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幼児期における食育の現状と課題

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Academic year: 2021

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幼児期における食育の現状と課題

森 美佐紀 *・平工志穂 **

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 はじめに

食はいうまでもなく私たちの健康に直結する重要な事柄であり、私たちが 心身の健康を保ち生涯にわたって生き生きと暮らすために不可欠なものであ る。

一方、社会情勢の変化とともに、私たちを取り巻く食に関する環境は大き く変わってしまった。核家族化や共働き世帯の増加、地域社会の変化などに よって、食生活においても、不規則な食事や栄養の偏り、生活習慣病の増加 などが問題となっている。さらに食の安全性の問題や食の海外への依存の問 題が生じている。また現代においては、地域独自の食文化や伝統的な日本の 文化としての食も失われつつある。私たち自身も、多忙な日々を送る中で食 の大切さを忘れがちであろう。

多くの人がこのような食を取り巻く現状に危機感を抱き、対策の必要性を 感じ始める中で、平成17年に食育基本法が成立した。そして、この食育基 本法の施行により、近年様々な場で、多くの食育の取り組みが行われるよう になった。基本法が都道府県や市町村に対して、食育推進計画の作成を促 し、各自治体が食育に取り組み始めたことが大きく影響しているからだ。基 本法の制定に際しては、食という個人の問題に法律が介入することへの抵抗 もあったが、結果として私たちの食育への意識は前進したといえよう。

そのような食育基本法には、「今こそ、家庭、学校、保育所、地域等を中

*富山福祉短期大学

**東京女子大学

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心に、国民運動として、食育の推進に取り組んでいくことが、我々に課せら れている課題になった」と明記されている。そこで本稿では、人の生涯の基 礎となる幼児期の食育について取り上げ、その現状の一端を知ることを目的 とする。当然のことながら食育は、あらゆる世代の人々に必要なものであ る。生涯を通した人の心身の変化を考えるとき、青年期には青年期の、老年 期にはそれなりの食育が必要なのは明らかである。ただ、とりわけ子どもた ちに対する食育は、健全な心と体を培い、生きる力を身に付けていくための 基礎になるものとしてより重要なものであろう。このことは食育基本法の前 文においても、「子どもたちに対する食育の重要性」として記述されている。

そこで本稿においては、この幼児期における食育の現状を知り今後の課題を 検討することを目的とする。

ところで、食育基本法では改めて、食育は「知育、徳育及び体育の基礎と なるべきものと位置付け」られた。幼児期の食育の目標は主に、「保育所に おける食育に関する指針」(2004年厚生労働省・研究班作成)に見ることが できるが、その中で保育所における食育の目標を以下の子ども像の実現を目 指して行うとしている。それはすなわち、幼児期における食育の目標につな がると考えてよいであろう。

(1)お腹がすくリズムのもてる子ども

(2)食べたいもの、好きなものが増える子ども

(3)一緒に食べたい人がいる子ども

(4)食事づくり、準備にかかわる子ども

(5)食べものを話題にする子ども

ここで、(1)と(2)は、子どものからだに関わることであるので、「体育」

につながるし、(3)は、「徳育」に、(4)と(5)は、「知育」に通じること であろう。つまり「食育」は、従来の三育に次ぐ教育としての位置づけでな く、知育と徳育、体育のそれぞれに関わり基礎となるものと示されたという ことなのである1

また、現在保育の指針を示す「保育所保育指針」においては保育内容とし

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て、健康、人間関係、環境、言葉、表現の5領域を挙げることができるが、

その「保育の内容」においてはいずれの領域にも、食に関する内容が含まれ ている。例えば領域「健康」の内容には、「健康な生活のリズムを身に付け、

楽しんで食事をする」とあるし、他領域の内容にも、食育によって達成され るものが含まれていると考えることができるのである2

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 方法

幼児期の食育に関する研究の内容は多岐にわたる。まず幼児を対象とした 実践的な食育活動の報告があり345、それらは主として幼稚園や保育園の 場で行われている。また幼児の食に関する実態を知るための調査研究があ り678、他にも子育て支援として、幼児の保護者を対象とした実践研究や 調査研究91011、それから保育者や保育者養成校の学生を対象とした調査 研究121314なども行われている。

それらに対して本稿においては、幼児期における食育の現状をできるだけ 総合的に把握するために、様々な新聞に掲載された記事を検討し分析する。

そのためにここでは、雑誌『切り抜き速報 保育と幼児教育版』15を利用 する。『保育と幼児教育版』は、全国の85の新聞から保育に関する記事を抜 粋し編集された月刊誌だからである。ここでは特に2010年1月号から2014 年12月号までの5年分について、食に関する記事を内容に応じて整理し た。食育基本法の制定より数年後の状況を総合的に知ることによって、今後 の幼児期における食育の方向性を探る一助になればと考える。類似の研究と しては、「幼児」と「食」をキーワードに論文や書籍、法令を分析した研究 があり16、食べる行為の意味づけをカテゴライズし食に関する文献を概観 することで、幼児期の食育のあり方が検討されている。それに対して、本稿 は新聞記事という媒体に記載された文章を分析することに特徴をもつといえ る。新聞記事という性格上、当然のことながら、結果に見ることのできるの は取材された出来事や活動に限られたものであるということになるが、一 方、それらは一般読者に向けられたものであり、広く社会において認知され

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た認識であると考えることができよう。

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 結果

幼児期の食育に関する新聞記事を内容に応じて整理した結果、該当する記 事は270件あり、それらを表1に分類してまとめた。

記事からは幼児自身による体験的な食育活動が多くみられ、子どもたちが 食物の栽培や調理などに取り組む実例が紹介されていた。それから、幼稚園 や保育園、自治体主催の食育教室や講座のような活動、給食やお弁当に関す る記事など、多様な内容が確認できた。今日的な課題として、食物アレル ギーを持つ子どもへの対応や親世代に対する食に関する子育て支援について の記事も多くみられ、現在も様々な取り組みが実践されていることが示され た。また「その他」には、おやつに関する記事や、食の儀礼、非常用乳幼児 食に関する記事などがあった。

各記事の詳細については次章に記載し、考察を進めたい。

4

 考察

幼児期の食育として記事に多く見られたのは、食の栽培、収穫から調理ま 表1 食育に関する記事の内容分類

記事内容のカテゴリー 記事数

離乳食 11

給食(幼稚園・保育園) 33 お弁当(幼稚園・保育園)  7 食育教育(教室・講座) 16

食育教材  9

食育体験(栽培・収穫・調理) 55

好き嫌い  7

食のマナー  4

食物アレルギー 65

食の安全 12

子育て支援 23

その他 28

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でを子ども自身が実践して学ぶ食育体験に関するものであった。

例えば山梨日日新聞では、山梨大学付属幼稚園での意欲的な取り組みが紹 介されていた17。同幼稚園では、9か月にわたり、園児が小麦の栽培から製 粉、料理までを体験した。パンが小麦粉でできていると知った園児が「小麦 粉を作ってみたい」と言い出したことが、取り組みのきっかけだったとい う。10月に同園の所有する畑に種をまき水やりなどもして管理し、翌6月 に刈り取って乾燥させ、脱穀機と石臼を使って製粉作業に挑戦した。そうし てできた小麦粉で、7月にはうどんやクッキーを料理した。園児たちは、栽 培から加工、調理までを楽しみながら体験し、食べものができるまでいくつ もの過程があることを学んだのである。それによって園児たちの食べものに 対する見方も変わったことと思われる。

魚食に関する記事はやはり海辺の地域に多く見られ、地域の特性をもっと も活かした食育の在り方であるといえる。例えば松江市の野波保育所では、

実際に園でブリの解体が行われ、園児たちは解体された部位を見たり、説明 を聞いたりして魚への理解を深めるという18。そしてさらにその後、さば いたブリは調理され、園児たちは給食として味わった。スーパーマーケット などで目にする切り身と違い、現実の魚をさばいて食するという体験から、

子どもは生き物のいのちについて大切なことを感じたり学んだりするのでは ないだろうか。

また山口県萩市の越ヶ浜保育園では、地元の漁業者の提供によって、アマ ダイの試食会が開かれている19。そこでは、資源保護のために稚魚の放流 を実施しているが、同保育園の園児たちも毎年4月に漁港の岸壁で放流を 手伝っているという。そして大きくなったアマダイを試食会で実際に調理 し、フライや煮つけにしていただくのである。自分たちの放流したアマダイ がおよそ40センチメートルに成長して(実際には約5年の年月が必要なの であるが)それを食するという体験は、やはり食と生物のいのちについて、

子どもたちが何らかのことを学び感じる契機となるであろう。

なお魚の食については、子どもたちに魚食への理解を促すだけでなく、将

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来の魚の消費者としての期待も込めて、漁業組合などとも連携して行われて いる例が少なくなかった。

以上のような子ども自身による食の実践的活動が、今後の食育の中心と なっていくのではないかと考えられる。

また近年の子どもの食の傾向として、食物アレルギーに関する記事がもっ とも多く見られた。内容は主として、その現状と対策に関する記事であっ た。食物アレルギーに関しては、厚生労働省が2011年に「保育所における アレルギー対応ガイドライン」を作成している。ガイドラインによると、保 護者が医師に書いてもらった「生活管理指導表」を保育園に提出し、保育園 は個別に対応を練ることになっている。自己注射「エピペン」の管理もあり うるとしている。

実際、日本保育園保健協議会によると、保育園に通う乳幼児の患者の割合 はおよそ5パーセントで、園でアレルギー食材を誤って食べる誤食が頻繁 に起きているという。記事には誤食を防ぐための園の様々な努力が紹介され ており、保育園や幼稚園では食物アレルギーに懸命に対応する姿が浮かび上 がった。岐阜新聞には岐南さくら保育園の取り組みが具体的に紹介されてい た20。同園では、過去に乳製品アレルギーを持つ園児の足に他の園児がこ ぼした牛乳がかかり、皮膚が赤くなった経験から、認識の甘さを反省し徹底 的に取り組むようなったという。毎月栄養士と保育士で給食献立会議を開 き、アレルギー児の代替食を考える。献立メニューには原材料をすべて表記 し保護者にも確認を求める。そして食器を分けるトレーも、アレルギーのな い園児とは色を分け、さらに配膳を担当した保育士が名前を紙に記入し、誤 配も防ぐ。そして食事中も必ず保育士が付き添い誤食を防ぐのである。この ような取り組みは、他にもいくつか紹介されており、保育現場の努力を読み 取ることができた。

また食物アレルギーの治療では、原則として原因食物を除去することがポ イントになるが、行き過ぎた除去は、別の問題を引き起こす。言うまでもな く乳幼児期は発達過程なので、低栄養による体の障害、感染に抵抗する免疫

(7)

力の低下などが心配されるのだ。さらに幼児は、自分がアレルギーであると いう自覚がない場合もあり、自分だけ食べられないことや、他の子と同じ給 食ではないことが理解できず、周囲の大人による細やかな目配りが必要にな る。食物アレルギーを持つ園児の対応をめぐっては、給食をはじめとして、

実際にアレルギー反応が出た時の連携など、今後の課題が多いことが理解で きる。長崎新聞によると、食物アレルギー事故の相次ぐ中、長崎県が県内全 域の保育園幼稚園にアンケートを実施しており、その結果、およそ3割の園 に誤食や誤配膳などの事故や危ない事案があったという回答を得た21。県 は、食物アレルギーの対応のために施設側の負担が増しているとして、国に 保育園の調理員の配置基準を改善するよう求めるという。一方、読売新聞に よると、保育園のアレルギー対応や事故の全国的な実態はわかっていない が、厚生労働省は調査を予定していないとしている22。保育者の負担が増 していると思われる中、今後は実際のアレルギー事故を取りまとめ、細やか に対応していくことが求められているといえよう。

特徴ある取り組みとしては、食物アレルギーの子どもを持つ親の会などが あり、治療や除去食に悩む親同士の交流を目指している23。除去食に関し ては、周囲の無理解が重なると孤立してしまう親もいるため、新聞記事に よって、このような活動がより広く認知されていくことが有効であると思わ れた。

食育の子育て支援活動としても様々な記事が見られた。多く見られたの は、母親や親子を対象とした料理教室であったが、中には特徴的な取り組み が目を引くものもあった。というのも、現在の親世代はそれまでと比べて、

勉強や部活動などの学校生活で忙しく、それによって家庭の手伝いをするこ とが少なく、充分に食についての知識や技術を伝えられることなく育ったま ま親になっている。その現状を受けて親世代への支援として、主に母親を対 象に料理教室や食育講座を開催しているところが少なくなかった。

同様の観点から、熊本県八代市の八代ひかり保育園の園長による取り組み が印象的だった24。同園長は40年間働く母親と子供たちを見続けてきて、

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核家族化や共働き家庭の増加に伴う食の変化を感じたという。親が仕事に追 われて外食が増えたり、朝食をしっかり食べられなかったりするのは、「単 なる手抜きとは思えない」し、親自身が食の経験に乏しく「子どもに何を食 べさせたらいいか分からないという若い親も多い」という。そこで子どもの 食がさらに乱れることを心配した同園長は、保育園の駐車場の一角に手作り 惣菜を売るお店を開店させたのである。仕事帰りにスーパーなどに立ち寄る 時間も節約できるとして「本当に助かる」という母親の声も紹介されてい た。母親への食育としては、過剰な支援が逆に子育ての意欲低下につながり 弊害になりうるという意見もあるが、子どもの健やかな育ちを願ってその親 を応援する活動は親世代への支え、育みとなり、それが子育てにもつながる のではないかと思われた。

また福島県伊達市では、「育メン ダディ料理教室」として父親の料理教 室が市の助成事業として開催されていた25。父親が料理を学ぶ間に子ども たちが遊び、最後には一緒に試食するという。子育て支援というと母親を対 象にしたものがほとんどであるが、父親の料理教室などの活動は父親の家事 育児への参加の必要性を考えさせてくれるものである。このような活動が記 事になって紹介されることで、父親の家事育児の参加への意識が高まること が期待されるので、教室などの開催やそれらの活動を紹介する記事は今後も 求められるといえる。

また幼児期における食育ということで、幼稚園や保育園の給食に関する記 事も多くみられた。多くの園では、給食を利用して園児への食育活動を行っ ており、様々な工夫が見られた。例えば、メニューに関して栄養士から園児 に説明が行われたり、園児が給食室の中を見られるように窓を作ったり、さ らに園児が実際に料理をする日を設けたりして、食を保育の一環ととらえて 子どもの育ちを支える活動が多くみられた。福岡県春日市の保育園春日子ど もの家クーナでは、給食で食べる生の食材に園児が触れる時間を持つという26。 じっと見つめ、匂い、触れることによって食材の生命感を発見し、子どもの 五感を通して命を食べる感覚を芽生えさせる。料理の音やにおいを感じ、食

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べるという作業を通して、生きる力を養うことを目指しているのである。

また給食の制度に関する記事にも目を引くものが見られた27。そもそも 認可保育園には、1948年の制度発足時から調理室の設置が義務付けられて いた。生活の場である保育園には家庭と同様、台所があり手作りされた食事 を食べるのがよいという基本的な考えがあったからである。しかし保育園の 増設や統廃合の進む中、財政面から調理室と調理員なしの保育園の検討がな されるようになり、2010年6月から、希望自治体や保育園が食事を外部搬 入できるように、最低基準が定められた。この動きをめぐり、保育関係者の

「食育の流れに逆行する」という声が紹介されていた。また幼児のみでなく、

保育者の側の食の学びを奪うという意見もある。そのような中で、保護者は 今まで以上に保育の質を見極める必要がでてきたといえよう。

最後に「その他」として分類された記事についてであるが、例えば富山新 聞には食に関する儀礼として、「お食い初め」の記事があった28。お食い初 めは、生後100日頃に行うもので、赤ちゃんのために祝い膳を整えて食べ させるまねをする。赤飯に尾頭付きの焼き魚、煮物などに、小さな石を添え る。この石は、歯が丈夫に育つようにという意味があり、氏神の境内から 拾ってきてその子の名前を書いておく。そして終わったら神社の境内に戻す ものであるという。この行事は、昔から一生食べるのに困らないようにとい う願いを込めて行われてきた儀式であり、子どもの健やかな成長を願う古来 の人々の気持ちが受け継がれるのを感じることができるもので、文化として の食の伝承ということを考えたときに今後の継承が望まれた。

秋田県大仙市では、乳幼児向けの災害時非常食の記事が見られた29。震 災時に乳児用のミルクなどが不足したことは、メディアでも何度か取り上げ られたところである。そこで、乳幼児を持つ母親を対象として「ママたちの 防災教室」が開かれ、災害時に子どもに必要となりそうな食料を考えて非常 用セットを製作したという。震災で非常食への注目は高まったものの、乳幼 児は大人用の食料を利用できなかったことも多く、その経験から開催された ものである。この記事は、秋田魁新報の朝刊に掲載されたものであったが、

(10)

このような取り組みは、震災のあった東北地方だけではなく、全国的にも紹 介されてよいのではないかと思われた。

5

 おわりに

新聞記事によって、近年、幼児期において食育のさまざまな取り組みが行 われていることが理解できた。「食育」という言葉自体も多く使用されてお り、食育の理念や活動が私たちの生活に浸透している様子がうかがわれた。

また、食に関する教育である食育は、個人の健康の問題だけではなく、社 会の多くの問題を提示して私たちに考えさせてくれることが示された。すな わち食育によって、広く自然の恵みを実感し、自身も自然の一部であること を再認識することができる。さらに地域の文化や伝統を知り、流通をはじめ とした社会の仕組みを知り、遠い海外との交易までを理解することができ る。食育はそのような意味で、個人の健康の問題のみならず、広く社会の問 題を考える契機としても、重要な役割を担っていくものなのである。

また食育基本法の前文には、この国の食の現状について、「豊かな緑と水 に恵まれた自然の下で先人からはぐくまれてきた、地域の多様性と豊かな味 覚や文化の香りあふれる日本の『食』が失われる危機にある」と指摘されて いる。地域の独自性や伝統という文化としての食の在り方を再び模索し、そ れを子どもたちに伝えていくことが今求められているのではないだろうか。

新聞記事には全国各地において、そのための多様な取り組みが見られ、次世 代に引き継がせようとする活動を確認することができた。記事には全体的に

「地産地消」という言葉が多く見られたことからも、地域の食文化を守ろう という姿勢がうかがわれるといえる。

最後に、記事からみた今後の課題としては、まず、子どもへの食育のため には、それを実践する親の世代への食育の支援が必要であろうということで あった。これについては、子育て支援に関する記事の多様さから理解でき た。また、幼児期の食育として幼稚園や保育園の給食の問題や、食物アレル ギーを持つ子どもへの対応など、現在も検討の続く課題もあった。そして子

(11)

どもには食について、栄養や生活習慣の側面から理解を促すだけではなく、

食べるということそのものの意味、つまり、食べるということは文字通り他 の生き物の命をいただくということや、さらに栽培や流通など多くの過程を 経て食を得ることができるということへの理解など、さらなる育みが求めら れるといえるが、それはまた少しずつ実践されつつあることも理解できた。

引用参考文献

(1)五感イキイキ!心と体を育てる食育 小川雄二、中田典子 新日本出版社 2011 年 p. 26

(2)幼児期の保育と食育 小川雄二、須賀瑞枝 芽ばえ社 2013年 p. 16

(3)幼稚園における野菜栽培活動の状況とその食育効果―北海道某市での調査― 木 田春代、武田文、荒川義人、大久保岩男 天使大学紀要 Vol.13 No.2 2013年  pp. 1–11

(4)保育園だからこそ展開できる自然体の 食育  佐々木美緒子 保育学研究 第 48巻第2号 2010年 pp. 274–277

(5)幼児期の食育に関する研究: 附属幼稚園における4年間の食育の取り組みから  大久保英哲、渡辺誓代 教育工学・実践研究 第33号 2007年 pp. 43–60

(6)幼稚園児の食生活調査 近藤みゆき、日比野久美子、三田弘子、宮澤節子 名古 屋文理大学紀要 第11号 2011年 pp. 137–143

(7)保育園児の食生活等に関する実態調査 大森玲子、山崎久子、飯田有美、岩原祐 子、永山ケヱ子 宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 第30号  2007年 pp. 361–368

(8)幼児の食生活調査 石見百江、平島円、石野左記子、下岡里英 岐阜市立女子短 期大学研究紀要 第56号 2006年 pp. 39–42

(9)子育て支援講座における食育の取り組み 眞谷智美、高松幸子、山村涼子、山下 浩子 久留米信愛女学院短期大学研究紀要 第38号 2015年 pp. 91–97

(10)食と環境: 子育て支援センターでの食育 中山美知子 保育学研究 第48巻第 2号 2010年 pp. 277–279

(11)保護者の生活習慣が幼児の食生活におよぼす影響 石見百江 岐阜市立女子短 期大学研究紀要 第63号 2013年 pp. 31–36

(12)学生の幼児期における「食育」の思い出調査 古郡曜子、上羽緑、高橋真記枝  北海道文教大学研究紀要 第32号 2008年 pp. 73–81

(13)保育実習で体験した乳幼児の食の現状と栄養教育への取り組み 深井康子 富 山短期大学紀要 第43巻(1 2008年 pp. 165–174

(14)食育実践に求められる保育者の資質と保育者養成の課題(1) 進藤容子、原口 富美子 湊川短期大学紀要 第42集 2005年 pp. 7–14

(15)切り抜き速報 保育と幼児教育版 ニホン・ミック社 2010年–2014年

(16)「食べる」行為の意味づけの検討 ―「幼児と食」をめぐる文献の分析を通し て― 水谷亜由美 奈良女子大学人間文化研究科年報 第30号 2014年 pp.

161–177

(17)前掲15) 2011年10 p. 13 山梨日日新聞朝刊 2011年7月24日(日)

(12)

(18)前掲15) 20144号 p. 14 山陰中央新報朝刊 2014117日(金)

(19)前掲15) 20111p. 70 山口新聞朝刊 2010113日(水)

(20)前掲15) 2014年2号 p. 76 岐阜新聞朝刊 2013年11月20日(水)

(21)前掲15) 2014年2号 p. 77 長崎新聞朝刊 2013年11月22日(金)

(22)前掲15) 20141号 p. 18 読売新聞(東京)朝刊 2013101日(火)

(23)前掲15) 20144号 p. 68 中日新聞朝刊 2014120日(月)

(24)前掲15) 2011年10 p. 14 熊本日日新聞朝刊 2010年12月30日(木)

(25)前掲15) 2011年9 p. 77 福島民報朝刊 2011年6月14日(火)

(26)前掲15) 20148号 p. 36 毎日新聞(福岡)朝刊 201455日(月)

(27)前掲15) 20109pp. 78–79 読売新聞(東京)朝刊 201068日(火)

(28)前掲15) 2010年2 pp. 82–83 富山新聞朝刊 2009年11月30日(月)

(29)前掲15) 2014年1号 p. 73 秋田魁新報朝刊 2013年10月26日(土)

キーワード

食育、幼児期、新聞記事、食育基本法、食物アレルギー

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