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経営者予想の信頼性

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(1)

経営者予想の信頼性

西  信洋、金田 直之

本研究は,日本企業の経営者による予想利益の信頼性を財務の困窮度の観点から分析を 行ったものである。市場(アナリスト)は,楽観的な傾向のある財務が困窮する企業の経 営者予想に,過度に依存しており,信頼のおける予想であると認識している可能性があ る。

1

、はじめに

わが国では,経営者による予想利益を公表する制度が存在している。これは,わが国独自の 制度であり,ディスクロージャーの先進国と称される米国にも存在しない。

このように,わが国と米国では経営者予想に関する制度の違いがあるものの,経営者による 予想利益の楽観度が財務の困窮度と正の相関があるという傾向は,両国ともに報告されている。

(Irani (2000), Koch (1999), Ota (2006), 須田・太田(2004)

さらに,Koch (1999) によると,米国では,このように楽観的な傾向のある,財務が困窮し ている企業の経営者予想を,アナリストは信頼性の低い情報であると見なしていることを報告 している。

そこで,本研究では,Koch (1999) で行われたモデルを適用して,日本企業の経営者による 予想利益の信頼性と財務困窮度との関係を分析する。

論文の構成は,まず,第2章で,研究の背景である経営者による予想利益の公表制度につい て言及する。つづいて,第3章では,先行研究から問題を提起し,仮説を設定する。第4章で,

変数とサンプルについて述べ,第5章で分析方法と実証結果を示す。最後に第6章で,本研究 の結語と今後の課題を述べる。

2

、経営者による予想利益の公表制度

わが国では,証券取引所の要請により,経営者による予想利益を公表する制度が定着してい

元筑波大学大学院

学習院大学

本稿は,平成15年度科学研究費基盤(c)(15530296)による研究成果の一部である。

(2)

る。これは,わが国独自の制度であり,ディスクロージャーの先進国と称すべき米国にすら存 在しない制度である。

米国では,伝統的にSECが経営者による予想利益の公表を禁止してきたが,197111月の SECの委員長であるWilliam Caseyによってなされた,予想利益の情報は投資価値を決定する に際して有用であるというスピーチを契機に,1970年代に制度の再検討が行われた。その結 果,経営者による予想利益の公表は任意となり現在に至っている。しかしながら,浦崎

(1995)によるアンケート調査によると,米国では,12%の企業しか予想利益を公表している と答えていない。つまり,米国における経営者による予想利益は,自発的ディスクロージャ ーといえる。

これに対しわが国では,経営者による予想利益は,証券取引所が適時開示と称する決算短信 と業績予想の修正において発表している。適時開示とは,証券取引所の規則に基づく情報提供 であり,上場会社・店頭公開会社に対して義務付けられるものである(久保(2004)

決算短信は,連結決算,単独決算に別れ,それぞれ,年次決算短信,中間決算短信の2度に わたり公表されている。年次決算短信では,売上高,経常利益,当期利益,一株あたり当期 利益,一株あたり年間配当金の項目に対する当期の予想値とともに,売上高,営業利益,経常 利益,当期利益,一株あたり当期利益などの前期の実績値がともに開示される。中間決算短信 では,同項目に対する当期の予想値とともに,同項目に対する前半期の実績値が開示される。

業績予想の修正は,証券取引法の規定に基づいて開示されるものである。証券取引法の第 166条は会社関係者等の有価証券等の取引規制に関するもので,第一項で,規制を受ける者お よび場合が規定され,第二項で,上場会社等の業務に関する重要事実が例示されている。経営 者による予想利益に関する規定は第二項三号で定義され,売上高等について,公表がされた直 近の予想値に比較して当該上場会社が新たに算出した予想値または,その事業年度の決算での 差異は,投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものである場合,重要事実であることが記述 されている。重要事実である基準は,内閣府令で定められ,要約すると

・売上高については,直近の予想値が,改訂後の予想値もしくは実績値と10%以上もしくは 10%以下の相違がある場合

・経常利益は,直近の予想値が,改訂後の予想値もしくは実績値と30%以上もしくは30%以 下の相違があり,かつ,この相違が純資産の5%以上であること

・直近の予想値が,改訂後の予想値もしくは実績値と30%以上もしくは30%以下の相違があ り,かつ,この相違が純資産の2.5%以上であること

となる

この規定により,重要事実である基準を超える場合,経営者は業績予想の修正を発表しなけ ればならない。

孔(2002),後藤(1997)に制度の変遷がまとめられている。

日本では,90.3%が決算短信により予想利益を公表していると答えている。しかしながら,決算短信を公表 していないと答えた企業でも会社名が明示された企業を確認したところ,実際には,予想利益が公表されて いる。(浦崎(1995)) 日本では,ほとんど全ての企業が予想利益を公表していると考えてよいであろう。

分析対象とした2002年度当時の制度について記述を行った。

詳細は,堀口(2003)参照のこと

(3)

つまり,わが国は,決算短信により定期的に2回の経営者予想と,不定期に業績予想の修正 を発表しているのである。

また,これらの情報は,翌日の日本経済新聞で報道される。図2は,ダイエーの例である。

過去2年間の実績値とともに予想値が掲載される。また,利益が負の場合,一株益は表示され ない。

このようにして,わが国では,事実上すべての上場企業の経営者による予想利益を入手する ことができる。

これらの事情を踏まえ,経営者による予想利益に関して,わが国と米国で比較検証する場合 には,次の2点を考慮する必要がある。ひとつは,わが国と米国では,経営者による予想利益 の公表の制度が異なり,わが国では,経営者による予想利益は,制度上のディスクロージャー であるが,米国では自発的なディスクロージャーである。そのため,米国では,公表するとい う行為自体が一種の情報となりうることである(Patell (1976))。2点目は,わが国では,経営 者による予想利益は,単独では公表されず,実績値と共に公表されることである。

3

、問題提起と仮説設定

経営者は,不正なディスクロージャーに対して,インサイダー取引などによる訴訟のみなら 図1 連結決算短信(3月決算)の例 

(内容) 

・前期決算の業績結果 

・当期の業績予想 

(内容) 

・前半期の業績結果 

・当期の業績予想 

不定期:業績予想の修正  前期決算日 

3月31日  5月下旬  9月30日  11月末  3月31日 

年次決算短信  中間決算日  中間決算短信  当期決算日 

図2 年次決算による決算短信の例(ダイエー) 

<数表>連結決算(決算数字)2001/04/25, , 日本経済新聞  決算期 

   ダイエー  00.2  01.2  02.2予 

売上高 

(億円) 

(8263) 

28471  29141  26000

経常益 

(百万円) 

 

▲33163        1043    16000

利 益 

(百万円) 

 

▲21944      45894    19000

1株益 

(円) 

 

―  81.1  26.6

同単独 

(円) 

  1.6 

―  8.4

(4)

ず,重要事実不公表による訴訟,また,訴訟にいたらなくとも,経営者としての名声の損失や,

解雇など,数多くのペナルティーにさらされている。

先行研究によると,一般的に,このようなペナルティーにより,経営者は故意に歪んだ予想 を発表しないことがわかっている(McNichol (1989))。しかしながら,このようなペナルティ ーが効果を発揮するには,投資家や金融機関が,不正なディスクロージャーを発表した経営者 を,将来,罰することができるという前提が必要となってくる。財務困窮度が高い企業の経営 者の場合,故意に歪んだディスクロージャーを発表するペナルティーは弱くなると考えられる。

なぜなら,これらの企業の経営者は,これらの罰が働くまで,その地位にいない可能性が高い からである。Gilson (1989) によると,会長,CEO,社長は,債務不履行,倒産,リストラクチ ャリングに直面する企業では,年間で52%の者が交代しており,財務が困窮してはいるが,

それによる債務不履行,倒産,リストラクチャリングが表面化していない企業では,年間で 19%が交代している。対照的に,Warner. Watts and Wruck (1988) よると,財務が困窮していな い企業では,年間で11.5%しか交代していないことが報告されている。

一方で,経営者は不正なディスクロージャーに対するインセンティブも併せ持っている。な ぜなら,ディスクロージャーの内容は,株価に影響を与えるからである。例えば,経営者によ る予想利益情報は,株価に影響を与えることが報告されている。後藤(1993)では,市場モデ ルにより,実績利益情報と予測利益情報の間で,株価変動との関連性を実証的に比較している。

この分析により,実績利益情報と予測利益情報のそれぞれが,他方を所与としてもなお株価変 動を追加的に説明する能力を有していることが発見されている。また,太田(2002)では,

Ohlson (1995, 2001) によるOhlson/RIVモデルにより,株主資本簿価,当期利益および経営者予 想利益の価値関連性を分析している。この分析により,経営者予想利益の増分説明力は,株主 資本簿価および当期利益の増分説明力よりも有意に大きいことを発見している。

さらには,経営者による予想利益は,その後に発表されるアナリスト予想利益に影響を与え ていることも報告されている。

國村(1980)によると,経常利益に関して,経営者予想とその直後のアナリスト予想とは,

70.9%が同じ予想値であり,証券アナリストは,経営者予想を基礎として最初の予想を立てて いるとし,また,太田(2002)は,当期利益に関して,経営者予想とその直後のアナリスト予 想のうち,81.5%が同じ予想値であり,それらのピアソン相関係数は,0.995であることを発 見している。

さらに,Jennings (1987) は,経営者予想が,それが発表される以前のアナリスト予想より大 きい場合,経営者予想が発表された直後のアナリスト予想によって,追加的に株価は反応する ことが説明されている。つまり,アナリストによる経営者予想の信頼性の保証により,株価は 反応するのである。

また,仮に,投資家やアナリストに,ディスクロージャーの不正を見破られたとしても,経 営者は不正なディスクロージャーを発表するインセンティブがあると考えられる。なぜなら,

誤ったままの情報を受けてもらいたいのは,顧客,供給者あるいは他の企業の外部者かもしれ ないからである(McNichol (1989))

これらのインセンティブは,財務困窮度に関係なく,働いていると考えられる。

総合して考えると,不正なディスクロージャーをするペナルティーは,財務が困窮している 企業の経営者ほど小さく,インセンティブは一定であることから,財務が困窮している企業の

(5)

経営者ほど,不正なディスクロージャーを行っている可能性が高いといえる。事実,財務が悪 化している企業の経営者は,過度に楽観的な予想を発表するという証拠が数多くなされてい る。

Frost (1997) は,1982年から1990年の第一修正監査報告書(first-time modified audit reports)

を受け取った英国企業81社を対象に分析を行い,財務が困窮し,かつ positive なディスク ロージャーを発表する企業の経営者は,実績値に対して楽観的な予想をしているという証拠を 得ている。また,そのようなディスクロージャーは,株価を押し下げる働きがあることも発見 している。これは,そのような予想が市場に信頼されていないことを示している。

Koch (1999) は,米国企業について分析し,財務が困窮している企業の公表する経営者予想

利益が,そうでない企業に比べて過度に楽観的であり,アナリストはそのような予想利益を信 頼性が低い情報であるとみなしていることを発見している。

また,Irani (2000)は,予想利益に影響を及ぼすほかの要因をコントロールしたとしても,

財務困窮が高い企業の予想利益は楽観的であるという相関があることを発見している。

経営者予想に関するディスクロージャーの制度の違う日本企業についても,Ota (2003) は財 務困窮度と経営者による予想利益の楽観度は有意な正の相関があることを発見している。また,

須田・太田(2004)は,倒産企業では,倒産する直前の決算において,コントロール企業より も,経営者予想の楽観度が高いことを発見している。

しかしながら,前述にあるFrost (1997),Koch (1999) でも確認されたように,英国や米国で は,過度に楽観的な傾向のある,財務が困窮している企業のディスクロージャーは,市場から は評価されていない。たとえ,経営者予想を公表する制度が整った日本市場であったとしても,

英国,米国同様,財務が困窮する企業の経営者ほど楽観的な予想をするという傾向があること から,これらの国と同様に財務が困窮している企業の経営者予想は市場から信頼されていない ことが予想される。

そこで,本研究では,経営者予想を公表する制度が整った日本市場で,財務が困窮している 企業の経営者が作成する予想利益は,市場に信頼されているのかを解明することを目的とする。

分析は,Koch (1999) の方法を用いて行う。以下が検証する仮説である。

・仮説1 財務が困窮する企業ほど,経営者による予想は楽観的である。

・仮説2 経営者予想がそれ以前のアナリスト予想よりも高い場合,それ以後のアナリスト予 想は,財務が健全である企業に比べ,財務が困窮する企業の予想に対して強く反応しない。

・仮説3 経営者予想がそれ以前のアナリスト予想よりも低い場合,それ以後のアナリスト予 想は,財務が健全である企業より財務が困窮する企業の予想に対して強く反応する。

仮説1,経営者が不正なディスクロージャーを発表することに対するペナルティーとインセ

ンティブに関する仮説である。財務が困窮する企業の経営者ほど,楽観的な予想を発表するこ とに対するペナルティーが低いと考えられるため,経営者予想は楽観的であると考えられる。

仮説2,仮説3は,経営者予想に対する市場の評価に関する仮説である。これらの仮説は,

仮説1が観測される状況でのみ構築される。なお,本研究では,市場の評価を株価形成過程で

(6)

はなく,アナリスト予想改訂によって測っている。なぜなら,財務が困窮する企業の予想利 益に対する株価の反応には,利益以外にも,企業が倒産するリスクも含まれるため,財務が困 窮する企業の予想利益とそうでない企業のそれとでは,同様の反応が起こらないと考えられる ためである。

仮説2は,財務が困窮する企業の経営者が楽観的な予想をすることを市場(アナリスト)は 見通しており,財務が困窮する企業の経営者が発表する好材料な情報を信頼しないため,あま り反応しないと考えられることによる。仮説3は,財務が困窮する企業の経営者が悪材料な情 報を発信した場合,経営者は,楽観的な予想を発表するインセンティブを凌駕するほどの何ら かの情報を抱えていると市場(アナリスト)は判断することによるものである。

なお,本研究では,分析対象を連結決算とする。

4

、変数とサンプル

(1)変数 1.基本変数

・経営者予想(MF)

2章で述べたように,経営者による予想連結利益の公表は,最低2回は行われる。本研究で は,当期で最初に行われる予想利益である年次決算短信で公表される一株益を分析対象とし た。これは,2度目の経営者予想を分析対象とした場合,アナリスト予想は最初と2度目の両 方の経営者予想の影響を受けると考えられ,また,2度目の経営者予想は,最初の経営者予想 の影響を受けると考えられるためである。

・アナリスト予想(PFAFSFAFFAF01)

事前アナリスト予想(SFAF)は,決算短信が発表される90日前から発表の前日までに発表 されたアナリスト予想一株益のコンセンサス(中央値)である。

事後アナリスト予想(SFAF)は,決算短信が発表された翌日から30日後までに発表された アナリスト予想のコンセンサス(中央値)である。

決算短信が発表された当日のアナリスト予想は,経営者予想を参考にしたものか判定がつか ないため,サンプルから除外した。

また,前期業績に対するアナリスト予想(FAF01)は,当期業績に対するアナリスト予想で ある事前アナリスト予想と同じ期間に発表された前年度アナリスト予想のコンセンサス(中央

アナリスト予想の合理性自体は,実証研究の対象となるものである。先行研究においては,アナリスト予想 にシステマティックな誤差が存在することが確認されている。一方,そういった予想誤差に関して,合理的 な説明をしようとする試みも行われている(Francis (1997), Gu and Wu (2003))。本研究においては,先行研 究にならい,アナリスト予想が合理的であるという仮定の下に実証分析を行った。

コンセンサスとして,平均値ではなく中央値を採用したのは,特殊な値に左右されない分析ができると考え られるためである。しかしながら,先行研究(國村(1980),太田(2002))によると,経営者予想と同じ値 をとる事後アナリスト予想が数多く存在することが確認されているため,中央値では,経営者予想と事後ア ナリスト予想の差を実態ほど観測できないと考えられる。そのため,平均値を採用した分析も行ったが,中 央値を用いた分析結果と差異はなかった。

(7)

値)である。

2.経営者予想誤差

経営者予想誤差(MFE)を以下のように定義する。予想誤差は,当期利益の予想値と実績 値との乖離で表現される。値が負であるとき,経営者予想は楽観的であると解釈できる。

(1)

ただし,

;企業iの2002年度一株益の経営者予想

;企業iの2002年決算期の一株益

;企業iの2002年決算期において,初めて取引された日における株価の終値

とする。

3.期待外利益

期待外利益(UE)と期待外利益ダミー(AGN)を以下のように定義する。期待外利益は,

前期の実績値と前期業績に対するアナリスト予想との乖離で表現される。これは,市場の期待 に対して,企業の実績値はどの程度大きかったのかを示す。

(2)

(3)

ただし,

;企業iの2001年一株益のアナリスト予想値

;企業iの2001年決算期の一株益

;企業iの2002年決算期において,初めて取引された日における株価の終値

とする。

4.予想偏差

予想偏差(FD)と予想偏差ダミー(GN)を以下のように定義する。予想偏差は,経営者予 想と事前アナリスト予想の当期利益の乖離で表現される。これは,市場の期待に対して,経営 者予想がどのような情報であったかを示す。予想偏差が正であるとき,市場の期待に対して,

経営者予想はgood newsであったことを示し,負であるとき,bad newsであったことを示して いる。

(4)

(8)

(5)

ただし,

;企業iの2002年度一株益の経営者予想

;企業iの2002年度一株益の事前アナリスト予想

;企業iの2002年決算期において,初めて取引された日における株価の終値

とする。

5.アナリスト予想改訂

アナリスト予想改訂(AFR)を以下のように定義する。アナリスト予想改訂は,事前アナリ スト予想と事後アナリスト予想の当期利益の乖離で表現される。これは,経営者予想の発表に より,市場の期待がどのように変化したかを示す。

(6)

ただし,

;企業iの2002年度一株益の事後アナリスト予想

;企業iの2002年度一株益の事前アナリスト予想

;企業iの2002年決算期において,初めて取引された日における株価の終値

とする。

6.財務困窮度

本研究では,財務の困窮度を示す指標として,白田(2003A)による倒産予知モデルの指標 であるSAF2002を使用した。SAF2002は,次年度の倒産発生と財務指数との関係を求めた多 変量判別関数である。SAF2002は,以下のように定義される。

(7)

ただし

X1 ;(期首・期末平均留保利益/期首・期末平均負債・資本合計)×100 X2 ;(税引き前当期利益/期首・期末平均負債・資本合計)×100 X3 ;(期首・期末平均棚卸資産×12)/売上高

X4 ;(支払利息割引料/売上高)×100 留保利益=資本−(資本金+資本剰余金)

である。

SAF2002は財務が困窮するほど減少する。また,倒産,非倒産の判別点は0.68であり,

SAF2002の値がこの判別点より小さい場合は財務困窮企業(倒産危機企業),大きい場合は財

務健全企業(非倒産危機企業)と判定される。

倒産予知モデル(白田(2003A))は,資本金3000万円以上の企業であれば,銀行業,証券

(9)

業,保険業,建設業を除く,全ての企業において適応可能ではある。しかしながら,中小企業 向けのモデルというわけではない。本研究のサンプルの99.3%を占める総資産規模100億円以 上の企業に対して,倒産群で83.74%,非倒産群で76.44%,平均で80.09%の判別力がある。

倒産予知モデルとして著名なAltman1986年モデルでさえ,Moyer(1997)の研究では倒産 企業群で61%,非倒産企業群で88%,平均でも74.5%の判別力しか表さなかったという結果 がある。また,Altmanの同モデルを1985年以降にわが国で倒産した上場企業に適応した結果 は,71.4%の判別力しか表さなかったことも白田(1996)で報告されている。つまり,倒産予 知モデル(白田(2003A))は,資産規模の大きな企業に対して,非常に高い判別力があると いえる。

また,SAF2002は,一部の公共性の高い企業を除き,S&Pによる長期発行体格付けと近い値 を示している(白田(2003B)。つまり,SAF2002による財務困窮度は,市場が認識している 財務困窮度と変わりはないといえる。

しかしながら,白田(2003A)による判別点(0.68)に関しては,変更を行った。白田

(2003A)では,上場企業のみならず,非上場企業も分析対象としている。一方,本研究の分 析対象は,全国5市場で上場している企業である。そのため,白田(2003A)による判別点の 数値は,本研究の分析対象を判別するには,大きすぎると考えられるからである。そこで,新 たに,本研究に適した判別点(0.59)を算出した。算出方法については,巻末の補論で記述し ている。このとき,判別力は倒産群で100%,非倒産群で77.83%,平均で88.02%と高い値と なる。また,本研究において,この判別点により,財務困窮企業に分類されるサンプルは全サ ンプルの10.6%である。

(2)サンプル

1.サンプル要件・収集先

分析対象は,2002年度の連結業績に対する予想を行っている企業である。サンプルの要件 は以下の通りである。

(1)過去2年間の実績値とともに,経営者による2002年度の連結業績予想が公表されているこ と。

(2)事前,事後のアナリスト予想が存在すること

(3)業種が,銀行業,証券・商品先物業,保険業,建設業でないこと。

(4)「日経NEEDS」により,2000年,2001年度の連結財務データが入手可能であること

(5)全国5市場で上場していること

(6)時価総額を上回る損失を出していないこと10

過去2年間の実績値が公表されていない企業は,新規上場企業であるため,過去2年間の財務データを入手

できない。また,未上場企業であっても,予想を公表している企業もある。

銀行業,証券・商品先物業,保険業については,業務の特殊性から,財務数値の比較可能性が低いと考えら れる。建設業については,売上高の計上方法に選択適応が認められるため,同じ建設業同士であっても財務 数値の比較可能性が低く,利益調整が容易に行いやすいと考えられる。以上の理由による分析対象が排除し た。

東証1部,東証2部,大証1部,大証2部,名証1部,名証2部,札幌,福岡を示す。

(10)

経営者予想は,2001年11日より20021231日までの「日本経済新聞」より収集,ア ナリスト予想は「I/B/E/S DETAIL HISTORY」11より収集,株価は,「株価CD-ROM2003」,

「日本経済新聞」より収集,業種区分は「株価CD-ROM2003」,「会社年鑑2003」より収集12 財務データは「日経NEEDS」より収集した。

最終的に,586社のサンプルを得た。

2.サンプル情報

サンプル要件によるサンプル選択企業数は,表1の通りである。要件2により,多くの企業 がサンプルに含まれないことがわかる。アナリストに注目される,比較的有名な企業しかサン プルに含まれていないと考えられる。

サンプル企業の財務状態別上場場所は,表2の通りである。サンプル企業は,東証一部に集 中していることがわかる。

表1 サンプル選択 

(要件1)経営者予想がある企業 

(要件2)条件を満たすアナリスト予想が無い企業 

(要件3)銀行業,証券・商品先物業,保険業,建設業である企業 

(要件4)日経NEEDSに連結財務データが無い企業 

(要件5)全国5市場に上場していない企業 

(要件6)はずれ値   全サンプル数 

2723  

(2022) 

(48) 

(62) 

(4) 

(1) 

586  

表2 財務状況別上場場所  上場場所 

東証一部  東証二部  大阪一部  大阪二部  名古屋一部  名古屋二部 

合計 

財務健全企業  486   

24    2    8    1    3  524  

財務困窮企業  58    3    0    0    0    1  62

合計  544    27    2    8    1    4  586  

10 株式会社ダイエー(8263)1社が排除の対象となった。ダイエーグループはこの年,「新3カ年計画」の下,

リストラクチャリングを行い,特別損失を415,878(百万円)計上している。結果,一株損失540.22円に対 し,株価は185円であった。

11 「I/B/E/S DETAIL HISTORY」では,2003年9月時点で上場廃止になっている企業のデータは入手できない。

12 一部の企業は2003年度末時点で,上場廃止になっており「株価CD-ROM2003」からは株価,業種区分が入 手できない。そのため,一部の企業について,株価は,「日本経済新聞」,業種区分は「会社年鑑2003」よ り入手した。

(11)

サンプル企業の財務状態別業種は,表3の通りである。サンプルは,ほぼ全ての業種に存在 し,業種によるバイアスは無いと考えられる。

4は,資産規模,負債比率,財務困窮企業の割合を研究対象のサンプルと(要件1),

(要件4)を満たすサンプルとを比較したものである。研究対象のサンプルは,経営者予想を

公表する企業の全サンプルに比べ,資産規模が大きく,財務が健全である企業の比率が高いこ とがわかる。

表3 財務状態別業種  業種コード 

0050  1050  2050  3050  3100  3150  3200  3250  3300  3350  3400  3450  3500  3550  3600  3650  3700  3750  3800  4050  5050  5100  5150  5200  5250  6050  6100  7050  7100  7150  7200  8050  9050

業種分類  水産・農林業 

鉱業  建設業  食料品  繊維製品  パルプ・紙 

科学  医薬品  石油・石炭製品 

ゴム製品  ガラス・土石製品 

鉄鋼  非鉄金属  化学製品  機械  電気機器  輸送用機器 

精密機器  その他製品  電気・ガス業 

陸運業  海運業  空運業  倉庫・運輸関連業 

通信業  卸売業  小売業  銀行業  証券,商品先物業 

保険業  その他金融業 

不動産業  サービス業 

合計 

財務健全企業    1    0  35  11    6  47  23    5    5  11    7    9    9  46  75  24  10  17  10  14    3    2    1  36  36  38  17    5  22  525  

財務困窮企業  61  

合計    1    0  37  12    6  52  25    5    5  12  12  11    9  55  82  30  12  20  12  17    4    2    1  38  38  38  17  11  22  586  

(12)

以上より,本研究のサンプルは,業種に偏りは見られないものの,東証一部に上場し,資産 規模が大きく,財務が健全である企業が多いことがわかる。

しかしながら,後述の分析により,本研究のサンプルは,財務が困窮する企業ほど,経営者 による予想は楽観的であるという仮説1を支持している。そのため,サンプル企業においても 財務困窮企業の経営者予想の信頼性を分析することは可能である。

5、実証分析

(1)財務困窮度と経営者予想の楽観度

この節の目的は,財務の困窮度と経営者予想の楽観度の関係を分析することにある。

仮説1を検定するため,次の回帰式を推定した。

(8)

ただし,

=企業iの経営者予想誤差

=企業iの財務困窮度

=誤差項 である。

SAF2002は値が小さくなるほど財務が困窮していることを示し,MFEは値が小さくなるほ ど,経営者予想が楽観的であることを示している。分析の結果, の推定量は-0.105,t値は-

4.47(5%水準で有意) の推定量は0.064,t値は4.60(1%で有意)であり,財務が困窮す

るほど経営者予想が楽観的であるという仮説1を支持する。

なお,(8)式は,White (1980) による不均一分散検定の結果(8)式の均一分散の仮定は棄 却された。そのため,推定値のt値は,ホワイトの標準誤差を用いて計算されている。

表4 研究対象サンプル    

企業数  資産規模     負債比率   

財務困窮企業     度数  平均値  中央値  平均値  中央値  度数  割合 

研究対象サンプル  586  628041  187123  54.5% 

54.6% 

61  10.4%

サンプル(要件1・要件4) 

1699  282790 

59766  60.0% 

61.4% 

344  20.2% 

 

(13)

つづいて,次の回帰式により,カテゴリーをわけて,より詳細な分析を行う。

(9)

(10)

ただし,

=企業iの経営者予想エラー

=企業iの財務困窮度

=誤差項 とする。

(9)式は,ダミー変数によって,財務困窮企業と財務健全企業の平均経営者予想エラーの違 いを,経営者予想が,good newsであった企業と,bad newsであった企業によって分けて分析 することができる。経営者予想がbad newsであった企業の中で,財務健全企業の平均経営者予 想エラーに対して,財務困窮企業のそれがどれほど大きいかを表す係数は, である。仮説 1に従い,財務が困窮する企業ほど,経営者による予想が楽観的であるならば, は有意に 負の値をとるであろう。経営者予想がgood newsであった企業の中で,財務健全企業の平均経 営者予想エラーに対して,財務困窮企業のそれがどれほど大きいかを表す係数は, ある。先ほどと同様,仮説1に従うとすれば, も有意に負の値をとると考えられる。

(10)式は質的変数であるDISTのかわりに,量的変数であるSAF2002を加えたものである。

経営者予想がbad newsであった企業の中で,財務困窮度と平均経営者予想エラーとの関係を表 す係数は, である。仮説1に従えば,SAF2002は財務困窮度が高いほど小さな値をとるた め(9)式とは逆に, は有意に正の値をとるだろう。経営者予想がgood newsであった企業 の中で,財務困窮度と平均経営者予想エラーとの関係を表す係数は, である。仮説1 に従うとすれば, も有意に正の値をとると考えられる。

なお,(9)式と(10)式において,多重共線性は重大な問題とならないと考えられる。確か に,表6で見られるように,説明変数間で高い相関が観察されているものもある。しかしなが ら,多重共線性は,説明変数間の相関だけではなく,説明変数の分散によっても決定される。

そこで,(9)式と(10)式の説明変数間の共線性の程度を調べるために,Variance-Inflation 表5 財務困窮度と経営者予想の楽観度 

t値は,ホワイトの標準誤差に基づく   ** 1%水準で有意  * 5%水準で有意 

  回帰係数  t値 

   -0.105 

(-4.47)*

   0.064 

(4.60)**

Adj.R2  0.066

サンプル数  586

(14)

Factor(VIF)を計算している。

(9)式の説明変数のVIFは,VIF(GN)=1.14,VIF(DIST)=2.11,VIF(GN×DIST)=

2.33であり,(10)式の説明変数のVIFは,VIF(GN)=9.02,VIF(SAF2002)=1.53,VIF

(GN×SAF2002)=8.86である。VIFは10を超えるとき,多重共線性が問題となると判断され

る。得られた値は,この基準より小さい。したがって,多重共線性は,モデルの推定において 重大な問題とはならないといえる。

ただし,White (1980) による不均一分散検定の結果(9)式,(10)式共に,均一分散の仮定 は棄却されている。そのため,推定値のt値は,ホワイトの標準誤差を用いて計算している。

(9)式の推定結果は表7の通りである。 の推定量は-0.079,t値は-2.20(5%水準で有 意)である。経営者予想がgood newsであった企業の中で,財務が困窮している企業の経営者 予想は,財務が健全である企業の経営者予想に比べ楽観的であることを示している。一 方, の推定量は-0.019,t値は-1.17(5%水準で有意でない)である。経営者予想がbad news であった企業の中で,財務が困窮している企業の経営者予想は,財務が健全である企業の経営 者予想に比べ楽観的ではないという帰無仮説は棄却できない。

(10)式では, の推定量は0.095,t値は2.83(1%水準で有意)である。経営者予想

good newsであった企業は,財務が困窮している企業ほど楽観的であることを示している。

さらに, の推定量は0.045,t値は4.51(1%水準で有意)である。つまり,経営者予想が

bad newsであった企業においても,財務が困窮している企業ほど楽観的であることを示してい

る。

(9)式と(10)式の結果から,経営者予想は,財務が困窮する企業ほど楽観的であり,特に,

経営者予想が事前のアナリスト予想よりも大きいとき(good newsであるとき),その傾向は強 くなるといえる。

表6 説明変数間の相関係数 

ピアソン相関係数  変数 

GN DIST GN × DIST

GN

0.137  0.333

DIST

  0.717

GN × DIST

    1

ピアソン相関係数  変数 

GN SAF2002 GN × SAF2002

GN

-0.083 

0.912

SAF2002

  0.015

GN × SAF2002

    1

(15)

(2)財務困窮度とアナリスト予想改訂

この節では,経営者予想がアナリスト予想に与える影響と企業の財務困窮度との関係を分析 することにある。しかしながら,第2章で,日本市場では,経営者予想と同時に,前年度の実 績値も公表されることを指摘した。アナリスト予想に与える影響は,経営者予想以外にも前年 度の実績値の結果によるところもあると考えられる。そのため,前年度の実績値に対する期待 外利益が,今年度の予想に与える影響を次の回帰式で検証した。

(11)

ただし,

=企業iのアナリスト予想改訂

=企業iの期待外利益

とする。

もしくは, に有意な値が確認されるとき,期待外利益が当期のアナリスト予想改 訂に影響を与えると考えられる。

(11)式の推定の結果, の推定量は-0.082,t値は-1.25(5%水準で有意でない) の推定量は-0.095,t値は-1.50(5%水準で有意でない)となり,期待外利益が当期のアナリス ト予想改訂に影響を与えるとはいえない。

なお,White (1980) による不均一分散テストによって,(11)式の均一分散の仮定は棄却さ れなかった。

表7 財務困窮度と経営者予想の楽観度 

t値は,ホワイトの標準誤差に基づく   ** 1%水準で有意  * 5%水準で有意 

  回帰係数  t値 

β0  -0.037 

(-10.21)**

β1  -0.003 

(-0.51) 

β2  -0.019 

(-1.17) 

β3  -0.06 

(-1.53) 

β2+β3  -0.079 

(-2.20)*

Adj.R2  0.047

サンプル数  586

  回帰係数  t値 

β'0  -0.084 

(-6.52)**

β'1  -0.054 

(-1.41) 

 

β'2  0.045 

(4.51)** 

 

β'3  0.050 

(1.42) 

 

β'2+β'3  0.095 

(2.83)**

Adj.R2  0.073

サンプル数  586

(16)

つづいて,経営者予想がアナリスト予想に与える影響と財務困窮度との関係を検証する。経 営者予想がgood newsであるとき,財務が健全である企業に比べ,財務が困窮する企業の経営 者予想に対して,アナリスト予想改訂は強く反応しないと考えられる。一方,経営者予想が

bad newsであるとき,財務が健全である企業に比べ,財務が困窮する企業の経営者予想に対し

て,アナリスト予想改訂は強く反応すると考えられる。前者が仮説2であり,後者が仮説3 ある。

これらの仮説の検定は,次の回帰式を推定した。

(12)

(13)

ただし,

=企業iのアナリスト予想改訂

=企業iの予想偏差

=企業iの財務困窮度

=誤差項 とする。

國村(1980),太田(2002)で観察されたように,経営者予想はアナリスト予想改訂に影響 を与えていると考えられる。このとき, は有意に正の値をとる。また,仮説2に従い,

経営者予想がgood newsであるとき,財務が健全である企業に比べ,財務が困窮する企業の経 営者予想に対して,アナリスト予想改訂は強く反応しないならば, は負, は正の 値をとるであろう。一方,経営者予想がbad newsであるとき,仮説3に従い,財務が健全であ る企業に比べ,財務が困窮する企業の経営者予想に対して,アナリスト予想改訂は強く反応す るならば, は正, は負の値をとるであろう。

なお,(12)式と(13)式において,多重共線性は重大な問題とならないと考えられる。表 9によると,確かに,説明変数間で高い相関が観察されているものもある。しかしながら,

(12)式の説明変数のVIFは,VIF(FD)=1.84,VIF(FD×GN)=2.16,VIF(FD× DIST)=1.81,VIF(FD×GN×DIST)=2.11,であり,(13)式の説明変数のVIFは,VIF

(FD)=3.75,VIF(FD×GN)4.28,VIF(FD×SAF2002)=3.32,VIF(FD×GN× 表8 期待外利益とアナリスト予想改訂 

 ** 1%水準で有意  * 5%水準で有意   

回帰係数  t値 

ρ0  -0.006 

(-4.47)** 

ρ1  -0.012 

(-0.87) 

ρ2  -0.082 

(-1.25) 

ρ1+ρ2  -0.095 

(-1.50) 

Adj.R2  0.002

サンプル数  586

(17)

SAF2002)=3.97,であることから,多重共線性は,モデルの推定において重大な問題となら ないといえる。

ただし,White (1980) による不均一分散テストによって,(12)式,(13)式共に,均一分散 の仮定は棄却された。そこで,推定値のt値は,ホワイトの標準誤差を用いて計算されている。

(12)式の推定結果は表10の通りである。 の推定量は1.006,t値は68.87(1%水準で有意)

であることから,予想偏差はアナリスト予想改訂にかなり影響を与えているといえる。いいか えれば,経営者予想は,事後のアナリスト予想に強い影響を与えているといえる。 予想に反し,推定量は0.219,t値は4.26(1%水準で有意)である。さらに, も予想に反し,

推定量は-0.045,t値は-0.91(5%水準で有意)である13(13)式の推定結果については,

の推定量は0.985,t値は33.38(1%水準で有意)であり(12)式の推定結果同様,経営者予想 は事後のアナリスト予想に強い影響を与えていることが観測できる。 の推定量は-0.219,

t値は-1.94(5%水準で有意でない)であり, の推定量は0.009,t値は0.35(5%水準で有意

ではない)である。(12)式と同じく符号は,予想と逆であったが,有意に観測はされなかっ 14

このことから,経営者予想がgood newsであるとき,財務が健全である企業に比べ,財務が 困窮する企業の経営者予想に対して,アナリスト予想改訂は強く反応しないという仮説2,さ

表9 説明変数間の相関係数 

ピアソン相関係数  変数 

FD FD × GN FD × DIST FD × GN × DIST

FD

0.506  0.547  0.296

FD × GN

  0.336  0.635

FD × DIST

    0.492

FD × GN × DIST

      1

ピアソン相関係数  変数 

FD FD × GN FD × SAF2002 FD × GN × SAF2002

FD

0.506  0.818  0.453

FD × GN

  0.355  0.852

FD × SAF2002

    0.403

FD × GN × SAF2002

      1

13 経営者予想がgood newsであるかbad newsであるか,財務困窮企業か,財務健全企業かによって分けられた

4つのカテゴリー全てにおいて,アナリスト予想改訂と予想偏差との傾きが1に近い結果は,太田(2002)

の分析結果と差異はない。

14 実証結果に強く影響を与えていると考えられる業種,標準化誤差が2.5以上のサンプルを除いても,結果に 差異はなかった。また,財務困窮度の指標を負債比率に変更しても,結果に差異はなかった。

(18)

らに,経営者予想がbad newsであるとき,財務が健全である企業に比べ,財務が困窮する企業 の経営者予想に対して,アナリスト予想改訂は強く反応するという仮説3は支持されない。つ まり,財務が困窮である企業の経営者予想は,財務が健全である企業のそれより,市場(アナ リスト)から信頼されていないということでは無いことが実証結果からわかる15

(3)結果の解釈

5.2の分析結果の回帰係数の符号は,仮説と違うものであった。この結果により,経営者予 想の信頼性は,財務が困窮している企業のほうが高いと解釈するのは合理的ではない。アナリ ストが持つ情報量が,財務が困窮している企業と健全である企業とで違うことにより,仮説と 違う分析結果が得られた可能性がある。

11は,サンプルを,経営者予想がgood newsであるかbad newsであるか,財務困窮企業か,

財務健全企業かによって4つカテゴリーにおける経営者予想誤差の平均値を示したものであ る。

4つのカテゴリー全てにおいて経営者予想は楽観的であることが観測される。このことから,

アナリストは,どのカテゴリーにおいても,経営者予想より低い予想値を出すことが正しい判 断であるといえる。

本研究の(12)式の実証結果は,経営者予想がgood newsであるときもbad newsであるとき

t値は,ホワイトの標準誤差に基づく   ** 1%水準で有意  * 5%水準で有意  表10 財務困窮度とアナリスト予想改訂 

  回帰係数  t値 

γ0  0.000 

(1.06) 

γ1  1.006 

(68.87)**

γ2  -0.258 

(-5.60)**

γ3  -0.045 

(-0.91)*

γ4  0.264 

(3.70)**

γ3+γ4  0.219 

(4.26)**

Adj.R2  0.968

サンプル数  586

  回帰係数  t値 

γ'0  0.000 

(0.60) 

γ'1  0.985 

(33.38)**

γ'2  -0.005 

(-0.07) 

γ'3  0.009 

(0.35) 

γ'4  -0.227 

(-1.97)*

γ'3+γ'4  -0.219 

(-1.95) 

Adj.R2  0.967

サンプル数  586

表11 カテゴリー別の経営者予想誤差    

財務健全企業  財務困窮企業 

good news  -0.040  -0.119

bad news  -0.037  -0.056

15 この分析結果は,財務が困窮する企業ほど,経営者予想は楽観的であることが観測されていることを考慮す ると,経営者予想に対するアナリストの行動は合理的とはいえないことも示している。

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