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著者 江嵜 那留穂

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Academic year: 2022

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開発途上国における教育機能の変容と自然災害が子 どもたちの就学実態にもたらす影響:ネパール地方 都市近郊の初等教育を事例に

著者 江嵜 那留穂

URL http://hdl.handle.net/10236/00028235

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論文要約

国際社会共通の目標である「万人のための教育(Education for All: EFA)」および「ミレニアム開 発目標(Millennium Development Goals: MDGs)」が掲げられて以来、初等教育への国際的な取り 組みが強化され、世界における初等教育の純就学率は著しく改善した。2015年には、MDGsの後継 である「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)」が発表され、教育分野に おける今後の課題は「包摂的かつ公平で質の高い教育の普及(SDG4)」であると明示された。この 流れに沿うように、世界では「質の高い教育」を求める動きが発生しており、多くの国々において私 立学校に在籍する子どもたちの割合が増加している。

この動きに乗り全国統一試験等において高いパフォーマンスを示す私立学校に転校できる者はより条 件の良い教育を享受でき、教育によって自己の可能性を広げることができるが、この動きから取り残され る者はその機会を得ることができない。その結果、両者の格差はさらに拡大傾向となり、貧困の連鎖は続 くこととなる。そもそも教育とは、この貧困の連鎖を断ち切り、社会格差を是正するものとして期待され てきた。しかしながら、上述の現象が起こっているのであれば、教育そのものが格差拡大を後押ししてし まっている可能性が考えられる。

他方、近年世界において人々の生活を脅かす紛争や自然災害が多発している。紛争や自然災害とい った緊急時においては、通常の保護的支援が破壊され、社会的不公正や不平等といった既存の問題が より増大する傾向にある。そして、その影響は教育分野にも及び、個々の子どもたちの就学にも大き なダメージを与えると考えられる。

そこで、本研究は、「質の高い教育」を求める子どもたちの動きが大きくなりつつあるところに、大 地震が発生したネパールを対象国として、教育機能の変容および自然災害が子どもたちの就学実態に 及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。具体的には、①平時における就学フローの実態、②「質 の高い教育」を求める動きから取り残される子どもたちの特徴、③「質の高い教育」を求める動きか ら取り残される子どもたちの修学実態、④「質の高い教育」を求める動きに乗れる者と取り残される 者の職業と収入の差異、⑤大地震が子どもたちの就学にもたらした影響、の5つを分析した。

その結果、①平時においては「質の高い教育」を求める大きな動きが発生していること、②「女子」、

「貧困層の子ども」、「一人っ子」、「母に識字能力がない家庭の子ども」が取り残されていること、③ 入学したうち約 75%の子どもたちが初等教育を修了していたが、留年や一時的な退学を経験せずに ストレートに進級し卒業した子どもたちの割合は、全体の約 31%にしか満たないこと、④「質の高 い教育」を求める動きに乗れる者と取り残される者の職業と収入においては大きな格差が存在するこ と、⑤対象校における合計出席者数は地震発生後から2か月もすれば平時と変わらない程にまで戻る ものの、私立学校へのフローは阻害され、その中でも就学前教育段階の子どもたちが最もダメージを 受けたことが分かった。

以上より、現在においては、「質の高い教育」を求めるダイナミズムが発生しており、そこでは、教 授言語が英語であり、全国統一試験等において高いパフォーマンスを示す私立学校に在籍できるか否 かによっていかなる修学軌跡を歩めるか、そしていかなる将来(職業や収入等)を得られるか、とい ったことが大きく左右されていることが明らかとなった。つまり、教育は本来の機能を発揮しておら ず、格差拡大のテコになってしまっていることが示唆された。そして、その格差は自然災害の影響に より、さらに鮮明に現れることが解明された。

本研究の分析結果を踏まえて、SDG4達成に向けては、公立学校と私立学校の教育格差問題にブレ ーキをかけるため、公立学校がいかにして保護者にとっても魅力的な教育を提供できるかが重要な鍵 になると考えられる。

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