• 検索結果がありません。

立体的な相互作用を利用する分子運動伝播システムの構築

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "立体的な相互作用を利用する分子運動伝播システムの構築"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

立体的な相互作用を利用する分子運動伝播システムの構築

(物材機構1)○大城宗一郎1・杉安和憲1・竹内正之1 【緒言】ローターとは回転運動する部品であり、タービンや水車、車輪のように、発電や輸 送システムを支えるものとして文明の発展に重要な役割を果たしてきた。また、複数の回転 子を機械的に噛み合わせることで回転運動をより遠くへ伝達することができ、他の部品との 組み合わせ次第で、直線、伸縮、振動運動などの様々な運動へと変換することが可能である。 このような特性から、ナノテクノロジーにおいても分子ローター、分子モーターなど、回転 特性を有する分子マシンが注目されてきた。1980 年、Iwamura らと Mislow らの研究グループ によって、2 分子のトリプチセンがエーテル結合あるいはメチレン基で連結された分子ギアが 合成され、立体的な噛み合い (立体的な相互作用)によって協同的に回転運動することが示さ れた1)。これを契機に、単一の回転子だけでなく、同種の回転子を複数個連結させたときの回 転特性について研究されるようになった。生体系に着目すると、天然の回転モーターとして 知られる ATP シンターゼは、「異なる回転モーター (FO、F1モーター)が連動する」ため、ATP 合成マシンあるいはプロトン輸送マシンの二面性をもつ。このように、機能の多様性を増幅 させる上で、異種回転子を連動させることが重要であると伺える。そこで本研究では、回転 特性が異なる 2 種類の分子ローターを利用してギア型分子の設計・合成を行い、回転子間に 働く立体的な相互作用、および回転特性を評価した2, 3) 【分子設計】分子スケールの回転 子としてポルフィリンを選択し、2 枚の歯車が垂直な位置関係で噛み 合うベベルギア型分子を設計した。 本研究で用いるベベルギア型分子 は、化学的な刺激によって回転速 度を変化させることが可能なダブ ルデッカー型ポルフィリンランタ ン(III)錯体 (LaDD、図 1 の Rotor A)

と、LaDD よりも速い回転速度をもつポルフィリンロジウム(III)錯体ローター (図 1 の Rotor B)

から構成される。これら2 種類の分子ローターを基体とし、ローターの数・配置を変えて、3

種類のベベルギア型分子を合成した (図 2)。

【実験結果・考察】異種回転子 (top および side)の回転挙動は、VT-NMR を用いて同時に追跡

した。具体的には、top の tert-ブチル基と side の β-ピロール位のプロトン周囲の電子雲変化を

追跡することで、それぞれの回転挙動を評価した。塩化メチレン-d2中におけるベベルギア型 分子 1 の温度可変 VT 1H NMR スペクトル測定を行った結果、top と side の両者の歯が立体的 な相互作用によって噛み合い、同等の活性化エネルギー (Ea = 30 kJ mol–1)をもって回転動作が 同調することを見出した。加えて、2、3 のいずれにおいても、3 枚 (top:side = 1:2)のポルフィ リン回転子間で立体的な相互作用が働き、これらの回転動作は同調していることを明らかと した。この結果から、side の数が増えても立体的な相互作用は働くことが示された。また、core のメソ位ピリジル基の導入位置を変えることによって、回転情報の伝達方向を水平方向 (2) や垂直方向 (3)へ制御可能であることを見出した。 LaDD のインナープロトンは弱酸性を示すため、塩基存在下では脱プロトン化した分子構造 (LaDD–)へ変換することが可能である。ベベルギア型分子 1 に対して、塩基としてトリエチル アミン (TEA)を添加したときの吸収スペクトル、VT 1H NMR スペクトルから、LaDD 部位の

Rotor A (LaDD) Rotor B Bevel gear shaped rotor

side La N N N N N N NHN N N N N N Rh La N N N N N N NHN N N N N N Rh core top meso-position 図1. ベベルギア型分子の設計概念

(2)

構造変化に伴ってtop の回転速 度は減少することが示された。 また、この構造変化は立体的な 相互作用にも影響を及ぼし、 TEA 添加後は top と side 間の 「歯」の噛み合いが外れ、それ ぞれ独立して回転運動し始め ることが明らかとなった。また、 化学的刺激によってLaDD の回 転速度を変化させたとき、2 で はポルフィリンロジウム(III)錯 体ローターが独立して回転運 動し始めたのに対し、3 では回 転挙動が同調し続けることが 示された。前者は同調–非同調 の切り替えが可能な超分子ロ ーターとして機能し、後者はま さに分子ギアとして機能する ことを見出した。 【結論】2 種類の分子ローター から構成されるベベルギア型 分子について回転特性を評価 した結果、回転子間に働く立体 的な相互作用は、LaDD 部位の 分子構造や、ポルフィリンロジウム(III)錯体ローターの配置に強く依存することを明らかにし た。分子運動の伝達・変換機構を担う立体的な相互作用について知見を深めることにより、 分子運動を基軸とした機能性材料の開発に拍車がかかると期待される。

【参考文献】1) a) Y. Kawada, H. Iwamura, J. Org. Chem. 1980, 45, 2547–2548; b) W. D. Hounshell, C. A. Johnson, A. Guenzi, F. Cozzi, K. Mislow, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1980, 77, 6961–6964. 2) S. Ogi, T. Ikeda, R. Wakabayashi, S. Shinkai, M. Takeuchi, Chem. Eur. J. 2010, 16, 8285–8290. 3) S. Ogi, T. Ikeda, R. Wakabayashi, S. Shinkai, M. Takeuchi, Eur. J. Org. Chem. 2011, 1831–1836.

A Bevel-Gear-Shaped Molecular Rotor Propagating Molecular Motion through

Mechanical Interaction

Soichiro Ogi1, Kazunori Sugiyasu1, Masayuki Takeuchi1

1Organic Materials Group, Polymer Materials Unit, National Institute for Materials Science (NIMS)

Abstract: We demonstrated the interlocking of molecular rotors in a bevel-gear-shaped structure, which was composed of a

lanthanum(III) bis(porphyrinate)s doubledecker (LaDD) and porphyrinatorhodium(III)-based rotors; the former has the switchable rotational activity and the latter has a higher rotational activity than that of LaDD. We found, by using variable-temperature 1H NMR spectroscopy, that mechanical interactions among the teeth of the molecular rotors are strongly affected by deprotonation of the pyrrole NH proton at the LaDD rotor and spatial arrangement of the porphyrinatorhodium(III)-based rotors. F F F F F F F F F F N HN N NN F F F F F Si N N N N Rh Cl Si Si N N N N t-Bu t-Bu t-Bu t-Bu La t-Bu t-Bu t-Bu t-Bu Si 1 top side core MeOOC HN N N N COOMe N N N N N N Rh N N N N Rh Si Si Si Si Si Si Cl Cl La N N NN t-Bu t-Bu t-Bu t-Bu t-Bu t-Bu t-Bu t-Bu Si Si Si N N N N Cl Si Si COOMe N HN N NN MeOOC N Si N N N N Rh Cl Si Si N N N N t-Bu t-Bu t-Bu t-Bu La t-Bu t-Bu t-Bu t-Bu Si Si Rh 2 32. ベベルギア型分子 1, 2, 3 の分子構造および模式図

参照

関連したドキュメント

しかし、近年は遊び環境の変化や少子化、幼 児の特性の変化に伴い、体力低下、主体的な遊

 この論文の構成は次のようになっている。第2章では銅酸化物超伝導体に対する今までの研

たかもしれない」とジョークでかわし,結果的 りこめたシーンである。 ゴアは,答えに窮する

これは, 無限群の作用による商多様体の特異点解消が不変 Hilbert スキームによって与えられる新たな具体例となる... G- 作用付き多様体は

これまでに、装置構成は複雑ではあるが立体視の要因をほぼ満足し、自然な立体視が可能な奥

1、研究の目的 本研究の目的は、開発教育の主体形成の理論的構造を明らかにし、今日の日本における

看板,商品などのはみだしも歩行速度に影響をあたえて

損失時間にも影響が生じている.これらの影響は,交 差点構造や交錯の状況によって異なると考えられるが,