1 整数
1.1 整数の基本的性質
1. 記号と用語
• N={1,2,3,· · · } : 自然数の集合.
• Z={· · · ,−2,−1,0,1,2,· · · } : 整数の集合.
±,×,結合法則,分配法則 を付随させ整数環とよぶ.
• Q={p/q :p, q ∈Z}: 有理数の集合, R: 実数の集合, C: 複素数の集合,
÷も付随させて有理数体,実数体,複素数体とよぶ.
2. 定理 1.1 (除法定理):
∀n 非負整数,∀m 自然数 ⇒ ∃1q,∃1r ∈Z s.t. n=mq+r および 0≤r < m.
q を n を m で割った商,r を剰余という.
3. 除法定理の拡張 :
∀n∈Z,∀m(6= 0)∈Z ⇒ ∃1q,∃1r∈Z s.t. n =mq+r および0≤r <|m|. 4. 演習 :
(1) (d 進数展開)n を0以上整数,d を2以上の自然数とするとき n=c0+c1d+· · ·+ckdk (0≤ci < d) の形に一意的に表せることができることを示せ.
(2) (d 進少数展開)d を2以上の整数,x を 0< x <1をみたす実数とするとき,
x= a1
d + a2
d2 +· · ·+an
dn +αn (0≤ai < d, 0≤αn< 1 dn) の形に一意的に表されることを示せ.
5. 用語と記号
• m は n を割り切る ⇐⇒ m|n ⇐⇒ n は m で割り切れる このときm は n の約数,n は m の倍数という.
• n, mの公約数,公倍数.
最大公約数 (m, n),最小公倍数=mn/(m.n).
(n, m) = 1 のとき n と m は互いに素という.
6. 定理 1.2 :
n=mq+r (n, m, q, r∈Z− {0}) とする.
n と m の公約数は m と r の公約数である,また,逆もなりたつ.
とくに (n, m) = (m, r).
7. 演習 : a0 =a1 = 1, an+2 =an+1+an で定まるフィボナッチ数列の隣り合う項は互 いに素,すなわち任意の n について (an, an+1) = 1 であることを示せ.
1.2 ユークリッドの互除法
1. ユークリッドの互除法 :
定理1.2 を応用した二つの整数の最大公約数を求めるアルゴリズム.
2. 例 :
(6188,4709) = (4709,1479) 6188 = 4709×1 + 1479
= (1479,272) 4709 = 1479×3 + 272
= (272,119) 1479 = 272×5 + 119
= (119,34) 272 = 119×2 + 34
= (34,17) 119 = 34×3 + 17 34 = 17×2 + 0
3. 演習 : 三つの自然数a, b, c の最大公約数を(a, b, c) で表す.ユークリッドの互除法 を発展させて,与えられた a, b, c から (a, b, c) を求めるアルゴリズムを作り,それ を用いて (273,468,182) を計算せよ.
4. 定理 1.3(一次不定方程式): a, b∈Z− {0} とするとき,
ax+by=k が整数解をもつ ⇔ (a, b)|k 5. 例 : 153x+ 340y= 85 の一般解を求める.
153x+ 340y= 153x+ (153×2 + 34)y= 34y+ 153(x+ 2y) (z =x+ 2yとおく) 34y+ 153z = 34y+ (34×4 + 17)z = 17z+ 34(y+ 4z) (w=y+ 4zとおく)
17z+ 34w= 17z+ (17×2 + 0)w= 17(z+ 2w) となる.あとは
17(z+ 2w) = 85, w=y+ 4z, z =x+ 2y
を x, y について解けばよい.,最後の変数w を自由変数と思って z を消去すれば x= 45−20w, y= 9w−20
が求める一般解である.
6. 補題 1.4 :
a, b, c を自然数,(a, b) = 1 とする.ことのき a|bcならa|cである.
7. 証明 : 定理1.3 より ax+by = 1 は整数解をもつ.両辺を c 倍して acx+bcy =c を得るが,a|bc よりbc=ad となる dが存在するので左辺は a で括れる.したがっ て a|c.
8. 演習 :
(1) 62x+ 103y= 5 を解け.
(2) a1, a2,· · · , an を0でない整数とする.一次不定方程式 a1x1+a2x2+· · ·+anxn=k
が整数解をもつための必要十分条件は(a1, a2,· · · , an)|k であることを証明せ よ.ただし a1, a2,· · · , an) は a1, a2,· · · , an の最大公約数.
1.3 素因数分解
1. 定義 : 素数とは,約数が1 と自分自身しかない 2 以上の自然数のこと.
合成数とは,素数ではない 2以上の自然数のこと.
2. 補題 1.5 :
p を素数とするとき,p|mnならば p|m または p|n である.
3. 証明 : p6 |m とすると,(p, m) = 1 で,補題 1.4 より分かる.
4. 定理 1.6 (素因数分解の一意性) :
2 以上の自然数は素数の積として順序を除いて一意的に表せる.
5. 一意的な表示 : n=pe11pe22· · ·pekk
ただし2≤p1 < p2 <· · ·< pk は素数,e1, e2,· · · , ek ≥1 6. 演習 : n が上のように素因数分解されているとする.
(1) n の異なる約数の個数は(e1+ 1)(e2+ 1)· · ·(ek+ 1) であることを示せ.
(2) n の異なる約数の全体の和は pe11+1−1
p1−1 · pe22+1−1
p2−1 · · · · · pekk+1−1 pk−1 となることを示せ.
7. 定理 1.7:
素数は無限個ある.
1.4 合同式
1. 定義 :
• a と b は m を法として合同 ⇐⇒ m|(a−b) 合同という関係は同値関係.
• m を法として合同な a, bを a≡b mod m で表し,合同式とよぶ.
2. 定理 1.8(合同式の和と積):
a≡a0 mod m, b≡b0 modm のとき (1) a±b≡a0±b0 mod m
(2) ab≡a0b0 mod m
3. 証明 : いずれもルーティン!
4. 演習 :
(1) (公約数による商)自然数 d が a, b, m の公約数であるとき,a ≡b mod m となる必要十分条件は a/d≡b/d mod m/d であることを示せ.
(2) (法の簡略化)a≡b mod mn ならば a≡b mod m かつ a≡b modn となることを示せ.また,(m, n) = 1 なら逆が成り立つことを示せ.
(3) 整数a, b, c が a2+b2 =c2 をみたすとき,abc≡0 mod 60 を示せ.
5. 定理 1.9 :
(1) pを素数とすると,ab≡0 mod p =⇒ a≡0 mod p または b ≡0 mod p (2) (合同式の割り算)(c, m) = 1 のとき,ac≡bc mod m =⇒ a≡b mod m 6. 証明 : (1) は補題1.5 の言い換え.
(2) は bc を左辺に移し,a−b と cの素因数分解を考えればよい.
7. 定理 1.10 :
ax≡b mod m は (a, m)|b のとき解をもつ.
とくに (a, m) = 1 のときは常に解がある.
8. 証明 : ax≡b modm の解を求めるという問題は,ax−b =my をみたす整数x, y を求める,すなわち不定方程式ax−my =b の整数解を求めるという問題と同じな ので,定理 1.3 よりただちに分かる.
9. 例 : 42x≡24 mod 51を解く.
まず(42,24,51) = 3 より,全項で商をとると 14x≡8 mod 17 そこで両辺から 17x≡17 mod 17 を引くと
3x≡9 mod 17 さらに (3,17) = 1 だから,両辺を3で割って
x≡3 mod 17 10. 演習 : 次の合同式を解け.
(1) 7x≡2 mod 11 (2) 63x≡98 mod 161
11. 定理 1.11 (中国の剰余定理) :
m1,· · · , mk ∈N で, ∀i6=j について (mi, mj) = 1 とする.
a1,· · · , ak ∈Zに対し,連立合同式
x≡ai modmi i= 1,2,· · · , k は解をもち,解は m1m2· · ·mk を法として合同.
12. 証明 : M =m1m2· · ·mk, Mj =M/mj とおき,Mjy≡aj mod mj の解 dj を使っ て x =M1d1+M2d2 +· · ·+Mkdk とおけば,これは連立合同式の解であることが 分かる.
一方,他の解との差は M を法として合同であることも,直接合同式の計算で確か められる.
13. 例 : 1以上 500 以下の整数で,3で割ると1余り,7で割ると5余り,11で割ると2 余るようなものをすべて列挙する.
求める整数をx として条件を書き下すと,
x≡1 mod 3, x≡5 mod 7, x≡2 mod 11
となる.中国の剰余定理の証明にしたがいう未知数 y1, y2, y3 に関する合同式は (11×7)y1 ≡1 mod 3, (11×3)y2 ≡5 mod 7, (7×3)y3 ≡2 mod 11 が得られ,それぞれの解は
y1 ≡2 mod 3, y2 ≡1 mod 7, y3 ≡9 mod 11 となる.そこで
x= 77×2 + 33×1 + 21×9 = 376 mod 231 が一般解となる.うち1以上500以下の数は145と376の二つ.
14. 定理 1.12 (フェルマーの小定理) : p を素数とすると, ∀a∈Z に対し
ap ≡a modp がなりたつ.
15. 証明 : a≡0 mod p のときは容易.
a6≡0 mod p のとき,a,2a,· · · ,(p−1)a は pを法として互いに異る.それらをす べてかけ合わせれば,1·2· · ·(p−1)≡1·2· · ·(p−1)ap−1.
16. 素数判定への応用 : フェルマーの小定理の対偶,すなわち,
aq−1 6≡1 modq ⇒ qは素数ではない
は,万能ではないが,ある数が合成数であることの効率の良い判定に使える.
例 : n = 899, a = 2 とすると2898 = 221+27+28+29 ≡ 4·721·219·312 ≡ 845 6≡ 1 mod 899.実際899 = 29·31より,899 は素数ではない.
演習 : 判定できない例を構成せよ.
1.5 乗法群(群論への導入)
1. Z, Q, R, C の加法が持つ性質.
• 結合法則:(a+b) +c=a+ (b+c).
• 0の役割:a+ 0 =a = 0 +a.
• 逆元の存在:a+ (−a) = 0 = (−a) +a.
2. A=Z,Q, R, C に対し A− {0} の乗法が持つ性質.
• 結合法則:(ab)c=a(bc).
• 1の役割:a1 = a= 1a.
• 逆元の存在:aa−1 = 1 =a−1a,ただし Z− {0} の場合を除く.
3. 自然数 n≥1 を指定し,集合 Zに n を法とする合同という関係の同値類の集合を Z/nZで表す.Z/nZ={[0], [1], · · ·,[n−1]}だが,混乱が生じない場合は同値類の 記号を省略してZ/nZ={0, 1, · · · , n−1} と表す場合もある.
4. Z 上の加法は Z/nZ 上の「加法」を誘導する.
説明:
• 加法とよぶ演算の定義とwell-definedness.
• 三つの性質の確認.
5. Z 上の乗法は Z/nZ 上の「乗法」を誘導する.
説明:
• 乗法とよぶ演算の定義とwell-definedness.
• 二つの性質の確認.
• Z/nZ− {0} の元が逆元を持つための条件?
6. (Z/nZ)×={[a]∈Z/nZ; (a, n) = 1} をZ/nZ の乗法群とよぶ.
説明:
• 乗法で閉じていることの確認.
• 逆元の存在を確認.
7. 例:n = 5,12 のとき積の表を作る.
8. p を素数とすると,(Z/pZ)×=Z/pZ− {0}.
9. (Z/pZ)× ={ak; k = 0, 1, · · · , p−1} をみたす a∈(Z/pZ)× が存在する.