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亜鉛めっき鋼を用いた電車線路支持物の長寿命化の研究

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Academic year: 2021

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JR EAST Technical Review-No.59-2017

S pecial edition paper

電車線路支持物とは、線路沿線で架線を支える電柱やビームの総称である。図1にその例を示す。電車線路支持物の素材は 鉄筋コンクリートや鋼、アルミなど様々なものがあるが、強度や耐腐食性などの観点から国鉄時代より亜鉛めっき鋼が多く使用され ている。亜鉛めっき鋼とは、鋼の表面を亜鉛でコーティングした鋼材で、鋼と同じ強度でありながら亜鉛の犠牲防食効果や亜鉛酸 化物被膜による表面保護効果によって耐腐食性が高いという特徴がある。しかし、長期的には亜鉛が消失して鋼の腐食による強 度低下が生じるため、建替や防錆塗料の塗装が欠かせない1)

図2に、当社に現存する亜鉛めっき鋼を用いたビームの数量と建設年の関係を示す。高度経済成長を含む1960年代から1980年 代までが建設のピークであり、年1000基以上のビームが新設された。当社の亜鉛めっき鋼ビームは過去の暴露試験による腐食速 度から期待寿命60年程度としており2)、これら大量の設備が間もなく寿命を迎える。一方で、現在は年600基程度の新設が費用面 および施工能力面にも可能な数量であり、一度に建て替えることは困難である。そこで、本研究では既設の亜鉛めっき鋼電車線 路支持物の長寿命化を目指し、当社電化路線沿いの亜鉛・鋼腐食速度の実態調査と、塗装の手間を削減可能な防錆塗料を開 発したので報告する。

亜鉛めっき鋼を用いた電車線路支持物の長寿命化の研究

Research for prolonged life of galvanized steel railway electrification infrastructure

Masahiko HONDA*1, Takeshi KUROKAWA*1

*1 Technical center, Research and Development Center of JR EAST Group

*1JR東日本研究開発センター テクニカルセンター 

本田 誠彦*1 黒川 剛士*1

Key words: Galvanized steel, Corrosion survey, Single coat, Painting

1. 緒言

Galvanaized steel is usually used for railway electrification infrastructure. It requires rebuilding in the future because of corrosion by rain, sea wind etc. Because of a lot of old galvanized steel railway electrification infrastructures in JR-EAST, it is impossible to rebuild all of them at suitable timing. Therefore, we practiced the corrosion survey using exposed test pieces to get detailed corrosion speed and developed the newly single coat system.

Abstract

図1 電車線路支持物 電車線路支持物

(ビーム) 電車線路

支持物

(柱)

図2 現存する亜鉛めっき鋼ビームの建設年別数量 0

1,000 2,000 3,000 4,000

2016 2006 1996 1986 1976 1966 1956 1946

ビーム数量

建設年

(2)

50

JR EAST Technical Review-No.59-2017

Special edition paper

2. 亜鉛と鋼の腐食速度調査

これまでに設定されている期待寿命の根拠となった腐食速度は、都市部や工業地帯のような立地環境での代表的な箇所の暴 露試験で得られたものである。しかし、当社の電車線路支持物は線路沿線に点在していることから、腐食速度は場所ごとにばらつ きが生じると推察される。そこで、腐食速度の実態把握を目的に、当社の電化路線沿線486箇所の電柱に1箇所あたり純亜鉛3枚 と鋼3枚の試験片を仮設し、曝露前後の質量変化にて腐食速度を調査した3)。図3に曝露試験の様子を示す。試験片の仮設間隔 はアメダスの気象観測点の間隔を参考に一般区間で約15km、腐食が進行しやすい塩害区間で約5kmとした。暴露期間は1年、

2年、3年とし、それぞれ曝露日数365日あたりの厚み減少量として腐食速度を算出した。図4に亜鉛と鋼の腐食速度と当社の電気 工作物(電車線路)設計施工標準による「塩害を考慮すべき線区」を示す。腐食速度は腐食生成物の保護効果の少ない曝露 期間1年の試験片で得られたものを示し、以後の図でも同様とする。腐食速度は分かり易さを考慮しISO9223(2012)による腐食カ テゴリでまとめた。表1にISO9223(2012)による環境の腐食カテゴリと腐食速度の関係を示す。

全体的には、沿岸部で腐食速度大、内陸部で腐食速度小という従来の知見と整合する結果が得られたが、局地的にみると腐 食カテゴリにばらつきが見受けられた。図5に房総半島の京葉線、内房線、外房線の腐食速度と、亜鉛めっきの消失目安年数を 示す。この消失目安年数は、電車線路支持物で採用する亜鉛めっき規格HDZ55での最低厚み76μmと亜鉛の腐食速度から算出 した。設備の寿命年数は鋼の腐食も関係するが、単純のため亜鉛めっきの消失目安年数で傾向を見ると、京葉線で30~65年、

内房線で26~84年、外房線で14~62年とばらつきが大きいことが明らかになった。外房線のキロ程70km付近(図5中のA付近)で 腐食速度が増大している箇所は、外洋に面した急峻な地形に線路が敷設されており、気象庁の年平均沿岸波浪図でも海から陸 に向けて海風が吹く地域である。そのため腐食が特に促進されたと考えられる。これらの考察を踏まえ、設備の立地環境を個別 に考慮すれば、期待寿命60年を超える使用も可能と考えられる。一方で、亜鉛の消失目安年数が期待寿命に比べて少ない箇所は、

検査の結果を重視し、建替や塗装の計画を進めるべきと考えられる。

カテゴリ 単位 亜鉛 炭素鋼 腐食性

C1

μm/

r≦0.1 r≦1.3 Very low

C2 0.1<r≦0.7 1.3<r≦25 Low

C3 0.7<r≦2.1 25<r≦50 Medium

C4 2.1<r≦4.2 50<r≦80 High

C5 4.2<r≦8.4 80<r≦200 Very high CX 8.4<r≦25 200 <r≦700 Extreme

r:腐食速度

鋼試験片 亜鉛試験片

CX

C5 C4 C3 C2 C1

腐食カテゴリ

(亜鉛)

ISO9223 (2012)

CX C5 C4 C3 C2 C1 ISO9223 (2012) 重塩害

塩害 一般 設計施工標準

(塩害を考慮 すべき線区)

腐食カテゴリ

(鋼)

(国土地理院の電子国土Web・白地図に路線図や腐食速度カテゴリを追記して掲載)

100 km 100 km 100 km

図3 亜鉛と鋼の試験片曝露状況

表1 ISO9223(2012)による環境の腐食カテゴリと腐食速度

図4 暴露1年試験片による亜鉛、鋼の腐食速度(ISO9223:2012の腐食カテゴリによる表示)

(3)

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JR EAST Technical Review-No.59-2017

巻 頭 記 事

Special edition paper

特 集 論 文 9

3. 下上塗兼用の1回塗り防錆塗料の開発と加速劣化試験による評価

亜鉛めっき鋼を用いた電車線路支持物を長寿命化するには、防錆塗料の塗装が効果的である。しかし、電車線路支持物の塗 装は停電間合いの短さや下塗り上塗りの2回塗りのため施工日数が多く、天候や列車遅延による作業中止で工程遅延のリスクが高 いという課題がある。そこで、施工日数の短縮を目的に、重防食用途の下上塗兼用1回塗り防錆塗料をジャパンカーボライン株式 会社と共同で開発した。図6に塗装工程の比較を示す。

新たな塗料は従前から亜鉛めっき鋼電車線路支持物の塗装で採用している重防食塗料カーボマスチック15Ⅱと耐候性塗料カー ボタン233HBの重ね塗り(以後現行塗料と表記)と同等以上の防食性、耐候性を有することを目標とした。

本開発では耐候性を重視したシリコーン変性エポキシ樹脂系塗料(以後開発塗料1と表記)と、防錆力を重視したエポキシポリオー ル樹脂系塗料(以後開発塗料2と表記)の2種類を試作した。これらを亜鉛めっき鋼の腐食状態と塗装前の清掃(以後ケレンと表記)

を再現した試験片に塗布し、加速劣化試験に供して評価を実施した。加速劣化試験は、約10年相当の紫外線エネルギーを与え る超促進耐候性試験560時間を実施したあと、塩害腐食を促進するJISK5600-7-9附属書CサイクルAの複合サイクル試験800時間 に供し、耐候性は塗膜の減耗量、防錆力はJISK5600-8による塗膜の膨れ、さび、割れの等級とJISK5600-5-7による付着性にて 評価した。

超促進耐候性試験560 時間後の塗膜減耗量は現行塗料が15.20μm、開発塗料1が11.29μm、開発塗料2が15.60μmであった。

この結果から開発塗料1は現行塗料より耐候性に優れることが分かった。開発塗料2は現行塗料より若干劣る結果となったが、そ の差は規定膜厚125μmに対して0.3%程度であり、現行塗料と同等水準と見込まれる。塗膜の期待寿命は減耗量に反比例関係に あり、開発塗料1は現行塗装以上、開発塗料2は現行塗料と同等水準と見込まれる。

表2に複合サイクル試験の結果を示す。表2は各条件の試験片3枚のうち最も腐食損傷状況の進行したものの評価を抽出した。

開発塗料1は試験片素地によらず現行塗装と同等程度の防錆力である。開発塗料2は鉄さび板(無ケレン)の試験片で現行同等 だったものの、当社の塗装対象設備の状況に最も近い、鉄さび板(不織布研磨剤ケレン)、鉄さび板(ワイヤーブラシケレン)

の試験片ではどちらも優れた防錆力を示した。

開発塗料1の材料費は現行塗料の1.7倍程度、開発塗料2は1.2倍程度と見込まれるが、どちらも施工日数の削減に伴う労務費 減少によりコストダウンが可能な見通しである。今後、開発塗料は2種類とも当社の亜鉛めっき鋼電車線路支持物に試験塗装し、

施工性や経済性等を確認したうえで適用エリアの拡大による効率的な長寿命化を図っていく予定である。

0 100 200 300 400

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0

0 10 20 30 40 50 鋼腐食速度(μm/年)

亜鉛腐食速度(μm/年) 鋼腐食速度(μm/年)

亜鉛腐食速度(μm/年) 鋼腐食速度(μm/年)

亜鉛腐食速度(μm/年)

京葉線・キロ程 亜鉛(左軸) 鋼(右軸)

東京方 蘇我方

0 100 200 300 400

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0

0 20 40 60 80 100

外房線・キロ程

千葉方 安房鴨川方

0 100 200 300 400

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0

0 20 40 60 80 100 120

内房線・キロ程

蘇我方 安房鴨川方

京葉線

外房線 内房線

安房鴨川 千葉 蘇我 東京

A

39年 58年

30年38年 37年 44年 65年

62年58年50年52年35年 54年41年

24年31年 14年

42年 16年

41年

26年 29年 63年84年

亜鉛(左軸) 鋼(右軸)

亜鉛(左軸) 鋼(右軸)

(国土地理院の電子国土Web・陰影起伏図に 路線図や地名を追記して掲載)

図5 京葉線・内房線・外房線の腐食速度

(4)

52

JR EAST Technical Review-No.59-2017

Special edition paper

4. 結言

本論文では、亜鉛めっき鋼を用いた電車線路支持物が直面する課題を挙げ、期待寿命に影響を与える線路沿線の亜鉛と鋼の 腐食速度の実態把握と、長寿命化の手段である塗装の課題を改善する下上塗兼用1回塗り防錆塗料の開発と評価を実施した。

亜鉛めっき鋼電車線路支持物は刻一刻と腐食が進行する。しかし、腐食速度が遅い地域の支持物、鉄道用地の狭隘部など建 替が難しい場所の支持物を中心にこれらの手法を用いて長寿命化を図り、建替の平準化とともに費用対効果の高い設備保守を実 現していきたいと考えている。

参考文献

1) 田中誠、江成孝文、 町田洋人:溶融亜鉛めっき鋼および耐候性鋼の腐食と延命化、鉄道総研報告、Vol.15, No.7, pp.35-40, (2001) 2) 吉田匡志:塩害区間用ビームの開発、JR EAST Technical Review No.32, pp.53-56, (2010)

3) 本田誠彦、新保雅士:東日本エリアにおける亜鉛・鋼の腐食環境調査、日本機械学会第22回鉄道技術連合シンポジウム講演論文集,

No.15-63, (2015)

塗装前 1日目夜 2日目昼 2日目夜 3日目昼〜

現行塗料2回塗り

清掃+下塗り 乾燥待ち 上塗り 完了

開発塗料1回塗り

清掃+1回塗り 完了

試験片素地 塗料種類

試験片評価(JISKの評価見本との比較、数字が小さいものが良)

JISK5600-8-2 JISK5600-8-3 JISK5600-8-4 JISK5600-5-7

膨れ さび 割れ 付着性(プルオフ法)

大きさ 密度 等級 大きさ 破壊強度

亜鉛めっき

現行塗料 0 0 Ri 0 0 >1 Mpa

開発塗料 1 0 0 Ri 0 0 >1 Mpa

開発塗料 2 0 0 Ri 0 0 >1 Mpa

亜鉛・鋼合金層

現行塗料 0 0 Ri 0 0 >1 Mpa

開発塗料 1 0 0 Ri 0 0 >1 Mpa

開発塗料 2 0 0 Ri 0 0 >1 Mpa

鉄さび (ワイヤーブラ

シケレン )

現行塗料 2 2 Ri 1 0 >1 Mpa

開発塗料 1 2 2 Ri 1 0 >1 Mpa

開発塗料 2 0 0 Ri 0 0 >1 Mpa

鉄さび (不織布研磨剤

ケレン )

現行塗料 3 2 Ri 1 0 >1 Mpa

開発塗料 1 2 2 Ri 1 0 >1 Mpa

開発塗料 2 0 0 Ri 0 0 >1 Mpa

鉄さび

(無ケレン)

現行塗料 3 2 Ri 2 0 >1 Mpa

開発塗料 1 0 0 Ri 0 0 >1 Mpa

開発塗料 2 3 2 Ri 1 0 >1 Mpa

図6 塗装工程の比較

表2 超促進耐候性試験、複合サイクル試験後の試験片評価

参照

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