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特別支援学校における音楽づくりの可能性 : 音楽授業に関するアンケート調査から

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†障害児教育専修 障害児教育専攻 指導教員:白石恵理子 原 著 論 文

特別支援学校における音楽づくりの可能性

―― 音楽授業に関するアンケート調査から ――

岡 (黒田)

ひ ろ み

Possibility of Creative Music Making in Special needs school

―― From Questionnaire Research About Music lessons ――

Hiromi OKA (KURODA)

要 旨 研究の目的は,特別支援学校で音楽づくりを実践する可能性を探ることである。研究方法として「滋 賀県内特別支援学校の音楽授業の現状」についてのアンケート調査を行った。本調査の結果,特別支援 学校の音楽の授業と授業者の問題が明らかになった。音楽授業の課題は教育条件の貧しさであり,音楽 担当の先生の悩みは音楽の専門性がないことである。音楽づくりはこれらの課題を解決するものであり, 創造性豊かな自己表現活動であると筆者は考える。 Abstract

The objective of this study is to explore the possibility of making music in special needs school. Research methods is to conduct a survey : That title is “Current Status of music lessons of special needs school in Shiga Prefecture.”By this survey, to clarify the current state of music lessons and worry of music teacher for special needs school. Music lessons problem is the poverty of educational conditions, worry of teacher is that there is no musical expertise. I think making music is to solve these problems. And it is a highly creative self-expression.

キーワード:音楽づくり,特別支援学校,音楽授業,創造性,授業者の悩み 1 特別支援学校の音楽づくり 授業以外の場では好んで音楽と関わっている 子どもたちでも,音楽の授業には苦手意識を感 じている場合がある1)。なぜ音楽の授業は苦手 だと感じるのか。また音楽教育の意義は何なの か。 通常学校においては,音楽授業の課題に対し て,指導内容や指導方法の幅を広げることによ る解決策が数多く提起されている2)。筆者が注 目しているのは,学校の音楽教育が西洋音楽の 音楽的知識・技能の習得に大きく傾倒してきた ことによる弊害である。従来の音楽の枠組みで ある歌唱・器楽曲を再現することや,音楽的知

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識や技能の習得だけでなく,音楽の題材を広げ て,創造性豊かに自己表現する楽しさを実感で きる授業を増やすことが必要であると考える。 こうした観点に基づく授業が,音楽づくりであ る。 音楽づくりとは,1989 年の第 6 次改訂版か ら小・中学校学習指導要領に導入された音楽の 学習領域の 1 つであり3),1960〜1970 年代を中 心に音楽教育のあるべき姿を求めて,欧米で開 発された Creative Music Making (CMM) が 基になった音楽教育方法である。これは J. ペ インターと P. アストン著『Sound and Silence』 (1970)4)の 邦 訳 本『音 楽 の 語 る も の』(1982) で,創造的音楽学習として訳されている。音環 境を重視する M. シェーファーの影響も受けて 日本に導入されたものである。 その具体的内容は,音楽づくりの素材になる 音探しから子どもの主体性に委ね,現代音楽や 日本伝統音楽,世界の民族音楽などさまざまな 音楽要素や技法も取り入れて音を組み合わせて いく活動であり,従来の旋律創作やリズム遊び にとどまらない創造性豊かな自己表現活動であ る。 次に,特別支援学校の音楽づくりについてみ てみたい。 特別支援学校の学習指導要領では,小学部で 「自由に」,中高等部で「創造的に」という言葉 が記され,小学部 1 段階で音遊び活動が記され ているが,通常学校のように「音楽づくり」や 「創作」ということばは明記されていない。 特別支援学校音楽科教科書では,1989 年版 学習指導要領に基づいて作成された中学部用教 科書『音楽☆☆☆☆』で,音楽づくりの活動事 例が取り上げられている。 しかし,現場では音楽科教科書の存在すら知 らないことも多く,音楽づくりを実践している 人は少ないと推測した。 特別支援学校の音楽は「音楽そのものの指 導」だ け で な く,「音 楽 特 性 を 活 用 し た 時 間」5)も多い。本研究では,指導者の教育的意 図が明確にあり,計画的,組織的に行われる時 間である音楽の授業を取り上げる。 音楽の授業は,ある時は正しく美しい音で 歌ったり演奏したりすることが最大の目的にな り,子どもの主体性よりも仕上がりの良さに重 点が置かれることになる。一方で,「本当の音 楽」を演奏することは難しいという理由で,リ ラックスすることやその場限りの楽しさだけが 目的となる刹那的な授業もある。 障害のある子は表現内容や手段が限定されて いることが多い。限定されているからこそ,音 楽教育で表現の場を保障していくことが自己表 現の幅を広げ,豊かな自己実現にもつながる。 特別支援学校では障害や発達に応じた教育を するために教育課程の自主編成権が認められて いる。また特別支援学校用音楽科教科書や音楽 指導書6)が活用されていないことから,授業内 容やねらいは,同学部・同年齢・同じ発達段階 のクラスであっても学校や年度によって異なり, 多様な授業が行われている。 このため,授業内容は授業担当者に任される ことが多く,とりわけ高等部の場合は生活年齢 と発達年齢とのギャップが加わるため,担当者 の授業に対する悩みは大きいことが推測される。 実際に音楽授業の現状はどうなっているのか。 音楽担当者が大切にしている授業とは何か。授 業に対する悩みはどこにあるのか。 筆者は,特別支援学校の音楽授業に音楽づく りを取り入れることで,創造性豊かな自己表現 活動ができると考える。そこで本研究では,ま ず特別支援学校の音楽授業の実態と課題を明ら かにしたい。その結果をもとに,特別支援学校 における音楽づくりの可能性について考察して いく。 2 「養護学校高等部の音楽授業の現状と 課題」アンケート調査 特別支援学校音楽授業についてのアンケート 調査を行った。本調査は,音楽授業の現状を捉 える項目と,音楽づくりを行う可能性を探る項 目から構成されている。 今回の調査では,発達年齢と生活年齢との ギャップが大きいために授業の悩みが大きいと 考えられる高等部の音楽授業を対象にした。 1) 調査の目的 調査の目的は,特別支援学校における音楽授

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業の実態を捉えることと,音楽づくりの可能性 を探ることである。 2) 調査の方法 「滋賀県内養護学校高等部での音楽授業の現 状と課題」についてのアンケート調査を行った。 調査対象は,滋賀県内の養護学校高等部であ る (県立盲・聾話学校を除く。また高等部を対 象にしているため,高等部が設置されていない 守山養護学校は調査対象から除いている。なお 県立学校ではないが,滋賀大学附属特別支援学 校も県内の高等部のある養護学校であるため調 査に含めた)。 高等部の音楽授業主担当者に対してのアン ケート調査とあわせて,授業参観と聞き取りを 行った。 具体的には,音楽授業主担当者と当該学校の 管理職に電話および文書で依頼し,調査承諾を 得られた後,高等部音楽授業を参観し,参観終 了後に授業主担当者に対象生徒の音楽の実態課 題や,授業で付けたい力や音楽づくりについて の聞き取り調査を行い,アンケート記入を依頼 した。また,授業参観及び聞き取り実施者以外 のクラス,グループの音楽主担当者にもアン ケート調査を依頼することで,各校高等部の音 楽主担当者全てを調査の対象にした。依頼後一 週間をめどに直接あるいは郵送での回収を行っ た。 調査期間は,2011 年 9 月 7 日から 11 月 17 日までである。調査対象校は 12 校,調査対象 者 (調査票配布数) は 49 人であり,回収率は 100% である。また,複数クラス・グループの 授業を担当している人が 14 人いるので,対象 と し た 授 業 ク ラ ス・グ ル ー プ は 73 で あ る。 よって調査項目毎の N は,指導者数 49 の場合 と,対象クラス・グループ数 73 の場合とがあ る。 但し質問項目によっては無回答の欄もあるた め,全ての質問項目での回答率が 100% ではな い。 筆者が訪問して直接回収した学校は,北大津 養護・新旭養護・三雲養護・滋賀大学教育学部 附属特別支援・野洲養護の 5 校,郵送で回収し たのは草津養護・長浜高等養護・甲南高等養 護・鳥居本養護・八日市養護・甲良養護の 6 校, 所属教員経由で回収したのは長浜養護 1 校であ る。 調査項目は大別すると,問 1 は「音楽 (的 な) 授業について」であり,問 2 は「アンケー ト記入者の属性」に関するものである。 集 計 お よ び 分 析 に つ い て は,統 計 ソ フ ト 「SPSS 13. 0J」と「Microsoft Excel 2010」を使 用し,統計処理及びグラフ作成を行った。 【調査項目】 調 査 項 目 は,問 1 の「音 楽 の 授 業」で は, (1) 1 授業時間の長さ,授業曜日,授業時間帯, (2) 音楽の授業集団,(3) 1 クラス・グループ の生徒数や指導者数,(4) 授業場所,(5) 授業 計画の参考にしたもの,(6) 音楽づくり実践の 有無,(7) 音楽づくりの授業内容,(8) 音楽づ くりをしていない理由,(9) 音楽を活用してい る時間,(10) 高等部の音楽授業で大切にした いこと,(11) 音楽授業の悩みや考え,(12) 音 楽授業・教材研究会の参加希望について回答を 求めた。 問 2 の「音楽主担当者の属性」では,(1) 教 職経験年数,(2) 経験学校種別・学部・経験年 数・音楽の主担当経験年数,(3) 所持免許, (4) 楽器演奏経験についての回答を求めた。 それぞれ単純集計の後に,関連のある項目同 士のクロス集計を行った。 3 結果と考察 初めに,音楽授業についての結果と考察を行 う。次に回答者の属性についての結果と考察を 行い,最後に音楽づくりの授業実践について, 関係する項目同士のクロス集計で特徴を明らか にしていきたい。 1) 音楽授業についての結果と考察 ① 教育課程上の授業の位置づけ 「1 授業時間の長さ」は,通常学校に準じて 週 1 回 40 分〜50 分が多いが,生徒の実態に応 じて学校裁量で工夫されている。「授業時間帯」 は午後の時間帯に行われていることが多く, 「授業曜日」は月曜日が多く水曜日は少ない。

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これは学校事情や生徒の実態が関係していると 推測される。 「1 授業時間の長さ」は表 1 に,「授業時間 帯」は表 2 に,「授業曜日」は表 3 に示す。 ② 音楽の授業集団 授業集団の単位は学年別や等質集団で分けて いる学校もあるが,ほとんどが課題別集団で分 けられている。所持免許教科完全担当制の学校 では,学年別選択制がとられている。 表 4 に「音楽の授業集団」について示す。 ③ 学習クラス・グループの生徒平均人数 学習クラス・グループの生徒平均人数は約 10 人である。30 人以上の集団もあるが,多く は 10 人以下である。指導者 1 人あたりの生徒 の数は,最大 8.5 人,最小 1 人であり,生徒数 が多いのは比較的軽度の生徒のクラス・グルー プである。障害種別は,肢体障害生徒だけの重 度クラスや,自閉症だけのクラスがあるが,ほ とんどは障害種別混合の集団である。 ④ 授業場所 授業場所は,本来の授業場所である音楽室で 行われているのは全体の 1/3 以下であり,教室 で行われていることが多い。適切な授業場所が ないことは,授業者の悩みの 1 つに挙げられて いる。 表 5 に「音楽の授業場所」を示す。 ⑤ 年間授業計画作成時に参考にしたもの 年間授業計画作成時に参考にしたものは, 「過去の年間指導計画」が最も多く,次に「自 分の音楽経験や知識」と「実践のまとめ」であ る。「小中学校や特別支援学校の学習指導要領」 や「勤務校の指導内容表」を参考にしている人 は少なく,「特別支援学校の音楽教科書」を参 考にしている人はわずか 1 人であった。 また,クロス集計で見えてきた特徴として, 音楽免許所持者が,「自分の音楽経験や知識」 を参考にしていることが多いことは推測してい たことであるが,音楽免許非所持者も,「自分 の音楽経験や知識」を参考にしている人が多 かったのは,意外な結果であった。筆者は音楽 の免許がない人は専門性が少ないため,自分の 音楽的知識や経験は参考にする人は少ないと考 えていた。これについては今後より詳しい考察 が必要である。 ただ,自分の音楽経験や知識が授業内容に関 係するということは,授業がマンネリ化する可 能性もあるが,チャンスがあれば短期間の研修 表 1 1 授業時間の長さ クラス・グループ % 40 分 未 満 7 9.6 40 分から 60 分未満 42 57.5 60 分以上 120 分未満 14 19.2 120 分 以 上 4 5.5 無 回 答 6 8.2 計 73 100.0 表 2 授業時間帯 クラス・グループ % 午前の前半時間帯 5 6.8 午前の後半時間帯 18 24.7 午 後 の 時 間 帯 47 64.4 無 回 答 3 4.1 計 73 100.0 表 3 授業曜日 クラス・グループ % 月 曜 日 20 27.4 火 曜 日 14 19.2 水 曜 日 4 5.5 木 曜 日 16 21.9 金 曜 日 15 20.5 無 回 答 4 5.5 計 73 100.0 表 4 音楽の授業集団 人 % 学 年 別 2 4.1 学年ごとに選択制 2 4.1 課 題 別 31 63.3 基 礎 集 団 13 26.5 無 回 答 1 2.0 計 49 100.0 表 5 音楽の授業場所 クラス・グループ % 音 楽 室 20 27.4 教 室 35 47.9 プ レ イ ル ー ム 7 9.6 そ の 他 10 13.7 無 回 答 1 1.4 計 73 100.0

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会や講習会での経験が授業内容にすぐに反映さ れる可能性が高いことも示している。 表 6 に「授業計画の参考にしたもの」を,表 7 に「音楽免許所持と参考にしたものとの関 係」を示す。 ⑥ 音楽づくりの実践 音楽づくりを実践したことがある人は 23 人, したことのない人は 25 人であり,約半数の人 が実践していた。 表 8 に「音楽づくりの実践の有無」について 示す。 ⑦ 音楽づくりの授業の内容 実践された授業内容は様々であった。 音そのものに関心を向ける活動として,「衝 立の陰で鳴らした楽器当て」「身近な木の葉や 石 で 音 を 出 す」「好 き な 楽 器 を 自 分 で 選 ぶ」 「デッキブラシ,樽やボウルでの音楽づくり」 「身近な物の音当て」「タップダンスでの音遊 び」「リズム遊びとしてのボディーパーカッ ション」など,「音当て」「音探し」「音選び」 「音遊び」活動としてまとめられるものがあっ た。 また,「ピアノに合わせての楽器鳴らし」「音 の組み合わせ方を考える」「終わりを自分で決 めるリズム自由演奏」「ストンプ7)」「即興演 奏」など,一定のまとまりのある音楽をつくる 活動も記述されていた。 これらの記述は,筆者にとって大変興味深い 内容であり,今後の音楽づくりのヒントになる ものであった。 ⑧ 音楽づくりをしていない理由 音楽づくりをしたことのない理由として最も 多かったのは,「対象生徒には難しいから」で あった。 筆者は,特別支援学校で音楽づくりを取り入 れる良さの 1 つが,どのような段階の生徒でも 音楽づくりで楽しむことはできることであると 考えている。 そのためには対象生徒の実態と課題に応じて 教材や活動内容,提示や取り組み回数などの指 導方法を工夫することが大切である。 表 9 に「音楽づくりをしていない理由」につ いて示す。 ⑨ 音楽授業の他に音楽を活用している時間 音楽授業の他に音楽を活用している時間は多 かった。日常的に行っている「朝の会」や「帰 表 6 授業計画の参考にしたもの (複数回答) N=49 参考にしたもの 人 % ① 中高等学校学習指導要領 6 12.2 ② 特別支援学校学習指導要領 10 20.4 ③ 特別支援学校音楽教科書 1 2.0 ④ 勤務校の指導内容表 7 14.3 ⑤ 自分の音楽経験や知識 36 73.5 ⑥ 過去の年間指導計画 38 77.6 ⑦ 実践のまとめ 21 42.8 ⑧ その他 「経験者からのアドバイス」1, 「小中高教科書」3, 「Piano」1, 「生徒の実態」1 6 12.2 表 7 音楽免許所持と参考にしたものとの関係 自分の音楽経験・知識 合計 参考にした 参考にせず 音楽免許 ある 12 2 14 ない 21 9 30 無回答 3 2 5 合 計 36 13 49 表 8 音楽づくりの実践の有無 人 あ る 23 な い 25 無 回 答 1 計 49 表 9 音楽づくりをしてない理由 (複数回答) N=25 理由 人 % ① 対象生徒には難しいから 10 40.0 ② 対象生徒には易しすぎるから 0 0 ③ 考えたことがなかった 4 16.7 ④ どんなことをすればよいかわから ないから 3 12.0 ⑤ 機会があればやろうと思っていた 5 20.0 ⑥ その他 「楽器に親しみが持てていないため, そこまでいけない」「音楽を担当す るのが今年度初めてだから」「同じ 学年でも個人の持っている力の差が 大きいため」 3 12.0

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り の 会」だ け で な く,ラ ン ニ ン グ や 行 事 の BGM や休憩時間などさまざまな場面で活用さ れていた。 表 10 に「音楽を活用している時間」を示す。 ⑩ 音楽の授業で大切にしたいこと 「高等部の音楽授業で大切にしたいことは何 ですか」に対する自由記述回答の結果を,以下 のように分類した。① 友達と一緒にすること, ② 楽しむ・リラックス・雰囲気を楽しむこと, ③ 本物・プロの音楽に触れる機会を作ること, ④ 表現力をつける・主体性や自信を持つ・発 表すること,⑤ 興味関心や好きなことを増や し広げること,⑥ 生活年齢に応じた内容で行 うこと,⑦ 卒業後や余暇を充実させること, ⑧ 音楽的知識・技能のレベルアップをはかる ことの 8 項目である。 分類した結果を示したのが,表 11 である。 回答の中で多かったのは,② 授業を楽しむ こと ④ 主体的に表現できることで,それぞ れ半数近くあった。次に多かったのが ⑤ 音 楽の関心を広げることであった。 具体的な自由記述の中には,「型にとらわれ ずに」や「技術よりも自分を表現する力」とい う記述があり,歌唱や器楽の再現演奏ではなく, より自由に表現できる音楽づくりを意識した回 答もみられた。他にも「のびのび」「思いっき り」「何でもすること」「思わず動き出す」「表 情・声・身体の動きも」と,音楽の時間に思う 存分に自己表現できることを大切にする回答が 多かった。 ⑪ 音楽授業の悩みや考え 音楽授業の悩みや考えについての自由記述回 答の結果である。 「音楽の専門ではないので音楽の知識や技能 が伴わず授業で何をすれば良いか悩む」と「授 業内容についての悩み」について回答した人が 多かった。他に「生徒の実態幅が広いこと」や 「生活年齢に応じた内容」に関係した授業内容 の悩みと合わせると,回答者の多くが授業内容 について悩んでいることがわかった。その他に 「多忙のためにサブ指導者との連携がとりにく いこと」や「楽器や設備不足」などの教育条件 に関係する回答もあった。 表 12 に「音楽授業の悩みや考え」を示す。 ⑫ 音楽研究会 音楽研究会については,ほとんどの人が参加 表 10 音楽を活用している時間 (複数回答) N=49 音楽活用の時間 人 % ① 朝の会 17 34.7 ② 帰りの会 11 22.4 ③ 給食前 3 6.1 ④ その他 「コンサート」「昼休み」「体育の時間 のリズム表現」「体育の BGM」「行事・ 文化祭の合唱・合奏発表会」「おはな しや読み聞かせ」「劇遊び」「自立活 動」「各授業の始まりに覚醒を促す」 「各授業を歌で印象づける」「LHR」 「休憩時間」「卒業式」「老人ホーム訪 問ミニコンサート」「学部レク」 15 30.6 表 11 音楽授業で大切にしたいこと (複数回答) N=43 人 % ① 友達と一緒 9 18.4 ② 楽しさ・リラックス・雰囲気 20 40.8 ③ 本物の音楽 2 4.1 ④ 表現力・主体性・自信・発表 21 42.9 ⑤ 関心を広げる・親しむ 14 28.6 ⑥ 生活年齢に応じたこと 3 6.1 ⑦ 卒業後・余暇の充実 5 11.6 ⑧ レベルアップ 4 9.3 ⑨ その他 「活動にメリハリを付けること」「身 体で表現すること」「簡単な楽器を 手作りさせること」 3 6.1 表 12 音楽授業の悩みや考え (複数回答) N=39 人 % ① 専門外 13 33.3 ② 授業内容・方法 10 25.6 ③ サブ指導者との連携 3 7.7 ④ 生活年齢 7 17.9 ⑤ 楽器・設備不足 6 15.4 ⑥ 課題の幅広さ 8 20.5 ⑦ その他 「身近な物を使った楽器を作りたい」 「手作り楽器がほしい」「音楽劇や楽 器作りをしたい」「発表する機会が ほしい」「生演奏を聴く機会がほし い」「生徒自身が自分たちのやりた いことに力が追いついていない」 「教材一覧表がほしい」 8 20.5

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したいと考えていた。 「参加するかどうかは研究会の内容による」 と記述している人もいたことから,研究会に求 めることが,音楽に関する全般的な情報や知識 技能の習得である場合と,より絞り込んだテー マである場合との両方があると考えられる。 表 13 に「音楽研究会への参加希望」を示す。 2) 回答者の属性についての結果と考察 ① 教職経験年数の平均 教職経験年数の平均は 13 年であるが,2〜10 年の年数層に大きな山があり,全体の 50% 足 らずを占めている。高等部の経験年数でみると, 2〜10 年の経験層が全体の 75% を占めている。 音楽の主担当経験でいくと,1〜3 年と,年数 がごく浅い層が 60% 弱を占めている。 ② 経験学校種別 経験学校種別では,特別支援学校内での学部 間人事で小学部や中学部の経験のある人が多い ことは予想されたが,中学校や高等学校の経験 者も半数程度占めていた。高等部のみの経験者 が 10 人と多かったことは,上述した教職経験 年数及び高等部経験年数が少ないことと考え合 わせると当然の結果である。 表 14 に「経験学校種別」を示す。 ③ 所持免許 所持免許については,特別支援学校の免許保 持者は 55% であり,音楽免許所持者は 28.6% であった。続いて多いのが社会科と保健体育科 であった。音楽の授業にもかかわらず音楽の免 許を持っている人が 1/3 弱であるのは,予想以 上に少ない数字であった。 表 15 に「所持免許」を示す。 ④ 楽器経験について 演奏できる楽器が多い順に,ピアノ,エレク トーン,ギター,ドラム,バイオリンである。 これは音楽免許所持の有無にかかわらず同じ である。また音楽免許を持っていない人は演奏 できる楽器は少ないが,ギターを演奏できる人 に限れば,その割合は音楽免許所持者よりも高 かった。 表 16 に「楽器経験」について示す。 表 13 音楽研究会への参加希望 人 % 思 う 42 85.7 思 わ な い 2 4.1 内容により参加したい 1 2.0 無 回 答 4 8.2 計 49 100.0 表 14 経験学校種別 (複数回答) N=45 人 % ① 小学校 4 8.2 ② 中学校 9 18.4 ③ 高等学校 12 24.5 ④ 特別支援学校の小学部 18 36.7 ⑤ 特別支援学校の中学部 19 38.8 ⑥ その他 寄宿舎 1 人,音楽教室 2 人 3 6.1 ⑦ 特別支援学校・高等部のみ 11 22.4 表 15 所持免許 (複数回答) N=44 所持免許 人 % ① 小学校 10 22.7 ② 中学校 (音楽) 14 28.6 ③ 中学校 (社会) 12 24.5 ④ 中学校 (国語) 2 4.1 ⑤ 中学校 (保健体育) 8 16.3 ⑥ 中学校 (英語) 2 4.1 ⑦ 中学校 (美術) 1 2.0 ⑧ 中学校 (理科) 2 4.1 ⑨ 高等学校 (音楽) 14 28.6 ⑩ 高等学校 (社会) 11 22.4 ⑪ 高等学校 (国語) 2 4.1 ⑫ 高等学校 (保健体育) 8 16.3 ⑬ 高等学校 (理科) 3 6.1 ⑭ 高等学校 (英語) 2 4.1 ⑮ 高等学校 (美術) 1 2.0 ⑯ 高等学校 (福祉) 1 2.0 ⑰ 特別支援学校 27 55.1 ⑱ 幼稚園 3 6.1 注:中学音楽の免許所持者は同時に高等学校音楽免許所持者 でもある。 表 16 楽器経験 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ ピアノ 10 19 7 7 6 エレクトーン 0 14 14 14 7 ギター 2 6 15 20 6 バイオリン 0 2 3 36 8

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3)「音楽づくりの授業実践」について ①「音楽免許所持」と「音楽づくり」との関 係 「音楽免許」と「音楽づくりの実践」との関 係は,「音楽免許所持者」で「実践あり」が 10 人,「実践なし」は 4 人であり,音楽免許を 持っている人の方が,実践したことのある割合 が高かった。 また音楽の免許を持った人の中には,「琉球 音階での旋律づくり」「音楽ソフトでの作詞作 曲活動」「一小節に当てはまる拍数を考えたリ ズムづくり」など,ソルフェージュ的な力が必 要な音楽づくりをしている人と,自由な発想で の創造性豊かな自己表現活動をしている人の両 方がみられた。 表 17 に「音楽免許所持と音楽づくりとの関 係」を示す。 ②「授業で大切にしたいこと」と「音楽づく り」との関係 「授業で大切にしたいこと」と「音楽づくり」 との関係を見てみた。 音楽づくりを実践している人は「④表現力」 (12 人,57%) と「関心を広げること」(8 人, 57%) を大切にしたいと考えている。反対に 「余 暇 の 充 実」(1 人,20%)「楽 し さ」(6 人, 30%)「生活年齢」(1 人,33%) を大切にした いと考えている人は,音楽づくりを実践してい る人が少ないことがわかった。 また,「楽しいことが大切だと考えている人 (20 人)」のうち音楽づくりを実践していない のは (14 人) であるが,実践していない理由 は,多い順に「対象生徒には難しいから」(6 人),「考えたことがなかった」(3 人),「どん なことをすれば良いかわからないから」(2 人), 「機会があればやろうと思っていた」(1 人) で あった。 一方,「表現力を付けることが大切だと考え ている人 (21 人)」のうち音楽づくりを実践し ていないのは (8 人) であるが,その理由は多 い順に「対象生徒には難しいから」(3 人)「機 会があればやろうと思っていた」(3 人) で あった。 つまり「表現力を付けることが大切」である と考えている人は,音楽づくりを実践している 人が多く,今実践していない人でも「機会があ ればやろうと思っていた」という人がいる。一 方,「楽しいことが大切」だと考えている人は 音楽づくりをしていない人が多く,その理由は 「対象生徒には難しい」と思っている人が多い ということがわかった。 表 18 で「授業で大切にしたいことと音楽づ くりとの関係」を示す。 表 16 楽器経験 ドラム 1 5 8 27 8 その他 三線,リコーダー各 4 人,クラリネット,ウクレレ 各 3 人,箏・琴,ホルン,トランペット・和太鼓各 2 人,パーカッション類・声楽・打楽器全般,サク ソフォン・チェンバロ・篠笛・オカリナ・オーボ エ・トロンボーン・ケーナ・チェロ 各 1 人 Ⅰ よく演奏できる Ⅱ 少し演奏できる Ⅲ あまり演奏できない Ⅳ 全く演奏できない (経験がない) Ⅴ 無回答 表 17 音楽免許所持と音楽づくりとの関係 音楽づくり実践 合計 あ る な い 音楽免許 ある 10 4 14 ない 11 18 29 無回答 2 3 5 合 計 23 25 48 表 18 授業で大切にしたいことと音楽づくりとの関 係 (複数回答) N=43 A(人) 音楽づくり 実践あり B (人) B/A(%) ① 友達と一緒 9 5 55 ② 楽しさ・リラックス・ 雰囲気 20 6 30 ③ 本物の音楽 2 2 100 ④ 表 現 力 ・ 主 体 性 ・ 自 信・発表 21 12 57 ⑤ 関心を広げる・親しむ 14 8 57 ⑥ 生活年齢に応じたこと 3 1 33 ⑦ 卒業後・余暇の充実 5 1 20 ⑧ レベルアップ 4 2 50 ⑨ その他 「活動にメリハリを付 けること」「身体で表現 すること」「簡単な楽器 を手作りさせること」 3 0 0

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4 特別支援学校での音楽づくりの可能性 特別支援学校における音楽担当者は音楽の免 許がない人の方が多く,教職経験及び音楽の主 担当経験も,年数が浅い層が多い。楽器演奏経 験はピアノでも約半数の人が「あまり」「全く」 演奏できず,ほかの楽器については演奏できる 人はわずかであることが分かった。 授業については,生徒が楽しめることや,主 体的な表現を大切にしたいけれども,そのため の方法がわからないと考えている人が多い。音 楽担当者は音楽の専門的な知識や技能がないこ とや,楽器の種類や数が少ないこと,音楽専用 の授業場所がないこと,生徒の実態幅が広く課 題が絞りにくいことなどに悩んでいることが明 らかになった。 また音楽づくりを実践している人は約半数で あり,音楽の免許を持っている人の方が音楽づ くりを実践している人の割合が高かった。音楽 づくりを実践していない理由は,「対象生徒に は難しいから」と考えている人が多かった。 筆者は,音楽づくりは,生活年齢や発達段階 を問わず様々な実態の生徒ができる活動である と考えている。また,集団で取り組むことで, お互いの表現を受け止め,作った音を共有する ことに大きな意味がある。 また音楽づくりは西洋音楽の知識や技能が不 可欠な活動ではないことや,高価な既成楽器で ないものでも楽しめる活動であることから,授 業者の悩みに答える解決策の 1 つでもある。 本研究で明らかになった特別支援学校の音楽 の現状及び課題を考えると,音楽の授業で積極 的に音楽づくりを取り入れることで新しい音楽 観に出会った喜びを感じ,創造性豊かな自己表 現を行うことが出来ると考える。 今後も引き続き,通常学校で行われている音 楽づくりの実践的意義を参考にしながら,特別 支援学校で行う音楽づくりの実践的意義を明ら かにしていきたいと考えている。 注 1 ) 杉江淑子『10 代半ばの年齢層の音楽空間と音 楽的趣味・嗜好の形成』調査報告書 (2004) p. 79 2 ) 特に中学校音楽教科の危機感については市川 (2005) が「中央教育審議会のまとめが次期教 育課程における中学校音楽科にとってかなり 厳しい内容になりかねない」と訴えている (市川俊行『全日本中学校音楽教育研究会会報 (2005) 通算第 46 号』愛知総合大会 平成 17 年 10 月 13 日会長挨拶から抜粋)。 ヨイサの会 (横川雅之 池田邦太郎 斉藤明 子)『「音」を「楽」しむ『音楽』:の旅』音楽 之友社 (2001) p. 14 神代充史『創造力をつける手づくり楽器』音 楽之友社 (1995) 八木正一ら『遊び・ゲームでつくる音楽授業』 学事出版 (1999) 中島寿『つくって表現する』国土社 (1992) p. 2 熊木眞見子『創造的に取り組む身体表現』音 楽之友社 (1995) p. 11 松本恒敏 山本文茂『創造的音楽学習の試み』 音楽之友社 (1985) pp. 12-13 3 ) 学習指導要領第 6 次改訂版で小学校では「音楽 をつくって表現できるようにする」,中学校高 等学校では「創作」として明記され,第 8 次 改訂版の小学校では「音楽づくり」と名称変 更され,より明確に CMM の活動内容が定義 づけされた。

4 ) John Paynter and Peter Aston (英)『Sound and Silence』Cambridge・at The University Press (1970) 山本文茂・坪能由紀子・橋都みどり訳『音楽 の語るもの』(1982) 音楽之友社 1980 年に独・伊等 5 カ国語に翻訳され,蘭・ スウェーデンで部分訳されている。 5 ) 山本 (1998) や緒方 (2000) は「音楽特性を活 用した時間」と「音楽そのものの指導」を区 別して使用している。緒方 (2000) は,「養護 学校では, (音楽は) 教科だけでなく,養護・ 訓練,生活単元,登校,朝の会から,帰りの 会,下校までのあらゆる時間に音楽が活用さ れている」と記している。(山本富士子「ラウ ンドテーブルⅦ報告」『日本学校音楽教育研究 会紀要』1998)。 緒方茂樹「障害児教育における音楽を活用し た取り組み (1) : データベースからみた特殊教 育緒学校の現状」『琉球大学教育学部障害児教 育実践センター紀要 2』(2000) 6 ) 斉藤一雄「養護学校小学部用音楽科教科書の分 析」『日本学校音楽教育研究会紀要』(2003)

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7 ) 自分の手足,鍋,デッキブラシ,バケツなど本 来楽器でないものを使うパフォーマンスのこ と

参照

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