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VR 技術を用いた没入感の創造 エンターテイメントにおける

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(1)

2014 年度 修士論文

エンターテイメントにおける VR 技術を用いた没入感の創造

早稲田大学 理工学術院基幹理工学研究科 情報理工学専攻

相川 達也

学籍番号 5113B001-6

指導教員 中島 達夫 教授

提出 平成 27 年 2 月 2 日

(2)

Creation of immersive in entertainment using VR technology

Aikawa Tatsuya

Thesis submitted in partial fulfillment of the requirements for the degree of

Master in Information and Computer Science

Student ID 5113B001-6

Submission Date February 2, 2015

Supervisor Professor Tatsuo Nakajima

Department of Computer Science and Engineering

Graduate School of Fundamental Science and

Engineering

Waseda University

(3)

概要

近年,情報技術の発展に伴い,エンターテイメントの形も多様化している.

とくに最近では,Kinectセンサーや,HMD(ヘッドマウントディスプレイ)など のインターフェースの登場により,拡張現実・複合現実 ・没入感などといった 観点から,エンターテイメントに対する情報技術の使い方に関しての研究が 様々行われている.

しかしながら,このような分野の研究において,没入感を創造するための要 因について分析し,情報技術の使い方に関して考察しているものは見当たらな い.

本研究では,リアルRPGと定義した類のエンターテイメントを対象とし, VR

(バーチャルリアリティ)技術を導入したときの,フィクションに対する没入 感への影響について評価実験を行った.

さらにリアリティに関して,アイテムやキャラクターなどゲームの構成要素 による分類と,五感による分類を行い,どのような要素がリアリティにとって 重要なのかを細分化した要素ごとに検証した.

本研究の目的は,対象のエンターテイメントにおける,没入感とリアリティ

の構成要素について詳細に評価検討し,それによってVR技術がフィクションへ

の没入感に,どのような要素をもって影響を及ぼすのかを検討することである.

(4)

Abstract

In recent years, with the development of information technology, entertainment form has also diversified.

Especially, with the advent of the interface, such as HMD (head mounted display) or Kinect sensor and so on.., there are various researches how to use of information technology for entertainment. Such as augmented reality, mixed reality, and immersive experience.

However, in such a field of study, we cannot find the analysis the factors to create an immersive experience.

In this study, We evaluated the influence of the immersion with VR( virtual reality ) technique for the kind of entertainment we defined as real RPG.

And we analyze what elements were verified for reality. Item, character, five senses and so on.

The purposes of this study are analyzing the elements of reality and immersive experience, and

examine how VR technique affects the immersive for fiction.

(5)

2

目次

1 序論 ... 5

1.1 背景 ... 5

1.2 目的 ... 6

1.3 本論文の構成 ... 6

2 関連研究 ... 7

2.1 エンターテイメントコンピューティング ... 7

2.2 リアリティに関する研究 ... 7

3 VRシステムを用いたリアルRPG ... 9

3.1 VRシステムを導入しないリアルRPG ... 9

3.2 VRシステムを導入するリアルRPG ... 11

3.3 VRシステムの構成 ... 12

4 評価実験 ... 16

4.1 実験概要 ... 16

4.2 実験1... 16

4.2.1 目的 ... 16

4.2.2 実験方法 ... 16

4.2.3 結果 ... 19

4.3 実験2... 21

4.3.1 目的 ... 21

4.3.2 実験方法 ... 21

4.3.3 結果 ... 27

4.4 実験3... 38

4.4.1 目的 ... 38

4.4.2 実験方法 ... 38

4.4.3 結果 ... 39

5 考察 ... 45

5.1 実験1の考察 ... 45

5.2 実験2の考察 ... 46

5.3 実験3の考察 ... 47

5.4 考察まとめ ... 49

6 将来課題 ... 51

7 結論 ... 52

(6)

3

表目次

表 3.1 :VRシステムを用いないリアルRPG概要 ... 9

表 3.2 :VRシステムを用いたリアルRPG概要 ... 11

表 3.3 :システム環境 ... 12

表 4.1 :各リアルRPGのゲーム内容 ... 18

表 4.2 :質問1.1の回答結果 ... 19

表 4.3 :質問1.2の回答結果 ... 19

表 4.4 :質問1.3の回答結果 ... 19

表 4.5 :質問1.4の回答結果 ... 20

表 4.6 :質問1.5の回答結果 ... 20

表 4.7 :質問1.6の回答結果 ... 20

表 4.8 :質問2.1の回答結果 ... 27

表 4.9 :質問2.2の回答結果 ... 28

表 4.10 :質問2.3の回答結果 ... 28

表 4.11 :質問2.4の回答結果 ... 29

表 4.12 :質問2.5の回答結果 ... 30

表 4.13 :質問2.6の回答結果 ... 31

表 4.14 :プレイ空間のリアリティにおける重要度 ... 32

表 4.15 :アイテムのリアリティにおける重要度 ... 32

表 4.16 :キャラクターのリアリティにおける重要度1 ... 33

表 4.17 :キャラクターリアリティにおける重要度2 ... 34

表 4.18 :質問3.1の回答結果 ... 39

表 4.19 :質問3.2の回答結果 ... 39

表 4.20 :質問3.3の回答結果 ... 40

表 4.21 :質問3.4の回答結果 ... 41

表 4.22 :質問3.5の回答結果 ... 41

表 4.23 :質問3.5の回答結果 ... 42

表 4.24 :プレイ空間のついての重要度と評価 ... 43

表 4.25 :アイテムについての重要度と評価 ... 43

表 4.26 :キャラクターについての重要度と評価 ... 44

表 5.1 :プレイ空間の内容一覧 ... 50

表 5.2 :アイテム一覧 ... 50

表 5.3 :キャラクター一覧 ... 50

(7)

4

図目次

図 3.1 :リアルRPGプレイ中の様子 ... 10

図 3.2 :システム概観 ... 12

図 3.3 :3D空間概観 ... 13

図 3.4 :3D空間プレイ中画面 ... 13

図 3.5 :VR空間のアイテム... 13

図 3.6 :現実空間のアイテム ... 13

図 3.7 :ゲームマスターコントローラー1 ... 14

図 3.8 :ゲームマスターコントローラー2 ... 14

図 3.9 :3Dキャラクターモデル[18] ... 15

図 4.1 :質問2.1 ... 22

図 4.2 :質問2.2 ... 22

図 4.3 :質問2.3 ... 23

図 4.4 :質問2.4 ... 24

図 4.5 :質問2.5 ... 25

図 4.6 :質問2.6 ... 26

図 4.7 :質問2.5の回答結果(プレイ空間のリアリティ) ... 35

図 4.8 :質問2.5の回答結果(アイテムのリアリティ) ... 35

図 4.9 :質問2.5の回答結果(キャラクターのリアリティ) ... 35

図 4.10 :質問2.6の回答結果(プレイ空間の全体的なリアリティ) ... 36

図 4.11 :質問2.6の回答結果(プレイ空間の一部のリアリティ) ... 36

図 4.12 :質問2.6の回答結果(アイテムの全体的なリアリティ) ... 36

図 4.13 :質問2.6の回答結果(アイテムの一部のリアリティ) ... 36

図 4.14 :質問2.6の回答結果(キャラクターの全体的なリアリティ) ... 37

図 4.15 :質問2.6の回答結果(キャラクターの一部のリアリティ) ... 37

(8)

5

1 序論

本章では,研究をはじめるに至った背景,研究の目的,本論文の構成について述べる.

1.1 背景

近年,エンターテイメントの形式はとても多様になってきている.その理由の 1 つとして,

情報技術の発展があげられる.例えば,インターネットの普及によって,目の前にいない相手 とコミュニケーションをとって遊ぶことが可能となった.チェスや麻雀などの卓上ゲームを Webサイト上で不特定の相手と対戦することも可能となり,TwitterやLINEなどのコミュニ ケーションツールを用いて,数千km離れた相手としりとり等をして遊ぶこともできる.

このように,ゲームをプレイする空間や時間・プレイヤー数などの制限を,情報技術などに よって拡張しているゲームを,Markus Montola の著書ではパーベイシブゲーム(pervasive game)という名で定義している[1].以前はアナログな環境で遊ばれていたゲームも,現在で は情報技術によって多様な拡張がなされている.近年では,とくにGoogle GlassやOculus Rift

等の HMD(ヘッドマウントディスプレイ)の登場により,拡張現実感・複合現実感などとい

った分野に注目が集まっている.

一方,1970年代に流行したアーケードゲームをはじめ,家庭用や携帯用へと進化していった デジタルゲームに関して,近年ではジェスチャー認識デバイスの Kinect センサー等をコント ローラーにすることによって,より直観的な操作を可能にするというような方向性への進展が ある.

アナログな環境は情報技術により拡張され,デジタルな領域もまた情報技術によって現実の 体感に近づこうとしている.

また,近年のエンターテイメントにおいては,より多様でより複雑な世界観や設定を付与するも のが多く見受けられる.

例えば,日本では古くから親しまれている「鬼ごっこ」というゲームがあるが,このゲームをもと に,具体的なストーリーやキャラクター設定などの世界観を付与した「run for money 逃走中[2]」

というゲームが近年話題となった.

また,クロスワードやパズルなどの「謎解き」に対して,多様なストーリーなどの世界観設定を 付与した「リアル脱出ゲーム[3]」などのゲームイベントが近年人気を博している.

このように,自分自身をプレイヤーキャラクターとして,ストーリー設定などの世界観に従って 課題をこなしていく形式のゲームを,本研究では「リアルRPG」と定義し,考察対象とする.

将棋・チェスなどに代表される卓上ゲームに関しても,様々な世界観が付与されたゲームが増え てきており,ゲームマスター(ルールやゲーム進行を管理する役)を中心に,プレイヤーの想像と 会話によって物語をつくっていくTRPG(テーブルトークRPG)といった種類のゲームも近年増加

(9)

6 している.

1.2 目的

背景で述べた通り,エンターテイメントの形式や内容はより多様化し,複雑化している.そのよ うなエンターテイメントにおいて,作り込んだ世界観に対し,いかにプレイヤーを没入させる仕組 みを用意するかという視点は重要であると考えた.

また,そのアプローチとして,VR(バーチャルリアリティ)体験をつくることのできるHMDで ある,Oculus Riftを用いることにした.

前述で「リアルRPG」と定義した形式のエンターテイメントに対し,VR技術を用いることによ って没入感を与えることができるのか,またその仕組みについて評価・検討することが本研究の目 的である.

1.3 本論文の構成

2 関連研究

本研究と関連する,エンターテイメントコンピューティング分野の研究と,リアリティやそれに 近しい感覚に関する研究について触れる.

3 VRシステムを用いたリアルRPG

本研究で制作した,2種類のリアルRPGについて説明する.片方にVR技術を導入することで比 較検討を行うが,そのVRシステムの設計についても述べる.

4 評価実験

評価実験の目的や手法・結果についてまとめる.

5 考察

評価実験から得られた結果を用いて,VR 技術用いた場合のフィクションへの没入感に対する影 響や使い方について考察する.

6 将来課題

本研究から得られた知見を用いた,今後の課題や方向性に関して述べる.

7 結論

本研究の結論を述べる.

(10)

7

2 関連研究

本章では,本研究と関連のある研究に関して述べる.

2.1 エンターテイメントコンピューティング

近年,エンターテイメントに対する情報技術の使い方を議論する「エンターテイメントコンピュ ーティング」の分野でも,没入感を高めるためにどのような技術を取り入れるべきかという議論は 様々されている.また,拡張現実感をもたらすデバイスや,HMD を用いたゲーム制作もいくつか 事例がある.例えば,矢谷らは,ジェスチャーによる入力と位置認識技術を組み合わせた,

「ARHunter」[4]というもぐら叩きゲームを制作し実験を行っている.また,HMD を用いること で,野外環境でゲーム「パックマン」を実現している「HumanPackman」[5]という事例もある.

また,青木らは,仮想の小人が現実世界に存在するように見せかけるシステム[6]を開発している.

ARHunter では,参加者から,「ゲームをしているというよりも,スポーツや運動をしているよう

だった.」などといった評価が得られている.青木らの研究では,「 Kobito を手で捕まえようとす るという直接的な行動が観察できた.」などの,体験者の行動観察から評価考察を行っている.この ように,情報技術を用いた没入感の創造に関わる研究事例は,ゲームをプレイした参加者の動作や 様子・感想評価に基づいて結論を導いているケースがほとんどである.本研究では,VR 技術を用 いた体験の「リアリティ」という観点から没入感の創造を考察し,さらに,シチュエーションや感 覚モダリティ(五感)ごとの評価を行う.システムに対して多面的な考察を行うことが,前例との 差異である.

2.2 リアリティに関する研究

本項では,本研究で「リアリティ」と定義した「本物らしさ」やそれに近しい感覚に関する研究 について述べる.

まず,本研究で用いるリアリティに近しい定義として使われている用語には,「臨場感」「迫真性」

「しっくり感」などがあった.最も一般的に使用されていると思われるのは「臨場感」であるが,

未だ研究者間において,「臨場感とはどのような感覚であるか」に関して統一的な見解はない[7]と されている.

行場らは,臨場感は「現在いる場所とは異なる場所にいるような感覚」や,「その対象・環境を提 供するメディアに対する気づきを失っている状態」としている[8] .行場らの研究では,臨場感を

(11)

8

生起させる要因は,内部要因(ユーザ側要因)と外部要因(メディアやコンテンツ側要因)に大き く分けられる[9]としている.内部要因とは,ユーザの知覚や認知能力・運動能力,性格のパーソナ リティ,年齢・性別などのデモグラフィックな特性,観察時のムードなどが含まれる[10-12].

本実験では,内部要因に焦点を当てると,ユーザの経験などに基づく,実に多様なパーソナリティ を分類しなければならないため,外部要因に焦点を置くこととした.

外部要因に関する研究としては,以下のような事例がある.江本らは,「臨場感」や「力量感」を 視覚の観点から実験を行った結果,これらの感覚が視野角の拡大とともに,ほぼ単調増加したとい う結果を示している[13].また,小澤の研究では,聴覚によって感じる「臨場感」について検証し た結果,臨場感は映像の有無に関わらず,本来の音圧レベルよりも高い再生音圧レベルを提示した ときに,視聴者の臨場感評定値が最大化したと報告している[14].これに対し,行場らは,背景的 な「その場にいる感覚」である臨場感と別の感覚として,前景的な感覚として,そこに存在するも のとしての本物らしさを「迫真性」という定義を用いてあらわし,実験を行った[15].その結果,

臨場感は,視聴覚コンテンツの強度(視野サイズや音圧)に依存するのに対し,迫真性は,視聴覚 コンテンツの時間的な特徴(映像と音のズレ)に依存することを確認している.

また,宇塚らは,実際の操作とメンタルモデルが十分に近づいたときに生起される感情を「しっ くり感」と定義している[16].メンタルモデルとは,経験に基づいて形成される「どのような場合 にどういった感覚を覚えるか」などの情報である.本研究で用いる「リアリティ」に最も近い概念 であると考える.宇塚らの実験では,現実世界では起こり得ない現象に関するメンタルモデルに対 して実験を行った.VR 空間内で,手を掲げると爆発が起こるというシチュエーションに対しての 実験を行った結果,動作が速くなるに従いフィードバックの大きさが急激に増加する関係が成り立 つときに,しっくり感が大きくなることを報告している.

このように,本物らしさに関わる感覚については,様々な議論が報告されているが,それらの一 般性に関しては確証を得ない.本研究では,上記で臨場感や迫真性といった定義で示されている感 覚も含め,本物だと感じるかどうかという感覚を改めて「リアリティ」とし,ゲームを行う場(プ レイ空間)におけるリアリティや,アイテムやキャラクターに対するリアリティといった場合に分 類して考察する.また,関連研究を参考に総合的に判断した結果,リアリティに関する因子を,五 感などの感覚モダリティに分類して評価することにした.

(12)

9

3 VR システムを用いたリアル RPG

本研究では,2種類のリアルRPGを制作した.片方にはVR技術を導入した設計をし,導入して いないものとの比較をすることで評価・考察を行う.

本章では,VR技術を導入しないリアルRPGの内容・VRシステムを導入するリアルRPGの構 造・実装したVRシステムの内容について述べる.

3.1 VR システムを導入しないリアル RPG

今回我々が制作した,VRシステムを導入していないリアルRPGについて説明する.

まず,ゲームの概要を表3.1として以下に示す.

表 3.1 :VRシステムを用いないリアルRPG概要 公演名 奇妙なティーパーティー

公演日時 2014614・15・21・22 参加者数 133

料金 1500円/2000 チーム人数 4

制限時間 60 キャラクター数 3

世界観 不思議の国・絵本の世界

ゴール 閉じ込められた空間から脱出する

表3.1の通り,このゲームは実際に有料イベントとして行った.世界観は,不思議の国のアリス [17]をモチーフとしたものを設定し,参加者には「不思議の国・絵本の世界」といった表現で世界 観設定を提示した.ストーリーとしては,「不思議の国のお茶会に参加した参加者たちが,制限時間 内に謎を解いて会場からでなければ,永遠とお茶会の時間を過ごすことになる」というもので,お 茶会から脱するために制限時間内の課題クリアに挑むものである.キャラクターは人間3人がそれ ぞれ仮装をし,不思議の国のキャラクターを演じた.ゲームがスタートすると,参加者はプレイ空 間にある情報やアイテムを集め,組み合わせて解いて行く.その結果,次にするべき行動がわかる・

新しいアイテムが手に入る等の成果が得られる.その繰り返しで,最終的に部屋から脱出する方法

(13)

10

を見つけるというのが参加者のゴールとなる.また,課題途中でキャラクターと度々コミュニケー ションをとるように設計されている.

なお,ゲームを行うこと自体もストーリーの一部であり,ルール説明等もストーリー上で行われ る.ゲーム中の様子を図3.1として以下に示す.

図 3.1 :リアルRPGプレイ中の様子

中央に写っているのが,演者扮する,ウサギとネズミをもととしたキャラクターである.元々二 足歩行をするキャラクターだが,非現実的な内容として,人間以外の生物を設定している.

左部では,参加者がアイテムを使用している.特定の色をカットして景色を見ることのできるア イテム(不思議の国の眼鏡の設定)を用いている.

イベントの実施後,満足度評価を,(満足)5・4・3・2・1(不満)の5段階で調査したところ,参加 者133 人の回答の平均は4.48 であった.エンターテイメントとして十分に機能していることが確 認できた.

(14)

11

3.2 VR システムを導入するリアル RPG

本項では,VRシステムを導入するリアルRPGの内容について説明する.

まず,ゲームの概要を表3.2として以下に示す.

表 3.2 :VRシステムを用いたリアルRPG概要 公演名 電脳スペース攻略実験

公演日時 20141011・12・13 参加者数 80

料金 1500円/2000 チーム人数 4

制限時間 45 キャラクター数 3

世界観 電脳空間・仮想空間

ゴール 閉じ込められた空間から脱出する

こちらも,実際に有料のイベントとして広報をし,一般参加者を募った.料金やチーム数・キャ ラクター数・ゴールは表 3.1の比較対象のリアル RPG と同じである.制限時間が比較対象よりも 短いのは,開発途中の実験で,長時間のOculus Riftの使用により3D酔いをしてしまう可能性が 高くなることがわかったためである.世界観は,「異空間・別世界」の設定という意味で同等である と考える.世界観を全く同じにしてしまうと,参加者につながりや前後関係を意識されることによ って,相互作用が働く可能性があると考えられる.

ストーリーとしては,「電脳空間へダイブする研究の実験協力をすることになった参加者が,3D 空間内のキャラクターの指示に従って課題をこなしていくが,3Dキャラクターの陰謀により3D空 間に閉じ込められてしまい,そこからでるための方法を探す」というものである.ゴールや基本的 なゲーム構造は,比較対象と同じである.

(15)

12

3.3 VR システムの構成

本研究では,3.2項で説明したリアルRPGに,VRシステムを導入する.

本項では,実装したVRシステムについて述べる.

まず,システム全体の構成を図3.2として以下に示す.

プレイヤーはOculus Riftを装着して,3D空間の映像を視界に広げることができる.視点の移動は 頭を動かすことによって可能,3D 空間内での前後左右の移動には,PS3 コントローラーを使用す る.このシステムをプレイ人数分の4セット用意した.

続いて,システムの実装環境や性能環境についてまとめたものを,表3.3として以下に示す.

表 3.3 :システム環境

HMD Oculus Rift DK2 3Dモデル実装 Unity 4.5.4

入力装置 Oculus Rift / PS3コントローラー / iPad / iPhone PC機種 Mac Book Pro

CPU Core i7(I7-3720QM)

RAM 8GB

GPU GeForce GT 650M

フレームレート 70fps

図 3.2 :システム概観

(16)

13

次に,ゲーム中使用しているプレイ空間・アイテム・キャラクター・仕組みについて説明する.

システムの画像を,図3.3~3.9として以下に示す.

図3.3 3D空間概観

図 3.3~3.6 のように,VR 空間は,現実のプレイ空間の間取り・装飾・アイテムを模してデザイン

している.

図 3.4 3D空間プレイ中

図 3.5 :VR空間のアイテム 図 3.6 :現実空間のアイテム 図 3.3 :3D空間概観 図 3.4 :3D空間プレイ中画面

(17)

14

図3.7,3.8は,ゲーム進行を管理しているスタッフ(キャラクター)が操作するコントローラー

である.運営側はiPadやiPhoneで操作可能なコントローラーアプリケーションを起動し,参加者 のゲーム進行に応じて,3D 空間内の空間自体やアイテム・キャラクターに関する操作を行う.図 3.7の画面では,主に3D空間内のデザインやアイテムの変更を行う.図3.8の画面では,3Dモデ ルキャラクターの移動や音声の操作を行う.

図 3.7 :ゲームマスターコントローラー1

図 3.8 :ゲームマスターコントローラー2

(18)

15

図 3.9 :3Dキャラクターモデル[18]

3D空間内でゲーム進行を行うキャラクターとして,図3.9のような3Dモデルを使用した.3D モデルは,Unityのアセットとして有料で販売されているものを利用した.[19]

(19)

16

4 評価実験

本章では,設計したVR技術を用いたリアルRPGシステムに関する知見を得るために行った3つの 評価実験について述べる.

4.1 実験概要

本システムが,リアル RPG におけるフィクションへの没入感の創造に対して有用であることを確か めるために,以下の評価実験を行った.

まず,本システムを用いてVR空間を導入したリアルRPGと,導入していないリアルRPGに対して,

プレイヤーが感じるフィクションへの没入度の差を比較した.これを実験1とする.次に,リアルRPG におけるフィクションへの没入度とリアリティが,どのような要素に起因して得られるのかを調査した.

これを実験2とする.最後に,実験2で使用したリアリティに関する要素を用いて本システムを評価し た.これを実験3とする.

4.2 実験 1

VR技術を用いたことにより,リアルRPGにおけるフィクションへの没入感が向上するか 否かを調べる評価実験を行った.本項では,実験の目的と方法,結果について記載する.

4.2.1 目的

本システムを用いてVR空間を導入したリアルRPGと,導入していないリアルRPGに対し て,プレイヤーが感じるフィクションへの没入度の差を比較することにより,本システムの有 用性を確かめる目的で実験を行った.

4.2.2 実験方法

実験では,本システムを用いたリアル RPG を 80 人にプレイしてもらった.なお,このプ レイに関しては,実験としてではなく,有料のエンターテイメントイベントとしてチケットを 販売しプレイヤーを集め実施した.理由は2 つある.1 つ目は,リアルRPG によく参加する 被験者をランダムに一定数確保したかったため.2 つ目は,被験者のパーソナリティやモチベ ーション等の要素を,なるべく比較対象と同じ環境に近付けるためである.参加者 80 人に対

(20)

17

しプレイ後に,没入感に関するアンケート調査への回答を依頼し,承諾を得られた 73 人に対 して以下の質問を行った.

質問1.1

本公演の満足度を5段階で評価してください.

(満足)5・4・3・2・1(不満)

質問1.2

本公演の難易度を5段階で評価してください.

(難しい)5・4・3・2・1(簡単)

質問1.3

本公演以外に,リアルRPGの類のゲームイベントに参加したことがありますか?

□ ある □ ない

質問1.4

上記の質問で,あると答えた方にお聞きします.今回,バーチャルリアリティ技術を使用し ていたことで,使用していないゲームイベント(リアルRPG)と比べて,フィクションへ自然 と没入していける感覚はありましたか.

□ あった □ ややあった □ あまり変わらない □ なかった

質問1.5

奇妙なティーパーティー(我々が制作した本システムを使用していないリアルRPG)に参加 されたことがありますか.

□ はい □ いいえ

質問1.6

上記の質問で,はいと答えた方にお聞きします.どちらのイベントがより自然にフィクショ ンへと没入できましたか.

□ 電脳スペース攻略実験(本システムを使用したリアルRPGの公演名)

□ 奇妙なティーパーティー(本システムを使用していないリアルRPGの公演名)

質問1.3 ~ 1.6について補足を述べる.

質問1.3,1.4では,被験者が過去に参加した,フィクションに対してVR技術を用いていな

(21)

18

いリアルRPGと,本システムを用いたリアルRPGの比較を行うための質問をした.

質問 1.5,1.6 は,我々が制作した,VR技術を用いていないリアルRPGとの比較を行うた

めの質問をした.

確認のため,我々が作成した,VR技術を用いたリアルRPGと,用いていないリアルRPG のゲーム内容の比較一覧を表4.1として示す.

表 4.1 :各リアルRPGのゲーム内容

VRあり VRなし

公演名 電脳スペース攻略実験 奇妙なティーパーティー

公演日時 20141011・12・13 2014614・15・21・22 参加者数 80 133

料金 1500/2000 1500/2000

チーム人数 4 4

制限時間 45 60

キャラクター数 3 3

世界観 電脳空間・仮想空間 不思議の国・絵本の世界

ゴール 閉じ込められた空間から脱出する 閉じ込められた空間から脱出する

(22)

19

4.2.3 結果

実験1の結果について述べる.

質問1.1 ~1.6の回答結果をまとめた表を,表4.2 ~ 4.7として以下に示す.

表 4.2 :質問1.1の回答結果 本公演の満足度を5段階で評価してください.

評価 人数(人) %

5 15 20.5%

4 42 57.5%

3 11 15.1%

2 4 5.5%

1 1 1.4%

平均値=3.90

表 4.3 :質問1.2の回答結果

本公演の難易度を5段階で評価してください.

評価 人数(人) %

5 1 1.4%

4 6 8.2%

3 30 41.1%

2 31 42.5%

1 5 6.8%

平均値=2.55

表 4.4 :質問1.3の回答結果

本公演以外に,リアルRPGの類のゲームイベントに参加したことがありますか?

項目 ある ない 人数(人) 68 5

(23)

20

表 4.5 :質問1.4の回答結果

今回,バーチャルリアリティ技術を使用していたことで,使用していないゲームイベント(リアルRPG と比べて,フィクションへ自然と没入していける感覚はありましたか.

評価 人数(人) %

あった 23 33.8%

ややあった 40 58.8%

あまり変わらない 2 2.9%

なかった 3 4.4%

表 4.6 :質問1.5の回答結果

奇妙なティーパーティー(我々が制作した本システムを使用していないリアルRPG 詳細は後述)に参 加されたことがありますか.

項目 ある ない 人数 23 50

表 4.7 :質問1.6の回答結果

どちらのイベントがより自然にフィクションへと没入できましたか.

公演名 人数(人) % 電脳スペース攻略実験 14 60.9%

奇妙なティーパーティー 9 39.1%

(24)

21

4.3 実験 2

実験2では,以下の2点に関する調査を行った.

1. リアルRPGにおけるリアリティに関連する要素を調査する 2. リアルRPGにおけるリアリティと没入感の関係を調査する

本項では,実験2の目的・方法・結果について述べる.

4.3.1 目的

実験1では,VR技術を使用したリアルRPGは,使用していないものと比べてフィクションへ の没入感をより感じると答えたプレイヤーが多いという結果であった.

なぜそのような結果となったのか.本研究では,VR 技術を用いることで没入感が向上する 理由として,VR システムを通して体験できるフィクションのリアリティが向上していること に起因するのではないかという仮説を立てた.

実験2の目的は,リアルRPG において,リアリティと没入感の関係性を明らかにすること と,リアリティを感じる上でどのような要素が重要であるのかを調査することである.

4.3.2 実験方法

リアルRPGの経験者23名に以下のアンケート調査を行った.質問内容を図4.1 ~ 4.6とし て以下に示す.

なお,質問内の用語の定義に関しては,回答者に対して以下のような説明を加えている.

【用語の説明】

リアルRPG : 自分自身を実際のプレイヤーキャラクターとして行うゲーム

(例 :リアル脱出ゲーム・逃走中など)

リアリティ : 本物らしさ 実在すると認識できる度合い 没入感 : その世界観に入り込んでいる感覚

(25)

22

図 4.1 :質問2.1

図 4.2 :質問2.2

(26)

23

図 4.3 :質問2.3

(27)

24 図 4.4 質問2.4

(28)

25

図 4.5 :質問2.5

(29)

26

図 4.6 :質問2.6

(30)

27 図4.1 ~ 4.6について述べる.

まず,リアリティに関する質問を行った.本研究では,VR技術を用いて制作することので きるリアルRPGの要素として,プレイ空間・アイテム・キャラクターの3要素をピックアッ プした.また,関連研究より,臨場感や迫真性といった感覚を感じる要素として,五感によっ て重要度が異なるという結果がでているため,本研究のリアリティに関しても,五感をベース にして調査する要素を洗い出した.以上の理由から,プレイ空間・アイテム・キャラクターの カテゴライズに対して,それぞれ五感をベースとした各要素がリアリティに対してどの程度重 要なのかという質問を作成し,質問2.1~2.3とした.また,キャラクターに関しては,キャラ クター自らが行動や働きかけをする性質を持っているため,質問2.3と2.4ではさらに詳細な 要素を検討して質問内容に加えている.

続いて質問2.5では,没入感に関する質問を行った.同じくプレイ空間・アイテム・キャラ クターに関する要素を中心に,どのような要素が没入感に対しプラスに働くのかを調査した.

質問2.6では,どのような要素が没入感に対してマイナスに働くのかを調査する質問をした.

4.3.3 結果

本項では,実験2の結果について述べる.

質問2.1~2.6の回答をまとめた表を,表4.8~4.13として以下に示す.

表 4.8 :質問2.1の回答結果

プレイ空間(ゲームを行う空間・場所)に関して、あなたはどのような要素によってリアリティを感じるでしょうか。

かなり重要 やや重要 どちらともいえない あまり重要でない 全く関係ない

全体的な見た目 13 10 0 0 0

細部の見た目 11 11 1 0 0

空間全体の匂い 1 5 11 6 0

空間全体の音 9 8 6 0 0

空間の装飾を触ったときの感覚 1 14 5 3 0

(31)

28

表 4.9 :質問2.2の回答結果

ゲーム中に使用する物品(アイテム)に関して、あなたはどのような要素によってリアリティを感じるでしょうか。

かなり重要 やや重要 どちらともいえない あまり重要でない 全く関係ない

全体的な見た目 10 12 1 0 0

細部の見た目 10 12 0 1 0

匂い 0 6 9 8 0

音(動かしたときの音など) 4 8 8 3 0

触った感触 7 12 3 1 0

機能(例:ハサミであれば、挟めるかど うか・切れるかどうか 等)

11 9 3 0 0

表 4.10 :質問2.3の回答結果

ゲーム中に登場するキャラクターに対して、あなたはどのような要素によってリアリティを感じるでしょうか。

かなり重要 やや重要 どちらともいえない あまり重要でない 全く関係ない

全体的な姿・形・格好 14 7 0 2 0

細部の見た目 9 9 2 3 0

大きさ 2 11 6 4 0

声・音 4 13 4 2 0

匂い 0 5 7 11 0

動き 4 14 3 2 0

触った感触 0 7 9 6 1

話している内容 11 9 3 0 0

見えているかどうか(画面越しなど含む) 7 12 1 3 0

触れるかどうか 4 3 8 8 0

コミュニケーションがとれるかどうか 10 11 2 0 0

音声で会話ができるかどうか 7 10 3 3 0

面白いかどうか 5 5 7 5 1

仲良くなれたかどうか 1 4 10 8 0

愛着が湧くかどうか 4 9 5 5 0

(32)

29

表 4.11 :質問2.4の回答結果

同じく架空のキャラクターについて。以下の場合において、リアリティに差を感じると思いますか?

かなりそう思う ややそう思う どちらともいえない あまりそう思わない 全くそう思わない 画面越しに見ているよりも、視

界の中に三次元的に見えて いる方がリアリティを感じる

9 8 2 3 1

一方的なコミュニケーションを とるものよりも、双方向にコミュ ニケーションがとれるキャラク ターにリアリティを感じる

14 7 2 0 0

文字によって会話ができるよ りも、音声によって会話ができ るキャラクターにリアリティを感 じる

13 5 4 0 1

面白い・愛着が湧くなど、キャ ラクターになんらかの感情を 抱くことによって、リアリティを 感じる

8 9 6 0 0

(33)

30

表 4.12 :質問2.5の回答結果

以下のケースにおいて、そのゲームのフィクションストーリー(世界観)への没入感に対してプラスになると思いますか かなりプラス ややプラス どちらともいえない あまり意味はない 全く意味がない プレイ空間(会場)が世界観にマ

ッチしている

18 5 0 0 0

プレイ空間のリアリティが高い(本 物らしい)

18 4 1 0 0

使用するアイテムのリアリティが 高い

15 7 1 0 0

使用するアイテムが世界観にマ ッチしている

13 10 0 0 0

BGM が世界観にマッチしている 10 13 0 0 0

登場キャラクターのリアリティが高

12 10 1 0 0

登場キャラクターの演技や演出 がとても自然である

12 11 0 0 0

登場キャラクターと相互にコミュ ニケーションがとれる

8 12 3 0 0

登場キャラクターと関係性を築け ている(一緒に盛り上がった・約 束をした等)

6 14 3 0 0

プレイ時に、たまたま気分が良い 2 12 9 0 0

(34)

31

表 4.13 :質問2.6の回答結果

以下のようなケースで、そのゲームのフィクションストーリー(世界観)に対する没入感が失われると感じますか かなり失われる やや失われる どちらともいえない あまり失われない 全く失われない プレイ空間(会場)が全体的に

世界観にマッチしていない

9 13 1 0 0

プレイ空間のリアリティが全体的 に低い(本物らしくない)

9 14 0 0 0

プレイ空間の中に、一部リアリテ ィが低い箇所があった

9 12 2 0 0

使用するアイテムのリアリティが 全体的に低い

12 11 0 0 0

使用するアイテムの中に、リアリ ティの低いものがあった

8 14 1 0 0

BGM が全体的に世界観にマッ チしていない

7 14 2 0 0

1箇所でも、世界観とマッチしな い BGM が流れた

2 11 7 3 0

登場キャラクターのリアリティが 全体的に低い

8 11 2 1 1

登場キャラクターのうち、一部リ アリティが低いものがいた

7 11 4 1 0

登場キャラクターの演技や演出 が全体的にぎこちない

10 11 2 0 0

演技や演出が不自然な登場キ ャラクター(演者)が一部いた

6 14 3 0 0

プレイ時に、たまたま気分が悪 かった

1 8 13 1 0

(35)

32

次に,表4.8~4.10に対して,5段階評価をそれぞれ以下の値に変換し,平均値を算出した.

5:かなり重要 4:やや重要

3:どちらともいえない 2:あまり重要でない 1:全く関係ない

この平均値を,その要素のリアリティにおける重要度とし,重要度の高い項目順に並べ替えた.

その結果を,表4.14~4.16として以下に示す.

表 4.14 :プレイ空間のリアリティにおける重要度

項目 平均値

全体的な見た目 4.55

細部の見た目 4.41

空間全体の音 4.14

空間の装飾を触ったときの感覚 3.55

空間全体の匂い 3.05

4.15 :アイテムのリアリティにおける重要度

項目 平均値

全体的な見た目 4.41

細部の見た目 4.32

機能(例:ハサミであれば、挟めるかどうか・切れるかどうか 等) 4.32

触った感触 4.05

音(動かしたときの音な) 3.64

匂い 2.91

(36)

33

表 4.16 :キャラクターのリアリティにおける重要度1

項目 平均値

全体的な姿・形・格好 4.45

話している内容 4.36

コミュニケーションがとれるかどうか 4.36

細部の見た目 4.00

見えているかどうか(画面越しなど含む) 4.00 音声で会話ができるかどうか 4.00

声・音 3.86

動き 3.86

大きさ 3.55

愛着が湧くかどうか 3.50

面白いかどうか 3.45

触れるかどうか 3.18

触った感触 3.00

仲良くなれたかどうか 2.95

匂い 2.77

(37)

34

次に,表4.11に対して,5段階評価をそれぞれ以下の値に変換し,平均値を算出した.

5:かなりそう思う 4:ややそう思う

3:どちらともいえない 2:あまりそう思わない 1:全くそう思わない

その結果を,表4.17として以下に示す.

表 4.17 :キャラクターリアリティにおける重要度2

項目 平均値

一方的なコミュニケーションをとるものよりも、双方向にコミュニケーションがとれるキャラクターにリアリティを感じる 4.55 文字によって会話ができるよりも、音声によって会話ができるキャラクターにリアリティを感じる 4.32 面白い・愛着が湧くなど、キャラクターになんらかの感情を抱くことによって、リアリティを感じる 4.05 画面越しに見ているよりも、視界の中に三次元的に見えている方がリアリティを感じる 3.91

(38)

35

次に,表4.12,4.13に対して,リアリティに関連する項目の,没入感への影響度をグラフ化し

たものを,図4.7~4.15として以下に示す.

図 4.7 :質問2.5の回答結果(プレイ空間のリアリティ)

図 4.8 :質問2.5の回答結果(アイテムのリアリティ)

図 4.9 :質問2.5の回答結果(キャラクターのリアリティ)

(39)

36

図 4.10 :質問2.6の回答結果(プレイ空間の全体的なリアリティ)

図 4.11 :質問2.6の回答結果(プレイ空間の一部のリアリティ)

図 4.12 :質問2.6の回答結果(アイテムの全体的なリアリティ)

図 4.13 :質問2.6の回答結果(アイテムの一部のリアリティ)

(40)

37

図 4.14 :質問2.6の回答結果(キャラクターの全体的なリアリティ)

図 4.15 :質問2.6の回答結果(キャラクターの一部のリアリティ)

(41)

38

4.4 実験 3

実験3では,実験2で用いたリアリティに対する評価項目に基づき,本システムを評価する 実験を行った.

本項では,実験3の目的・実験方法・結果について述べる.

4.4.1 目的

実験 2では,リアル RPGの構成要素である,プレイ空間・アイテム・キャラクターについ て,どのような要素が重要度の高い項目であるかを評価する実験を行った.

実験3では,同様の評価項目を用い,本システムを用いたリアル RPGと,我々が作成した 本システムを用いていないリアル RPG に対して,プレイ空間・アイテム・キャラクターに関 しての評価を行った.実験2の結果と比較することにより,本システムがどのような要素に対 してリアリティを提供できているのか,または不足しているのかを調査する.また,本システ ムを用いた場合と用いなかった場合の,プレイ空間・アイテム・キャラクターのリアリティに 関する差について調査する.

4.4.2 実験方法

9 人の被験者に本システムを使用してもらい,プレイ空間・アイテム・キャラクターそれぞ れについて,次の質問を行った.

質問3.1 : 3D モデル空間に関して,次の要素にリアリティを感じましたか.

質問3.2 : 3D モデル空間内のアイテムに関して,次の要素にリアリティを感じましたか.

質問3.3 : 3D モデル空間内のキャラクターに関して,次の要素にリアリティを感じましたか.

なお,項目要素に関しては,質問2.1~2.3と同等の評価項目を用いている.

次に,我々が制作した,VR 技術を用いていないリアル RPG(奇妙なティーパーティー)

の参加者9人に対して,プレイ空間・アイテム・キャラクターそれぞれについて,次の質問を 行った.

質問3.4 : プレイ空間に関して,次の要素にリアリティを感じましたか.

質問3.5 : ゲーム中使用したアイテムに関して,次の要素にリアリティを感じましたか.

質問3.6 : 登場キャラクターに関して,次の要素にリアリティを感じましたか.

なお,項目要素に関しては,質問3.1~3.3と同じ評価項目を用いている.

(42)

39

4.4.3 結果

質問3.1~3.6の回答結果を,表4.18~4.23として以下に示す.

表 4.18 :質問3.1の回答結果

3D モデル空間に関して,次の要素にリアリティを感じましたか.

かなり感じた やや感じた どちらともいえない あまり感じなかった 全く感じなかった

全体的な見た目 6 3 0 0 0

細部の見た目 2 5 2 0 0

空間全体の音 2 5 2 0 0

空間の装飾を触ったときの感覚 0 0 2 3 4

空間全体の匂い 0 0 9 0 0

表 4.19 :質問3.2の回答結果

3D モデル空間内のアイテムに関して,次の要素にリアリティを感じましたか.

かなり感じた やや感じた どちらともいえない あまり感じなかった 全く感じなかった

全体的な見た目 3 5 1 0 0

細部の見た目 1 7 1 0 0

機能(例:ハサミであれば、挟め るかどうか・切れるかどうか 等)

1 4 3 1 0

触った感触 0 0 2 3 4

音(動かしたときの音など) 0 2 4 3 0

匂い 0 0 4 0 5

(43)

40

表 4.20 :質問3.3の回答結果

3D モデル空間内のキャラクターに関して,次の要素にリアリティを感じましたか.

かなり感じた やや感じた どちらともいえない あまり感じなかった 全く感じなかった

全体的な姿・形・格好 2 6 1 0 0

話している内容 3 2 3 1 0

コミュニケーション 0 4 3 3

細部の見た目 1 4 3 1 0

見えているかどうか(画面越しな ど含む)

- - - - -

音声会話 0 4 3 2 0

声・音 2 4 3 0 0

動き 0 3 3 3 0

大きさ 0 4 5 0 0

愛着が湧くかどうか 0 1 6 2 0

面白いかどうか 0 2 4 3 0

触れるかどうか - - - - -

触った感触 0 0 0 4 5

仲良くなれたかどうか 0 0 2 2 5

匂い 0 0 2 0 7

(44)

41

表 4.21 :質問3.4の回答結果

プレイ空間に関して,次の要素にリアリティを感じましたか.

かなり感じた やや感じた どちらともいえない あまり感じなかった 全く感じなかった

全体的な見た目 2 5 2 0 0

細部の見た目 2 5 2 0 0

空間全体の音 1 5 3 0 0

空間の装飾を触ったときの感覚 4 3 2 0 0

空間全体の匂い 0 0 5 4 0

表 4.22 :質問3.5の回答結果

ゲーム中使用したアイテムに関して,次の要素にリアリティを感じましたか.

かなり感じた やや感じた どちらともいえない あまり感じなかった 全く感じなかった

全体的な見た目 4 0 5 0 0

細部の見た目 3 3 3 0 0

機能(例:ハサミであれば、挟め るかどうか・切れるかどうか 等)

6 3 0 0 0

触った感触 5 2 2 0 0

音(動かしたときの音など) 7 2 0 0 0

匂い 0 0 9 0 0

(45)

42

表 4.23 :質問3.5の回答結果

登場キャラクターに関して,次の要素にリアリティを感じましたか.

かなり感じた やや感じた どちらともいえない あまり感じなかった 全く感じなかった

全体的な姿・形・格好 0 0 3 5 1

話している内容 5 4 0 0 0

コミュニケーション 2 5 1 1 0

細部の見た目 0 0 2 4 3

見えているかどうか(画面越しな ど含む)

- - - - -

音声会話 3 3 3 0 0

声・音 0 2 3 4 0

動き 0 3 4 2 0

大きさ 0 0 2 5 2

愛着が湧くかどうか 4 2 1 2 0

面白いかどうか 4 3 2 0 0

触れるかどうか - - - - -

触った感触 0 0 7 2 0

仲良くなれたかどうか 4 0 2 3 0

匂い 0 0 7 2 0

表4.20,4.23について,キャラクターが「見えたかどうか」「触れるかどうか」という質問に関

しては,主観評価の必要がないため,割愛した.

(46)

43

次に,表4.18から4.23に関して,5段階評価を以下の数値に換算し,平均値を算出した.

5 :かなり感じた 4 :やや感じた

3 :どちらともいえない 2 :あまり感じなかった 1 :全く感じなかった

プレイ空間・アイテム・キャラクターそれぞれに関して,表4.14~4.16のリアリティに関する 重要度,本システムに対する評価の平均値,本システムを使用していないリアル RPG に対す る評価の平均値を比較一覧化ものを,表4.24~4.26として以下に示す.

表 4.24 :プレイ空間のついての重要度と評価

重要度 評価の平均値(VR) 評価の平均値(非VR)

全体的な見た目 4.55 4.67 4.00

細部の見た目 4.41 4.00 4.00

空間全体の音 4.14 3.78 3.78

空間の装飾を触ったときの感覚 3.55 1.78 4.22 空間全体の匂い 3.05 2.11 2.56

表 4.25 :アイテムについての重要度と評価

重要度 評価の平均値(VR) 評価の平均値(非VR)

全体的な見た目 4.41 4.22 3.89

細部の見た目 4.32 3.89 4.00

機能(例:ハサミであれば、挟めるかどう

か・切れるかどうか 等) 4.32 3.44 4.67

触った感触 4.05 1.78 4.33

音(動かしたときの音など) 3.64 2.89 4.78

匂い 2.91 1.89 3.00

(47)

44

表 4.26 :キャラクターについての重要度と評価

平均値 評価の平均値(VR) 評価の平均値(非VR)

全体的な姿・形・格好 4.45 4.11 2.22 話している内容 4.36 3.78 4.56 コミュニケーション 4.36 3.44 3.89 細部の見た目 4.00 3.56 1.89 見えているかどうか(画面越しなど含む) 4.00 - - 音声で会話ができるかどうか 4.00 3.11 4.00

声・音 3.86 3.89 2.78

動き 3.86 2.78 3.11

大きさ 3.55 3.44 2.00

愛着が湧くかどうか 3.50 2.89 3.89 面白いかどうか 3.45 2.89 4.22

触れるかどうか 3.18 - -

触った感触 3.00 1.44 2.78 仲良くなれたかどうか 2.95 1.67 3.56

匂い 2.77 1.44 2.78

図  3.2  :システム概観
図  3.9  :3D キャラクターモデル[18]
図  4.1  :質問 2.1
図  4.3  :質問 2.3
+5

参照

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