Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Influence of Mandibular Fixation Method on
Stability of the Maxillary Occlusal Plane after
Occlusal Plane Alteration
Author(s)
与謝野, 明
Journal
歯科学報, 110(4): 514-515
URL
http://hdl.handle.net/10130/1994
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 外科的矯正治療において,よりよい術後の結果を得ることを目的に,下顎単独の手術ではなく上下顎移動術 により,咬合平面の改善を行うことがある。特に骨格性上顎前突症に関して,咬合平面を改善した報告が多く 認められるが,骨格性下顎前突症に関してはほとんど認めない。しかし,骨格性下顎前突症に対して咬合平面 を時計回りに回転させることは,術後の審美性,機能性,安定性において良い結果を得られると考えられてい る。そこで,本研究では骨格性下顎前突症に対して咬合平面の改善を行った場合の上下顎骨の安定性に重点を 置き,下顎の固定法の違いにより比較検討を行った。 2.研 究 方 法 対象は,骨格性下顎前突症の診断により東京歯科大学千葉病院において上下顎移動術を行った患者16名(男 性3名,女性13名)であった。 方法は,全ての患者に対して同一の口腔外科医により上下顎移動術が施行され,上顎の後方部を上方へ移動 することにより,上顎の咬合平面の改善を図った。骨片の固定は,上顎は頬骨下稜部をチタン製ミニプレー ト,梨状孔側縁部を吸収性ミニプレートで行った。下顎は骨貫通スクリューで固定した群(グループ S)とチタ ン製ミニプレートで固定した群(グループ P)にわかれた。観察方法は術前,術後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月,1 年に撮影した側面頭部 X 線規格写真を用いて Sassouni 弧線分析と Ricketts 分析による解析を行い,各計測項 目の術後の変化,および2群間での違いの比較を行った。 3.結果および考察 下顎骨は,術後,B 点,Pogonion ともに垂直的にわずかに上方へ移動している傾向があるが,どの期間で も変化に有意差は認められなかった。水平的にはグループ S では術後に前方へ約0.4ミリの移動を認め,グ ループ P では有意に前方へ移動し,B 点で約1.4ミリ,Pogonion で約2ミリであった。 上顎骨は,術後では,PNS は両グループとも水平的に有意な移動はなく,垂直的にわずかに下方へ移動し ていた。ANS は水平的に後方へわずかに移動していた。垂直的には,グループ S では有意な変化はなく,グ ループ P では上方への移動を認めた。その結果,両グループで S-N palatal plane angle の減少を認めたが,そ の量はグループ P の方が大きかった。また,下顎の後戻り量と上顎の ANS,PNS の後戻り量との間に相関を 氏 名(本 籍) よ さ の あきら
与 謝 野
明
(東京都) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1703 号(甲第 986 号) 学 位 授 与 の 日 付 平成19年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Influence of Mandibular Fixation Method on Stability of the Maxillary Occlusal Plane after Occlusal Plane Alteration
掲 載 雑 誌 名 The Bulletin of Tokyo Dental College 第50巻 2号 71∼82頁
2009年 論 文 審 査 委 員 (主査) 柴原 孝彦教授 (副査) 山口 秀晴教授 佐野 司教授 松久保 隆教授 歯科学報 Vol.110,No.4(2010) 514 ― 68 ―
認めた(ANS:R2 =0.455,PNS:R2 =0.5371)。 結果が示すように,今回下顎に関しては従来の報告通りスクリューで固定した場合の方が安定していたが, プレートで固定した場合でも良好な結果を得た。それは,咬合平面を改善したことが一つの要因と考えられ た。また,上顎の安定性についても下顎の固定法で違いが認められた。上顎は,下顎と咬合しており咬合に よって垂直的,水平的に力を受けている。すなわち,咬合力が上顎の安定性に影響することが考えられ,下顎 の後戻り量が増大するにつれ,上顎が反時計回りに回転すると考えられた。 4.結 論 両グループを比較した場合,下顎はスクリューで固定した方がプレートで固定した場合よりも水平的,垂直 的安定性に優れていた。上顎も,下顎をスクリューで固定した方がプレートで固定した場合よりも垂直的に安 定していた。よって,咬合平面を時計回りに回転させ,改善を図った場合,術後,咬合平面の反時計回りの回 転を防ぐには,下顎を強固に固定し,上顎,下顎ともに安定させる必要があると考えられた。 論 文 審 査 の 要 旨 咬合平面の改善は,よりよい審美性,機能性などを得る為に行なわれる。骨格性上顎前突症の治療において は,咬合平面の改善について多くの報告を認めるが,骨格性下顎前突症においては認められない。本研究では 骨格性下顎前突症において上下顎移動術を行い,咬合平面を時計回りに回転させた場合の安定性について,下 顎の固定法により比較を行った。 その結果,下顎をスクリューで固定した場合の方が,プレートで固定した場合と比較して上顎,下顎ともに 術後安定していた。よって,術後の上顎の反時計回りの後戻りをより小さくする為には,下顎をより強固に固 定すべきであることが示唆された。 本審査委員会では,1)歯突起を示す定義,2)固定法以外の術後の後戻りの要因,3)下顎の固定法の選 択基準,4)年齢差の有無,5)咬合平面の改善が術後の結果に及ぼす影響,6)3次元分析ではなくセファ ロ分析を用いた理由などについての質疑が行われ,概ね妥当な回答が得られた。また,論文の記述に関して, 主題,目的,結論の一貫性の付与,グラフの表記の修正,回帰分析の削除と相関係数の追加,咬合平面の設定 基準についての追記,単語,英文の校正などの指示がなされた。 本研究で得られた結果は,今後の口腔外科学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値するも のと判定された。 歯科学報 Vol.110,No.4(2010) 515 ― 69 ―