Kyushu University Institutional Repository
An Analysis of “Activity Record of Kominkan in Iida city” : As the Target of Post Foundation of Regional Management Organization
八木, 信一
九州大学大学院経済学研究院 : 教授
荻野, 亮吾
佐賀大学大学院学校教育学研究科 : 准教授
https://doi.org/10.15017/4743326
出版情報:經濟學研究. 88 (4), pp.69-135, 2021-12-25. Society of Political Economy, Kyushu University
バージョン:
権利関係:
はじめに
長野県飯田市は、住民を主体としたまちづくりと、そのなかでの公民館の役割が注目されてきた地 域である。飯田市の公民館については、これまで歴史、制度、そしてこれらを通したまちづくりがそ れぞれ注目されてきた。
このうち歴史については、度重なる合併を経ながらも旧町村に存在していた公民館を存続させるだ けでなく、昭和の大合併以前の旧市(飯田市では「丘の上」と呼ばれる)にも小学校区単位で地区公 民館を設けてきた
1)。制度については、住民の手によって運営される分館を土台としながら、地区公 民館において分館の役員などをはじめとした専門委員会の活動と、それらの活動に対して市職員であ る公民館主事による支援が行われてきた
2)。そして、これらを通したまちづくりについては、飯田市 を代表するイベントである人形劇フェスタだけでなく、最近では再生可能エネルギーを例とした幅広 い分野から言及されている
3)。
このような飯田市の公民館をめぐっては、2007年度に大きな変化が起こった。具体的には、地方自 治法に基づいて地域自治組織を設立し、これを構成する法定組織としての地域自治区と任意組織とし てのまちづくり委員会のそれぞれに、地区公民館が位置づけられることになった
4)。このような再編 の過程では、連合自治会と地区公民館それぞれの関係者の間で、社会教育機関としての公民館の位置 づけや、まちづくりにおける公民館の役割などをめぐって論争が起こったが
5)、再編を経て学習など を通して地区内外のまちづくりに関わる様々な主体をつなぐ、いわゆるプラットフォームとしての役 割を期待されたところもあった
6)。
『飯田市公民館活動記録』の分析
― 地域自治組織設立後を対象として ―
八 木 信 一 荻 野 亮 吾
1 ) 飯田市の公民館の歴史については、飯田市公民館(1994)や飯田市歴史研究所(2013)を参照。
2 ) 飯田市の公民館の制度については、本稿で取り上げる『飯田市公民館活動記録』のなかにもその概要が示されている。
また、姉崎ほか(2002)も参照。
3 ) 人形劇フェスタに関する論考は多数あるが、まとまった最近のものとしては松崎(2019)がある。また、再生可能エ ネルギーの取り組みにおいて、公民館との関係を指摘しているものとしては、諸富(2015)や八木(2015)を参照。
4 ) なお、上村と南信濃の2地区では、これに先行して2005年10月1日より、合併特例法に基づく地域自治組織が設立さ れた。その後の2010年10月1日より、この2地区についても他の18地区と同じく、地方自治法に基づく地域自治組織へ と移行した。飯田市の地域自治組織については、三浦(2017)や荻野ほか(2021)を参照。
5 ) 論争とその前後の動向については、信濃毎日新聞社編集局(2007)を参照。また、当時の飯田市公民館長会会長とし ての立場からの論考としては、木下(2012)がある。
それでは、地域自治組織が設立されて10年以上が経過した今、公民館の活動実態はどのように変化 したのだろうか。このことについて、本稿では各地区公民館の活動実績を年度ごとに把握できる『飯 田市公民館活動記録』をもとに、変化の内容を具体的に分析する。本稿の概要は、以下の通りである。
第1節では、本稿で取り上げる資料である『飯田市公民館活動記録』について紹介する。第2節で は、この記録のなかで中心を占める、地区公民館の活動実績を素材とした分析視点と、分析対象とす る7地区(丸山、東野、山本、上久堅、千代、上村、および南信濃)に関する特徴を述べる。そのう えで第3節では学級・講座の分析を、また第4節では専門委員会の分析をそれぞれ行う。そして第5 節では、学級・講座と専門委員会との関係を分析する。
第1節 『飯田市公民館活動記録』について
『飯田市公民館活動記録』は、飯田市の公民館活動のうち市公民館事業、地区公民館事業、およびブ ロック事業
7)を対象とした記録であり、分館事業に関する情報も一部記載されている。もともとこの 記録は、毎年2月に開催される飯田市公民館大会において参考資料として配布されていたが
8)、直近 の数年度分については飯田市公民館のホームページからも入手できるようになった
9)。
表1には、本稿が対象期間とする2007年度から2019年度における、『飯田市公民館活動記録』の目次 を示している
10)。基本的には、(1)年度ごとの基本方針とそれに基づいた事業計画、(2)飯田市の公 民館に関する概要(あゆみと、前述した地区公民館や分館、および後述する専門委員会によって特徴 づけられる運営組織や活動の概要など)、(3)地区公民館などの活動実績、(4)予算や施設の現状なら びに利用状況、(5)公民館の略年表と上記した飯田市公民館大会の経過、これら5つの枠組みから構 成されている。
なお、本稿の対象期間における目次の変化としては、次のようなものがあった。まず後述するよう に、市公民館条例施行規則の一部改正によって、専門委員会の設置内容が弾力化された2007年度から、
「地区公民館の専門委員会設置状況」が加えられた。次に、2009年度から2010年度にかけて項目の追 加、変更、および除外が行われた。具体的には、2009年度から(3)の整理表として、学級・講座と専 門委員会などの事業に関する一覧表が、それぞれ掲載されるようになった
11)。また、この年度のみ、
地域自治組織に関連した項目が立てられた
12)。そして翌2010年度では、上記した構成のうち(2)の概
6 ) 牧野(2019)、114~115ページ。
7 ) ブロック事業とは、地区公民館単位を基本として、隣接する地区や中学校区などつながりの強い地域同士で構成され た、ブロック単位で行われる事業のことである。飯田市では2019年度時点で、Aブロック(地区公民館名:橋北、橋南、
羽場、丸山、東野)、Bブロック(同:座光寺、山本、伊賀良、鼎、上郷)、Cブロック(同:松尾、下久堅、竜丘、上 村、南信濃)、Dブロック(同:上久堅、千代、龍江、川路、三穂)の4つのブロックがある。
8 ) 本稿の作成にあたって、飯田市公民館が保管している1991(平成3)年度以降の『飯田市公民館活動記録』の提供を 受けたが、このうち1993(平成5)年度までのものには目次の上に「参考資料」という文言が付されていた。
9 ) 飯田市公民館のホームページ(https://www.city.iida.lg.jp/soshiki/40/)には、本稿執筆時点(2021年9月)において、
2014(平成26)年度から2019(令和元)年度までのものが閲覧できる。
10) 本稿に掲載しているすべての表の出所は、『飯田市公民館活動記録』(2007~2019年度)であるので、表中での記載は省 略している。
表1 『飯田市公民館活動記録』の目次構成
白抜き文字は新規 グレー配色は項目変更等 2007(平成19) 年度2008(平成20) 年度2009(平成21) 年度2010(平成22) 年度2011(平成23) 年度2012(平成24) 年度2013(平成25) 年度2014(平成26) 年度2015(平成27) 年度2016(平成28) 年度2017(平成29) 年度2018(平成30) 年度2019(令和元) 年度 平成19年度飯田市公民館基本方 針
平成20年度飯田
市公民館基本方 針
平成21年度飯田
市公民館基本方 針
平成22年度飯田
市公民館基本方 針
平成23年度飯田
市公民館基本方 針
平成24年度飯田
市公民館基本方 針
平成25年度飯田
市公民館基本方 針
平成26年度飯田
市公民館基本方 針
平成27年度飯田
市公民館基本方 針
平成28年度飯田
市公民館基本方 針
平成29年度飯田
市公民館基本方 針
平成30年度飯田
市公民館基本方 針
2019年度 飯田 市の公民館活動 基本方針 平成19年度飯田 市公民館の事業 計画
平成20年度飯田 市公民館の事業 計画
平成21年度飯田 市公民館の事業 計画
平成22年度飯田 市公民館の事業 計画
平成23年度飯田 市公民館の事業 計画
平成24年度飯田 市公民館の事業 計画
平成25年度飯田 市公民館の事業 計画
平成26年度飯田 市公民館の事業 計画
平成27年度飯田 市公民館の事業 計画
平成28年度飯田 市公民館の事業 計画
平成29年度飯田 市公民館の事業 計画
平成30年度飯田 市公民館の事業 計画
2019年度 飯田 市の公民館活動 事業計画 飯田市公民館の 構造飯田市公民館の 構造飯田市公民館の 構造 飯田市公民館の 運営組織飯田市公民館の 運営組織飯田市公民館の 運営組織飯田市公民館のあ ゆみ・運営組織飯田市公民館のあ ゆみ・運営組織飯田市公民館のあ ゆみ・運営組織飯田市公民館のあ ゆみ・運営組織飯田市公民館のあ ゆみ・運営組織飯田市公民館のあ ゆみ・運営組織飯田市公民館のあ ゆみ・運営組織飯田市公民館のあ ゆみ・運営組織飯田市公民館のあ ゆみ・運営組織飯田市公民館のあ ゆみ・運営組織 飯田市公民館の活 動・公民館事業飯田市公民館の 活動・事業飯田市公民館の 活動・事業飯田市公民館の 活動・事業飯田市公民館の 活動・事業飯田市公民館の 活動・事業飯田市公民館の 活動・事業飯田市公民館の 活動・事業飯田市公民館の 活動・事業飯田市公民館の 活動・事業 飯田市公民館の 運営組織図飯田市公民館の 運営組織図飯田市公民館の 運営組織図飯田市公民館の 運営組織図飯田市公民館の 運営組織図飯田市公民館の 運営組織図飯田市公民館の 運営組織図飯田市公民館の 運営組織図飯田市公民館の 運営組織図飯田市公民館の 運営組織図 地区公民館の専門 委員会設置状況地区公民館の専門 委員会設置状況地区公民館の専門 委員会設置状況地区公民館の専門 委員会設置状況地区公民館の専門 委員会設置状況地区公民館の専門 委員会設置状況地区公民館の専門 委員会設置状況地区公民館の専門 委員会設置状況地区公民館の専門 委員会設置状況地区公民館の専門 委員会設置状況地区公民館の専門 委員会設置状況地区公民館の専門 委員会設置状況地区公民館の専門 委員会設置状況 飯田市の分館飯田市の分館飯田市の分館飯田市の分館飯田市の分館飯田市の分館飯田市の分館飯田市の分館飯田市の分館飯田市の分館飯田市の分館飯田市の分館飯田市の分館 飯田市公民館の 施設の現状飯田市公民館の 施設の現状飯田市公民館の 施設の現状公民館の予算及び 施設の現状一覧表公民館の予算及び 施設の現状一覧表公民館の予算及び 施設の現状一覧表公民館の予算及び 施設の現状一覧表公民館の予算及び 施設の現状一覧表公民館の予算及び 施設の現状一覧表公民館の予算及び 施設の現状一覧表公民館の予算及び 施設の現状一覧表公民館の予算及び 施設の現状一覧表公民館の予算及び 施設の現状一覧表 学級・講座実施 状況一覧表学級・講座実施 状況一覧表学級・講座実施 状況一覧表学級・講座実施 状況一覧表学級・講座実施 状況一覧表学級・講座実施 状況一覧表学級・講座実施 状況一覧表学級・講座実施 状況一覧表学級・講座実施 状況一覧表学級・講座実施 状況一覧表学級・講座実施 状況一覧表
専門委員会等事 業一覧表 専門委員会等事 業一覧表 専門委員会等事 業一覧表 専門委員会等事 業一覧表 専門委員会等事 業一覧表 専門委員会等事 業一覧表 専門委員会等事 業一覧表 専門委員会等事 業一覧表 専門委員会等事 業一覧表 専門委員会等事 業一覧表 専門委員会等事 業一覧表
各公民館事業報告各公民館事業報告各公民館事業報告各公民館事業報告各公民館事業報告各公民館事業報告各公民館事業報告各公民館事業報告各公民館事業報告各公民館事業報告各公民館事業報告各公民館事業報告各公民館事業報告 平成19年度公民 館予算一覧表平成20年度公民 館予算一覧表平成21年度公民 館予算一覧表(公民館の予算 及び施設
の現状 一覧表)
(公民館の予算 及び施設
の現状 一覧表)
(公民館の予算 及び施設
の現状 一覧表)
(公民館の予算 及び施設
の現状 一覧表)
(公民館の予算 及び施設
の現状 一覧表)
(公民館の予算 及び施設
の現状 一覧表)
(公民館の予算 及び施設
の現状 一覧表)
(公民館の予算 及び施設
の現状 一覧表)
(公民館の予算 及び施設
の現状 一覧表)
(公民館の予算 及び施設
の現状 一覧表)
飯田市各地区公 民館利用状況 飯田市各地区公 民館利用状況 飯田市各地区公 民館利用状況 飯田市各地区公 民館利用状況 飯田市各地区公 民館利用状況 飯田市各地区公 民館利用状況 飯田市各地区公 民館利用状況 飯田市各地区公 民館利用状況 飯田市各地区公 民館利用状況 飯田市各地区公 民館利用状況 飯田市各地区公 民館利用状況 飯田市各地区公 民館利用状況 飯田市各地区公 民館利用状況
飯田市の公民館 略年表飯田市の公民館 略年表飯田市の公民館 略年表飯田市の公民館 略年表飯田市の公民館 略年表飯田市の公民館 略年表飯田市の公民館 略年表飯田市の公民館 略年表飯田市の公民館 略年表飯田市の公民館 略年表飯田市の公民館 略年表飯田市の公民館 略年表飯田市の公民館 略年表 飯田市公民館大 会の経過 飯田市公民館大 会の経過 飯田市公民館大 会の経過 飯田市公民館大 会の経過 飯田市公民館大 会の経過 飯田市公民館大 会の経過 飯田市公民館大 会の経過 飯田市公民館大 会の経過 飯田市公民館大 会の経過 飯田市公民館大 会の経過 飯田市公民館大 会の経過 飯田市公民館大 会の経過 飯田市公民館大 会の経過
平成19年度飯田
市教育功労者名 簿
平成20年度飯田
市教育功労者名 簿
平成21年度飯田
市教育功労者受 賞者名簿 平成21年度県公
運協公民館活動 推進功労者表彰 受賞者名簿
平成19年度公民
館運営審議委員 名簿
・公民館職 員名簿
平成20年度公民
館運営審議委員 名簿
・公民館職 員名簿
平成21年度公民
館運営審議委員 名簿
・公民館職 員名簿 地域自治組織の 導入と公民館
要と(4)の予算や施設関連について、項目の分割や統合が施された。さらに、公民館活動に関する功 労者名簿、公民館運営審議委員名簿、および公民館職員名簿がそれぞれ除外された。
第2節 分析視点と対象地区
本稿では、このなかで(3)を構成する「各公民館事業報告」に記載されている活動実績のうち、地 区公民館を対象として分析を行う
13)。この「各公民館事業報告」では、学級・講座と専門委員会に分 けて各年度における活動実績が記載されているが、このような分類にはこれまでの飯田市の公民館の 歴史が反映されている。
設立当初において飯田市の公民館は事業部制を採っていたが
14)、度重なる合併を経るなかで公民館 の組織と事業内容に変革の動きが起こり
15)、1968年に制定された市公民館条例施行規則によって、飯 田市の公民館の特徴となる専門委員会が設けられることになった。具体的には、専門委員会は文化委 員会、体育委員会、および広報委員会で構成すること
16)、および専門委員会の総数は45人を上限とす ること
17)がそれぞれ定められた。また、これらと併せるかたちで、事業部制のうち教養部などが学級・
講座として分類されることになった
18)。
学級・講座と専門委員会の役割分担については、どのようになっているのだろうか。まず、学級・
講座については、「乳幼児やその保護者を対象としたものから高齢者の生き甲斐づくりまで全ての世代 を対象にしたものであり、学習内容も個人的な教養を高めるものから地域課題や生活課題を捉えた組 織的な学習活動まで、幅広い学習を展開しています
19)」とされている。つまり、対象年齢と内容に縛
11) なお、これらの一覧表の記載と地区公民館ごとの活動実績のそれとの間に齟齬があった場合、本稿では後者の内容に 沿った整理と分析を行った。
12) この項目では、「1 地域自治組織の導入と公民館」および「2 地域自治組織導入による公民館の主な変更点」が記 載されていた。このうち1では、前述したような議論を経て、「元々、地域住民が主体となり、地域に根を張って運営さ れてきた公民館であり、状況により見直しを検討することを踏まえながら、行政の『社会教育機関』であるという側面 と『地域の団体』という2つの機能をもって地域自治組織にかかわっていくこととなりました。」と説明されている。ま た、2では変更点として、地区公民館ごとの運営審議会の廃止(地域協議会への役割の移行)、市公民館条例施行規則の 一部改正による専門委員会設置の弾力化、公民館委員報酬の廃止(報酬額や支給の有無は各地区の判断へ)、および分館 補助金と専門委員会事業費の一括交付金(飯田市パワーアップ地域交付金)への移行、これらが取り上げられている。い ずれも、地域自治組織の設立によって飯田市の公民館がどのように変化していくのかについて、重要な内容が含まれて いた。
13) 「各公民館事業報告」には、注7)で説明したブロック事業も掲載されているが、これらは本稿の対象外とした。
14) 事業部の内容は各地区で異なっていたが、初期においては総務部、教養部、体育部、産業部、図書部の設置が多かっ た。詳しくは、飯田市公民館(1994)を参照。
15) 木下(2012)、49ページ。
16) これ以外に、分館長、分館主事、および各専門委員会の正副委員長で構成された、企画委員会の設置も認められてい た。木下(2012)、49ページ。
17) このように上限が定められていた理由として、専門委員(公民館委員)に対する報酬支給のための予算編成の兼ね合 いがあった。注12)で述べたように、その後において公民館委員報酬の廃止とともに、専門委員会の設置内容が弾力化 された。元飯田市公民館副館長の木下巨一氏からの情報提供による(2021年9月17日)。
18) なお、学級・講座に類する名称は、事業部制の時代においても教養部などの事業内容に付けられていた。「当公民館(竜 丘公民館、筆者追記)は、逸早く公民館組織の筆頭に『教養部』を位置づけ、事業内容に『講座・講演会・座談会』を 揚げていた。」(木下(2012)、106ページより引用)。
19) 『飯田市公民館活動記録』(令和元年度)、6ページより引用。
りが少ない幅広い学習が、学級・講座の特徴になっていると言える。
そのうえで、これらの学級・講座の担い手については、「実施にあたっては、公民館職員が中心と なって開催するものや、運営委員会や実行委員会などを組織し市民参画のもと開催するものなど形態 は様々ですが、学習や交流の機会を通じて主体的な人材の育成に寄与しています
20)」としている。こ こで公民館職員とは、地区公民館においては公民館主事が中心となる。つまり学級・講座では、公民 館主事が企画や実施を担う場合もあれば、公民館活動に関わる住民などが運営委員会や実行委員会な どを組織し、企画や実施が行われる場合もある。もちろん、後者の動きに対して公民館主事が支援す る場面も少なくない。以上のことから、学級・講座においては公民館主事の役割が大きいと言える。
これに対して専門委員会の活動については、「住民自らがアイデアを出し合い、それぞれの地域の特 色を活かした様々な事業を展開しています。専門委員会は公民館運営の母体であり、住民が事業の企 画段階から主体的に関わることにより地域を知り、地域を担う人材育成の場として機能しています
21)」 としている。ここから、専門委員会の活動に関する企画や実施は専門委員会が全面的に担い、そのな かでの公民館主事の役割は、学級・講座と比べて支援の側面がより強くなることが分かる。
さて、その専門委員会をめぐっては、地域自治組織が設立される前年にあたる2006年に行われた市 公民館条例施行規則の一部改正によって、専門委員会の名称、専門委員会の委員の人数、専門委員会 の役職および専門委員会の委員の任期については、いずれも地区公民館の公民館長が定めることとなっ た。これを受けて、前述した3つの専門委員会を中心としながらも、地区によっては新たに常設の専 門委員会を立ち上げたり、他方で少子高齢化が進むなか、担い手の確保が難しくなったことを受けて、
委員会の統廃合を進めたりしてきた。なお、この改正以前から、特定の専門委員会に位置づけないか たちで行われてきた事業も存在してきた。このことを踏まえて、本稿の以下では専門委員会「等」と いう名称を用いることにする。
以上のような学級・講座と専門委員会等の2つの分類を用いたうえで、本稿では対象地区として丸 山、東野、山本、上久堅、千代、上村、および南信濃の7地区を取り上げる
22)。このうち丸山と東野 は、昭和の大合併以前の旧市にあたる「丘の上」の地区である。山本は、中央自動車道と三遠南信自 動車道のインターチェンジがあり、飯田市のなかでも企業立地が進んできた地区の1つである。また、
満蒙開拓団に由来する戦後中国帰国者などの外国籍の住民も多い、市営二ツ山団地を抱えている。
上久堅と千代はともに天竜川の東部(竜東地区)に位置し、飯田市のなかでも中山間地域に分類さ れている
23)。これらの地区では、飯田市のなかでも特徴のある住民主体のまちづくりが展開され、公
20) 同上。
21) 同上。
22) 筆者たちは、本稿で取り上げる7地区のまちづくり委員会、および公民館の関係者に対するヒアリング調査をこれま で行っており、さらに東野と南信濃以外については、調査結果を踏まえた論文を公表してきた。丸山、山本、および上 久堅を対象とした飯田市の地域自治組織全般に関するものとして八木ほか(2017)を、山本と上村を対象とした再生可 能エネルギー政策に関するものとして八木ほか(2019)を、上久堅と千代を対象とした少子高齢化対策に関するものと して荻野ほか(2021)を、それぞれ参照。
23) 『第2次飯田市中山間地域振興計画』(対象期間:2019~2028年度)では、対象地区となる中山間地域についてこれら2 地区のほか、下久堅、龍江、三穂、上村、南信濃が挙げられている。
民館についても分館での活動が活発に行われてきた。最後の上村と南信濃は、2005年に飯田市へ編入 合併した地区であり、合併以前における行政中心のまちづくりからの転換が試みられ、そのなかで(地 区)公民館の役割も大きく変わってきた。
本稿では、以上の7地区を対象にして、地域自治組織導入後の2007年度から2019年度までの学級・
講座、および専門委員会等事業の分析を行う。なお、対象期間を2019年度までとしたのは、本稿執筆 時点(2021年9月)で入手できる最新のデータであるという点に加えて、2020年度の学級・講座や専 門委員会等による事業においては、新型コロナウイルス感染症の影響が少なくないことが予想され、
本稿と異なる観点からの分析が必要になると考えたことによる。
第3節 学級・講座に着目した分析
1 学級・講座数の推移について
付表1から付表7(本稿末尾)には、対象期間における7地区の学級・講座の推移を示している。
これらをもとにして、本節では地域自治組織設立後における学級・講座に着目した分析を行う。
まず、各地区の学級・講座の総数の推移から見ていく。表2にその結果を示しているが、ここで白 抜きの数字は対象期間のなかで学級・講座数が最多となったところを、またグレーで配色した数字は 最少となったところを、それぞれ表している。まず全地区の合計を見ると、2012年度が最多の75講座 であり、2013・2014年度も70講座を超えていたが、その後は右肩下がりとなり、対象期間の最後にあ たる2019年度は、47講座で最少となっている。
次に、学級・講座数を地区別に見ていくと、地区ごとに相当の差が見られる。最少の東野は平均が 5講座程度で、最多と最少の差も4と小さくなっている。これと比較すると、山本、上久堅、南信濃 は平均で11講座を超えており、2倍以上の開きがある。年度ごとの増減を見ると、最多・最小につい ては各地区で時期のばらつきがあるが、2008年度は東野、上久堅、千代で、また2019年度は丸山、山 本、上久堅、上村で、それぞれ最少となっている。さらに、南信濃の2007年度については21講座と突 出して多いが、それ以降は他地区と同じ水準となっている。
これと別に、飯田市公民館の示す8つの領域別に学級・講座数を整理したものが、表3である。こ 表2 学級・講座数の推移
学級・講座の総数 2007年度 2008 年度 2009
年度 2010 年度 2011
年度 2012 年度 2013
年度 2014 年度 2015
年度 2016 年度 2017
年度 2018 年度 2019
年度 平均学級・
講座数 最多-最少 丸山 6 6 8 10 11 11 11 12 12 7 6 5 3 8.3 9 東野 6 4 8 6 5 4 4 5 5 5 5 5 5 5.2 4 山本 11 11 11 12 12 14 15 13 10 7 10 10 7 11.0 8 上久堅 13 10 10 13 11 11 10 10 11 12 13 13 10 11.3 3 千代 4 4 5 5 9 11 9 8 8 5 4 5 6 6.4 7 上村 7 11 13 7 11 13 12 10 7 7 8 7 6 9.2 7 南信濃 21 10 13 11 10 11 11 13 12 10 10 9 10 11.6 12 学級・講座数計 68 56 68 64 69 75 72 71 65 53 56 54 47
こでいう8つの領域とは、乳幼児教育支援事業(以下、乳幼児教育)、家庭教育支援事業(家庭教育)、
多文化共生事業(多文化共生)、学習交流推進事業(学習交流推進)、郷土学習支援事業(郷土学習)、
地域芸術文化振興事業(地域芸術文化)、健康学習推進事業(健康学習)、環境学習支援事業(環境学 習)の8つを指す。この区分けは、飯田市の「第5次基本構想基本計画」(2007年度)に則った飯田市 公民館による分類であり、2009年度以降、『飯田市公民館活動記録』に一覧表が掲載されているもので ある
24)。この表では、対象期間に各地区で開催された学級・講座が上記した8つの領域のどこに分類 されるか、その数を示している。なおこの分類では、単年度の学級・講座も、10年以上継続されてい る学級・講座も、同じ1つとして計上される。また、同じ学級・講座でも年度によって分類が異なる 場合もあるため、あくまでも全体の傾向を把握するためのものである。この表からは、各地区公民館 がどの領域の学級・講座を重視しているかを読み取ることができる。
各地区の学級・講座数の合計を見ると、学習交流推進が最も多く、次いで郷土学習となっており、
この2つの領域に公民館が重点を置いてきたことが分かる。ただし、郷土学習に関する学級・講座の 実施状況に関しては地区ごとに大きな開きがある。それに続いて、家庭教育、環境学習、健康学習が 同程度の数字となっている。最少は乳幼児教育で全地区合わせても12、地域芸術文化もそれに次いで 13と少ない。各地区の傾向もこれと類似し、学習交流推進が南信濃を除く6地区で最多になっている。
また、上久堅と南信濃では郷土学習が最多となっている。なお、最少の領域については地区ごとにば らつきがあり、傾向を読み取ることは難しい。
2 新規の学級・講座について
ここまで、学級・講座数の推移と領域ごとの内訳を見てきた。これらの変化は大きく分けて、新規 の学級・講座による増加と継続してきた学級・講座の廃止に分けることができる。このうち、新規の 学級・講座数は、公民館が住民のニーズに応じて、学習を組織化していくことにどの程度積極的なの かを測る上で、重要な指標である。
表4は、対象期間における7地区の新規の学級・講座数の推移を見たものである
25)。新規の学級・
24) ただし、一覧表には区分けがなされていない年度もあり、継続性を鑑みて筆者が補った。また、2007・2008年度につい ては2009年度の分類に従って、継続している学級・講座のみを遡って分類している。
表3 領域ごとの学級・講座数
領域別学級・講座数 乳幼児教育 家庭教育 多文化共生 郷土学習 地域芸術文化 学習交流推進 健康学習 環境学習
丸山 3 3 3 1 2 8 2 2
東野 1 3 0 1 1 4 3 3
山本 2 6 4 2 0 12 3 3
上久堅 1 6 2 7 4 7 3 2
千代 2 2 4 1 2 9 2 1
上村 1 1 1 6 2 11 0 5
南信濃 2 1 5 11 2 7 8 6
講座・学級数計 12 22 19 29 13 58 21 22
講座がゼロだった箇所は、グレーで配色をしている。新規の学級・講座数の合計を見ると、地域自治 組織が設立された直後の2008年度が20講座、2009年度が26講座と多くなっているが、これは後述する 上村と南信濃の新規の学級・講座数の多さによるところが大きい。2010年度以降は、ゆるやかに新規 の学級・講座数は減少し、2014年度以降は基本的に1桁で、最少は2016年度の1つとなっている。学 級・講座数全体の減少のペースに比べてもこの傾向は顕著であり、2008年度は4割近くを占めていた 新規の学級・講座数は、2019年度では1割強まで減少している。
次に地区ごとの新規の学級・講座数を対象期間でまとめて見てみると、最少は東野の5(1年平均 で0.4)、最多は南信濃の38(同じく3.2)となっている。また、対象期間を2008~2013年度と2014~2019 年度の2期に分けて比較を行うと、千代を除く6地区で、2014年度以降の新規の学級・講座の開設数 が減少している傾向が読み取れる。
特徴的な傾向を見せる地区として、第1に地域自治組織設立後において、新規学級・講座の開催数 が多くなっている上村と南信濃が挙げられる。具体的には、上村では2008・2009年度において、南信 濃では2008~2010年度において、新規学級・講座の数が多い。付表6および付表7でそれらの内容を 見てみると、上村においては世代間交流事業(2008年度~現在まで)、人形劇フェスタ「市内観劇バス ツアー」(2009年度~現在まで)、小学生霜月祭横笛教室(2009年度~現在まで)、南信濃においては 小・中学校合同講演会(後の家庭教育講座)(2008年度~現在まで)、夏休み子ども講座(2009年度~
現在まで)、図書分館との合同事業(2010年度~2017年度まで、以降は文化事業で継続)、環境学習会
(後のブッポウソウ保護活動)(2010年度~現在まで)など、10年近く継続する事業がこの時期に生み 出されている。一方、1年で終わった学級・講座も少なくない。なお、2014年度以降は他地区とほぼ 同水準の新規開催数となっており、この時期における新規の学級・講座数の多さは、公民館がどのよ うな学習機会を提供すべきかを模索していた一時期の傾向であったと考えられる。
25) 新規の学級・講座数の把握にあたっては、次のような取り扱いを行った。①活動記録では継続とされていても、それ 以前の対象年度において記載されていない学級・講座は新規とした(このため、地域自治組織設立前に同一の、もしく は類似の学級・講座が存在していたものもある。これらについては、続編として予定している別稿で把握する)。②類似 の名称であっても、活動記録の内容から新規の学級・講座として取り扱ったほうが適切なものについては、新規とした。
③専門委員会等事業から移行した学級・講座については、新規としては取り扱わなかった。
表4 新規の学級・講座数の推移
新規学級・
講座数 2008 年度 2009
年度 2010 年度 2011
年度 2012 年度 2013
年度 2014 年度 2015
年度 2016 年度 2017
年度 2018 年度 2019
年度 地区別計 地区別
平均 2008-2013
平均 2014-2019 平均 丸山 1 3 5 1 1 1 1 1 0 1 1 0 16 1.3 2.0 0.7 東野 1 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0.4 0.8 0.0 山本 1 0 2 5 3 6 1 0 0 2 2 1 23 1.9 2.8 1.0 上久堅 4 2 4 3 2 0 0 1 1 2 2 0 21 1.8 2.5 1.0 千代 1 0 0 3 3 0 1 1 0 1 2 2 14 1.2 1.2 1.2 上村 5 8 1 3 1 2 0 0 0 2 1 0 23 1.9 3.3 0.5 南信濃 7 9 5 2 4 2 3 1 0 2 1 2 38 3.2 4.8 1.5 学級・講座
数計 20 26 17 17 14 11 6 4 1 10 9 5 140 11.7 17.5 5.8
第2に、地域自治組織設立後において新規の学級・講座数が少ないのが、東野である。対象期間を 通して開催数は年間1つ未満で、とくに2010年度以降は0となっている。これには2つの可能性があ る。その1つは、学級・講座の範囲が狭く設定されている可能性である。対象時期の同地区における 学級・講座の構成は、女性学級、乳幼児学級、独居高齢者学級という対象層を明確にした講座、若草 の里「東野講座」、および書初め書道教室の5つを基本にしてきた。このうち、乳幼児学級を除く4つ の学級・講座は全て学習交流推進の領域に属しており、学級・講座に関して対象層を明確にしたもの か、学習交流の推進に関わるものとして位置づけている可能性がある。もう1つは、この地区では専 門委員会等による事業が増えてきたために、学級・講座数が絞り込まれている可能性である。この様 子については第4節で述べる。
第3に、対象期間において数は多くないものの、安定的に学級・講座を立ち上げ続けてきたのが、
千代である。2007年度時点では婦人学級、乳幼児学級、高齢者学級、家庭教育講演会という、他地区 とも共通するような対象層が明確な学級・講座が行われていた。その後の数年間で、男性の料理教室
(2008~2015年度)、乳幼児教育講座(2011~2015年度)、新春書き初め教室(当初は文化事業で2011年 度から学級・講座になり、現在まで継続)、親子料理教室(2012年度~現在まで)、歴史を語る会(2012
~2015年度、以降はその他事業に移行)などの、継続性の高い事業を次々に立ち上げてきた。婦人学 級や高齢者学級、家庭教育講演会などは終了したものの、継続的に新規の学級・講座を立ち上げてき たことにより、その構成は入れ替わりつつも、一定の学習機会を提供してきたことがうかがえる。た だし、表2に示したように、近年の学級・講座数は徐々に減少する傾向にある。
以上のように、新規の学級・講座数から見ると、地区の課題を組織化していく動きは、対象期間内 で全体として停滞傾向にあることが分かる。ただし、このような動きが地域自治組織設立前よりも低 下しているかどうかは、2006年度以前との比較が必要になる。
なお、新規の学級・講座の組織化にあたっては、それが新たなグループの形成とどのように連動し ているかについても考慮する必要がある。飯田市では、都市型公民館のように公民館主事が主導して 学級・講座を開催し、その後自主グループを立ち上げる形ではなく、学級・講座の運営を中心的に担 うグループが存在することが特徴とされる
26)。例えば、高齢者学級や婦人(女性)学級は、地域の高 齢者クラブや女性団体との連携のもと、運営がなされてきた。ただし、既存グループにおけるメンバー の固定化や高齢化の問題により、学級・講座の継続が困難になる状況も見られる。例えば、今回対象 とした地区において、高齢者学級は東野、山本、上久堅の3地区を残して、女性学級は東野と南信濃 を残して、それぞれ活動を休止している。このため、学級・講座の立ち上げと並行して、どのように 新たなグループが形成されているかを把握しておく必要がある。
学級・講座に関わる新たなグループを形成した例として、次の取り組みが見出された。①山本の
「Yamamoto International 友の会」(2012~2018年度)は、同会によるおしゃべり会が学級・講座として 新設された年に発足した。②上久堅の「十三の郷陶芸クラブ」(2013年度~)は、2010年度からの上久
26) 元飯田市公民館副館長の木下巨一氏からの情報提供による(2021年6月15日)。
堅陶芸教室の中で立ち上げられ、その後は陶芸教室を公民館と共催する形をとっている。③同じく上 久堅の「上久堅を学ぶ会」(2011年度~)は、同名の学級・講座の開設年に創設され、2015年度からは 同会の方言部会が、ふるさと自然体験・方言人形劇の指導を行っている。④千代の「歴史を語る会」
(2012年度~)は同名の学級・講座の開設年に創設され、学習成果を活用した活動を行うだけでなく、
その後2019年度に開催された満蒙開拓座談会の学級・講座で、共催に名を連ねている。⑤南信濃の「人 形劇団遠山☆きらり」(2012年度~)は、人形劇団育成講座の中で立ち上げがなされている。これらの グループは、新たな学級・講座が組織されるのと同時期か、あるいは数年以内にグループ形成がなさ れ、学級・講座の運営を中心的に担っているものである。
3 地区で特徴的な学級・講座について
前述したように、新規の学級・講座の占める割合は減少傾向にあるため、各地区公民館で継続的に 実施されている特徴的な学級・講座も把握しておく必要がある。傾向を見出すために、前述した8つ の領域別に整理した。この整理にあたっては、3年以上継続的に実施されているという基準を設けた。
その結果が表5である。全体の傾向は1で挙げた特徴と一致するが、さらに細かく内容を見ていく。
各地区に共通する点として挙げられるのは、次の3点である。第1に、乳幼児教育に関しては、乳 幼児学級が全地区で開催されている。ただし、少子化の影響もあり、東野では2017年度から3学級を 2学級に、山本では2019年度から2学級を1学級に、それぞれ再編している。後述するように、これ ら以外の地区でも少子化の影響で学級規模が縮小しており、1つの地区では子どもたちの交流が不足 することから、他地区との交流が積極的に取り入れられている。第2に、家庭教育の領域では6地区 で、小学校と合同の家庭教育講演会(あるいは家庭教育講座)が開催されている。東野でも合同事業 の枠で継続的に開催されており、全地区共通の事業と言える。第3に、学習交流推進については、ど の地区でも複数の学級・講座が継続的に開催されている。高齢者学級や女性学級は、近年では終了し た地区もあるが、その代表例である。また、料理教室などの「食」を介した事業、子どもに向けた体 験型の活動の推進なども、各地区で行われている。
他方で、地区ごとに差が見られる学級・講座もある。第1に、家庭教育に関して、山本では家庭教 育講演会以外にも、親子体験教室や児童館おやつ作り、キッズ山本大作戦音楽フェスタなどの学級・
講座を開催している。第2に、多文化共生については、外国籍の住民も多い市営二ツ山団地を地区内 に持つ山本の継続的な取り組みが目立つ。例えば、国際理解教室、日本語学級、 Yamamoto International 友の会などの学級・講座が挙げられる。しかし、他地区では多文化共生への継続的な取り組みが少な い。第3に、郷土学習に関しては、上久堅、上村、南信濃の3地区での継続事業が目立つ。事業の名 称や内容を見ると、地域の歴史や文化、資源を活かした学習活動が行われていることが分かる。第4 に、環境学習の数は多くないものの、丸山の風越山と暮らしを考える講座、上村の野鳥観察会・星空 観察会、南信濃のブッポウソウ保護活動など、各地区で学級・講座が開催されている。
このように、全ての地区で共通する学級・講座もあるが、地区独自の学級・講座も数多く存在する
ことが分かる。継続的な学級・講座に注目することで、当該地区で公民館がどのような学習を重点的
に組織化したいかという意図や傾向を読み取ることができる。
4 実施体制について
本稿の冒頭で述べたように、地域自治組織の設立によって地区公民館の位置づけが変化したが、こ れによって学級・講座の運営にあたる地域の団体や組織との連携の状況や、まちづくり委員会との関 係性がどのように変化するかという新たな論点が浮上してきた。ここでは、主に外部の機関や組織と の連携の状況について把握を行う。
まず、公的機関(行政)との連携と、それ以外の民間組織・団体に分けて、連携の内容を把握する。
このうち、表6には公的機関との連携を示した。単年度の連携にまで広げるとこれよりさらに数は多 くなるが、ここでは複数年にわたって開催されているもののみを挙げた。この表を見ると、公的機関 との連携は、乳幼児教育、家庭教育、および学習交流推進に集中していることが分かる。例えば、乳 幼児教育については、乳幼児学級の開催における担当の保育課や保育園との連携が見られる。これに 加えて、丸山と羽場、橋北・橋南・東野、上久堅と千代、上村と南信濃という形で、隣接する地区と の合同学級を開催するパターンも目立つ。次に、家庭教育については、家庭教育講演会の開催に向け
表5 領域ごとに特徴的な学級・講座の一覧
特徴的な学級・講
座の名称 乳幼児教育 家庭教育 多文化共生 郷土学習 地域芸術文化 学習交流推進 健康学習 環境学習 丸山
乳幼児学級(3 歳児学級)、乳幼 児学級「のびの び」、乳幼児学級
「すくすく」
家 庭 教 育 講 演 会、子育て講演 会
国宝への旅、そばう ち体験講座、新春書 初め教室、観月の夕 べ
風越山と暮 らしを考え る講座、春 の探鳥会 東野 三館合同乳幼児
学級 若草の里「東野
講座」
女性学級、高齢者学 級「五福の会」、若 草の里「東野講座」、
書初め書道教室
若 草 の 里
「東野講座」
山本
乳幼児学級「な かよし広場」、乳 幼 児 学 級「ち びっこ広場」
家 庭 教 育 講 演 会、親子体験教 室、児童館おや つ作り、キッズ 山本大作戦フェ スタ
国際理解教室、
日本語学級、
Yamamoto International 友の会
山本学講座 高齢者学級、婦人学
習会、 男の料理教 室、お話を聞く会
出張健康講 座、食育講
座 自然学習会
上久堅 乳幼児学級「わくわくキッズ」
上 久 堅 小 学 校 PTA・公民館共 催講演会、図書 館冬のお楽しみ 会
多文化ふれあい 交流会
ふるさとお花見ウォーキ ング(後の十三の郷ウォー キング事業)、南信州狼煙 リレー、上久堅を学ぶ会、
ふるさと自然体験、小学 生への方言人形劇指導
上久堅陶芸教 室、 人 形 劇 フェスタ「市 内観劇バスツ アー」
人形劇フェスタ「市 内観劇バスツアー」、
こども科学教室
男性料理教 室「男子厨 房に入る」、
十 三 の 郷 ウォーキン グ事業
環境学習会
千代
ちよっ子クラブ
( 0 ~ 3歳児童 学級)、乳幼児教 育講座
家庭教育講演会
(後の子育てパ ワーアップ講演 会)、親子料理 教室
歴史を語る会 高齢者学級、婦人学
級、 新春書初め教 室、男性の料理教室
プラステン 講座
上村 乳幼児学級「ひ
よこちゃん」 小 学 校PTA共
催講演会 小学生霜月祭横笛教室、
遠山森林塾
遠山2地区合 同人形劇フェ スタ市内観劇 バスツアー
女性学級、 人形劇 フ ェ スタ市内観劇 バスツアー、漢字能 力検定、世代間交流 事業、かみっこ食育 交流事業、かみっこ お楽しみ会
野鳥観察会、
星空観察会
南信濃 乳幼児すこやか学級 家庭教育講座
夏休み子ども講座、春休 み連続子ども講座、おい しいお茶作り講座、遠山 森林塾
人形劇団育成 講座
高齢者学級「いこい の広場」、女性学級、
図書分館との合同 事業
ブッポウソ ウ保護活動
た小学校(PTA)や保育園との連携が、丸山、山本、千代、上村、南信濃といった地区で行われてい る。これらに加えて、上久堅、上村、南信濃では家庭教育、地域芸術文化、および学習交流推進に関 わる学級・講座を開催する際に、図書分館を主要な連携相手としていることが分かる
27)。
次に、民間組織・団体との連携の状況を表7に示した。こちらの連携については、学習交流推進と 郷土学習の2つの領域での連携が目立つ。学習交流推進においては、 NPO 法人や高齢者クラブと連携 した高齢者学級や子ども向けの教室の運営、食生活改善推進協議会と連携した親子向け、あるいは男 性向けの料理教室などが開催されている。郷土学習に関しては、地区独自の学級・講座において地域 固有の組織・団体との連携が行われている。山本の山本学講座(杵原学校応援団と共催)、上久堅のふ るさとお花見ウォーキングとその後継にあたる十三の郷ウォーキング事業(あかね倶楽部と共催、桜 を愛する会と連携)、上村の小学生霜月祭横笛教室(霜月祭保存会と共催・連携)などがこの例であ る。
なお、特定の組織や団体との連携に留まらないパターンとして、実行委員会方式を導入する場合も
27) 飯田市では中央図書館、上郷図書館、および鼎図書館の他に、市内16地区に16分館1分室が設置されている。本稿で 対象とした丸山、東野、山本、上久堅、千代、南信濃では地区公民館内に、上村では小学校の敷地内に分館が設置され ている。
表6 公的機関との主要な連携の例
地区 領域 学級・講座 連携先の機関
丸山
乳幼児教育 乳幼児学級(すくすく) 保育園、保健課、羽場公民館(共催・連携など)
乳幼児教育 乳幼児学級(3歳児学級) 羽場公民館(合同・連携など)
家庭教育 家庭教育講演会 保育園、保育課、羽場・東野公民館(共催・連携など)
家庭教育 子育て講演会・MARUYAMA FAMILY DAY 羽場公民館(共催)
学習交流推進 観月の夕べ かざこし子どもの森公園(共催)
環境学習 春の探鳥会 羽場公民館(共催)
東野 乳幼児教育 3歳児学級 橋北・橋南公民館(合同)
山本 乳幼児教育 乳幼児学級(なかよし広場・ちびっこ広場) 保健課、なかよし広場(共催・合同など)
家庭教育 家庭教育講演会 山本小学校(PTA)(共催)
上久堅
乳幼児教育 わくわくキッズ 保育園、保健課、千代公民館(共催・合同・連携など)
家庭教育 図書館 冬のお楽しみ会 図書分館(共催)
地域芸術文化 人形劇フェスタ「市内観劇バスツアー」 図書分館(連携)
千代 乳幼児教育 ちよっ子クラブ 保健課、保育園、上久堅公民館(共催・合同など)
家庭教育 子育てパワーアップ講演会 千栄小学校・千代保育園(共催)
上村
乳幼児教育 乳幼児学級 保育課、保育園、南信濃公民館(共催・合同など)
家庭教育 家庭教育講演会 上村小学校(PTA)、遠山中学校(共催)
郷土文化振興 遠山森林塾 南信濃公民館(合同)
地域芸術文化 人形劇フェスタ「市内観劇バスツアー」 図書分館、南信濃公民館(共催)
学習交流推進 かみっこ食育交流事業 上村小学校、保育園(共催)
学習交流推進 かみっこお楽しみ会 図書分館(共催)
南信濃
乳幼児教育 乳幼児「すこやか学級」 保育園、上村公民館(合同)
家庭教育 小・中学校合同講演会 和田小学校(PTA)(合同)
郷土文化振興 遠山森林塾 上村公民館(合同)
学習交流推進 図書分館との合同事業 図書分館(合同)