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JR EAST Technical Review-No.35

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動実態」を評価する方法である。運輸安全マネジメント評価 はこの例といえる。具体的に展開されている個々の安全活動 が効果的に機能しているか、活動が相互に適切な補完関係 を保っているかなどを評価できるので、具体的な改善に結び つけやすい方法といえる。

組織健全度モニタリングに必要な視点

3.

3.1 安全を継続的に向上させる“プロセス診断”の重要性 組織の健全度を評価するために、社員アンケートによる「安 全文化診断」を実施することにより、安全文化の醸成度合 いを評価できる。また、「事故・事象の発生率」や「活動 の回数」などのデータを継続的に蓄積して診断することも一 つの方法である。

しかしながら、これらの方法は、いずれも一時点での“結果”

であり静的な評価であることに留意する必要がある。良い判 定が将来の良好な状態を保証するものではないし、逆に悪い と判定されたとしても、取組み次第でその後、良好な状態に

変化させることができる。

つまり、安全成績や安全意識は自然に得られるものではな く、安全に関わるさまざまな活動を効果的に展開した結果、

得られるものである。

このように考えると、結果を評価することも必要であるが、

より重要なことは、組織として「安全を継続的に向上させる 仕組み」が構築されて、安全を高めるための日々の活動が 充実していることであるため、その仕組みが機能しているか など、「結果に至るまでの“プロセス”」に焦点をあてて健全 度をモニタリングすることも重要であるといえる。これは、第2 節で述べた区分で言えば「安全活動診断による方法」に該 当する。

鉄道事業者の最優先事項である安全確保のためには、

常に安全上のリスクおよびその要因を把握し、的確に対策を 講じる必要がある。

そのためには、経営から現場まで、組織構成員が「安全 が企業の最優先事項である」と認識し、より高い安全レベル を目指して、それぞれの立場で安全に関わる活動を、前向き に取組むことが重要である。

一方で資金、時間などの経営資源が限られているのは事 実であり、これらの資源を効果的に配分するためにも、安全 に関する社員の認識や取組みの状態を把握する必要があ る。本研究では、これを組織健全度モニタリングということと

する。

組織健全度モニタリングに関する先行研究

2.

組織健全度モニタリングは、事故が発生すると被害が大き くなる可能性の高い原子力産業、化学産業などにおいて、

かねてから取組まれている。それら先行例を見ると、大きくわ けて下記の二つの方法がある。

①「安全文化診断」による方法

「安全文化」の確立は、組織のパフォーマンスを規定する 重要な要素であると考えられているため、高い安全文化を保 つ組織が健全であると仮定し、代表的な研究者であるリーズ ンなどによる先行研究を参考に、安全文化を構成する因子

(情報に立脚する文化、それを推進していくための報告する 文化、正義の文化、柔軟な文化、学習する文化など)にも とづいた「社員アンケート」を行って評価する方法である。

②「安全活動診断」による方法

健全な組織は、安全に関わるさまざまな活動を効果的に 展開していると考えられることから、「安全性向上のための活

組織健全度のモニタリング方法に関する研究

●キーワード:安全マネジメント、診断手法、組織心理学、安全文化

安全性を継続的に向上させていくためには、リスクおよびその要因を把握しておく必要がある。そのためには、組織として、「安 全面から健全かどうか」「よい方向に向かっているか悪い方向に向かっているか」などを継続的にモニタリングできている必要がある。

本研究では、この仕組みを「組織健全度のモニタリング」とし、その有効な評価視点は「安全に関わる取組みの状態を通じて の診断」であることを示して診断の枠組みを整理した。次に、この視点をもとに、支社の非現業社員を対象に質問紙調査を実施 した。その結果をフィードバックし意見交換を行ったところ、「日頃感じている課題を定量的に示せた」などの評価が得られ、「安全

に関わる取組みの状態」を診断する方法についての可能性を得ることができた。

*JR東日本研究開発センター 安全研究所  **東京支社 松戸運転区(元 安全研究所)

***早稲田大学理工学術院 教授

1. はじめに

小松原 明哲*** 野村 晃* 小野寺 順* 青沼 新一*

本澤 卓司**

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巻 頭 記 事

Special edition paper

特 集 論 文 3

のため、「活動の継続的改善」の観点から評価する。

以上、これら4つのステップ(PDCAサイクル)に分けて 評価することにより、各種活動の推進状態や現状の課題など を浮き彫りにすることができ、次のアクションにつなげていくこと ができると考えられる。

プロセス診断の体系の整理

4.

4.1 プロセス診断の体系の枠組み

安全のための活動は組織の基本単位である現場社員(個 人)から、職場組織、支社、本社といった組織まで、それ ぞれのレベルにおいて展開することが必要である。そこでJR 東日本の組織構造や職場の実情などを踏まえ、診断を以下 の3つの枠組みで行うことにした。

①個人レベル

安全の確保は現場社員一人ひとりの適切な行動によりもた らされることから、現場社員自らが「自身の資質(知識、技

能、安全意識、等)を高める活動」を推進するレベル。

②職場レベル

現場社員が主体的な行動をとり個人の能力を高めるため には現場でのさまざまな活動が大切であることから、現場で 行っている教育・訓練や現場社員の資質を組織的に高めて いく「職場単位の活動」を推進するレベル。

③本社・支社レベル

現場での各々の活動を現場任せにしていては、効果が限 定されてしまう。そのため、本社・支社などの管理部門は、

活動実態を定期的に把握し、現場で処置できない問題を解 決したり、良好事例の水平展開を行うなど、活動をリードし 支援することが必要であることから、これらの本社や支社の

「管理の仕組みを機能させる活動」を推進するレベル。

以上、「個人、職場、本社・支社」の3つのレベルで診 断の枠組みを整理し、各診断レベルごとに3.2で述べた4つの ステップ(PDCAサイクル)で評価する「組織健全度モニタ リングの体系」を整理した(図2)。

3.2 安全を継続的に向上させるプロセス

JR東日本では2009年度より安全5ヵ年計画「安全ビジョン 2013」において、更なる安全性向上のため、経営における 安全戦略の策定から現場社員の自主的な取組みにいたるま でのさまざまな活動をこれまで以上に明確に打ち出している。

これら活動の実効性を評価し、その改善点が把握できるよう に、モニタリングの評価軸を構築することとした。具体的には、

次の4つのステップ(PDCAサイクル)でプロセスを評価する こととした。

①活動の必要性やねらいを「理解」できているか

組織として、安全を高めるためには、戦略的な「活動」

が必要であることはいうまでもない。活動を効果的に推進す るためには、社員一人ひとりが、「活動の必要性や重要性を

理解」することがスタートになる。

②活動を理解したうえで、「実施」できているか

活動の必要性を理解していることと、それを実施すること

(行動に移すこと)は異なり乖離があることも多い。ここでは「実 際に行動できているか」、という観点から評価する。

③活動を実施した結果として、「効果」があがっているか 活動が当初のねらいどおりに推進され、結果として、その効 果があがっているか(または、あがっていないか)を評価する。

④活動実態の把握をもとに、継続的に「改善」できているか 活動をより効果あるものとするためには、活動の現状を確 認・検証した上で、新たな目標を定めたり、活動内容の適 宜見直しを行い、継続的な改善を行うことが必要である。そ 時間軸 結果評価 結果評価 結果評価

「プロセス評価」 「プロセス評価」

一時点の結果ではなく、「安全を継続的に向上させる」

「プロセスを評価」する

安全性

向上 安全性

向上

時間軸 結果評価 結果評価 結果評価

「プロセス評価」 「プロセス評価」

一時点の結果ではなく、「安全を継続的に向上させる」

「プロセスを評価」する

安全性

向上 安全性

向上

活動をより上位の視点から 推進する「管理の仕組みに 関する活動」

現場社員の資質を組織的に高めて いく「職場単位の活動」

現場社員自らが「自身の資質を高める活動」

安全行動

P D A C

①個人

②職場

①個人 ①個人 ① 活動の 「必要性を理解」 できているか

③ 活動の 「効果」 があがっているか

④ 活動の 「改善」 ができているか

② 活動を 「実施」 できているか

②職場

③本社・支社 診断の体系

安全活動の状態を通じての評価

活動をより上位の視点から 推進する「管理の仕組みに 関する活動」

現場社員の資質を組織的に高めて いく「職場単位の活動」

現場社員自らが「自身の資質を高める活動」

安全行動

P D A C

P D A C

P D A C

①個人

②職場

①個人 ①個人 ① 活動の 「必要性を理解」 できているか

③ 活動の 「効果」 があがっているか

④ 活動の 「改善」 ができているか

② 活動を 「実施」 できているか

②職場

③本社・支社 診断の体系

安全活動の状態を通じての評価

図2 組織健全度モニタリングの体系 図1 組織健全度をモニタリングする視点

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(2)職場レベル

職場レベルの評価の視点を表3のように定めた。

個人の能力を高めるために行っている、現場第一線社員 を対象とした、各種教育、訓練、小集団活動などの「職場 での活動」に着目する。活動の良し悪しにより、社員の知識、

技能、意欲などの向上と結果としての行動に多大な影響を 与えるため、各活動を有効に機能させることが大事である。

そのため、まず「活動」の実態を把握し、その機能度合 いを評価するとともに、現場社員、管理者が一体となり共通 の目的を持ちながら活動を軌道に乗せ推進できているか、現 場管理者や指導者は、第一線社員に対する高い指導・育 成力を有しているか、などの観点からモニタリングを行う。そ れに必要な職場レベルでの診断項目を設定した(表4)。

(3)支社・本社レベル

支社・本社レベルの評価の視点を表5のように定めた。

支社・本社として、現場での「活動実態」を正しく把握し、

安全性向上のための支援を行っていく必要がある。また、全 体を見渡しながら安全を統括的に管理し、推進する「仕組み」

も必要である。各活動を総合的に俯瞰し、活動全体を通し て第一線社員の安全レベルが向上する仕組みになっている のかを確認するほか、一つの職場や部署で解決できない問 題を組織横断的な対応により解決する仕組みが機能している か、安全を司る部署が安全に関するしかるべき権限を保有し リーダーシップを発揮できている状態であるか、情報共有など を通じて本社・支社・現場間の距離感を縮める仕組みになっ ているか、などを確認する。

4.2 評価レベルに即した診断項目

「組織健全度モニタリングの体系」の「個人、職場、本社・

支社レベル」ごとに「評価の視点」を定め、「診断項目(安 全を高めるうえで必要となる条件)」を整理した。

(1)個人レベル

個人レベルの評価の視点を表1のように定めた。

次に、個人レベルの診断を行うために、資質が高い社員 の条件として、安全行動を高めるために必要な4つの要素を 仮定し(図3)、それをもとに個人レベルとしての診断項目を 設定した(表2)。

表1 個人レベルの評価の視点

①安全を確保するための、「知識・技能」を有している

②安全に関する「気づき」の能力が高い

③高い「チーム力(を高めるための個人)」を有している

④安全に関する「意識、意欲」が高い

⑤「職務・職場満足」が高い

⑥「心身ともに健康」である

 第一線社員「一人ひとり」の能力(スキルや意欲等)が 高く、かつ、継続的に向上している状態である。

 現場の安全を高めるための「活動」が「支社・本社」に 存在し、かつ推進している状態である。

 第一線社員の能力を高めるための「活動」が職場に存在し、

かつ推進している状態である。

①職場の「第一線社員の能力を高める」活動

②職場の「風通しを良好」にする活動

③職場の「一体感を高める」活動

④職場の「指導力の高い人材を育成」する活動

表5 支社・本社レベルの評価の視点 表4 職場レベルの診断項目

① technical skill

業務に必要な知識・技能等が高いレベルにある

non - technical skill

チームワークやコミュニケーションスキル等が高い レベルにある

③ attitude

プロ意識、意欲等が十分である

④ health

心身ともに健康である

①technical skill

②non -technical skill

③attitude(mind )

・チームワーク

・コミュニケーション

・プロ意識

・動機付け

・知識

・技能

安 全 行 動

④health 心身ともに健康

①technical skill

②non-technical skill

③attitude(mind )

安 全 行 動

④health

図3 安全行動を高めるために必要な4つの要素 表2 個人レベルの診断項目

表3 職場レベルの評価の視点

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巻 頭 記 事

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特 集 論 文 3

質問紙調査の結果

6.

作成した質問紙をA支社において実施し、338名の回答を 得た。

質問紙調査の結果、各活動に共通した傾向として、活動 の必要性については、概ね理解されているが、活動の実施・

効果・改善については、出来ているとする率が減少すること が把握できた。そして、活動の「実施・効果・改善」の設 問間での平均値の差は少なく、8つの活動とも同様の傾向が みられた。活動の必要性の理解から推進(実施・効果・改 善)へ移行していくことが課題として浮き上がった。

調査結果を当該支社の安全管理部門社員へフィードバック し、意見交換を行ったところ、

· 諸活動の「理解と推進」に相違があることについて、日頃 感じていることを定量的に理解できた

· 部門ごとの活動状態の現状を把握できた

· 今後、どの活動を重視していけばよいのか、管理側として 指導や企画の方向性が得られた

などの肯定的な意見が得られた。一方、

· 現場で実際に行っている具体的な活動の名称が示されな いと、現場レベルでは回答がしにくい

· 回答者の心理として、活動の必要性を理解できていないと は、回答しないだろう

などの、質問形態に関しての課題も指摘された。

今後の展開

7.

今回の支社社員に対する健全度モニタリングの試行の結 果は、「組織健全度」を安全に関わる諸活動の推進状態で 診断する方法の有効性が示唆された。今後の展開としては、

質問項目の改善や、実際の安全成績との関係性の検討など が考えられる。

さらに、個人レベル、職場レベルへの展開に際しては、各 レベルの診断項目に関するプロセスを評価するための具体的 調査方法、さらには継続的な組織健全度モニタリングの「仕 組み」などについて検討していく必要がある。

例えば、第一線社員や支社勤務社員を対象にしたヒアリ ング調査、または職場観察、作業観察などによる評価の有

用性を検討する。また、現場第一線社員などに対し5年に1 回程度の頻度で安全意識調査を実施しているが、この調査 を活用して、第一線社員の評価も含めた、「現場社員(個人)

から職場単位、支社の管理の仕組み」全体を通した診断 方法の確立をめざしている。

支社社員に対する質問紙調査の実施

5.

本研究では、3.2で示した4つのステップである「必要性の 理解」「実施」「効果」「改善」で評価するプロセス診断 の有効性を検証するため、現場を支援する立場にある支社 社員を対象に、組織健全度モニタリングのための質問紙調 査を行った。これは、幅広い部門(系統)のデータを一定 量得ることができ、調査期間、趣旨説明なども比較的容易に できるためである。

質問紙の構成としては、支社社員との意見交換も踏まえた うえで、支社として重点的に行っている表6に示した8つの活 動に着目し、「必要性の理解」「実施」「効果」「改善」の 4つのステップごとに5件法(「とてもそう思う」「ややそう思う」

「どちらとも思わない」「ややそう思わない」「まったくそう思わ ない」)で回答する設問を設定した。設問の例を表7に示す。

また、質問紙においては、活動推進の阻害要因を把握し、

改善につなげる観点から、社員相互間の信頼関係や職場 満足度などの設問を設定するとともに、悩みや意見などの自 由記述欄を設けた。

· あなたの職場は、「安全を高めるために、他部門との連携を 推進することが必要だと考えていますか。」

· あなたの職場は、「安全を高めるために、他部門との連携が 図れていますか。」

· あなたの職場でなされている「安全を高めるための他部門と の連携は、効果をあげていますか。」

· あなたの職場は、「安全を高めるために、他部門との連携が、

より効果的になるよう、常に改善を図っていますか。」

表7 設問の例(部門を越えて安全を高める活動)

①現場の実態を把握する活動

②現場を支援する活動

③有益な情報を現場間で共有する活動

④部門を越えて安全を高める活動

⑤人材育成や技術継承を進める活動

⑥事故や事象の再発・未然防止を図る活動

⑦グループ・パートナー会社の安全を支援する活動

⑧安全優先を浸透させる活動

表6 支社・本社レベルの診断項目

参照

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