなが ら、その他の準備金については、これ を負 債の部に計上することは適正な会計処理 とは認め られないことになったので、利益処分方式により 資本の部に計上 しなければならないことになる。」 引当金に関す る会計処理 につ いて は、資産 の評 価 項 目であ る貸倒 引当金 、債務性 の ある引当金は もとよ り、税法上 の引当金 、準備 金 につ いて も、 前掲 〔注解18〕に定め る4項 目の条件 を具 備す る ものであれば 、企業会計上 の引当金 として 、負債 の部 に計上 され るこ とにな るが 、然 らざる ものは 利益処 分方式 に よ り資本の部 に計上 し、任意積立 金 として社 内留保処理 すべ きこ とが要請 されてお り、税務会 計上 も概 ね この方 式 を選 択す る道が開 かれて いる。 (3) 損益 発生の認識基準 と保守主義 財務 会計上 の収益 の認識基 準は損益計 算書原則 で後述す る とお り、発生主義 を限定 した実現主義 を基本 原則 とす る ものであ り、商 品に関 してはそ の移転 に関す る対価 の受授 関係が成立 した ときと す る販売基準が定説 とな って いる。 しか し、商 品等の販売 に関 しては 、割 賦販売 、 延 払条件付販売 等、世 上 、特殊 な販売形 態 を とる 場合 も極め て 多い。 これ らの販売形態は代 金支払 が分割 払で、回収期 間が長期 にわた り、貸倒 れの 危険性 も高 いな どの特性 に よ り、代 金 回収 時 を以 て収益 の実現 を認識す る回収 基準又 は支 払期 限到 来主義 が 、健全 な企業会計 の慣行 として定着 して い る。 税務 会計 において も、課税適状等 を考 慮 し、収 益 認識 に関す る引渡基準 の例 外 として、割 賦販売 基準 、延私 条件付販売 として その具 体 的計算指針 が示 され 、この会計慣行 を容 認す る措置 が講ぜ ら れ てい る。 (4)繰延 資産 と保守主義 繰延 資産 につ いて企業会計 原則では 「将 来の期 間 に影 響す る特定 の費用 は、次期以後の期 間に配 分 して処理 す るため 、経過 的 に貸借対 照 表 の資産 -101-102 長野大学紀要 第15巻 第1号 1993 の部 に記 載す るこ とが で きる」 と規定 してい る。 将来の期 間に影響す る特定 の費用 とは、Q)既 に代 価 の支払 いが完 了 し、② 又は支 出義務 が確定 し、 (卦これに対す る役務 の提供 を受 けたに もかかわ ら ず 、④ その効果が将来にわた って発現す る もの と 期待 され る費用 (〔注解15〕)をい う。 さ らに企業 会計原則 で特徴 的 なのは、特定 の臨時 巨額 の損失 につ いて も、繰延 経理す るこ とが容 認 されてい る こ とであ る。 この よ うに繰延 資産 は他 の資産項 目と異な り、 換金能 力 の点か ら考 え られ る財産性 につ いては、 全 くこれ を具 有す る ものでは ない。 しか し、これ らの支 出は 、その効果が次期以降 に及ぶ ものであ るこ とに着 目し、それが企業 の継続的な収益 活動 に有効 な性質の ものであ る限 り、 これ を当期 のみ に属す る費用 とせ ず 、経過 的に資産 の部 に計上 し、 その効果 の及ぶ期 間 を基 に して適正 なイ賞却 を行 っ てゆ くとい う会計処理 が 、繰延 資産 の会計思考 で あ る。 繰延 資産 の会計処理 は、あ る意味 では正 に費用 配分の原 則 を色濃 く映 し出 してい る もの と思 われ るが 、抹主 、債権者保護 を 目的 とし、適正 な配 当 可能 利益 の範鴫 を定め たい商法 の立場 では、これ ら支 出済 の費用 を資産 として計上す るこ とに対 し ては元来 同意 し難 い ものが あ った。 しか し、期 間 損益計算 の会計理 念が渉透す るにつ れて 、商法 に お いて認め られ る繰延経理 の範囲 も順 次広 げ られ、 現行 では創立費等8種類 の繰延 資産 が限定列挙 さ れ、企業会計原則 と同様 、計上 につ いては企業 の 意思 に まかせ る任意規定 の形が とられ 、計上 した 場合 は
3
年 ない し5
年 の短期償却 が強制 され る。 税 法 に お い て は主 に祖 税 目的 の立 場 か ら、繰 延 資産 の範囲がか な り広 く定 め られてい る。す な わ ち、商法等で定め られた8種類 の他 、「法人が支 出す る費用 の うち、支 出の効果が その支 出の 日以 後1
年以上 に及ぶ もの」 として 、公共 的施 設の負 担金 、資産 を賃借す るため の権 利金等 、税法独 自 の数種類 の繰延 経理 が法定 され 、それ ぞれにつ い てその支 出の効 果 の及ぶ期 間の計算方法が定め ら れてい る。 この よ うに税法 では、繰延 資産 に該 当す る費用 であ る限 りは、繰延 経理 を行 うこ とが強制 されて お り、支 出の効 果 の及ぶ期 間 を基 として、規則的 な償却 を行 うこ とに よ り、費用の期 間配分 をなす べ きこ とが要 請 されてい る。 (注)8. 調整意見書 (昭.41):「繰延資産につい ては企業会計原則上、いかなる支出を繰延資産 と して計上すべ きかについては、必ず しも明確な基 準が示 されていないので、これについては、企業 会計原則において明 らかにす る必要があるo (後 略)」 七 、単一 性の原則 株主総会提出のため、信用 目的のため、 租税 目的のため等、種々の 目的のために異 なる形式の財務諸表 を作成する必要がある 場合、それらの内容は信頼 しうる会計記録 に基づいて作成 されたものであって、政策 の考慮のために事実の真実な表示 をゆがめ てはならない。 財務諸表 作成に関す る基本思想 であ って 、形式 の 多元性 はあ る程度許容 して も、実質 は一 元 でな ければな らない とす る、形式 多元 、実 質一 元の原 則 であ る。 税務 会計 にお いて も、課税所得 の計算 の基礎 と な る利益 は 、企業 の財務諸表 に示 された ところに よるのであ るか ら、それが事 実 の真実 な姿 をゆが め る もの であ ってはな らない こ とは 当然 であ る。 (注)9.法人税法74条2項:「確定申告書には、 当該事業年度の貸借対照表、損益計算書その他大 蔵省令で定める書類を添付 しなければならない。」 第二 損.益 計算書原則 一 、発生主義 の原則 損益計算書原則一・A:
すべての費用及 び収益はその支出及び収入に基づいて計上 し、その発生 した期間に正 しく割当てられ るように処理 しなければならない。 ただ し、未実現収益は原則 として当期の 損益計算書に計上 してはならない。 前払費用及び前受収益 はこれを当期の損 益計算書か ら除去 し、未払費用及び未収収 益 は、当期の損益計算書 に計上 しなければ ならない。 発生主義 に対 応す る一つ の会計 思考 は現 金主義中島弘人 財務会計と税務会計の連接に関する考察 であ るが 、期 間損益 の適正計算 を命題 とす る近代 財務会計 にお いては、取得 原価 主義 を基本 として、 減価償却 、貸倒 見積 り、諸 引当金 の設定 、諸経過 勘 定 の処理 な ど、 多 くの見積 り的要素 が不 可避 的 に介 入す るもの であ り、従 って 、現金主義 は近代 企業会計 に妥 当 し得 ないこ とは明 らか であ る。 この よ うに発生主義 は財務会 計 の根底 をなす も のであ るが 、税務 会計 にお いて も、課税標準の計 算が一般 に公正 妥 当 と認め られ る会計処理 の基準 に基づ くもの で あ って 、税法上 の この立場 は個 人 課税 にお いて も基本的に同様 であ る。 (近 )10.所得税法36条 (収入金額) : 「その年分-の各種所得の金額の計算上、収入金額 とすべ き金 紋又は総収入金額に算入すべ き金額は、別段の定 めがあるものを除 き、その年において収入すべ き 金額 とするO 所得税法
3
7
条 (必要経費):「(前略)必要経費 に算入すべ き金額は総収入金額に係 る売上原価、 販売費 ・管理 費等 (中略 )、 (償却 費以外の費用 でその年において債務の確定 しないものを除 く) の旗 とす る. ただ し、税法 には公平理 念や 課税技術上 の問題 が あ るの で、発生主義 の段階 に限定が なされてお り、収益 につ いては販売基準 (実現主義 )、費用 に つ いては債務確定基準が本 則 とされてい る。 また、発生主義 の延長線上 にあ る引当金等の見 積 り計算 につ いては 「別段 の定め」 に よって、限 度額計算 の具体 的規制 が設け られてい る。 前払費用等 の経過勘 定項 目は 、 まさに期 間損益 測定 のための会計処理 であ って 、技術的には正規 の簿記の決算整理事項 に組 み込 まれてい るもの で あ る。 これ らは公正 な る会計処理 として、税務会 計においても原則的に尊重 されているもの と考 える。 ただ し、経過勘 定項 目につ いては、企業会計原 則 〔注解 1〕 で示 されてい るよ うに、重要性 の原 則が適 用 され る場合 が あ り、税務会計 において も 企業会 計 と協調 的調和 が計 られているこ とは前述 した とお りである。 なお、 これ らの経過勘定項 目の うち、未収収益 につ いては、企業会計上 の保守主義 の原則 とか ら んで、税務会計 との間に反発 、調 整の経緯があった。 (注)ll.調整意見書 (昭.
㍗):
「(前略)税法は、 財貨又は役務の給付により対価たる債権の確定 し 103 た未収金勘定 と、役務はすでに行われたが、未だ 対価の確定 しない勘定 (た とえば後払運賃のごと き)たる未収収益勘定 との間に明確な計算上の区 別 を認めないのである。いかなる場合にも収益の 計上 を強制す るのは行 きす ぎであるから、税法に おいて も健全な会計慣行 を容認 し、未収収益に対 す る発生主義適用の例外を認めることが望ましいoJ 損益計算書原則 〔注解 5〕 : 「未収収益は一定 の契約に従い、継続 して役務の提供 を行 う場合、 すでに提供 した役務に対 して、末だその対価の支 払 を受けていないものをいう。従って、このよう な役務に対する対価は時間の経過に伴い、すでに 当期の収益 として発生 しているものであるか ら、 これを当期の損益計算に計上す るとともに、貸借 対照表の資産の部に計上 しなければならない。」 二 、費用収益対応の原則 損益計算書原則 1・C:
費用及び収益は その発生源泉に従 って明確に分類 し、各収 益項 目とそれに関連する費用項 目とを損益 計算書に対応表示 しなければならない 。 企業会計 におけ る適正 な期 間損益 計算 の ため の 前提 をなす原則 と考 える。 法 人税法2
2
条 にお いて、損金の額 に算 入すべ き 金額 につ いて 「当該事業年 度 の収益 に係 る売上 原 価」、「当該事業年 度の販売 費、管理 費」 と規定 し てい る とお り、損金 の各事 業年度へ の帰属 関係 に つ いて 、費用 、収益 の厳密 な対応 関係の組立 てが 要請 されてお り、費用 、収益対応の原則 はむ しろ 税務 会計 において こそ、その重要性 が強調 され る べ き もの と考 え られ る。 三 、実現主義 の原則 (1) 売上高の認識 損益計算書原則三・B:
売上高は実現主 義の原則に従い、商品等の販売又は役務の 給付によって実現 したものに限 る。ただ し、 長期の未完成請負工事等については、合理 的に収益 を見積 り、これを当期の損益計算 に計上することができる。 収益 、費用の認識時点 につ いて 、企業 会 計では -103-104 長野大学紀要 第15巻 第1号 1993 発生主義の基準 を根底にお きなが らも、特 に収益 の認識についてはこれ を限定 して、実現主義の原 則に基本 を求めている。 実現主義 とは収益認識の時点 を販売が実現 した とき(販売基準 )、すなわち、商品の移転 に対す る 対価の成立が立証 された ときとす る ものである。 収益 につ いて発生主義の通用 を考 える場合 、た と えば製造 中の製品等につ いて も価値増殖の事実が 発生 しているのであるが、実現主義 は発生の段階 に販売 とい う限定 を設けている。 この こ とは収益 発生の確実性 、収益 の処分可能性 、計算の客観性 な どをふ まえた、いわば保守主義 のひ とつのあ ら われ と考 えるこ とがで きる。 (注)
1
2
.
調整意見書 (昭.
2
7):「税法上において は権利確定主義 をとっているので、販売基準にお ける 「販売」の意義は法律的に権利の移転する ことをさす もの と解釈されるきらいがある。しか し商取引における販売行為の態様およびその意味 は極めて複雑であるか ら、健全な商慣習上、販売 の履行 として一般に認められている事実について は、税法上においても権利確定主義に拘泥するこ とな く、これを認めることが望 ましい。」 企業会計におけ る実現主義の原則は、会計の実 践の中で極めて 自然に、かつ 、公正妥 当な もの と して受け容れ られて きた慣行 であ り、税務会計に おいて も基本的態度 として、可能 な限 りこれ を尊 重 しようとす る。ただ、公平原則な どの租税理 念 か ら、権利確定主義 、販売基準 といった、かな り 弾力性のある処理基準のフ リー ゾー ンをある程度 限定 し、実務上 の具体的基準 として、収益 の計上 については原則 として、 ものの引渡 しを以てその 認識時点 とす る引渡基準が設定 されてお り、これ は税務会計上の中心的指針 とされている。 この引渡 しにつ いて も、業態、慣行 に よって様 々な態様が あ り、事実認定の問題の惹起す る余地 もあるのであるが 、出荷、発送、検収基準等が l買 行 として定着 しているので、税務会計上 も継続通 用 を条件 として、これ らの何れか を選択す るこ と が認め られてい る。(
2
)
収益 に関す る特殊 な認識基準 (》 割賦販売基準 (損益計算書原則三・B〔注解6〕
)
割斌販売 については長期分割払であることか ら、 代金 回収上の危険率が高いので、収益 の認識 を偵 重 に行 う必要があ り、販売基準に代 えて、割賦金 の回収期 限の到来の 日又は入金の 日を以て、売上 収益実限の 日とす るこ とが認め られてい るこ とは 前述の とお りであ る。 これは引渡基準の例外 をなす ものであ り、利益 の繰延 を認め る結果 となる ものであるが 、税法に おいて も課税通状等 を考慮 して、この会計慣行 を 容認 し、損益計上 について割 耽基準の計算規定 を 定めてい る。 また、税法では、割賦販売 に類似す る特殊 な譲 渡形態 として、延払条件付販売 につ いて も、その 計算の特例が定め られている。 (注)13.調整意見書 (昭.27):「税法上の割賦基 準は(中略)、割賦金の支払期限の到来の ときを以 て、入金の有無にかかわらず、その実現のときと みなす としているが、これは発生主義の通用に弾 力性 を認めないもので、健全な会計慣行の発展を 阻害するおそれがあるo」 調整意見書 (昭.41):「割賦販売収益について は企業会計原則上、入金主義(いわゆる回収基準) のみが認められているが、税務上認められている 支払期限到来主義 をも認めることが妥当であると 考えられる。」 ② 工事進行基準 (損益計算書原則三・B〔注解 7〕) 長期の請負工事 に関す る収益 の計上 につ いては、 決算期未 に工事の進行程度 を見積 り、適正 な工事 収益率 に よって、工事収益 の一部 を当期 の損益計 算に計上す る工事進行基準 を選択す るこ とが 、企 業会計上 、公正 な会計慣行 として認め られている。 大規模工事等、建設期間が2以上 の会計期 間に わたる場合 、完成引渡時点で収益 を一括計上す る のは、各期 間の業績 を正 当に反映す る とはいえな い面があ る。 そこで長期工事 につ いては、期 間損 益計算の比較性 、請負価額の確走性 、進行 に応ず る代金収 入に よる利益処分可能性 な どの要 因が考 慮 され、実現主義 又は引渡基準の例 外ではあるが、 合理 的に各期 間の発生損益 を見積 って、工事損益 を計上す る とい うのが 、工事進行基準の企業会計 上の定着理由である。中島弘人 財務会計と税務会計の連接に関する考察 税務会 計 にお いて も、徴税理 念上 、 これ を排 斥 す るいわれ はな く、 この見積 り収益 の計算方 法 と して 、企業会 計 で提 言 されてい る期 間比率 に よる 方法 、原材料比率 に よる方法 、原価比率 に よる方 法等 の うち、税 法 では原価 発生割合 に よって 、工 事損益 を計算す る方法が規定 されてい る。 第三 貸借対 照表原 則 - 、減価償却 と資産 の貸借対 照表価額 (1) 正 規 の減価償却 と税法基準 貸借対照表原則五 :貸借対照表に記載す る資産の価額は、原則 として当該資産の取 得原価 を基礎 として計上 しなければならな い。 資産の取得原価は、資産の種頬に応 L'た 費用配分の原則によって、各事業年度に配 分 しなければならない。有形固定資産は当 該資産の耐用期間にわたり、定額法、定率 法等の一定の減価償却の方法によって、そ の取得原価 を各事業年度に配分 しなければ ならない。(後略) 減価償却 につ いては 、商法34条2項 において毎 期 、規 則的 な 「相 当 ノ償却」 をなすべ きこ とが要 請 されてい る。 また、企 業会計原則 と関係諸 法令 との調整 に関 す る連続意 見書 では 〔減価償却 の最 も重要 な 目的 は適正 な費用配分 を行 うこ とに よって 、毎期 の損 益 計 算 を正 確 な らしめ るこ とにあ る。 このため に は減価償却 は所定の減価償却方法 に従 って、計画 的 、規 則的 に実施 されねばな らない。利益 に及ぼ す影 響 を顧慮 して、減価償却 費 を任意 に増減す る こ とは、右 に述べ た正 規 の減価償却 に反す る とと もに、損益 計算 をゆがめ る ものであ り、是認 しえ ない ところであ る」 と述べ てい るが 、 この意 とす る ところは 、税務 会計の理 念 をその まま代弁 して い る感 さえあ る。 この よ うに減価償却 は財産評価の問題 と同時に、 損益 計算 に も深 く係 ってお り、減価償却 費の計算 が正 し く行 われ るこ とに よって、商法 の 目的 とす る配 当可能 利益 の適正 な大 きさ も決定 し、企業会 計 の命題 であ る適正 な期 間損益 の計算 も可能 とな るのである。 105 ところで、商法 におけ る減価償却 に関す る規定 は甚 だ不 十分 で、「相 当 ノ償却」の具体 的 な計算 に 関 しては、 もっぱ ら会計理論 に委ね られ るこ とに な る。一方、前記連続意 見書 にい うところの 「所 定 の減価償却 方法」につ いては、企業会計 原則〔注 解20〕 において 、定額法 、定率 法 、級数 法 、生産 高比例 法、償却 基金法、取替 法 な どが例示 され、 連 続意見書 第3(昭.35)に、それ ぞれの計算方法 につ いて 、一 応のパ ター ンが示 されてい る。 ところで、各期 間の減価償却 費の計算 の基礎 と な る要 素 は、取得 夙価 、耐用期 間、残存価 額 な ど で、特 に後の二要素 につ いては見積 り的要 因が極 めて強 い もの であ って、 この合理 的な決 定 は企業 会 計 にお いて も極めて 困難 であ ろ うと思 われ る。 税 法 にお い て は耐 用期 間 につ いて は 「減価償 却 資産 の耐用年数 等 に関す る省令」 に よって、固 定 資産 の種類 に応 じて詳 細に定め られてお り、残 存価額 につ いては一律取得価 韻の100分 の10(実 務 的には100分の5)と規定 されている。減価償却 の方法 につ いて も、定紋法、定率 法等が 法定 され てお り、 これ らの各要素 に よって、損金 算 入限度 額の計算が な され るこ とにな っている。 企業会計側 の要望 に よれば 、残存価額 につ いて 取得価 韻の10%とす る一律的規定 を改め 、個 々の 資産 の特殊性 を考慮す るこ と、耐用年数 につ いて は法定耐用年数 の一律 的規定 を標準耐用年数 とし ての指示 に とどめ 、企業 の 自主 的判断要 素 を重視 す るこ と、償却 方法 につ いて も定額法 、定率 法等 に限定せ ず 、公正 な会計慣行 に属す る他 の方法 も 認め るのが望 ましい、な どの意見が あげ られてい る。 (注 )14. 企業会計原則 と関係諸法令 との調整に関 す る連続意見書第三(昭.35) :「固定資産の耐用 年数は物質的減価 と機能的減価の双方 を考慮 して 決定されねばならない。 (中略)今後における耐 用年数の決定に際 しては、機能的減価の重要性 を 認め、過去の統計資料 を基礎 とし、これに将来の 趨勢を加味 して、できるだけ合理的に機能的減価 の発生 を予測することが要求される。」「固定資産 の耐用年数には一般的耐用年数 と企業別 の個別的 耐用年数 とがある。 (中略)個別的耐用年数は各 企業が 自己の固定資産につ き、その特殊的条件 を 考慮 して自主的に決定 したものである。 (中略) -1051
106 長野大学紀要 第15巻 第1号 1993 現在、わが国では税法の立場から定められた一般 的耐用年数のみが行われているが、企業を単位 と する個別的耐用年数の制度を確定 し、わが国の減 価償却制度を合理化する必要がある。」 減価償却 の計算要素 に関す る企業会計の意見は、 その理想において異議 をさしはさむ余地 はない。 しか し、会 計の実践において、減価償却 の計算 を 企業の内部 的意思決定 に委ね るとすれば、実際問 題 として主観的要素が強 く働 き、これ を妥 当 とす る客観的証拠 を見出す こ とは困難であろう。企業 間の負担の公平 、会計処理 の簡明化等の立場か ら、 具体 的で最大公約数的な税法上の とりきめは、企 業会計 の実践の上か らも益す る ところは小 さ くな い もの と思 われ る。 税法が確定決算基準 を採用 し、減価償却 費の損 金経理 を要求 してい るこ ともあって、現在では、 ほ とん どすべ ての企業が税法基準に依拠 している 実情 である。 (注)15. 調整意見書 (昭.41) :「(前略)現状に おいては各企業が自ら合理的な耐用年数 を直ちに 設定することは困矩であると考えられるので、税 法において、このような取扱いがなされることを 一般的に期待することは目下のところ、実情に添 わないと考えられるが、合理的と認め られる耐用 年数 を企業 自ら定めた場合には、税法 としてもこ れを認めることが妥当であり、そのための方途を 税法に規定 してお くことが望 ましい。 (後略)」 税法において も、企業の個別的事情 を全 く考慮 しない とい うものではな く、特定の場合 には税務 署長 の認め る ところに よ り、耐用年数 の短縮、特 別 な償却方法の選択な ど、特殊事情 に応 じた計算 が で きるように配慮 されているO
(
2
)
正規の減価償却 と特別償却 税務会計 においては、主 として産業 ・経済政策 上 の立場か ら、租税特別措置法等の規定 に よって、 各種 の特別償却 費の損金算入が認め られてい る。 元来、期 間損益 の適正計算 を重視す る企業会計 に おいては、「正規 の減価償却 の見地か ら、税法 にお け る任意償却制度 を改め、企業が正規の減価償却 制度 を採用す るこ とを促進す るように規定 を改め るべ きであ る (連続意見書(昭.
3
5
))
とす る思想が その根底 にあ る。従 って、特別償却 につ いて も会 計理論上 の正規の償却計算に よる減価償却 費 と異 な り、本来の費用配分の原則に よる もの とは認め 難い とす る見地 に立つ。む しろ特別償却 費は当期 の発生費用 としての性質 を持つ ものではな く、再 投資のための引当金的な性格 を有す る ものであ る か ら、適正 な期間損益計算 を阻害 しないで、 これ を会計処理 に織 り込 むためには、利益処分方式に よ り表示す るのが合理 的である とす る提言 を行 っ ている。 また、特別償却 費が商法の 「相 当 ノ償却」 に当 たるか否かにつ いて も、商法理論上 、当然問題が ある とされている。 税務会計上 の対応 として、現 在では特別償却 費 につ いて損金経理 を強制す る処理 を改め、利益処 分 に よ り特別償却準備金 として経理す るこ とが認 め られている。 租税政策は、単 なる財源確保 の手段 としてのみ でな く、企業の投下資本の流動化 を促進 し、投資 の奨励 、技術革新.、公害対策 、雇用政策、中小企 業対策等 、経済 ・産業政策上の手段 として も重要 な役割 をもつ ものであ り、そのためには場合 に よ っては徴税理 念 を犠牲にす る措置 もあ り得 るこ と に留意 したい。 二 、貸倒 引当金の理論 と計算 貸借対照表原則五・C:
受取手形、売掛 金その他の債権の貸借対照表価額は、債権 金額又は取得価額から正常な貸倒見積高を 控除 した金額 とする。 諸 引当金に関す る一般的理 論につ いては、前掲 保守主義の項 目で述べ た ところであるが、貸倒 引 当金 につ いては、商法34条 3項 で 「金銭債権二付 イテ-其 ノ債権金額 ヨ リ取立 ツル コ ト能-ザル見 込額 ヲ控除 シタル額 ヲ超ユル コ トヲ得 ズ」 と特に 規定 し、企業会計原則や意見書 において も格別 に ふれ る ところが 多い。 特 に商法 ではいわゆ る債務性 のない引当金に関 す る287条2の規定の文言が 「計上 スル コ トヲ得」 とす る任意的意味 を もつのに くらべ 、商法285条 4の2項 では 「金銭債権二付取立不能 ノ慮アル ト キ-取立 ツル コ ト能-ザル見込額 ヲ控除スル コ ト ヲ要 ス」 として、金銭債権の評価 において取立不 能見込額の控 除 を強制 してい る。 ここでの 目的は、中島弘人 財務会計と税務会計の連接に関する考察 正確 を期 間損益 の計算 とい うよ りも、債権者保護 に基づ く保守主義 的見地か ら、確実 な配 当可能利 益 の計算 を行 うとい うこ とにあるように思 われ る。 企業活動が信用取 引 を前提 として営 まれ る限 り、 あ る程 度 の貸倒 れ損失 の発 生 は避 け られない と ころであるか ら、会計理 念 としては、で きるだけ 正確 に当期業績 としての利益 を測定す るためには、 貸倒 れ確定前であって も、将来におけ る貸倒 れの 危険 を合理的に見積 って、当期の損失 として計上 す るこ とが妥 当な会計処理 である とす る見地 に立