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紹介状なしで大学病院を受診する患者の希望と現状

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紹介状なしで大学病院を受診する患者の希望と現状

川 田 悦 夫, 大 山 良 雄, 奥

裕 子

佐 藤 浩 子,

武 司, 小 暮 敏 明

田 村 遵 一, 坂 本 浩之助

要 旨 【目 的】 紹介状なしで受診する患者の現状を調査し, 患者の大学病院に対するニーズを把握する. 【対象 と方法】 1年間に群馬大学医学部附属病院を紹介状なしで初診した患者数を調査. また, 合診療部を受診 した患者について専門科受診希望の有無, 具体的な受診希望専門科, 受診前の状況等を問診表から調査した. 【結 果】 紹介状なしで大学病院を受診した患者の 11.6%は専門診療科受診希望を表明せず. 専門科希望者 1,104人の内, 具体的に専門科がわからない患者は 64.9%であった. 合診療部初診者 2,051人の内, 48.9%は 同症状で他医療機関の受診歴があった. 【結 語】 患者はかならずしも専門科希望でなくとも大学病院を 受診する. 一方, 専門科希望で受診しても具体的な専門科がわからないことは多い. 受診する前に同じ症状で 他の医療施設を受診している患者が相当数おり, 患者からみると紹介機能は必ずしも十 に働いていない. (Kitakanto Med J 2008;58:281∼286) キーワード:紹介状, 受診希望, 専門科, 大学病院, 合診療 は じ め に 高度化し専門 化した医療の中で内科専門医の位置づ けについて議論され, 専門 野に偏らない 合的な診療 能力のある「 合医」に受診して必要に応じて専門家を 紹介受診する 合医構想が本邦においても検討されてい る昨今, 専門医療に対する患者の認識とニーズを把握す る必要がある. 大学病院を受診する患者のほとんどは専門診療を希望 して来院すると一般的には えられるが, フリーアクセ スが基本の日本の医療制度のもとでは, 風邪を引いたと 訴えて大学病院へ受診する患者もいる. また, 患者の訴 えに対して適当と思われる疾患を主治医が把握できない 場合には紹介が不能のため紹介できずにいると, 受診し たにもかかわらず改善しない症状や病状に対する不安を 抱えた患者が紹介状を持たずに大学病院へ受診する. 紹 介状がない場合は, 病気の経過等についての情報が不正 確で, 検査や治療の重複や不足の危険がある. また, 病状 は無論のこと時間的・経済的にも患者の利益にならない ばかりでなく, 無駄な医療費の一因になっている可能性 も えられる. 医療資源を有効に活用するためには, 紹 介状なしで大学病院を受診する患者の現状を把握し, 患 者のニーズに応える医療の提供体制を整える必要がある と えられるが, どのような患者が紹介状なしで大学病 院を受診するかについての報告は見受けられない. 群馬大学医学部附属病院では紹介状なしで初診した患 者のうち, 明確な受診希望科がある場合で, その希望診 療科が精神神経科, 小児科, 整形外科, 皮膚科, 泌尿器科, 眼科,産婦人科,麻酔科,脳神経外科 (以下では,これらを 患者選択可能診療科とする) の場合は当該科へ直接受診 可能 (群馬大学医学部附属病院外来診療案内より) であ るが, 希望診療科が明瞭でない場合や前記以外の診療科 を受診希望した場合は, 病院受付で 合診療部を受診す るように指示される. そのため 合診療部に紹介状を持 たずに受診する患者は, 内科・外科疾患を中心に罹患臓 器が明確でない状態のケースが多い. 1 群馬県前橋市昭和町3-39-5 群馬大学医学部附属病院 合診療部 2 群馬県前橋市昭和町3-39-5 群馬大学医学部附属病院統 合和漢診療学講座 3 群馬県高崎市中大類町501 高崎 康福祉大学 平成20年3月17日 受付 論文別刷請求先 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-5 群馬大学医学部附属病院 合診療部 川田悦夫

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合診療部の初診患者には, 問診票を記載していただ いているが, その中には同じ訴えで多くの医療施設を受 診しながら紹介状がないまま受診する患者や, 専門診療 を希望して来院しながらも具体的な専門診療科を自ら想 起することが困難な患者が多い. そこで, 紹介状を持た ずに来院し, 受診希望の診療科が明瞭でない患者や患者 選択可能診療科を除く診療科を受診希望の患者が, 大学 病院を受診する際の専門診療科志向と受診前の状況を調 査し, 大学病院に対する患者のニーズを検討した. 対 象 と 方 法 平成 18年 8月から平成 19 年 7月までの 1年間の医事 課データから以下を得た. 群馬大学医学部附属病院 (以 下大学病院) を受診し初診料を支払った患者数を診療科 毎の初診患者数とし, 大学病院へ紹介状を持たずに受診 した場合に算定される特定療養費を支払った患者数を, 紹介状を持たずに大学病院を初診した各診療科毎患者数 とした. 図1 群馬大学 合診療部初診時問診票

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上記期間における 合診療部 (以下 診) の初診患者 の詳細は,患者が記載する問診票 (図 1)(紹介状のある患 者を除く) をレトロスペクティブに検討した. 初診日に, 即日あるいは翌日以後に専門診療科へ紹介が必要と判断 された患者とその紹介専門科のデータを, 診外来受付 控えノートから採取した. 診初診か否かは 診受付け データから採取し, 問診表と照合して専門科希望や前医 受診歴を調査した. 診外来では 合診療と和漢診療が 外来診療をしているため, 問診表には専門科希望のほか に和漢診療の選択欄が設けてある. 診では, 一般の診療所でおこなわれる診療手技と技 術 (問診,身体診察,各種血液尿検査,レントゲン検査,心 電図,超音波検査)を中心に,必要に応じて CT,上部消化 管内視鏡,MRI,シンチグラム,PET 検査などをおこない 診療にあたっている. 患者の専門科希望が明確な場合は 専門科への紹介を優先するが, 専門 野が不明の場合や 不適当と思われる場合は, 患者希望にはなくとも適切と 思われる専門科へ紹介し, 診で検索後, 明らかになり 次第紹介している. また, 専門科への振り けが不能の 場合や専門科受診の必要性がないと判断した症例に対し ては, 患者の同意を得て 診で診療している. 結 果 当院の一年間の初診患者数は 25,950人で, 大学病院初 診患者に占める診療科毎の初診患者数は眼科 13.4%, 歯 科口腔外科 10.7%, 救急部 9.9%, 耳鼻咽喉科 7.3%, 皮膚 科 6.7%, 合診療部 6.2%, 整形外科 5.8%, 産婦人科 5.0%の順に多く, 他の診療科はいずれも 5%以下であっ た (図 2). 以下に示すデータは全て紹介状を持たずに受診した患 者のデータである. 初診患者の内で大学病院を紹介状なしで初診した患者 は救急部を除くと4,792人で, 合診療部1,224人 (25.5%), 眼科 547人 (11.4%), 皮膚科 521人 (10.9%), 整形外科 412人 (8.6%), 耳鼻科 368人 (7.7%), 歯科口腔外科 352 人 (7.3%),産婦人科 271人 (5.7%)の順に多く (カッコ内 はいずれも紹介状のない初診患者全体に占める各科の割 合),他の診療科はいずれも 5%以下であった (図 3).元々 専門科希望で大学病院を初診し紹介状がないため 診へ 廻された患者は 673人であり, 診受診後の紹介先院内 専門科は神経内科 14.0%, 整形外科 10.3%, 消化器内科 5.3%, 消化器外科 4.0%, 精神科 3.6%, 耳鼻科 3.1%であ り, 45.8%は 診で診療をおこなった. また, 紹介状を持 たずに大学病院を初診した患者全体に占める専門科希望 を表明していないものは 554人 (11.6%) であった. 一方, 大学病院受診歴の有無によらず 診に初診した 1年間の患者数 (予防接種等を除く) は 2,051人でその受 診理由は, 専門診療希望 1,104人 (53.8%), 合診療希望 684人 (33.3%), 和漢診療希望 94人 (4.6%), 記載なし等 169 人 (8.3%)であった (カッコ内は 診を受診した患者 全体に占めるそれぞれの希望の割合) (図 4). 専門診療希望で 診を初診した患者 1,104人のうち, 図2 大学病院初診患者数各科毎内訳 1年間に群馬大学医学部附属病院を初診した 25,950人 が各科に受診した割合 図3 大学病院紹介状なし初診患者各科毎内訳 1年間に群馬大学医学部附属病院を紹介状なしで初診 した 4,792人 (救急部を除く) が各科に受診した割合 図4 紹介状のない 合診療部初診患者の希望 1年 間 に 紹 介 状 な し で 合 診 療 部 を 初 診 し た 患 者 2,051人の希望

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具体的な専門診療科を問診票に記載した患者は 388人 (35.1%) で複数の診療科を記載した患者がおりのべ 427 人. 716人 (64.9%) の患者は専門科受診希望にも関わら ず具体的な診療科を記載しなかった. 具体的な希望専門 診療科を記載した患者は, 神経内科 15.7%, 内科 14.8%, 消化器科 9.8%, 呼吸器科 7.0%, リウマチ科 6.1%, 耳鼻 科 5.4%, 脳外科 4.4%, 循環器科 3.7%の順で多かった (図 5). しかし, 患者が希望する専門科へ直ちに紹介に なった患者はわずかに 14人 (3.6%) で, 146人 (37.6%) が患者希望とは違う診療科に紹介され, 残りの 228人 (58.8%) はすぐに専門科紹介とならず 診で何らかの診 療をおこなっていた. 一方で, 具体的な希望の有無によ らず専門科受診希望で来 院 し た 患 者 全 体 で は 552人 (50.0%) が直ちに専門診療科への紹介が必要と判断され ていた. 診受診前に他の医療施設への受診歴の有無をみる と, 専門診療科希望で 診を初診した患者 1,104人のう ち 48.7%は大学病院受診前に同症状について他の医療施 設へ受診しており (図 6), 具体的に受診希望の診療科を 記載した患者 387人のうち 295人 (76.2%) が医療機関 に通院中か, 同じ症状で他の医療施設を受診した経験が あった. 群馬大学の他の診療科に通院中の患者で, 合 診療部を受診した患者は 893人で, そのうち専門医受診 希望者は 521人 (58.3%), 具体的な希望専門診療科があ る患者は 206人 (23.0%) であった. 専門科受診希望がない 合診療部初診患者 853人の 内, 他の医療機関に同症状で受診したことのある患者は 175人 (20.5%), いずれかの医療機関に受診中かつ同症 状で受診したことのある患者は 174人 (20.4%), 医療機 関受診中であるが同症状については相談せずに来院した 患者は 141人 (16.5%) であり,残りの 363人 (42.6%)は 受診歴がなかった (図 7). これら専門科受診希望がない 合診療部初診患者のうち 591人 (69.3%) は 合診療 部での診療をおこなった. 察 今回の調査で紹介状なしで大学病院を受診する患者に ついて以下のことが示唆された. 群馬大学医学部附属病院へ紹介状なしで初診した患者 (4,792人)の内,1年間で 554人 (11.6%)が専門診療受診 希望を表明しておらず, 必ずしも専門医療を希望しない 患者が大学病院を受診していた. 紹介状なしで 診を初 診した患者 2,051人の中では, 専門診療を希望して受診 した患者は 1,104人であったが, 具体的な専門診療科が わからないため 診を受診した患者は少なくなかった {717人 (64.9%)}. また, 患者が具体的に専門科受診希 望の場合でも, その必要性がない, あるいは適切な専門 科受診の前に 診医師による診療が必要と えられる事 例は少なくなかった (58.8%). 専門科受診希望はあるが 具体的ではない患者 (50.0%) の方が, 具体的に専門科を 指名して受診した患者 (41.2%) よりも即日専門科紹介 率が高く, 専門科選択の困難さが示唆された. 一方, 専門 図5 紹介状なし 合診療部初診患者の具体的希望 1年間に紹介状なしで 合診療部を初診して具体的な 希望専門科を表明した患者 388人の受診希望専門科の 割合 図6 専門科受診希望患者の他医受診歴 専門科希望で 合診療部を初診した年間患者 1,104人 の受診歴 図7 専門科受診希望がない患者の他医受診歴 専門科受診希望はないが 合診療部を初診した年間患 者 853人の受診歴

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診療科への受診希望がない患者の大多数は 診での対応 が可能 (69.3%) であった. これらのデータから, 専門医 療を希望していない患者も大学病院を受診しているこ と, 必ずしも専門医療が必要ではないと医師が判断する 患者が大学病院を受診していること, 患者が大学病院で 専門科を選択する場合の困難さが示唆された. 一定数の患者が, 専門診療科として内科専門医へ受診 したいと希望していたが, 群馬大学医学部附属病院に内 科という専門診療科区 は存在しない. 一般的に医療者 の 視 点 か ら み た 内 科 専 門 医 療 と は, サ ブ ス ペ シャリ ティーをさしているものと えられるが, 専門診療を希 望して大学病院を受診する患者の中には内科受診希望で 来院する患者も存在する. 専門医療に対する認識には, 患者と医療者間で解離があることが示唆された. また, 専門科に受診したいと思いながらも具体的に専門科がわ からない患者の比率は多く, 大学病院としての専門機能 を効率的で十 に患者に還元するためには医療者の関与 が必要と思われる. 同症状で前医受診歴がありかつ希望の専門科を表明し ていた患者は 292人おり, この患者達と前医の意思疎通 がはかれていれば, 前医が直接大学の専門科に紹介が可 能であったかもしれない. しかし一方で, 患者希望の専 門科受診が 診で妥当と判断された例は少なく, 患者の 希望と医師の判断との間に解離が認められ, 患者の希望 と医師の判断には相違があった. 患者の意図するところ は, 多くの医師にほんの一部しか受け入れられていない という報告 を裏付ける結果であったが, 同時に医師の 立場から えると医療制度上のフリーアクセスの弊害と も えられる. また, 院内専門科に通院中, 他の何らかの 康問題が生じ専門科へ受診希望があっても, 対応する 専門科への紹介機能は必ずしも十 ではない場合があ り, 専門科はかかりつけ医や主治医の機能とは異なる こともあらためて示された. 多くはないものの一定数の患者が, 他の医療施設に受 診することなく具合が悪くなったらまず大学病院へ受診 していることが明らかとなった. 23%の患者は, 専門科 への紹介をプラマリケア医が阻害していると感じている 一方で, プライマリケア医による初回診療と紹介機能を 評価する患者 (それぞれは 94%, 89%) は多いとの報告 もあり, 患者の大学病院へのニーズの多様性とともに医 療資源の有効活用の点で疑問のある事例は少なくないこ とがあらためて確認された. 群馬大学医学部附属病院自体やそれを取り巻く医療環 境の特殊性が, 以上の結果にどれ程影響を与えたかは不 明であるが, 大学病院が提供する専門医療と患者の大学 病院受診動機の間には解離があるため, 限られた医療資 源を有効に活用するためには, 両者間の認識の解離を是 正する必要性が示唆された. また, 同じ病態でも医療施 設によって担当する専門科は違う場合もあり患者が適切 な専門科を判断することは困難な事例もあるため, 患者 の視点から えると大学病院においても内科専門医や 合医が診療をするニーズがあることが示唆された. 文 献 1. 竹村洋典, 西田正之, 高屋俊樹ら. 大学病院に来院するい わゆる風邪患者の受診動機. 防医大誌 2001; 26(1): 1-4.

2. Salmon P, Sharma N, Valori R, et al. Patients inten-tions in primary care: relainten-tionship to physical and psy-chological symptoms, and their perception by general practitioners. Soc Sci Med 1994; 38: 585-592.

3. Rosenblatt RA,Hart G,Baldwin LM,et al. The gener-alist role of specialty physicians. Is there a hidden sys-tem of primary care? JAMA 1998; 279 : 1364-1370. 4. Grumbach K, Selby JV, Damberg C, et al. Resolving

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The Circumstances and the Wishes of the Patients

who Self-Presented to the University Hospital

Etsuo Kawada,

Yoshio Ohyama,

Yuko Ohyama-Oku,

Hiroko Sato,

Takeshi Tatsumi,

Toshiaki Kogure,

Jun ichi Tamura

and Hironosuke Sakamoto

1 Department of General Medicine, Gunma University Hospital

2 Department of Integrated Japanese Oriental Medicine, Gunma University Graduate School of Medicine 3 Takasaki University of Health and Welfare

Objectives: The aim of this study is to see the wishes of the patients who self-presented to the university hospital. M ethods: The number of the patients who had the first contact to the Gunma University Hospital without referrals were obtained, and the patients wishes for access to specialists, the specific demands in the specialists and whether or not the patients had consulted to the other medical care before the presentation were studied using the data from the patients presented to the department of the General Medicine, Gunma University Hospital. Results: Of the patients who visited without referrals, 11.6% had no request to consult to the specialists. Of 1104 patients who wanted to go to specialists,64.9% had no idea for the specific demands in the specialists. Of 2051 patients attended to the Department of the General Medicine,48.9% had previous consultation before the presentation. Conclusions: The patients who self-presented to the university hospital have not necessarily the wishes for the consultation to the specialists. Many patients cannot decide which specialist should be consulted. From patients view of medical care, the referral to specialists is not necessarily worked well.(Kitakanto Med J 2008;58: 281∼286)

Key Words: letter of reference, patients expectations, specialists, University Hospital, General Practice

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