オンライン授業時における大学新入生の 生活習慣、活動量に関する調査研究
鈴木明(大東文化大学)、平工志穂(東京女子大学)、
藤島遥香(公益財団法人日本オリンピック委員会)、
田村達也(青山学院大学)
1.はじめに
2019年12月、中国武漢市で発生した新型コロナウィルス(COVID-19) は、3か月余りで世界中に蔓延しパンデミックの様相を呈している1)。アメ リカジョンズ・ホプキンス大の集計では、2020年10月10日現在、世界で
は約3,688万人が感染し、死者の数も106万人、日本においても感染者は
88,267人(うち死者1,623人)に達している2)。これまで21世紀になって コロナウィルスが原因で2度パンデミックが起きたが、2002年から2003年 に中国南部から起こった重症呼吸器症候群(SARS)は感染者8,094人(死 者474人)、2012年から2013年に中東への渡航歴のある人から起こった中 東 呼 吸 器 症 候 群(MERS)の感 染 者は2,494人(死 者858人)で あ っ た
(2019年11月現在1))。これまでの2回のコロナウィルスの感染者数と比較 しても、感染者数は膨大である。
このような未曽有の感染症に対して、政府は2020年3月から全国すべて の小学校・中学校・高等学校、特別支援学校を閉鎖し、4月には緊急事態宣 言が発令され、外出自粛要請などさまざまな対策がとられてきた。
この影響は大学にもおよび、全国の多くの大学では卒業式や入学式の中 止、大学への入構禁止、授業のオンライン化など、感染症が原因ではかつて 経験したことがない措置がとられた。この影響を最も受けたのは、2020年
4月から入学する予定であった新入生であると推測される。夢と希望にあふ れた大学生活を描いていた学生たちは、登校して授業を受ける機会もなく、
パソコンに向かって授業を受ける毎日が続いている。
WHOの健康観には、健康とは身体的、社会的、精神的にも良好な状態で あると定義されている3)。学生たちがかつて経験したことがないこのような 状況は、学生自身の心身に何かしらの影響を及ぼしていると考えられる。
そこで本研究は、新型コロナウィルスが日常生活に大きく影響していると 考えられる大学の新入生を対象に、オンライン授業が心身にどのような影響 を及ぼしているか、また自粛要請が出ていた時期の活動量や健康度を調査 し、さらにオンライン授業時のよりよい生活習慣の構築にむけて、また今後 の健康教育の授業研究の基礎資料を得ることを目的に行った。
2.研究方法
調査は外出自粛要請が段階的に出ている2020年5月から6月にかけて都 内にある女子大学の新入生を対象に行った。あらかじめ調査を行なう際に、
研究の目的、方法、得られたデータの結果に関しては、統計学的に処理され ることを口頭で説明し、生活習慣はwebで回収、同意のある人のデータの み使用した。活動量調査は任意の1週間の歩数を携帯のアプリを使って測 定してもらい、その際起床時体温、就寝時体温、ストレス度、運動行動、体 調も調査した。
調査データの解析には、SPSS26.0(SPSS Japan Inc.)を用いて、t検定、
ピアソンの相関などの解析を試み、有意水準は5%とした。
3.結果ならびに考察
今回の調査には143名の学生の有効データを得ることができた。
①オンライン授業時の生活習慣 1)日常生活の実態
健康状態を「きわめて健康」と答えた人は39.9%であった(表1)。オン
ライン授業が始まってからの生活習慣の変化については表2に示した。「就 寝時刻が遅くなった」人が66.9%と多くみられた。「ゲームやSNSなどをす る機会が増えた」、「生活が不規則になった」、「起床時刻が遅くなった」など 健康面に悪い影響を及ぼす要因がみられた。
ⅰ)睡眠・休養
表3〜9は睡眠・休養の実態を示したものである。平日の起床時刻は午前 7時から9時の間に67.9%と多くみられたが(表3)、2018年度入学生と比較 すると1時間以上遅くなっている4)。就寝時刻は午前0時から2時の間が
61.6%と多かったが(表4)、就寝時刻も1時間程度遅くなっていた。これ
は自宅からのオンライン授業ということで、通学時間が必要ないことに起因 している。起床時刻、就寝時刻とも遅い傾向にあり、通学時間が必要なくな り起床時刻が遅くてもよい、遅くまで起きていてもよいという悪い生活習慣 になっていた。この傾向は前出表2に示すように自分自身でも自覚してい る。表5に示すように消灯時刻が決まっている(30分以上ずれない)人は わずかに22.4%であった。また睡眠時間は日によって1時間以上ずれる人 は51.4%みられ(表6)、生活の不規則さが明らかとなった。
平均睡眠時間は平日6.7時間、休日7.2時間であった。連続した1週間の 睡眠の質を表しているのが表7である。睡眠の質が「良い」と答えた人は月 曜から下がり始め木曜を底辺として週末にむけて増加する。これに対して
表1 最近の健康状態(%)
きわめて健康 39.9
まあ健康 48.2
あまり健康とは言えない 11.9
表2 オンライン授業時における生活習慣の変化
(%)
生活が不規則になった 44.4 起床時刻が遅くなった 46.5 就寝時刻が遅くなった 66.9
睡眠時間が減った 34.5
ゲームやSNSなどをする機会が増えた 56.3
(複数回答)
表5 消灯時間のずれ
(ずれる=30分を基準として)(%)
いつもずれている 23.1 ずれる方である 40.6 どちらともいえない 14.0 ずれない方である 16.1 ほとんどずれない 6.3
表6 睡眠時間のずれ
(ずれる=1時間を基準として)(%)
いつもばらばらである 23.2 どちらかといえばばらばらである 28.2 どちらともいえない 15.5 変わらない方である 29.6 ほとんど変わらない 3.5
表7 睡眠の質 (%)
月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日 日曜日 良い 42.4 41.3 40.9 36.2 44.5 49.3 47.5 ふつう 30.9 38.4 39.4 47.1 43.8 39.9 38.8 やや悪い 24.5 18.8 18.2 15.9 9.5 8.0 12.2 悪い 2.2 1.4 1.5 0.7 2.2 2.2 1.4
表8 平日の休息時間 (%)
まったくとれていない 5.6 あまりとれていない 34.3 どちらともいえない 14.0 少しはとれている 30.8 よくとれている 15.4
表9 週に1日は自分の好きなことができ
る日がある (%)
はい 57.3
どちらともいえない 32.2
いいえ 10.5
表3 平日の起床時刻 (%)
午前7時まで 14.0 午前7時〜8時 33.6 午前8時〜9時 34.3 午前9時以降 7.0 不規則である 11.2
表4 平日の就寝時刻 (%)
午後10時まで 0.7 午後10時〜11時 4.2 午後11時〜午後12時 17.5 午前0時〜午前1時 32.9 午前1時〜午前2時 28.7 午前2時以降 16.1
「やや悪い」人は月曜に多く、週末に向けて減っていく傾向にあった。この 傾向は週初めの月曜日はやる気に満ちて元気でポジティブな人と、憂鬱な人 の差が激しいが、1週間を過ごすうちにその傾向が平準化されていき、週末 に向けて楽しみな人とそうでない人の差がまた開いてくると推測される。
休養の要件として、平日の休息時間や週に1日は自分の好きなことがで きる日があるかを聞いたものが表8, 9である。平日に休息時間がとれている と回答した人は半数以下の46.2%、週に1日は好きなことができる日がある 人は57.3%であった。とくに平日の休息時間がとれておらず、時間に追われ る日を過ごしており、精神的な健康度に悪影響を及ぼすと考えられる。
ⅱ)食事・栄養
食事時の栄養バランスを表10、オンライン授業時の食事面の変化を表11 に示した。食事時に栄養バランスを考えている人は、ときどき考えている人 も含めて76.2%であった。食事面の変化は「食事の時間が不規則になっ た」、「3食を食べる回数が少なくなった」、「朝食を食べることが減った」、
「食 事の量が減っ た」な ど は3割 以 上の人が訴え て い た。 体 重 増 加は 21.8%、減少は24.6%で、半数の人が体重に変化があった。
また栄養バランスを考えての食事は良い習慣である一方、食事の不規則さ や回数、量の減少などが多くみられ、実際に栄養バランスを考えていても、
表10 食事時の栄養のバランス(%)
いつも考えて食べている 25.2 ときどき考えて食べている 51.0 あまり考えて食べたことはない 23.8
表11 食事面の変化 (%)
食事の時間が不規則になった 33.1 3食を食べる回数が少なくなった 33.1 朝食を食べることが減った 30.3 食事の量が増えた 16.2 食事の量が減った 33.8
体重が増えた 21.8
体重が減った 24.6
(複数回答)
必要な量を摂取しているか検討する必要がある。
ⅲ)運動
運動に関しては表12〜14に示した。ほとんどの人(95.8%)が運動不足 を感じていた。同時に大部分の人(88.2%)が体力の低下を感じ、65.7%が
「運動したいという気持ち」になっていた。身体活動の中で、運動行動は第 二次欲求であり、自分の意志が関わってくる。事実「運動したい」と思って いても、実際に行う人は少ないのが現状である。したがって、学生に日常の 運動習慣に導く指導が必要で、大学の教養体育の授業の中で運動習慣を身に つけるような授業の工夫が重要であり、今後より効果的な内容を検討してい く必要がある。
②七つの生活習慣
表15-1はブレスローが唱えている7つの健康習慣の実践度を示したもので ある5, 6)。本来はこの5つに加え、「喫煙しない」、「飲酒は適度かまったく飲ま ない」という項目があるが、対象が新入生で未成年のため項目から除外した。
実践度の中で、「間食はあまりしない」、「定期的に運動をしている」の項 目がとくに低かったが、これはオンライン授業で在宅時間が長く、つい間食 してしまう習慣がついたと推測される。運動に関しては、運動する機会や仲
表12 運動不足 (%)
強く感じている 66.7 少し感じている 29.1 あまり感じていない 3.5 まったく感じていない 0.7
表13 体力の低下 (%)
強く感じている 42.0 少し感じている 46.2 あまり変わらない 11.8
表14 運動したいという気持ち (%)
運動したいという気持ちになった 65.7
運動意欲がなくなった 9.1
どちらともいえない 25.2
間、場所がないことが原因であると考えられる。
7つの健康習慣のうち、たとえば45歳男性群では、6つ以上実践してい る人と3つ以下では、平均余命に11歳の差が生じ、7つ全部実践している 人と2つ以下では健康値に差が出てくる(7つすべて実践していると60歳 まで平均以上の健康度を保てるが、2つ以下だと30歳台で健康度は平均以 下になる)。今回の調査対象は未成年で「喫煙」、「飲酒」はしていないと想 定して比較すると、6つ以上の実践は23.2%、3つ以下は23.2%、7つ実践 はわずかに4.2%、2つ以下は2.8%であった。また全体の平均実践数は4.5 であった(表15–2)。過去の結果と比較すると、実践数は減少し、実践項目で は「定期的に運動をしている」、「朝食はほぼ毎日食べる」が減少し、「睡眠時 間は7時間前後である」の割合が増えている。睡眠時間の増加は、オンライン 授業のため通学時間が無くなったことによるものと考えられる。全体の実践数 の少なさに加え、3つ以下の実践者が4人に1人みられるので、将来の健康を 考えれば、早急な生活習慣改善の健康指導が必要であると考えられる。
③外出自粛時における心身への影響
外出自粛期間が長く続いたが、表16〜20は心身への影響や状態を示した ものである。
表16は心身への影響を示したものであるが、「やる気が出ない」が63.4% と多くみられた。以下「気分転換がうまくできない」46.5%、「なんとなく
表15-1 健康習慣の実践割合 (%)
朝食はほぼ毎日食べる 69.7 間食はあまりしない 37.3 適正体重を保っている 52.8 睡眠時間は7時間前後である 61.3 定期的に運動をしている 32.4
(複数回答)
表15–2 実践数 (%)
2 2.8
3 20.4
4 26.1
5 27.5
6 19.0
7 4.2
平均 4.5
からだがだるい」44.4%と心理的な原因が続いた。また「下痢や便秘」が 40.1%、「昼間たまらなく眠い」、「ぐっすり眠れない」、「イライラすること が多くなった」という人が3割前後みられた。
心理的ストレスは77.7%が感じ、このうち32.2%が「強く感じている」
と回答している(表17)。しかしながらストレスをうまく解消している人は 44.8%にとどまっている(表18)。また「外出自粛」という言葉のプレッ シャーは6割の人が感じ(表19)、9割近くが新型コロナウィルスの不安を 感じていた(表20)。
このようにストレスを感じている人が多くみられたが、ストレスは免疫作 表16 外出自粛による心身への影響 (%)
頭痛 25.4
下痢や便秘 40.1
不安感 12.7
ぐっすり眠れない 28.9 イライラすることが多くなった 26.1 なんとなくからだがだるい 44.4
やる気が出ない 63.4
持病の悪化 4.2
昼間たまらなく眠い 31.0 気分転換がうまくできない 46.5
(複数回答)
表17 心理的ストレス (%)
強く感じている 32.2 少し感じている 45.5 あまり感じていない 14.7 まったく感じていない 7.7
表18 ストレスの解消 (%)
うまく解消している 44.8 うまく解消していない 21.7 どちらともいえない 33.6
表19 外出自粛という言葉のプレッ
シャー (%)
大いになった 28.0
少しなった 32.9
あまりならなかった 25.9 まったくならなかった 13.3
表20 新型コロナウィルスへの不安
(%)
大いに感じている 42.7 少しは感じている 46.2 あまり感じていない 9.8 まったく感じていない 1.4
用の低下にもつながる可能性があり、健康を保つうえでも、授業時に講義を 介して、ストレス解消に向けての何らかの指導が必要である。
④活動量
ⅰ)1日の歩数、体温
表21は1週間の活動や睡眠の質、体調、ストレスの結果を平日、週末(土 日)に分けて示したものである。外出した時間は平日68.5分、週末95.2分で あったが、その理由はアルバイトが多かった。平日の平均活動量(歩数)は 2,669歩、週末は3,012歩であったが、20代女性の平均歩数が6,772歩であ ることを考えると、かなり低い数値であった7)。2018年度入学生の1週間 の平均歩数の8,415歩と比較すると4)、今年度の新入生は外出をかなり控え ていることが判明した。身体活動の減少は体力や筋力低下という身体的影響 にとどまらずストレスなど精神的にも影響が大きいので、活動制限、運動不 足の長期化の影響が懸念され、早急な対策が望まれる。
起床時体温の平均は平日35.9°C、週末36.0°C、就寝時体温はともに36.1°C と低値を示した。2018年の調査では起床時、就寝時とも平均体温は36.3°C で、今回はその値より低値を示した。低体温は種々の疾病や免疫力の低下に 影響を及ぼす8–10)。今回の調査で体温が低かった理由として、日常の活動が 少なく基礎代謝等が減少し,一時的に低い値を示したのか、その他の理由に より低温傾向にあるのかさらなる検討が必要である。
表21 平日、週末(土・日)別にみた1日平均の身体活動、睡眠の質、体調、
体温、ストレスの結果 歩数 外出した
時間
(分)
運動した 時間
(分)
睡眠時間
(時間) 睡眠の質 体調 起床時 体温 就寝時
体温 ストレス
平 日 2669 68.5 29.0 6.7 3.2 3.4 35.9 36.1 2.3 週 末 3012 95.2 26.3 7.2 3.4 3.5 36.0 36.1 2.2
注)睡眠の質、体調: 良好=4、普通=3、やや悪い=2、悪い=1、ストレス:ない
=1〜大いにある=4
ⅱ)緊急事態宣言の有無での比較検討
1週間の行動等を緊急事態宣言時(4月から始まり関東1都3県は5月 25日、関西2府1県は5月21日、それ以外の県は5月14日以降解除)での 有無で比較検討した結果が表22である。
実際の活動に関しては、緊急事態宣言の有無による平日の運動時間や週末 の歩数に差がみられたが、平日の歩数には差がみられなかったことから、平 日は緊急事態宣言が解除されていても、前出のコロナウィルスへの感染不安 から外出行動を自粛していたと推測できる。
「緊急事態宣言」という言葉は新入生にとって想像以上に心理面、体調面 に影響を及ぼしていることが示唆され、学生は、外出自粛や新型コロナウィ
表22 緊急事態宣言の有無による比較
事態宣言 平均 標準偏差 p 平日の合計歩数(歩)
(5日間)
あり 10848.69 9744.16
なし 15391.12 13899.94 ns 週末の合計歩数(歩)
(2日間)
あり 4301.57 3596.07
なし 8246.45 8122.26 ***
平日の運動時間(分) あり 21.40 14.57 ***
なし 33.52 28.53
週末の運動時間(分) あり 20.86 17.90 ns
なし 32.56 41.28
平日の体調注) あり 3.28 0.65 ns なし 3.44 0.44
週末の体調注) あり 3.30 0.78 ns なし 3.55 0.50
週末の睡眠の質注) あり 3.27 0.77 ns なし 3.32 0.57
注)良好=4、普通=3、やや悪い=2、悪い=1 ***=p<0.001
ルスの報道によって心理的に追い込まれていると推測される。
ⅲ)平日の相関分析
表23は平日の睡眠時間、起床時体温、就寝時体温、睡眠時間、ストレ ス、運動時間、睡眠の質、体調の相関分析の結果を示したものである。睡眠 時間と起床時・就寝時体温に正の相関が認められ、睡眠時間が長いほど体温 が高い傾向にあった。ストレスと睡眠の質、体調には負の相関が認められス トレスを感じる人ほど睡眠の質、体調がすぐれなかった。また運動時間、睡 眠の質は体調と正の相関が認められた。
体温を上げることは、免疫力や基礎代謝の増加、血流の促進、酸素が活性 化するなどのメリットがある。体温を上げるには日常生活の改善が重要であ り、今回は睡眠との関連が明らかになったが、就寝前にパソコンや携帯電話 などの画面を長時間見ると、快適な睡眠を妨げるのでその点の指導も必要で ある。またストレスマネジメントにおいては、睡眠の質、体調、運動時間が 複合的に関連していることが示唆された。
オンライン授業による生活習慣の変化は身体的にも社会的にも、精神的に もよくない状態(望ましくない生活習慣)にあり、すべて健康度を低下させ る要因に傾いている。この状態が長く続くと当然健康状態が悪化する。人の 表23 平日の相関分析
睡眠時間 起床時体温 就寝時
体温 ストレス 運動時間 睡眠の質 体調
睡眠時間 1 .222* .229* 0.016 0.125 0.157 0.069
起床時体温 1 .603** −0.067 −0.100 0.058 0.124 就寝時体温 1 0.107 −0.089 −0.031 −0.100
ストレス 1 −0.022 −.224* −.346**
運動時間 1 0.015 .211*
睡眠の質 1 .575**
体 調 1
*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001
健康状態は「良好⇔まあ健康⇔疾病」の可逆状態の繰り返しであるが11)、
「(まあ健康=なんとなくいつもと違う状態)⇔疾病」の間の状態を繰り返す 状態に来ている。加えて身体を活動させる身体的健康度、ストレスなど心理 的健康度が低く、これらが免疫作用をさらに弱めていると推測され、大学生 の健康度はさらに落ち込む可能性が推測される。したがって、日常の好まし い生活習慣の実践には授業時において健康状態の保持・増進活動を意識させ るヘルスプロモーション教育が必要であり、具体的には健康日本21に提案さ れているように12)、食生活の再認識、運動、休養・睡眠の奨励などを知識と して積極的に伝え、それを実践するようになるまで見届ける方策が必要であ ると考えられる。
ストレスが増えると免疫作用が弱くなり、ウィルスや細菌などへの抵抗力 が弱まり、疾病に罹る可能性も高くなる。したがってそれに対応する運動の 必要性、食事の大切さを伝授し、さらに実践できるようになる指導が重要で あると考えられる。
4.結論
新型コロナウィルスの影響でオンライン授業を余儀なくされた大学新入生 にとって、日常生活や心身への影響を明らかにし、現状の環境下でより効果 的な生活習慣の構築にむけて、また今後の健康教育の授業研究の基礎資料を 得ることを目的に調査を行い以下の結論を得た。
①「きわめて健康」と答えた学生は39.9%で、オンライン授業における生 活習慣の変化として、生活の不規則性を訴える学生が多くみられた。
②睡眠時間は通学時間が無くなり確保されてはいるものの、就寝時刻が遅 くなり、睡眠の質も良いとはいえなかった。
③睡眠の質は月曜から下がり始め、木曜を下限として週末にかけて上昇し ていた。
④食事については栄養バランスを考えてはいるが、食事量の減少や、欠食 などが増え、24.6%に体重の減少傾向があらわれた。
⑤ほとんどの者が運動不足を感じ、体力の低下を感じている。運動したい という欲求は強いが実践には至っていなかった。
⑥外出自粛による影響として「下痢や便秘」「なんとなくからだがだるい」
「やる気が出ない」などの不定愁訴があり、ストレスやプレッシャーを かなり感じているなど、精神面への影響が大きかった。
⑦日常の活動量は大幅に減少し、外出自粛解除後も活動量はあまり改善さ れていなかった。
⑧起床時や就寝時の体温が低い傾向にあり、体温を上げるために生活習慣 の改善や運動の必要性を指導する重要性が示唆された。
⑨日常の相関関係からストレスマネジメントにおいては、睡眠の質、体 調、運動時間が複合的に関連していることが明らかになった。
オンライン授業による生活習慣の変化はすべて健康度を低下させる要因に 傾いていた。
したがって授業を通じて早急に食生活、睡眠・休養、運動などの日常の生 活習慣の重要性とより望ましい生活習慣への改善のための具体的な内容を伝 え、それが実践、習慣化に至るまでの指導が必要であると考えられる。ま た、オンライン授業時は生活リズムの変化とコミュニケーション不足からく る孤独感や不安感から生活習慣、運動行動、食生活、精神面に大きな影響を 及ぼすと考えられるので生活と精神の両面からの指導も必要であると考えら れる。したがって授業時においては、孤独感や不安感を避けるためコミュニ ケーションの機会を確保するなどの工夫が必要である。
望ましい生活習慣を獲得することは、大学生活のみならず、生涯にわたっ ての健康に発展するといえる。新型コロナウィルスという未知のウィルスと 戦っている恐怖の中でこそ「望ましい健康習慣」の習慣化が重要であり、そ の獲得のためにより充実した健康教育・健康指導の内容を検討し、大学生の 時から「自らの健康は自ら守る」という保健行動が完成するまで、授業等を 通してできるだけ多くの機会を作り、繰り返し行うことが重要であると考え られる。
5.参考文献
1) 厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/index.html)(参照日2020年10月9日)
2) 朝日新聞2020年10月11日朝刊より引用
3) 大塚正八郎ほか編著「新・保健科教育法」講談社、154–155、1974.
4) 鈴木明、田村達也、平工志穂、藤島遥、高橋進「大学新入生の生活習慣、活動 量、体温に関する検討」、未発表論文
5) Belloc NB, Breslow L. 「Relationship of physical health status and health practices」 Prev. Med. 1(3):409–421. 1972.
6) Breslow L, Enstrom JE.「Persistence of health habits and their relationship to mortality」Prev. Med. 9(4):469–483. 1980.
7) 厚生労働省「平成30年国民健康・栄養調査結果」2020.
8) 入來正躬「体温生理学テキスト」、文光堂、235–243、2003.
9) 清水昭監修「体温を上げて健康な体を手に入れる」ブティック社、2–18、 2010.
10) 石原結實「体温力」PHP新書、16–33、2010.
11) 高石昌弘、出井美智子編「学校保健マニュアル」南山堂6–10、2001. 12) 大野良之、柳川洋編集「生活習慣病予防マニュアル」南山堂2–18、2002.
この論文の一部は2021年2月22日に行われた「第9回大学体育スポーツ研究 フォーラム」にて発表した。
キーワード
大学新入生、オンライン授業、生活習慣、健康度、活動量