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Mg2+錯体形成によりDNAリピート配列に選択的な集積 性を示す新規低分子リガンドの開発
村瀨, 裕貴
http://hdl.handle.net/2324/1806970
出版情報:Kyushu University, 2016, 博士(創薬科学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)
(様式9-3)
氏 名 村瀨 裕貴 論 文 名
Mg
2+錯体形成によりDNA
リピート配列に選択的な集積性を示す新規低分子リガンドの開発
論文調査委員 主 査 九州大学 教 授 佐々木 茂貴 副 査 九州大学 教 授 平井 剛 副 査 九州大学 准教授 麻生 真理子 副 査 九州大学 准教授 谷口 陽祐
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
遺伝子中のリピート配列が異常伸長することでリピート病と呼ばれる遺伝子疾患を引き起こす。
このリピート配列は正常遺伝子中にも低リピート数で存在しているため、疾患の原因となる長大な リピート配列のみを選択的に認識する技術の開発が強く望まれている。本研究では、独自に開発し た低分子リガンドを用いて、低リピート配列と高リピート配列を識別可能な新たな結合モデルが提 案された。この結合モデルは、隣接リガンド間での
Mg
2+錯体形成により、リガンドがリピート配列 上に集積することを想定したもので、リピート数の増加に伴うリガンドのDNA
親和性の増大によ り、高リピート配列選択的な集積を可能とするものである(Fig.1(
左))
。本リガンドは
GC
選択的DNA
副溝結合分子であるChromomycin A
3(CRA
3)
をモチーフとしたanthracenone
骨格に、二つの独立した金属錯体形成部位であるケト-
フェノール部位とヒドロキサム酸部位をあわせもつ構造が設計された
(Fig.1(
右))
。さらに、リピート配列への集積能の評価は、制限酵素を用いたアッセイ法が独自に考案された。この評価法では、
d(CGCG)
結合サイトを複数も つリピート配列に対して、DNA
結合分子が部分的に結合しているか、あるいは全サイトで結合し ているかを全長DNA
の残存を指標として調べることができる点に特徴がある(Fig.2)
。OH O O O
R2 R1
OH O O
O R2 R1
Mg2+
OH O O
O R1
OH O O O
R2 R1
Mg2+
OH O O
O R2 R1
OH O O O
R1
Mg2+
Mg2+
Mg2+ Mg2+
R2 R2 Mg2+
・・GC・・ ・・GC・・ ・・GC・・
・・CG・・ ・・CG・・ ・・CG・・
5’
3’
O
OH
O 2
H N
O
O O
O
Mg
2+Mg
2+NH O O
隣接リガンド間相互作用
DNA結合
DNAが断片化
(1) Ligandの部分的結合では部分的阻害
フリーのCGCGサイトを酵素が切断
5’-AGATACG
3’-TCTATGC
5’-AGATACGCGATTTACGCGTTAAACG
3’-TCTATGCGCTAAATGCGCAATTTGC 5’-CGATTTACGCGTTAAACG
3’-GCTAAATGCGCAATTTGC
CGTTAAACGCGATATTCGCGAAAATCGCGATTTG-3’
GCAATTTGCGCTATAAGCGCTTTTAGCGCTAAAC-5’
5’-AGATACGCGATTTACGCGTTAAACGCGATATTCGCGAAAATCGCGATTTG-3’
3’-TCTATGCGCTAAATGCGCAATTTGCGCTATAAGCGCTTTTAGCGCTAAAC-5’
切断
全長
DNA
が残存(2) Ligandの全サイト 結合では完全阻害
全CGCGサイトで切断阻害
5’-AGATACGCGATTTACGCGTTAAACGCGATATTCGCGAAAATCGCGATTTG-3’
3’-TCTATGCGCTAAATGCGCAATTTGCGCTATAAGCGCTTTTAGCGCTAAAC-5’
5’-AGATACGCGATTTACGCGTTAAACGCGATATTCGCGAAAATCGCGATTTG-3’
3’-TCTATGCGCTAAATGCGCAATTTGCGCTATAAGCGCTTTTAGCGCTAAAC-5’
切断阻害
断片
PAGE分析
全長DNA
(1) (2)
Acc II
5’–CG CG –3’
3’–GC GC –5’
✂
Fig. 1 (
左)
リピート配列への集積モデル(
右)
リガンドの分子設計(H-diE-NHOH)
Fig. 2
制限酵素阻害アッセイの概要一般的な結合分子は複数の結合サイトに対して分散的に結合するため低濃度条件下ではその全サ イト結合能は低い。そのため単独
GC
サイトに結合性を示すCRA
3は、d(CGCG)
数の増加に伴い全 サイト結合能が低下した。一方、数種の合成リガンドの中から、H-diE-NHOH
が、d(CGCG)
結合サ イト数が増加するとともに、全サイト結合能が増大し、リピート配列への集積性が明確に示された(Fig. 2(
左))
。また、複数のd(CGCG)
結合サイトを有する配列での濃度依存的な全サイト結合能を評 価したところ、CRA
3ではグラフ上で直線的な変化がみられた。これは、それぞれ独立したCRA
3の
DNA
結合がCRA
3の濃度増加に伴い飽和したことを意味している。H-diE-NHOH
では低濃度領 域で高い全サイト結合能を示しており、高い集積効果が示唆された(Fig. 2(
右))
。引き続き、
T7
プロモーター下流にd(CGCG)
サイトを含むモデルDNA
基質を用いてT7 RNA polymerase
による転写反応における阻害効果が検討された。その結果、H-diE-NHOH
はd(CGCG)
を5
個含む基質選択的な転写反応を阻害した。リピート病の発症メカニズムにはリピートDNA
か らの転写により産生される異常伸長RNA
による毒性が考えられており、リピートDNA
の配列選 択的な転写阻害は、リピート病治療に向けた一つの方向性を提示するものと考えられる。以上、本研究では二本鎖
DNA
リピート配列を低分子リガンドにて識別可能な新たな認識モデルが 検討された。本認識モデルは単独結合ではDNA
親和性の低い低分子リガンドが、隣接リガンド間 で形成されるMg
2+錯体を介してリピート配列へ選択的に集積していくというものである。さらに本 研究ででは制限酵素を用いることによってリピート配列への同時結合を効果的に評価できるアッセ イ法が考案され、リピート配列選択的集積性を示す有望な合成リガンドH-diE-NHOH
が見いだされ た。。H-diE-NHOH
リピート配列選択的な転写反応の阻害に成功した。本研究によるDNA
リピート 配列リピート病への低分子リガンドの結合モデルは、疾患関連リピート配列の選択的リガンド開発 に展開可能であり、これまで治療が不可能であったリピート病の治療薬開発に大きな貢献ができる ものと期待され、基礎創薬研究として非常に意義深いものである。従って、本研究はリピートDNA
を標的とする新しい創薬基礎を確立したものであり、博士(創薬科学)の学位に値すると認める。0 20 40 60 80 100
全長DNA残存率(%) (全サイト結合能)
H-diE-NHOH CRA3
0 20 40 60 80 100
0 10 20 30 40 50
全長DNA残存率(%) (全サイト結合能)
Ligand (µM)
CRA3
(H-diE-NHOH)
GC(1) GC(2) GC(3) GC(5) GC(7)
GC(5)
5’-AGATACATTATTTAGTAATTAAACGCGATATTCATTAAAATCTATATTTG-3’
3’-TCTATGTAATAAATCATTAATTTGCGCTATAAGTAATTTTAGATATAAAC-5’
5’-AGATACATTATTTAGTAATCGCGTTAAACGCGATTCAAAATCTATATTTG-3’
3’-TCTATGTAATAAATCATTAGCGCAATTTGCGCTAAGTTTTAGATATAAAC-5’
5’-AGATACGCGATTTACGCGTTAAACGCGATATTCGCGAAAATCGCGATTTG-3’
3’-TCTATGCGCTAAATGCGCAATTTGCGCTATAAGCGCTTTTAGCGCTAAAC-5’
5’-AGATACATTATTTACGCGTTAAACGCGATATTCGCGAAAATCTATATTTG-3’
3’-TCTATGTAATAAATGCGCAATTTGCGCTATAAGCGCTTTTAGATATAAAC-5’
5’-AGATACGCGATTTACGCGTTAAACGCGATATTCGCGAAAATCGCGTTATTCGCGATTATCGCGATTTG-3’
3’-TCTATGCGCTAAATGCGCAATTTGCGCTATAAGCGCTTTTAGCGCAATAAGCGCTAATAGCGCTAAAC-5’
GC(1) GC(2)
GC(3) GC(5) GC(7)