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昭 和 基 地 の 造 水 設 備 に つ い て 野元堀隆

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(1)

昭 和 基 地 の 造 水 設 備 に つ い て

野元堀隆 *l• 竹内貞男 * 2

Water Supply System a t  Syowa Station  T a k a s h i  NoMOTOBoR1*1 and Sadao TAKEUCH1*2 

A b s t r a c t :   A new w a t e r  s u p p l y  s y s t e m  was s e t  up a t  Syowa S t a t i o n  i n  March  1 9 8 4 .   T h i s  s y s t e m  h a s  two w a t e r  t a n k s  ( 1 0 0  and 1 3 0  k l ) ,  a  h e a t  e x c h a n g e r  and  a  d e s a l i n a t i o n  u n i t  c o n s i s t i n g  o f  m a i n l y  r e v e r s e  o s m o s i s  m o d u l e .   A t r e a t m e n t   c a p a c i t y  o f  t h e  s y s t e m  i s   5  m3 p e r  d a y .   T h i s  s y s t e m  s u p p l i e d  2 . 4 5  m3 w a t e r  p e r   day on a v e r a g e  t h r o u g h o u t  t h e  p e r i o d  from March 1 9 8 4  t o  J a n u a r y  1 9 8 5 .   The  w a t e r  h a s  t h e  s u i t a b l e  q u a l i t y  f o r  d r i n k i n g .  

要旨:第 2 5次南極地域観測隊によって,昭和基地に新たに造水装置を設置した.

その概要ならびに運転経過等について報告する.本装置は, 1 0 0k l 水槽, 1 3 0k l 水 槽,造水用熱交換器および逆浸透モジュール ( R .0.  モジュール)を用いた脱塩装 置から構成されており, 5m ツ日の造水能力をもつ. 製造水の塩分濃度は, 越冬期 間を通じて,飲料水等の用途に対して満足できるものであったが,原水の塩分濃度 に対応した変化が見られた.また, R.O. モジュールの脱塩能力については使用時 間に比例した劣化が見られた. 一日当たりの平均造水量は 2 . 4 5m3 であった.こ れは,過去 5 年間の実績値と比較して 2 倍近くの水消費を示し,昭和基地における 水事情がかなり改善されたものと言える.

1 .   ま え が き

2 1 1  

水は人間が社会生活を営んでいくため,必要不可欠なものであり,種々の用途に応じてそ の水質を維持するものでなければならない.その使用量は,生活に密着し文化生活のバロメ ータとさえ言われるほどである.

昭和基地では,飲用,手洗い洗面,入浴,洗濯等はもちろんのこと,エンジン,その他の 機器の冷却等の用途に対して国内と同質の水を必要とする.

従来,昭和基地の上水は,主として氷山氷,および降雪を溶かして使用していたが,氷山 氷取りの作業はかなりの労力を要したし,海氷が溶ける時期においては危険性も伴った.ま た,降雪は常時期待はできない.夏季においては基地周辺の溜池の氷が溶けるので,多量の 水が確保できたが,塩分濃度が高く飲料に適さないほか,配管系統の腐蝕,スケール詰まり

の原因となるなど水質に問題があった.

第 25次日本南極地域観測隊では,このような氷山氷取りのわずらわしさを避け,水質的 にも良質な上水を得ることを目的として,新たに造水装置を設置したので,この装置の概要

* 1 島根医科大学業務部施設課. S e c t i o n  o f  F a c i l i t i e s ,  Shimane M e d i c a l  U n i v e r s i t y ,  8 9 ‑ 1 ,  E n y a ‑ c h o ,   Izumo 6 9 3 .  

迂国立極地研究所. N a t i o n a l   I n s t i t u t e   o f  P o l a r   R e s e a r c h ,   9 ‑ 1 0 ,   Kaga 1 ‑ c h o m e ,   I t a b a s h i ‑ k u ,  

Tokyo 1 7 3 .  

(2)

2 1 2   野元堀隆・竹内貞男 〔南極資料 ならびに運転経過等について報告する.

2 .   造水装置の概要

造水装置は図 1 に示すように,主として原水槽としての 1 0 0 および 1 3 0k l 水槽,造水用熱 交換器,および逆浸透モジュール (R.0. モジュール)を用いた脱塩装置から構成されており,

一日当たり 5m8 の造水能力をもっている.以下,これらの詳細について述べる.

snow 

water tank (lOOkl)  water tank (130kl) 

waste 

treated water 

R.O. 

pump 

feed 

pump 

No.1 filter(5μ)  No.2  filter(lp)  図 1 造水装置のフローシート

F i g .   1 .   Flowsheet of water supply system. 

2 . 1 .   1 0 0  k l 水槽, 1 3 0k l 水槽

1 0 0  k l 水槽は,貯水および供給水の温度安定化を計るための水槽で,断熱構造となってい る.槽内の水は,発電用発動機の冷却水熱によって 7—30°c に保ち脱塩装置へ供給している·

1 3 0   k l 水槽は,貯水,融雪および土砂等の沈澱槽としての機能をなす水槽で開放型である.

水槽内の水は,自動温度コントロール付の熱交換器により 1 0 0k l 水槽からの熱で氷点以上に 加温されている.この水槽は, ドリフトの付きやすい発電棟の風下側に位置しており,プリ ザードなどによる飛雪の自然流入を計るとともに機械力による積雪の投入を容易にしてい る .

2 . 2 .   脱塩装置

本装置は, 1 0 0  k l 水槽より供給された塩分濃度の高い原水を R.0. モジュールで脱塩し,

塩素イオン ( C l ー)濃度で 2 0 0m g / 1   (電気伝導率で約 600μS/cm) 以下の飲料水を 1 日当たり

5m8 製造するもので,前処理装置と R.0. モジュールから構成されている.

(3)

V o l .  3 2 ,   No. 2 〕 昭和基地の造水設備について 213  前処理装置:供給された原水は,給水ポンプで約 3kg/cm2 に加圧され,第一保全フィル ター (5μ)2 本(並列)と,次いで第二保全フィルター (1μ) に通水され,原水中に存在する浮 遊物質が除去される.なお殺菌用として給水ポンプの吐出側に次亜塩素酸 ノーダが残留塩素

濃度 0.5—1.0 mg/1 で注入できるようになっている.

R.O.  モジュール:保全フィルターを通過し,清澄となった原水は, R.O. 給水ポンプにて,

3 0  kg/cm2 に加圧され, R.0. モジュールに送水される.モジュールにより脱塩された脱塩水

(製造水)は, 40—50% の水回収率にて得られる.残りの濃縮水は調圧弁を経て 2-3 kg/cm2  の圧力にて排水される.

脱塩装置主要機器の仕様は次のとおりである.

1 )   給水ボンプ

形 式 ベーンタイプ

容 量 5 2 0 1 / h  x  max 3  kg/cm2  材 質 SUS 316/SCS 1 4  

モーター 0  . 2  k W   X  2 0 0  V  X  5 0  Hz  X  3  < p   2 )   保全フィルター

4 )  

5 )  

6 )  

形 式 容 量

ニレメント孔径

容器材質 R.O.  給水ボンプ

形 式 容 量 材 質 モーター 付 属 品 R.O.  モジュール

形 式 膜 素 材 寸 法 標準性能 塩素剤注入装置

カートリッジフィルタータイプ 2.7m 町 hx2 台(第一)

1 . 2   m 8 / h   (第二)

5μ( 第一)

1μ(第二)

ポリプロピレソ

三連プランジャータイプ 5 2 0 1 / h   X  3 0  kg/cm2  SUS 316/SCS 1 4  

1 . 5  kWx200 V  x  5 0  Hz:< 3  < p   アキュムレーター,安全弁

中空繊維型 酢酸七ルロース系 1 5 0  r j > x 8 4 0  L 

1 5 0 0  ppm 食塩水に対して脱塩率 90% 以 上

次亜塩素酸ソーダ注入ボンプ

(4)

2 1 4   〔南極資料

容 式 量

材質(接液部)

野元堀隆・竹内貞男 ダ イ ヤ フ ラ ム 式 電 磁 ボ ン プ 5  cc/minx 5  kg/cm2 

ポリプロピレン/テフロン 次 亜 塩 素 酸 ソ ー ダ タ ン ク

形 容 材

式 量 質

円筒型 251  PVC 

3 .   連 転 経 過

3 . 1 .   水質

本装置が設置され,稼働を開始した 1 9 8 4 年 2月 2 1 日から 1 9 8 5 年 1月 3 0 日までの 越冬期間中, 主として原水および製造水について電気伝導度の測定を行った.

なお,水質分析は採水後ただちに発電棟あるいは環境科学棟において行った.

日までは第一ダムの水を原水として使用した.

越冬期間中の原水および製造水の電気伝導度の変化を図 2 に示す.運転開始期から 3 月2 0 この間,第一ダムの凍結により徐々に塩分が 濃縮され原水の電気伝導度は 1400μS/cm まで上昇し,製造水もそれに伴い上昇したが, 1 0 0 μS/cm 前後と比較的安定していた.それ以降は降雪量が少なく濃縮水を回収して再利用した ため,原水濃度は徐々に上昇し最高値は, 2300μS/cm となり,製造水も 370μS/cm まで上昇

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1 5 0 0  

1 0 0 0  

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F i g .  2 .  

図 2 原水および製造水の電気伝導度の変化

C h a n g e  i n  e l e c t r i c  c o n d u c t i v i t y  o f  r a w  w a t e r  and t r e a t e d  w a t e r .  

(5)

V o l .  3 2 ,   No. 2 〕

. . . . .   1 0 0   さ

昭和基地の造水設備について 2 1 5  

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2  3  4  5  6  7  8  9  1 0   1 1   1 2   1  M o n t h  

図 3 電気伝導度による塩分除去率の変化

F i g .  3 .   Change i n  p e r c e n t a g e  of e l e c t r i c   c o n d u c t i v i t y  r e m o v a l .  

した ( 7 月下旬).このため濃縮水を回収せず排出させ, 1 3 0k l 水槽への雪入れを頻繁に行っ た結果,原水,製造水共に濃度低下の傾向が見られた. 9 月 下 旬 の ブ リ ザ ー ド で は 大 量 の 雪 が確保でき,原水濃度は 400‑500μS/cm と低下した.これに伴い製造水も 60‑80μS/cm と良 好となった.

1 2 月 1 7 日から第ーダムの取水を開始したが,ダム水の濃縮により原水濃度は徐々に上昇 し 1 月 26 日の測定では 800μS/cm となり,製造水は 190μS/cm となった. 1 月 9 日に R.0.  モジュールの交換を実施した結果, 70μS/cm 以下にまで低下した.

図 3 は電気伝導度の測定による塩分除去率をプロットしたものであるが,これからわかる ように除去率に関しては,原水の電気伝導度の上下に関係なく使用時間に比例して,ほぼ直 線的に低下している.また, 1 月 29 日のモジュール交換により 90% 以 上 と い う 初 期 除 去 率に回復した.これは,モジュール自体は一定の除去率を持っており, この場合原水の塩分 濃度にはそれほど関係なく,直線的な低下は,モジュールの劣化によるものと考えられる.

表 1 は電気伝導度以外の水質項目についての分析結果であるが,第 25 次 観 測 隊 以 前 で 使 表 1 新旧造水設備の水質の比較

T a b l e  1 .   C o m p a r i s o n  of o l d  and new w a t e r  s u p p l y  s y s t e m s  f o r  w a t e r  q u a l i t y .  

( 1 0 原 0k /   水 水 槽 )

製 造 水

項 目 飲料水基準

新 旧

電気伝導度 ( μ S / c m ) 1 3 7 9   1 2 1   1 0 5 8  

塩素イオン ( m g / [ ) 3 7 4   3 4   2 0 5   2 0 0 以下 全鉄 ( m g / I ) 0 . 1 5   0 . 0 2   0 . 0 0   0 . 3  

硬度 ( m g / / ) 1 5 2 . 2   4 . 2   1 0 0 . 5   3 0 0  

II 

pH  6 . 4   6 . 4   6 . 7   5 . 8 ‑ 8 . 6  

大腸菌群数(個 / m l ) 不検出 不検出 不検出 検出されないこと

一般細苗数(個 / m l ) 不検出 不検出 不検出 集落数 1 0 0 / m l 以下

(6)

2 1 6   野元堀隆•竹内貞男 〔南極資料 用していた旧造水設備による飲料水の分析値も掲げた書

用していたので,ほぽ同じものと考えてよい.大腸菌群数,

新旧共に原水は,第一ダムの水を利 一般細菌数についてはいずれも 不検出であった.旧設備では鉄がほとんど除去されていたが, これは 5 μ のフィルターでろ 過しているためで,鉄分のほとんどが水酸化鉄の状態で存在し,

えられる.また,塩素イオンは 2 0 5mg/1と高く,飲料水の基準値である 200mg/I を超えてい ろ過のみで除去されたと考

た.新設備では塩分はもちろんのこと,鉄および硬度成分もほとんど除去されていた.

3 . 2 .   製造水量

運転開始から 8 月初旬までは製造水量 2 0 0 1 / 時(水回収率 40%) であったが,徐々に減少し ていき 9 月以降は 1 1 0 1 5 0 1 / 時に低下した.この原因は給水ポンプの能力低下によるもので,

1 月 26 日に交換を実施した結果,初期の造水量に回復した.

月別日乎均造水量を図 4に示す. なお,参考に過去 5年間の造水量も示した.越冬期間 中の乎均造水量は 2.45m り日であった.過去 5 年間の造水量と比較して,年間乎均で約 70%

( 2 . 4 5 / 1 . 4 6 ) の増加, ダム水の利用不可期間の 4月から 1 1 月の 8か月間の平均で約 90%

( 2 . 3 5 / 1 . 2 6 ) の増加であった.第 2 5次観測隊では,年間を通して若千の変動はあるが,

ほ旅行,内陸旅行等による昭和基地の人数の変動を考慮すると, ほぼ乎均しており,

みず 一人当 たりの水使用量は約 9 0 1 / 日であった.

︵ 含

Pie

日 ︶ 2  ‑

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・ " ・ ・ ・ o ・ ・ ・ . .   •··o• . . . . . . .  o ・ ・ . . . . . .  o  Average for the past five years 

2  3  4  5  6 

7  8 9  Month 

1 0   1 1   1 2  

F i g .  4 .  

図 4 月別日平均造水量

A v e r a g e  amount of t r e a t e d  w a t e r  p e r  d a y .   3 . 3 .   水使用状況

食堂棟,娯楽棟,洗面所,洗濯場での水使用は,年間を通して自由とした.風呂について は , 3 月 1 0日より入浴可能となり,週 2回を入浴日とし, 1 1月より週 3回 , 1 月より毎日 となった. シャワーの使用は,初期より毎日終日許可した.その他ミッドウインタ期間中,

旅行隊帰投日等ほ随時入浴日とした.

3 . 4 .   その他

保全フィルター

(1) 

(7)

V o l .  3 2 ,   No. 2 〕 昭和基地の造水設備について 2 1 7   保全フィルターの交換は,各フィルタ一部の差圧を見ながら実施した.原水のよごれ具合 によって交換時期は異なっていたが,年間の使用量は 5 μ が 5 0 本 , 1 μ が 1 6 本であった.

(2)  塩素滅菌

基地周辺の水源の大腸菌等による汚染は比較的少ないこと,また配管系統の防蝕を考慮し て滅菌剤(次亜塩素酸ソーダ)の注入は行わなかった.原水および製造水の大腸菌,一般細菌 の検査を 3 回実施したが,いずれも検出されなかった.

4 .   お わ り に

第 25次観測隊において新設した造水装置について,概要,運転経過等について述べてき た.第 25次観測隊以前は,夏場はダム水,冬場は氷山氷および降雪を溶かし,フィルクー でろ過したものを上水として使用してきたが,ダム水は塩分濃度が高く,また,冬場の海氷 上での氷山氷の確保はかなりの労力を要していた.本造水装置の設置により,氷山氷の確保

をまったく行うことなく,良質で必要量の水を供給することができた.

水質については,隊員から苦情が出るようなことはまったくなかったが,飲用範囲内にお いて,水質悪化が見られた.一つは原水の水質変化によるもので,原水の塩分濃度に対応し て製造水の塩分濃度も変化した.冬場の原水となる降雪について電気伝導度を測定したが,

4 ,   5 月の新雪で 9‑36μS/cm, 10 月のブリザード時では 130—170µS/cm と降雪にもかなりの

塩分が含まれていた.雪の少ない時期における雪の利用は,濃縮水の回収再利用により,か なり原水濃度も上昇するものと考えられる. もう一つは, R.0. モジュールの時間的劣化に よるもので,モジュールの交換時期については塩分除去率をみながら考慮するとよいと思わ れる.

造水量は,乎均 2 . 4 5 m 8 / 日で, 1 人 1 日当たりの水消費量は約 9 0 l となり,国内での消費 量は約 2 5 0 1 / 人・日と言われており,これと比較すると,まだまだ少ない量であるが,過去の 消費量約 5 0l と比較すると 2 倍近くの伸びであった.

観測棟など,基地中心部から離れた建物については,依然ポリタンク等で水を運ばなけれ ばならないが,主な生活に係わる水の使用は,若干の規制および便所水洗水の循環利用,風 呂浴槽水の循環利用等の節水対策はあるものの, 日本国内の使用状況に近づきつつあるもの と思われる.

( 1 9 8 8 年 4 月 1 日受付; 1 9 8 8 年 4 月 1 9 日受理)

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