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教育実践高度化専攻

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(1)

平成23年度 研究報告書

研究題目

学校周辺の自然観察学習をサポートする教材・教具の開発とその活用

教育実践高度化専攻

小学校教員養成特別コース

P09067G 門野真司

(2)

目次 第I章 研究の目的と研究の方法の概要

 1問題の所在と研究の目的…・一・…・一・ 一・…一一  2研究の方法の概要・…・…・………・・……・・……

・…P

……Q

第I章小学校における理科教育の概要

 1理科の目標におけるr実感を伴った理解」……・・  ・・・・・・…一・・…一…・・…………・3  2 理科における1CTの活用………一………         ・……一・・・・・・・・・・・…4  3理科における自然の観察の意義……・一・・・・…         一・…・…・・…・・・・・・…6

第皿章 Web生物検索図鑑を用いた授業づくり

 1Web生物検索図鑑について……・  ・ 一・一 一 ・一・・ …一一………7

 (1)先行研究

 (2)沢池小学校周辺の樹木分布  (3)Web生物検索図鑑の概要

 2児童の実態・……・…・……・・………・・・・……・・一・・…・…・・・・・・・…………;……・一…一・・…一・17

 (1)総合的な学習の時間における「環境体験学習」との関連  (2)自然体験とPCの利用経験におけるアンケートから

 3指導計画……・一・…・一・……・……・…一…一・…………・…一・一……一……・…・・一・・…一・25

 4授業実践と分析・…一一・一・一……       一一一一……… 一一・27  (1)第1時r木をえらんでかんさつしよう」の授業実践と分析

 (2)第2時,3時「えらんだ木をしらべて名ふだをつくろう」の授業実践と分析  (3)第4時『しらべた木について発表しよう」の授業実践と分析

 5 ワークシートの分析一・・…・・……・…………・…・………一一・……・・・・・・・……・・…一・・・…40

 6授業実践のまとめ・・一………・一………・……・・一………・……・一…・………・・・・・…45

第1V章 研究成果をもとにした授業改善案

 1授業実践の改善点…一…・…一……一・・…一     ・・・・……・・・・…一・…一・・・・・・…48  2構造的課題の改善案一一……一…・・…      …・…・…・一・・…・……・……48  3 活用の方法における課題の改善案・…・………・…・・     …・………・・・……・・…・51

第V章研究の成果と今後の課題と展望

 1研究の成果・……・・…一・・・・・…一・…・…・… ・・  …一

 2今後の課題と展望…一一一一・一・・…

・・・・・…@一一・・・・・・・・… 一一・・・・・・… 54

・・・・…@一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 54

(3)

結びにかえて………一・・・…一・・……

言立言己・… I 一一 一 一一I I一一 I I I I I I I 一一I I I一

引用1参考文献一覧一………・……

附記資料

1.ワークシート

2.指導計画

3.アンケート

4.児童の成果物

5.授業後の感想

・・・…@一・・… 一・・・・・・・・・・… 56

・・一・・・…@一… 一・・… 一・・・・… 57

・一…@   一・一一・・・・・・… 一・・58

(4)

第I章研究の目的と研究の方法

1 問題の所在と研究の目的

 新たな理科の目標として,平成20年3月告示の小学校学習指導要領には「実感を伴っ た理解」という文言が新たに付け加えられた。これによって,より一層具体的な体験を通

しての理解を促すこと,主体的な問題解決を通して理解を促すこと,そして,実際の自然 や生活と関連付けて理解を促すことが重要になった。この「実感を伴った理解」を児童ら に促すためには,実際に生物を観察・飼育したり,野外へ出掛け地域の自然に親しんだり する活動や体験的な活動を多く取り入れる必要がある。

 実際に,学習指導要領(理科)の,内容B r生命・地球」に着目すると,第3学年から 第6学年までその指導内容が記されている。中でも,第3学年では「身の回りの生物の様 子を調べ,生物とその周辺の環境との関係についての考えを持つことができるようにする。」

1)こと,第6学年では「植物を観察し,植物の体内の水などの行方や葉で養分をつくる働 きを調べ,植物の体のつくりと働きについての考えをもつことができるようにする。」2)こ

ととある。これらの内容は新学習指導要領に新たに加えられたものである。

 このように,理科の学習ではより直接的体験活動が重視されるようになった。しかし,

教育内容の増加とともに授業時数が増加したとはいえ,十分な観察の時間や,外に出て自 然に親しむ活動の時間は十分ではない。特に,自然の観察などにおいては,学校の環境,

天候,教員の知識・技能などに大きく左右されるものである。中でも,小学校教員の理科 の指導について,小学校の学級担任として理科を教える教員の約3分の2が観察・実験に ついての知識・技能についてrやや低い」かr低い」と感じており3),子どもの理科離れ の要因となっていると推察されている。

 筆者自身,理科に関する知識・技能が未熟なことから,実地研究における理科指導の様々 な場面で戸惑いがあった。特に自然の観察の単元においては,観察の視点を明確に設定せ ずに観察させたり,教え込みの授業になってしまったりして,望ましい観察学習とは言え

なかった。

 さらに,学習指導要領総則によると「児童がコンピュータや情報通信ネットワークなど の情報手段に慣れ親しみ,適切に活用する学習活動を充実するとともに,視聴覚教材や学 習機器などの教材・教具の適切な活用を図ること」4〕とあるように,ICTを活用した新た な学習方法が求められている。

 これらのことから,本研究では学校周辺の自然観察による学習と,その支援システムと してのWeb生物検索図鑑を用いた授業を提案する。そのためのワークシートづくりと学校 周辺の自然の観察を行う。同時にその学校周辺の植物や動物を検索できる図鑑を作成し,

Web上に公開する。さらに,それらを用いた授業を行い,児童の自然に対する興味・関心 や,知識・理解,科学的な思考の深まりを調査すること,そして,Web生物検索図鑑の右

1

(5)

効性を明らかにすることを目的とする。

2研究の方法の概要

(1)沢池小学校Web生物検索図鑑の作成

 授業で用いるWeb生物検索図鑑を作成するために,沢池小学校に生息する生物の画像記 録と種の同定を行い,データ化する。主に樹木が図鑑データの対象である。

 具体的な方法としては,まず,インターンシップや休日を利用して,沢池小学校周辺に 分布する樹木などをデジタルカメラで撮影し,実物と写真から図鑑で調べ同定するという ものである。この同定作業に,インターンシップが始まった9月から研究授業直前の12 月までの約3ヵ月間を要した。沢池小学校には,同定できた樹木だけでも約70種が生息

しており,また30以上の科があり,多様な樹木があることが分かった。

 次に,11月から次第に同定済みの樹木からデータ化していった。画像データと図鑑等か ら整理した説明文をrホームヘージビルダー」を用いて,データの検索をしやすいように ソフトの特性を生かして階層化をすることによって,操作性の向上を図った。そして,実 践の直前である12月にWeb上にアップロードした。なお,研究授業の時点では未完成で あり,授業で扱う予定だった「中庭」に絞って部分的に完成させた。

(2)研究授業の実践・考察

 Web生物検索図鑑の有効性を明らかにするために,Web生物検索図鑑を用いた授業を実 践する。そのために,単元指導計画を作成し,理科または総合的な学習の時間としての位 置づけで,計4時間の授業を行う。その際,まず,事前に質問紙によるアンケートを実施

し,理科,特に自然に関する意識調査で興味・関心の度合いを測る。同時に図鑑やI)Cの 利用に関しての経験や技能についての実態も探る。次に,授業中の児童の言葉やワークシ ートヘの記述に加え,児童が作成した成果物や授業後の感想についても分析を行い考察す る。これらのことから,Web生物検索図鑑を用いた授業が有効であるかどうかについて検

証を行う。

(6)

第1I章小学校における理科教育の概要

1理科の目標におけるr実感を伴った理解」

 平成20年3月にさ告示された現行の学習指導要領理科の目標は以下のとおりである。

「自然に親しみ,見通しをもって観察,実験などを行い,問題解決の能力と自然を愛する 心情を育てるとともに,自然の事物・現象についての実感を伴った理解を図り,科学的な 見方や考え方を養う。」5)この目標の中で,今回の改定の中で新たに付け加えられた文言が,

「実感を伴った理解」である。この嘆感を伴った理解」について目置(2008)は,「学んだ ことを長期記憶に入れておくためには,この『実感を伴った理解』ということが必要であ る」6〕と述べており,この「実感する」について,「自然の事物,現象に自らの五感を活用 して働きかけることによって初めて得られる経験,結果としての知識ではなく,一つ一つ の観察や実験の手順,既有の知識などが関係づけられ一つのまとまりとなり,児童にとっ て新たな意味として構成されること。」7)としており,実感を伴った理解の重要性を示して

いる。

 また,「実感を伴った理解」について,『小学校学習指導要領解説理科編』では以下の三 つの側面が示されている。

 第一は,具体的な体験を通して形づくられる理解である。児童が自らの諸感覚を働かせ て,観察・実験などの具体的な体験を通して自然の事物・現象について調べることにより,

実感を伴った理解を図ることができる。これは,自然に対する興味・関心を高めたり,適 切な考察を行ったりする基盤となるものであり8),日置(2008)によると端的に表現すれば,

「体得の理解」といえる9)。

 第二は,主体的な問題解決を通して得られる理解である。自らの問題意識に支えられ,

見通しをもって観察,実験を中心とした問題解決に取り組むことにより,一人一人の児童 が白ら問題解決を行ったという実感を伴った理解を図ることができる。これは,理解がよ り確かなものになり,知識や技能の確実な習得に資するものであり1O),「習得の理解」とい

える11)。

 第三は,実際の自然や生活との関係への認識を含む理解である。理科の学習で学んだ自 然の事物・現象の性質や働き,規貝11性などが実際の自然の中で成り立っていることに気付 いたり,生活の中で役立てられていることを確かめたりすることにより,実感を伴った理 解を図ることができる。これは,理科を学ぶことの意義や有用性を実感し,理科を学ぶ意 欲や科学への関心を高めることにつながるものと考えられ12),「納得の理解」ともいえる13)。

 以上の三つの「体得の理解」「習得の理解」「納得の理解」という側面から,また,その 三側面の相互作用によって,「実感を伴った理解」という概念は成り立っていると考える。

(7)

2理科における1CTの活用

学習指導要領の改訂により,情報教育や,教科指導におけるICT活用(ICT:コンピュ ータや情報通信ネットワークなどの情報コミュニケーション技術のこと)など,教育の情 報化に関わる内容について一層の充実が図られた。小学校,中学校,高等学校,および特 別支援学校の学習指導要領の総則において,教師がコンピュータや情報通信ネットワーク などの「情報手段に加え視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること」

14)と記述されている。また,学習指導要領解説総則編では,「これらの教材・教具を有効,

適切に活用するためには,教師はそれぞれの情報手段の操作に習熟するだけでなく,それ ぞれの情報手段の特性を理解し,指導の効果を高める方法について絶えず研究することが 求められる」15)と記述されている。

 また,文部科学省が作成した「教育の情報化に関する手引き」によると,教科指導にお けるICTの活用が特に重要とされており16〕,その効果が調査研究から明らかになっている。

この調査によると,児童生徒の「関心・意欲・態度」をはじめとして,他の観点(知識・理 解,思考・判断,表現・処理・技能)においても効果があった。また,児童・生徒に対す

る調査によれば,学習に対する積極性や意欲,学習の達成感などすべての項目について,

ICTを活用した授業の場合の方が,評価が高かった。 さらに,児童生徒に対する客観テ ストの結果によれば,各教科の得点やr知識・理解」や「技能・表現」の観点で高い効果 が得られた。(図I・1参照)

図I・1ICT活用の効果17)

 また,小学校学習指導要領解説理科編では,「観察,実験,栽培,飼育及びものづくり の指導については,指導内容に応じてコンピュータ,視聴覚機器などを適切に活用できる ようにすること。また,事故の防止に十分留意すること」18〕と記述されており,理科にお けるICTの活用について勧めている。

 具体的な活用方法について,文部科学省委託事業のコンピュータ教育開発センターの 4

(8)

「ICTを活用した授業の効果等の調査」によると,「写真や図表を大きく提示して指示を 明確にする」「見せながら話して,わかりやすく説明やまとめをする」「身近に感じる教材 を使って意欲や関心を高める」r学習素材やソフトウェアで知識や技能を定着させる」rイ ンターネットを使って最新の情報を収集したり,その便利な機能を利用する」「授業の準備 にICTを活用する」「情報の整理や共有で校務の効率化を図る」などが事例として挙げら れている。19)その中でも特に理科における事例は,以下のようなものである。普段目にす

ることができない事物を提示することによって,児童の興味・関心を高めること。実際に 野外で観察したものを撮影し,教室で振り返りをすること。シュミレーションソフトを使 って星の運動や満ち欠けについて学習すること,などである。

 このように,学校教育ないし理科におけるICTの活用は喫緊の課題であり,そのための 方策は様々な場面でなされていることがわかる。

 連携協力校である沢池小学校には,PC室のほかに,学級用のパソコンが各学級に1台 ずつある。加えて各教室にLANケーブルが配線されており,インターネット環境も整え られている。また各階に,移動させることのできる大型ディスプレイと実物投影機が配備 されていて,2,3学級で共有ではあるが自由に使うことができる。実際に,それらは教員 が授業で適宜活用している。例えば,社会の教科書や地図帳の絵や図を大きく提示したり,

理科の天体の学習でNHKの映像コンテンツを映し出したり,総合的な学習の時間に映像 教材を用いたりというものである。筆者自身も,実地研究において幾度か活用を試みた。

第4学年理科「冬の自然」では,実際にとってきた樹木の冬芽や,写真で撮影した冬眠中 の昆虫の様子などをディスプレイで写すことによって,情報の共有化や興味づけを図った。

個人的な印象としても,やはり児童の興味・関心をはじめとして,学習の質を高めるのに 効果があった。それは,授業中のつぶやきや授業後の感想からも見て取れた。ただし,単 にICT機器やコンテンツを用いればそれでよいというわけではない。ICTを授業で活用す る目的,場面,方法などを明確に意識し,的確に活用することが必要である。そのために は,教員が教材を作成したり,学習ソフトを有効に用いるICT活用のスキルが求められて いる。さらに今日ではそれに加え,情報を受信するだけではなく,白ら編集・発信したり,

メディアを的確に活用したり,情報に対する批判的な視点をもつなどの『メディア・リテ ラシー」も重要になってきている20)。

(9)

3理科における自然の観察の意義

 小学校学習指導要領解説理科編には,「生物,天気,川,土地などの指導については,野 外に出掛け地域の自然に親しむ活動や体験的な活動を多く取り入れるとともに,自然環境 を大切にし,その保全に寄与しようとする態度を育成するようにすること。」21)とあるよう に,理科の学習においては,自然に直接かかわることが重要であるとされている。実際に,

小学校理科の「B生命・地球」の中の「生命」に関する単元には,第3学年嘔虫と植物」

「身近な自然の観察」,第4学年「季節と生物」,第5学年「植物の発芽,成長,結実」「動 物の誕生」,第6学年「植物の養分と水の通り道」「生物と環境」がある。このように,小 学校理科の全学年で自然の観察をする単元が構成されており,自然に直接かかわることや,

自然を観察することが重要であるといえる。この中でも唯一,第3学年「身近な自然の観 察」は,今回の学習指導要領改言下で新たに追加された内容であり,より低学年での自然と 直接かかわる体験が重要視されていることがわかる。これは,生活科の学習との関連を考 慮しつつ,理科の学習の基盤となる自然体験を充実するために,自然の観察を積極的に取

り入れるということである。

 また理科教育の歴史から見ても,戦時下において「自然の観察」という教科があったよ うに,自然の観察の重要性がわかる。特に昭和43年度版学習指導要領では,「教育の現代 化」が図られ探究的な理科学習が実現した。その中で,自然の観察も児童の主体性を重視

し,自らの問題意識から観察を行うことがなされてきた。このように,歴史的に見ても自 然の観察が理科学習の中で重要な位置にあることがわかる。

 これらを踏まえて,筆者が考える自然の観察について論じる。

 今から2年前の2010年は,COP1O(締約国会議)が日本で開かれた年である。そこでは,

生物多様性について日本をはじめ世界的な枠組みが協議された。その背景には,地球規模 の環境問題や資源の枯渇などの大きな課題がある。ここ数百年の間に進歩した科学技術や,

それに付随した我々人間の思想の変化というものが,今の状況を省察せざるを得なくさせ たのだろう。それはCOP王Oだけではなく,他の様々な取り組みからもうかがえる。しかし このような大きな問題意識を,国,世界だけの問題として捉えるのではなく,我々一人ひ とりが自らの問題として捉えるべきであると考える。そのためには,特に,小学校・中学 校の教育課程の中で,自然を愛し自然を大切にする心・態度を育成することは極めて重要 なことであり,将来大人になってから地球の環境について考えていく資質となる。このよ うなことから,自然に主体的に働きかけ,五感を使って自然に親しむことができること,

また,自然科学の観察を通じて,問題を見いだすことができることが,理科においての自 然の観察の意義である。

(10)

第皿章Web生物検索図鑑を用いた授業づくり

1Web生物検索図鑑について

(1)先行研究について

ア「電子植物図鑑を用いた理科授業一葉から植物を知る一」(松井ら,2002)

 本研究では,子どもたちが身近な生物と触れ合う機会が減少していて,自然に対する興 味を持ちにくいという課題から,奈良教育大学付属小学校における校内の電子植物図鑑を 作成し,それを用いた授業が行われた。授業は,第6学年のr植物の体のつくり」の中で の第3次を「植物の葉は多様」と位置づけ,拾ってきた木の葉を電子植物図鑑にて検索し,

同定作業を行うものであった。研究概要として,「事前と事後にアンケートを実施し,子ど もたちが認識する葉や植物に対する意識に変化があり,この授業が子どもたちに身近な自 然に対する興味関心を喚起させ,植物に対する観察眼を養うのに効果的であると考えられ

た」22)と述べている。

イ「植物観察におけるコンピュータの利用一検索ソフトやインターネットの利用を通して 一」(根本,2001)

 この研究では,野外観察,特に植物観察の重要性と利便性を示しつつも,植物はその種 数の多さから,実際は子どもたちだけでなく教師も野外観察には消極的になっており,そ のような状態で,目の前の植物を図鑑で調べるという行為は困難であるという課題から,

コンピュータを活用した学習について述べている23〕。

ウr校庭の理科図鑑一自然学習用検索システムー」(坂口,2005)

 この研究では,小学校の校庭を環境・理科学習用にデータベース化し,学校全体を博物 館に見立てて,児童が毎日見たり触ったりしながら,気軽に環境学習や理科学習ができる 検索用のツールとして作成されたシステムについて研究されている。さらに,その発展と して学校の自然を活用した湿地,乾燥ビオトープづくりを行っており,そのためのインフ ラ整備や地域の人たちの協力についても述べている24)。

 本研究では,新学習指導要領(理科)の目標にある,「実感を伴った理解」という文言 を中心に据えて研究を行う。したがって,今回先行研究として挙げた松井ら(2002年)の r電子植物図鑑を用いた理科授業」,根本(2001年)のr植物観察におけるコンピュータ の利用一検索ソフトやインターネットの利用を通して一」,坂口(2005年)「校庭の理科図 鑑一自然学習用検索システムー」とは,背景にある学習指導要領の教科としての理科の胃 標が違うことから,根本的に異なる研究となる。しかし,研究の目的や方法というものは 多くの点で一致し,本研究を行うに当たって非常に参考にすべき先行研究であり,そこで 浮き彫りになった課題や成果を本研究に生かすことができると考える。

 まず先行研究ア,イ,ウと本研究についての共通点を述べる。第1の共通点は「体験的 7

(11)

活動」を重視していることである。3つの先行研究は,いずれもコンピュータを用いて同 定作業やそれを生かした学習を行うが,その前提として野外での活動を視野に入れている。

それは,事前に標本を採取してきたり,調べたものを野外で観察したりなど,多様な方法 を用いている。単に教室の中だけの学習ではなく,実地に野外観察を体験することによっ て,より植物や動物に興味を持ち,理解を深めていると考える。第2の共通点は,多様な 検索方法を導入している点である。普通の図鑑のように,科名や季節の分類だけによる検 索方法での同定作業は大人でも困難であり,小学生ではより一層困難な作業である。しか し,葉の形・色,花弁の数や形など,多くの情報を入力してそれをもとに検索できれば,

簡易な検索が可能となり,基礎知識がなくてもスムーズな同定作業を行うことができる。

 次に先行研究ア,イ,ウと本研究の相違点を述べる。まず,先行研究アに関してだが,

この先行研究では第6学年の「植物の体のつくり」8時間分のうち,本時を含む3時間の 授業の中でこの電子植物図鑑を活用している。本研究においては,そのような学年や単元

を限定して活用するような研究ではなく,データベ』スとして作成・活用し,それぞれの 学年・単元にあわせて教員が的確に運用していくことを考えている。そのために,より正 確で精度の高いものを造らなければならないし,教員の情報活用能力や自然に関する深い 理解カが求められる。次に先行研究イでは,植物の検索図鑑を市販のソフトやフリーソフ トを使用しているが,本研究では学校独自の図鑑をつくることが重要であると考える。そ の理由は,より子どもたちの身近にある植物や動物を図鑑に載せることによって「いま,

ここ」という自然と子どもたちとのつながりのダイナミクスを子どもたちに実感してもら いたいからである。次に先行研究ウは,学校全体を博物館に見立てて学習園やビオトープ を整備し理科学習や環境学習に活かすために作ったものであるが,実践的に授業の中で具 体的にどう生かすのかという考察はなされていなかった。これらのことから本研究では,

Web生物検索図鑑をっくりそれを授業でどう生かすのかということに焦点を絞り,研究を

進める。

 以下に,先行研究の考察から得られた本研究の意義をまとめる。

研究の新奇性(unique)と独自性(origina1ity)

 ● 新学習指導要領の目標に沿った研究であること  ● 実感を伴う理解を重視した研究であること  ● 対象学年と対象単元を限定しないこと 本研究による教育現場への効果・応用

 ● 学校全体の教材化への可能性  ● 活用の多様性

 ● データベース化による教員の負担軽減  ● 児童・教員双方のICT活用能力の育成

(2)沢池小学校の樹木データ

(12)

 連携協力校である明石市立沢池小学校の自然環境ついて述べる。沢池小学校は,西明石 駅から徒歩約20分の住宅地の中にあり,明石市と神戸市の境にある野々池という貯水池の 南側にある。周囲には幼稚園,中学校,高等学校が隣接し,自然林や里山はないが野々池 の周りに多くの樹木が植栽されている。また,学校の北側には田や州もある。

 Web生物検索図鑑(以下,本教材と示す)で,データとして扱う沢池小学校にある樹木の 種は64で,その科は3!であった。場所別にみると中庭にある樹木の種が45,その科が24(表 皿一1),駐車場の種が16,その科が1!(表皿一2),玄関前の種が9,その科が9(表皿一3),グ ラウンドの種が6,その科が6(表皿一4)で,中庭がもっとも樹木の種が多いことがわかる(延 べ数)。その中庭に着目すると,「バラ科」「ブナ科」の種が5で最も多く,次いで「ツバ キ科」の種が4, 「ヒノキ科」 「マツ科」「モチノキ科」の種が3,上位の6つの科で全 45の種のうち過半数の23の種を占めている。(図皿一2)

 このように,他の場所と比べ多様な種と科が分布していることに加え,広範囲での観察 における指導の困難さや,教材制作に多くの時間を要することから,授業実践の対象場所 は「中庭」に限定した。なお,中庭は三方を校舎に囲まれる形で,およそ600㎡の敷地に 樹木などの植栽,学習園や花壇があり,中央にある池には鯉や亀が生息している。また,

ハトやカラスをはじめ,ムクドリやメジロなどの野鳥も訪れる。

表皿一1中庭の樹木

種名 科名 種名 科名

1 アカマツ マツ科 24 コノテガシワ ヒノキ科

2 アカメガシワ トウダイグサ科 25 サザンカ ツバキ科

3 アキグミ グミ科 26 サルスベリ ミソハギ科

4 アスナロ ヒノキ科 27 ソメイ…1シノ バラ科

5 アベマキ プナ科 28 ハクチョウゲ アカネ科

6 アラカシ プナ科 29 ハコネウツギ スイカズラ科 7 アンズ バラ科 30 ハナゾノツクバネウツギ スイカズラ科

8 イヌツゲ モチノキ科 31 ハナミズキ ミズキ科

9 ウバメガシ プナ科 32 ヒイラギナンテン メギ科

10 ウメ バラ科 33 ヒマラヤスギ マツ科

11 ウンシュウミカン ミカン科 34 ヒメリンゴ バラ科

12 オオモミジ カェデ科 35 ヒラドツツジ ツツジ科

13 カンツバキ(ヒオトメ) ツバキ科 36 ビワ バラ科

14 キンモクセイ モクセイ科 37 マサキ こシキギ科

15 クスノキ クスノキ科 38 マメツゲ モチノキ科

16 クチナシ アカネ科 39 ムクゲ アオイ科

17 クヌギ ニブナ科 40 モクレン モクレン科

18 クロガネモチ モチノキ科 41 モツコク ツバキ科

19 ケヤキ ニレ科 42 ヤツデ ウコギ科

20 クロマツ マツ科 43 ヤブツバキ ツバキ科

21 ゲツケイジュ クスノキ科 44 ヤマガキ カキノキ科

22 コウヤマキ ヒノキ科 45 ユズリハ トウダイグサ科

23 コナラ プナ科

(13)

種の数が2つ以上ある相中庭)

5

4 3 2

=1一

ぺ外ゾすぐ〆〆り承〆オ㌦承

     乍  ぺ

図皿一1 表皿一2 駐車場の樹木

種名 科名 種名 科名

1 アキニレ ニレ科 9 ソメイヨシノ バラ科

2 アンズ バラ科 10 タイサンボク モクレン科 3 エノキ ニレ科 11 トウネズミモチ モクセイ科 4 カイヅカイブキ ヒノキ科 12 ヒメリンゴ バラ科 5 キョウチクトウ キョウチクトウ科 13 ホルトノキ ホルトノキ科 6 キンモクセイ モクセイ科 14 ヤブツバキ ツバキ科

7 ザクロ ザクロ科 15 ヤマモモ クルミ科 8 サンゴジュ スイカズラ科 16 ユキヤナギ バラ科

表皿一3 玄関前の樹木

種名 科名 種名 科名

1 アツバキミガヨラン ユリ科 6 オオモミジ カェデ科

2 カラタチ ミカン科 7 コナラ ブナ科

3 シャリンバイ バラ科 8 マサキ ニシキギ科

4 シュロ ヤシ科 9 キョウチクトウ キョウチクトウ科

5 ヒイラギ モクセイ科

■      ■■■      ,■    ■■    ■■

表皿一4 グラウンドの樹

種名 科名

1 オウゴンクジャクヒバ ヒノキ科 2 カナメモチ バラ科 3 クスノキ クスノキ科

4 ケヤキ ニレ科

5 セイヨウハコヤナギ ヤナギ科 6 モクレン モクレン科

10

(14)

(3)Web生物検索図鑑の概要

 先行研究や,フィールドである沢池小学校の実情から,授業実践で用いる教材である「Web 生物検索図鑑」について述べる。

 本教材を作成する際,まず実践する単元指導計画,指導案を作成し,その具体的な活動 の内容に沿って,必要な情報や検索方法,樹木の策定などを行った。単元での具体的な学 習の流れは以下のとおりである。①予め用意した番号だけが書いてある樹木を選び,その 様子を観察する,②選んだ樹木について,本教材を活用して名前や特徴を調べる,③調べ た樹木の名前や特徴が書かれてあるネームプレートを作成する,④本教材と作成したネー ムプレートを用いて,児童が調べた木について発表する。これらを踏まえて作成した本教 材の特徴を以下に示す。

ア 実際に学校にある樹木の写真を用いる

イ第3学年の児童にも読めるように,漢字には適宜振り仮名をつける

ウ 図鑑の文章を正確に示しながら,児童がワークシートに書きやすいように,重要な箇   所はわかりやすく箇条書きにする

工 画像(写真)には,基本的に全体(樹形),葉,幹(枝)は最低限として,適宜花や実,冬   芽も取り上げる

オ 文字が入力できない児童を考慮して,マウスのクリックだけで検索できるようにする カ 樹木の検索がしやすいように,中庭の一部分の画像上に番号を貼りつける

キ 名前や科から検索するだけではなく,地図を表示し,直感的に検索できるようにする ク 国語辞書での調べ学習を想定して,図鑑に記載してある言葉を無理のない範囲で使用   することによって,科学的な概念の形成を図る

 本教材に当たっては,ホームページ制作ソフトであるJust.systems杜の「ホームヘージ ビルダー14」を用いた。このソフトウェアの特徴は,専門的な知識がなくても既存のテン プレートなどをもとに比較的簡単に作成できることである。また,作成した本教材をウェ ブサイト上にアップロードするためのプ1コバイダは,Yahoo japan!の「Yahoo!ジオシテ ィーズ」を用いた。このサービスは,ヤプーアカウントを持つ利用者なら,50M以下は無 料でサーバーを使用できるというものである。広告の表示はあるが,大きさ質ともに特に 気ならないので採用した。以下にサイトの階層構造(ディレクトリ)と,実際の画面を示す

(広告表示は除いてある)。なお本教材のURLは,血

である。実際に閲覧されたい方はウェブサイト上でご覧いただきたい。

11

(15)

σ

目季

i 山止=111

冨嚢回

国1・ 蝋.

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  狂     鐵       獲  記  菱  獺  覇  証  購  蒙

(16)

 図皿一3は,本教材のトップページ(index.htm1)である。ここでは,「地図からさがす」

r植物をさがす」r動物をさがす」の3つのハイパーリンクを用意した。トップページは,

児童が取っ付きやすくするために,シンプルな構成とした。また,文字だけではなく視覚 的にもわかるように,植物は植物の,動物は動物の画像を用いた。ただし「動物をさがす」

については,今回の実践では直接的な関係がないということと時間的な制約があったため,

未完成ではあるが今後追加していきたい。

このホームページは,沢池小学板周辺の植物や動物の観察のための検索図鑑 です。ここで植物を探して,実際に≡同ぺ1こ行ったり,タドでわからない植物があった   らここで…1司ぺたりしてみましょう。色々な発見が面るカ、もしれません。

地図からさがす

植物をさがす 働物をさがす

図皿一3 「トップページ(index.html)」

13

(17)

 r地図からさがす(map.htm1)」(図皿一4)では,実際の沢池小学校の上空写真をgoog1e earth◎をコピーし利用している。こうすることでより実感として,学校全体の自然やその 関係性について僻敵的に考えることができるし,操作することが難しい児童にとってもわ かりやすい。

○玄関繭

(げんかん…ま1 え〕・

○連動場⑪・

(うんどうじょ・

う①)

○蝉馳∴

図皿一4 「地図からさがす(map.htm1)」

朴一ム Φソ〃ヨシノ

②イヌツゲ

迫螂

図皿一5 『中庭1(nakaniwa1.htnl)」

   14

(18)

 図皿一5は,「中庭」をクリックしたら表示される画面である。実際に児童が見る風景(画 像)の中に,観察させる樹木それぞれに対応した番号を画面上に表すことによって,直感的 に検索できるようにした。また,本教材中にはこのようなある一定のエリアを写した画像 が8枚あり,それぞれに複数の番号を表示している。画面下の矢印のリンクをクリックさ せ,その8枚を表示させることによって,実際に中庭を歩くように樹木を検索できる。な お番号は,実践授業で行う活動中での番号と連動している。

 次へ一ジの図皿一6は,実際の樹木の説明文が書いてあるいわぱ本教材のデータベースの ぺHジである。ここでは「オオモミジ」を例に挙げている。本項のはじめにも述べている

ことと重複するが,実際の画面を用いていくつか特徴を提示する。

 1点目は,名前の横に科名を示したことである。これは,科学の基本である「分類」と いうことを意識し,児童にも直接的ではないにしろその様な意識をもって欲しいからであ る。中庭には,種が2つ以上ある樹木の科が10あり(図皿一1参照),意識的に配置した。

実際に,実践の中でこの分類の視点に関する児童の発言が少しではあるが現れていた。詳 細については本章第4節で述べる。

 2点目は,樹木の「全体(樹形)」,「葉」 「幹(枝)」の画像(写真)を基本として統一し て載せたことである。このように,各へ一ジ共通の構成にすることで児童が見やすく,ま た利用しやすいという利点がある。またそれ以上に,理科学習の視点に立では,全体を見 る巨視的視点と,細かい部分を見る微視的視点が重要である。加えて,第3学年以降で学 習する植物の観察・実験の単元において葉や幹などは具体的な学習対象となるため,この 時期からその様に多様な視点を育むことは有意義である。

 3点目は,図鑑等に記載してある説明文と,それをもとに筆者がわかりやすくまとめ箇 条書きにした説明文の両方を載せている点である。言うまでもなく,図鑑の説明文をその まま載せても小学校段階では理解しにくい。従って,理科という教科が始まる第3学年の 児童に理解できるような説明文を用意した。しかし,それだけでは本教材を用いた学習が,

筆者の意図した学習内容の中だけ児童の学習になってしまう恐れがある。つまり,予め用 意した情報を伝達するだけでは,理科の目標でもある問題解決の能力は実現されない。そ うではなくて,敢えて難しい言葉や,難しい表現をそのまま引用することによって,そこ から調べたり,実際に確かめたりして問題解決の過程を形成し, 晩の創造」25)を行うこ とも目的の一つとしている。しかしながら,第3学年ではやはり時間的にも内容的にも難 しいという考えの下,授業の中では箇条書きの部分を見て調べるように指示した。今後は 高学年でも利用するということを視野に入れているため,そこでの活用を期待したい。

 このように,主に3つの特徴から各へ一ジは構成されている。そして,本教材全体とし ては,前述のように3つの階層から成り立っている。

15

(19)

轡鰯鋤

和ム.一. 科名を明記

鍾翻繭沸貫1一

鋤鱗蛾す。1一

筆鱗∵..三∵

イ類えギ戦ヅ銃欝婁嚢で,1茎.1簿鰐縛鰯など1こ,、簑く審薫.糺潟楽一i落・〜泌 棚こなづ,灘鍍1急綴鵜魚、,イ準ハ貸ミ1ジ、鮎機撚鰻穫=?〜一1溜 と大

葦警く,勇婁壽葦…董淫 義擦孝㌘撃婁慧姜こ㌻v饗嚢婁暫為、,嚢;…奏妻一…簑考嚢湾頭身笈美=二姜;茎一妻…誓妻萎

湾撚鍛雛綴I野イ標ハ骨ミジ、翔鶴が紋く宇=笈鷲1護驚1繊こ箏雫峻がる

・鰯綴講蝋妻燃燃1盈も1き一絶一一㌘,真二 ト…蓼 じ鱗夫巻、

わかりやすく まとめた文章

・プ購ぺ・=減顯鰍r1燃さ燃轟惑繋鍬叙

ミニ 一ツ沸… 静ヰミて一も、で1一,1;茎1濠激繋・く亨いへ縦

に鰯く咽

・簸1‡鐙凄?・・へ・標影ぞ,灘熔勇一夕た

灘載灘然様岱ん滝ポず識ハモ高

1;婁こ二叢かい、,

図皿一6 『オオモミジ(o㎝㎝iji.html)」

16

(20)

2児童の実態

 ここでは,授業実践を行った児童の実態と,筆者と児童とのかかわりについて述べる。

はじめに,基本的な児童の実態について記したあと,下記項目の(1)(2)について述べる。

 対象児童は,明石市立沢池小学校3年3組の児童24人(男14,女!0)であり,筆者は2011 年9月からインタ』ンシップの中で週に!目・2日この学級の児童と関わってきた。その

中で,授業実践に至るまでに数時間の理科の授業を行った。また各教科の他,特別活動や 総合的な学習の時間において,AT(Assistant t.acher)として授業その他を観察・補助し,

指導や児童理解の参考にしてきた。

 また,児童らはこれまでの理科学習の中で,「昆虫と植物」「身近な自然の観察」という 単元を学習してきている。筆者は,その内の「昆虫と植物」の単元の一部の授業を行った。

そこで児童らは,昆虫には頭,胸,腹があること,育ち方には一定の順序があることなど の基本的な分類の視点を学んでいる。また,以下に述べるように「環境体験学習」と関連 させて実際に出とりに行ったり,とってきた虫を育てるなどの活動を行っており,授業に おいて実際に自然に関わる機会は比較的多いと考えられる。

(1)総合的な学習の時間におけるr環境体験学習」との関連

 兵庫県では,平成19年度から県内の公立小学校3年生を対象に「環境体験事業」という ものを行っている。学習内容としては,「地域の自然に出かけていき,地域の人々等の協力 を得ながら,自然観察や栽培・飼育など五感を使って自然にふれあう体験型環境学習を継 続的に実施する」26)とある。プログラムの言十画,目標の策定については,各学校で定める こととなっており,地域の実情に応じた創意工夫のある取り組みが求められている。その ために,3回以上の体験活動に加えて,各々の事前・事後学習を実施するように決められ

ている。

 また,環境体験事業における具体的な留意点として以下の4点を挙げている27)。

         表皿一5兵庫県r環境体験事業」における留意点

 計画にあたっては,学校や地域,児童の実態に応じたテーマを設定し,子どもたちの主体的な活動

1

 が展開されるようにすること。

 自然とのふれあいから,命の大切さや命のつながりを実感させるとともに,美しさに感動する豊か 2

 な心等をはぐくむことを目的とした,五感を使った体験活動を中心に据えること。

 季節により自然や生活に変化のあることに気づき,自然の循環や自然と人とのつながりを知り,白 3

 然と人に優しい感性を育てるプログラムとすること。

 日常生活や集団の中で,周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもって積極的に関わり,身近な環境 4 に配慮した生活習慣を身につけるきっかけとすること。

以上のように,兵庫県全体の取り組みとして取り組まれており,沢池小学校も例外では

17

(21)

ない。

 沢池小学校では,これら環境体験事業を「環境体験学習」と銘打って,第3学年のカリ キュラムに総合的な学習としてこれらを位置づけ,年間を通じて各教科や特別活動と関連 させて実践されている。本年度の具体的な活動としては,三木山森林公園への夏と秋の2 回の自然観察や,明石公園や野々池への出とりが実施された。その肉筆者は,インターン シップで野々池での出とりと,児童にとっては2回目となる三木山森林公園での自然観察 という2つの活動に指導補助員として参加し,指導補助・安全管理・引率などを行った。

 その中でも,後者の三木山森林公園での環境体験学習は,本研究と非常に関連深いもの であり,また先述した第3学年理科で学習する「身近な自然の観察」とも密接にかかわる 内容であったことから,本研究を進める上で重要な経験になった。この経験から,理科と 総合的な学習の両方の視点を踏まえて,学年や単元の枠を超えて活用できるような教材の 方向性を考慮し,具体的な教材の内容と授業の方法も明確化していくことができた。

 次に,三木山森林公園での自然観察について具体的に述べる。実施目時は,1回目が平 成23年6月10目(金)で,2回目が平成23年11月25目(金)である。ねらいは「初夏と晩 秋の自然や生き物を比べ,季節による自然の変化や命の素晴らしさを実感させ,豊かな感 性をはぐくむ」としている28)。ねらいを達成するために,主に次の2つの活動を行ってい

る。

 1つ目の活動は,1回目で自分が観察したい樹木を選んで観察し,2回目でも同じ樹木を 観察する活動である。その活動での観察の観点は,rスケッチ」,r葉の数(多い・少ない・

ない)」,「葉の色(OO色)」,「葉の形(まるい・細長い・ギザギザ)」,「木の皮(ザラザラ・

ツルツル)」,「太さ(太い・細い)」,「あるもの(花・つぼみ・実・葉だけ)」,「気づいたこと」

である。一見,第3学年にしては観点が多いようにも思えるが,()内の選択肢から選ばせ ることで,容易かつ詳細に観察することができる。また,1回目2回目と共通の観点を提 示することで,より季節間の変化や樹木の様子の移り変わりなどが児童にわかりやすくな

るという禾■」点がある。

 2つ目の活動は,自然観察指導員のもとグループごとに三木山森林公園の自然観察を行 うという活動である。そこでは,自然観察指導員が各グループに一人ずつついて,樹木や 草,花などの説明や,それに関連する予備的知識などを幅広く提供してくれる。また,児 童の質問などにもその場で的確に答えたり,実物をもとに具体的な説明や児童の生活に結 び付けた説明をしてくれるため,児童にとってもわかりやすく観察ができるという点で,

非常に有意義な活動であったと言える。また,理科学習の他に,国語科の学習における「き つつきの商売」という教材と三木山にあるキツツキの巣穴などを取り上げるなど,事前の 連絡で伝えてある他の教科との関連を意識した指導もなされていた。

18

(22)

        写真 皿一1指導員のもと,自然硯寮を行う児童ら1

 上の写真では,アカマツの切り株を見せ、年輪の数からこの木の年齢を算出する方法を示し ている。年輪の一つひとつにも意味があること,幾年月を重ねて木が生きてきたことを児童ら は学ぴ1興味深く耳を傾け熱心に年輪の数を数えていた。アカマツは沢池小学校の中庭にも植 生しているため,後の授業実践でもここでの観察のことが児童の発言から出てきた。

        写真 皿一2指導員のもと,自然観察を行う児童ら2

 上の写真は,イロハモミジの観察をしている場面である。秋の紅葉の代表であるイロハモミ ジは、児童にとっても身近で学習に適している。実際に.沢池小学校の中庭にも同じカエデ科 のオオモミジがあり,その種子が廊下に飛んできたこともあった。授業実践では導入でそのこ

とを取り上げ、中庭の樹木への興味づけの契機とした。

19

(23)

(2)自然体験とPCの利用経験におけるアンケートから

 授業実践を行う前に,自然体験とPCの利用に関するアンケートを実施した。項目と結果 は以下のとおりである(表皿一6,表皿一7)。回答方法は4段階選択方式で,数字の小さい方 が適,大きい方が不適と設定し回答を得た。i群では「植物に関する学習への興味・関心」

を,i群では「野外での活動や自然に関する経験」を,血群では「植物に関する知識・理 解」を,加群では「図鑑を用いた経験と印象」を,v群では「PC(インターネット)の経験 と技能」を,それぞれ3間ずつの質問によって構成し,各群・個別の質問の平均と相関を

算出した。

 このアンケートの目的は2つある。1っ目は,児童の自然体験を調べることによって,

児童の実態把握に加え,自然体験と植物に対する興味・関心や知識・理解の度合いの関係 を考察することである。2っ目は,実践の中で扱うICT機器についての経験や印象から,

ICT活用についての児童のレディネスを把握し,実践の指導方法に生かすことである。

表皿一6事訓アンケート 質問項目

i (1〜3)

ii (4〜6)

iii  (7〜9)

iV群(10〜12)

V群(13〜15)

植物に関する学習への興味・関心

1理科や総合瓦木や草花について学習するのは楽しいし_」

2木や草花などの植物についての学習がすきである。

3学校にある木や草花などの名前や持ちょうを知りたいと思う。

野外での活動や自然に する経験

5.おうちの人と.辿のぽりや自然さんさくによく趾.一__  ザ 6生活の中で,木や草花などで遊んだり、かんさつしたりすることが多い 植物に関する知識・理解

;驚繧露程総う名紬石!ボー一十一

も二朱辛章宿は生きていると思う。lll

図鑑を用いた経験と印象10.図がんを使って木や草花に?いてしらべたことがあ西ρ、

L二二_⊥二

11図がんで調さるゆ蛙大変だと思う。」

12図がんに書いてあることはむずかしいと思う。

PC(インターネット)の経験と技能 13.パソコンを使ったことカミある。

14パソコンで文字をうつことができる。

調査時期:平成23年12月15日

調査方法:順序尺度(ただし,各選択肢を等間隔に設定したため平均を算出できるものと      する),4段階選択方式,適…!−2−3−4…不適,実際の様式は附記資料2を      参照

20

(24)

表皿一7事前アンケート 回答結果単純集計と平均(斜線は欠席の児童)

彗1 問2 問3 問4 問5 問6 問7 問8 間9 問10 問11 問12 問13 問14 問15 C1 1 1 1 3 4 3 3 3 1 3 1 2 3 3 3

C2 2 2 1 1 3 3 2 4 2 1 2 2 1 1 1 C3 1 2 1 2 2 2 2 4 1 2 4 4 1 1 1 C4 1 2 2 3 4 1 2 2 1 1 2 2 4 4 3 C5 1 1 2 2 2 2 3 4 1 2 2 2 2 3 4 C6 1 1 1 1 2 2 3 3 1 2 2 2 2 2 4 C7 2 2 3 2 3 2 2 4 2 2 3 3 1 1 2 C8 2 2 2 1 1 2 3 2 2 3 4 4 1 1 1 C9 2 2 1 3 4 3 2 3 1 1 4 1 2 4 4 C10

C11 1 2 1 1 1 1 2 2 1 1 2 3 1 2 2

C12 2 2 2 1 4 3 2 3 1 2 2 2 2 2 2 C13 2 3 1 1 4 4 2 2 2 4 3 3 1 1 1 C14 1 1 1 3 2 3 3 4 1 2 2 1 1 3 1 C15 2 2 2 2 4 4 3 4 1 4 2 2 1 1 1 C16 2 2 2 2 4 2 2 3 1 3 2 3 2 2 2

C17

C18 2 2 2 1 4 4 3 4 1 4 1 1 2 3 4

C19 2 2 3 3 4 3 3 4 1 2 2 2 3 2 1

C20 1 1 1 1 2 2 2 3 1 3 3 3 1 1 1 C21

C22 1 1 1 1 2 2 1 2 1 1 2 4 2 3 1 C23 2 1 2 1 4 3 4 4 4 4 2 4 1 2 1 C24 2 2 2 1 2 3 3 3 1 1 2 1 .1 1 1

平均 1.6 1.8 1.7 1.7 ≡≡1.1鋼・ 、.;鰯 1醜 1.4 .213 1.6 2 1.9

 結果から,まず各質間の平均を見ていく。網かけ部分は回答の平均の数値が2より大き いものである。最も平均が高い(不適が多い)ものは間8r木や草花を見ただけで,何とい

う名前かわかる」という項目である。これは植物に関する知識・理解についての項目であ り,植物の同定に必要な知識やスキルが不十分であることを示す。次に高いものは間5rお うちの人と,山のぽりや自然さんさくによく行く」で,これは自然体験に関する項目であ る。また,3番目に平均が高い問6も同じ群であり,児童らが自然を観察したり,自然に 触れ合って遊んだりする経験が少ないことを意味する。

 逆に,もっとも平均が低い(適が多い)のは,問9「植物は生きていると思う」である。

つまり,児童のほとんどが植物は生きていると思っているということである。これについ ては,児童の心情的な部分が強いと思うが,少なくともこれまで児童が学習してきたもの からも充分に育まれる感性であり,その背景から知識・理解の群に配置した。次に低いも のは,問1r理科や総合で,木や草花について学習するのは楽しい」である。これは興味・

関心といった児童の情意面に関することである。さらに,問1,問2も同じ群で同じく低 い数値となっている。これは,植物に対する興味・関心が総じて高いことを示している。

 次に,各質問における相関を見ていく。方法は,エクセルのアドインソフトであるデー 21

参照

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