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ゴムの工業的合成法第 13 回エチレンプロピレンゴム 日本ゴム協会誌 が発生しやすく, 耐油, 耐屈曲げ裂性に劣るなどの特徴がある 1). 2. EPDM の歴史 EPDM は,1955 年に G. Natta 教授とモンテカチーニ社 ( 伊 ) の研究グループにより, エラストマー状のエチレンプロ

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( 21 ) 2 6 9 1. EPDM とは  エチレンープロピレンージエンゴム(EPDM)は,エチ レンとプロピレンとの共重合体であるエチレン - プロピレ ンゴム(EPM)に,少量の第3成分として非共役ジエンを 共重合させ,ポリマー鎖構成単位上に二重結合をもたせ硫 黄加硫を可能としたものである.図1にEPDMの化学構造 式を示した.過去,種々の第 3 成分が検討 / 実用化されて いるが,代表的な第3成分としてエチリデンノルボルネン (ENB),1,4- ヘキサジエン(1,4-HD),ジシクロペンタジ エン(DCPD)などがあり,現在では,ENB が主として 用いられている.  触媒としては,チーグラー触媒を使うのが一般的であっ た が, 最 近 で は メ タ ロ セ ン 触 媒 を 用 い て 合 成 さ れ た EPDMが増えてきている.  EPDM の特徴としては,EPM に比べ加硫しやすく,容 易に高強度の製品を得ることができること,ジエン系ゴム に比較して耐候性や耐熱性が優れていること,電気的特性 がよいなどがある.しかし,加工する際に未加硫ゴムの粘 着性が悪く,加硫が比較的遅く,加硫ゴム表面にブルーム 佐々 龍生;住友化学㈱ 千葉工場第三製造 部合成ゴム課(〒299-0295 千葉県袖ケ浦市北 袖2-1)課長.昭和63年,名古屋大学大学院農 学研究科林産学修了.同年,住友化学㈱入社, 現在に至る.専門は,エチレンプロピレンゴ ムグレード開発およびプラントの運営管理.

特論講座

Industrial Synthetic Method of the Rubbers

13. Ethylene Propylene Rubber

Tatsuo SASSA (Sumitomo Chemical Co., Ltd., Kitasode 2-1, Sodegaura-city, Chiba 299-0295, Japan) satsusa@ sc.sumitomo-chem.co.jp

This article reviews the histories, manufacturing method, world-wide producers, and polymerization technology for Ethylene Propylene Rubber (EPDM) from industrial point of view. EPDM has over 50-years history. In this half a century, EPDM and its production process have been improved with the progress in catalyst technology. The catalyst technology influences on the production process and molecular structure of polymer.

(Received on January 7, 2016)

Key Words: Ethylene Propylene Rubber, EPDM, Ziegler-Natta Catalyst, Metallocene

ゴムの工業的合成法

第13回 エチレンプロピレンゴム

佐 々 龍 生

CH2 CH2 CH2 CH CH CH3 CH CH2 C CH CH CH CH3 CH2 x y z

Ethylene Propylene Ethylidiene-Norbornene (ENB) ENB Dicyclopentadiene (DCPD) 1,4-Hexadiene (a) (b) (c) (d) 図1 (a)EPDMの分子構造と(b)-(d)第三成分種のジエン化合物

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日本ゴム協会誌 第13回 エチレンプロピレンゴム ( 22 ) 2 7 0 が発生しやすく,耐油,耐屈曲げ裂性に劣るなどの特徴が ある1) 2. EPDM の歴史  EPDM は,1955 年に G. Natta 教授とモンテカチーニ社 (伊)の研究グループにより,エラストマー状のエチレン プロピレン共重合体として合成されたのが始まりである. その後,硫黄加硫を可能とすべく,各種第三成分の導入が 検討され現在に至っている.  製造プロセスとしては,炭化水素溶媒中で重合し,ゴム を分離する溶液重合法が主流であるが,歴史的には気相法 の生産も行われている.溶液重合では,チーグラー触媒が 主流であったが,1996 年の DuPont Dow Elastomers 社に よるメタロセン EPDM の商業化以降,メタロセン触媒に より製造される EPDM が増えつつあり,現在,その割合 は約25%となっている2)

3. EPDM の生産量とメーカー

 国際的な合成ゴム生産者団体であるIISRP(Internation-al Institute of Synthetic Rubber Producers, Inc.)による と,2014 年の EPDM の全世界の生産能力は約 148 万トン であり,2015 年以降も大きくその生産能力は増強される としている(図 2)2). エリア別にみると,表 1 に示すよ うにアジア/欧州(含ロシア)・中東・アフリカ/北・南 米が,それぞれ約1/3ずつ生産能力を有している.  EPDM の主要用途は,自動車のシール材やホース類で あり,今後の自動車生産台数の伸び如何によっては供給過 剰になることも懸念される. 4. EPDM の製造法  1992 年に米国 UCC(当時)により,一時的に気相法プ ロセスが実用化されたが3),その後EPDMの生産には使用 されなくなった.EPDM の粘着性によるプロセス内の塊 化を回避するためにカーボンブラックや無機フィラーを EPDM 粒表面にコートする方法がとられていたが,市場 には合わなかったようである.現在は,前述のとおり炭化 水素系溶剤を用いた溶液重合法が一般的に用いられてい る.  溶液重合法では使用される重合触媒により,大きく二分 される.一つは,チーグラーナッタ系触媒でオキシ三塩化 バナジウムや四塩化バナジウムにアルキルアルミニウムを 作用させることにより重合活性が発現する.バナジウムの 代わりにチタンを使用したチーグラーナッタ系触媒やその 改良系であるチタン/マグネシウム系触媒による EPDM の合成も報告されているが,それらは,プロピレンの共重 合性が低いため,得られる EPDM のエチレン結晶性が高 い.そのため,ゴムとしての特性に劣るため一般的ではな k t 年 図2 EPDM生産能力推移2)

Producer Country Capacity (Mt/Year) Remarks

Asia

JSR Corporation Japan 36,000

Mitsui Chemical Japan 96,000 *75,000

Sumitomo Chemical Japan 40,000

Kumho Polychem Korea 160,000

SK Energy Korea 40,000

Shanghai Sinopec Mitsui Chemicals Co. China 70,000 * Petrochina Jilin Chemical Group China 45,000

Sub total 486,000

Europe/ Middle East/ Africa/ Russia

ExxonMobile Chemical France 90,000

Lanxess Germany 60,000

Lanxess Netherland 160,000

Versalis S.P.A Italy 85,000

NKNH Russia 20,000

Sub total 415,000

North America/ Latin America

Dow Chemical USA 140,000 *

ExxonMobile Chemical USA 115,000

ExxonMobile Chemical USA 90,000 *

Lanxess USA 60,000

Lion Copolymer USA 130,000

Lanxess Brazil 40,000

Sub total 575,000

Grand total 1,476,000

*Metallocene Catalyst system (total 375,000) 表1 エリア別EPDM製造会社と製造能力2)

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( 23 ) 2 7 1 い.

 もう一つは,メタロセン触媒であり,1980 年代に Ka-minsky により発見されて以降,配位子構造になどに改良 が施され,共重合性や高温での安定性などが改善されてい る.特に,DuPont Dow Elastomers 社が世界最初のメタ ロセン EPDM 製造に適用した幾何拘束触媒(Constrain Geometric Catalyst, CGC) 技 術 は 有 名 で あ る. 図 3 に CGC の一般的な構造式を示す.また,各種触媒による重 合反応の特徴を表2にまとめた. 4. 1 バナジウム系触媒を用いた溶液重合プロセス  製造工程は,大きく分けて,重合/未反応原料回収/脱 灰洗浄/溶剤回収/脱水乾燥/成型の6工程からなる(図 4).  バナジウム触媒は,メタロセン触媒に比べて触媒活性が 低く,触媒残渣を水洗により除去する工程が不可欠であ る.一方で,触媒使用量が多く,モノマー中に含まれる水 分などの触媒毒量に対して触媒量が多いため,特段のモノ マーの精製を行うことなく使用することができる利点があ る.  重合工程では,重合反応容器に連続的に溶剤,エチレン やプロピレンガスモノマー,第三成分モノマー,バナジウ ム触媒,有機アルミニウム助触媒,分子量調節剤が供給さ れ,重合溶液が連続的に排出される.バナジウム触媒は, メタロセン触媒に比べて高温に弱く,高温では触媒活性が 低下するため,一般的には30 ~ 50 ℃の重合温度が選択さ れる8).分子量調節剤には水素を用いることが一般的であ る.目的とする EPDM 構造を得るために,これらの供給 比率や速度は,厳密に制御される.重合溶液の濃度は,重 合温度の不均一化による構造変化や溶液粘度の上昇に伴う 送液不良などのトラブルを防ぐために制限されており,10 %未満が一般的である6)  未反応原料回収工程では,重合溶液を減圧/加熱するこ とによりガスモノマーが回収される.回収されたガスモノ マーは重合工程に戻され再使用される.脱灰洗浄工程で, メタロセン触媒 既存V触媒 δ-TiCl3/ Et2AlCl 分子量分布 狭い 狭い~広い 広い ランダム性 ○ ○ × 環状ジエンの共重合性 ○ ○ × 高級αオレフィンの共重合性 ○ △ × 触媒活性(中心金属) ○ △ △ 重合温度 高温可能 60 ℃以下 高温可能 ○:高い・優れている,×:低い・適さない,△:中程度 表2 メタロセン触媒とバナジウム(V)触媒の特徴比較5) M = Zr, Ti, Hf Cp環置換基(R1) = H, アルキル、シリル 架橋基(Z) = 種々の長さのアルキル、アリル、シリル 配位基(Y) = アミド、フォスファイド、アルコキシドなど 配位基に結合する置換基(R2) = H, アルキル、アリル、シリルなど R1 R1 R1 Z R1 Y M R2 X X 図3 幾何拘束型のメタロセン触媒(CGC)の一般的な構造4) 図4 EPDM製造フロー例(バナジウム触媒)

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日本ゴム協会誌 第13回 エチレンプロピレンゴム ( 24 ) 2 7 2 重合溶液を水洗し製品に残る触媒残渣を低減させている. 一般にEPDM中のバナジウム残渣は,50 ppm以下程度で ある.  溶剤は,重合溶液をスチームと共に容器中に吹き込むス チームフロック法により分離回収され精製/再使用され る.スチームフロック法は,後述する脱揮押出機を用いる 直脱法よりも適用製品範囲が広い.溶剤が分離された EPDM は,温水中に分散された形で脱水/乾燥工程に送 られる.  脱水/乾燥工程ではエネルギー効率よく乾燥するため に,まず絞り乾燥機にて物理的に水を絞った後に加熱乾燥 される.  図 5 に触媒種と EPDM の分子量,組成分布構造を示し た.ポリマーの分子量,分子量分布,立体規則性,化学構 造,モノマー配列,分岐度,組成分布,末端構造などの分 子構造は,重合条件を選択することである程度制御するこ とができ,製品の種類や目的に応じて調整する.制御因子 は,モノマー比率,第三成分種,触媒種,重合温度,濃 度,分子量調節剤濃度などである.  バナジウム系触媒では,バナジウム化合物や有機アルミ ニウムの種類により,得られる共重合ゴムの構造(分子量 分布など)が異なることが明らかにされており,用途/目 的に応じて分子構造設計がなされている.特に,ロール加 工や押出加工特性に優れる特徴あるグレードのゴムが製品 化されている. 4. 2 メタロセン触媒を用いた溶液重合プロセス  メタロセン触媒を使用するプロセスの特徴は,図6に示 すようにバナジウム触媒プロセスに比較して脱灰・洗浄工 程がなくシンプルなことである.これにより建設コストや 用役コストの面で有利になる.メタロセン触媒は,バナジ ウム触媒に比べて高温に強く重合温度は,80 ~ 120 ℃程 度が選択されるようである.より高温で重合できるため溶 液粘度が低下し,高濃度重合が可能であり,一例では, 16.4%とされている7).また,触媒洗浄工程を必要としな 2 3 4 5 6 7 Log (Mw) 2 3 4 5 6 7 Log (Mw) 2 3 4 5 6 7 Log (Mw) 2 3 4 5 6 7 Log (Mw) 2 3 4 5 6 7 Log (Mw) 2 3 4 5 6 7 Log (Mw) 2 3 4 5 6 7 Log (Mw) 2 3 4 5 6 7 Log (Mw) 2 3 4 5 6 7 Log (Mw) 2 3 4 5 6 7 Log (Mw) 2 3 4 5 6 7 Log (Mw) 2 3 4 5 6 7 Log (Mw)

AlEt2Cl AlEt1.5Cl1.5 AlEtCl2

VOCl3 VO(Oi-Pr)3 VO(OBu)3 VO(Ot-Bu)3 図5 触媒種とEPDMの分子量,組成分布構造1) (横軸:Log MW,縦軸:プロピレン含量) 図6 EPDM製造フロー例(メタロセン触媒)

(5)

( 25 ) 2 7 3 いため,脱溶媒工程はスチームフロック法ではなく,フラ ッシュドラムと脱揮押出機の組合せが選択されている.こ れはスチームフロック法では溶剤回収に必要なエネルギー に加えて,水分を除くためのエネルギーも必要になるため である.フラッシュドラムでの流下速度が生産速度を支配 するため,流下速度が低くなる非油展高分子量グレードや 加工性を追求して多くの分岐を与えたグレードの生産性は 低くなる.  また,メタロセン触媒は均一系触媒と云われるが如く, その特徴として分子量分布が狭く組成分布に偏りの無いポ リマーを与える.この特徴は,引張強度など物性面では有 利に働くが,加工性面ではロール粘着性の低下や高速せん 断域の押出し成形品の肌荒れといった不利な面もある.重 合の多段化や分岐付与用の第四成分の共重合8)といった工 夫により,加工性を向上させることが試みられている.  表3にメタロセン触媒により得られたEPDMとバナジウ ム触媒により得られたEPDMの力学特性を示した9).組成 やムーニー粘度が同等であれば,得られる加硫ゴムの力学 特性もほぼ等しいようである. 5. ポストメタロセン触媒  2013年10月のダウエラストマー社プレスリリース10) よると 2016 年にポストメタロセン触媒による高ムーニー 粘度の EPDM 製品生産に乗り出すとしている.プロセス の詳細や触媒構造,ポリマー分子構造の詳細は不明である が,EPDM 製造の新たな展開として今後も注目すべきで あろう.また,電気自動車や燃料電池車の普及といった市 場の変化も,求められる EPDM に影響を与え,牽いては 将来のプロセスにも影響を与えると思われる. 6. EPDM プロセスの動向  従来からのバナジウム触媒を用いた EPDM とメタロセ ン触媒により得られる EPDM の特徴から二極分化(多様 な高機能 EPDM と汎用 / 廉価な EPDM)に分かれていく ことが想像される.それぞれが長所を追求するとともに短 所を補うプロセス技術開発が進んでいくであろう. References

1)Nakano, S.; Sassa, T.: Nippon Gomu Kyokaishi, 79, 537(2006) 2)IISRP:“Worldwide Rubber Statistics 2014”, IISRP, Huston,

p.10(2014)

3)Stakem, F. G.; Paeglis, A. U.; Collins, J. D.;“Union Carbide Gas-Phase EPM and EPDM Rubber” 142nd Technical Meeting of the ACS Rubber Division, ACS, p.95(1992)

4)Komatsu, K.; Ono, S.; Imaizumi, F.:“Metallocene Syokubai de tsukuru Shin-Polymer” Kougyo-Chyosakai, p.29(1999) 5)Hannou-kougaku kenkyukai Report:“Metallocene Syokubai ni

yoru Polymer no Seizou”, Soc. Polym. Sci. Japan, p.121(1997) 6)Shwaar, R. H.; Chien, C.:“SRI Report 4B, Ethylene-Propylene

Terpolymer Rubber”, Process Economics Program, California, p.88(1981)

7)Chin,Y.:“SRI Report 4D, New Generation EPDM Technolo-gies”, Process Economics Program, California, 5-2(1998) 8)Nakatsuji, R.; Takehara, A.: Jpn. Koukai Tokkyo Koho

2013-234289(2013)

9)Sugi, M.; Kawasaki, M.: Nippon Gomu kyokaishi, 70, 100 (1997) 10)http://www.dow.com/japan/news/2013/20131007a.htm 11)Kakugo, M.; Naito, Y.; Mizumuma, K.; Miyatake, T.:

Macromole-cules, 15, 1150 (1982) 日本語表記参考文献 1)中野貞之,佐々龍生:日本ゴム協会誌,79, 537(2006) 4)小松公栄,小野文武,今泉進:「メタロセン触媒でつくる新ポリ マー」,工業調査会(1999) 5)反応工学研究会レポート「メタロセン触媒によるポリマーの製 造」,高分子学会(1997) 8)中辻亮,竹原明宣:特開2013-234289(2013) 9)杉正浩,川崎雅昭:日本ゴム協会誌,70,100 (1997) 10)ダウ・ケミカル日本ホームページ:http://www.dow.com/ja-pan/news/2013/20131007a.htm

メタロセンEPDM メタロセンEPDM-2 既存EPDM

ムーニー粘度(1+4)150 ℃ 70 60 65 エチレン含量(wt%) 51 54 54 ENB含量(wt%) 5.8 6.3 6.5 C2'-化学組成分布b 6 1 5.7 加硫トルク(MH) 56 60 55 300%モジュラス(MPa) 15.5 9.6 9.5 破断点強度(MPa) 9.6 15.6 15.9 破断点伸び(%) 15.5 385 400 表面硬度(ショアA) 66 66 65 圧縮永久歪(125 ℃,70 h) (%) 63 60 65 a 配合処方:ポリマー(100)/ ステアリン酸(1)/IRB6(80)/ オイル(50)/MBT(0.5)/TMTD(1.0)/ 硫黄 (1.5).プレス加硫条件:170 ℃, 20分.文献9より転載.b エチレン3連鎖濃度11) 表3 メタロセンEPDMとバナジウムEPDMの特性比較a

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