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フォトンカウンティングCTを用いたLiイオン電池における充放電反応分布の計測

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令和二年度 修士学位論文

フォトンカウンティング CT を用いた

Li イオン電池における充放電反応分布の計測

指導教員 櫻井 浩 教授

群馬大学大学院理工学府 理工学専攻

電子情報・数理教育プログラム

T191D048 鈴木駿太

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目次

第 1 章 序論 ... 3 1-1 本研究の背景 ... 3 1-2 研究目的 ... 9 第 2 章 原理[5] ... 10 2-1 X 線の減弱と電子密度 ... 10 2-2 Bethe-Bloch の式と飛程 ... エラー! ブックマークが定義されていません。 2-3 フォトンカウンティング CT の原理 ... 6 2-4 CT 画像再構成の原理 ... 7 第 3 章 フォトンカウンティング CT を用いた CT 画像撮影 ... 12 3-1 実験装置 ... 12 3-2 試料仕様 ... 22 3-3 測定方法 ... 23 3-4 実験結果 ... 26 3-5 線減弱係数 ... 36 4 章 Li イオン分布解析 ... 41 4-1 線減弱係数を用いた実効原子番号と密度決定法の提案[8] ... 41 4-2 シミュレーション ... 42 4-2 充電状態・放電状態の線減弱係数の比較 ... 43 4-3 線減弱係数を用いた実効原子番号と密度決定法 ... 44 4-3-1 ROI 平均の線減弱係数を用いた実効原子番号と密度決定法 ... 44 4-3-2 ピクセル毎の線減弱係数を用いた密度決定法 ... 46 第5章 結論・考察 ... 48 参考文献 ... 49 謝辞 ... 50

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第 1 章 序論

1-1 本研究の背景

電池のエネルギー密度とパワー出力密度を比較するとリチウムイオン電池は、他の電池 やキャパシターなどと比較して、同じ重さであればより大きいエネルギーを貯めることが 出来、かつ、よりパワーを出すことできる。また、内燃エンジンや燃料電池と比較すると、 エネルギー密度では劣るが、重さあたりでこれらを上回るパワーを出すことができる。[1] リチウムイオン二次電池は、放電電圧が 3.7V と高く、質量あたりのエネルギー密度が、 鉛電池の約 3 倍、ニッケル水素電池の約 2 倍と他の二次電池と比べ高いことから、スマー トフォンをはじめとする小型電子機器用電源の主流となっている。また、化石燃料の枯渇が 懸念される中、動力源として電気自動車やプラグインハイブリット車等への搭載も進んで おり、現在、世界中で更なる高エネルギー密度化、高寿命化、高安全性に向けた材料開発、 および、応用研究が進められている。 しかし、電池の性能の向上および評価に不可欠といえるリチウムイオン二次電池材料の 充放電メカニズムは未だ不明な点が多く、一日も早い解明が世界中で求められている。 リチウムイオン電池の一般的な劣化因子として、 ① 電池作成時・使用初期において電解質と活物質の反応による副作用で生じる化合物の 層・ガス発生 ② 電池の使用により、電極の活物質層に使用される活物質自身の劣化と減少 ③ 充放電の繰り返しにより、電極の膨張・収縮による電極の劣化 ④ 負極での Li デンドライト生成による正極負極の短絡、界面の劣化 ⑤ 過充電や過放電による活物質の反応量の低下 ⑥ 電解液の酸化還元反応による劣化および反応界面層の劣化があると言われている。[2] 近年では中性子線の先行研究[3]により、充放電に伴い電極反応の不均一反応が劣化の原因 であると分かっている。

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4 電極反応分布のイメージは、理想的な反応分布と不均一な反応分布が考えられる。 図 1-1-1 理想的な電極反応イメージ 理想的な反応では図 1-1-1 に示すように Li イオンが均等に電極に収容されていることが分 かる。 図 1-1-2 不均一な電極反応イメージ 不均一な反応では図 1-1-2 に示すように、Li イオンがある電極では Li イオンが疎で、また ある電極では Li イオンが密に収容されており不均一な反応が確認できる。これにより、出 力特性・サイクル特性の劣化の促進や過放電状態による電池発火が引きおこる。そのため、 Li イオン電池の長寿命化・安全性の向上には、Li イオン電池内の Li イオンの定量情報を 含めた反応分布の把握、および化学状態の把握が非常に重要となる。そこで、動作中の Li イオン実電池の反応を非破壊で測定する手法が望まれている。 当研究室ではリチウムイオン電池の高エネルギー放射光 X 線を用いた解析の研究を進め

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5 ており、SPring-8 のビームライン BL08W を用いて、市販のコイン型リチウムイオン二次電 池 VL2020 にコンプトン散乱エネルギースペクトルの S パラメータ分析を適用し、VL2020 の 構造を S パラメータによって明らかにした[4]。充放電サイクルに対応した S パラメータ分 布が正負の電極で得られ、電池を充電した際に、負極の格子膨張によるセパレータ位置の移 動が観察された。理論的な S パラメータから得られた校正曲線を用いて、図 1-1-3 のよう に充放電サイクル中に正極および負極の Li 濃度を同時に求めることに成功した。 図 1-1-3 S パラメータを用いた電池解析[4] しかしコンプトン散乱法を行うには、限られた大型放射光施設での実験実施が不可欠であ る。大型放射光施設のような限られた実験施設のみでなく、身近な実験施設にてリチウムイ オン電池の内部反応を非破壊で測定する新たな手法として、フォトンカウンティング CT 法 に着目した。 フォトンカウンティング CT 法とは、フォトンカウンティング検出器により、スペクトル で得られる透過情報をエネルギー帯別に分割し、それぞれのエネルギーにおける CT 画像 を得るエネルギー分別型 X 線 CT であり、W.Zou らによって行われた実験で、図 1-1-4 の ように線減弱係数から単体及び化合物の電子密度、実効原子番号が求められている。[5]

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6 図 1-1-4 フォトンカウンティング CT を用いた実効原子番号・電子密度測定[5] フォトンカウンティング CT を用いた先行研究より、軽元素定量が可能であるため、新た な Li イオン電池評価法として着目した

1-2 フォトンカウンティング検出器の特徴

フォトンカウンティング検出器は、一つ一つの光子(photon)をエネルギー別にカウント する感度の高い測定方法である。現在、骨密度測定器や宇宙線測定などに応用されているが、 CT では技術的な問題があるため製品化には至っていない。 フォトンカウンティング検出器は“半導体+電極”の構造で、フォトンが入ってくると半 導体内に電子-正孔対ができる。電極間にかけられている電圧で電子と正孔を読み出すこと によって電荷パルス信号出力を得ている。高いエネルギーのフォトンに対しては、多くの電 子-正孔対、反対に低いエネルギーのフォトンに対しては少ない電子-正孔対ができるため、 入射してきたフォトンのエネルギーに応じた強度の電荷パルスが読み出し回路上で発生す る。このパルス高を弁別器によってエネルギー別に分け、カウンターで集計する。 したがって、フォトンカウンティング検出器によって検出される光子数のエネルギー依 存性、すなわち X 線エネルギースペクトルを測定することができる。[6]

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7 図 1-2-1 フォトンカウンティング検出器の仕組

1-3 CT 画像再構成の原理[7]

CT 画像再構成の原理について簡単に説明する。例として、図 1-3-1 のような 5×5 の範囲 の中の黒く塗りつぶした部分に物体があるとして、4 方向からの X 線減弱データが以下のよ うなものだったとする。 図 1-3-1 減弱データ(例) まず、4 方向からの X 線減弱データを X 線方向に引き伸ばして図 1-3-2 のようにする。 図 1-3-2 データの引き伸ばし 次に、この 4 つを重ね、それを濃淡情報に変換することで図 1-3-3 のような CT 画像となる。

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1-2 研究目的

SPring-8 の放射光施設のような限られた大型な実験施設だけでなく大学構内(桐生キャ ンパスの医理工イノベーション棟 1F)にあるフォトンカウンティング CT 装置を用いて、オ ペランド下でリチウムイオン電池の内部反応分布を可視化することを目標とする。 本研究では、オペランド下でのリチウムイオン電池解析に向けて、リチウムイオン電池の 充電状態を変化させた反応分布の変化を観測することを目的とする。

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第 2 章 原理

2-1 X 線線減弱係数[7]

CT において最も基礎となるのが X 線の減弱である。X 線を物質に照射すると、散乱や光電 効果によって減弱が起こる。X 線の減弱は(2-1-1)式のように表される。 𝑆𝐸𝑥𝑖𝑡(𝑘) = 𝑆𝑖𝑛(𝑘)𝑒−𝜇(𝑘)𝑅 (2 − 1 − 1) ここで𝑆𝑖𝑛(𝑘), 𝑆𝐸𝑥𝑖𝑡(𝑘)はそれぞれエネルギー𝑘の入射光の強度、出射光の強度、 𝜇(𝑘)は被写 体の線減弱係数、𝑅は透過厚である。よって、入射光の量、出射光の量および透過厚が分か れば減弱係数を算出できる。X線減弱のイメージを図 2-1 に示す。 図 2-1 X 線減弱イメージ CT の再構成画像において、2 次元画像は小さな正方形のピクセルから構成されている。この ピクセルには白黒の濃淡値が与えられ CT 画像を表現する。この画像における濃度値のこと を CT 値という。CT 値は次式(2-1-2)のように表される。 CT 値 = 1000 ×𝜇 − 𝜇𝑤 𝜇𝑤 (2 − 1 − 2) 𝜇は被写体の減弱係数、𝜇𝑤は水の減弱係数を示す。しかし、フォトンカウンティング CT の 再構成画像は CT 値の代わりに線減弱係数で構成される。X 線診断領域のエネルギーでは線 減弱係数𝜇は以下に示すように光電効果の項と弾性・非弾性散乱の項で表される。

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𝜇 = 𝜌

𝑁𝐴 𝐴

( 𝜎

𝑎 𝑒𝑙

+ 𝜎

𝑆𝐶 𝑐𝑜ℎ 𝑎

+ 𝜎

𝑎 𝑆𝐶𝑖𝑛𝑐𝑜ℎ

) = 𝜌

𝑁𝐴 𝐴

(𝜎

𝑒𝑙

+ 𝜎

𝑆𝐶

) (2-1-3)

式(2-1-3)中の𝜌は物質の密度、A は原子数、NAはアボガドロ数を表す。具体的表式として Hawks と Jackson の提案した近似式を用いる。光電効果の項は K-殻を主要項として、L-殻吸 収を補正項として取り入れ、次式(2-1-4)のように表す。 𝜎𝑒𝑙= 4√2𝑍5𝛼4( 𝑚𝑐2 𝑘 ) 3.5 𝜙0∑ 𝑓𝑛𝑙𝑙′ 𝑛𝑙𝑙′ (2 − 1 − 4) Z は物質の原子番号、k は X 線のエネルギー、𝑓𝑛𝑙𝑙′が補正項を表す。 散乱項は弾性散乱と非弾性散乱をあわせて次式(2-1-5)のように表す。 𝜎𝑆𝐶= 𝑍𝛷𝐾𝑁(𝑘) + (1 − 𝑍𝑏−1) ( 𝑍 𝑍′) 2 𝛷𝑐𝑜ℎ(𝑍′, 𝑘′) (2 − 1 − 5) 式(2-1-5)中の𝑍′は基準とする元素の原子番号であり、酸素を基準としていて、Φ 𝑐𝑜ℎはその 元素の弾性散乱の断面積である。第 1 項は Klein-Nishina の式である。k はエネルギーを表 し、k′は基準元素のために修正されたエネルギーで𝑘= (𝑍⁄ )𝑍 1 3⁄ 𝑘として表せる。パラメー タ b は、0.5 と提案されている。ここで𝜌𝑁𝐴⁄ に𝑍を乗じた量𝐴

𝜌

𝑒

= 𝜌

𝑁𝐴 𝐴

𝑍は

電子密度であ る。(2-1-3)式から(2-1-5)式をまとめると 𝜇 =

𝜌

𝑁

𝐴

𝐴

𝑍

[𝑍4𝐹(𝑘, 𝑍) + 𝐺(𝑘, 𝑍)] =

𝜌

𝑒[𝑍4𝐹(𝑘, 𝑍) + 𝐺(𝑘, 𝑍)] (2 − 1 − 6) (2-1-6)式において、第 1 項は光電効果、第 2 項はレーリー散乱、コンプトン散乱を含めた 散乱に対応する。 F(k, Z)とG(k, Z)はエネルギーk に依存するが Z に強く依存しないと仮定し、データベース などから想定する物質の範囲の F(k),G(k)を見積もっておき、複数のエネルギーで線減弱係 数μ(k)を測定すれば、物質に関連する密度ρ、原子番号 Z を得ることができる。

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第 3 章 フォトンカウンティング CT を用いた CT

画像撮影

3-1 実験装置

(1) X 線源 マイクロフォーカス X 線源(L12161-07): 浜松ホトニクス株式会社 管電圧 150 kV、管電流 50 μA、管電圧動作範囲 40〜150 kV、 最大出力 75 W、密封型、焦点寸法 5 μm、X 線放射角度(円錐状)43 ° 出力窓から焦点までの距離(FOD)17 mm、タイプ:密封型 装置の画像と操作ソフトを図 3-1-1 に示す。 (a)装置写真 (b)ソフト画面 図 3-1-1:X 線源 コントロールユニットと PC を接続することによって、PC から X 線源を操作することが 可能である。ソフトには管電圧、管電流を設定する部分、X 線 ON/OFF スイッチがある。 (2) 検出器

Amptek PX5(デジタルパルスプロセッサ)/Amptek XR-100T-CdTe(プリアンプ、検出 器):Amptek 社(米国)

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13 図 3-1-2:検出器 図 3-1-3 配線図 この検出器によって、ch(=エネルギー)ごとの光子の数をカウントすることができ、 検出データおよびスペクトルをモニタリング、保存することが可能である。今回使用し たコリメータ径は 0.1mmΦである。 (3) ステージコントローラ ・ステッピングモータドライバ(PM8D-16-1):ツジ電子株式会社 実際のステージコントローラの写真を図 3-1-4 に示す。 図 3-1-4 ステッピングモータドライバ 写真

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14 ・16ch ステッピングモータコントローラ(PM16C-04XDL):ツジ電子株式会社 実際のステッピングモータコントローラの写真を図 3-1-5 に示す。 図 3-1-5 16ch ステッピングモータコントローラ 写真 ・自動精密ステージ (a:XA10A-L1、b:ZA10A-32F、c:RA10A-W、d:SA05A-R2M):神津精機株式会社 各精密ステージの画像を図 3-1-6 に示す。 (a) X ステージ (b) Z ステージ (c) 回転ステージ (d) スイベルステージ 図 3-1-6 精密ステージ (4)イオンチェンバー 実際に CT 撮影を行う段階でほとんど用いなかった装置だが、X 線源付近のフォトン

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15 数をカウントするために設置したため記載する。 ・イオンチェンバー(S-1329NA1、左) ・イオンチェンバー用コントローラ(S-2341A、中央) ・プリアンプ(S-2340A、右) メーカー:応用光研工業株式会社 イオンチェンバーの画像を図 3-1-7 に示す。 図 3-1-7 装置写真 (6)装置全体 上記の各種装置を図 3-1-8 のように配置した。実際の配置の様子を図 3-1-8 に示す。 装置を収納するハッチの画像を図 3-1-9 に示す。X 線コントロールユニット、ステッピ ングモータドライバ、ステッピングモータコントローラ、イオンチェンバー用コントロ ーラ、PC はハッチの外に配置した。また、PC、ステッピングモータドライバ、16ch ス テッピングモータコントローラ、各自動精密ステージを図 3-1-10 のように接続するこ とで PC から各ステージを操作することが可能である。なお、ステッピングモータドラ イバとステッピングモータコントローラの間はケーブルが複数本あるが、簡略化して ある。一台の PC で X 線源、検出器、精密ステージを全てコントロールできる。X 線源 からステージ中心まで 255 mm、ステージから検出器まで 360 mm であった。

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図 3-1-8 装置全体の写真

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17 図 3-1-10 装置配線図 (6)ノイズ対策[7] Pb 遮蔽 ハッチ内で反射した光子などの思わぬ外乱などを検出器に取り込んでしまうことが考え られる。X 線源からまっすぐ飛んできた光子のみを取り込むことを目的としている。 ・Pb カバー 検出器の検出部分を除いた部分を厚さ 1mm の鉛板を 2 枚重ねて覆ってある。 Pb カバーの画像を図 3-1-11 に示す。 図 3-1-11 Pb カバー 写真 ・Pb Tube 試料と検出器の間に鉛で作った長さ 350 mm,径 30 mmΦ,厚さ 2mm の管を設置した。 Pb Tube の画像を図 3-1-12 に示す。

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18 図 3-1-12 Pb Tube 写真 Al フィルタリング タングステンの L-特性 X 線が現れないようにする方法として、1mmAl 板による X 線のフ ィルタリングを行った。Al フィルタリングの画像を図 3-1-13 に示す。 図 3-1-13 Al フィルタリング写真

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19 (7)スペクトル補正 測定値の特に低エネルギー側を理論値に近づけるために、スペクトル補正ソフト(EMF ジ ャパン製)を導入した。この補正ソフトは、大阪大学の松本先生の論文に記載されている CdTe 検出器用のスペクトル補正法[8]に基づいている。その補正式を(3-1-1)式に示す。 𝑁𝑡(𝐸0) = {𝑁𝑑(𝐸0) − ∑ 𝑅(𝐸0, 𝐸)𝑁𝑡(𝐸) 𝐸𝑚𝑎𝑥 𝐸=𝐸0+1 } 𝜀(𝐸⁄ 0) (3 − 1 − 1) ここで、 𝑁𝑡(𝐸0) : エネルギー𝐸0の真のフォトンの数 𝑁𝑑(𝐸0) : エネルギー𝐸0で検出したフォトンの数 𝐸𝑚𝑎𝑥 : 検出したスペクトルの最高フォトンエネルギー 𝑅(𝐸0, 𝐸) : 擬似効果と電荷の不完全な収集効果を考慮したエネルギー𝐸の単色線レスポン ス関数 𝜀(𝐸0) : 全エネルギー吸収ピーク効率

各ソフトウェア

(1) ステージコントローラ:SERVER PM16C-04XD(L) 図 3-1-14 ソフト画面 現在の試料/検出器の位置

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20 ステージコントローラソフト起動中の画面を図 3-1-14 に示した。ここで、 A pos.:試料の回転角度 (45000 で 90 °) B pos.:試料の奥行き (+1000 で手前方向に 1 mm) C pos.:試料の高さ (+1000 で下に 1 mm) D pos.:検出器の奥行き (+1000 で手前方向に 1 mm) である。手順は以下のようである。 ①ソフトを立ち上げた直後は図の Disconnect と書いてある部分が Connect と書いてあるの で、Connect を押しソフトとステージを接続させる。

②SELECT で動かしたい要素(A~D)の選択をし、MODE の中に数値を入力した後に CONTROL の START を押すことで、ステージが移動する。

③MODE の REL は現在の位置から入力した値の分だけ試料/検出器が移動する。ABS は現在の 位置に関係なく入力した値まで試料/検出器が移動する。

(2) CT 撮影プログラム:Clear Pulse Xray CT Imaging System

図 3-1-15 CT 撮影プログラム

CT 撮影プログラムの起動中の画面を図 3-1-15 に示す。ここで各設定の意味を示す。 Sample Stage Rotation

Projections:測定試料の回転ステップ数 Proj Step:測定試料の 1 ステップの回転角度 𝐼0 Scan:𝐼0の測定

Date Acquisition:1section にかける時間調整 Sample Stage Sliding

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Start Movement Length:試料を中心から左右に動かす距離 Step Length:横移動 1 ステップの長さ

Slide Step Num:横移動のステップ数 X-ray Source Voltage(kV):管電圧 Current(μA):管電流 また、回転角度の合計、横移動のステップ数、合計測定時間は各種設定を入力すると計算結 果が表示される。設定後、スタートボタンを押してフォルダを指定すると、終了まで全て自 動で CT 撮影を行い、測定結果のファイル(テキストファイル)が指定したフォルダに保存 される。

(3) 画像再構成プログラム(Photon Counting CT Reconstruction)

図 3-1-16 画像再構成プログラム 画像再構成プログラムのソフト画面を図 3-1-16 に示した。まず、フォルダ選択部分で測定 結果が入ったフォルダを選択して読み込む。次に Energy binning とは、例えばこの値を 20 とした場合、20ch 分の count を平均するという意味である。つまり binning をかけない場 合、ch ごとに 1024 枚の CT 画像ができるが、binning を 20 とした場合は 1024÷20=51.2 で 51 枚の CT 画像ができることになる。また、中心軸補正については、画像重ね合わせの際の 回転の中心を変えるものだと思われ、中心軸補正の値を変えるとアーチファクトが発生す る。また、1 ピクセルの幅については、CT 撮影の際の横移動 1 ステップの長さと同じにする 必要がある。設定後、Recon ボタンを押すと CT 画像が表示され、読み込んだフォルダの中 に CT 画像が bmp および raw 形式で保存されるほか、サイノグラムも保存される。サイノグ 0.204 -0.216

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22 ラムとは、被写体を 360 度各方向から撮影した投影データを縦に並べた画像である。

3-2 試料仕様

コイン型 Li イオン2次電池 VL2020 : Panasonic 社 充電電圧 3.25~3.55 V、放電電圧 2.50 V、公称容量 20 mAh である。[9] この電池の寸法は図 3-2-1 に示す。この電池の充電状態と放電状態の計 4 回測定を行なっ た。 図 3-2-1 VL2020 寸法 (1) 電池の充放電条件 電池を充放電するために図 3-2-2 に示した北斗電工株式会社製ポテンショスタット・ ガルバノスタット(HA-151B)を使用した。充放電の条件を表 3-2-1 に示した。一般的に、 充放電する際の電流値は電池容量の 1/10 の 2 mA で行うことが望ましいが、今回は時 間の都合上 1/5 の 4 mA で充放電を行なった。 表 3-2-1 電池の充放電条件 2020Feb 4 mA で 5.6 h 放電 4 mA で 5.6 h 充電 初期電圧[V] 3.0 2.9 充放電後電圧[V] 2.8 3.0 2020Aug 4 mA で 5.7 h 放電 4 mA で 6 h 充電 初期電圧[V] 3.0 2.9

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23 充放電後電圧[V] 2.8 3.1 いずれの場合も4 mA × 5.6 h ≅ 22 mAhの充放電を行なっていて、公称容量の 20mAh を 超えていることから放電状態及び充電状態に電池の電圧を変化させることができた。 (a)ポテンショ・ガルバノスタット (b)電池接続部 図 3-2-2 充放電装置 測定条件 フォトンカウンティング CT で Li イオン2次電池(VL2020)の測定を行う際の設定を次のよ うに定めた。測定時間を短縮するため図 3-2-3 に示すように電池の上部を測定範囲とした。  測定範囲は電池上部 12 mm、  横移動ステップ:0.2 mm  回転は 0 °∼180 ° 回転ステップ:1.8 °  測定時間:10 sec/step 管電圧 150 kV,管電流 50 μA 図 3-2-3 測定範囲

3-3 測定方法

(1) 測定準備 X 線源、ステッピングモータドライバ、ステッピングモータコントローラ、イオンチ ェンバー、検出器、PC の電源を入れる。

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24 (2) X 線ウォームアップ X 線源のコントロールソフトを起動し、X 線を照射することで自動的に X 線のウォー ムアップが始まる。20 分ほど経過し、十分にウォームアップが出来れば自動で停止す る。 (3) 各種パラメータ、実験環境の確認 X 線ウォームアップ終了後、ステージコントローラ、CT 画像プログラムを起動し、ch 数、gain、閾値等のパラメータの設定が決めた値になっているか確認する。また、Pb カ バー、Pb tube、Al フィルターを確認し、試料をセットする。 (4) 位置合わせ X 線が試料の測定したい範囲に当たるようにステージの位置を合わせる。横移動ステ ップを 0.5~2 mm ほどに設定し、大雑把に測定を行う。その様子を図 3-3-1 に示す。 図 3-3-1 位置合わせ 0 ° 図 3-3-1 は移動ステップを 0.5 mm に設定し、position 0 から左右に 7 mm ずつ測定を 行なった。縦軸が光子のカウント数を示しており、赤矢印の範囲で X 線強度が下がって いるので試料に X 線が当たっていることになる。今回測定したい範囲は電池の上部 12 mm であるので、高さをこの位置で確定した。position -7 、6.5、7 で X 線が当たって いないことがわかるので、左右 7 mm の範囲に電池が確実に収まっていること確認でき る。 次に図 3-3-1 で決めたステージの位置で、角度だけを 90 °回転させ X 線照射範囲内

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25 に電池が収まるように調整を行う。その様子を図 3-3-2 に示した。 図 3-3-2 位置合わせ 90 ° 図 3-3-2 は移動ステップを 0.2 mm で position 0 から左右に 3 mm ずつ測定を行なっ た。縦軸が光子のカウント数を示しており、position 0.2〜1.8(赤矢印)で X 線強度が 下がっていることから電池に X 線が当たっていることがわかる。position 0、2 では電 池と電極部突起に隙間があるため X 線強度が上がり、position -0.4、2.2 では電極部 突起に X 線が当たり X 線強度が下がっている。電池の厚みの中心が position 0 になっ ていないため、試料の中心が position0 に近づくようステージを移動させた。 (5) 本測定 2020Feb(2.8V、3.0V)、2020Aug(2.8V、3.1V)の4つのパターンの VL2020 を各種別日に 測定を行った。得られるデータは各 projection における各移動ステップにおけるチャ ンネル(エネルギー)ごとのX線強度情報がテキストデータで得られる。測定終了後、試 料を取り除き、各電源をオフにした。 (6) スペクトル補正 測定したデータを、3-1 章にて先述したスペクトル補正を行った。 (7) 画像再構成 補正後の全スペクトルファイルを一つのフォルダにまとめてから、画像再構成ソフト (Photon Counting CT Reconstruction)にかけた。今回、全ての試料について binning は 20 としたため、CT 画像は各試料とも 51 枚生成された。また、中心軸補正の値を変

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26 えることにより、アーチファクト(ノイズ)が発生する。そこで、何種類かの中心軸 補正の値で再構成を行い、最もアーチファクトが少ないものを選んだ。 (8) 画像解析 画像の解析は ImageJ[10]というフリーソフトを用いて行った。ImageJ は CT 画像の濃 淡より線減弱係数を取得することができる。解析は以下の手順で行った。 ① まず、画像の中から試料が最も鮮明に写っていると思われる画像を一枚開く。画像 は raw 形式のものを取り込んだ。 ② 試料の範囲内に適当な大きさの円状の ROI(Region of Interest: 関心領域)を指 定し、保存する。ROI を保存することで、指定した ROI の位置や大きさが記憶され る。 ③ CT 画像について、画像を開く→保存した ROI を指定→測定を繰り返す。この操作 をすることによって、ROI 内の全ピクセルの平均値が表示される。画像の全ピクセル には減弱係数の値(cm-1)が与えられているため、この値がそのまま減弱係数の実験 値となる。

3-4 実験結果

アーチファクトについて アーチファクトとは X 線 CT で三次元データを取得する際に、多数の投影画像を重ね合 わせ、その過程で生じる計算の矛盾がによって実際にはないデータを作ってしまう現象 である。金属などの吸収係数が高い物質があった場合、金属アーチファクトというアー チファクトが生じる。複合材質をスキャンする場合、金属の周辺でノイズが生じ、他の 材質が暗くなったり、空気部分にノイズが生じる。[11] 本研究における測定条件はアーチファクトの発生を十分に軽減するため角度情報数 を増やした。角度情報とアーチファクトの発生について評価するため、角度ステップ数 を変えた CT 画像を図 3-4-1、図 3-4-2、図 3-4-3 に示す 角度数 25(58.96 keV)

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図 3-4-1 角度ステップ数 25 角度数 50(58.96 keV)

図 3-4-2 角度ステップ数 50 角度数 100(58.96 keV)

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28 図 3-4-3 角度ステップ数 100 図 3-4-1、図 3-4-2、図 3-4-3 より角度数を増やすと空気中の縦横の線のような模様や、 電池のケースのぼやけ(広がっているように見える)などを軽減できていることがわか る。 図 3-4-1、図 3-4-2、図 3-4-3 の線減弱係数を図 3-4-4 示す。 図 3-4-4 角度ステップ数変えた時の線減弱係数 角度ステップ数 100 と 50 についてはほとんど重なるように見えるが、角度ステップ数 25 については線減弱係数が明らかに低いことが分かる。そこで、角度ステップ数 25

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29 の線減弱係数を 12 倍してピークの高さを揃えて比較した。 図 3-4-5 角度ステップ数 25 を規格化したの線減弱係数の比較 図 3-4-5 から角度ステップ数 25 のときのケースの幅が厚くなっていることが分かる。 角度ステップ数が 100・50 の時は 0.2mm であることに対して、角度ステップ数 25 の時 は 0.4mm であり、アーチファクトによる影響を受けていることが分かる。 アーチファクトによる効果を評価するために、CT 画像上で縞模様が写っていた空気中 (9mm から 12mm までの範囲)の線減弱係数μairの平均値μair_averageとμairの分散Δμair

を求めた。ここでΔμairは平均値μair_averageで規格化し、規格化した分散Δμair_normalized

(30)

30 図 3-4-6 線減弱係数に対する分散 角度ステップ数を 100 にでは、空気中の線減弱係数の分散が小さいということが分か り、ケースがぼやけてうつらない(厚くならない)ことと、分散が十分に小さい角度ス テップ数 100 を実験条件として定めた。 CT 画像 低エネルギー側、高エネルギー側の CT 画像には図 3-4-7、図 3-4-8 のようにノイズが多く 入っていた。低エネルギー側では透過力が足りず、高エネルギー側ではフォトン数が減少 することに起因すると考えられる。そこで今回の解析では使用するエネルギー領域を 42.64KeV から、107.93KeV と決めた。 図 3-4-7 CT 画像 5.91keV

(31)

31

図 3-4-8 CT 画像 152.82keV

撮影した 4 つ状態の CT 画像を図 3-4-9 から図 3-4-12 に示す。

2020Aug 放電状態 2.8V

42.64 keV 46.72 keV 50.80 keV 54.88 keV

(32)

32

75.28 keV 79.37 keV 83.45 keV 87.53 keV

91.61 keV 95.69 keV 99.77 keV 103.85 keV

107.93 keV

図 3-4-9 CT 画像 2020Aug 2.8V

2020Aug 充電状態 3.1V

42.64 keV 46.72 keV 50.80 keV 54.88 keV

(33)

33

75.28 keV 79.37 keV 83.45 keV 87.53 keV

91.61 keV 95.69 keV 99.77 keV 103.85 keV

107.93 keV

図 3-4-10 CT 画像 2020Aug 3.1V

2020Feb 放電状態 2.8V

(34)

34

58.96 keV 63.04 keV 67.12 keV 71.20 keV

75.28 keV 79.37 keV 83.45 keV 87.53 keV

91.61 keV 95.69 keV 99.77 keV 103.85 keV

107.93 keV

(35)

35 2020Feb 充電状態 3.0V

42.64 keV 46.72 keV 50.80 keV 54.88 keV

58.96 keV 63.04 keV 67.12 keV 71.20 keV

75.28 keV 79.37 keV 83.45 keV 87.53 keV

(36)

36 107.93 keV 図 3-4-12 CT 画像 2020Feb 3.0V 図 3-4-9 から図 3-4-12 のように CT 画像の撮影に成功した。これらの CT 画像からでは充放 電による内部状態の変化は見られなかった。よって、CT 画像から線減弱係数を取得し解析 を進めた。

3-5 線減弱係数

ImageJ にて図 3-5-1 のように ROI の範囲を指定し、Analyze を選択し Plot Profile を選 択すると図 3-5-2 のように線減弱係数を得ることが出来る。

(37)

37

図 3-5-2 選択した ROI 範囲の線減弱係数(例 2.8V,50.8KeV)

42.6KeV から 107.9KeV までの線減弱係数を重ねたグラフを図 3-5-3 から図 3-5-6 に示す。

(38)

38

図 3-5-4 線減弱係数 2020feb2.8V

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39

図 3-5-6 線減弱係数 2020Aug 2.8V

それぞれの図から、二つの線減弱係数の高いピークが見られ、これをコイン電池のケースで あるため、ピークからピークまでが電池の範囲となる。そして、コイン電池の寸法より、電 池内部の構造を図 3-5-7 のように割り振った。

(40)

40

図 3-5-7 線減弱係数で見る内部構造

エネルギーに対応する線減弱係数を用いて電池内部を見ると、充電状態・放電状態では線 減弱係数の分布に変化があるように見える。特に高エネルギー側における線減弱係数は充 放電によって変化していることが見られる。

(41)

41

4 章 Li イオン分布解析

4-1 線減弱係数を用いた実効原子番号と密度決定法の提案

2-1 章で述べたように X 線減弱係数は以下の式であらわされる。 𝜇 =

𝜌

𝑁

𝐴

𝐴

𝑍

[𝑍4𝐹(𝑘, 𝑍) + 𝐺(𝑘, 𝑍)] =

𝜌

𝑒[𝑍4𝐹(𝑘, 𝑍) + 𝐺(𝑘, 𝑍)] (2 − 1 − 6) ここで、単元素物質の X 線減弱係数のエネルギー依存性(X 線減弱係数スペクトル)を測定 することで、原子番号 Z,密度ρを求めることができる。さらに、化合物の X 線減弱係数 スペクトルを測定すれば、化合物の平均的原子番号あるいは平均的密度を求めることがで きる。これを、化合物の実効原子番号あるいは実効密度とよぶ。 実効原子番号を求めることが出来れば Li イオンの分布が得られ、実効密度を求めることが 出来れば、反応分布を得ることができるため、実効原子番号と実効密度をもとに、電池内 の Li イオン分布評価することが可能であると考えた。そこで線減弱係数を用いて実効原 子番号と実効密度を決定する手法を提案する。[12] 以下に式を示す ∫ 𝑓(𝐸)𝑑𝐸 = ∫ 𝛼𝑔(𝐸, 𝑍)𝑑𝐸 𝐸2 𝐸1 𝐸2 𝐸1

(4 − 1 − 1) ∑|𝑓𝑖− 𝛼𝑔𝑖|2⟹ 𝑚𝑖𝑛 (4 − 1 − 2) 𝑓(𝐸):測定で得られた線減弱係数 𝛼:密度 𝑔(𝐸, 𝑍):XCOM から得た質量減弱係数 E:エネルギー (4-1-1)式では、あるエネルギーからエネルギーまでの測定した線減弱係数と、データベ ースの質量減弱係数の面積を比較することで、密度αを決定することが出来る。 (4-1-2)の式では、各元素と線減弱係数を比較し、差を二乗した値が最小となるとき、最 もその元素に当てはまるということから実効原子番号を決定することができる。

(42)

42

4-2 シミュレーション

NIST データベース XCOM[13]を用いてシミュレーションを行った。

負極材料である LiAl、正極材料である LiV2O5の Li のモル比を X とおき、Li の濃度(モル 比)を変化させたときの実効原子番号と実効密度の変化を(4-1-1)式、(4-1-2)式を用いて シミュレーションした。 図 4-1-1 電極にて Li を変化させたシミュレーション シミュレーション結果は、正極では X の値である Li イオンのモル比(Li イオン濃度)を 変化させたときに実効原子番号と実効密度の変化があまりみられないことが分かった。 一方で負極においては、X の値である Li イオンのモル比(Li イオン濃度)が変化したとき に実効原子番号と密度の変化が起きやすいという結果が得られた。 よって、負極に着目して解析を行うことにした。

(43)

43

4-2 充電状態・放電状態の線減弱係数の比較

シミュレーションの結果より Li イオンのモル比(Li イオン濃度)変化が起きた時、つま り充放電を変化させたとき、負極近傍で実行原子番号と密度に変化が起きやすいというこ とが分かったため、まず初めに放電状態と充電状態の線減弱係数を比較を行った。 測定した CT 画像から、3つのエネルギー(59.0keV,79,4keV,99.8keV)での、充電状態・放 電状態の線減弱係数を比較した。充電状態・放電状態の線減弱係数を比較したグラフを図 4-2-1、図 4-2-2 に示す。 図 4-2-1 線減弱係数(59.0keV,79,4keV,99.8keV) 2020Feb

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44 図 4-2-2 線減弱係数(59.0keV,79,4keV,99.8keV)2020Aug 図 4-2-1、図 4-2-2 より、今回着目している負極近傍で線減弱係数の変化があり、放電状 態では線減弱係数が充電状態よりも高くなり、また高エネルギー側ではこの変化が大きく なるということが見られた。

4-3 線減弱係数を用いた実効原子番号と密度決定法

4-2 章でのシミュレーションから、負極において充放電による実効原子番号・密度の変化 が起きやすいことが分かり、充放電によって負極で線減弱係数の変化が見られた。次に線減 弱係数を用いて実行原子番号と密度を求める。線減弱係数については、撮影した CT 画像の ROI 平均、CT 画像ピクセルから取得した。ROI 平均値線減弱係数での結果は 4-3-1 章、ピク セル単位の線減弱係数での結果を 4-3-2 章に示す。

4-3-1 ROI 平均の線減弱係数を用いた実効原子番号と密度決定法

4-1 章にて先述した、式(4-1-1)・式(4-1-2)を CT 画像 ROI 平均から得た線減弱係数に

(45)

45 適応した。結果を図 4-3-1-1、図 4-3-1-2 に示す。

(46)

46 図 4-3-1-2 実効原子番号と密度決定法 2020Aug 図 4-3-1-1 図 4-3-1-2 から、負極近傍の実効密度については、放電状態で実効密度は高く、 充電状態では低くなるという変化が見られた。この変化は放電状態ではリチウムが負極に 移動するという変化を反映しているものであると考える。また、シミュレーションの結果と も概ね一致するという結果が得られた。一方で、線減弱係数から求めた実効原子番号は、 シミュレーションと違う結果となった。原因のひとつとしてアーチファクトの影響であ ると考える。実効原子番号は線減弱係数の傾きに依存するため、線減弱係数に乗ってし まったアーチファクトによって傾きがわずかに変わるだけで、得られる実効原子番号が 大きく変わってしまっていると考える。これ以上にアーチファクトを減少させるために は、さらに角度情報を増やすことや、ピクセル数を増やす(移動ステップ数を増やす)、 アーチファクトの取り除く画像処理ソフトを作成することなどが考えられる。

4-3-2 ピクセル毎の線減弱係数を用いた密度決定法

4-3-1 章では、線減弱係数を用いた実効原子番号と密度決定法(式(4-1-1)、式(4-1-2))を CT 画像の ROI 平均の線減弱係数に適応した結果を示した。 次に電池内部の反応分布イメージングのため、先述した式(4-1-1)を CT 画像のピクセル 毎から得る線減弱係数に適応をした。その結果を図 4-3-2-1、図 4-3-2-2 に示す。 図 4-3-2-1 密度イメージング 2020Feb

(47)

47 図 4-3-2-2 密度イメージング 2020Aug 図 4-3-2-1 において、放電状態では負極側の密度が高く、充電状態になると負極側の 密度が下がることがわかる。これは、リチウムイオン電池の充放電による Li イオンの 動き(放電状態でLiイオンが正極側に移動、充電状態で負極側に移動する)を反映し ているといえる。また、密度の分布が均一でないことから、反応の分布が不均一である ということもわかる。 図 4-3-2-2 においても、放電状態では負極側の密度が高く、充電状態になると負極側 の密度が下がった。また、反応の分布も不均一であることがわかる。 このように、電池内部の反応分布を可視化することに成功した。

(48)

48

第5章 結論

CT 画像 ROI 平均から取得した線減弱係数を用いた密度決定法により、負極近傍にお ける充放電による密度の変化を観測することに成功した。また、この変化はシミュレー ションと同様な変化であった。 CT 画像ピクセル毎の線減弱係数を用いて、電池内部の空間分布イメージングによっ て、負極の電極反応分布を可視化することに成功した。さらに、不均一な電極反応の可 視化に成功した。 今後、充放電状態や劣化状態を変化させ様々なサンプルを測定することによって、反 応のしやすい領域・劣化のしやすい領域を判定することが出来ると考える。

(49)

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参考文献

[1]リチウムイオン電池の基本 (オンライン) (引用日: 2021 年 2 月 26) https://pub.nikkan.co.jp/uploads/book/pdf_file4fa08a3c3ccbf.pdf [2] 小山 昇.リチウムイオン二次電池の長期信頼性と性能の確保 サイエンス&テク ノロジー.エンネット株式会社.2016 年

[3] S. Taminato, M. Yonemura, S. Shiotani, T. Kamiyama, S. Torii, M. Nagao, Y. Ishikawa, K. Mori, T. Fukunaga, Y. Onodera, T. Naka, M. Morishima, Y. Ukyo, D. S. Adipranoto, H. Arai, Y. Uchimoto, Z. Ogumi, K. Suzuki, M. Hirayama and R. Kanno, Sci. Rep. 6, 28843 (2016).

F. Ding, W. Xu, G. L. Graff, J. Zhang, M. L. Sushko, X. Chen, Y. Shao, M. H. Engelhard, Z. Nie, J. Xiao, X. Liu, P. V. Sushko, J. Liu and J. G. Zhang, J. Am. Chem. Soc. 135, 4450-4456 (2013).

[4]K. Suzuki

et al

., J. Synchrotron Rad., 24, 1006 (2017)

[5]W. Zou et al. (2008) “Atomic Number and Electron Density Measurement Using a Conventional X-ray Tube and a CdTe Detector” Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 47, No. 9 [6]未来 CT~フォトンカウンティング CT について~(オンライン) (引用日: 2021 年 2 月 26) https://jsrt-tohoku.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/dc6d59811de866365243a8e096af3134.pdf [7] 小林結貴. 一素子 CdTe 検出器を用いたフォトンカウンティング CT システムの開 発. 群馬大学. 2018. 修士学位論文. [8] 松本政雄ほか (1996):CdTe, CdZnTe 検出器を用いて測定した診断用 X 線スペクト ルの補正、放射線、Vol.22, No.3. [9] Panasonic 電子デバイス・産業用機器. (オンライン) (引用日: 2021 年 2 月 1.) https://industrial.panasonic.com/cdbs/www-data/pdf2/AAF4000/AAF4000D41.PDF. [10]ImageJ. (オンライン) (引用日: 2021 年 2 月 26):https://imagej.nih.gov/ij/ [11] 非破壊で高精度な寸法測定を実現する X 線 CT 装置「TomoScope」(オンライン) (引 用日: 2021 年 2 月 26) https://tomoscope.com/technical-information/artifact ;2021 年 2 月 5 日参照 [12]M.Busi et al., NDT and E International 107(2019)102136

[13]NIST(米国立標準技術研究所). XCOM Photon Cross Sections Database. (オン ライン) https://physics.nist.gov/PhysRefData/Xcom/html/xcom1.html.

(50)

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謝辞

本研究の実験、解析を進める上で大変多くの御指導と御鞭撻を賜り、また、本論文にお いて始終適切なご指導を頂きました、群馬大学理工学府櫻井浩教授に心より感謝の意を 表し、厚く御礼申し上げます。 主査神谷富裕先生と副査古澤伸一先生に心より感謝の 意を表し、厚く御礼申し上げます。 本研究の検討を進める上で大変多くのご指導とご鞭撻を賜り、本論文において終始適切な ご指導を頂きました、国際技術センター取越正己教授に心より感謝の意を表し、厚くお礼申 し上げます。 本研究におけるプログラム作成や、データ解析を進める上で大変多くのご指導とご鞭撻 を賜りました、名古屋大学医学系研究科砂口尚輝准教授に心より感謝の意を表し、厚く お礼申し上げます。 本研究において、多くの御指導と御鞭撻を賜りました。 本研究において、始終適切な御指導と御鞭撻を賜りました、群馬大学理工学府鈴木宏輔 助教授に心より感謝の意を表し、厚く御礼申し上げます。 実験や解析を進める上で多くのご指導とご鞭撻を賜りました、群馬大学星和志講師に深 く感謝いたします 最後に、日頃より多くの御協力と激励を頂きました群馬大学理工学府櫻井浩研究室、古 澤伸一研究室、後藤民浩研究室の皆様に心から御礼申し上げます。 令和 3 年 3 月 1 日 群馬大学 理工学府 理工学専攻 電子情報・数理教育プログラム 櫻井研究室 修士 2 年 鈴木 駿太

図 1-3-3  データの重ね合わせ
図 3-1-8  装置全体の写真
図 3-1-15  CT 撮影プログラム
図 3-1-16  画像再構成プログラム  画像再構成プログラムのソフト画面を図 3-1-16 に示した。まず、フォルダ選択部分で測定 結果が入ったフォルダを選択して読み込む。次に Energy binning とは、例えばこの値を 20 とした場合、20ch 分の count を平均するという意味である。つまり binning をかけない場 合、ch ごとに 1024 枚の CT 画像ができるが、binning を 20 とした場合は 1024÷20=51.2 で 51 枚の CT 画像ができることになる
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参照

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