九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
雄鶏の蕃殖生理に関する研究 : V. 生殖隆起並にそ
の附属器官に対するAndrogenの作用に就いて
西山, 久吉
九州大学農学部畜産学教室
Nishiyama, Hisayoshi
Laboratory of Zootechnical Science, Faculty of Agriculture, Kyushu University
https://doi.org/10.15017/21317
出版情報:九州大學農學部學藝雜誌. 14 (3), pp.435-447, 1954-03. 九州大學農學部
バージョン:published
雄 鶏 の 蕃 殖 生 理 に 関 す る 研 究
紘
生 殖 隆 起 並 に そ の 附 属 器 官 に対 す る
Androgenの
作 用 に 就 い て
西
山
久
吉
Studies
on the physiology
of reproduction
in the male fowl
V.
The influence
of androgen
on
the phallus
and accessory
organs
of it
Hisayoshi
Nishiyama
緒 論
灘 鶏 の 生 殖 隆 起(Phallus),即 ちLiebe(1914)の 所 謂GefassreigherKorperと 肇 者 の 謂 うLymph・foldと は(西 山,1950),哺 乳 動 物 の 副 生 殖 腺 の 如 く,精 液 射 出 の 際, 精 管 内 精 液 に 透 明 液(西TII,1951,1952,1952)を 添 加 す る(西 山,1951,1952).叉 こ の 附 属 器 官 は 早 期 去 勢 に 依 り退 化 縮 少 す る(西 山,1950). 斯 様 な事実 か ら,雄 鶏 の 生 殖 隆 起 の 附 属 器 官 は,生 理 作 用 の 面 か ら観 て,哺 乳 動 物 の 副 生 殖 腺 に 相 当 す る も の の 様 に 考 え られ る. 一方 ,去 勢 に よ り退 化 縮 少 した 哺 乳 動物 の 副 生殖 腺 はAndrogenの投与 に よ つ て,そ 4重量 を 増 加 し,そ の 喪 失 し た 作 用 を も 回 復 し 得 る こ と が 面 接 叉 は 間 接 に 認 め ら れ て い る. こ こ に 於 て,閹鶏 の 生 殖 隆 起 の附 属 器 官 がAndrogenの 投 与 に 対 し て 如 何 な る 反 応 を 示 す か と い う こ と は 興 味 あ る 問 題 で あ る. 本 論 文は こ の 問 題 を 明 か に す る為 に 行 つ た. 本 研 究 は 丹 下教授 の 懇 篤 な 指 導 の 下 に 行 は れ た.蝕 に 謹 ん で 感 謝 の 意 を 表 す る. 材 料 及 び 実 験 方 法 3Jj10日(1950年)孵化 の 牙',:雄6羽 を6月5日(生 後87日)に去勢 し,12J121日(生 後286日)注 射 予 定 鶏(X25,X31,X32)の 精 管 開 孔 部 を 閉 塞 す る 目的 を 以 て,肛 門 を 開 張 し,精 管 乳 頭 突 起 を 電 気 焼 灼 器 で 焼 灼 し た.次 い で 翌 年2月17日(生 後344日)よ り 3月13日 ま で25日 間 ・ 注 射 予 定 鶏3羽 に 対 し てTestosteroneacetateの 油 溶 製 剤(武 田 薬 品,Amolisin)を 注 射 した. 本 実 験 は 生 殖 隆 起 及 び そ の 附 属 器 官 がAndrogenの 作 用 に よ つ て 重 量 を 増 加 し 得 る か 否 か を 検 査 し,出 来 得 れ ば そ の 作 用 を も 回 復 せ し め て 透 明 液 を 採 取 せ ん と 企 図 し た も の で
あ るか ら,Androgenを 投 与 す る場合 は 鳥 類 及 び 哺 乳 動 物 に 於 け る 智 識 を 基 礎 と し て,li-{ 来 得 る限 り最 大 の 効 果 を 挙 げ る様 に 計 劃 し た. Oestrogenは 雄 に 於 て も 生 産 さ れ,副 生 殖 腺 の 筋 繊 維 組 織 の発達を 促 し,Androgenと Oestrogenの 最 的 割 合 が 適 当 な 時 に はAndrogenを 単 独 に 使 用 し た 時 よ り…一層 完 全 に 発 達 せ しめ,叉 そ の 効 果 も 大 き い と言 は れ て い る.著 者 は 哺 乳 動 物 で の 報 告 を 基 礎 と し て, AndrogenとOestrogenの 比 を 凡 そ30:1と 推 定 し,OvahormonebenzoateをR訂 時 に 注 射 し た.3乙 投 与 ホ ル モ ン に 対 す る 抵 抗 性 の 獲 得 を 顧 慮 し て,注 射 回 数 の 進 む に つ れ て 注 射 量 を 増 加 し た.注 射 し た ホ ル モ ン の 力 価,注 射 量 及 び 注 射 期 間 は 粥1表 の 如 く で あ る.
Table 1. Hormones
and the periods of injection.
* 1 mg or 5 mg Amolisin
(A .) is a preparation
which contained
1 mg or 5 mg
testosterone
acetate
in 0.5 cc of sesame oil respectively.
** 1000 I .U. ovahormon benzoate is an oil solution contained 0.1 mg of oestrone
benzoate.
注 射 に 当 り両 ホ ル モ ン は 夫 々 別 の 注 射 器 を 使 用 し,1日1回注射 の 場 合 は 午 前10時,1日 2回 注 射 の 場 合 は 午 前9時 と午 後5時 に 胸 筋 内 に 注 射 し た. 注 射 鶏 に 対 す る 投 与 ホ ル モ ン の 効 果 を 知 る為 に,注 射 開 始 日 よ り3日 毎 に 肉 冠,肉 轡 の 伸長 状 熊 を 記 録 し,叉 性 挙 動 発 現 状 熊 を 観 察 した. 注 射 開 始 日 よ り,腹 部 マ ツ サ ー-s>法(BurrowsandQuinn,1937)に よ つ て 精 液 即 ち 透 明 液(雄 化閹鶏 の 精 液 は 必 然 的 に 透 明 液 で あ る)の 採 取 を 試 み,3月2日(注 射 開 始 後 14日 目)よ り採 取 した 透 明 液 の 液 最 を 測 定 し,叉 濾 紙 法 に よつ て 水 素 イ オ ン 濃 度 の 測 定 を 行 つ た. 注 射 開 始 後22日 目(3月10口)よ り,マツ サ ー ジ 法 に よ つ て 透 明 液 を 採 取 し た 後,更 に 精 液 採 取 器(SemencollectorbyParker,1939)を 用 い て 透 明 液 を 採 取 した ・ こ の 場 合 第1回 の 交 尾 を 終 り,直 ち に 第2回,第3回 の 交 尾 を した 場 合 に は,精 液 採 取 器 内 の 全 透 明 液 を 採 取 透 明 液 量 と した. 注 射 開 始 後26日 目(3月14日)に 対 照閹鶏3羽(X26,X28,X30)と 共 に 屠 殺 し,生 殖 隆 起 並 に そ の 附 属 器 官 〔淋 巴褶襞 及 び 脈 管 豊 多 体(GefassreicherKorper)〕 の 重 量 ・大 さ ・形 態 を 比 較 し,更 に 之 等 の 組 織 を ホ ル マ リン 叉 は プ ア ン 氏 液 に て 固 定,デ ラ フ ィ ル ドヘ マ トキ シ リン 及 び エ オ ジ ン複 染 叉 は 鉄 ヘ マ トキ シ リン 単 染 を 行 つ て 組 織 鏡 検 を し た.
実
験
結
果
(1)弟2次
性 徴 及 び性 挙 動 の発 現
注 射 開 始 当 日,X26(対
照 鶏)以 外 の閹鶏 の 肉冠 は,何 れ も自 く小 さ く,L×H(長
さ ×
高 さ)は10cmZ以
下 で あ つ た.注 射 鶏 の 肉 冠 は注 射 開始 後 急 速 に伸 長 し,4∼5日
目よ
り赤 色 と な り,屠 殺 時 に はjE常 雄 鶏 の 肉冠 に 略 々匹 敵 す る大 さ ・形 態 の もの となつ た.肉
鷺 も肉冠 の伸長 に 伴 つ て発 達 し,頭 部 形 態 は閹鶏 タイ プか ら雄 鶏 タ イプ に変 化 した.注
射
期 間 の前 半 に 於 ては 各鶏 の鶏 冠伸長 状 態 は 急速 で 略 々齊 … で あ つ た が,後
半 に は 投与 ホ ル
モ ン に対 す る注 射 鶏 の反 応 に 個 体 的 差 異 が現 は れ 始 め,屠
殺 時 には 鶏 冠 の大 さに 相 当 の 差
異 が 認 め られ た(第1図).即
ち,X25の
鶏 冠 は後 半 に も引 続 き相 当 伸 長 した が,X31に
Days after first injection ---
injected bird, ... control.
於 ては2.Omg注
射 の後 半 に は殆 ど鶏 冠 の伸 長 は 停 り,5mg注
射 に よ り再 び 僅 か に 伸 長
した.X30は
そ の中間 の反 応 を 示 した.
対 照鶏2羽(X28,X30)は
実 験 期 間 中全 く鶏 冠 の伸 長 が 認 め られ な か つ た.唯
他 の1
羽(X26)は
第1回 測 定 の時,鶏 冠 は 既 に12.4cm2の
大 さで,充
実 してい な い が 赤 色 の
外 観 を もち,実
験 期 間 中 も僅 か なが ら鶏 冠 の伸長 が認 め られ た.屠 殺 剖 検 の 結 果,こ の 対
照 鶏 に直 径4mm,長
さ5.3mm,重
さ31mgの
小 さ な再 生 睾丸 を発 見 した.こ
の睾丸
は右 側 副腎 の後 方 に位 置 し,腎 臓 組 織 に 半 ば 埋 れ て存 在 し てい た.累 丸 組 織 の外 表 は 厚 い
結 締 組 織 に覆 はれ,内
部 も間 質 細 胞 を含 む 結 締 組 織 に よつ て大 小 の団 塊 に区 劃 され,主
と
して未 熟 な精 索 及 び精 管 よ りな り,精 子 を含 まず 胚 の 未 分 化 精 巣 に 類 似 して い た(図
版
Fig.6).
Androgenの
注 射 過 程 に 於 て,注
射 鶏 は雄 鶏 の凡 ゆ る 性 挙 動 を現 は した.即 ち,背L
で両 翼 を 叩 い て 関 を つげ(注 射 開始 後13∼16日
目 よ り),他 の雄 鶏 と闘 争 し,距
を使 い,
雌 を呼 び,更
に雌 と交 尾 す る 様 に な つ た(注 射 開 始後17日
目初 め て 雄 叉 は 雌 と同 居 せ し
め て観 察 した が,X25・X31は
既 に 之等 の全 挙 動 を示 し,X32は
交 尾,雌 を呼 ぶ 動 作 は
注 射 後19日
目に初 め て現 はれ た).之
等 の 性 挙 動 は 鶏 冠 の 伸長 の早 い もの ほ ど早 く,叉 強
く現 は れ た.発
現 した性 挙 動 は正 常 雄 鶏 に比 べ 強 力 で あ り,特 に 交 尾欲 は甚 だ 旺盛 で,注
射 開 始 後20日
目以 後 に は,各 注 射 鶏 は5分 間 に3∼5回
連 続 交尾 した.
腹 部マツ サ ー ジに よ る反 応 は 尾翼 を下 げ る 動 作 と生殖 隆 起 の勃 起 現 象 とに分 け る こ とが
出 来 る.こ の 中尾 翼 を 下 げ る動 作 はX25,X31に
於 て,注 射 開 始 後5日
目に殆 ど完 全 な
反 応 と して 現 は れ,X32に
於 ては5日
目に 僅 か に 反 応 し,9日
目以 後 は完 全 な反 応 を 示
す 様 に なつ た.
雄 鶏 の生 殖 隆 起 は 肛 門 開 口の 内側 に 位 置 を占 め て い る為,勃
起現 象 は肛 門 が 開 い て 生 殖
隆 起 が 露 出 した 時 初 め て 実 際 に 観 察 し得 る.X25,X31,X32に
於 て,肛 門 は 夫 々5,12,
8日 目 よ り僅 か に 開 き始 め,夫
々10,12及
び10日
目 よ り比 較 的 大 き く開 く様 に な つ た.
勃 起 した 生 殖 隆 起 の1部,即
ち,生 殖 突 起 及 び 八字 状褶襞 の1部 は10日
臼,14日
「1及
び11日
目にX25,X31,X32に
於 て 初 め て観 察 され,共 後 肛 門 が 次 第 に大 き く開 く様 に
な り,叉 勃 起 の程 度 も増 大 す るに伴 つ て,次 第 に露 出す る部 分 が 増 力ilし
た.X31,X32で
は 夫 々19日
目及び21日
目以 後 に 全 生 殖 隆 起 が観 察 され,特
にX32に
於 ては,19日
口 ・
22日 目及び24日
目の3回,肛
門 が マ ツサ ーヂ に よ り大 き く開 いた 為
膨 人 した淋 巴褶襞
を も観 察 し得 た.X25で
は 肛 門 が 充分 開 か ず ・ 生殖 隆 起 の 全 部 を観 察 し得 なか つ た の で,
マツ
サ ー ジ後 肛 門 両 側 の圧 迫 を 続 け た ま ま肛 門 ヒ壁 を ピ ンセ'ソ トで 挙 ヒし,八 字 状 噛 嚢 の
状 熊 を観 察 した.
Fig. 2. The form of
erected
phallus of
injected
bird.
勃 起 した 生 殖 隆 起 の 形 態 は 第2図 の 如 く,何 れ もll三常 雄 鶏 の 勃 起 程 度 の 少 い 個 体 の も の に 類 似 し て い た(酉Ilr,1950参 照). た だ 生 殖 突 起 は 大 き く(直 径3∼3.5mm),八 字 状 剛 髪 は 比 較 的 小 さ か つ た(3×4.5mm∼2×3.2mm). 勃 起 した 生 殖 隆 起 は 急 速 に 萎 縮 す る こ と な く,肛 門 開llの 閉 鎖 に よ つ て,稍々 萎 縮 し た 生 殖 隆 起 が 排 泄 腔 内 に か え つ た. (2)透 明 液 の 排 出 X25,X31,X32に 於 て,注 射 後7日 目,12日 目 及 び11日月 よ り僅 少 量 の 透 明 液 が 排 出 さ れ る様 に な り,其 後 毎 日排 出 さ れ た が,14日 目 ま で は マ ツ サ ー ジ毎 に 排 出 量 の 多 少 が 認 め られ る だ け で 排 出 量 増 加 の 傾 向 は 認 め ら れ な か つ た.15日
目以 後 は 第3図 の 如 く,透 明 液 採 取 量 は 増 加 の傾向 を 示 し,最 大 量0.18cc(X25),0.086 cc(X3ユ)及 び0.06cc(X32)と な つ た が,22日 目以 後 精 液 採 取 器 に よ つ て 透 明 液 を 採 取 す る様 に な つ た 後 に は 次 第 に 減 少 した.
Fig. 3. Collected transparent fluid from each injected bird.
前述 の 如 く,注 射 開 始後17日 目に正 常 な 交 尾動 作 が観 察 され,精 液 採 取 器 に よる 自然 交
尾状 態 に 於 け る透 明 液採 取 の 可能 性 が予 想 され るに至 つ た の で,直 ち に準 備 に着 手 し,22
日目 よ り精 液 採 取 器 に よ る透 明 液 の採 取 を 試 み た.
精 液 採 取 器 の装 着 に よ り,交 尾動 作 は相 当 阻害 され,交
尾 意 欲 の減 退 も明 か に 認 め られ
た.従
つ て,精 液採 取 器 に よ る透 明液 の採 取 は旺 盛 な る性 欲 に 比 べ,採 取 回数 及び 採 取 量
の減 少が 考 え られ るが,尚
第2表,第3図
の如 く,相 当 多量 の透 明 液 を採 取 し得 た.精 液
採 取 器 に よつ て採 取 され た 透 明 液 は 糞 尿 の 混 入 な く,マ
ツサ ーヂ法 に よつ て得 られ た もの
に比 べ 清 潔 で あつ た.
Table2.Transparentfluidcollectedwlthsemencollector, *parenthesizedno .isuncompletedcopulation.採 取 した 透 明 液 のpH価
の平 均 は,マ
ツサー一
一
ヂ法 に依 つ て得 られ た23例 で は95%の
信
頼 限 界 で&1∼7.5で
あ り,精 液採 取 器 に よつ て得 られ た10例
で は99%の
信 頼 限 界で8.0
∼7.7で あ つ た .
(3)生
殖 隆 起 及び そ の附 属 器 官 の発 達
対 照閹鶏(X26,X28,X30)の
生 殖 隆起(生 殖 突 起 及び 八 字 状褶襞)並
に 淋 巴褶襞 は
何 れ も痕 跡 と して認 め られ,双
眼 顕 微 鏡 に よつ て精 査 す る時,初
め て各 部組 織 の境 界 を 不
明 瞭 なが ら識 別 し得 るにす ぎ な かつ た.X30の
之等 の器 宮 は特 に退 化 し,右 側 八字 状褶襞
と淋 巴褶襞 との境 界 を識 別 し得 な か つ た.之
に反 して,注 射 鶏 の生 殖 隆 起 及び 淋 巴褶襞 は
大 い に 隆起 し,境 界 は 鮮 明 で,完 全 に雄 鶏 の大 さ に 回復 して いた.特
に生 殖 突 起 は正 常 雄
鶏 の もの の大 な る も の に匹 敵 して いた(第4図).組
織 学 的検 査 に よつ て も,注
射 鶏 の 生
殖 隆起 及び 淋 巴褶襞 は正 常 雄 鶏 の組 織 と同様 で あ り,対 照閹鶏 の 組織 とは 異 つ た 点 が 観 ら
れ た.注射鶏
の生 殖 隆 起 に於 け る重 層 扁 平上 皮 の 乳頭 突 起 は対 照鶏 に 比 べ て多 く,粘 膜 下
織 も厚 く,こ の 中に 多 くの 淋 巴空 洞 を も ち叉 血 管 も よ く発 達 して いた(附
図Fig.1,2).
淋 巴褶襞 に 於 け る差 異 は 円柱 状 上 皮 層 に観 られ る.即
ち,注 射 鶏 の 円柱 状.L皮 層 に はllE常
雄 鶏 に於 け る如 く,多 数 の顕 微 鏡 的褶襞 が あ り,細 胞 内 に は 多 くの分 泌顆粒 が存 在 して い
た が,対 照 間鶏 に 於 て は,こ
の微 細 な る褶襞 ・分 泌顆粒 の何 れ も少 な か つ た(附 図Fig.
3,4).
注 射 鶏 に 於 て は脈 管豊 多体(GefassreicherKorper)も
正 常 雄 鶏 の もの の 重 量 ・大 さ
に 回復 し(第3表),色
は 雄鶏 の もの よ り一 層赤 く,濃 赤 色 を呈 して い た.組
織 学 的 検 査
に よれ ば髄 索 は雄 鶏 の もの よ り一 層 よ く発 達 し,組 織 内 の 毛 細 血 管 の 数 も多 く,一…方 繊 維
柱 は 少 くなつ て いた(附 図Fig.5).即
ち,正 常 雄 鶏 の 脈 管 豊 多 体 は 低 倍 率 の観 察 で,そ
の何 れ の視 野 に も相 当 の繊 維 柱 が観 察 され るが,注
射 鶏 の 脈 管 豊 多 体 に は殆 ど大 な る繊 維
柱 は な く,髄 索 よ りな つ て いた.脈
管 豊 多 体 を 囲 む 淋 巴生 成 洞(Lymphbildungsraum)
の結 締 組 織 も注 射 鶏 に於 て よ く発 達 し,白 色 を呈 して い た.
対 照閹鶏 に於 ては,淋
巴生 成 洞 の結 締 組織 は半 透 明 な 白色 で あ り,脈 管 豊 多体 は 淡 桃 色
を 呈 し,肛 門 括 約 筋 ヒに あ る時 に は,そ の存 在 を識 別 す る こ とが 出 来 な か つ た.第1報(
西Ill,1950)に
於 て,殆 ど大 部分 の閹鶏 で そ の存 在 を 肉眼 的 に認 め得 な か つ た の は,こ
の
理 由 に よる もの と推 察 され る.本 実 験 に於 ては,先 ず 内 陰 部動 脈 を求 め,こ の血 管 を肛 門
括 約 筋 よ り剥 離 して行 つ た.斯
様 な方 法 に よつ て,そ の血 管 の先 端 に嚢 状 を な す淋 巴 生 成
洞 の結 締 組 織 と共 に脈 管 豊 多体 を求 め る こ とが 出来 た.注 射 鶏 と比 較 す る為 に,対
照鶏 中
X26,X28の
右 側 脈 管 豊 多体 と 周 囲 の淋 巴 生 成洞 の結 締 組 織 と分 離 し た が,閹鶏
の両 組
織 の境 界は 甚 だ 不 明 瞭 で あ る為
こ の脈 管 豊 多 体 の 重量 は正 確 とは 言 い 得 な い.X30は
分
離 が一 層 困難 と思 は れ た の で 分 離 しな か つ た.対
照閹鶏 の左 側 脈 管豊 多体 の 重量 は何 れ も
両 組 織 を分 離 しな い ま まの合 計重 量 で あ る.注
射 鶏 及 び対 照 鶏 の 左側 脈 管 豊 多体 につ きt
検 定 を行 へ ばt=5.31で
非 常 に有 意 の差 が あ る こ とが解 る.こ の対 照 鶏 の脈 管豊 多体 の重
量 には 淋 巴生 成 洞 の 結 締 組 織 の 重 量 を含 む の で,そ
の有 意 の差 は茜 だ大 き い と言 い得 る.
第1報(-西
山,1950)に
於 て 報告 し た正 常 雄 鶏 の脈 管 豊 多体 と注 射鶏 の脈 管 豊 多体 の重 量
とを比 較 す れ ば,そ の算 術 平 均 は後 者 の方 が 多 いが,t検
定 の結 果 はt;O.703で
両 者 の
間 に有 意 の差 が あ る とは 認 め られ な か つ た.
Fig. 4. Effects of androgen-injection on the forms of phallus and
lymph-fold. Left ; Injected birds, Right ; Control.
W=whitejrudimentary
copulatory organ
Rroundfold
rouoldJJ
第5図
は 注 射 鶏 並 に対 照 鶏 の左 側 脈 管 豊 多 体 で,何
れ も2日 間 ホ ル マ リン固定 した もの
の写 真 で あ る.こ
の 固定 に よ り,注 射 鶏 の脈管 豊 多体 は稚1々色 が槌 せ褐 色 に変 り,対 照 鶏
の もの は 半 透 明 の 淋 巴生 成 洞 の結 締 組 織 は 白色 となつ て い た.
Table 3. The weight of Gefdssreichem
KOrper (mg).
*includes the tissue of Lymphbildungsraum .
Fig 5. Left Gefassreicher
KOssreicher
of injected
birds (upper
column;
X 25, X 31, X 32 from
left to right)
and left
Gefassreicher
KSrper of control
birds which are
ed with the connective
tissue
of Lymphbildungsraum
(lower column;
X 26, X 28, X 30 from left to right). All
specimens
are fixed with formalin.
(4)精
管 及 び精 管 内含 有 液
対 照鶏 の精 管 は著 し く退 化 し,肉 眼 を以 て 追 跡 す る こ とに 困難 を感 じた.之
に 反 して,
注 射 鶏 の精 管 は正 常 雄 鶏 の もの には 及 ば な い が 畢 と体 部 よ り排 泄 腔 まで よ く発 達 し・ 淡 黄
色 の外 観 を 呈 し,精 管 内 に液 体 が貯 え られ てい るの が認 め られ た.精 管 内に貯 溜 して い た
液 は 乳 白 色 を 呈 し,0.01∼0.048ccでP且
価 は 濾 紙 法 で6.4∼6.6で
あつ た.こ の液 の 固
形 体 の主 要 な もの は梢 大 型 の 円形 細 胞 及び そ の変 形 した も の で,精
管 と皮 細 胞 の 剥脱 した
もの と考 え られ る.
精 管 の 開 口部 を な す 乳頭 突 起 は認 め られ ず,排
泄 腔 面 よ り精 管 膨 大 部 の 存在 す る部分 が
僅 か 乍 ら隆 起 して認 め られ た.精
管 に つ い て も排 泄 腔 開 口部 の 閉塞 が 完全 で あ る こ とを確
め た.
論 議 哺 乳 動 物 に 対 す るAndrogenの 効 果,即 ち,弟2次 性 徴,性 挙 動,陰 茎,副 生 殖 腺 に 対 す るAndrogen投 与 の 影 響 を閹鶏 にAndrogenを 与 え た 場 合 の 第2次 性 微,性 挙 動, 生 殖 隆 起 及 び そ の 附 属 器 官 に 対 す る 反 応 と比 較 検 討 す れ ば 次 の 如 くで あ る. (1)第2次 性 徴 に 対 す る 反 応 哺 乳 動 物 に 於 け る第2次 性 徴 もAndrogenの 作 用 に よ り発 現 す る こ とが 知 られ て い る が(ZackermanandParkes,1936,1938;Hamilton, 1937;McCullagh,1939,),鶏 の 第2次 性 徴 は 哺 乳 動 物 に 比 べ 甚 だ 顕 著 で あ り,鶏 冠 に 対 す る 反 応 はAndrogenの 力 価 を 生 物 学 的 に 測 定 す る方 法 と し て 用 い られ て い る.本 実 験 に 於 て,鶏 冠 の伸長 状 熊 を測 定 し た の は 各 実 験 鶏 に 対 し て 投 与 ホ ル モ ン が 如 何 様 に 作 用 し て い る か を知 ら ん が 為 で あ つ た.投 与 ホ ル モ ン の 効 果 が 個 体 に よ り異 る こ とは 既 に 認 め ら れ た と こ ろ で あ るが(LaqueurandDeJongh,1929;Mooreeta1.,1929.),本 実 験 の 結 果 よ り観 る 時,こ の 個 体 的 変 異 は そ の 効 果 が 或 程 度 に 達 した 時(本 実 験 に 於 てL×H= 40cm2)特 に 大 き く現 は れ る も の と推 察 さ れ る. (2)性 挙 動 に 対 す る反 応.Androgenは 去 勢 した 哺 季し動 物 に 対 し て 交 尾 動 作 を 発 現 せ し め る(Shapiro,1937;MooreandPrice,1938).・ 方 鶏 に 於 て も,Androgenの 投 与 に よ り雄 雛,閹鶏 は 種 々の 性 挙 動 を現 は し(Hamilton,1938;Breneman,1938,1939), X雌 鶏 に 於 て も鶏 鳴 を 含 む 雄 鶏 の 性 挙 動 を 現 は す こ と が 知 ら れ て い る(Hamiltonand Golden,1938). 本実験 の 注 射閹鶏 は 注 射 過 程 に 於 て,凡 ゆ る雄 鶏 の 性 挙 動 を 現 は した.注 射 鶏 の 鶏 冠 の 大 さ は 屠 殺 時 に 於 て も 正 常 雄 鶏 の 鶏 冠 に 略 々匹 敵 す る程 度 で あ つ た が,こ の 性 挙 動 は,既 に 記 載 した 如 く,正 常 雄 鶏 よ り強 く,特 に 交 尾 欲 は 甚 だ 強 烈 で あ つ た.斯 く し て 鶏 冠 の 大 さ を 基 準 と し て 考 え る と き,Androgenは 性 挙 動,特 に 交 尾 欲 に 対 して 強 く作 用 す る も の' と考 え られ る.NobleandZitrin(1942)に 依 れ ば,雄 雛 にAndrogenを 投 与 した 場 合 の 性 徴 の 発 現 は 同 時 に 現 は れ る も の で な く,鶏 鳴,闘 争,交 尾 の 順 に 現 は れ る と い は れ る が,本実験 の 如 く閹鶏 にAndrogenを 注 射 し た場合 も 之 に 准 ず る も の の 様 で あ る. (3)陰 茎 及 び 生 殖 隆 起 に 対 す る反 応 ・ 哺 乳 動 物 の 陰 茎 は も つ ぱ らAndrogenの 作 用 を 受 け,去 勢 動 物 の 陰 茎 は こ の ホ ル モ ン に よ つ て 発 達=若 し く は 回 復 し(TschoPP,1935; Korenchevskyetal.,1932,1935,1937.),Oestrogenの 作 用 は 受 け な い と い は れ る (WigodskyandGreene,1940;Korenchevskyetal.,1936,1937.).一 一方 鶏 の 生 殖 隆 起 も早 期 去 勢 に よ る発 達 停.【』 去 勢 に よ る退 化 並 に 雄 化 雌 鶏 の 発 達 に よつ て(増 井 等,1925; 増 井,1935),Androgenの 影 響 を 受 け て い る こ とが 推 察 され て い た が,本 実 験 の 結 果 に よつ て,生 殖 隆 起 は 明 か にAndrogenの 作 用 を 受 け,早 期 去 勢 に よ り退 化 し た 生 殖 隆 起 は 正 常 雄 鶏 の 大 さ まで 回 復 す る こ とが 確 め ら れ た.発 達 し た 生 殖 隆 起 の 形 態 よ り観 れ ば, Androgenは 生 殖 突 起 の 発 達 に 強 く作 用 す る の で は な い か と思 は れ る.Androgenに ょ る生 殖 隆 起 の 回 復 は,去 勢 に よ り退 化 した 哺 乳 動 物 の 陰 茎 組 織 がAndrogenに よ り正 常 状 態 に か え る如 く(WaimmanandShipounoff,1941),正 常 雄 鶏 の 組 織 に 回 復 す る.叉 そ の 生 理 作 用 で あ る 生 殖 隆 起 の 勃 起 現 象 も 実 験 中 反 復 観 察 さ れ た.斯 く し て,生 殖 隆 起 の Androgenに 対 す る 反 応 は 哺 乳 動 物 の 陰 茎 に 対 す る 反 応 と 同 様 で あ る とい い 得 る.
(4)淋 巴褶襞 及 び 脈 管 豊 多 体 に 対 す る 反 応.去 勢 に よ り退 化 縮 少 し た 哺 乳 動 物 の 副 生 殖 腺 はAndrogenに よ つ て,そ の 重 取 を 増 加 叉 は 回 復 す る が(DeaneslyandParkes, 1936;Korenchevskyetal.,1932,1936,1937,1939;Tschopp,1935;Zuckerman andParkes,1938),閹鶏 の 淋 巴褶襞 及 び 脈 管 豊 多 体 も 著 し く退 化 した 状 態 よ り正常 雄 鶏 の 大 さ ・重 量 ま で 回 復 す る こ と が 明 か と な つ た.組 織 学 的 反 応 に 於 て も,去 勢 した 哺 乳 動 物 の 副 生 殖 腺 はAndrogenの 作 用 に よ つ て,腺 組 織 は 発 達 し(Freud,1933;Callowand Deanesly,1935;Moore,1939)細 胞 中 に 含 まれ る 分 泌顆粒 は 再 現 し 正 常 雄 動 物 の 如 く 回 復 す る と言 は れ る が(MooreandPrice,1938),本 実 験 の 注 射閹鶏 に 於 て も,閹鶏 に 比 べ 淋 巴褶襞 に 於 け る 微 少 な る褶襞 の 増 加,褶襞 細 胞 内 の 分 泌顆粒 の 増 加 が あ り,叉 脈 管 豊 多 体 に 於 て は 腺 組 織 と考 え られ る 髄 索 がlE常 雄 鶏 以Eに 発 達 し て い た. 哺 乳 動 物 の 副 生 殖 腺 に 対 す るAndrogenの 作 用 は1乳述 の 如 く,腺 組 織 を 活 動 的 な ら し め る の で あ る が,Oestrogenは 繊 維 組 織 に 作 用 し て そ の 発 達 を 促 し(Freud,1933;Da-vid,FreudandDeJongh,1934;OverholserandNelson,1935),両 ホ ル モ ン の投与 の 割 合 が 適 当 で あ つ た 時,そ の 完 全 な 発 達 を な し得 る と い は れ る(OverholserandNel-son,1935;Korenchevskyetal.,1932,1935,1936,1937;TschoPP,1936).こ の 理 論 を 以 て 本 実 験 の 注 射 鶏 の 脈 管 豊 多体 を 考 察 す る 時,こ の 器 官 に 対 し て は 投 与 ホ ル モ ン の 割 合 はOestrogenが 梢 々 少 き に 過 ぎ た も の の 様 で あ る. 哺 乳 動 物 で はAndrogenに よ つ て 回 復 し た 副 生 殖 腺 よ り,そ の 分 泌 液 が 排 出 され る こ と も 知 ら れ て い る(MooreandGallagher,1930;Shapiro,1937;MooreandPrice, 1938).本 実 験 の 注 射閹鶏 に 於 て も,注 射 期 間 の 前 半 よ り毎 日透 明 液 を 採 取 し得 た.之 等 実 験 鶏 の 精 管 末 端 部 は 確 実 に 閉 塞 され て い た か ら,排 出 され た 透 明 液 は 明 か に 生 殖 隆 起 の 附 属 器 官 の み よ り分 泌 さ れ た も の で あ り,そ の 生 理 作 用 を も 発 現 し得 た こ と を 示 し て い る. 斯 く し て,哺 乳 動 物 の 副 生 殖II泉と本 実 験 に 於 て 問 題 に し て い る 生 殖 隆 起 の 附 属 器 官 と は 形 態,組 織,生 理 の 凡 て の 面 に 於 てAndrogenに 対 し て 同 様 の 反 応 を 示 す ど 言 い 得 る. 生 殖 隆 起 の 勃 起 状 態 並 に 透 明 液 排 出 量 よ り考 察 し て,注 射閹鶏 の 脈 管 豊 多 体 に 於 け る 淋 巴 性 の 液 の 生 成 量 は 正 常 雄 鶏 に 劣 る と観 られ るが,屠 殺 前 の 排 出 量 は 幾 ら か 正 常 雄 鶏 に 近 附 い た も の と 思 は れ る. 採 取 さ れ た 透 明 液 のpH価 は 既 に 報 告 した も の(西 山,1952)よ り も 棺 々 高 く,日.-r) そ の 変 異 が 少 い の は,本 実 験 に 於 て 採 取 さ れ た 透 明 液 に 全 く精 管 内 分 泌 液 を 含 ま な い 為 で あ る と推 定 され る.こ の こ と は 特 に 精 液 採 取 器 に よ つ て 得 ら れ た 清 潔 歳 透 明 液 に 於 て 明 か に 認 め られ る. (5)精 管 に 対 す る 反 応.精 管 も 亦 哺 乳 動 物 に 於 て,重 量 的 に も組 織 的 に もAndro-genに よ つ て 増 加 叉 は 回 復 す る こ と が 知 ら れ て 居 り(Vatna,1930;M、ooreandGalla9-her,1930;Moore,1932),一 一方 鶏 に 於 て も 同 様 の 回 復 が 認 め られ て い る(Callowand Parkes,1935).本 実 験 の 注 射閹鶏 に 於 て も 精 管 は 対 照 鶏 に 比 べ て 著 し い 発 達 を と げ て い た が,正 常 雄 鶏 の 精 管 に は 劣 つ て い た.之 はCallowandParkes(1935)が 推 論 して い る様 に 睾 丸 生 産 物 の 貯 溜 が な い 為 と考 え られ る. 注 射閹鶏 の 精 管 末 端 は 閉 鎖 され て い た の で あ る か ら,こ の 実 験 鶏 の 精 管 内 に 貯 溜 し て い
た 液 は精 管 ・羅,E体 の 同復 と共 に そ れ 等 よ り分 泌 され た 液 で あ る.こ
の液 が酸 性 を示 す こ
とは透 明液 のpH価
が ア ル カ リ性 を示 す の と合 せ て 興 味 あ る と ころ で あ る.
以上
述 べ来 つ た と ころ よ り明 か な る如 く,鶏
の第2次 性 徴 ・性 挙 動 ・精 管 ・生 殖 隆 起 の
Androgenに
対 す る反 応 が 夫 を哺 乳動 物 の第2次 性 微 ・性 挙 動 ・精 管 及び 陰 茎 と同 様 の 反
応 を呈 す るば か りで な く,本 実 験 に 於 て 問 題 と して い る生殖 隆起 の 附 属器 官 も哺 乳 動 物 の
副生 殖 腺 と同 一
・
の反 応 を示 す こ とが 明 か とな つ た.斯
くして,生 殖 隆 起 の 附 属器 官 と哺 乳
動 物 の 副 生 殖 腺 とは 相 似 器 官 で あ る と言 い得 るで あ ろ う.
各 実 験 鶏 の鶏 冠 の大 さ と性 挙 動 発 現 の時 期 及び 強 さ,生 殖 隆 起 及び その 附 属 器 官 の 発 達
の程 度 等 を 比較 検 討 す る とき,鶏
冠 の伸長 に よつ て示 され るAndrogenの
効 果 は,各
実
験 鶏 がAndrogenに
よつ て惹 起 され る種 々の 影 響 に 対 す る効 果 の程 度 を示 す もの で あ る
とい うこ とが 推 察 され る.従
つ て,各 実 験 鶏 の生殖 隆 起 並 に そ の附 属 器 官 も亦 夫 々 の実 験
鶏 の鶏 冠 伸 長 に相 応 して発 達 して きた も の と考 え られ る.然
し乍 ら,鶏 冠 の大 さを基 準 と
して 考 え る時,性 挙 動 の発 現 の 強 さ,生 殖 隆 起並 に そ の附 属 器 官 の発 達 の程 度 或 は透 明 液
排 出 量 の 如 き各 効 果 の問 に は 差 異あ る こ と も同様 に認 め られ る.
対 照 鶏X26の
み は再 生 睾 丸 の為,鶏 冠 ・生 殖 隆 起等 につ い て他 の2羽
よ り幾 らか の発
達 が 観 られ た が,術
そ の発 達 は 微 々た る もの で あ り,生 殖 隆起 等 の 回 復 を な さ しむ るに は
相 当 多量 の ホ ル モ ンを要 す る もの と考 え られ る.術
こ の再 生睾 丸 は鶏 冠 発 達 開 始 の時 期,
再 生 の 位 置 ・状 態 並 に そ の 組 織 状 況 よ り考 察 して,HookerandCunningham(1938)
の 報告 した 様 な 完 全 去 勢 後 に 発 生 した 再 生睾丸 で あ る と思 は れ る.
結
論
(1♪
退 化 縮 少 した閹鶏 の生 殖 隆 起 の 附 属器 官 はAndrogen・Oestrogenの
同 時 注 射
に よ り,そ のπ 量 を 回復 し,腺 組 織 は 発 遠 し,亦 そ の 生理 作 用 の発 現 の結 果 と して 透 明 液
を排1ilした.従 つ て 生殖 隆 起 の附 属 器 官 に対 す るAndrogenの
作 用 は哺 乳動 物 の 副生 殖
腺 に 対 す る作 用 と同様 で あ る.
(2)鶏
の 第2次 性徴 ・性 挙動 ・生 殖 隆 起 並 に精 管 はAndrogenの
投 与 に よつ て形 態
的 ・組 織 的 並 に機 能 的 に 回復 した.
(3)生
殖 隆 起 の附 属 器 官 と哺 乳 動 物 の 副 生殖 腺 とは 互 に相 似 器 官 で あ る と考 え られ る.
引
用
文
献
1. ) Brenernan, W. R., 1938, Endocr., 23 ; 44. 2 )--- , 1939, Ibid., 24 ; 55.3 ) Burrows, W. H. and Quinn, J. P., 1937, Poult. Sci., 16 ; 19. 4 ) Callow, R. K. and Deanesly, R., 1935, Biochem. J., 29 ; 1424. 5 ) --- - , and Parkes, A. S., 1935, Ibid., 29 ; 1414. 6 ) David, K., Freud, and DeJongh, S. E., 1934, Ibid., 28 ; 1360. 7 ) Deanesly, R. and Parkes, A. S., 1936, Ibid., 30 ; 291.
9)Hamilton,J.B.,1937,Endocr.,21;649and744. 10)_.._..._....一..一,1938,Ibid.,23;53. 11)Hamilton,J.B,andGolden,W.R.C.,1939,Ibid.,25;737. 12)Hooker,C.W.andCunningham,B.,1938,Anat.Rec.,72;371. 13)Korenchevsky,V.andDennison,M.,1937,Biochem.J.31;862. 14),-andBrovsin,1,,1936,Ibid.,30;558. 15)・ ・...一.一一一一一一,一 一一 一andEldridge,M.,1937,Ibid。,31;475・ 16),.一 一 一一一一 一一一andKohn-Speyer,A.,1932,Ibid.,26;2097. 17)一 一 一 一 一一一,一 一一一一一一一T-一 一andSimpson,S.L,1935,Ibid.,29;2534・ 18).,Hall,K,Burbank,R.,andRoss,A,1939,Ibid.,33;36. 19)Laqueur,E.andDeJongh,S.E.,1929,J.Pharm.&exp.Therap.,36;1。 20)McCullagh,E.P.,1939,J.Amer.Med.Assoc.,112;1037. 21)増 井 清,1935,動 物 誌47,535. 22)一 一一・一一… ・,橋 本 重 郎,大 野 勇,1925,日 畜 会 報,1;153. 23)Moore,C.R.,1932,"SexandInternalSecretions"ed.byAllen,E.,Baltimore. 24)一 一 一一 …-andGallagher,T.F.,1930,Almer.J.Anat.,45;39. 25)and-一.一 一・・.一一一・,1930,J.Pharm.&exp.Therap.,40;341. 26)一 一_一 一,一 一一一 一一andKoch,F.C.,1929,Endocr.,13;367. 27)一.__...一_、andPrice,D.,1938,Anat.Rec.,71;59. 28)四 山 久 古,1950,九 大 学 芸,12;27. 29)_,1951,Ibid,13;373. 30)_,1951,Ibid,13;377. 31),1952,Ibid,12,269. 32)_.._.__,1952,Ibid,12;277. 33)._,1952,Ibid,12;283. 34)Noble,G.K.andZitrin,A.E.,1942,Endocr.,30;327(Burrows,H.,``BiologricalAct-ionsofSexHormones"Calnbridge,P.167). 35)Overholser,M.D.andNelson,W.0.,1935,Anat.Rec,,62;247. 36)Parker,J.E.,1939,Poult.Sci.,18;455. 37)Shapiro,H.A.,1937,Nature,139;588. 38)TschoPP,E.,1935,Ibid.,136;258. 39)Vatna,S.,1930,Bio1.Bull.,58;322. 40)Waimman,P.andShipounoff,G.C.,1941,Endocr.,29;975. 41)Wigodsky,H.S.andGreene,R.R.,1940,Ibid.,26;1078。 42)Zuckerman,S.andParkes,A.S.,1936,Lancet,i,242. 43)一.__..・__一 一一一_一一一_and..一.,1938,J.Anat,72;277.