シ ンポ ジ ュ ウ ム 「人 間 の 安 全 保 障 と私 た ち の 見 た 世 界 」 プ レゼ ンテー ション1「 人 聞 の 安 全 保 障 とJlcA」 国際 協 力機 構(JICA)人 間の安 全保 障担 当 竹 原 成 悦 国 際 協 力 機 構(JICA)企 画 ・調 整 部 人 間 の 安 全 保 障 推 進 チ ー ム の 竹 原 と申 し ます 。JICA で 勤 務 して 約10年 に な ります が 、 うち3年 強 を 東 テ ィモ ー ル で過 ご し、 そ の 際 に 中 村 先 生 と文 教 ボ ラ ン テ ィ ア ズ の 皆 さん に 大 変 お 世 話 に な りま した 。 本 日 は 、 パ ネ リス ト、 学 生 、 市 民 の 皆 さ ん との意 見 交 換 を楽 しみ に して お ります 。 さ て 、先 ほ ど中 村 先 生 が 「人 間 の安 全 保 障 とは どの よ うな 考 え 方 か 」 に つ い て 説 明 さ れ ま した 。 私 は 、 そ の よ うな 人 間 の安 全 保 障 の 考 え 方 をJICAで どの よ う に 開 発 援 助 に 取 り込 も う と して い るか 、 ま た 人 間 の 安 全 保 障 の 考 え方 に よ りJICAが どの よ うに 変 化 して い る の か 、 をお 伝 え し た い と思 い ます 。 中 村 先 生 の ご 説 明 の よ うに 、 国 際 社 会 で は 国連 開 発 計 画(L'VDP)の1994年 の 人 間 開 発 報 告 書 が 、人 間 の 安 全 保 障 の 考 え 方 に注 目す る き っ か け と な りま した 。日本 で も 、1997 年 の ア ジ ア 通 貨 危 機 を受 け て 、小 渕 総 理(当 時)が1998年12月 の ハ ノ イ 政 策 演 説 な ど で 人 間 の 安 全 保 障 を 日本 の 外 交 政 策 と して 位 置 づ け る こ と を表 明 しま した 。日本 政 府 は 、 人 間 の 安 全 保 障 を 実 現 す る活 動 を支 援 す る た め 、 翌99年 に 国連 に設 置 され た 信 託 基 金 に 資 金 を 拠 出 し、 拠 出 額 は2005年 度 ま で に 累 計315億 円 に 上 っ て い ます 。 ま た 緒 方 貞 子 前 ・国 連 難 民 高 等 弁 務 官 と ノー ベ ル 経 済 学 賞 受 賞 者 の ア マ ル テ ィ ア ・セ ン 氏 を共 同 議 長 とす る人 間 の 安 全 保 障 委 員 会 の 新 設 、同 委 員 会 に よ る人 間 の 安 全 保 障 の 概 念 の 整 理 を 支 援 し ま した 。外 交 政 策 の うち 特 に政 府 開 発 援 助(ODA)に 関 す る政 策 につ い て は 、2003 年8月 のODA大 綱 お よび2005年2月 のODA中 期 政 策 で 人 間 の 安 全 保 障 の 考 え が 明確 に 取 り込 ま れ ま した 。 こ う した 日本 政 府 の 政 策 、ま た2003年10月 の 独 立 行 政 法 人 化 の 際 に緒 方 貞 子 さん が 理 事 長 に就 任 し た の を 受 け 、JICAで も積 極 的 に 人 間 の 安 全 保 障 の 実 現 に 取 り組 む よ う に な り ま した 。特 に2004年3月 に 発 表 したJICA改 革 プ ラ ン で は 、人 間 の 安 全 保 障 を改 革 の 重 要 な 柱 と して 位 置 づ け ま した。 皆 さん は 、JICAが 人 間 の 安 全 保 障 の 考 え方 を 導 入 し た こ とで 、 どの よ うに 変 化 した の か 、 どの よ うに 変 化 して い くの か 、 に ご関 心 が 高 い か と思 い ま す 。 私 は 、 「援 助 の 考 え 方 」 「組 織 ・体 制 」 「事 業 展 開 」 の 三 点 に 大 き な 変 化 が 生 ま れ て い る と考 え て い ま す 。 第 一 の 厂援 助 の 考 え方 」の 変 化 に つ い て は ま ず 、人 々 を 中 心 に置 く とい う意 識 が 強 ま っ て い る こ と が 挙 げ られ ま す 。一 般 に 、政 府 開 発 援 助 は 途 上 国 政 府 と 日本 政 府 の 問 の 協 力 事 業 が 基 本 で 、 ど う して も行 政 官 中 心 に な り ます し、開 発 ニ ー ズ も様 々 で す 。 人 間 の 安 全 保 障 の 考 え 方 を 持 つ こ とで 、人 々 を 第 一 に 考 え る こ とを 改 め て意 識 し、特 に よ り脆 弱 な 状 態 に あ る人 々 、 よ り深 刻 で 広 範 な 脅 威 ・課 題 に着 目す る よ うに な っ て き ま した 。 協 力 の ア プ ロー チ に も変 化 が あ り ます 。従 来 の 政 府 間 事 業 で は 、途 上 国 政 府 の 行 政 機 一12一
関 の 能 力 開 発 を 直 接 の 目標 と して き ま した が 、必 ず し も一 般 の コ ミュ ニ テ ィや 人 々 の 能 力 開 発 ま で は カ バ ー で き て い ま せ ん で した 。政 府 が 人 々 を保 護 す る能 力 と 、コ ミ ュ ニ テ ィ ・人 々 自身 が 自立 す る た め の 能 力 の 双 方 を強 化 す る ア プ ロー チ を重 視 す る人 間 の 安 全 保 障 の 考 え 方 を ふ ま え て 、JICAも 両 者 を組 み 合 わ せ る こ との 重 要 性 を認 識 す る よ うに な っ て き て い ます 。 他 方 、JICAや 途 上 国 政 府 の 持 っ 縦 割 りの組 織 運 営 が 、 人 々 の抱 え る 複 合 的 な 脅 威 ・ 課 題 に 総 合 的 に対 応 で き て い な い こ と も多 く 、これ を 乗 り越 え る た め の 取 り組 み を 一層 意 識 す る よ うに な っ て い ま す 。例 え ば 、JICAの 複 数 の 種 類 の 事 業 を 組 み 合 わ せ た 支 援 、 複 数 の セ ク ター に ま た が る支 援 、 他 の ドナ ー ・国 連 難 民 高 等 弁 務 官 事 務 所(LNHCR)を は じめ とす る国 際機 関 ・NGOな ど との 連 携 、平 和 構 築 にお い て 人 道 支 援 か ら開 発 援 助 へ の 円 滑 な 移 行 、 な ど に 取 り組 ん で い ま す 。 第 二 の 「組 織 ・体 制 」 に つ い て の 最 も大 き な 変 化 は 、緒 方 理 事 長 の イ ニ シ ア チ ブ で進 め られ た 在 外 事 務 所 の 強 化 で す 。現 場 の ニ ー ズ を 把 握 し、ニ ー ズ に 即 した 事 業 を行 っ て い く た め に は 、 も っ と現 場 に人 員 や 権 限 を置 くべ き との 考 え か ら、2003年10月 か ら05 年3月 ま で の 問 に136人 を 日本 か ら在 外 事 務 所 に配 置 換 え し、在 外 事 務 所 が 主 導 して 事 業 を 行 う体 制 を導 入 しま した 。 ま た 、 自然 災 害 や 紛 争 の 後 の 復 興 支 援 体 制 に つ い て も 強 化 を 続 け て い ま す 。 例 え ば JICA事 務 所 の あ る首 都 か ら遠 く離 れ た 地 域 や 、従 来JICA事 務 所 が 存 在 しな か っ た 地 域 で 、復 興 支援 が 必 要 に な っ た 場 合 に 、 フ ィ ー ル ドオ フ ィ ス を 設 置 して 柔 軟 に 事 業 を 行 え る よ うに しま し た 。ま た 様 々 な 手 続 き を 簡 略 化 した り、あ らか じめ 必 要 な 人 材 を登 録 し た りす る制 度 を導 入 し、事 業 開 始 ま で の 期 間 を短 縮 しま した。 さ ら に復 興 支 援 や セ キ ュ リテ ィ に 関す る研 修 を 拡 充 し 、職 員 の 対 応 能 力 も高 め て い ます 。 第 三 に 、 こ う した 考 え方 や 組 織 ・体 制 の変 化 を 受 け た 具 体 的 な 「事 業 」 の 変 化 が 挙 げ られ ま す。 先 ほ ど述 べ た 脆 弱 な 人 々 に 焦 点 を 当 て る とい う観 点 か らは 、少 数 民 族 、青 少 年 、貧 困 層 、女 性 な どに 焦 点 を 当 て た 事 業 が 増 え て い ま す 。 政 府 の 保 護 能 力 強 化 と コ ミ ュ ニ テ ィ ・人 々 の 能 力 強 化 を組 み 合 わ せ る とい う観 点 で は 、政 府 と コ ミ ュ ニ テ ィ を つ な げ る 開 発 の 「仕 組 み づ く り」 に 協 力 す る事 業 が 増 え て い ま す 。異 な る援 助 形 態 の プ ロ ジ ェ ク トを 組 み 合 わ せ た 「プ ロ グ ラ ム 」 の形 成 に も取 り組 ん で い る と こ ろ で す 。 復 興 支 援 事 業 の 増 加 ・改 善 も進 ん で い ま す 。 パ レス チ ナ 、 ス ー ダ ン 、パ キ ス タ ン 地 震 な どで は 従 来 よ り も数 ヶ 月 手 続 き を短 縮 して 迅 速 な活 動 を行 い ま した 。イ ン ド洋 津 波 や パ キ ス タ ン地 震 で は 、緊 急 援 助 隊 活 動 に 並 行 して プ ロジ ェ ク ト形 成 の た め の調 査 を行 い 、 緊 急 人 道 支 援 か ら復 興 、中 長 期 的 開 発 に 到 るプ ロセ ス の 「継 ぎ 目」を 減 ら して き ま した 。 最 後 に具 体 的 な事 業 の イ メ ー ジ と して 、 チ ャ ド 「ス ー ダ ン難 民 キ ャ ン プ周 辺 コ ミュ ニ テ ィ支 援 」 事 業 の ビデ オ を ご覧 い た だ き ま す 。 〈上 映 約5分 〉 ご 覧 い た だ い た ビデ オ を 若 干 補 完 し ます 。2003年 に ス ー ダ ン の ダ ル フー ル か ら十 数 万 人 の 人 々 が難 民 と な っ て チ ャ ド東 部 に移 動 した 際 、も とも と貧 しか っ た チ ャ ドの人 々 の 生 活 も非 常 に 厳 し くな り、 ス ー ダ ン 難 民 と の 摩 擦 も生 じま した。 こ の 事 業 でJICAは チ ャ ド住 民 へ の 短 期 、中 長 期 支 援 に取 り組 ん で い ま す が 、こ れ は ス ー ダ ン難 民 キ ャ ン プ 一13一
を支 援 す るUNHCRと 補 完 関係 に あ る とい え ま す 。 以 上 、JICAが どの よ うに 人 間 の 安 全 保 障 の 考 え方 を 開 発 援 助 に 取 り込 も う と して い る か 、ま た 人 間 の 安 全 保 障 の 考 え方 に よ り どの よ う に変 化 して い る の か 、に つ い て ご 説 明 い た し ま した 。実 際 に は様 々 な ジ レ ンマ とチ ャ レ ン ジ を抱 え て お り試 行 錯 誤 の 段 階 で も あ りま す の で 、 この 後 の デ ィ ス カ ッ シ ョ ン や 質 疑 応 答 を通 じ て 、 さ ら に説 明 させ て い た だ き た い と思 い ま す 。 一14一