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韓国図書館の障害者サービスの現状と課題

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著者 宇治郷 毅

雑誌名 同志社大学図書館学年報

号 37

ページ 31‑67

発行年 2011‑11‑30

権利 同志社大学図書館司書課程

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012570

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目次

はじめに 転換期を迎えた韓国図書館の障害者サービス 第1章 障害者サービスに関わる法規

 第1節 障害者関連の現行法規

 第2節 障害者サービス関係の主要な法律 第2章 障害者サービスに関わる政策  第1節 図書館政策の歴史的展開

 第2節 「図書館発展総合計画」と障害者サービス 第3章 障害者サービスの現況

 第1節 韓国の障害者と障害者サービスの一般状況  第2節 障害者サービスの具体例

おわりに 今後の課題

はじめに 転換期を迎えた韓国図書館の障害者サービス

 現在韓国の図書館における障害者サービス(韓国では、日本で使われている障害とい う用語は「障碍」と表記されているが、本稿では障害とした。また同じく韓国における

「障碍者サービス」も「障害者サービス」と表記する)が、大きく変貌を遂げつつある。

その契機となったのは、2006年10月の「図書館法」の全面改正である。現在この法改正 に基づく改革の動きが急ピッチである。それはこの国の図書館障害者サービスの長年の 低迷を打ち破り、国家規模での積極的な障害者図書館政策の推進、障害者関連法規の整 備、障害者サービス推進のための国家中央機関の設立、全国の障害者図書館への支援強 化、主に点字図書館、公共図書館、大学図書館を中心とした全国的な障害者サービスの 展開としてすべての館種とサービス面に及びつつある。さらにこの動きを加速させたの は、2008年4月施行の「障害者差別禁止および権利救済等に関する法律」である。この 法律によって障害者サービスも一般の非障害者に対すると同じサービス提供が義務化さ

韓国図書館の障害者サービスの現状と課題

宇治郷   毅

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れたため、公共図書館をはじめあらゆる館種の図書館で障害者のための蔵書、施設、装 備、サービス等の準備と実施および予算確保の努力が一斉に展開されるようになった。

しかし韓国における障害者サービスは、点字図書館や一部の先進的な公共図書館では 1980年代から活動はあったが、大部分の図書館においては2006年の図書館法改正を契機 に新しく障害者サービスを始めたところが多い。そのため大部分の図書館が試行錯誤の 段階にあり、韓国の図書館の障害者サービスは全般的には初期段階にあると言えよう。

ただし現在進行中の障害者サービスの一連の活動は、この20年間の韓国図書館界の一連 の活動、たとえば電子図書館サービスや児童サービスなどと比較して最も後発のサービ ス分野であるとはいえ、確かな法律に根拠し、それを国家機関が支援するという形で急 速に展開されつつあり、アジア諸国の障害者サービスの中ではきわめてユニークな存在 として注目に値する。またこの障害者サービスの定着化度合いが今後の韓国図書館の真 のサービスの質と民主化をはかるメルクマールとなるとも考えられる点でも注目される。

 そこで本稿は、現在の韓国図書館界、特に公共図書館における障害者サービスの現状 とその問題点を明らかにし、今後の方向性とその課題を考察しようとするものである。

日本における先行研究はほとんどないために、本研究では韓国における先行研究を参考 にしつつ、それを補足するために不十分ながら現地訪問調査を行った。文献調査では、

主に国立中央図書館、韓国図書館協会および韓国の障害者団体発行の調査報告や広報資 料などの各種資料を使用した。特に国立障害者図書館支援センターが2008年度から毎年 度刊行している『障害者図書館サービス運営事例集』(1)および国立中央図書館刊行の『国 立障害者図書館支援センター中長期発展計画』と『図書館の障害者サービス基準および 指針制定研究』(2)は、韓国障害者サービスの現段階の水準と問題意識および今後の方向 性を知る上に非常に役立つものであった。

 現地訪問調査は、2011年2月末から3月初めにかけて実施したが、時間的制約で次の 8館の見学とインタビューにおわった。

2月25日 韓国点字図書館(ソウル市江東区)

     ソウル市立麻浦図書館(ソウル市麻浦区)

  26日 京畿道立中央図書館(京畿道水原市長安区)

  27日 ソウル市立南山図書館(ソウル市東大門区)

     ソウル市立正讀図書館(ソウル市鍾路区)

  28日 国立中央図書館国立障害者図書館支援センター(ソウル市瑞草区)

3月2日 韓国視覚障害者連合会(ソウル市永東浦区)

     韓国視覚障害者福祉館点字図書館(ソウル市江東区)

 なお現地調査にあたり、岡山県立大学大学院保健福祉学研究科大学院生の李志嬉氏の 多大な協力を得たことを付記しておく。

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〈はじめに 注〉

 本事例集は、国立障害者図書館支援センターが、全国の図書館での障害者サービスの実際の運 営現況を持続的に把握し、問題点を分析・評価するために、2008年度より毎年公募した事例の中 から優れた事例を選定して集録したもので国立中央図書館から刊行された。本研究では、2008年 度、2009年度、2010年度版を参照した。

 『国立障害者図書館支援センター中長期発展計画』(2007.12)は、韓国障害者文化協会とチョン・

ヨンギョン梨花女子大教授が中心になってまとめた国立中央図書館長への報告書である。これは 先進諸国の障害者図書館と障害者サービスの法規および内容の分析、国内の障害者サービスの施 設、資料、利用実態、利用者要求などの分析をふまえ国立障害者図書館支援センターの中長期発 展方案を政策方向、運営方向、組織・運営・協力網・職員・法令のモデルと事業を提案したもの である。『図書館の障害者サービス基準および指針制定研究』(2007.12)は、キョンソン大学産 学協力団と同大学キム・ヨンギ教授より国立中央図書館長あてに提出されたものである。障害者 サービスの基準開発のための環境分析をふまえて基準および指針(案)から成っている。両書は、

現在の国立障害者図書館支援センターの理論的根拠として受容され、実際のセンター運営と全国 の障害者図書館支援の基礎となっている。

第1章 障害者サービスに関わる法規

第1節 障害者関連の現行法規

 韓国の障害者は、憲法上法の前の平等と社会的差別の禁止という建前の中にはあるが、

長く人権と社会福祉の谷間に置き去りにされてきた。韓国における障害者のための法整 備は、国連の「精神遅滞者の人権宣言」(1972年)、「障害者の権利宣言」(1975年)、「国 際障害者年」(1981年)等の国際世論を受けて国内において人権意識が徐々に高まる 1980年以降のことである。1981年に「障碍者福祉法」が成立するが、本格的な法整備が 行われるようになるのは1990年代以降である。まず障害者福祉サービスと各種施設等を 規定した「障害者福祉法」(1990年)と雇用に関する「障害者雇用促進並びに職業リハ ビリテーション法」(1990年)が制定された。教育面での障害者対応として1994年には「特 殊教育振興法」が制定された。続いて公共の建造物や情報におけるバリアフリー施策の 推進に関する「障害者・高齢者・妊産婦等のための便宜促進に関する法律」(1997年)、

公共交通機関や道路のバリアフリー施策に関する「交通弱者移動便宜増進法」(2005年)

がある。「国家人権委員会法」(2001年)は、基本的人権の侵害についての調査を行う国 家機関であるが、障害者にとっては平等権の侵害行為となる差別行為を直接訴えること ができる機関として重要である。このような法整備の進展の上に、「障害のある人の権 利に関する条約」(2006年、いわゆる「障害者権利条約」)の批准と「障害者差別禁止お よび権利救済等に関する法律」(2007年)の制定は、韓国の障害者に関する法的環境を より高度に整備するものであり、現在の障害者サービスの発展の原動力の根拠となって いる。その他、著作権法、郵便法がある。以下、特に重要な4法について障害者サービ

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スとの関係を中心に述べる。

第2節 障害者サービス関係の主要な法律

(1)大韓民国憲法

 1948年7月12日制定の大韓民国憲法は国家の基本法であるが、その第10条で国民の幸 福追求権、第11条で平等権、第34条で生存権を規定している。これらは国民の一人とし て障害者にも当然適用される規定であるが、障害者にとっては、特に第11条第1項と第 34条第5項が重要である。第11条第1項は、「すべての国民は法の前に平等である。何 人も性別・宗教または社会的身分によって政治的・経済的・社会的・文化的生活のすべ ての面において差別されない」と規定し、平等の原則(平等権)を保障している。

 直接障害者に言及した規定は第34条第5項であり、そこでは「身体障害者および疾病 又は老齢その他の事由により、生活能力の無い国民は、法律の定めるところにより国家 の保護を受ける」と規定されており、韓国の障害者関連法制の根本法規になっている。

(2)「情報格差解消に関する法律」

 本法は、情報通信サービスにアクセス(接近)し、利用するのが困難なあらゆる社会 階層のために情報通信網に対する自由なアクセスと情報利用を保障するために2001年1 月16日に制定された。本法は、情報格差について「経済的・地域的・身体的又は社会的 条件により情報通信網を通じた情報通信サービスに接近し、又は利用することができる 機会における差」と定義し、その対象者として低所得者、農漁村地域住民、障害者、老 齢者、女性等をあげている。図書館は情報格差解消のための社会的基盤の一つであるた め、当然この法律の規定に拘束される。特に図書館の障害者サービスとの関係では、本 法第10条の情報利用施設の設置・運営等の規定が重要である。

 第10条では、国家又は地方自治体は「情報格差の解消のために必要であると認めると きは、次の各号の業務を行う情報利用施設を設置・運営することができる」と規定して いる。その業務として次の四つを規定した。

1、情報化教育の実施

2、情報通信サービスを利用することができる関連設備の提供 3、情報利用の促進のための広報

4、その他大統領令が定める業務

 そして、同条第2項で、国・地方自治団体およびその他の公共団体の施設を「情報利 用施設」として指定することができるとした。さらに同条第3項で、国又は地方自治団 体は指定された「情報利用施設」に対し「施設の設置・運営に必要な費用の全部又は一 部を負担することができる」としている。

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 この第10条の規定により、図書館は「情報利用施設」として指定されたため、情報格 差解消のための諸業務に対し国および地方自治団体から財政支援を受けることができる ことになるが、それは国および地方自治団体の判断にゆだねられることになり、その内 容は後述の「図書館法」の関連規定に影響を及ぼしている。

(3)「障害者の差別禁止及び権利救済などに関する法律」

 本法は、韓国におけるはじめての障害者差別禁止および権利救済法として、2007年3 月6日成立、同年4月10日公布、2008年4月11日から施行された。次の四つの差別を禁 止している。

1、障害を事由に正当な事由なく制限、排除、分離、拒否する直接的な差別行為 2、正当な事由なく障害を考慮しない基準を適用して障害者に不利な結果をもたらす

間接的な差別行為

3、障害者が非障害者と同等に活動に参与できるように適当な便宜を提供しない差別 行為

4、広告等を通じて障害者を差別する雰囲気を助長する行為

 図書館障害者サービスとの関係がある条項として、次の6点がある。

1、財貨と用益等の提供における差別禁止(法第15条)

 2008年4月11日から、図書館は障害を理由に障害者ではない人に提供するものと実質 的に同等ではない水準の便宜を与えるサービスを提供してはいけない。

2、施設物のアクセスと利用の差別禁止(法第18条)

 2009年4月11日以後、新築、増築、改築する図書館の所有・管理者は、障害者が当該 施設物にアクセスし利用し、非常時に退避するにあたって正当なる便宜を提供しなくて はならない。

3、情報アクセスにおける差別禁止(法第20条)

 2008年4月11日から、図書館は障害者が電子情報と非電子情報を利用して、それにア クセスするにあって、障害を理由に差別行為をしてはならない。

4、情報通信と意思疎通における正当なる便宜の提供(法第21条)

 2008年4月11日から、図書館は自らが主宰または主管する行事の開催7日前から障害 者が望む場合には、障害者の参加及び意思疎通のために必要な手話通訳者、文字通訳者、

音声通訳者、補聴機器等必要な支援をしなくてはならない。

 2009年4月11日から、図書館が生産し、配布する電子情報及び非電子情報について、

障害者が障害者でない人と同等にアクセスし、利用できるように、手話、文字等必要な

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手段を提供しなくてはならない。

5、情報通信と意思疎通における国家及び地方自治団体の義務(第22条)

 2008年4月11日から、公共図書館は障害者が障害の類型、程度、特性に従って、手話、

口話、点字、大活字等を習得して、これを活用する学習支援サービスの提供を受けるこ とのできるように必要な措置を講求しなくてはならない。

6、文化と芸術活動の差別禁止(第24条)

 2010年4月11日から、公共図書館は障害者が図書館を利用することができるように、

次のような正当なる便宜を提供しなくてはならない。

①障害者の図書館利用のための出入り口、衛生施設、案内施設、観覧席、飲料台、販売 台、および舞台壇上にアクセスするための設備及び装備の設置または改造

②障害者と障害者補助者が要求する場合、図書館利用補助人力の配置

③障害者の図書館利用を補助するための車椅子、点字案内冊子、補聴器等の装備及び機 器提供

④障害者のための図書館関連情報提供

 イ・サンヨン保健福祉家族部保健医療政策官は、「究極的にこの全ての条項は、国際 図書館協議連盟の「知的自由に関する宣言」が追求する‘すべての利用者がその資料と サービスに公平にアクセスできる図書館’を作る具体的な方法であると言える。」と、

障害者差別の克服が知的自由の確保につながるものとして高く評価している(1)

(4)「図書館法」

 従来の「図書館および読書振興法」を2006年10月4日に「図書館法」として全面改正 して、2007年4月5日に施行された。これはさらに2009年3月2日一部改正されたが、

現在の韓国の図書館に関する基本法である。2006年の全面改正では、「図書館情報政策 委員会」(大統領直属)の設置、「図書館発展総合計画等」の樹立、「地域代表図書館」

の樹立などの重要規定の新設とならんで障害者サービスの関係で次の4点が規定された ことは画期的なことであった。

 第1は、第1条で、この法律が「国民の情報にアクセスする権利と知る権利を保障す る」ためのものであり、その保障のために図書館の目的として「社会全般についての資 料の効率的な提供と流通」、「情報アクセスおよび利用格差の解消」、「生涯教育の増進」

の三つであると明記し、障害者を含む国民の情報アクセスと利用格差の解消をはっきり と打ち出したことである。

 第2は、「知識情報格差の解消」のために、図書館の責務と国および地方公共団体の

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義務を具体的に定めたことおよび障害者を「知識情報弱者」の一部であると認知したこ とである。第43条第1項で図書館の責務として「施設と知識情報格差解消のための資料、

プログラムの設置・運営」を、同条第2項で「すべての国民が身体的・地域的・経済的・

社会的な与件に関係なく、公平な知識情報サービスの提供を受けられるように、必要と されるすべての措置を講ずること」を、さらに同条第3項で「地域情報格差解消のため に施設とサービスを提供する場合には、障害者を含む大統領令が定める知識情報弱者が 知識情報へのアクセスおよび利用の便宜を図ることに最善を尽くすこと」が規定された。

 第3は、国家および地方自治団体の知識情報格差解消のための支援を規定したことで ある。第44条第1項で、「国家および地方自治団体は知識情報弱者が図書館施設とサー ビスを自由に利用できるように必要な施策を講究しなくてはならない」と、「講究」に ついては義務化した。しかし同条2項で、「図書館が資料、施設、情報機器およびソフ トウェアー等を備えるにあたり必要な財政の一部を支援することができる」と、「支援」

については義務化を避けたことは問題を残したと言えよう。

 第4は、国家レベルでの図書館障害者サービス支援のための組織の設立・運営規定が 新設されたことである。第45条第1項で、「国立中央図書館長所属下に知識情報弱者中 で特に障害者に対する図書館サービスを支援するために国立障害者図書館支援センター を置く」と、韓国の図書館サービスの歴史において始めて障害者のための国立のセンター が設立された意義は大きい。同条第2項は次の7項目の業務を規定している。

1、図書館の障害者サービスのための国家施策の樹立および総括 2、障害者サービスのための図書館基準および指針の制定

3、障害者のための読書資料・学習教材・利用説明書等の製作・配布 4、障害者のための情報サービスと特殊設備の研究および開発 5、障害者の情報サービスを担当する専門職員の教育

6、障害者の情報サービスのための国内外図書館との協力 7、その他障害者に必要な図書館サービスに関する業務

 また2009年3月の改正では、障害者サービスに関して法第20条第2項で視覚障害者等 のための代替資料の効果的製作・普及のためのデジタル・ファイルの納本条項が新設さ れた。

〈第1章 注〉

 イ・サンヨン「障害者差別禁止および権利救済等に関する法律」『図書館界』韓国国立中央図 書館、162号、2008.5参照。

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第2章 障害者サービスに関わる政策

第1節 図書館政策の歴史的展開

 まず韓国の図書館政策の歴史をふりかえってみる。解放後の韓国の教育行政、文化行 政は、1980年代までは歴代独裁政権のもとで、経済産業の重視と南北対立による財政逼 迫のもとでかならずしも十分なものではなかった。中でも図書館行政は冷遇されていた といえる。1963年に初めて「図書館法」が制定されるが、80年代前半までは図書館実態 面で見ると図書館数の増大に結びつかず、またサービス内容の後進性を脱却することが できなかった。図書館障害者サービスについても特段の規定はなかった。

 やっと韓国の図書館が発展の緒につくのは80年代後半にいたってからである。国力の 回復と経済発展、社会の民主化の動きを受けて、この時期から文化政策が重視されるよ うになった。文化政策も中央集権の文化政策から地方自治体を中心にすえた文化政策へ と転換していった。1990年には、「文化部」(94年に文化体育部、2004年に文化観光部、

2008年に文化体育観光部に改編)が新設され、同年韓国の図書館政策と国立中央図書館 の所管が教育部から文化部に移管され、韓国図書館の発展が開始された。特に、1998年 以後の金大中政権、蘆武鉉政権時代は現在の韓国図書館の発展の基礎が準備された。韓 国社会の情報化の進展、生涯学習時代の到来は、図書館の機能を従来の教育機能に加え て文化機能、情報機能をより重視するものとした。

 図書館政策面では、「図書館法」の改正があった。まず1987年に改正され、91年には「図 書館振興法」と名称を変えたが、2006年にふたたび全面改正され、その時々の時代の要 請をうけとめた内容となった。図書館政策面でも、現在の政策の基礎となるものが1980 年代後半から策定され始めた。1989年制定の「図書館発展基本法案」(文教部が「図書 館発展委員会」に提出したもの)、2000年制定の「図書館情報化推進総合計画」(文化観 光部)、2008年制定の「図書館発展総合計画 2009-2011」(図書館情報政策委員会)な どがそれである。サービス面でも、大衆密着型、利用者中心の図書館へと変化した。

 政府の図書館政策部署についても、1991年に初めて図書館を専門に担当する課として

「図書館政策課」が置かれた。この間、見るべき図書館障害者サービス政策はなかった が、障害者サービスが全然行われなかったわけではない。しかしそれは、細々と民間有 志・団体と先進的な公共図書館によって担われてきたにすぎなかった。

第2節 「図書館発展総合計画」と障害者サービス

 韓国の現段階における障害者サービスに関わる政策は、「図書館発展総合計画」に基 本的に規定されている。この計画は「図書館法」第14条、第15条、第16条に根拠をもち、

大統領直属機関としての図書館情報政策委員会が、全館種を含む図書館のための5年ご

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との計画の樹立、年度別施行計画の樹立、計画推進のための国家および地方自治団体の 必要財源確保を規定している。この計画の中で8つの推進戦略が提示されている。それ は図書館へのアクセス性向上、サービス環境の改善、創意的な人材養成のための図書館 の役割強化、知識情報格差解消による社会統合への寄与、国家知識情報活用のための国 家図書館体系の再定立、教育・学術・研究の核心支援センターとしての大学・専門図書 館振興、図書館人力の専門化および関連制度の推進、知識情報の拡散および共有のため の図書館の実現、図書館協力の基盤強化でグローバル図書館情報サービスの実現である。

障害者サービスに関係するのは、知識情報格差の解消による社会統合への寄与の部分で ある。その中身は、知識情報弱者(韓国の表記は知識情報脆弱階層)に対する図書館サー ビスの拡大、障害者のための図書館サービス体制の活性化、デジタル情報の格差解消の ための知識情報サービス強化である。

 この計画では、高齢者、子ども、障害者、在監者、多文化家庭を知識情報弱者として とらえ、図書館プログラムの強化を提起している。その主要なものは、次の4点である(1)

①この人たちのための図書館アクセス性向上およびサービス環境の改善である。そのた めに図書館プログラムの拡大、専門人力、コンテンツ、施設および資料の拡大、地域 図書館活性化のための推進体系の改善である。

②知識情報格差解消で社会統合に寄与することである。そのために知識情報弱者のため の図書館サービスの拡大、一対一で向き合うサービスの開発、障害者の類型別資料の 開発・普及、読書プログラムや目録を開発すること、障害者サービスを行っている図 書館のネットワーク構築、視覚障害者のための代替資料の開発および活用の改善、点 字図書館協力ネットワーク構築、点字・音声図書など代替資料の生産技術の開発・製 作・普及、デジタル技術による視覚障害者専用の記録方式による著作物の複製・配布・

電送が必要である。

③障害者のための図書館サービス体制の活性化である。そのためには、読書障害者の対 象範囲を拡大するために情報サービス体制を拡充すること、公共図書館に視覚障害者 のための点字および音声図書の所蔵拡大、障害の類型別に合わせたサービス開発、低 視力老人層が親しめる読書環境の造成、デジタル障害者サービスの拡大、国立障害者 図書館支援センターの支援および機能強化、全国障害者図書館サービスの協力網構築、

障害者サービス関連の施設基準を制定すること、障害者用情報資源の拡大、障害類型 別サービスプログラムの開発・普及、障害者総合情報ポータルサイトの構築などが必 要である。

④デジタル情報格差解消のための知識情報サービス強化である。そのためには、知識情 報弱者のための公平な情報アクセス機会の持続的な提供、公共図書館のデジタル資料

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室の環境改善、障害者のための補助機器設置の義務化、老人が親しめる環境造成、ソ フトウェーア、コンテンツの側面での情報アクセス権強化による質的水準の向上、実 用本位の一対一型情報活用教育による情報利用能力の向上、障害者と老人など知識情 報弱者への一対一型情報活用教育の向上、情報活用教育を専門職業教育と連携させる こと、知識情報弱者のための創業および就業活動の支援、知識情報格差解消のための 知識情報弱者の尖端情報技術およびサービスの受容能力の強化が必要である。

〈第2章 注〉

 『国立障害者図書館支援センター中長期発展計画』国立中央図書館、2007.12、p100~102

第3章 障害者サービスの現況

第1節 韓国の障害者と障害者サービスの一般状況

(1)障害者サービスの歴史

 韓国の障害者に対する図書館サービスは、まず1960年代後半より視覚障害者に対して 始まった。ユク・ビョンイル(陸炳一)は1969年12月ソウル市鐘路区に韓国で初めての 私立の点字図書館である「韓国点字図書館」を設立した。しかし1970年代は障害者サー ビスに対する社会の関心が低く新たな発展は見られなかった。1980年代に入り、民間有 志や団体によって点字図書館が7館開館し、公共図書館でも初めて「ソウル市立鐘路図 書館」と「仁川ファドジン図書館」で障害者サービスが始まった。さらに1992年以降ソ ウル市の1区に1館ずつ障害者図書館を設置するという条例が出て、区ごとに点字図書 室が開館し、部分的ではあるが公共図書館が障害者室を開設し始め本格的な障害者サー ビスが始まった。

 まず現在の韓国図書館界は、障害者サービスの対象である障害類型と障害者数をどの ように認識しているのであろうか。障害類型については「障害者福祉法施行令」第2条 に明示された15の障害の種類に準拠してサービスを講究していることが知られる(1)。こ れによると精神的障害として知的障害、精神障害、自閉的障害が、身体的障害として肢 体障害、脳病変障害、視覚障害、聴覚障害、言語障害、顔面障害(以上が外部身体機能 障害)、腎臓障害、心臓障害、肝障害、呼吸器障害、腸瘻・尿瘻障害、癲癇障害(以上 が内部器官障害)である。

 次に障害者の現況について、韓国国立中央図書館は保健福祉部韓国保健社会研究院の 資料に基づき次の指摘をしている。つまり2005年現在で、在宅障害者は2,101,057人、

施設入居障害者は47,629人、障害者全体は2,148,686人で、出現率は4.59%である。そ の詳細は次の図のとおりである。

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〈2000年および2005年の障害者実態調査による推定障害者数の比較〉

区分 2000年

実態調査

登録 障害者数

2005年

実態調査 登録率

計 1,449,496 1,666,329 2,148,686 77.7

主たる 障害 類型別 障害者数

肢体障害 605,127 923,183 1,005,618 91.8 脳病変障害 223,246 154,614 270,853 57.1 視覚障害 181,881 180,526 221,166 81.6 聴覚障害 148,707 151,184 229,159 66.0

言語障害 26,871 13,874 20,947 66.2

精神遅滞 108,678 123,868 125,563 98.7

発達障害 13,481 8,754 23,478 37.3

精神障害 71,797 59,223 91,253 64.9

腎臓障害 25,284 40,288 40,355 99.8

心臓障害 44,424 12,226 42,007 29.1

呼吸器障害 - 10,815 30,186 35.8

肝臓障害 - 4,583 13,443 34.1

顔面障害 - 1,311 4,394 29.8

腸瘻・尿瘻障害 - 8,848 15,508 57.1

癇疾障害 - 6,032 14,756 40.9

(『図書館の障害者サービス基準および指針制定研究』p5)

(2)障害者サービスの一般状況

 次に、韓国の図書館の障害者サービスの現況はどうか。2007年9月、国立中央図書館 が実施した「全国図書館障害者サービス現況調査」(2)は、全国の公共図書館564館中の 440館、点字図書館40館中の37館、特殊学校(日本の特別支援学校のことで、韓国語の「特 殊」には差別的ニュアンスは無い、視覚、聴覚、知的、身体、情緒の各障害児学校があ る)図書館144館中の98館を対象としたものである。この調査結果は、公共図書館の 45.5%が何らかの障害者サービスを実施していることを明らかにしている。しかし点字 図書館、特殊学校図書館および先進公共図書館を除く各種の図書館、特に公共図書館に おいては次の4点の後進性が指摘されていて、今後の改善点とされている。

 第一は、施設・設備面での不備である。公共図書館の45%ほどが障害者サービスを行っ ていると回答しているが、その大部分は施設面での障害者対応に限られていることであ る。中でも障害者用トイレ、障害者用駐車場、傾斜路、誘導ブロックに限られている現 状がある。ただし点字図書館、特殊学校、一部の先進公共図書館では、以上の他点字音 声認識装置、画像転画機、ハンドレイル点字触知板、警報および避難施設、自動開閉門 などを備えている。

 第二は、資料面の不備がある。視覚障害者用の点字図書、録音図書、電子点字図書、

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墨点字混用図書、聴覚障害者用の字幕および手話付きのビデオなどの代替資料を保有し ている図書館がほとんどなく、保有していても数が不足していること。

 第三は、図書館サービス面の不備である。宅配サービスおよび郵便貸出サービスはご く一部の公共図書館で実施されているが、ほとんどの公共図書館では実施されていない。

ただし点字図書館は、上記のサービス以外にも対面朗読、録音・点訳・拡大文字サービ スを提供している。

 第四は、人的面の不備である。点字図書館の場合は専門の担当者を75.7%配置してい るが、公共図書館の場合は12.5%に過ぎない。

第2節 障害者サービスの具体例

(1)国立中央図書館国立障害者図書館支援センター 1)センターのビジョン、目標、推進戦略

 国立障害者図書館支援センターは、2006年10月4日制定公布された「図書館法」第45 条によって、国立中央図書館長直属として設立された。知識情報弱者の中でも特に障害 者の情報サービスを支援することを目的としている。このセンターは、国内のすべての 図書館の障害者サービスのための国家政策の制定および総括機関であり、支援センター であると言える。

イ、このセンターが掲げるビジョンは、次の二つである。

 第一は、「図書館を通じて、障害を克服し、世の光に」であり、これは障害者が図書 館を通じて各自の能力を向上させることにより、社会に貢献できるようになることを意 味する。

 第二は、「障害者が平和であればすべての人が平和になります」であり、これは障害 者が幸福な生活を送れることが非障害者もより幸福な生活を送れることになること、障 害者も非障害者も同じ社会の平等な構成員であることを意味する。

ロ、目標は、次の二つである。

 第一は、図書館のアクセス性向上と効率的な障害者サービスの提供による国民として の基本権保障であり、国民としての生活の質を向上させ福祉社会を実現することである。

 第二は、障害者に対する図書館サービス拡大および活性化を通じて知識情報格差を解 消し、社会参与と統合をめざすことである。

ハ、推進戦略は、基礎段階、構築段階、発展段階の3段階がある。

 基礎段階は、2008年~2010年間であり、国立障害者図書館支援センター建立推進委員 会の構成、障害者図書館サービス基準および指針の制定、代替資料の政策提案および推 進、関連機関との連携方案の準備である。構築段階は、2011年~2014年間であり、国内 外の図書館との相互協力締結、サービスネットワーク構築、障害者図書館総合情報シス

(14)

テムを通したサービス提供等である。発展段階は、2015年~2017年間であり、国立障害 者図書館支援センターの建物の完成による人力の増員、国民の参与へのキャンペーン、

障害者図書館サービス関連の国内外交流の活性化である。

ニ、機能

 センターの核心的な機能として、次の七つに集約している。

1、障害者サービスのための政策樹立

2、関連法令の制定・改正およびサービス基準・指針の準備 3、全国障害者サービス協力網の構築の主導と支援

4、障害者用読書資料の開発および製作

5、障害者サービスおよび特殊設備に関する研究開発の遂行 6、専門人力の再教育および研修プログラム開発運営

7、国内外図書館の障害者サービスについての情報および事例の収集(3)

2)主要な業務

 センターは発足以降知識情報格差の解消のための代替資料の製作をはじめ各種のサー ビスを精力的に展開している。中でも2008年4月から開始された障害者対象の資料の「国 家相互貸借サービス」や2009年4月に開設した「障害者情報広場」は図書館障害者サー ビスに新しい段階をもたらした。

①代替資料の製作・普及事業

 この事業は、2003年から実施されているものを引き継いでいる。この間、電子点字図 書、画面解説ビデオ、手話映像図書など多様な代替資料を開発・製作・普及してきてお り、障害者の知識情報利用と格差解消に大いに貢献している。

〈国立中央図書館代替資料製作総数(2003年~2009年度)〉

年度 

 区分 総計 2003-2006 2007 2008 2009

総計 5,466 3,466 441 1,099 460

電子点字 図書

PDF 冊数 4,306 3,416 305 286 299

面数 1,666,836 1,301,026 140,144 105,920 119,746

VBF 総数 838 - - 731 107

面数 229,725 192,146 37,579

BBF 62 62

点字図書 166 50 116

画面解説ビデオ 4 4

手話映像 90 20 20 50

(『国立中央図書館年報 2009』国立中央図書館、2010.8、p189)

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②障害者対象の国家相互貸借サービス(「本の海」)への支援

 図書館を直接訪問することが困難な障害者を対象に2008年4月より国家相互貸借サー ビス(「本の海」)を支援している。これは障害者の申請により、本センターが図書館対 図書館の往復宅配費(1件あたり4,500ウオン)を無料で支援するものである。さらに 図書館に到着した資料が障害者の手元に直接届くように当該図書館と自治体に費用の負 担をするように制度改正を行うよう広報し、その普及に努めつつある。2009年度には、

視覚・聴覚障害者に対する代替資料と肢体(1、2級)障害者に対する単行本(一般資 料)を合わせた無料宅配サービス支援実績は100館150件であった(4)

③「障害者情報広場」

 この施設は、障害者の図書館利用の便宜をはかり、蔵書に対するアクセスビリティを向 上させるために2009年4月13日に開室された。この開設は、障害者の情報格差の解消に対 する国立中央図書館の強い意思を内外に示すものであり、アジアで最初の国立の障害者 図書館支援組織の発足として注目に値する。正規職員1名と視覚および聴覚障害の利用 者に対応する専門の補助者2名が配置されている。設備としては、映像室、対面朗読室、

情報検索室、閲覧席、セミナー室がある。補助工学機器は、視覚障害者用として点字プリ ンター、読書拡大機など18種類、聴覚障害者用として公共利用補聴器、画像転画機など8 種類、肢体障害者用に特殊マウス、特殊キーボードなど10種類が備えられている。蔵書は、

点字図書、ボイスアイ、DVD、ビデオテープ、一般図書などがある。2010年4月までの1 年間に、370余名の障害者(視覚障害者107名、肢体障害者96名、聴覚障害者90名、精神障 害者16名など)の利用があったが、そのサービスとして対面朗読、点字、映像物画面解説、

字幕挿入、情報検索支援、案内歩行援助など障害の類型別に一対一に向き合うサービスを 提供した。また利用に関する各種相談や補助工学機器についての教育なども実施している。

このような施設、設備、情報機器およびサービスは、全国図書館の障害者資料室の標準モ デルとなっている。また国内外図書館関係者および機関を対象として障害者に図書館資 料をより容易に便利に利用することができるように支援する多様な相談に応じている(5)

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④「図書館障害者サービス基準および指針」の作成(2009年)

 この基準および指針は、「図書館法」第45条第2項第2号に根拠して制定されたもので、

韓国において最初の図書館障害者サービスのための基準および指針である点で意義があ る。各図書館は、その図書館が当面している障害者や障害類型に合わせて、この基準お よび指針を準用することが期待されている。その内容項目は次の通りである。

内容:図書館内・外部の物理的アクセス(建物路の進入、図書館内への進入、エレベー タ、案内デスクおよび貸出デスク、書架、閲覧席、トイレ、視覚および聴覚障 害者のための警報・避難設備)、蔵書構築(視覚障害者のための代替資料、聴 覚障害者のための代替資料)、サービスとプログラム(図書館訪問者に対するサー ビス、図書館非訪問者に対するサービス)、補助工学機器(視覚障害者補助工 学機器、聴覚障害者補助工学機器、肢体障害者補助工学機器)、ウェッブ・ア クセスとユニヴァーサル・デザイン、人力支援の開発および活用

⑤障害者サービス関係出版物

『図書館の障害者サービス基準および指針制定研究』2007.12

『国立障害者図書館支援センター中長期発展計画』2007.12

『2008年度 第1回障害者図書館サービス運営事例集』2008.7(各年度刊行)

『2009 国立中央図書館年報』2010.8(各年度刊行)

(2)優秀事例からみた障害者サービスの実際

 次に、韓国の図書館の障害者サービスの実態を把握するために、国立障害者図書館支 援センターが2008年度より毎年度発行している下記の事例集の中から点字図書館、公共 図書館、大学図書館、専門図書館についてそれぞれ2図書館(専門図書館は1館)をと りあげて検討してみる。

『2008年度第1回障害者図書館サービス運営事例集』2008.7

資料書架(ボイスアイ、画面解説、映画など) 閲覧室内にて(左が筆者)

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『2009年度第2回障害者図書館サービス運営事例集』2009.7

『2010年度第3回図書館障害者サービス優秀事例集』2010.7

【1】点字図書館

 事例集には、優秀事例として次のものがとりあげられている。

韓国点字図書館(2008年度):「視覚障害児童のための読書プログラム開発と運営」

韓国点字図書館(2010年度):「障害児童を訪ねていく「ブックソリバス」運営事例」

韓国視覚障害者福祉財団点字図書館(2009年度):「視覚障害者の文化プログラム活性化 運営事例報告」

韓国視覚障害者福祉財団点字図書館(2010年度):「幸福を運ぶ移動図書館運営事例報告」

釜山点字図書館(2010年度):「成人視覚障害者の文化享受権伸長のためのサムルノリ教 室」

 このうち次の2館の事例をとりあげる。

 「韓国点字図書館」

1)韓国点字図書館の歴史

 1969年12月に初代館長である故陸炳一が設立した。1979年国家によって初の点字図書 館として認可された。現在まで次の事業を展開している。各種点字図書の出版、月刊点 字誌「セキル」(1975年創刊、88年より週刊誌「青松」と改名)刊行、ラジオ放送「光 明の声」(1977年から10年間放送)、相談室開設(1985年)、移動図書館開始(1987年)、

韓国点字図書館協会発足(1986年)の中心となる、ホームページ開設(1999年)、資料 の配達サービスを開始(2000年)、コンピュータ設置(2000年)、読み聞かせプログラム 開始(2006年)、点字本、録音図書の製作開始(2006年)現在の職員数は15人。運営費は、

国からの補助、寄付金、図書販売金、法人支援金から成る。

正面入口 録音図書室

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2)優秀事例

①優秀事例名「視覚障害児童のための読書プログラム開発と運営」

イ、実施目的

 読書の楽しみからもっとも取り残されているのは視覚障害者であり、その中でも視覚 障害児童のための読書環境はほとんど存在しない状態であった。入学前の視覚障害児童 は、まだ点字資料を読むことができないので、読書のためには本を読んでくれる人が必 要である。しかし公共図書館では非障害児童のための読書プログラムは多数あるが、視 覚障害児童を対象としたものは皆無であった。そこで2006年に「視覚障害児童のための 読み聞かせプログラム」を開始したが、問題が多かった。その最大のものは、入学前の 視覚障害児童を対象とした本がほとんど存在しなかったことである。そのため点字絵本 を自前で開発しなければならなかった。開発された点字絵本は、『ハングルあそび』『数 字あそび』『書きあそび』の3種であった。またこの年令を対象にした既存の絵本を利 用して点字ラベル図書も開発した。これは墨字絵本の文字の個所に同じ内容を点字で書 いたラベルを貼ったものである。また読み聞かせのための部屋の確保と児童のための専 用書架の設置も大きな問題であったが解決された。また読み聞かせを行う人材が必要で あったが、これも協力者を得ることができた。

ロ、各種プログラム 1、読み聞かせプログラム

 5才~10才の視覚障害児童を対象に月二回館内で開催した。このプログラムは、子ど もだけでなくその家族や近隣の住民にも参加を得て、障害者と非障害者が共に読み聞か せをしてもらい、絵本の中身の話を心ゆくまで話し合い楽しむことを目的としたもので ある。

2、絵本上映プログラム

 このプログラムは、視覚障害児童が絵本を映画のように楽しみ、絵本がもたらす感動 を味わってもらうことを目的にしたものである。子どもや父母が読んだ中でもっとも印

ブックソリバス ブックソリバスの内部

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象に残った絵本をプロジェクターを通じて上映するものである。視覚障害児童を含む家 族および近隣の非障害者を対象に、年2回図書館内で実施した。上映では、本の内容朗 読および画面解説をおこなった。上映と同時に、皆で歌を歌ったり、参加した家族に童 話など別の本を朗読してもらったり、多様なイベントを用意し、より内容を豊富にした。

3、体験プログラム

 このプログラムは、5才~10才の視覚障害児童と家族を対象に年1回戸外での読書体 験と自然の事物に触れてもらうことを目的として開催した。2007年度はソウル近郊の文 化樹木園の広場で絵本の読み聞かせを行ない、また森の中で参加者全員でいろんな遊び をして楽しんだ。

(『2008年度第1回障害者図書館サービス運営事例集』2008.7、p60~96)

②優秀事例名「障害児童を訪ねていく「ブックソリバス(動く音声図書館)」運営事例」

実施目的

 移動図書館プログラムであり、視覚障害児童が非障害児童と同等の図書館サービスを 享受できることを目的としている。

プログラム

 「ブックソリバス(動く音声図書館)」運営 1)目的

 視覚障害児童の読書機会を増大し非障害児童との格差を解消するために、直接障害児 童を訪ねていき多様なサービスをすること。また非障害児が障害者に対する正しい認識 を持つようにすること。

(サービスプログラム)

イ、閲覧、貸出

 多様な種類の代替資料を備えて閲覧と貸出サービスを実施している。バスに備える本 は蔵書の副本をできるだけ当てたいと考えているが、予算的な理由でそれほど副本は準 備できていない。新刊点字本はまずバスの方を優先して新鮮度を保つようにしている。

点字図書以外の代替資料は副本を別途製作してバスに備えるようにしている。録音図書 は1冊副本を製作してそれを当てている。点字ラベル図書、点字墨字混用図書と触角(ふ れる)図書は利用率が相対的に高いので2冊ずつ副本を製作して当てている。蔵書にな い図書が申請された時は、製作して提供している。旧刊と新刊本をうまく循環させて、

利用率を高め、鮮度を維持するように努力している。

ロ、本の読み聞かせ

 視覚障害児の特性と年齢に合わせて本の読み聞かせプログラムを実施した。まず2006 年から、図書館内で始めて多くの反応のあった障害児童対象の読み聞かせプログラム「聞

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かせてあげて、聞いてくれる絵本の部屋」をバス(移動図書館)にも移し、より多くの 障害児童に行なうことができるようになった。これはバスの中で、講師が障害児童に本 を読んであげ、ともに話をし、児童が自ら楽しみを感じることのできることに焦点をあ てた。このプログラムは効果をあげ、障害児童は自分で本を読むようになった。この読 み聞かせには、英語絵本の読み聞かせもある。これは英語に対する言語教育的な目的か らではなく、話の流れに対する関心を高めさせることに焦点をあてたものだ。英語で話 すことに負担感を減らすために英語の歌を繰り返して聴いて、一緒に歌を歌い自然に英 語で話をできるように実施した。これは現在、視覚障害児童の言語発達と社会性形成に も多くの助けとなる英語童話プログラムとして発展している。

 また読み聞かせプログラムの一つに、これまで図書館との距離が遠く、また本に興味 を示さなかった重複障害児童、特に発達障害や自閉症状を見せる重複障害児童が本の中 の話に興味をもつために各種の楽器や音声を利用して本の中の話を面白く表現したり、

多様な触角資料を利用したりして話の一部分を表現する方式の「トントントン本の音の 部屋」というプログラムもはじめた。さらに毎学期の最後の時間に「絵本上映」プログ ラムもバスに設置したビームプロジェクターとスクリーンを活用して進めた。

ハ、非障害児童のためのプログラム

 非障害児童に対して、障害児童や障害者に対する認識を改善するためのプログラムと して、読書週間、読書行事に障害体験をしてもらったり、点字教育プログラムの紹介や 障害児童の読書教育に対する理解を高める活動をした。

(移動図書館としてのバス)

 広い空間を確保し、多様な代替資料を十分に載せることができるように、またバスの 中で気軽に自由に本が読めるように、さらに本の読み聞かせプログラムが行えるように、

既存の小型バスではなく、45人乗りの大型バスに変更した。

 バスの内部は、三段書架、収納場所、司書のための業務用設備(机、椅子)、中央は 床に座って本が読める空間の確保、冷暖房施設完備、読み聞かせする人のための一段高 くなったベンチ、音響施設とビーム・プロジェクターなどを設置した。

2)資料

 児童(幼児、初等学校生徒)用点字図書404冊、点字ラベル図書1,023冊、触角図書61 冊、点字墨字混用図書28冊、児童用録音図書472冊、新刊図書コーナー用の図書

3)職員

 バス運営時の人員構成は、専任職員1名、補助者1名、講師1名、運転者1名。

 専任職員(1名)の役割は、関係機関との連絡、全体日程の調整、本の読み聞かせプ ログラムの企画、講師および利用者に関する渉外などを担当。

 補助者(職員とボランティアの2名)の役割は、資料の閲覧、貸出業務、プログラム

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の進行の補助を担当。

 本の読み聞かせなどの講師(3名)の役割は、児童が本に親しむことができるように なることを一番の目的に読み聞かせなどを担当。

 運転者(1名)

4)予算

 人件費は、図書館内部の職員があたるので問題は少ない。外部の講師のための予算は ソウル市の支援を受けている。代替図書の製作費、プログラム運営費、ボランティアの 司書1名と講師1名に対する人件費、車の燃料費、維持管理費などはソウル市より支援 を受けて実施している。

5)訪問先

 最初はどこを対象に実施するのがよいかよくわからなかったが、経験を積む中でソウ ル市内の盲学校二ヶ所に行くことが一番効果的であることがわかった。それは盲学校周 辺に障害児童が一番多く集まっているからである。年間70回訪問した。そこで読み聞か せ活動、文化体験活動を行った。日程、時間は学校、学父母と協議して決めた。

6)広報

 各種団体、各種言論機関に対してサービス活動趣旨を広報。盲学校には、停車場所、サー ビス内容を学生に知らせるように依頼して広報した。図書館のホームページ、広報紙も 活用した。図書館に登録している児童会員には常時広報した。その他、「全国生涯学習 祝祭」「全国図書館大会」などのイベントにあわせて広報した。

(『2010年度第3回図書館障害者サービス優秀事例集』2010.7、p11~24)

 「韓国視覚障害者福祉財団点字図書館」

③優秀事例名:「幸福をはこぶ移動図書館運営事例報告」

1)これまでの障害者サービスの歴史

 本図書館は、韓国視覚障害者福祉財団所属福祉館の1機関として1983年に207人の図 書館会員をもって始まり、2009年現在で6,674人の会員がいる。現在までに、録音図書 127,572冊、点字図書990冊、CD図書5,311枚、月刊ソリ(音声)雑誌4,187冊、「女性 中央」413冊、画面解説音声映画1,346回を貸し出した。財団独自の具体的な事業として は、次のものがある。

・1973年 点字図書の製作開始、貸出普及

・1981年 録音図書の製作開始

・1983年 録音図書の貸出開始

・1992年 教科書の点訳製作・普及

・2000年 CD図書の製作・普及

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・2001年 電話ARS(音声応答システム)図書館運営開始

・2004年 「ソリ(音声)本」デジタル音声点字図書館を開始

・2008年 画面解説ソリ(音声)映画の製作・普及

・2008年 デジタル情報室を開設

・2009年 移動図書館プログラムの開始

点字図書館正面 視覚障害者デジタル情報室

録音図書の発送作業室 ARS電話図書館システム室

2)移動図書館運営 イ、開始の理由

 最近点字図書・録音図書などの貸出が減少してきたことが原因である。理由の第1は、

図書配達の時間的な遅れの問題と郵便物紛失などである。第2は、多様なデジタル図書 館(ソリ本、ARSなど)を構築してきたが、コンピュータを利用できない利用者と利 用できる利用者の間の情報格差が拡大してきたこと。第3は、利用者の個別の読書環境

(職業、家族関係、生活、経済程度など)の状況把握が十分でなかったこと、である。

利用の減少をくいとめて、利用者に密着したサービスに転換する必要に迫られて、利用 者個々に合致したサービスとして移動図書館プログラムを開始するにいたった。

ロ、「幸福をはこぶ移動図書館プログラム」の実際

 2009年4月より、ソウル特別市からの財政的支援を受けて、ソウル特別市内の六つの

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区内の登録会員475人(2008年末現在)を対象に移動図書館による個別サービスを実施 した。2008年度の具体的プログラムの内容は次のようなものであった。

・会員個人宅への図書貸出(98人の会員にのべ106回配達)

・視覚障害児童と晴眼児童を対象にした童話口演とストーリーテリング(9人にのべ 394時間)

・視覚障害児童、晴眼児童および青少年を対象にした読み聞かせ会(14人にのべ800時間)

・視覚障害児学校および関連施設を対象にした訪問移動映画館運営(210人、8回)

・移動図書館会員を対象にした録音機器の貸与および視覚障害者用生活用具支援(42人)

・視覚障害者の家族との懇談会(22人、1回)

・移動図書館の指導講師の懇談会(19人、2回)

3)その他の特別プログラム

イ、童話口演、ストーリーテリングの訪問実施 ロ、訪問学習支援

ハ、デジタル情報検索サービス提供 ニ、訪問映画会

ホ、録音機器貸与事業

へ、視覚障害者用生活用具および普及支援 ト、移動図書館会員対象の福祉相談

チ、独居および老人対象家電製品使用法の説明および日常生活上の活字媒体の読み上げ 支援

リ、視覚障害者のための生活情報提供

ヌ、移動図書館利用者家族との文化体験および懇談会 ル、移動図書館についての広報

(『2010年度第3回図書館障害者サービス優秀事例集』2010.7、p41~70)

【2】公共図書館

 各年度の事例集には、公共図書館の優秀事例として次のものが取り上げられている。

蔚山南部図書館(2008年度):「公共図書館での障害者サービス」

京畿道立中央図書館(2008年度):「公共図書館視覚障害者サービス運営」

テグ広域市立スソン図書館(2009年度):「視覚障害者室運営事例」

釜山広域市立クポ図書館(2009年度):「障害者のための体、精神、心の向上プログラム」

ソウル市立南山図書館(2009年度):「施設障害者対象の読書治療プログラム運営」

全州市立図書館(2009年度):「障害者サービス優秀運営事例」

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アンサン市カムゴル図書館(2010年度):「障害者訪問サービス‘幸福をもたらすストー リーテリング’運営事例」

京畿道立パルアン図書館(2010年度):「特殊学生と共にする学校図書館読書文化教室&

本への旅行」

ナムヤンジュ市ワブ図書館(2010年度):「障害者サービス優秀事例」

仁川広域市ファドジン図書館(2010年度):「‘顔を向き合って’読書障害者と共にする 対面朗読プログラム」

タムヤン公共図書館(2010年度):「女性障害者とともに行う紙工芸」

 このうち、京畿道立図書館とテグ広域市立スソン図書館の事例をとりあげる。

 「京畿道立中央図書館」

④優秀事例名:「公共図書館視覚障害者サービス運営」

1)目的および障害者サービス実施状況

 水原市および近郊人口約100万人中約3000人の視覚障害者が居住している。本図書館 は1970年に開館し、正規職員39人のうち障害者サービス担当として専任職員1名がいる。

現在、障害者の登録利用者は212人である。直接来館する視覚障害者は少ないので、対 面朗読サービスは行っていない。その代わり本図書館は「障害者を訪ねていく図書館運 営」に力点を置いている。来館利用の困難

な視覚障害者が多数なので訪問サービスを 実践し、視覚障害者のための読書環境の改 善を図り、視覚障害者の知識情報の習得と 文化に寄与することを目的としている。ま た本図書館は京畿道教育庁に所属している ため学校へのサービスの一環として特殊学 級へのサービスも行っている。

視覚障害者資料室 子ども資料室

正面全景

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2)各種障害者サービス イ、在宅サービス

 1994年11月に「視覚障害者室」を設置、同時に来館が難しい視覚障害者を対象に専門 の職員による直接訪問サービスを開始した。資料は、点字資料、録音テープ、オーディ オブックCD等。資料別では図書の利用が大部分で、小説、鍼灸関係書、教養書、宗教、

科学技術、社会科学の順に利用が多い。会員は、「水原市障害者福祉会」会員から公募し、

登録した人である。

(在宅会員)水原市内在住の会員147名に週一回水曜日に訪問貸出を実施。

(郵便会員)水原市外在住の会員65名を対象に無料にて郵便貸出・返却サービスを実施。

ロ、インターネット目録検索サービス

 点字・録音図書目録検索、図書館の利用案内、在宅サービスの年間運営日程案内等 ハ、図書目録、利用案内の製作配布

 点字・録音図書の目録と利用案内を点字・墨字混合小冊子で配布、インターネット視 覚障害者用ホームページを通じた提供

ニ、学校の特殊学級に対するサービス

 知的障害児、肢体障害児を対象に2ヶ月に一回一般図書の貸し出しをしている。

(『2008年度第1回障害者図書館サービス運営事例集』2008.7、p2~19)

 「テグ(大邱)広域市立スソン図書館」

⑤優秀事例名:「視覚障害者室運営事例」

1)実施目的と障害者実施概況

 図書館利用にいろんな困難がともなう視覚障害者に対して知的探求と読書意欲を鼓吹 して、文化生活を営むのを助けることを目的とする。1991年1月から「視覚障害者室」

を運営し、視覚障害者のための多様な情報および文化行事を提供している。この20年間、

本図書館は障害者サービスの代表的機関として、テグ市内だけでなく慶尚北道および全 国の視覚障害者にサービスを提供している。

2)蔵書および利用現況

 2009年現在、6,451種32,555点の視覚障害者用図書を所蔵(このうち録音図書(カセッ トテープ、CD図書等)が78.6%)している。購入、寄贈、自館製作図書合わせて年間2,000

~2,500点を蔵書に加えている。購入は「韓国視覚障害者福祉財団」および関係機関を 通じて行われ、CD図書、録音図書、点字図書を毎月15種ほど定期購入している。利用は、

2008年度で館内閲覧が256人利用資料数1,442点、館外貸出が663人7,185件であり、利用 資料のうち録音図書(CDを含む)の利用率は93.4%であった。

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3)各種プログラム

イ、利用者の希望する録音図書の製作

 所蔵の無い場合は利用者の注文する録音図書の製作を行っている。録音図書の製作は、

研修を受けたボランティアにより録音室にてコンピュータとカセット録音により1週に 2時間ほど行われる。平均1冊の録音図書の製作には4~6ヶ月かかる。カセット録音 図書とデージー(DAISY)図書として所蔵される。ボランティアには「録音奉仕者専 門研修」を実施している。

ロ、ハングル・ファイル製作サービス

 これは、視覚障害者が希望する一般図書資料をコンピュータ入力し、テキストファイ ル化する注文型サービスである。視覚障害者はこのファイルをコンピュータの音声認識 プログラムを利用して電子図書形態に転換し聴取もできるし、また点字プリンターで出 力し点字図書としても利用できる。製作は、製作の規則事項を順守してボランティアに よって館内または自宅で行われ、入力作業に2~3ヶ月要する。ファイルは年に約10点 ほど製作されている。ボランティアに対しては、年に1、2度研修が行われる。

ハ、訪問および郵便貸出サービス

 580人の登録会員の中で来館できない視覚障害者を対象に、電話などで請求を受け、

点字または録音図書を訪問または郵送によって提供している。訪問貸出サービスは、テ グ市内在住の会員を対象にボランティアが直接会員宅を訪問して提供する。郵便貸出サー ビスは、テグ市外在住の会員を対象に慶尚北道内に限らず全国的に行っている。2008年 度貸出件数は919人に総6,814件で、そのうち訪問サービスが766件であった。貸出資料 では、録音図書が約90%を占めている。

ニ、新刊図書の目録配布および案内

 受け入れた新刊図書は、1年に2回「新刊図書目録」として録音図書および点字資料 として製作され、「視覚障害者室利用案内」といっしょに無料で会員に郵送している。

ホ、「電話私書箱」案内サービス

 即時的な最新情報の提供のために、「電話私書箱」を設置している。毎月最初の週に 図書館利用案内と新刊録音図書目録を電話により案内しているが、案内内容は図書の場 合書名、著者名、分類名、テープ数の順で紹介する。その他、各種の文化行事や読書会 なども紹介している。

ヘ、「詩朗読録音図書」の配布

 視覚障害者の文化享受のため、「図書館週間」や「障害者の日」を記念して毎年4月 に製作し配布している。

ト、文化遺跡見学

 これは戸外に出ることに制約がある視覚障害者に直接自然を感じてもらい、多様な文

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化遺跡にふれてもらい、正しい歴史意識を養ってもらうことを目的にしている。また視 覚障害者と晴眼者がともに相互理解を深める機会を提供することを目的にしたプログラ ムでもある。慶尚道内の名勝旧跡をおもに訪問するが、参加者は視覚障害者、その家族、

図書館職員、ボランティア、説明講師である。毎年4月「図書館週間」と「障害者の日」

に合わせて行っており、2003年から継続し、参加者から好評をはくしている。

チ、視覚障害者用読書資料展の開催

 これは一般市民を対象に、視覚障害者用資料である点字図書、録音図書、CD図書や 本を読みあげるコンピュータ、点字プリンター、文字拡大機などを展示し、また試演し て、視覚障害者への関心と理解を深めてもらうことを目的にしている。2008年度には「手 と耳で開く本の世界」を開催した。

リ、「図書館体験学習」と「映画鑑賞会」実施

 これはテグ地域の盲学校と連携して視覚障害学生を対象に行う行事である。「図書館 体験学習」は、年に1~2回盲学校の学生たちに図書館を訪問、見学してもらい、視覚 障害者室の利用方法などを学んでもらい、図書館と読書への関心をたかめることを目的 にしている。また「両目を閉じての映画鑑賞会」は、日ごろ映画に接する機会の少ない 視覚障害学生にナレータによる画面解説と字幕朗読で映画を楽しんでもらうことを目的 にしている。ナレータは、図書館のボランティアとテグ大学校の朗読奉仕会の会員がつ とめている。

ヌ、読書会

 「ピッソリ読書会」と名付けた読書会は、視覚障害者と晴眼者が合同で行っていて、

両者の交流の場ともなっている。

(『2009年度第2回障害者図書館サービス運営事例集』2009.7、p34~48)

【3】大学図書館

 事例集には、優秀事例として次のものが取り上げられている。

西江大学校ロヨラ図書館(2008年度):「障害学生サービス運営事例」

朝鮮大学校中央図書館(2009年度):「障害者情報支援室運営事例」

 次にこの2例を取り上げる。

 「西江大学校ロヨラ図書館」

⑥優秀事例名:「障害学生サービス運営事例」

1)障害学生状況

 2008年4月現在で、大学全体で76人(男子49人、女子27人)の障害学生が在学している。

このうち肢体障害学生が57人で全体の67%を占めている。肢体障害学生のうち12人は車

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