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Conservation plan for the Siberian salamander at a solar power generation site

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Academic year: 2021

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は じ め に キタサンショウウオ(Salamandrella keyserlingii)は, 世界で最も広く分布する小型サンショウウオで,ロシ ア,カザフスタン,モンゴル,中国,北朝鮮,日本の 6ヶ国にまたがって分布し,日本国内では釧路湿原と上 士幌町,北方領土の国後島に局所的に分布している(佐 藤 2009,Matsui et al. 2019).本種は戦前まで国内に分布 しないとされていたが,1954 年に旧平戸前小学校の児 童によって初めて確認された(Mikamo 1955).以来, 調査研究が進められ釧路湿原域における繁殖生態や分 布状況が少しずつ明らかにされてきた(例えば,佐藤 1998,佐藤 2009).その結果,釧路湿原における本種の 生息地点は,人間の活動が及ばない湿原の中心部に多い わけではなく,むしろ人間の生活圏と非常に近接した湿 原の辺縁部に多いことが確認された.そのため,本種 は宅地化や農地化,道路建設といった開発による影響 を非常に受けやすい状況にある.1982 年から 2006 年ま での25 年間に及ぶ断続的な調査で,釧路湿原で確認さ れた繁殖地のうち31%が消滅したか,あるいは消滅寸

事例報告

太陽光発電事業地内で確認されたキタサンショウウオの保全事例

照井滋晴

1

・佐藤孝則

2 1NPO 法人環境把握推進ネットワーク-PEG 2天理大学おやさと研究所

Conservation plan for the Siberian salamander at a solar power generation site

Shigeharu Terui

1

, Takanori Sato

2

1Environment Grasp Promotion Network–PEG, Nonprofit Organization

2Oyasato Institute for the Study of Religion, Tenri University

Abstract Currently, several solar power plants have been constructed in wetland areas in Kushiro National Park

with-out prior environmental impact assessment, as it was not required by the relevant laws in Japan. We surveyed abundance of individuals and egg sacs of the threatened Siberian salamander (Salamandrella keyserlingii) at a solar power plant site, prior to, during (2015–2016), and after (2017) its construction. We confirmed the presence of adults (n = 5 in 2015, n = 3 in 2016, and n = 1 in 2017), and metamorphs (n = 8, only in 2016) as well as egg sacs (n = 11 in 2015, n =37 in 2016, n = 36 in 2017) of this species during the survey period. For habitat conservation, we suggested the following measures to solar power producers: 1) installation of photovoltaic panels in the salamander’s main habitat area should be avoided, and 2) the main habitats should be preserved as habitat “conservation area.” The solar power producers agree to implement our suggested conservation plan, and it was decided that we would monitor the salamander population– in this site for the next several years. We believe that this endeavor, supported jointly by producers and conservationists, sets a valuable precedent for the conservation of salamanders in areas with solar power plant construction.

Key words: Kushiro National Park, photovoltaic, renewable energy, Salamandrella keyserlingii, wetland

   

受付日:2019 年 6 月 17 日 受理日:2020 年 4 月 2 日 責任著者:照井滋晴 [email protected]

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れた.これを契機に,全国的に太陽光発電事業が拡大し ており(山下 2014),釧路湿原を擁する 4 市町村(釧路 市,釧路町,標茶町,鶴居村)においても,稼働中また は稼働予定の太陽光発電施設が561ヶ所あり,そのうち 23ヶ所がメガソーラーと呼ばれる大規模太陽光発電施設 である(経済産業省資源エネルギー庁 2019).メガソー ラーとは,発電事業目的で建設される大規模太陽光発電 設備で出力が1000 kW(1 MW)以上のものを言う(中 丸 2012).一方,太陽光発電施設の整備に伴う土地の改 変やソーラーパネルの設置による環境の変化が,野生生 物や景観へ与える影響については,各地で問題視されて いる(環境省 2016,浦 2017).国外においても,太陽光 発電所の運用に必要な粉塵抑制剤や防錆材,融雪剤,除 草剤などの薬剤が生物多様性に影響を与える可能性や施 設の建設に伴う野生生物の生息地の喪失や分断化,外来 種の侵入の促進などが懸念されている(e.g., Turney and Fthenakis 2011, Hernandez et al. 2014, Sanchez-Zapata et al. 2016). 本報告では,釧路湿原南東部地域内に建設された大規 模太陽光発電施設の事業地内における発電所開所前後の キタサンショウウオの生息・分布状況の調査結果,及び 保全対策について報告する. 調査地と方法 調査地 調査地の詳細な緯度経度などの情報は,本種の保全の 観点から記載しない.調査地は,釧路湿原南東部に位置 し,釧路湿原国立公園の普通地域に指定されている釧路 町の所有であり,かつて町営牧野として利用されていた 土地である. 牧野に利用される以前は釧路湿原の一部であり,ヨシ (Phragmites australis)やスゲ類(Carex sp.)が優占する 低層湿原が広がっていた.1970 年頃に町営牧野とする 本調査が実施されるに至った経緯としては,事業者が 釧路町から事業地を借り受ける際,野生生物に配慮した 事業を行ってほしいという旨の提案を受けたことに始ま る.この提案を受けて,2014 年 7 月に釧路湿原域でキ タサンショウウオの調査研究や保全活動に従事してきた 筆者らに対し,事業地付近における本種の生息状況や保 全対策の必要性などについてのヒアリング調査が行われ た.その際に,これまでの本種の分布情報から事業地内 にも本種が生息する可能性があり,生息していた場合は 保全対策を講じる必要がある旨を指摘した.そして,そ の保全対策として,パネル設置位置を変更して環境改変 の影響を回避することを提案した.その結果,2014 年 11 月の着工と並行して本種の生息状況調査を実施し, その結果をもとに随時事業者と協議を行い保全対策の手 法を議論していくことで合意した. 調査方法 (1)生息・分布状況 本種の生息・分布状況を調べるために,2014 年 11 月 に本種捕獲用のピットフォールトラップ(以下,PFT) を埋設した.PFT は塩化ビニール製の円筒パイプを輪切 りにし,「ネズミ返し」を上部に,また水抜き用の穴を 底板にあけた墜落罠である(図1).調査では,4 個の PFT と畦波板(長さ 5 m,幅 0.3 m のトタン板) を 1 セッ トとした「線トラップ」を設置した(図2).トラップ の設置は,事業地内において特に湿原植生が回復し,キ タサンショウウオの生息の可能性が高いと考えられた明 渠排水路で区切られた6 区画で行った.設置の際は,A ~G の 7 本のライン設定し,各ラインに 10 セットずつ の計70 セットを設置した(図 3).各ラインとも隣り合 う線トラップ間の間隔は原則として5 m 間隔で設置し た.なお,F,G ラインについては,太陽光発電所建設 に伴う作業用道路の設置のため2015 年 7 月に撤去し, それ以降の調査ではA~E の 5 ライン(計 50 セット)

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で調査した. 調査は,初日にトラップの蓋開けを行い,翌日からト ラップ埋設区域を見回り,落下個体の有無を確認した. 個体が捕獲された場合は,トラップごとに1 個体ずつプ ラスチック容器にて一時保管し,全てのトラップを確認 後,すみやかに所属事務所内に運び,個体ごとに外部 形態(全長,頭胴長,頭幅,胴幅,尾幅,尾高;すべて 1 mm 単位)と,体重(1 g 単位)を計測した(図 4). 外部形態の計測は,事前にMS-222(変温動物用麻酔 剤,トリカイン・メタンスルフォネート)を用いて個体 に麻酔をかけた.雄雌の判別では,繁殖期に見られる胴 幅,尾高,えらの張り,体色等の特徴を総合的に判断 して判別した.齢段階は,Hasumi(2010)が指骨の年 輪数をもとに算出した年齢と頭胴長から推定した基準を 参考に,頭胴長や捕獲時期から総合的に判断した.また 個体識別用に写真撮影を行った.その後,麻酔からの覚 醒を確認し,翌日,各個体を落下トラップ付近に放逐し た.放逐した個体には,Waichmn(1992)の方法に基づ いて「指切り法」によるマーキングを施した. 調査は,2015 年 4 月 13~15 日,5 月 26~28 日,8 月 10~12 日,9 月 8 ~10 日の各月連続 3 日間,2016 年は 5 月 2 ~ 6 日,8 月 1 ~ 5 日,9 月 18~22 日の各月連続 5 日間,そして,発電所開所後の 2017 年 5 月 2 ~ 6 日, 9 月 5 ~ 9 日,10 月 24~28 日の各月連続 5 日間の計 42 日間実施した. (2)繁殖状況 卵嚢調査は,事業地全域を踏査し,キタサンショウウ 図1 .ピットフォールトラップ(PFT). 図2 .調査地に埋設した「線トラップ」. 図3 .トラップの埋設位置.

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オの産卵の有無を目視によって確認した.卵嚢が確認さ れた場合には,詳細な確認位置,卵嚢数,確認地点の水 深,卵嚢付着基物を記録した. 本種の繁殖活動に対して影響を与えないように,卵嚢 の産み付けが概ね終了したと考えられる時期(2015 年 5 月2,3 日,2016 年及び 2017 年は 5 月 5,6 日)に各年 2 日ずつ計 6 日間実施した. 調 査 結 果 (1)生息・分布状況 調査の結果,2015 年 4 月にキタサンショウウオ 1 個 体を捕獲し,当該調査地内に本種が生息することを確認 した.その後,同年5 月に 3 個体,9 月に 1 個体の計 5 個体を捕獲した.捕獲した個体は,全て成体であり(表 1),雄 1 個体,雌 4 個体であると判断した.2016 年の 捕獲個体数は5 月に 1 個体,8 月に 2 個体,9 月に 8 個 体の計11 個体であった.捕獲した個体は,成体 3 個体 (すべて雄)と当年変態幼体8 個体(すべて雌雄不明) と判断した(表1).2017 年は 9 月に雄成体 1 個体のみ 捕獲した(表1).調査した 3 年間では再捕獲個体は確 認できなかった. 捕獲時期は,繁殖期と非繁殖期の両方であった.捕獲 位置は,A ライン 9 個体,B ライン 1 個体,C ライン 7 個体であり,B ラインで捕獲した 1 個体以外は全て同一 区画内で捕獲された(図5). (2)繁殖状況 2015 年に 11 対の卵嚢を事業地内で確認し,事業地内 が本種の産卵場所として利用されていることが明らかに なった.翌年以降も,2016 年に 37 対,2017 年に 36 対 の卵嚢を確認した.卵嚢は生息状況調査を実施した付近 の計3ヶ所の水域で確認した(図 6).産卵場所は,湿地 内の窪地に雪解け水や雨水が溜まった水溜り,あるいは 牧野として利用されていた頃に整備された明渠排水跡で あった. 保 全 対 策 (1)計画策定における対策 2015 年 4 月に実施した分布・生息状況調査の結果,A ラインで個体が捕獲され,大規模太陽光発電事業地内に 表1 .捕獲個体の外部計測値の概要 成長段階 N (mm)全長 (mm)頭胴長 (mm)頭幅 (mm)胴幅 (mm)尾幅 (mm)尾高 (g)体重 成体(雄) 5 (102.1–139.5)115.1±14.5 (58.4–69.4)62.0±4.6 (8.8–11.9)9.8±1.2 (10.2–13.1)11.7±1.1 (4.9–6.2)5.3±0.5 (4.9–6.2)8.1±0.4 (4.8–9.2)6.2±1.7 成体(雌) 4 (121.6–125.8)123.2±1.8 (63.9–67.1)65.2±1.4 (9.3–10.2)9.9±0.4 (12.8–13.0)12.9±0.1 (4.6–5.3)4.8±0.3 (7.6–7.9)7.8±0.1 (6.7–7.3)7.0±0.2 当年上陸幼体 8 (58.5–72.8)65.7±4.5 (32.5–38.8)35.3±2.2 (6.4–7.0)6.6±0.2 (6.3–7.8)6.9±0.5 (2.7–3.5)3.1±0.3 (4.6–5.5)5.0±0.3 (1.1–1.7)1.4±0.2 ※数値は上段が平均値±標準偏差,下段が最小値−最大値

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キタサンショウウオが生息することが明らかになり,太 陽光発電施設と本種との共存を図るため,保全対策を講 じる必要性が出てきた.その後,同年5 月に同一区画内 で本種の卵嚢が確認されたことから,筆者らは本区画が 事業地内に生息する個体群を保全するために重要である 可能性が高いと考えた.そこで,事業者に対し,本区画 については,工事作業の保留を提案した.そして,その 後の調査結果を基に,具体的な保全対策について随時協 議を行うことで合意した. 太陽光発電所の開所前である2015 年,2016 年に実施 した調査では,捕獲した15 個体は 1 個体を除いて同一 区画内のA ラインと C ラインで捕獲された.時期は繁 殖期と非繁殖期にまたがり,成体や幼体の両方が捕獲さ れたため,当該区画が主な生息場所であると考えられた. 図5 .太陽光発電所開所前後の個体捕獲地点. 図6 .太陽光発電所開所前後の卵嚢確認地点.

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卵嚢確認地点についても,そのほとんどが生体の捕獲地 点と同一の区画内で確認されたため,同区画が事業地内 に生息する個体群を保全するために重要であると考えた. 開発事業に際して実施されたサンショウウオ類の保全 対策事例では,成体や卵嚢の移植や代替繁殖地の創出な どがある(長谷川ほか 2015,上野ほか 2016).本種に関 しても,1980 年代に釧路市内で実施された国営草地開 発事業や1990 年代に実施された道路事業に際して,代 替繁殖池の創出が行われ,卵嚢及び成体の大規模な移植 が実施された(橋本 1991,辻ほか 1996).しかし,その 結果は決して成功しているとは言えず,卵嚢や成体の移 植による保全対策の困難さが伺える(野本 2015).その ため,最も効果的な保全対策としては,本種の生息環境 (産卵水域及び非繁殖期の活動場所である陸域環境)の 改変を回避,または影響を最小化することであると考え られる. 本事業地はかつて牧野開発により本種の生息環境が損 なわれたが,現在は自然の遷移によって本種の生息が可 能な環境に回復しつつあることから,既存の環境を維持 する形で本種個体群の保全を図ることが望ましいと考え た.そこで,発電所開所前の2 年間の調査によって得ら れた結果と考え得る保全対策案を示した報告書を作成 し,それを基に事業者と最終的な協議を行った.その結 果,事業地全域に太陽光パネルを設置する計画を変更 し,本種の主な活動場所及び産卵場所となっている区画 及びそこに隣接する区画には太陽光パネルを永続的に設 置せず,「保全区域」として現在の環境を残すことで合 意した(図7).また,隣接する区画に太陽光パネルを 設置する場合も,地面から比較的高い場所に設置するな ど,湿地環境への影響を最小限に留める配慮がなされた. (2)発電所開所後の保全対策 太陽光発電施設の開所後である2017 年に実施したモ ニタリング調査では,「保全区域」内で雄成体1 個体を 捕獲し,前年までとほぼ同じ場所でほぼ同数の卵嚢を確 認した.ただし,現時点では開所後1 年のデータしか得 られておらず,事業の影響の有無や大小を判断できる段 階にはない.本種は,生息環境に大きな変化がなくとも 卵嚢数の変動などが生じることが知られており(照井・ 佐藤 2016),本個体群の生息状況の正確な把握と事業の 影響評価には継続したモニタリング調査を続けていく必 要があると考えた.そこで,事業者に対し継続したモニ タリング調査を提案し,その実施について合意した. 本事業地においては,Hernandez et al.(2014)が影響 を懸念している粉塵抑制剤や防錆材,融雪剤,除草剤な どの薬剤を工事時,運用時とも使用していないことが事 業者への聞き取りからわかっている.そのため,モニタ リング調査では,主にパネルの設置による直接的な環境 改変の影響の有無について評価する. 一方,2016 年の調査時に,「保全区域」に隣接する太 陽光パネル設置区域(B ライン)においても,1 個体が 捕獲されたように,本個体群の行動圏が「保全区域」外 まで達しているのは明らかであることから,「保全区域」 外についてもモニタリング調査の範囲とすることが望ま しいと考える.現在,保全区域外に設置しているトラッ プはB ラインと E ラインの一部のみであるため,より 図7 .キタサンショウウオの「保全区域」.

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広範囲で分布・生息状況のモニタリング調査を実施でき るよう,事業者と協議をする必要もあると考える. (3)太陽光発電所の設置場所選定時の留意点 本調査においてキタサンショウウオの生息を確認した ことは,生息環境が一度改変された場所であっても,管 理放棄などにより放置されて湿原植生が回復した場合 に,その場所が小型サンショウウオの新たな生息環境と して機能する可能性があることを示唆している.同様の 事例としては,植生(池上ほか 2011)や地表徘徊性昆 虫(Yamanaka et al. 2017),鳥類(Hanioka et al. 2018)な どがある.伊藤ほか(2016)は,耕作放棄地を利用した 太陽光発電の有用性を指摘している.しかし,生物多様 性保全の観点からみると,耕作放棄地を安易に太陽光発 電事業地として利用せず,事業地とその周辺における希 少種の分布・生息状況調査を実施した上で事業実施の是 非を検討することが望ましいと考える. 本種の生息に適した湿原環境を再生する手法として は,表土の切下げなどの人為的に物理環境を改変する手 法もあるが(釧路湿原自然再生協議会 2015),その実施 には多大なコストがかかる.一方,釧路湿原域において は,本事業地のように自然の遷移によって湿原植生が回 復する事例が知られている(環境省釧路自然環境事務所 2018).このような湿原環境の回復には長い時間を要す るが,コストや野生生物に対する負荷がかからないとい うメリットがある. 現在,国内における太陽光発電設備の設置に伴う,景 観喪失や野生動植物に与える負の影響については,各地 で問題視されている(環境省 2016,浦 2017).しかし, 太陽光発電事業では,環境影響評価法による環境アセス メント調査の実施は,義務化されていないのが現状であ る(環境省 2018b).自治体独自で環境影響評価条例や 景観条例などを制定し,太陽光発電に伴う環境保全上の 問題に対応している地域もあるが(環境省 2016),それ は全体の一部に過ぎない.条例などが制定されていない 市町村においては,希少野生動植物の調査や保全対策は 事業者の自助努力に負うところが大きい.釧路湿原を擁 する4 市町村においても,条例などは制定されていない. そのため,現在稼働中あるいは今後稼働予定の20ヶ所 の太陽光発電施設のほとんどで環境アセスメント調査が 行われていない.この中には,本種の生息地やその隣接 地があるため,事業地とその周辺における生息現況の把 握や保全対策の必要性について事業者へ周知するなどの 対策が必要である.ただし,本事業地に隣接する釧路市 では,太陽光発電所の関連事業者から取得の届け出を受 けた土地に本種の生息の可能性がある場合は,北海道を 通じて生息に配慮を求める意見を事業者に伝える手続き をとっているが,これらの事業者から市に対して問い合 わせなどはないのが現状であり(北海道新聞 2019),効 果的な周知の方法についても検討が必要である. 本調査事例は,太陽光発電事業者が自発的にキタサン ショウウオの生息状況調査を筆者らに委託し,本種の生 息が確認されて以降は,筆者らとの協議を重ね,事業地 内の「保全区域」においては太陽光パネルの設置は行わ ず,生息環境を維持するよう配慮している.これは, 理想的な事例の一つと言える.このような事例が今後増 え,本種と再生可能エネルギー開発との共存が図られる ことを強く望むものである. 謝   辞 本種の保全対策のため自主的な環境調査及び保全対策 を実施し,得られたデータの公表についても快く承諾し てくれた事業者に深く感謝の意を表する.また,釧路町 には事業地の履歴などの情報を開示していただいた.北 海道教育大学釧路校の伊原禎雄教授には論文執筆にあた り貴重なご助言をいただいた.匿名の査読者と編集委員 には原稿の改善のために有益なご意見をいただいた.末 筆だが,皆様に改めて御礼申し上げる. 引用文献

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