顔表情からの感情判断に温冷感の提示とその部位が与える影響 How Thermal Sensations of Body Parts Affect the Way People Judge Emotions
from Facial Expressions
1W120515-6 水野 綾香 指導教員 橋田 朋子 准教授
MIZUNO Ayaka Assoc. Prof. HASHIDA Tomoko
概要: 円滑な人間関係の構築には相手の感情を心から理解することが欠かせない.顔を合わせたコミュニケー ションにおいて,表情は相手の感情を判断するために重要な要素である.一方で,思考や判断には視覚情報以外 にも触覚情報が影響を与えるという報告がある.そこで本研究では,顔表情に加え温度刺激を用いることで感情 の判断に影響が現れるのか温度刺激の提示部位についても着目し,主観評価実験を行うことで調査した.なお,
実験では笑顔・涙顔の表情をもつ人物画像を用いて,温・冷の温度刺激を
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条件(指に提示,掌に提示,胸に提 示,提示なし)で提示し,幸福・悲しみ感情の度合いの評価を行った.その結果,表情に加え「胸」への温度刺 激の提示が感情の判断に影響を与え,身をもった感情理解を促せることが示唆された.キーワード:対面コミュニケーション,顔表情,温度刺激,感情,体部位
Keywords: face to face communication, facial expressions, thermal stimulation, feelings, body parts
1.はじめに
日常生活では顔を合わせてコミュニケーショ ンをとる機会が多くある.この場合,表情が相手 の感情を判断するための重要な手がかりとなる.
一方で,思考や判断に視覚情報だけでなく触覚情 報が影響するという報告がある.例えば,手に温 度刺激を与えると人格の判断に影響を与えるこ とがわかっている[1].
本研究では判断の対象として特に感情に着目 し,表情に加え温度刺激が感情の判断に与える影 響を調べることを目的とした.また,その中では 温度刺激の提示部位として従来に見られる手に 加え,心が連想される部位として胸への提示も検 討することとした.
2.主観評価実験 2.1 目的と概要
本実験では,表情に加え温度刺激が感情の判断 に与える影響を調べることを目的とした.また,
温度刺激の提示部位によっても違いが見られる のか調べることも目的とした.
そこで,具体的に 2 つの実験を行った.1 つは 笑顔の人物画像(以下,笑顔画像)を「指」「掌」
「胸」「なし」の 4 提示条件で温刺激を加えなが ら見ることで,人物の幸福感情の度合いの評価を 行った.もう 1 つは同様の提示条件で,冷刺激を 加えながら涙顔の人物画像(以下,悲しみ顏画像)
を見ることで,人物の悲しみ感情の度合いの評価 を行った.
2.2 実験刺激
本実験で用いた笑顔画像と悲しみ顏画像は,そ れぞれ 5 枚ずつ用意した.笑顔画像に関して,事 前に Web サイトから笑顔の人物が上半身で顔が 大きく写ったものを 22 枚選び,アンケートを通 して,人物から受ける幸福感情の度合いを 1 枚ず つ数値スケールで評価を行った.この結果,評価 平均値が近いものを選定した.悲しみ顏画像に関 しても同様に,事前に 18 枚を用意し,人物から 受ける悲しみ感情の度合いの評価を行い選定し た.なお,アンケート参加者は笑顔画像において 19-23 歳の大学生 46 名,悲しみ顏画像において 19-23 歳の大学生 39 名である.
そして,選定した笑顔画像 1 枚に対して温刺激 を前述の 4 条件に提示するパターンをつくり,本 実験における刺激とした.悲しみ顏画像に対して も同様に,冷刺激の提示条件と組み合わせたパタ ーンをつくり,実験刺激とした.
2.3 評価方法
2 つの実験とも 0-8 の数値スケール評価を用い て行った.ここで 0 は「
全く感じない
」を表し,8 は「
非常に感じる
」を表すこととした.
2.4 実験システム
温度刺激の提示はペルチェ素子(TES1-12705) の Arduino による制御で行った.ペルチェ素子は 各部位に対して 1 つずつ用いることとした.また,
画像表示と同期して温度を提示させるため,人物 画像の表示は Arduino とシリアル通信可能な processing で行った.なお,数値スケールによ る評価も processing 上で行えるようにした.
図 1 実験システム構成図
2.5 被験者と実験手続き
本実験における被験者は 20-23 歳の大学生 15 名(男性 7 名,女性 8 名)であり,室内の温度 24℃・湿度約 30%の部屋で実験を行った.
被験者は実験に関する十分な説明を受け,シス テム操作の練習を行った後,温刺激を加え笑顔画 像を見て幸福感情の度合い評価を行う実験を行 った.前述の実験刺激 20 試行を 2 セット行った.
ここでは,画像と温刺激の条件それぞれに対して 同じものが連続しないようにランダマイズした.
次に,同様の条件で,冷刺激を加え悲しみ顏画像 を見て悲しみ感情の度合い評価を行う実験を行 った.そして最後に,実験の感想を問うインタビ ューを行った.
2.6 結果
画像上の人物の幸福感情の評価平均値に関し て,温刺激の提示条件を要因とした分散分析を行 った結果,主効果が認められた.下位検定におい
ては,
胸の評価平均値が指と提示なしの評価平
均値より,掌の評価平均値が提示なしの評価平 均値より 5% 水準で有意に高いことが示された.
また,
画像上の人物の悲しみ感情の評価平均 値に関して,冷刺激の提示条件を要因とした分散 分析を行った結果,主効果が認められた.下位検定においては,
胸の評価平均値が指と掌と提示 なしの評価平均値より 5% 水準で有意に高いこ とが示された.
図 2 幸福感情の評価実験結果
図 3 悲しみ感情の評価実験結果
また,事後インタビューからは,胸に温度刺激を 提示された場合には「感情を訴えかけられている 気がした」,「共感した」,「感情移入した」といっ た感想が多く得られた.
3. まとめと考察
本研究では表情という視覚刺激に温度刺激を 加えたときの感情の判断に与える影響を温度の 提示部位にも着目して調べた.
具体的に本実験では,幸福感情と悲しみ感情の 度合いを評価することで,温度刺激の判断に与え る影響が示された.なお,温度刺激を胸に提示し た場合に,より感情が増幅して判断されることが 示された.これらは,触覚刺激を与えられること で身をもって感情を体感している気持ちにさせ られ,また胸に提示することでより心が動かされ たという感覚が働いたためだと考えられる.
参考文献
[1]