風俗歌の古楽譜について 《大鳥》の分析を例として
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(2) 俗 歌 」 の 称 が 用 い ら れ る よ う に な る。 以 下 本 稿 で は、 こ の 狭 義. 『源氏物語』には風俗歌の引用場面が複数認められる. の時左大臣である。. 。歌. ( 5). ) ③「 真 木 柱 」 巻 で は《 鴛 ②「 末 摘 花 」 巻 で は《 多 々 良 女 》 (6、. 唱 場 面 に 限 れ ば 四 例 が 認 め ら れ、 ①「 若 菜 」 巻 で は《 常 陸 》、. の「風俗歌」について論じていく。 「 風 俗( 歌 )」 の 早 出 例 と し て は、『 西 宮 記 』 巻 第 八「 私 遊 宴. 歌 い 手 の 立 場 と し て は、 ① ② の 源 氏、 ④ の 薫 は 近 衛 中 将、 ③ の. 事」の以下の記事をあげることができる。. 源 氏 は 太 政 大 臣 で あ り、 高 位 の 人 物 に よ る 歌 唱 場 面 し か 見 ら れ. 鴦 》 を 源 氏 が 歌 い、 ④「 匂 宮 」 巻 で は 薫 が《 八 乙 女 》 を 歌 う。 夫 於 律 遊 者 用 平 調、 於 呂 遊 者 用 双 調、 至 于 他 調 随 時 用 之、. な い。 し か し、 地 の 文 や 会 話、 和 歌 へ の 引 用 例 も 含 め、 こ の よ. こ れ に よ り、 遅 く と も 十 世 紀 以 降 に は、 風 俗 歌 が 私 の 遊 宴 で 用. して認識されていたことが前提となる。また、②の《多々良女》. く、 同 時 代 の 物 語 読 者 に と っ て も、 風 俗 歌 が 親 し み 深 い も の と. (2). 但 律 呂 遊 以 歌 為 本、 楽 曲 相 交、 反 声 於 倭 琴、 先《 常 陸 》 同. い ら れ、 ま た 既 に《 常 陸 》、《 甲 斐 》 な ど の レ パ ー ト リ ー を 有 し. は 風 俗 歌 の 古 楽 譜 の レ パ ー ト リ ー に み え ず、『 政 事 要 略 』 巻 第. う な 風 俗 歌 の 描 写 が 成 立 す る た め に は、 貴 族 た ち だ け で は な. て い た こ と が わ か る。 風 俗 歌 の 歌 い 手 に つ い て は 明 記 さ れ て い. と 称 さ れ る、 左 右 衛 門 府 に か か わ り の 深 い 風 俗 歌 の 一 群 が 存 在. 六十七に「衛門府風俗歌」として記される. 音数度、次《甲斐》各独唱、風俗等也. な い が、 私 の 遊 宴 を 主 催 し た 貴 族 を 中 心 と し、 必 要 に 応 じ て 地. し た こ と が 推 察 さ れ る。 総 じ て、 貴 族 や 衛 府 の 楽 人 た ち に よ っ. て 奏 さ れ た 風 俗 歌 は、 広 く 宮 廷 内 の 女 房 達 に 至 る ま で 親 し ま れ. (7). 。「衛門府風俗歌」. 『 枕 草 子 』 に は「 う た は ふ ぞ く。 な か に も 杉 立 て る 門 」 と あ. 下の楽人が参仕したことも想定される。 り、 女 房 た ち に も 風 俗 歌 が 親 し ま れ て い た ら し い が、 女 性 の 声. ていたことが認められる。. 楽、 催 馬 楽、 風 俗 と い ふ。( 中 略 ) 風 俗 は 調 楽 の 内 参、 賀. 古 よ り 今 に い た る ま で、 習 ひ 伝 え た る う た あ り。 こ れ を 神. 境に変化が見受けられる。『梁塵秘抄口伝集』巻第一には. 時 代 を く だ り、 平 安 時 代 末 期 に な る と、 風 俗 歌 を と り ま く 環. で 歌 わ れ る こ と が あ っ た か、 定 か で な い。 同 書 別 段 に は、 賀 茂 (3). 。. 臨 時 祭 の 調 楽 の 際、 細 殿 を 歩 き な が ら「 荒 田 に 生 ふ る と み 草 の 賀 茂 臨 時 祭 と の 関 係 で い え ば、『 大 鏡 』 の 世 継 の 談 と し て、. 花」(《荒田》)と歌う公達についての言及もみられる. 一 条 天 皇 代、 賀 茂 臨 時 祭 に お け る 清 涼 殿 東 庭 の 儀 の 後、 物 見 に. 茂 詣 な ど に こ れ を 用 ゐ ら る。 ま た 臨 時 客 に も 古 く は う た ひ. 〔九八六~一〇一一〕. 出 た 源 雅 信 が、《 荒 田 》 を 普 通(「 な べ て の や う 」) と は 違 っ た. けり。近くは絶えてうたはざるか. 〔九二〇~九三〕. ( 4) 。源雅信は源家流郢. (8). 曲 第 二 の 相 承 者 と し て 知 ら れ る。 逸 話 を 史 実 と み る な ら ば、 こ. 歌い方で口ずさんだとする逸話がある. - 54 -.
(3) る( 後 引『 吉 野 楽 書 』)。 天 皇 や 院、 法 親 王 に ま で 愛 唱 さ れ る よ. で あ る 近 方 は、 堀 河 天 皇 か ら 風 俗 歌 の 相 承 を 受 け た と さ れ て い. 〔一〇八八~一一五二〕 〔在位一〇八七~一一〇七〕. の 皆 伝 を 受 け た と さ れ( 文 治 本『 風 俗 古 譜 』)、 そ の 近 久 の 父 と あ る。 調 楽 の 内 参 や、 賀 茂 詣 な ど に 用 い ら れ、 古 く は 臨 時 客. レ. ) 、 楽 譜 が 相 承 の 道 具 と し て 必 要 と さ れ る よ う に な っ た の も、. 来の事情については、現状から判断できないことも多くあるが、. 過 程 の 中 で 生 じ て き た も の と 考 え ら れ る。 そ れ ぞ れ の 成 立 や 伝. 紀 初 頭 に か け て 成 立 し た も の で あ り、 こ れ ま で み て き た よ う な. 本 稿 次 節 以 下 で 扱 う 風 俗 歌 の 古 楽 譜 は、 十 一 世 紀 か ら 十 三 世. この過程のことと思われる。. (. の 対 象 と な っ て い く。 風 俗 歌 の レ パ ー ト リ ー や 唱 法 が 固 定 化 し. う に な っ た 風 俗 歌 は、 そ の 一 方 で 楽 家 の 生 業 と し て 秘 伝、 相 承. に も 用 い ら れ た と い う が、 近 年 は 歌 わ れ な く な っ た と い う。 賀 〔 一 一 七 三 〕. 茂 詣 に お け る 風 俗 歌 の 演 唱 に つ い て は、『 玉 葉 』 承 安 三 年 四 月 二十二日条に、以下のようにある。 「遠 廿二日、此日、関白賀茂詣也、 (中略)陪従任 レ例唱也、 レ. 止 女 」 一 歌、 源 納 言 資 賢 卿、 放 音 和 之、 其 声 叶 時、 其 レ. (9). 曲 優 美、 上 下 皆 称 レ有 レ興、 漸 進 二馬 場 一、 欲 レ止 之 刻、 聊 唱 秘説 一云々、好方近久等止 レ音側 レ耳、是神伏歟. 資 料 の 性 質 や 記 譜 体 系 な ど の 情 報 を 整 理 す る こ と に よ っ て、 こ. 二. れらの資料を利用する際の一助としたい。. 〔一一三〇~一二一一〕. 「 遠 止 女 」 は《 八 乙 女 》 を さ す。 例 に よ っ て ま ず 陪 従 が《 八 〔一一一三~八八〕. 〔一一二四~一二一三〕. 二 、 風 俗 譜の 伝 本 ( 詞 章を 有す る も の ). 第八輯). 風 俗 歌 の 主 要 な 古 楽 譜 の う ち、 詞 章 を 有 す る 伝 本 と し て 以 下 の四点があげられる。. 〔一〇九九〕. A『承徳本古謡集』(承徳三年写、陽明文庫蔵). (. ). ). - 55 -. 11. 乙 女 》 の 一 歌 を 歌 い、 こ れ に 源 資 賢 が 優 美 に 唱 和 し た。 資 賢 の 歌 う 秘 説 に 対 し、 陪 従 で あ っ た 多 近 久、 好 方 ら が 耳 を そ ば だ て た と い う。「 秘 説 」 が 存 在 す る と い う こ と は、 既 に こ の 頃 に は 風 俗 歌 に 相 承 の 概 念 が 存 在 し た こ と を 意 味 す る。 ま た、 雅 楽 や 御 神 楽 な ど と 同 様、 風 俗 歌 に お い て も、 地 下 と 堂 上 と い う 二 つ のレベルで相承が行われていたことを想定する必要があるだろ う。 ま た 遅 く と も こ の 頃 に は「 風 俗( 歌 )」 が、 神 楽、 催 馬 楽 と 〔一一五〇~一二〇二〕. 並 立 す る 概 念 と し て 理 解 さ れ る よ う に な っ た ら し く、 先 引 の. →(影印)『古楽古歌謡集』(陽明叢書国書篇. →(翻刻)『歌謡集』上(日本古典全集) 「風俗歌拾遺」(岩波旧大系)( →(翻刻)『古代歌謡集』. 12. 『 梁 塵 秘 抄 口 伝 集 』 の ほ か、 守 覚 法 親 王『 北 院 御 室 御 集 』 に 見 ) 。 後 述 す る よ う に、 守 覚 法 親 王 は 多 近 久 か ら 風 俗 歌 十 四 首. 13. え る 詞 書 に も「 神 楽、 催 馬 楽、 風 俗 の 譜 」 と 並 列 さ れ て い る ( 10.
(4) B『東遊歌・風俗歌』(十二世紀写カ、鍋島報效会徴古館蔵) 高田与清『楽章類語鈔』 ( ) → →(翻刻)『古代歌謡集』「風俗歌」 →(真淵・宣長系統諸本) 群書類従本『風俗』 ( ). 阿良太 (也乎止女) 奈者布利 〇太乃之利者也之. 川久者祢 〇肥後風俗(之止宇太奈). 〇陸奥風俗(奈止利加者). 〇(見千乃久乃). (和加世奈乎) (見左布良比). (和礼乃見也). 天者乃風俗(毛加見加者). 須加无良 〇之奈乃 於保止利. →. 多賀也 . 〔一一八三〕. C 文治本『風俗古譜』(文治二年奥書、多家蔵本ほか). A『 承 徳 本 古 謡 集 』 は、 佐 佐 木 信 綱( 一 九 三 〇 ) ( )に よ っ. 以世比止 〇甲斐風俗(加比宇止乃). 師多乃宇良. 太末太礼 〇伊勢風俗(以世乃宇見). 常陸歌(比太千尓者). 末(加比加祢乃). 遊 歌、 風 俗 歌、 北 御 門・ 気 比 の 神 楽 歌 の 譜 を 載 せ る こ と か ら、. か ら も 貴 重 視 さ れ る。 音 楽 的 情 報 と し て は、 万 葉 仮 名 表 記 の 詞. し、 東 国 以 外 の 風 俗 歌( 肥 後 風 俗、 伊 勢 風 俗 ) を 含 む こ と な ど. 他 資 料 に 類 例 の な い 風 俗 歌 八 首(「 〇 」 で 示 す ) ( )を 掲 載. . 明叢書国書篇 第八輯)に影印と、土橋寛による解説が掲載され. 『承徳本古謡集』と仮称され、現在に至る。『古楽古歌謡集』(陽. い。 巻 尾 に「 承 徳 三 年 三 月 五 日 書 写 了 上 」 と の 奥 書 を 持 ち、 東. て 紹 介 さ れ た、 陽 明 文 庫 所 蔵 の 巻 子 本 で、 書 名 は 記 さ れ て い な. 17. 千々良女. 安川末千 〇安之者良太. ). 奈利多加之. 『日本歌謡集成』巻二「風俗譜」 →(翻刻) 16. D『風俗譜』(『三五要録』巻第十三、宮書[伏・八五九]). (. 「風俗歌秘譜」 (もりおか歴史文化館ほか) →『多家秘書』. 14. (. ) 。 風俗歌につい. す、 拍 子 皆 以 て 一 同 也 」 ( )と あ っ て、 原 資 料 に は よ り 多 く の. 風 俗 部 の 末 尾 に は「 風 俗 其 数 有 り と 雖 も 只 簡 要 を 抽 し て 書 写. 章の節目(旋律の節目か)に「一」が記されるのみである。. 19. て い る。 ま た、 歌 謡 研 究 会 に よ る 輪 読 の 成 果 が、「『 承 徳 本 歌 謡 集 』 注 釈( 前・ 後 編 )」 に ま と め ら れ て い る. て は 二 十 七 首 を 収 載 す る。 曲 名( 詞 章 冒 頭 句 ) を 以 下 に 一 覧 す る。. も用いられる拍節構造が等しかったことも示されている。. 曲 が 掲 載 さ れ て い た 可 能 性 が 高 い。 ま た、 い ず れ の 曲 に お い て. 20. 18. - 56 -. 15.
(5) 編 者、 書 写 者、 伝 承 者 は 不 明。 独 自 曲 は さ て お き、 そ の 他 の 曲 に つ い て は、 他 資 料 と の 比 較 を 通 じ て 分 析 を 行 う こ と が 望 ま. と 風 俗 歌 の 譜 で あ る。 二 〇 〇 八 年、 鍋 島 報 效 会 徴 古 館 で 発 見 さ. B『 東 遊 歌・ 風 俗 歌 』 は、 十 二 世 紀 の 書 写 と み ら れ る 東 遊 歌. 〇鴛鴦. 小由留木 〇玉垂. 乎津久波. (. ) 。 こ こ で は 仮 に 甲 群、 乙 群、. 〇常陸歌. 〇比太知宇太. 奈末不利 〇太末太礼. 丙群. 〇筑波山. 〇木見乎 越方. 安津末知. 荒田. 〇津久波山. 月面 〇大鳥. 乙群 〇玉垂. 丙群と分類する。. 譜を合写したものと思われる. れ、 飯 島 一 彦( 二 〇 〇 九、二 〇 一 二 ) に よ っ て 紹 介、 解 説 さ れ. しい。. て い る。 鍋 島 家 の 所 蔵 と な っ た 詳 細 な 経 緯 に つ い て は、 同 館 学. 甲群. ) 芸員の富田紘次の論考に詳説されている(二〇一二) ( 。. 之太乃浦 〇君乎置天. 物 館 所 蔵 の 天 治 本『 催 馬 楽 抄 』 に 酷 似 し て お り、 鍋 島 家 に 入. 菅牟良 〇大鳥. 知々良々. 陸奥. 小車. ) 。. 甲斐. (. 長らく風俗歌の最善本とされてきた『楽章類語鈔』所収「風. 我門 〇乎之高倍. 蔵 の 自 筆 書 入 本 を 本 居 宣 長 が 実 子 の 春 庭( 健 蔵 ) に 写 さ せ た (. な ど )。 群 書 類 従 本. も の の 系 統 が、 多 く 伝 本 と し て 残 っ て い る( 静 岡 県 立 中 央 図 ) 、 神宮文庫蔵本. 内 容 は、「 東 遊 歌 図 」、「 東 遊 」 と 題 す る 二 種 の 東 遊 歌 譜 の 後. 八乎止女. を 除 け ば 二 十 四 首 と な る。 既 に 飯 島 が 指 摘 し た 通 り、 三 種 類 の. 詞 章 の 類 似 す る 重 複 曲(「 〇 」 を 冠 す る、 傍 線 部 は 一 部 重 複 ). ぞ れ 十 二 首、 五 首、 十 七 首 に 分 け て 掲 載 さ れ、 の べ 三 十 四 首、. 彼乃行. 24. に、 風 俗 歌 の 譜 が 続 く。 風 俗 歌 の 譜 は 目 録、 本 文 と も に、 そ れ. 25. ). 加比加祢. (. 書館大井文庫蔵本. 奈利高之. 伊勢人. 常陸 〇(同). れる. る 以 前 に は、 三 本 と も 同 じ 場 所 で 所 蔵 さ れ て い た も の と 思 わ. 装 丁 は 、 同 館 所 蔵 の 『 東 遊 歌 ・ 神 楽 歌 』、 お よ び 東 京 国 立 博. 26. 「風俗」、賀茂真淵『風俗歌考』 ( )もこの系統と考えられる。. 23. - 57 -. 21. 俗 」 の 祖 本 と み ら れ る ほ か 、同 系 統 の 本 文 と し て 、賀 茂 真 淵 所. 22.
(6) 三 種 類 の 譜 の 違 い に つ い て は、 収 載 曲 や 詞 章、 詞 章 表 記 に 用. 〔一二〇八〕. 〔一二五六~一三四四〕. (. 〔一二八九〕. 〔一二一四~九五〕. ) 、 正応二年久資による. 〔一八〇四〕. 久 識 語、 承 元 二 年 萬 歳 磨 書 写 奥 書. 〔一七〇四〕. に 続 き、 文 化 元 年 多 忠 得 書 写 奥 書 が あ. 久春への伝授奥書. ). い ら れ る 万 葉 仮 名 の 字 母 の ほ か、 記 譜 体 系 の 差 異 を 見 出 す こ と. 〔一八四三~一九一五〕. 明 治 十 三 年 山 内 豊 章 書 写 奥 書 が あ る。『 日 本 歌 謡 集 成 』 巻 二 所. る。国会図書館蔵本には、久資奥書の後に宝永元年源朝臣識語、. 伝 来 等 に つ い て は、 夙 に 臼 田 甚 五 郎( 一 九 四 二 ) ( )の 論 考. 甚五郎架蔵本もこれと同系統の本と思われる。. 収 の「 風 俗 」、 お よ び 国 会 図 書 館 蔵 本( 斑 山 文 庫 旧 蔵 本 )、 臼 田. 〔一八八〇〕. が で き る。 こ こ で は、 譜 に 用 い ら れ て い る 装 飾 音 記 号 に 注 目 し. 意 )、 い わ ゆ る 産 み 字( 小 母 音 字 ) と し て「 安 」 が 一 か 所 記 さ 乙 群 に は、 装 飾 音 記 号 が 用 い ら れ て い な い。《 大 鳥 》 を 除 く. れている。 四 首 に は、 詞 章 の 節 目( 旋 律 の 節 目 か ) に 一 字 程 度 の 空 白 が 用 いられている。 丙 群 に は、 い わ ゆ る 産 み 字( 小 母 音 字 ) と 二 ノ 字 点 が 多 用 さ れ、 ま た「 引 」 も 用 い ら れ る。 朱 に よ る「 百 」( 百 拍 子 ) は な い も の の、 十 一 世 紀 の 写 と み ら れ る 鍋 島 家 本『 催 馬 楽 』、『 東 遊. が詳しい。本奥書には「本記云」として以下のようにある。. 文 治 二 年 二 月 五 日、 に わ し の 御 む ろ の お ほ せ に よ り て、 ふ. まいりてくはしく御さたあり。ひしひとつものこることなし. ぞ く 十 四 す、 さ な か ら さ つ け た て ま つ り を は ぬ。 た ひ. 右近将監多近久 在判. 〔一一五〇~一二〇二〕. 多 近 久 か ら 「 に わ し の 御 室 」、 す な わ ち 守 覚 法 親 王 に 、 歌. 〔一一二四~一二一三〕. 『 承 徳 本 古 謡 集 』 同 様、 資 料 の 由 来 に つ い て の 情 報 は 少 な い. ) 。. 十 四 首 が 皆 伝 さ れ た こ と が 記 さ れ て い る。 多 家 に お け る 風 俗 (. が、 記 譜 体 系 の 異 な る 三 譜 を 並 列 し て 比 較 す る こ と が で き、 そ. ) 。 も り お か 歴 史 文 化 館 蔵 本、 豊 田 市 中 央 図 書 館. る. 歌 の 伝 承 に つ い て は『 吉 野 楽 書 』 に、 以 下 の よ う な 系 図 が 載. 歌・神楽歌』の採物歌、前張歌の記譜体系と近似している。. 30. 甲 群 に は、「 引 」、 二 ノ 字 点 が 用 い ら れ る ほ か、「 火 」( 火 急 の. たい。. (. 28 . . . . . . 堀河院──近方─┬─成方──近久 │ (節近ヵ) │ ├─近久──時秋──久行 │ ( 好 方 ) ( 好 節 ) ( 好 氏 ) │ └─能方──能時──能氏. 31. - 58 -. 29. の意味で貴重な資料といえる。 〔一一八六〕. C 文 治 本『 風 俗 古 譜 』 は、 文 治 二 年 の 本 奥 書 を も つ 全 十 四 首の風俗歌の声律譜(博士)である。曲目は次項D参照。 (. 伝 本 と し て は、 多 家 秘 蔵 の『 風 俗 古 譜 』 が 存 在 す る も、 本 稿 では未確認. 稿 で は も り お か 歴 史 文 化 館 蔵 本 を 参 照 す る )。 文 治 二 年 多 近. 蔵 本 に『 多 家 秘 書 』 と し て「 風 俗 歌 秘 譜 」 が 収 載 さ れ る( 本. 27.
(7) 〔一一三〇~一二一一〕. 説 が 記 さ れ て い る。《 難 波 乃 都 布 良 江 》 に は、「 多 近 久 云 」 と し. 〔~一一六六〕. て、 春 秋 で 詞 章 を 歌 い 替 え る 場 合 の 普 通 様 の 説 と 最 秘 説 と が 記. 〔在位一〇八七~一一〇七〕 〔一〇八八~一一五二〕. 堀 河 天 皇 か ら 多 近 方、 近 方 か ら 成 方、 近 久、 好 方 の 三 流 に 分 されている. ) 。 ま た《 甲 斐 加 祢 》 の 近 久 説 に は「 好 方 説、《 甲. ) 。 風俗歌伝承の. 斐 加 祢 》《 伊 勢 人 》 拍 子 を 打 た ざ る こ と 甚 だ な り。 其 歌、 近 方、. 点 を 記 す。 博 士 に は す べ て 笛 の 孔 名 が 付 さ れ て お り、 全 曲 の 終. 一 つ な ら 清 音、 二 つ な ら 濁 音 ) と 博 士、 詞 章 の 区 切 れ に も 朱 圏. よ り 出 づ る の 間、 近 久 の 処 全 く 然 ら ず。 毎 度 初 句 よ り 唱 ふ 所 な. 裏 書 と す る ) と し て「 好 方 説、 第 二 反 以 後、 第 二 句「 ハ ネ ニ 」. 裏 書( 国 会 図 書 館 蔵 本、『 日 本 歌 謡 集 成 』 本 で は《 伊 勢 人 》 の. に も 拍 子 が 記 さ れ て い た こ と が 記 さ れ る。 同 様 に、《 大 鳥 》 の. は 拍 子 を 打 た な い が、 近 久、 成 方 は 拍 子 を 打 つ こ と、「 古 譜 」. あ る。《 甲 斐 加 祢 》 と《 伊 勢 人 》 の 二 曲 に つ い て、 好 方 の 説 で. (. 濫觴を 堀 河 天 皇 に 求 め る あ り か た は 、 御 神 楽 秘 曲 の 相 承 と も 重. か れ、 近 久 は ま た 成 方 の 説 を も 受 け て い る. 成 方、 慥 か に 打 つ。 古 譜 皆 拍 子 を 着 く。 実 是 明 白 な り 」 ( )と. (. な り あ う も の で、 あ る い は 家 説 を 権 威 付 け る た め の 付 会 と み (. ) 。. る べ き か。 な お 奥 書 の 久 資、 久 春 は 近 久 の 末 流、 忠 得 は 嫡 流 系である. れたものと思われる。また、随所に音高の上下に関する「突上」 「高上」「針上」「汰下」「重下」「突下」など、緩急に関する「小. る 限 り で は、 近 久 の 説 を 重 視 し て い る よ う に 思 わ れ る。 近 久 末. り と 云 々」 ( )と あ る。 裏 書 の 筆 者 は 不 明 だ が、 以 上 を ふ ま え. 流の久資、久春あたりの書入であろうか。. ま た《 伊 勢 人 》 の 裏 書 と し て、 信 西 の 説、「 此 歌 卅 一 字 た り。. 此 曲 を 以 っ て 本 と 為 す。 何 れ の 和 歌 と 雖 も 随 時 に 唱 ふ。 即 ち 是. 通 憲 入 道 の 語 る 所 な り と 云 々」 ( )と あ る。 三 十 一 字 の 短 歌 形. ど 対 応 し て お ら ず、 例 え ば『 催 馬 楽 略 譜 』 の 博 士 の 記 譜 法 と は. な お、 博 士 の 角 度 は 笛 の 孔 名 に よ っ て 示 さ れ る 音 高 と ほ と ん. に 合 わ せ て 歌 う こ と が で き る と い う の で あ る。 注 目 す べ き 説 で. 式 の 歌 は《 伊 勢 人 》 を 本 体 と し、 ど の よ う な 和 歌 で も、 こ の 曲. て は、 文 治 二 年 当 時 の も の と 認 め る べ き か ど う か、 慎 重 な 検 討. 〔一七一四〕. (. で、 詞 章 の 誤 脱. ). が 散 見 さ れ る も の の、 風 俗 歌 の 旋 律 や 拍 節 構 造 を 知 る た め の. 伏 見 宮 家 旧 蔵 の 琵 琶 譜 で あ る。 正 徳 四 年 写. 38. を要する。 〔一一〇六~六〇〕. そ の ほ か、《 難 波 乃 都 布 良 江 》《 甲 斐 加 祢 》《 伊 勢 人 》《 大 鳥 》 に は、 原 本 裏 書 の 説 と し て、 近 久、 好 方、 通 憲 入 道( 信 西 ) の. D『 風 俗 譜 』(『 三 五 要 録 』 巻 第 十 三 ) は、 宮 内 庁 書 陵 部 蔵、. ある。. も用いられる。. を示す小拍子点「・」が用いられ、《荒田》《八乙女》には「百」. 《 伊 勢 人 》《 大 鳥 》《 八 乙 女 》《 我 門 》《 菅 村 》《 常 陸 歌 》 に は 拍 節. の 指 示 が 傍 書 さ れ る。《 難 波 乃 都 布 良 江 》《 荒 田 》《 甲 斐 加 祢 》. 火 」「 引 」「 節 ヲ 縮 テ 早 歌 」「 短 歌 」 な ど の ほ か、「 放 歌 音 」 な ど. 36. 止 音 が「 亍 」 と な っ て い る こ と か ら、 平 調( 終 止 音 e ) で 歌 わ. 譜 は、 片 仮 名 で 詞 章 を 記 し、 詞 章 の 左 傍 に 清 濁 点( 朱 圏 点、. 35. 34. 32. 明 ら か に 異 な っ て い る。 旋 律 は と も か く、 博 士 そ の も の に つ い. 37. - 59 -. 33.
(8) 井 基 清 『 風 俗 訳 譜 』 ( )以来、ほとんど顧みられていない。. 史 料 と し て、 貴 重 な 資 料 で あ る と い え る。 し か し な が ら、 山. 筑波山 ●荒田. 知々良々 東道. 難波乃都布良江 玉垂. 鳴高[又号大宮]. 文治本『風俗古譜』. 伊勢人 菅村. 筑波山 甲斐加祢. 知々良々 東道. 難波乃都布良江 玉垂. 鳴高[又号大宮]. 『風俗譜』 ( 『三五要録』巻第十三). 〔一二一八〕. 第 一 紙 の 冒 頭 に、「 太 政 大 臣 従 一 位 藤 原 朝 臣 師 長 撰 / 風 俗 〔一一六六~一二三七〕. レ. 二. 譜[ 琵 琶 風 香 調 ]」 と あ る。 本 奥 書 に は、 建 保 六 年 三 月 三 日、 藤 原 孝 道 の識語がある。 三五要録巻第十三. レ. 此 譜 本 妙 音 院 御 作 十 一 首 也、 而 所 レ残 三 首[ 玉 垂、 東 道、 常陸歌]、相逢 多好方 作譜了、更十四首無 所 残受 師説 一. ●八乙女. ●大鳥. 常陸歌 ●荒田. ●八乙女. ●我門. 四 首(「 ● 」 を 冠 す る ) で、『 風 俗 譜 』 で は 末 尾 の 四 首 に あ た. る。 配 列 が 異 な る の は、《 荒 田 》《 大 鳥 》《 八 乙 女 》《 我 門 》 の. 曲 の 配 列 は 異 な る も の の、 掲 載 曲 は 曲 名 表 記 ま で 一 致 し て い. 菅村 常陸歌. ●我門. 伊勢人 ●大鳥. 甲斐加祢. 二. 畢、奥書在 二別譜 一[本譜]、令 レ書 二写播磨局 一与 レ之、. 一. 于時建保六年[丙寅]三月三日 木工権頭正五位下藤原朝臣孝道 判 (一一三八~一一九二). 藤 原 孝 道 が、 琵 琶 の 師 で あ る 藤 原 師 長 の 作 譜 し た 風 俗 歌 十 一 (一一三〇~一二一一). 首 に、 多 好 方 に 会 っ て 作 譜 し た《 玉 垂 》《 東 道 》《 常 陸 歌 》 の 三 首 を 加 え、 こ れ を『 三 五 要 録 』 の 巻 第 十 三 と し た も の で あ る。 計 十 四 首 を も っ て 師 説 皆 伝 と し、 娘 の 播 磨 局 に 書 写 さ せ 与 え た 十四首をもって皆伝とするありかたは、文治本の奥書に記され. という。 た多近久の記録と一致している。曲目を比較すると以下の通り。. る。 後 述 す る よ う に、『 風 俗 譜 』 で は《 荒 田 》 以 下 四 首 に 拍 子. 記 号 で あ る「 百 」「・」( 小 拍 子 点 ) が 記 さ れ て お り、 そ の 有 無. に よ っ て 配 列 さ れ た も の と 考 え ら れ る。 な お、 既 に 臼 田 甚 五 郎. ( 一 九 四 二 ) に よ っ て、 文 治 本 の 十 四 首 と『 體 源 鈔 』『 拾 芥 抄 』. - 60 -. 39.
(9) 『 音 律 具 類 抄 』 の 目 録 の 共 通 性 が 指 摘 さ れ て い る が 、曲 の 配 列 順 の配列は、むしろ『風俗譜』のそれに等しい。. ) 拾 芥 抄 』『 音 律 具 類 抄 』 ( も 含 め て 考 え れ ば、『 體 源 鈔 』 ( 『. 譜 は、『 三 五 要 録 』 巻 第 三、 巻 第 四 の 催 馬 楽 と 同 じ 形 式 で 記 さ れ て お り、 行 の 中 央 に 琵 琶 の 絃 名 譜、 譜 字 の 間 に 楽 句 点 が お (. ). ) 、 譜 字 の 右 側 に「 百 」、. か れ、 左 側 に カ タ カ ナ で 詞 章 が 傍 書 さ れ る。《 荒 田 》 以 下 四 首 に は、 曲 名 注 記 に 拍 子 数 が 記 載 さ れ. 41. 門 》 は 三 度 拍 子( 四 拍 周 期 ) と な っ て い る (. ) 。 た だ し、 拍 子. 詞 章 を 有 し な い 風 俗 歌 の 古 楽 譜 と し て、 宮 内 庁 書 陵 部 蔵 伏 見. 宮 家 旧 蔵『 琵 琶 諸 調 子 譜 』( 伏・ 二 〇 七 二 )、 お よ び 安 倍 家 蔵 『龍笛譜』(基政笛譜)がある。. E『 琵 琶 諸 調 子 譜 』( 伏・ 二 〇 七 二 ) は、 二 〇 一 三 年 に 補 修. が 行 わ れ た も の で、 同 装 の『 琵 琶 譜 』(『 南 宮 琵 琶 譜 』 と『 琵 琶. 諸 調 子 品 』 の 合 写 本、 伏・ 二 〇 七 一 ) と 同 じ く 十 一 世 紀 の 写 本. と さ れ る。 記 譜 体 系 は『 三 五 要 録 』 よ り も 古 い 様 式 が 用 い ら れ. ) 現存する風俗歌の譜とし て い る( 根 本 千 聡、 二 〇 一 六 ) ( 。. 風 俗 歌 は「 風 香 調 」( 調 絃 を 風 香 調 と す る 黄 鐘 調 曲、 主 音 a ). ては最古のものと考えられる。. の唐楽曲六曲の譜の後に、同じ調絃でもって《其駒》と《大鳥》. な お、 先 述 の 通 り、 文 治 本 の 裏 書 説 で は 近 久 と 好 方 の 説 が 対. また『教訓抄』巻第六「薪宴」項には以下のようにある。. に は「 本 風 俗 云 々」 と あ り、「 風 俗 」 に 由 来 す る 歌 と さ れ る。. 《 其 駒 》 は 神 楽 の 秘 曲 と し て 知 ら れ る が、『 東 遊 歌・ 神 楽 歌 』. の譜が記されている。. 立 し て い た が、『 風 俗 譜 』 で は、 好 方 の 説 の ご と く《 甲 斐 加 祢 》 の 位 置 の 右 側 に「 第 二 反 以 後 反 付 」 と 傍 記 さ れ、 こ れ も「 第 二 反以後自第二句ハネニ出之間」とする好方の説に一致している。 総 じ て、『 風 俗 譜 』 収 載 の 十 四 首 は 多 家 流 風 俗 歌 と の 関 連 が 深 く、なかでも好方の流との共通点が多いといえる。. 也。《 大 鳥 》 ヲ ウ タ フ。 笛、 笙 笛 ヲ 付 ク。 太 鼓 ヲ 打。 東 御. は 東 金 堂 ノ 薪 ト 名 ク。 先 氷 室 山 ニ 集 会、 上 分 ヲ 進 ズ ル 作 法. 付 二笙 笛 一也。 近 来 ハ 歌 絶 テ、 楽 許 リ 侍 リ シ。( 中 略 ) 四 日. 門 ヨ リ 入 ル。 此 間《 其 駒 》 ヲ ウ タ フ。 ソ レ ニ 狛 笛 ヲ 吹 レ之、. リ。 先 河 上 ニ 集 会 シ テ、 ソ レ ヨ リ 薪 ヲ 前 ト シ テ 列 参、 北 御. 興 福 寺 東 西 金 堂 ニ 有 レ之。 二 月 三 日 ハ 西 金 堂 ノ 薪 ト 名 ケ タ. 《伊勢人》に拍子記号が打たれていない。《大鳥》では「ハネニ」. 調は概して黄鐘調(主音a)に用いられる調絃法である。. は、 譜 の 冒 頭 に 記 さ れ る 通 り「 琵 琶 風 香 調 」 で あ り、 琵 琶 風 香. よ っ て、 拍 節 的 に 奏 さ れ て い た こ と が 理 解 さ れ る。 琵 琶 の 調 絃. 記 号 の 記 載 が な い 曲 に つ い て も、 譜 字 の 数 と 楽 句 点 の 間 隔 に. 43. て お り、《 荒 田 》、《 八 乙 女 》 は 五 拍 子( 八 拍 周 期 )、《 大 鳥 》《 我. 「・」( 小 拍 子 点 ) が 傍 書 さ れ る。 拍 子 の 周 期 は 催 馬 楽 と 共 通 し. 42. 三 、 風 俗 譜の 伝 本 ( 詞 章を 有し な い も の ). - 61 -. 44. 40.
(10) (. ). 資 料 の 詞 章 比 較 は 末 尾 の 資 料 を 参 照 さ れ た い。 既 に 指 摘 さ れ て. ま ず は 詞 章 を 有 す る A か ら D の 四 資 料 を 比 較 し て み よ う。 各. いての分析を試みたい。. いるように. 門ヨリ入、門前ニシテ大鳥ヲ取作法ヲシテ舞也 こ れ に よ れ ば、 興 福 寺 東 西 金 堂 の 薪 宴 に お い て、 第 一 日 目 に は. す る と 二 種 に 分 け ら れ る。 こ こ で は 例 と し て、 B『 東 遊 歌・ 風. (長型). (. ). (. ). ) 、 《 大 鳥 》 の 詞 章 は 諸 本 間 で 異 同 が 多 く、 大 別. 西金堂で《其駒》が、第二日目には《大鳥》が歌われたという。. 俗歌』(乙・丙群)、A『承徳本古謡集』の詞章を並列してみる。. (. 《 其 駒 》 に は、 高 麗 笛 と 笙 と い う 変 則 的 な 編 成 が 用 い ら れ、《 大. 詞章からは拍子記号などを省き、漢字、片仮名をあてる。. ) 。 ま た、 南. 鳥 》 は 龍 笛 と 笙、 太 鼓 の 編 成 で、 大 鳥 を 捕 る 動 作 を 模 し た 舞 が (. (短型). 舞われたという。琵琶についての言及はないが、 《其駒》と《大 鳥》が組となって奏される例として注目される 都における風俗歌の伝承についても注意される。 〔一八一二〕. 〔一〇七九~一一三八〕. (乙・丙群) A『承徳本古謡集』 B『東遊歌 風 ・ 俗歌』 大鳥の羽にヤレナ 大鳥の羽にヤレナヤ. F『 龍 笛 譜 』( 安 倍 家 蔵、 文 化 九 年 写 ) は「 基 政 笛 譜 」 と も. 霜降れりヤレナ. 霜降れりヤレナ. 大神景賢以下四代の伝授譜として機能したものである(遠藤徹、. 称 さ れ る 横 笛 譜 で、 大 神 基 政 撰、 後 人 に よ る 補 筆 を 重 ね な が ら. 誰かさ言ふ 千鳥やさ言ふ. 鸚やさ言ふ. あらじあらじ. 千鳥も言はじ. 鸚も言はじ. 蒼鷺ぞ京より来てさ言そ. 比較的詞章が短いのが、Bの乙群、丙群である。大意は、 「大. 蒼鷺ぞ京より来てさ言ふ. 鸚ぞさ言ふ. ) 唐 楽、 高 麗 楽、 東 遊 作 法、 神 楽、 催 馬 楽 の 後 一九九六) ( 。. に風俗歌《大鳥》の譜を載せる。 譜 は 横 笛 の 孔 名 譜 で、《 大 鳥 》 の 終 止 音 は「 亍 」、 す な わ ち 平 調( 主 音 e ) の 曲 と し て 記 さ れ て い る。 文 治 本 と『 龍 笛 譜 』 で は 平 調、『 風 俗 譜 』 と『 琵 琶 諸 調 子 譜 』 で は 黄 鐘 調( 主 音 a ) であり、それぞれ異なる調で記譜されていることになる。. 四 、 諸 譜を 通じ た 分 析 例 ― ― 《 大 鳥 》. 50. 48. 鳥 の 羽 に 霜 が 降 り て い る。 誰 が そ う 言 う の か、 千 鳥 が そ う 言 う. - 62 -. 45. 以 上 み て き た A か ら F、 六 点 の 古 楽 譜 を 用 い、《 大 鳥 》 に つ. 49. 46. 誰かさ言ふ 千鳥ぞさ言ふ. 47.
(11) の だ、 鸚( か や ぐ き ) が そ う 言 う の だ、 蒼 鷺( み と さ ぎ ) が 京 から来てそう言うのだ」となる。乙丙両群の詞章は全く同一で、 万 葉 仮 名 の 字 母 が 一 部 異 な る の み で あ る。 こ れ を「 短 型 」 と す る。 対 す る「 長 型 」 は、 A、 C 文 治 本『 風 俗 古 譜 』、 D『 風 俗 譜 』. タレカサイフ チトリソサイフン. オホトリノ ハネニヤレ ナム. フレーズⅠ. カヤク キソサイフ. シモフレリヤレ ナム. フレーズⅡ. ヨリキテサイハンシ. カヤク キモイハシム. (ミトサキモ京). アラシヤアラシチトリモイハシ. ナ ム 」 を フ レ ー ズ Ⅱ と す る と、 そ れ を 三 度 繰 り 返 す 形 に な っ て. 「 オ ホ ト リ ノ ハ ネ ニ ヤ レ ナ ム 」 を フ レ ー ズ Ⅰ、「 シ モ フ レ リ ヤ レ. の か 」 と 問 い、 後 半 で「 あ ら じ あ ら じ 」 と 否 定、「 千 鳥 も 鸚 も. で あ る。 A で は、 前 半 で「 千 鳥 が そ う 言 う の か、 鸚 が そ う 言 う 言 わ な い、 蒼 鷺 こ そ が 京 か ら 来 て 言 う の だ 」 と い う 内 容 で、 最. い る。 続 け て「 ミ ト サ キ モ 京 」 ま で は Ⅰ、 Ⅱ の い ず れ に も 属 さ. も 意 味 が 解 し や す い。 C、 D で は、 前 半 が「 千 鳥 ぞ さ 言 ふ、 鸚. な い 非 定 型 旋 律 で、「 ヨ リ キ テ サ イ ハ ン シ 」 か ら Ⅱ の フ レ ー ズ. あ た る の か 判 断 で き な い。 し か し 楽 譜 を 対 照 し て み る と、 C、. て い な い。 そ の た め、 一 見 し た 限 り で は 短 型 と 長 型 の い ず れ に. 一 方、 E『 琵 琶 諸 調 子 譜 』、 F『 龍 笛 譜 』 に は 詞 章 が 記 さ れ. をなぞって終止する。. ぞ さ 言 ふ 」、 後 半 が「 蒼 鷺 も 京 よ り 来 て さ 言 は じ 」 と な っ て お (. ) 。. 六点の楽譜のうち、旋律(音高)を記した楽譜は、C、D、E、. Dの基本旋律と概ね対応関係にあることがわかる。先ほど同様、. - 63 -. り、 前 半 と 後 半 の 内 容 が 食 い 違 っ て い る が、 こ の 形 で 周 知 さ れ ていた可能性も十分考えられる. Fの四点である。C文治本『風俗古譜』は博士による声律譜で、. 共通する旋律を並べて図示すれば以下のようになる。. (非定型旋律). フレーズⅡ. D『 風 俗 譜 』 は 琵 琶 譜 で あ る。 D の 琵 琶 譜 は 音 高 や リ ズ ム ま で 書 さ れ た 笛 の 孔 名 を 頼 り に 旋 律 を 拾 っ て い く。 す る と、 C、 D の 基 本 旋 律、 お よ び 拍 子 の 位 置 は、 概 ね 一 致 し て い る こ と が 判 明 す る( た だ し 調 子 は 四 度 異 な る )。 ま た、 C の 詞 章( 長 型 ) を 共 通 す る 旋 律 ご と に 分 け る と、 全 体 は 大 別 し て 二 つ の フ レ ー ズ(Ⅰ、Ⅱ)の繰り返しによって構成されていることがわかる。 これを並列すると、以下のように示される。. フレーズⅠ. 正 確 に 解 読 で き る が、 C の 博 士 の 解 読 は 困 難 な た め、 博 士 に 傍. 以 上 の 詞 章 の 違 い は、 旋 律 に ど う 反 映 し て い る の だ ろ う か。. 51.
(12) E、 F の い ず れ も、 フ レ ー ズ Ⅰ、 Ⅱ を 二 度 繰 り 返 し(「 二 反 」 と 注 記 さ れ る )、 非 定 型 旋 律 を 挟 み、 フ レ ー ズ Ⅱ に 戻 っ て 終 止. 西 外 国 語 大 学 ) に お け る 口 頭 発 表 に 基 づ き、 斧 鉞 を 加 え た も の. 付 記 な お 本 稿 は、 令 和 元 年 度 春 季 大 会( 五 月 二 十 六 日、 於 関. 礼申し上げる。また本稿の研究成果はJSPS科研費「風俗歌・. で あ る。 発 表 に 際 し て 貴 重 な ご 教 示 を 賜 っ た 先 生 方 に 心 よ り 御. ま た、 C、 D の 詞 章 と 対 照 す る こ と で、 最 初 の 二 行 が「 大 鳥. 東遊歌を中心とする平安朝宮廷歌謡のテキスト生成に関する基. する形となっていることがわかる。. 礎 的 研 究 」( 課 題 番 号 1 8 K 0 0 3 2 4、 代 表 者 飯 島 一 彦、 分. 参照古楽譜資料一覧. 担者 城崎陽子、本塚亘)の助成を受けたものある。. の 羽 に 」 か ら「 鸚 ぞ さ 言 ふ 」 ま で に 相 当 し、 最 後 の 一 行 は「 蒼 結 果 、C 、D 、E 、F は 、フ レ ー ズ 構 成 に 差 異 が あ る も の の 、. 鷺ぞ京より来てさ言ふ」に相当するものと推定できる。. ・『承徳本古謡集』陽明叢書国書篇 第八輯『古楽古歌謡集』(思. 基 本 旋 律 は 概 ね 共 通 し て い る こ と が 明 ら か に な っ た。 ま た、 曲 ら 見 て も、 E『 琵 琶 諸 調 子 譜 』、 F『 龍 笛 譜 』 の《 大 鳥 》 は、. ・『龍笛譜』安倍家蔵、上野学園大学日本音楽史研究所蔵紙焼本. ・『琵琶諸調子譜』宮内庁書陵部蔵伏見宮家旧蔵[伏・二〇七二]. 蔵[伏・八五九]. ・『風俗譜』『三五要録』巻第十三、宮内庁書陵部蔵伏見宮家旧. 歌秘譜」. 「風俗歌秘譜」、豊田市中央図書館蔵『多家秘書』所収「風俗. ・文 治 本 『 風 俗 古 譜 』 も り お か 歴 史 文 化 館 蔵 『 多 家 秘 書 』 所 収. ・『東遊歌・風俗歌』鍋島報效会徴古館蔵. ・『東遊歌・神楽歌』鍋島報效会徴古館蔵. 文閣出版、一九七八). の 長 さ か ら み て も、 長 型( C、 D ) の フ レ ー ズ 構 成 と の 対 応 か B『 東 遊 歌・ 風 俗 歌 』 と 同 じ 短 型 に 相 当 す る も の で あ る こ と が わかった。. むすびに 以 上、 風 俗 歌 の 古 楽 譜 六 点 に つ い て 検 討 を 行 い、 例 と し て れ た 家 説 の 違 い や、 歌 の フ レ ー ズ 構 成 な ど に よ っ て 生 じ う る も. 《 大 鳥 》 の 旋 律 分 析 を 試 み た。 風 俗 歌 の 詞 章 の 異 同 は、 伝 承 さ のである。今後、風俗歌の詞章について考証するにあたっては、 古 楽 譜 に 示 さ れ た 歌 の 旋 律 に、 も っ と 耳 を 傾 け る こ と が 求 め ら れよう。. - 64 -.
(13) 【資料】《大鳥》詞章比較 波祢仁也 波祢仁也 ハネニヤ ハネニヤ . 安〻〻. . . . 以〻〻. 安〻. 於〻. 宇〻. . 安〻. 一. 一. 一. 一. 一. 一. 一. 以〻〻. 一. 一. 生ふるとみ草の花」と歌ひたる、このたびは今少しをかし. (3) 「まいて臨時の祭の調楽などは、いみじうをかし。(中略) なほあけながら帰るを待つに、君たちの声にて、「荒田に. 七( 明 治 図 書 出 版、 ( 2) 『 西 宮 記 』 第 二、 新 訂 増 補 故 実 叢 書 一九五二)。. りあっている(至文堂、一九八二)。. 圏」は、日本歌謡全体を包括する「歌謡圏」の概念と重な. Ⅲ』序章第三節)なども指摘しており、結果として「風俗. 的歌謡との間に対流循環が行われていること(『歌謡圏史. 謡圏史Ⅱ』結語第二節)、生活的地盤的歌謡と芸術的上層. 一 一 アラシ アラシ チトリモ イハシム カヤクキモ イハシム ミ トサ キモ 京 ヨリキテ サイハンシ. 安〻〻. 之毛 不 礼奈 礼利 也 礼奈 太礼加佐伊不 知止利曽 佐伊不 加 也 久支 曽 佐伊不 レナム シモ フレリ ヤ レナム タレカサイフ チドリゾ サイフ カ ヤ グキ ゾ サイフ レナム 一 シモ フレリ ヤ レナム タレカサイフ チトリソ サイフン 一 カ ヤ クキ ソ サイフン. 一 一 一 一 一 一 一 一 A 於保止利乃 一 以布 者称尓也 礼泰 也之无 布礼利 也 礼名 多礼加左以布 千止利也 左以布 加 也 久支 也 左 礼名 之毛 不礼利 也 礼名 太礼加佐伊不 知止利曽 佐伊不 加 也 久支 曽 佐伊不. B乙 於保止利乃 B丙 於保止利乃 C オヲドリノ D オホトリノ. A 安良之 〻〻〻 千止利毛 以者之 加也久支毛 以者之 見 止左 支乃 京 与利支天 左以曽 B乙 ―――――――――――――――――――――――――――――― 見 止佐 支曽 京 与利支天 佐伊布 B丙 ―――――――――――――――――――――――――――――― 見 以〻〻 止佐 安〻 支曽 京 与利支天 佐伊不 一 C アラジヤアラジ チドリモ イハジム カヤグキモ イハジム ミ トサ ギモ キヤウヨリキテ サイハ ジ D. 注 ( 1) 管 見 の か ぎ り、 志 田 延 義 に よ る「 風 俗 圏 」 の 定 義 は 確 認 できないが、『歌謡圏史Ⅰ』第二篇第一節「風俗圏の諸問 題」では、『古今和歌集』巻第二十「大歌所御歌」を手が かりとし、「風俗」(地方歌謡)の「神事歌謡への上昇、神. 楽」「風俗」を「風俗的歌謡群」と称し、その成立過程を. きに――」(『枕草子』「内裏の局は」段、新日本古典文学. 宴歌謡の創作歌化する過程、神宴歌謡よりの遊宴歌謡の分. 中 心 に 論 じ て い る。 た だ し、 日 本 伝 承 歌 謡 の「 風 俗 的 性. 出 」 な ど を 経 て 発 生 し た「 神 楽 歌 」「 東 遊 び の 歌 」「 催 馬. 格」が主要歌謡形態群形成の基盤となっていること(『歌. - 65 -.
(14) 大系 二五、岩波文庫、一九九一)。 ( 4) ( 世 継 )「 こ の 殿( 源 雅 信 ) こ そ、「 荒 田 に 生 ふ る 」 を ば、 なべてのやうには謡ひ変へさせたまひけれ。一条の院の御 時、臨時の祭りの御前のこと果てて、上達部達の物見に出 でたまひしに、外記の隅のほど過ぎさせたまふとて、わざ とはなく、口ずさみのやうに謡はせたまひしが、なかなか 優におぼえはべりし。「富草の花、手に摘み入れて、宮へ ま ゐ ら む 」 の ほ ど を、 例 に は 変 は り た る や う に う け た ま は り し か ば、 遠 き ほ ど に、 老 の 僻 耳 に こ そ は と 思 ひ た ま へ し を、 こ の 按 察 大 納 言 殿( 公 任 ) も し か の た ま は せ け る」(『大鏡』「道長」(雑々物語)、新編日本古典文学全集. (. ) (和礼乃見也)、(和加世奈乎)、《見左布良比》および《天. 唆に富み、後学者必見の内容となっている。. 諸資料との比較・対校作業に裏付けられた語釈・考察は示. ) 歌謡研究会「『承徳本古謡集』注釈 前編」(『歌謡 研究と資 料』六、一九九三)、「(同)後編」(『(同)』八、二〇〇〇)。. 。 ) 『歌謡集』 上 日本古典全集(日本古典全集刊行会、一九三四) 。 ) 『古代歌謡集』日本古典文学大系 三(岩波書店、一九五七) )『楽章類語鈔』日本歌謡集成 二(東京堂出版、一九四二)。 。 ) 『風俗』群書類従第十五輯(続群書類従完成会、一九三二) ) 『風俗譜』日本歌謡集成 巻二(春秋社、一九二九)。 ) 佐 佐 木 信 綱「 承 徳 本 古 謡 集 に 就 い て 」(『 文 芸 』 京 都 文 学 会、一九三〇)。. 会、一九三三)。. 也」とある(『體源鈔』日本古典全集、日本古典全集刊行. ) 『體源鈔』十ノ下「風俗事」に、「風俗ハ古人ハ戯言ノ口ス サヒノヤウニソ歌ヒシ、今世近方ヨリシタヽカニナリタル. 第十五輯、続群書類従完成会、一九三一). て、おしさもひとかたならで」(『北院御室御集』群書類従. のたから、此道のかゞみかなと、ためしなく見ゆるにつけ. たらぬくまなく、くらからずしたゝめをきたるさま末の世. 譜、神楽、催馬楽、風俗の譜ども、又声明法則までも、い. (9) 『玉葉』第一(国書刊行会、一九〇六) ) 「ありし世にかきをきたりし文どもなどこそはかなきかた み と も な る べ け れ と 思 ひ て、 と り よ せ て 見 れ ば、 横 笛 の (. (. (. (. ( 5) 『 源 氏 物 語 』 新 編 日 本 古 典 文 学 全 集 一九九四~一九九八)。. (. 三四、小学館、一九九六)。. (6)『源氏物語』には「ただ梅の花のごと」とあるが、すぐ後 の 大 輔 命 婦 の 発 話 に「 掻 練 好 め る 鼻 の 色 あ ひ や 見 え つ ら. 二 〇 ~ 二 五( 小 学 館、. む」とあって、『政事要略』巻第六十七に「衛門府風俗歌」. (. (. (. (. として記される「多々良女乃花乃如、加以祢利好牟夜、減 紫色好夜」に比定される。「たゞ梅」と「たゞらめ」の正 誤については、諸注見解が異なる(『政事要略』新訂増補 国史大系、吉川弘文館、二〇〇〇)。 (7) 注(6)参照。 (8) 『梁塵秘抄口伝集』佐佐木信綱校訂『新訂梁塵秘抄』(岩波 文庫 黄―二二―一、一九三三)。. - 66 -. 10. 11. 17 16 15 14 13 12. 18. 19.
(15) ( (. (. ( (. ( ( (. 者 乃 風 俗 》 に つ い て は『 古 今 和 歌 集 』 巻 二 十「 東 歌 陸 奥 歌」などで詞章のみが知られるが、古楽譜としては他書に みられない。 ) 「風俗雖有其数只抽簡要書写之、拍子皆以一同也」 ) 飯島一彦「新出の風俗古譜、鍋島『東遊歌風俗歌』につい て 」(『 國 學 院 雑 誌 』 一 一 〇・一 一、二 〇 〇 九 )、 飯 島 一 彦、 料』二九、二〇一二)。. 富田紘次「解題・翻刻『東遊歌風俗歌』」(『梁塵 研究と資 ) なお、昨年度八月の調査の結果、同装と思われていた『東 遊歌・神楽歌』の料紙は鳥の子、『東遊歌・風俗歌』は緒 混じりの斐紙であり、意図的なものかどうかは定かではな いが、書写の段階で紙質に格差があったことが判明してい る。 )『東遊歌図』安永五年〔一七七六〕本居宣長識語、春庭写、 同年荒木田尚賢写、安永六年〔一七七七〕小篠世美写。. ) 『 東 遊 歌・ 神 楽 歌 』 安 永 五 年〔 一 七 七 六 〕 本 居 宣 長 識 語、 春庭写、寛政十二年〔一八〇〇〕荒木田末寿写(神宮文庫 三―一九五六)。. 。 )『風俗歌考』増訂賀茂真淵全集 一〇(吉川弘文館、一九三二) ) 重複曲については、『楽章類語鈔』は省略、『風俗歌考』で は校合されている。. ) 『日本音楽大事典』(平凡社、一九八九)「風俗歌」項(蒲 生美津子)に言及あり。山井基清『風俗訳譜』がこれによ る。. ( ( ( ( ( ( (. ( ( ( (. ) 「承元二年十月七日以御本書写了、尤可秘蔵不可有外見/ 萬歳磨」。. )「風俗十四首無残所授于右近将監久春畢、于時正応第二暦 七月中旬候/前周防守多久資」。. ) 臼田甚五郎「文治本風俗譜の一考察」(山岸徳平編『平安 文学研究』、有朋堂、一九四八)。. ) 『吉野楽書』続群書類従十九輯上「吉野吉水院楽書」(続群 書類従完成会、一九二七)。. ) 「 成 方 ― 近 久 」 は「 成 方 ― 成 久 」 の 誤 写 と も 考 え ら れ る。 成久は成方の子。. ) 『日本音楽大事典』平出久雄編「日本雅楽相承系譜(楽家 篇)」、平凡社、一九八九)。. ) 「多近久云、従十二月至五月マテハ春ナレハカスミテミユ ルト歌フ、従六月至十一月マテハ秋ナレハキリタチワタル. ト歌フ、普通様、最秘説ニハ十一月五節過了テ五月五日マ. テハ春ナレハト歌フ、五月五日過了テ五節マテハ秋ナレハ. ト歌フ、此伝殊可秘蔵人敢不知」. ) 「 多 近 久 云、 好 方 説、 甲 斐 加 祢、 伊 勢 人、 不 打 拍 子 甚 成、 其歌近方成方慥打之、古譜皆着拍子、実是明白也」. ) 「好方説、第二反以後自第二句ハネニ出之間、近久之処全 不然、毎度自初句所唱也云々」. ) 「此歌為卅一字、以此曲為本、雖何和歌随時唱之、即是通 憲入道所語也云々」. ) 奥書に「此風俗譜正本者折本也、正本殊外虫食大破故新書. - 67 -. 28 29 30. 31. 32. 33. 34. 35. 36. 37. 38. 21 20 22 23 24 26 25 27.
(16) ( (. (. ( ( (. 写 畢 / 正 徳 四 年 甲 午 七 月 四 日 邦 永 / 中 務 卿 邦 永 親 王 」 と あり、親本が折本であったことが知れる。 ) 山井基清『風俗訳譜』(岩波書店、一九六一)。. (. (. (. 「伊予湯[サウケイサイハラ]」を加えた十六首となってい. (. )『體源鈔』所収の「風俗」の曲目は、この『三五要録』巻 第十三の十四首通りの配列に、「ウハラコキ[サヲケイ]」 る。. (『東洋音楽研究』八二、二〇一六)。. ) 『 教 訓 抄 』 日 本 思 想 大 系『 古 代 中 世 芸 術 論 』( 岩 波 書 店、 一九七三)。. )『 體 源 鈔 』 十 ノ 下「 風 俗 事 」 に、「 大 鳥 其 駒 ハ 如 楽 之 破 急 也、大鳥ヲハ延歌テ其駒ヲハ早ク歌ナリ」とある。. ) 遠藤徹「大神流笛譜考」(『日本音楽史研究』一、一九九六) 一九九四) ) 米山敬子「風俗「大鳥」考」 ( 『歌謡 研究と資料』七、 に詳細な検討がある。 (. ) 「於保止利乃者称尓也礼泰」 。 「称」は「祢」の、「泰」は「奈」 の誤写と解する。. ) 『拾芥抄』巻上「風俗部第三十三」には、『風俗譜』と同じ 配列順で十四首が記され、《我門》の後に「東遊」も記さ. (. ) 「左以曽」。「サイフ」の誤りか。 ) 仁平三年〔一一五三〕『久安百首』の藤原隆季歌に「いひ わかぬことぞわりなき大鳥の羽には雪の降るや降らずや」. れ て い る。 ま た「 宸 筆 本 次 第 付 数 」 と し て、 各 曲 名 の 右 上に別資料の配列順を「一」から「十四」で示している。. (. がある。. そ の 配 列 順 は、「 荒 田、 八 乙 女、 我 門、 大 鳥、 鳴 高、 知 々 良 々、 難 波 乃 川 不 良 江、 菅 村、 筑 波 山、 甲 斐 加 祢、 伊 勢 人、玉垂、東道、常陸」となる(『音律具類抄』も同様)。 この配列に共通する資料は未確認だが、末尾三首《玉垂》 とする三首に共通している(『拾芥抄』尊経閣善本影印集. 《東道》《常陸》は『風俗譜』奥書で藤原師長が伝え残した 成 一七、八木書店、一九九八/『音律具類抄』続群書類従 十九輯上、続群書類従完成会、一九二七)。 )《荒田》「拍手(ママ)十六」とあるが、本文の拍子記号と 対照すると「拍子六」の誤りかと思われる。. ) 『體源鈔』十ノ下「風俗事」に、「風俗有拍子多者催馬楽拍 子ナリ、又相交テ有三般拍子也」とある。. ) 根本千聡「宮内庁書陵部蔵伏見宮旧蔵本『琵琶諸調子譜』」. - 68 -. 45 46 48 47. 49. 51 50. 40 39 41 42 43 44.
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