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手関節内骨折の診断と治療 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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手関節内骨折の診断と治療

市立函館病院 整形外科

Key words :Wrist fracture(手関節部骨折)

Carpal bone fracture(手根骨骨折)

は じ め に

著者の経験を元に,手関節内およびその周辺 の骨折の診断と治療について述べた.

手関節(wrist joint)は狭義には橈骨手根関 節(Radiocarpal joint)を指すが,広義にはRa- diocarpal joint,豆状三角骨間関節(pisotriu- quetral joint),手根間関節(intercarpal joint)

までを呼ぶとするものから,これに手根中央関 節(midcarpal joint)を合わせたもの,さら には前腕骨と中手骨の間のすべてを含むとする ものもある.CM joint,遠位橈尺関節(distal Radio-Ulnar joint : DRUJ)は含めないとする ことが多いようである6,7−19)

.関節内骨折での治療目標

関節面の転位(gap,step off)1以内を目 標とする.また,橈骨遠位骨折の場合,VT0

〜20°,UV±3以内を目標とする.ただし,

高齢者では転位が大きくても障害を訴えない場 合も有り,活動性や利き手も考慮する.

.診

問診,受傷機転でおおよその目安をつけ,視 診,触診,腫脹の部位,圧痛点,単純線にて 診断する.必要に応じて,機能撮影,透視,CT,

その他(MRI,骨シンチなど)の検査を追加 する.単純X線では一見関節外骨折のように 見えても,CTで骨折線が関節に及んでいるの が明らかになることもよくある.掌側,背側cor- texの粉砕がある場合には,積極的にCTを撮

第5回教育セミナーから

a 術前 X 線

b CT

c 術後 X 線

キャスター付き椅子ごと転倒.CT にて関節に及ぶ骨折線 を認めた.関節面の転位がないため,通常の掌側 plate にて 固定した.

図−1 症例1 46歳,男性

− 66 − 北整・外傷研誌 Vol.28.2012

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るべきである(図−1)

.治

保存療法,pinning,wiring,創外固定,plate 固定(掌側,背側)および,これらの組み合わ せがある.

橈骨遠位骨折

古典的分類では掌側・背側Barton骨折,

Chauffer骨折が関節内骨折に該当する.AO

分類では,Type B,Cが関節内骨折となる.

関節内骨折では,Meloneの分類がよく使われ る.

治療には,創外固定が良いとする意見もある が,最近は掌側locking plateがよく使用され ている.screwpinの位置,関節面の整復状 況を確認するためには,軽度傾斜位像が有用で ある.Matulloらは,側面像で,拳の高さ程手

Lateral Tilt Wrist Radiograph の撮影方法

a 術前 X 線,CT b 通常のイメージ

c 傾斜位でのイメージ b 術後 X 線.関節骨片を K-wire にて固定した.

傾斜位像は掌側 plate 固定後の関節評価に有用 運動会の練習中に転倒し受傷 図−2 Lateral Tilt Wrist Radiograph 図−3 症例2 32歳,女性 北整・外傷研誌 Vol.28.2012 − 67 −

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を持ち上げて撮影する方法をlateral tilt wrist radiographとして5),Paceらは側面像では1 ,正面像ではP−A像で5持ち上げて撮影 をする方法をarticular wrist viewとして報告 している8)(図−2)

関節内骨折の場合,関節面に沿ってK-wire screwを 刺 入 す る こ と が よ く あ る . 掌 側 plateを併用する場合には,plateの遠位のバッ トレスピン(またはscrew)の邪魔にならない ように計画的にpinを刺入 す る 必 要 が あ る7)

(図−3,4)

症例によっては関節鏡が有用である.固定が 困難な関節内小骨片は摘出する.整復困難な陥 没骨折は,骨幹端部に小孔をあけ,K-wire 持ち上げる方法が良く紹介されているが2),実 際にやってみると難しい.K-wireが細いと途

図−4 バットレスピンの邪魔にならない pin 刺入 部位(●印)

a 術前 X 線,CT

b 関節鏡を併用し,K-wire,エレ バにて骨片を持ち上げ整復

c 術後 X 線 交通事故で受傷.舟状骨関節面の陥没骨折有り

図−5 症例3 81歳,女性

− 68 − 北整・外傷研誌 Vol.28.2012

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中で曲がったり骨を穿孔したりする.逆に,太 いと操作性が悪くなり,小孔から割れが広がる こともある.経験的には,骨折部あるいは茎状 突起の橈側に作成した骨孔から,小エレバを挿 入して持ち上げるほうが簡単に思われる(図−

5).また,関節鏡は時間が長くなると水が漏 れて腫れてくる,関節鏡とイメージの併用は煩 雑となるという問題もある.

頻度は高くはないが,関節の掌側縁の骨折に は注意を要する.26年 にAndermahrら は lunate facetvolar extensionを固定しない と 再 転 位 を 起 こ す こ と が あ る と 報 告 し て い 1).従来の掌側plateではlunate facetの骨 片の固定は難しく,wire,suture loop,K-wire,

screwなどでの固定が必要である.著者らは,

マレット指に対する1. small plateを加工 したhook plate4),股関節の小さな後壁骨折に 対する1/3plateを加工したspring plate3) 応用し,Synthes LCP dorsal distal radius L-

plate2.4を使用してこの骨片を固定した(図−

図6 Synthes LCP L-plate2.4を使用

a 受傷時 X 線 b 徒手整復後 CT

作成した hook plate と K-wire にて橈骨掌側縁の骨片を 固定した

d 術後9週 CT.整復良好 交通事故にて受傷

図−7 症例4 26歳,男性 北整・外傷研誌 Vol.28.2012 − 69 −

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6,7) 舟状骨骨折

分類は,最近はFilan Herbert分類がよく使 われている.

Type Aは安定型であり,ギプスでの治療も

可能であるが,かつてはthumb spica long arm castが勧められており,固定期間も2〜4ヵ 月必要といわれ,非常に不自由なものであっ た.佐々木は母指の固定は不要であり,Type A1ではshort arm cast,Type A2では肘頭ま で固定し,肘の屈伸はある程度許容するが,回 内外を制限するギプスを勧めている2)

舟状骨は血管の分布から近位の血流が不良と いわれている.このため,大きく展開すると近 位骨片の壊死を生じる危険性が高くなる1).転 位の大きい骨折や偽関節,初回治療に失敗した ものは手の専門医へ依頼するべきである.

池田らはレントゲンに基づいた分類と治療を 報告している.このうち,嚢胞型Herbert screw に代表されるdouble threadタイプのscrew りも,Acutrak screwの方が成績が良く,骨と

screwの接触面積の違いであろうと述べてい

3)

著者らは,Type A2でも長期の固定を嫌う 患者に対しては,小切開でのAcutrak screw 固定を行っている(図−8).骨折線が遠位寄 りの場合は順行性が望ましいが,骨折線がwest

〜近位にある場合には逆行性screw固定がよ く行われる(図−9)6)

有鉤骨鉤骨折

厳密には関節内骨折ではないが,一緒に述べ る.診断にはCTや手根管撮影が有用である.

有鉤骨鉤撮影法もあるが,きれいに写すのは難 しい9,5).治療は転位の少ないものはまずギプ ス固定を試みる.転位の大きいものや偽関節と なったものに対しては,かつては骨片摘出術を 勧めるものが多かったが,最近ではAcutrak

screwなどによる骨接合術が行われることが多

a 術前 X 線,CT

b 術後 X 線

c 術後3ヵ月 CT.骨癒合良好 交通事故にて受傷,Type A2 図−8 症例5 39歳,男性

図−9 逆行性 screw 固定時の刺入位置

− 70 − 北整・外傷研誌 Vol.28.2012

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くなってきている.

先にCM関節は手関節に含まないことが多 いと述べたが,Hodgsonの提唱するMetacar- pal cascade linesは尺側CM関節脱臼の診断 に有用なので紹介する2).これは,中手骨の延 長線は橈骨関節面から2近位部で収束すると いうものである(図−10)

あらゆる手術について言えることであるが,

喫煙患者には注意が必要である.Littleらは,

舟状骨骨折後の偽関節と喫煙にはrelative risk 3.7と強い関連が認められたと報告している4) また,Sarrafらは,Heavy Smokerにおける

転位のない橈骨茎状突起骨折で遷延治癒が見ら れたと報告している0)

a 単純 X 線.斜位像では CM 関節脱臼の診断は容易だが,正 面像ではわかりにくい

line を引くことで,正面像 でも CM 関節脱臼の診断が 可能

c 徒手整復後.line の乱れはなくなっている

図−10 Metacarpal cascade line は尺側 CM 関節脱臼の診断に有用である.

図−11 UV=0を目標に整復した場合,かえっ て DRUJ の不適合,骨折部の gap を生じて しまう症例もある

北整・外傷研誌 Vol.28.2012 − 71 −

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最後に,橈骨遠位骨折は高齢者に多い外傷で あるが,高齢者ではもともと変形性関節症があ る場合も多い.もともとulna plus variant 患者の場合,UV=0を目標に整復したら,

DRUJの不適合が生じてしまったり,骨折部 gapが 生 じ て し ま う こ と も あ る . 無 理 な

(不要な)矯正はしないほうがいい場合もある

(図−11)

1)Andermahr J et al. : The Volar Extension of the Lunate Facet of the Distal Radius : A Quantitive Anatomic Study. JHS26;31A:82−85.

2)Hodgson PD et al. : The ’Metacarpal cascade lines’ : Using in the diagnosis of dislocations of the carpometacarpal joints. JHS27;32E:27−21.

3)池田和夫ほか:舟状骨骨折のレントゲン所見に基づいた治療方針.日手会誌 27;24:58−62.

4)Little CP et al. : Failure of Surgery for Scaphoid Non-Union is Associated with Smoking.

JHS26;31B:22−25.

5)Matullo KS et al. : Lateral Tilt Wrist Radiograph Using the Contralateral Hand to Position the Wrist After Volar Plating of Distal Radius Fractures. JHS20;35A:90−94.

6)長岡正宏:手・手関節のバイオメカニクス.整形外科外来シリーズ9手・肘の外来(龍順之助 編).Medical View,東京,20;8−11.

7)中島菊雄ほか:橈骨遠位端骨折へのDRP掌側プレートの使用経験 −問題例・反省例を中心 として−.北整・外傷研誌 28;24:19−24.

8)Pace A et al. : Use of Articular Wrist Views to Assess Intra-Articular Screw Penetration in Surgical Fixation of Distal Radius Fractures. JHS20;35A:15−18.

9)Saffar P:第3章 補助的診断法,3.1.9 有鉤骨鉤突起撮影.手関節の外傷.Springer- Verlag.東京,12,19−20.

0)Sarraf KM et al . : Non-Union of an Undisplaced Radial Styloid Fracture in a Heavy Smoker : Revisiting the Association of Smoking and Bone Healing. Hand Surg21;16:7

−76.

1)佐々木 孝:3−4骨・関節の外傷.手の外科学(内西兼一郎編).南山堂,東京.5;15−12.

2)佐々木 孝:3.手関節の痛み.E.骨折と脱臼.整形外科痛みへのアプローチ3 肘と手・

手関節の痛み(中村蓼吾編).南江堂.東京,17;13−11.

3)佐藤 徹ほか:寛骨臼骨折に対する前方・後方合併手術.OS NOW Instruction27;4:2

−25.

4)Teoh LC et al. : Mallet Fractures : A Novel Approach to Internal Fixation Using A Hook plate. JHS27;32E:24−30.

5)藤 哲:手根骨骨折.骨・関節・靭帯 17;10:13−11.

6)藤 哲:舟状骨骨折の治療法.整形・災害外科 17;40:15−16.

7)時岡孝夫ほか:総論,前腕・手の機能解剖,手の関節.新図説臨床整形外科講座6前腕・手

(平澤泰介編).Medical View.東京,15;4−9.

8)上羽康夫:4章 深部解剖学.関節 B手の関節.手 その機能と解剖2版.金芳堂,東京,

9;80−96.

9)内西兼一郎:1−5手関節.手の外科学(内西兼一郎編).南山堂,東京.15;25−30.

− 72 − 北整・外傷研誌 Vol.28.2012

参照

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