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外渡_納品用_年報10小岩広平氏1C_三[ ]_ pdf

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(1)

−きっかけとなる受け手の言動に着目して−

著者

小岩 広平

雑誌名

東北大学大学院教育学研究科研究年報

69

2

ページ

171-190

発行年

2021-06-28

URL

http://hdl.handle.net/10097/00132041

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 本研究では,現代青年の友人関係におけるからかい行動の発生を問題とし,きっかけとなる受け 手の言動を分類した上で,それぞれの言動に対するからかいの目標を明らかにすることを目的とし た。大学生340名を対象とした質問紙調査を行った。からかいのきっかけとなる受け手の言動を分 類したところ,「個性的な言動」「怠学な言動」「迷惑な言動」「退屈な言動」の4つに分類された。さ らに現代青年は,「個性的な言動」「怠学な言動」「退屈な言動」に対してはユーモアを目標に,「迷惑 な言動」に対しては攻撃的な意図で,それぞれからかいを行うことが示された。これらの結果から, 現代青年の友人関係においては,社会規範からの逸脱により遊びとしてのからかいが,友人関係を 揺るがすような逸脱により攻撃としてのからかいが,それぞれパターン化する可能性がそれぞれ示 唆された。 キーワード:からかい,「いじり」,きっかけ,からかいの目標 , 友人関係

Ⅰ.問題と目的

現代青年の友人関係とユーモア志向  社会学の領域において,現代青年の友人関係の希薄化が指摘されて久しい(土井,2008)。その背 景にはネットメディアの普及に伴い,現代青年の友人関係が不安定なものとなっていることがある (土井,2014)。不安定な立場にある現代青年は,本音の関わりや葛藤を避けた気配りを伴った「優 しい関係」を築く傾向にあるといわれている(土井,2004;2008)。  「優しい関係」を築く現代青年の友人関係において,重要なコミュニケーション戦略となっている のが,ユーモアである。現代青年にとって本音での関わりや真剣な話し合いは,関係性の対立のきっ かけとなりうる。そのため,現代青年は会話に常に笑いを用いることで,相手への入り込みすぎな いように関わるとされている(土井,2008)。現代青年の友人関係における笑いの重視は瀬沼(2014) においても指摘されており,集団の凝集性を高めるために,笑いが重視されると考察されている。  現代青年の友人関係を扱った心理学的研究においても,現代青年の回避的な友人関係の特徴や, ユーモア志向について明らかにしたものは多くある。岡田(1993;1995;1999)は,現代青年の友人

現代青年の友人関係におけるからかい行動の生起

—きっかけとなる受け手の言動に着目して—

小 岩 広 平

* *教育学研究科 博士課程後期

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関係に関する一連の研究の中で,互いの内面に踏み込まないような関わり方を示す「自己閉鎖」,友 人から自分が否定的に評価されないよう気をつかう関わりを示す 「自己防衛」,友人を不快にさせ ないよう気をつかう関わりを示す「友だちへのやさしさ」,表面的で円滑な関係を取る「群れ」の四 つの特徴があることを明らかにしている。このうち,「群れ」志向は,ユーモアによって友人集団を 維持する特徴があるとされている(岡田,2007b)。 現代青年にとっての「いじり」とからかい  希薄化した友人関係や笑い志向をもつ現代青年の友人関係において,好んで用いられるのが「い じり」や「からかい」といったコミュニケーションである。からかいは,「遊戯的なオフレコード・マー カーを伴った挑発行為」と定義される(牧,2008)。牧(2008)よると,「オフレコード・マーカー」とは, 冗談めかした口調や誇張した表現などのように,遊びであることを示す目印のことである。つまり からかいは,言葉の内容による攻撃性を,ユーモア的表現方法によって緩和するコミュニケーショ ンであるといえる。さらに,からかいが繰り返し行われ,パターン化することにより,「いじり」と いう形になることもある。小岩(2020)は,「いじり」を「青年期の友人関係において行われる,から かう側・からかわれる側が固定化された関係性での,遊戯的なからかい」と定義している。小岩(2020) の定義にもとづくと,からかいが包括的な概念であるのに対して,いじりは青年期に行われる遊技 的なからかいに限定した概念である。  このように,いじりやからかいは,現代青年の友人関係において,好んで用いられるコミュニケー ション行動である。これまでの心理学的な研究では,いじりやからかいがもたらす効果についての 研究がいくつかある。たとえば塚脇(2018)は,青年期の親密な関係性における攻撃的ユーモアが, 受け手の肯定的な感情に結びつくことを報告している。また,瀧澤(2015)は,相手の欠点を指摘す るための方法として,現代青年が用いる方法として「いじり」があることを報告している。さらに, 空気を読めない言動に対する周囲の青年たちの行動を扱った小岩・小松・若島(2020)は,空気を読 めない人物に対していじりやからかいが用いられていることを報告し,いじりやからかいには,そ の人物を擁護する側面があることを明らかにしている。 いじりとからかいが引き起こす問題  現代青年の友人関係におけるいじりやからかいは,希薄化した友人関係において重要な役割を果 たしている。しかしながら,いじりやからかいは攻撃的なユーモアであるため,臨床的な問題を引 き起こすことも指摘されている。  いじりやからかいがもつ一つ目の問題点として,現代青年の友人関係におけるいじりやからかい がエスカレート・パターン化しやすい傾向にあることがある。土井(2008)によると,「優しい関係」 においていじりやからかいが起きると,受け手はそのいじりに抵抗を示すことで集団の逸脱者とし て扱われてしまうことを恐れるとしている。そのため,いじりを受けた青年は,そのいじりが侵襲 的なものであったとしても,迎合的な反応を取らざるをえなくなると土井(2008)は指摘している。

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このようにして,現代青年は「いじられキャラ」として,友人集団の中でからかいを受けることが固 定化され,パターン化につながりやすい性質をもつといえる。また,Koiwa, Okuno, & Wakashima (2020)では,青年期の友人関係におけるからかいについて調査し,受け手が送り手に抱く感情が受 け手の反応に与える影響を明らかにしている。その結果,受け手が送り手との関係性に不安や懸念 を抱いている場合には,大げさな肯定的反応が起きることが明らかになった。この報告から,不安 定な現代青年の友人関係において,受け手は大げさに反応してしまい,その結果いじりやからかい のパターン化が起きやすい構造にあるといえる。  二つ目の問題点は,からかいが繰り返されることで,いじめへと発展することがある。小岩(2020) は,からかいおよびいじりといじめの関連について考察し,①からかいが攻撃行動として定着し, いじめへと発展していく可能性,②遊びとしてのからかいや「いじり」がパターン化し,送り手が遊 びでからかいを繰り返しても,受け手が受け止めきれなくなってしまう可能性の二つの可能性によ り,いじめとして問題になるとしている。なお,からかいが攻撃としての形でパターン化し,いじ めに発展する可能性については中野(2018)や久保田(2013),伊藤(2017),大谷・山本,2018によっ て支持されている。一方で,遊びとして行われる「いじり」やからかいがパターン化していじめとし て認識されるようになることについては,大石・大石(2019)によって支持されている。 からかい行動の発生に関する研究  これまでの議論のように,からかいがパターン化し,いじりやいじめへと発展していくことによ る問題について議論を重ねてきた。こうした問題を防ぐためには,現代青年の友人関係において, からかい行動はどのように発生するのかを検討することが必要である。  からかい行動の発生に関する研究は少ないが,受け手の言動とからかいの発生の関連について検 討した研究がいくつかある。まず,からかいの概念的なレビューを行った Keltner et al. 2001は, 性別規範から逸脱した言動をした人物に対して,からかいが行われることを指摘した。また,家族 内のからかいの観察実験を行った Eisenberg(1986)によると,家族内のルールを逸脱した人物に対 して,からかいが発生することが観察された。  我が国の現代青年を対象とした研究もいくつか行われている。先述の小岩・小松・若島(2020)は, 空気を読めない言動が起きた際の主要な対処方法としていじりやからかいがあること,群れとして の友人関係においてはからかいが用いられやすいことを報告した。さらに,現代青年の友人関係に おけるからかいの発生について扱った小岩(2020)は,「話術の拙さ」「空気の読めない言動」「上か ら目線」「生活の乱れ」「学業の怠惰」「雰囲気の変化」「個性的な言動」「失敗」「ウケ狙い」といった言 動を受け手が行った場合に,現代青年はからかい行動を行うことを示している。  このように,からかいの発生に関する研究では,どのような受け手の言動がからかいの発生に結 び付くかの検討が行われてきた。しかしながら Keltner et al.(2001)や Eisenberg(1986),小岩・ 小松・若島(2020)は,それぞれの言動とからかいの発生を個別に検討したものであるため,からか いのきっかけとなる受け手の言動を整理・分類したものではない。また,からかいのきっかけを分

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類した研究として小岩(2020)があるが,小岩(2020)の研究はあくまでも自由記述の分類やからかい の有無による記述統計にもとづいた考察であるため,きっかけとなる受け手の言動を,多変量解析 を用いて整理することが必要であるといえる。 からかいの目標  従来のからかい研究において,からかいが行われる目標によって,発生の仕方やそのからかいが 与える影響は異なるとされている。また,Roloff(2013)は,からかいの目標についての検討を行い, からかいの目標を,相手を攻撃しようとすることと受け手を笑わせようとすることの二つに分類し ている。  攻撃を目標としたからかいは,フロイトのユーモア理論の系譜で論じられてきたからかいの様相 である(上野,1982)。送り手が受け手に対して優越感情を抱いた場面において生起するからかいで あるとされ,送り手には感情表出によるカタルシスがもたらされる(上野,1982)。また,Martin (2007)では,葛藤場面において用いられるからかいについて検討し,ユーモアにより攻撃的意図を 隠蔽しながら相手への不満をぶつける方法として,からかいが用いられることを報告している。さ らに,攻撃を目標としたからかいは,受け手を集団から排除する機能をもつことが指摘されており, いじめ行為との関連も指摘されている(Keltner et al., 2001)。  一方で,攻撃を目標としつつユーモアを含んでいるため,受け手は怒り感情を表出することが難 しくなることが示されている(Martin, 2007)。さらに,「ふざけて言っているだけ」という口実が可 能であるため,第三者がからかいを阻止することが難しいことが指摘される(Kowalski, 2000)。こ のように,攻撃を目標としたからかいは,相手を叱責したり不満を伝えたりする場面で用いられ, 敵意を否定しつつ相手を攻撃する機能をもつからかいであるといえる。  からかいの目標として相手への攻撃があるとされる一方で,Roloff(2013)が指摘するもう一つの からかいの目標が,受け手を笑わせようとすることである。この点について,からかい研究の中では, 攻撃を目標としたからかいと弁別するために,「向社会的なからかい」と表現する研究者もいる(Mill & Carwile, 2008)。従来のからかい研究においては,送り手と受け手の年齢が上がるにつれ,受け 手を笑わせる意図のからかいが増加することが報告されており(Beck, Clabaugh & Clark, 2007), 青年期の友人関係の多くが,この目標のからかいであるといえる。国内の研究では,この目標のか らかいについて報告したものがいくつかある。たとえば遠藤(2007)は,からかいを「親密な関係性 において用いられる相互作用」として表現しており,親密さの確認として機能することを指摘して いる。また,からかいが行われる場面における会話分析を行った初鹿野・岩田(2008)は,からかい が会話に巻き込む機能をもつことを報告している。このようにからかいは,話者間の心理的距離を 近づけるコミュニケーションとして機能する。  一方で,からかいは多義性を含んだコミュニケーションであるため,送り手が親和的な意図をもっ ている場合でも,受け手が攻撃として受け取ってしまうリスクも含んでいる。たとえば,受け手の パーソナリティとからかいを受けた際の不快感情との関連を示した研究(Bollmer, Harris, Milich,

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& Georgesen., 2003)では,同じからかいを受けた場合でも,神経症傾向が高い人々は不快感情を抱 くことを明らかにしている。さらに,葉山・大地(2008)は,送り手が親和的意図を持っている場合 でも,送り手の伝え方の失敗により,受け手は親和的意図を知覚できないとしている。  このように,受け手を笑わせようとするからかいは,ユーモアが適切に伝わると話者間の距離感 を縮めるが,その意図が伝わらないと,受け手は攻撃として受け取ってしまうリスクをもつコミュ ニケーションであるといえる。  先に述べたように,従来の研究においてからかいの目標は,攻撃とユーモアのふたつに分類され ると考えられてきた。一方で,現代青年の友人関係に関する社会学的な指摘では,周囲の友人たち を笑わせるためにからかいが起きることが指摘されている。たとえば,現代青年の友人関係におい て,周囲の友人たちを笑わせることで,集団の親密度を高めたりするためにからかう青年が多いと 指摘される(瀬沼,2014)。この知見から,からかいにおけるユーモアの対象には,受け手のほかに 観衆がおり,現代青年の友人関係には観衆を笑わせようとする意図があると考えられる。しかしな がら,これまでのからかいの目標について扱った研究では,受け手を笑わせる意図と周囲を笑わせ る意図についての弁別はされておらず,ユーモアとして一緒のものとして扱われてきた。  一方で,からかいの観衆について扱った研究に,葉山・櫻井(2010)がある。葉山・櫻井(2010)は, からかいを含む攻撃的な冗談に傷ついた際の,受け手の反応に関する研究を行っている。その結果, 周囲の友人たちが笑っている場面では,受け手は迎合的な反応をしてしまうことを明らかにした。 葉山・櫻井(2010)の研究では,受け手のパーソナリティや送り手との関係性についても調査してい るが,周囲が笑っている状況は,受け手との関係やパーソナリティよりも受け手の反応に大きな影 響を与える最も大きな要因であることを示している。つまり,送り手の周囲を笑わせようとする意 図により,受け手の否定的な反応を抑制すると予想される。 本研究の目的  これまでの議論のように,不安定な立場にある現代青年は,いじりやからかいによって友人関係 を維持しようとしている側面がある。一方で,いじりやからかいは,パターン化したりエスカレー トしたりすることで,いじめとして問題となるリスクを含んでいる。からかいがパターン化するこ とを防止するためには,からかいがどのような場面において生じるコミュニケーション行動である のかを探る必要があるが,これまでのからかいの生起についての研究では,①現代青年の友人関係 においてからかいが生じる場面についての検討が不足している,②からかいの生起の研究の多くは 観察法であるため,どのような目標でからかいが行われているのかの視点が不足している,③現代 的な友人関係のあり方がからかいやいじりを促進させるという社会学的な指摘があるものの,それ らを実証的に示したものがないという三つの問題点がある。  以上を踏まえ,本研究ではからかいが起きる場面について検討するため,からかいに結び付く受 け手の言動に着目し,①からかいが起こるきっかけとなる受け手の言動を分類すること,②それぞ れの言動に対して,どのような目標でからかいが起きるのかを明らかにすること,③友人関係のあ

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り方が,それぞれの言動に対するからかいや,からかいの目標にどのような影響を与えるのかを明 らかにすることの三つを目的とする。

Ⅱ.方法

調査時期  2019年11月から12月 調査対象  大学生・大学院生に対して,質問紙調査を行った。352名を対象に質問紙を配布し,そのうち回答 に不備があった12名を除外し,340名(M=19.31,SD=1.17)を分析対象とした。男女比については, 男性206名(M=19.23,SD=0.98),女性134名(M=19.46,SD=1.41)であった。 調査概要  本調査の目的は,①からかいのきっかけとなる受け手の言動を分類すること,②それぞれの行動 に対して行われるからかいがどのような目標で行われるのかを検討すること,③友人関係がからか いに影響を与えているのかを検討することの三つであった。からかいの目標については,先行研究 をもとに,①受け手を攻撃すること,②受け手を笑わせること,③周囲の友人たちを笑わせること の三つに限定した。からかいの目標によるからかい行為の発生の差異について検討するため,から かいの目標の教示のみが異なる三つの質問紙を作成し,回答者にはそれらの質問紙をランダムに配 布した。  なお,からかいの目標を「受け手を攻撃すること」と教示した質問紙に回答したのは115名,「受 け手を笑わせること」と教示した質問紙に回答したのは111名,「周囲を笑わせること」と教示した 質問紙に回答したのは114名であった。 質問紙構成  フェイスシート,性別と年齢の二つの項目を尋ねた。 からかいの教示 からかいの説明について,①からかいの定義,②からかいの三者構造,③からか いの目標の三つについて,以下のように教示した。なお,からかいの定義と三者構造についてはど の回答者にも同一のものが配られており,③のからかいの目標のみが異なる教示となっている。 からかいの定義 「この調査での「からかい」とは,「本気で言っているわけでない」ということを示 しながら,相手を挑発したり攻撃したりする行為のことを指します。なお,いじりもからかいに含 まれます。」と説明した。 からかいの三者構造 「からかいが起きる場面には,送り手(からかいを行う人),受け手(からかい を受ける人),周囲の友人(そのやり取りを見ている友人たち・観衆)の三者がいるとされています。 この調査では,あなたは「送り手」の立場でお答えください。」と説明した。

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からかいの目標 からかいの教示については,それぞれ,Table 1のように行った。 友人関係尺度 岡田(2007a)が作成した尺度であり,現代青年の友人関係や距離の取り方を測定す るために作成されたものである。本尺度の下位尺度としては,友人との内面的関わりを避ける「自 己閉鎖」,友人から自分が否定的に評価されないよう気をつかう関わりを示す「自己防衛」,友人を 不快にさせないよう気をつかう関わりを示す「友だちへのやさしさ」,楽しく円滑な関係である「群 れ」があり,計35項目により構成される。なお,岡田(2007a)において尺度化され,信頼性が検討さ れている尺度であるため,本研究では下位尺度の合計得点を変数として用いている。なお,それぞ れの信頼性について,自己閉鎖得点はα=.800,自己防衛はα=.768,友達へのやさしさはα=.756, 群れはα=795,であり,十分な信頼性が確保されているといえる。 日常的なからかいの頻度 「あなたは,いつも行動をともにしている同性の友人たちといるときに, 友人を攻撃する目標でからかうことはありますか」と質問し,1(まったくない)から4(よくある)の 4件法での回答を求めた。受け手を笑わせることを目標とした群および周囲を笑わせることを目標 とした群においても,同様に教示を行った。 受け手の言動とからかい からかいの目標を教示したうえで,次のような言動をした場合には,そ の人物をからかうかどうかを,1(全くあてはまらない)~ 6(とてもあてはまる)の6件法で尋ねた。  攻撃を目標とした群については,「あなたがいつも行動をともにする同性の友人たちを思い浮か べてください。その友人たちといっしょにいるときに,その中の一人が次のようなふるまいをした としてください。あなたは受け手(そのふるまいをした人物)を攻撃する目標でからかいますか。 のうち,当てはまる数字に〇をつけてください。と教示した。受け手を笑わせることを目標とした 群および周囲を笑わせることを目標とした群においても,同様に教示を行った。 受け手の言動の項目 小岩(2020)をもとに,からかいのきっかけとなる受け手の言動を,35項目設 定した。 Table 1. からかいの目標についての教示 からかいの目的 実際に行った教示 受け手を 攻撃すること からかいの目的には,受け手を攻撃する,受け手を笑わせる,周囲の友人たちを笑わせるなど,さ まざまな目的があるといわれていますが,この調査では,「受け手を攻撃すること」を目的とした からかいについて調査をしています。攻撃を目的としたからかいには,受け手を批判したり,叱 責したりすること,受け手に言いにくいことや不満を伝えることなどの目的が含まれます。これ より,「受け手を攻撃することを目的としたからかい」について,お答えください。 受け手を 笑わせること からかいの目的には,受け手を攻撃する,受け手を笑わせる,周囲の友人たちを笑わせるなど,さ まざまな目的があるといわれていますが,この調査では,「受け手を笑わせること」を目的とした からかいについて調査をしています。受け手を笑わせることを目的としたからかいには,受け手 を楽しませること,受け手を元気づけること,受け手に自分が抱いている親密さをアピールする ことなどが含まれます。これより,「受け手を笑わせることを目的としたからかい」についてお答 えください。 周囲の友人を 笑わせること からかいの目的には,受け手を攻撃する,受け手を笑わせる,周囲の友人たちを笑わせるなど,さ まざまな目的があるといわれていますが,この調査では,「周りの友人たちを笑わせること」を目 的としたからかいについて調査をしています。周りの友人たちを笑わせることを目的としたから かいには,周りの友人たちを楽しませることや,その場を盛り上げること,雰囲気が悪くなるの を防ぐことなどが含まれます。これより,「周りの友人たちを笑わせることを目的としたからかい」 についてお答えください。

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Ⅲ.結果

からかいに結びつく受け手の言動の分類  からかい行動に結びつく受け手の言動について分類するため,最尤法・プロマックス回転を用い た因子分析を行った。因子分析に際して,1±SD によって各項目のからかい得点のフロア効果と床 効果を検討したが,いずれも認められなかったため,35項目を分析に用いた。  因子分析の結果,4つの因子が抽出された(Table 2)。抽出された因子のうち「27. ほかの人はし ないような突飛な行動をしたとき」「9. ほかの人はしないような不思議な返答をしたとき」など,そ Table 2. からかいきっかけとなる受け手の言動の分類(最尤法・プロマックス回転) F1 F2 F3 F4 個性的な言動(α =.823) 27. ほかの人はしないような突飛な行動をしたとき 1.034 -.093 -.047 -.074 9. ほかの人はしないような不思議な返答をしたと き .718 .084 -.161 .164 18. 趣味・嗜好が人より変わっていたとき .665 .007 .031 .045 26. 世間知らずな言動をしたとき .630 .003 .275 -.108 30. ほかの人は言わないような独創的な意見を言っ たとき .623 .130 .019 .013 怠学な言動(α =.881) 24. 授業に遅刻してきたとき -.024 .999 -.050 -.089 5. 授業に寝坊してきたとき .010 .832 -.098 .069 25. 授業の課題を出さなかったとき .051 .811 .159 -.080 6. 単位を落としたとき .026 .487 .013 .238 迷惑な言動(α =.773) 12. ほかの友人を見下した態度をとったとき -.040 -.073 .815 -.011 4. ほかの友人に対してきつくあたったとき .036 -.078 .631 .107 34. 重要な話し合いに遅刻してきたとき -.007 .048 .605 .007 32. ほかの友人の迷惑になるような失敗をしたとき .058 .117 .572 .008 退屈な言動(α =.813) 10. 話が面白くなかったとき .022 -.084 -.072 .958 11. ノリが悪かったとき -.048 -.021 .222 .703 13. 話にオチがなかったとき .222 .115 -.026 .501 19. 話が長かったとき -.048 .110 .131 .476 因子間相関 F1 F2 F3 F4 F1 .650 .293 .635 F2 .209 .540 F3 .484 F4

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の人特有の行動やふるまいに関する項目を含む因子を,「個性的な言動」因子と命名した。次に,「24. 授業に遅刻してきたとき」「5. 授業に寝坊してきたとき」など,学業場面においてまじめさがみられ ないふるまいに関する項目が含まれる因子を「怠学な言動」因子と命名した。一方で,「12. ほかの 友人を見下した態度をとったとき」「4. ほかの友人に対してきつくあたったとき」など,そのふるま いによって周囲の友人の不快感や負担感をもたらす言動を含む因子を,「迷惑な言動」と命名した。 さらに,「10. 話が面白くなかったとき」「11. ノリが悪かったとき」など,ユーモアに欠けた言動に関 する項目が含まれている因子を「退屈な言動」と命名した。なお,それぞれの因子における信頼性に ついて検討するため,α係数を算出した。それぞれの因子をみると,α係数が .75以上であるため, 十分な信頼性が確保されているといえる。 受け手の言動によるからかいの目標の違い  それぞれの言動に対するからかい行動について,からかいの目標が異なるのかを明らかにするた め,分散分析を行った。からかいの目標による群分けを独立変数,受け手の行動に対するからかい 行動得点を従属変数として,それぞれ被験者間一要因による分散分析を行った(Table 3)。  まず,「個性的な言動」へのからかい行動得点を従属変数としたところ,からかいの目標による有 意差がみられた(F=38.31,p<.01)。多重比較の結果,「受け手を攻撃すること」(m=12.23)よりも, 「受け手を笑わせること」(m=17.73)「周囲の友人を笑わせること」(m=17.03)の目標において,か らかい得点が有意に高いことが示された。  次に,「怠惰な言動」へのからかい行動得点を従属変数としたところ,からかいの目標による有意 Table 3. からかいの目的によるからかい得点の差異 独立変数 従属変数 A. 受け手を攻撃する B. 受け手を笑わせる C. 周りを笑わせる F 値 多重比較 個性的な言動 M 12.23 17.73 17.03 38.31** A<B=C SD 5.10 5.23 5.16 怠惰な言動 M 9.97 14.79 14.16 32.78** A<B=C SD 4.96 4.6 5.08 迷惑な言動 M 12.11 10.5 10.58 5.96** B=C<A SD 3.83 4.21 3.88 退屈な言動 M 9.55 11.65 11.61 8.82** A<B=C SD 4.12 4.90 3.90 注)*p<.05, **p<.01

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差がみられた(F=32.78,p<.01)。多重比較の結果,受け手を攻撃すること(m=9.97)よりも,「受 け手を笑わせること」(m=14.79)と「周囲の友人を笑わせること」(m=14.16)の得点が有意に高い ことが示された。  一方で,「迷惑な言動」へのからかい行動得点を従属変数としたところ,からかいの目標による有 意差がみられた(F=5.96,p<.01)。多重比較の結果,「受け手を笑わせること」(m=10.50)「周囲を 笑わせること」(m=10.58)よりも「受け手を攻撃すること」(m=12.11)を目標とした群の得点が有 意に高いことが示された。 友人関係がからかい行動に与える影響  友人関係尺度の4つの下位尺度得点が,からかい行動に与える影響を検討するために,からかい の目標ごとに重回帰分析を行った。  まず,からかいの目標を「受け手を攻撃すること」に固定した重回帰分析を行った(Table 4)。友 人関係尺度の下位尺度得点を説明変数,「迷惑な言動」へのからかい行動得点を目的変数として重回 帰分析を行った結果,群れが正の影響を与えていることが示された(β=.251,p<.01)。友人関係 尺度の下位尺度を説明変数,「退屈な言動」へのからかい得点を目的変数として重回帰分析を行った 結果,ともだちへのやさしさが負の影響を与え(β=-.328,p<.01),群れが正の影響を与えている ことが示された(β=.210,p<.01)。普段のからかいの頻度・個性的な言動・怠学な言動を目的変数 Table 4. 友人関係が受け手を攻撃することを目標としたからかいに与える影響 説明変数 目的変数 自己閉鎖 自己防衛 友だちへのやさしさ 群れ 決定係数 普段のからかいの頻度 個性的な言動 怠学な言動 迷惑な言動 .251** .063 退屈な言動 -.328** .210** .103 注)*p<.05,**p<.01 Table 5. 友人関係が受け手を笑わせることを目標としたからかいに与える影響 説明変数 目的変数 自己閉鎖 自己防衛 友だちへのやさしさ 群れ 決定係数 普段のからかいの頻度 -.238** .511** .269 個性的な言動 怠学な言動 .194** .067 迷惑な言動 -.278** .077 退屈な言動 -.247** .342** .145 注)*p<.05,**p<.01

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とした場合には,有意差はみられなかった。  次に,受け手の笑いを目標としたからかいに固定し,重回帰分析を行った(Table 5)。からかい の頻度を目的変数,友人関係尺度の下位尺度を説明変数として,重回帰分析を行ったところ,友人 へのやさしさがからかいの頻度に負の影響を与え(β=-.238,p<.01),群れがからかいの頻度に正 の影響を与えていることが示された(β=.511,p<.01)。また,怠学な言動を目的変数にしたところ, 群れが周囲の笑いを目標としたからかいの頻度に正の影響与えていることが示された(β=.195, p<.01)。友人関係を説明変数,怠学な言動へのからかい行動得点を目的変数として重回帰分析を行っ た結果,群れが正の影響を与えていることが示された(β=.194,p<.01)。迷惑な言動を目的変数 とし,友人関係尺度の下位尺度を説明変数としたところ,「友だちへのやさしさ」得点が負の影響を 与えていることが示された(β=-.273,p<.01)。最後に,退屈な言動を説明変数とし,友人関係尺 度の下位尺度を説明変数としたところ,ともだちへのやさしさが負の影響を与え(β=-.247, p<.01),群れが正の影響を与えていることが示された(β=.342,p<.01)。なお,個性的な言動を目 的変数にした場合,友人関係による有意な影響がみられなかった。  さらに,からかいの目標を,「周囲を笑わせるため」に固定し,重回帰分析を行った(Table 6)。 普段のからかいの頻度を目的変数,友人関係を説明変数としたところ,群れが正の影響を与えてい た(β=.342,p<.01)。次に,個性的な言動へのからかい行動得点を目的変数,友人関係尺度の下位 因子を説明変数とし,重回帰分析を行った。その結果,群れがからかい得点に正の影響を与えるこ とが示された(β=.194,p<01)。さらに,「退屈な言動」を説明変数としたところ,群れが正の影響 を与えることが示された(β= .186, p<.01)。なお,「怠学な言動」「迷惑な言動」を目的変数とした 場合には,友人関係の有意な影響はみられなかった。

Ⅳ.考察

からかいに結び付く受け手の言動の分類  からかい行動に結び付く受け手の言動について,「個性的な言動」「怠学な言動」「迷惑な言動」「退 屈な言動」の四つに分類された。本研究において得られた4因子は,先行研究との類似点と相違点が みられている。これまでの研究では規範からの逸脱に対してからかい行動が生まれることが示され Table 6. 友人関係が周囲を笑わせることを目標としたからかいに与える影響 説明変数 目的変数 自己閉鎖 自己防衛 友だちへのやさしさ 群れ 決定係数 普段のからかいの頻度 .341** .117 個性的な言動 .194** .038 怠学な言動 迷惑な言動 退屈な言動 .186** .035 注)*p<.05,**p<.01

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ているが(Martin,2007),本研究でも類似の結果が示された。たとえば,怠学な言動や迷惑な言動 に対してのからかいは,社会規範からの逸脱へのからかいに該当することが考えられる。とくに, 今回の調査対象は大学生であり,大学生にとって学業に真剣に取り組むことは重要な社会規範であ る。そのため,本研究における「怠学な言動」は Martin(2007)が指摘するような逸脱に対するから かいであるといえる。また,「迷惑な言動」についても,社会的に望ましくない言動であることから, 規範からの逸脱に該当すると考えられる。  一方で,現代青年の友人関係においてからかいのきっかけとなる受け手の言動として,「退屈な 言動」があることが,特徴的な結果であった。この点については,瀬沼(2014)や青砥(2015)が指摘 するような,現代青年のもつ笑い志向が反映された形であるといえる。すなわち,現代青年のもつ 不安定な友人関係において,お互いに距離を取るために,笑いは重視されている。一方で,ユーモ アに欠けた言動は,両者の適度な距離感の妨げとなるきっかけとなりうるため,その言動を茶化す ことで,その場面における笑いを作り出し,両者の適度な距離感を維持しようとするのではないか と考えられる。 受け手の言動とからかいの目標の関連  受け手の行動とからかいの目標の関連を明らかにするため分散分析を行ったところ,それぞれの 言動に対して,からかいの目標によるからかい得点の差異がみられた。  まず,個性的な言動に対してからかいが行われる目標は,攻撃よりもユーモアとしての側面が大 きいことが示された。この点について,対立への恐れの観点からの考察が可能である。不安定な立 場に立たされている現代青年にとって,他者との違いがあることは,対立のきっかけとなる(土井, 2008)。そのため,他者に対して自分と同じようにふるまうように迫ったり,お互いにキャラを付与 しあって個性を単純化するなどして,他者との違いに向き合う現代青年の対処方略が示されている (高坂,2010;千島・村上,2015)。一方で,本研究では,個性的な言動に対して,ユーモアを目標と したからかいが行われやすいことが示された。この結果より,他者との違いや個性と向き合うため のひとつの手段として,現代青年の友人間ではからかいが用いられている実態があるといえる。す なわち,他者との違いを,からかいによって遊びの一つとして扱うことで,他者との違いがもたら す葛藤から距離を取ろうとしているのではないかと考えられる。  次に,怠学な言動に対するからかいについても,攻撃よりもユーモアの側面が大きいことが示さ れた。大学生にとって学業は義務であり,学業を怠ることは社会規範からの逸脱に該当するといえ る。このような逸脱に対して現代青年は,逸脱を非難したり,改善を求めたりするのではなく,む しろ相手を笑わせたりその場を盛り上げるたりするためのきっかけとしていることが示されてい る。  一方で,迷惑な言動については,受け手を笑わせること・周囲を笑わせることの得点は低く,受け 手を攻撃することの得点が高いことが示された。そのため,現代青年の友人間で,ほかの友人に迷 惑をかけるような言動が起きると,その人物を攻撃する目標で,からかい行動が起こることが明ら

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かになった。この点に関連して,空気を読めない言動に対するからかいについて扱った研究では, 現代青年は空気を読めない言動に対してからかいを行うことが多いとされているが(小岩・小松・ 若島,2020),この研究で示されたからかいはその人物への攻撃や空気を読めない言動の改善の要求 を目標としていたと考えられる。  また,怠学な言動と迷惑な言動は,社会的に望ましくないという点では一致しているが,そのか らかいの目標は大きく異なることが示された。学業のような社会規範からの逸脱に対しては,その 逸脱を遊びとしてからかい,友人関係を揺らがすような言動には,攻撃を目標としたからかいが起 きることが考えられる。この結果について,いじめの発生をルールや規範の逸脱の観点からとらえ た内藤(2008)の指摘が関連する。内藤(2008)は,現代青年の友人関係において,社会規範が軽視され, 代わりに友人関係における秩序が重視されており,友人関係における秩序を逸脱した場合にいじめ の対象とされやすいとしている。内藤(2008)の指摘を踏まえると,次のようなことが考えられる。 不安定な立場にある現代青年は,友人関係を維持するためのルールに敏感であり,ルールを守らせ ようとする。しかしながら,ルールからの逸脱に対して,真剣に攻撃をしてしまうと,雰囲気の悪 化や対立の原因となるため,現代青年はからかいを用いて,あくまでユーモアとしてルールからの 逸脱に言及するのではないかと考えられる。  さらに,退屈な言動に対するからかいの目標は,受け手を笑わせるため,周囲を笑わせるためで あることが明らかになった。この点について,青砥(2015)が指摘するような,現代青年の遊び志向 が反映されているといえる。不安定な立場にある現代青年は,対立の恐れから,遊び志向・非真面 目志向をもっているが(青砥,2015;土井 2008),本研究で示された退屈な言動は,遊び志向とは反 するふるまいである。そのため,ユーモアに欠けた言動に対して,相手を笑わせようとしたり,そ の場面を盛り上げたりするといえる。  攻撃としてのからかいと受け手を笑わせるため・周囲を笑わせるための有意差はみられたものの, 受け手を笑わせるためと周囲を笑わせるための目標については有意差がみられなかった。この点に ついて,二つの可能性がある。一つ目は,からかいの目標が複数あることである。たとえば,送り 手がからかいを行うとき,周囲の友人を笑わせることが主な目標としてもっているが,同時に受け 手を笑わせることも念頭に置いていることも考えられる。友人関係においてからかいを行う目標は 複数あり,その目標の重みづけを適切に測定できていなかったため,本研究では「受け手を笑わせ ること」「周囲を笑わせること」の目標の有意差がみられなかったと考えられる。二つ目は,ユーモ アの対象を送り手が意識していない可能性である。本研究において,からかいの目標として,「攻撃」 と「笑い」については有意差が見られていたが,「受け手を笑わせたいか」「周囲を笑わせたいか」の 差がみられなかった。すなわち送り手は,からかいによって笑わせようとする意図は自覚している が,笑わせようとする対象について意識していない可能性がある。 友人関係との関連  最後に,普段の友人関係とからかい行動との関連について検討する。まず,個性的な言動について,

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からかいの目標を「周囲を笑わせること」とした場合において,群れとしての友人関係の築き方が正 の影響を与えていることが示された。群れとしての友人関係を築いている青年は,個性的な言動が 起きたときに,周囲を笑わせることを目標としてからかうことが明らかになった。このことについ て,土井(2008)が主張する現代青年の対立を恐れる傾向からの考察が可能である。すなわち,群れ としての友人関係において,個性的な言動による他者との違いを,その場を盛り上げよるために用 いていることが考えらえる。  一方で,怠学な言動についても,群れとしての友人関係において,受け手を笑わせることが多い ことが示された。これまでの社会学的な指摘では,現代青年の友人関係において,他者の欠点や弱 点を笑う傾向が示されていたが(瀬沼,2014;青砥,2015),本研究の結果はこれらの指摘を部分的 に支持するものであった。すなわち,怠学な言動が起きた際に,その人物の言動を笑いに変える形 のコミュニケーションが起きるという点で青砥(2015)の指摘は実証されたが,その意図はあくまで もその人物を笑わせることにあり,青砥(2015)の指摘するような,その人物をあざ笑ったり,攻撃 したりする意図とは異なるといえる。  さらに,迷惑な言動については,群れとしての友人関係を築いていると,攻撃を目標としたから かい得点が高いことが示された。この知見は,群れとしての友人関係では,空気を読めない言動へ のからかいが起きやすいとする小岩・小松・若島(2020)の結果と一致している。さらに,土井(2008) では,現代青年の友人関係において軋轢が起きた際に,いじりやからかいを用いてその人物を攻撃 する可能性について指摘されていたが,この土井(2008)の指摘と一致する結果となった。すなわち, 群れとしての友人関係において,関係性を揺らがすような言動が起きた際に,ユーモアを用いた攻 撃であるからかいを用いて,その人物の言動の改善を求めているといえる。  これまでの議論をまとめると,群れとしての友人関係を築いている青年は,個性的な言動には周 囲を笑わせるために,怠学な言動には受け手を笑わせるために,迷惑な言動には受け手を攻撃する ために,それぞれからかいを行うことが示されたといえる。この結果について,群れとしての友人 関係においては,友人関係を維持するための対処行動として,からかいが用いられていると考えら れる。たとえば,怠学な言動は,関係性の揺らぎにつながらないため,送り手は受け手を笑わせる 意図でからかうことができる。一方で,個性的な言動は,他者との違いによる不安定さにつながる 点で,関係性の揺らぎや葛藤につながるリスクがある。そのため,その言動を用いて,周囲を笑わ せようとするからかいが行われる。さらに,迷惑な言動は,友人関係における対立に直接的に結び つく言動である。そのため,攻撃的なからかいを用いることで,その言動の是正を積極的に求める といえる。このように,群れとしての友人関係では,友人関係揺らがせる程度が小さいと受け手を 笑わせるようなからかいが行われ,友人関係を揺らがせる程度が大きい場合には,その人物を攻撃 したり周囲を笑わせたりすることを目標としたからかいが起きるといえる。  他方で,受け手が迷惑な言動をしたとき,友人へのやさしさが受け手を笑わせることを目標とし たからかいを抑制することが示された。この点は,土井(2008)が指摘するやさしい関係において, からかいやいじりによって友人関係の軋轢を防ごうとするという指摘とは反対の結果となった。こ

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の結果について,現代青年がもつ友人への過剰な気遣いをもっていると,迷惑な言動が起きてもそ の言動に言及することができずに,からかいを行うことができないということが考えられる。この ように,「群れ」と「友人へのやさしさ」が異なる影響を与えているというように,現代的な友人関係 の特徴によって,からかいを促進する傾向と抑制する傾向があることが示された。  退屈な言動に対するからかい得点を目的変数としたところ,どの目標の場合にも,友人関係がか らかい行動得点を予想することが示された。この結果について,岡田(2007a)の友人関係尺度が現 代的な友人との付き合い方を測定するものであることをふまえると,「退屈な言動」へのからかいは 現代的な友人関係に特有のからかいの形であるといえる。また,群れ志向があると,攻撃・受け手 の笑い・周囲の笑いを目標としたからかいの発生を促進し,やさしさは「攻撃」「受け手の笑い」を目 標としたからかいを抑制することが示された。この結果は,土井(2008)や青砥(2015)が指摘する現 代青年のユーモア志向と一致する。すなわち,友人関係の対立のリスクを防ぐためユーモアを用い ている現代青年にとって,退屈な言動はその場のユーモアを不足させるふるまいである。そのため, 退屈な言動を遊びとして攻撃することで,ユーモアに欠けた言動を用いて相手を笑わせようとした り,その場面を盛り上げたりするといえる。 現代青年の友人関係への示唆  本研究では,現代青年の友人関係において,からかい行動の発生に結び付く受け手の言動につい て検討したが,本研究の結果は現代青年の友人関係にいくつかの示唆を与えるものであった。  一つ目は,現代青年のからかいがもつ適応的な側面に関する示唆である。従来の研究では,現代 青年の友人関係におけるいじりやからかいについて,攻撃としての側面が強調され,他者を笑うこ とを好む不適応的な傾向として指摘されてきた(瀬沼,2014;青砥,2015)。しかしながら本研究で 示されたからかいの多くは,周囲の友人たちとともに受け手を笑わせることを目標としており,瀬 沼(2014)や青砥(2015)の指摘するような攻撃的な笑いの形とは大きく異なることが示された。た とえば現代青年は,個性的な言動が起きたときに,その言動をきっかけにユーモアとしてのからか いを行うことが示されており,からかいが異質な他者と付き合う術となっていることが考えられる。 また,内藤(2008)は現代青年において,ノリの悪い者がいじめの対象となりやすいことを指摘して いた。しかしながら,本研究における「退屈な言動」へのからかいは,受け手を笑わせることを意図 したものであり,内藤(2008)の指摘とは異なっていた。すなわち,ユーモアの欠けた言動をする者を, 集団から排除するのではなく,その人物に関するユーモアを交えることで,ユーモアの欠けた言動 をする他者でも,集団の中に受け入れいれていると考えられる。このように現代青年のいじりやか らかいは,他者と上手に付き合っていくための対処方略であり,友人関係にとって適応的な側面が 示されたといえる。  二つ目は,いじりの予防に関することである。本研究の結果として,現代青年の友人関係において, 社会規範から逸脱した言動が,からかいの発生に結び付くことが示された。この結果から,社会規 範から逸脱した言動を繰り返す人物は,からかいの対象となりやすいことが考えられる。さらに,

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社会規範からの逸脱に対するからかいは,ユーモアを目標としていることが多いことも示された。 遊びとしてのからかいがパターン化することで「いじられキャラとなる」という大石・大石(2019) の指摘を踏まえると,社会的な逸脱を繰り返す人物は,「いじられキャラ」となりやすいリスクがあ るといえる。  三つ目は,「いじめ」の予防に関することである。現代青年の友人関係において,友人関係を揺る がすような逸脱に対しては,攻撃的なからかいが発生することが示された。攻撃を目標としたから かいがいじめのきっかけとなりうることを踏まえると(伊藤,2017),逸脱が友人関係を揺るがすよ うなものであるような場合には,その言動がいじめのきっかけとなることが考えられる。 本研究の意義と今後の課題  本研究では,からかいのきっかけとなる受け手の言動を分類し,「個性的な言動」「怠学な言動」「迷 惑な言動」「退屈な言動」の4つがあることが示された。さらに,「個性的な言動」「怠学な言動」「退 屈な言動」に対しては,受け手や周囲の友人たちを笑わせる意図でのからかいが行われることが示 唆された。この点から,現代青年がその人物の社会的規範から逸脱した言動を用いて,その逸脱を 楽しんだり,周りを盛り上げたりする傾向が考察された。一方で,迷惑な言動に対しては,攻撃を 目標としたからかいが起こりやすいことが示された。友人関係を揺るがすような言動については, ユーモアを含ませながら攻撃する傾向が示唆された。さらに,友人関係との関連について検討した ところ,群れとしての友人関係を築いている青年は,「個性的な言動」によってその場を盛り上げよ うとし,「怠学な言動」に対しては受け手を笑わせようとし,「迷惑な言動」についてその人物を攻撃 しようとからかうことが明らかになった。これらの結果から,社会的な逸脱しやすい言動が遊びと してのからかいが,友人関係を揺るがす言動が攻撃を目標としたからかいが,それぞれパターン化 する可能性について,考察した。  最後に,本研究に残されたいくつかの課題について述べる。一つ目は,ユーモアの対象に関する ことである。本研究ではからかいの目標として,「受け手を攻撃すること」「受け手を笑わせること」 「周囲を笑わせること」の三つを検討したが,「受け手を攻撃すること」と「周囲を笑わせること」の 間に有意な差がみられなかった。周囲を笑わせるためのからかいに関する社会学的な指摘にあるよ うに(瀬沼 , 2014),現代青年の友人関係におけるからかいにおいて「周囲を笑わせること」は主要な 目標であることが予想される。しかしながら,本研究において,受け手を笑わせることと周囲を笑 わせることの得点差がみられなかった。この結果について,受け手を笑わせることと同程度,周囲 が意識されていると解釈することも可能であるが,からかい場面において送り手が,受け手よりも 周囲を意識する実態については明らかにできなかった。この理由として,からかいの送り手が複数 の目標をもってからかいを行っていることが考えられる。たとえば,送り手がからかいを行うとき, 周囲の友人を笑わせることが主な目標としてもっているが,同時に受け手を笑わせることも念頭に 置いていることも考えられる。このように,友人関係においてからかいを行う目標は複数あり,そ の目標の重みづけを適切に測定できていなかったため,本研究では「受け手を笑わせること」「周囲

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を笑わせること」の目標の有意差がみられなかったと考えられる。今回の調査ではからかいの目標 を被験者間計画により比較したが,今後の研究では,被験者内計画において同様の調査を行い,個 人内での重みづけを検討することが必要であると考えられる。  二つ目は,からかい行動の発生を受け手の言動に限定して研究を進めていることにある。本研究 で検討したのは,受け手の言動をきっかけとしたからかい行動についてであった。しかしながら, 実際の友人場面において,受け手がなにもしなくてもからかいを受けるということがあるだろう。 たとえば,Keltner et al.(1998)において,身体的特徴についてのからかいが多く起こることが示 されているが,身体的な特徴は受け手の言動によるものではないため,本研究では扱うことができ ていない。また,何気ない会話の中で起きるからかいのように,受け手の言動が関与しないからか いも多くあると考えられる。このように,本研究では受け手の言動によるからかい行動に限定して 検討しているため,からかいが発生する文脈の多様さをうまく扱えていない点が限界としてある。 【付記】  本研究は,東北大学大学院教育学研究科において提出した修士論文(令和元年度)の一部を加筆修 正したものです。本研究における質問紙調査への回答にご協力いただいた皆様に深くお礼申し上げ ます。 【引用文献】 青砥 弘幸 (2015).現代の若者の「笑い」に関する実態とその課題 : 大学生に対する調査を中心に 笑い学研究 22,47-61.

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In this study, the occurrence of teasing behavior in the friendships of contemporary adolescents was examined. The purpose of this study was to classify the target's behavior that trigger the teasing, and to clarify the aim of the teasing. A questionnaire survey was conducted on 340 university students. We categorized the behaviors of the targets that triggered teasing into four categories: "the unique behavior," "the lazy behavior," "the annoying behavior," and "the boring behavior." Furthermore, it was shown that the contemporary adolescents teased "individualistic behavior," "lazy behavior," and "boring behavior" for the purpose of humor, and they tease "annoying behavior" with aggressive intentions. Based on these results, we discussed the possibility that teasing was patterned as play when it deviates from social norms, and as aggression when it deviates from social norms and shakes their friendship.

Keywords:teasing, "Ijiri," trigger, The aim of teasing, Friendship

The Occurrence of Teasing Behavior in the Contemporary

Adolescents' Friendships:

Focusing on the Target's Behavior as Triggers of Teasing

Kohei KOIWA

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pairwise nonisomorphic affine designs A&#34; having the parameters ofAG(d, q) such that AutA&#34; = G and such that the incidence structure induced by the removal of a suitable pair

[11] Karsai J., On the asymptotic behaviour of solution of second order linear differential equations with small damping, Acta Math. 61

[r]

Rumsey, Jr, &#34;Alternating sign matrices and descending plane partitions,&#34; J. Rumsey, Jr, &#34;Self-complementary totally symmetric plane

the materials imported from Japan into a beneficiary country and used there in the production of goods to be exported to Japan later: (&#34;Donor-country content

 Calculation of the Renewable Energy Surcharge unit price and the Solar Surcharge unit price The &#34;Renewable Energy Surcharge unit price&#34; (per kWh) for the said fiscal