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中国知財判例データベース構築 プロジェクトについて

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Academic year: 2022

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1.企画の目的

中国の知的財産権法制度は近年,急速に発 展している1。さらに,2001 年 12 月のWTO 加盟後,中国における知的財産権保護の取り 組みについては,中国国内だけでなく,世界 的な関心が集まっている。確かに,中国が全 人民所有制と集団所有制からなる公有制を経 済制度の基礎としていることや,日本や欧米 と異なる歴史的,文化的背景を有しているこ とから,知的財産権の保護のレベルがそれら と比べて低いのは事実である。しかしながら,

急速な経済の発展と外国企業の中国進出を背 景に,知的財産権関連訴訟は急激に増加し,

判例もかなり集積している状況にある2。ま た,判決文も従来に比べるとかなり入手しや すくなったといえよう3

このように中国における知的財産権に関す る判例は世界的に注目されているが,知財判 例全般を扱った網羅的かつ体系的なデータ ベースは未だ存在しない。裁判官や大学の研 究者が編纂している判例集が一部に存在する が,編纂者独自の視点で編集したものであり,

またそれらのほとんどが中国語である。

本プロジェクトは,法律的に重要な争点を 有し,単なる話題性ではなく,長期的に見て 大きな意義を有する判例を選択し,データ ベース化することによって,全世界的に共通 する研究基盤を提供することを目的とするも

のである。そのために,使用言語を英語とし,

広く全世界にデータベースを公開することに よって,各国の知的財産権法制度の研究に資 することとする。

2.判例データベースの構築方法

2回にわたる中国訪問によるリサーチを ベースにCOE知的財産法制研究センター内 で協議した結果,判例データベースの構築方 法は,以下の手順で行うこととなった。

① 中国の担当責任者による重要判例の選択 と判例概要書の作成

② COE知的財産法制研究センターによる チェックと掲載判例の最終選択

③ 中国の担当責任者による掲載判例の要 約・評釈

④ 翻訳業者による掲載判例の要約・評釈の 英語への翻訳

⑤ 中国の担当責任者による最終校正

⑥ COE知的財産法制研究センターによる データベース化

①については,知的財産権関連訴訟が特に 集中している北京市,上海市,広東省の3つ の地域に分け,その中でも最も訴訟が多い北 京市においては,特許・実用新案・意匠4, 商標・不正競争,著作権の3つの分野に分け,

分野毎に中国の研究者に依頼することとし た5。現在,北京市の特許・実用新案・意匠 については北京大学の張平副教授6に,北京

― 55 ―

中国知財判例データベース構築 プロジェクトについて

安藤和宏

* 早稲田大学大学院法学研究科博士課程

(2)

市の商標・不正競争については中国人民大学 の郭禾教授7に,上海市は復旦大学の張乃根 教授8に依頼し,承諾をもらっている。

初回における地域毎,分野毎の掲載判例数 は,以下を予定している。なお,判例数につ いては,第2回目の中国出張において,多く の研究者,実務家から適切であるとの意見を もらっている。

したがって,中国知財判例データベースは 約 250 件余りの判例が初回にアップされるこ とになる。その後は,初回に掲載できなかっ た重要判例や最新の判例を掲載することにし ている。なお,初回の重要判例の選択と判例 概 要 書 の 作 成 の 期 限 は 2004 年 4 月 末 日 と なっており,原則として判決文を添付しても らうこととしている。

②については,中国の裁判官や弁護士等の 実務家のアドバイスを受けながら,COE知 的財産法制研究センターが最終的に掲載する 判例を決定することとしている。その際に,

あくまでも全世界に共通する研究基盤の提供 という観点を念頭に置きながらも,中国独自 の解釈論を展開する重要判例の掲載などにつ いては柔軟に対応することとしたい。

③については,暫定的ながら要約 2,000 字,

評釈 1,000 字を目安とすることが決まってい る。

④については,複数の翻訳業者を調査し,

翻訳能力が高く,かつ料金もリーズナブルな ところに委託することとする。特に翻訳の質 によっては,⑤の最終校正の際に,中国の担 当責任者に多大な負担を強いることにもなり かねないため,高品質の翻訳文を提供できる 翻訳業者に委託することとする。

3.判例データベース構築のスケジュー

2004 年度における判例データベース構築 の予定スケジュールは,概ね以下のとおりで ある。

4.中国出張について

中国知財判例データベース作成プロジェク トのために,これまで中国に 2 回出張して,

多くの研究者や実務家と面談し,ヒアリング や提案,交渉等を行った。なお,第 1 回訪中 に際しては,北京大学に留学中である本学大 学院生の中村真帆さん(小口研究室)とコロ ムビア大学ロースクールからの交換留学生で ある曹宇さん(中国弁護士,ニューヨーク州 弁護士)に多大な協力をしてもらった。

この2回の訪中で延べ 30 人近くの研究者,

実務家からヒアリングを行い,大変有意義な 情報やアドバイスをもらった。また,これら の訪中で中国の知財関係者との交流を深める ことができた。本プロジェクトの成功のため には,中国の研究者・実務家などの知財関係 者とのネットワーク構築は必要不可欠なもの

― 56 ― 特許等 商標等 著作権

北京市 40 〜 50 40 〜 50 40 〜 50 上海市 15 〜 20 15 〜 20 15 〜 20 広東省 15 〜 20 15 〜 20 15 〜 20

作業内容 中国の担当責任者に よる重要判例の選択 と判例概要書の作成 COE知 的 財 産 法 制 研究センターによる チェックと掲載判例 の最終選択

中国の担当責任者に よ る 掲 載 判 例 の 要 約・評釈

翻訳業者による掲載 判例の要約・評釈の 英語への翻訳

作業期間

2004 年2月〜4月

2004 年5月〜6月

2004 年7月〜 12 月

2005 年1月〜

(3)

であり,今後もさらに交流を深めていきたい と思っている。これまでの訪中のメンバー,

期間,訪問先は以下のとおりである。

<第 1 回訪中>

メンバー:安藤和宏,袁藝,今村哲也,曹宇 期間: 2003 年 11 月 19 日〜 29 日

訪問先:費寧弁護士(海問法律事務所上海支 部),張乃根教授(復旦大学),張暁都裁判官

(上海高等知的財産権法廷),以上上海。朱 江 弁護士(Freshfields Bruckhaus Deringer), 屈 景 明 氏 ( 中 国 音 楽 著 作 権 協 会 ),REX ZONG氏 ( Cherrylane Music Publishing

China),周林教授(社会科学院),李旺副教

授(清華大学),王 兵教授(清華大学),張 平副教授(北京大学),高西慶氏(全国社会 保障基金理事会副理事長),朝日智士氏(東 芝中国有限公司),郭禾教授(中国人民大学), 許 超 ( 中 国 国 家 版 権 局 ), 日 高 賢 治 氏

(JETRO北京センター知的財産権室室長),

以上北京。

<第2回訪中>

メンバー:安藤和宏,袁藝 期間: 2004 年1月 27 日〜2月4日

訪問先:楊宏軍弁護士(金杜律師事務所),

郭華弁護士・王 弁護士(商泰資信調査・知 識産権・律師総合事務所),朱江 弁護士

(Freshfields Bruckhaus Deringer),周林教 授(社会科学院),劉新宇弁理士(北京林達 劉知識産権代理事務所),張平副教授(北京 大学),郭禾教授(中国人民大学),森脇章弁 護士・矢上浄子弁護士(アンダーソン・毛利 法律事務所)以上北京。費寧弁護士(海問法 律事務所上海支部),張乃根教授(復旦大学), 張暁都裁判官(上海高等知的財産権法廷),

以上上海。

5.今後の予定について

2004 年3月上旬に北京に出張し,北京に おける著作権分野の担当責任者を探すことと している。候補者としては,清華大学の王兵

教授9が挙がっている。併せて翻訳業者のリ サーチを行うこととする。翻訳業者の候補と しては,現在,以下のものが挙がっている。

また,2004 年4月上旬に広東省に出張し,

担当責任者に関するリサーチをする予定であ る。担当責任者の候補者としては,温旭教授

(弁護士・南大学),孫海龍教授(弁護士・北 京航空航天大学),楊建成裁判官(広州市高 級人民法院知識産権法廷長),曾東紅教授

(中山大学),楊建広教授(中山大学)らが挙 がっている。

なお,現在のスケジュール通りに進行すれ ば,2005 年度前半には初回分,すなわち約 250 件余りの判例が中国知財判例データベー スとして公開される予定である。

1 商標法は 1982年8月 23日採択,1983年3 月1日施行,2001年 10月7日一部改正,特 許法は 1984年3月 12日採択,1985年4月1 日施行,2000年8月 25日一部改正,著作権 法は 1990年9月7日採択,1991年6月1日 施 行 , 2001 年 10 月 27 日 一 部 改 正 , コ ン ピュータソフト保護条例は 2001年 12月 20日 公布,2002年1月1日施行,と知的財産権の 各分野において活発な立法・改正作業が進め られた。

2 2003年度に中国各法院知識財産法廷が下し た判決数は,中国最高人民法院 54件,上海 市高級人民法院 102件,広東省高級人民法院 192件(なお,北京市高級人民法院の判決数 は未公表)である。

3 以前に比べると,インターネットや判例集 の出版によって多くの判例が公開されるよう になった。

4 中国の特許制度には特許,実用新案,意匠

― 57 ―

翻訳業者(企業・個人名)

Hong Kong City University 中国専利代理(香港)有限公司 CCH Limited.10

上海外国語大学翻訳服務公司 上海外事翻訳工作者協会翻訳諮訊部 復旦大学趙建教授

華東法政大学朱 葉教授

(4)

の3つが包含され,いずれも専利法によって 規定されている。

5 中国で最初に知識産権専門法廷を設けたの は,北京市第一中級人民法院である。また,

特許,商標,意匠の再審査委員会は北京市に ある。

6 張平副教授は現在,国家科学技術省等,政 府関係の複数のプロジェクトに関わっている 著名な研究者である。台湾とのプロジェクト では,台湾の判例集3冊を中国語で発行し,

現在も情報更新の作業を行っている。

7 中国人民大学では法学教育を目的として,

3,000件余りの判例をデータベース化する作 業を進めており,近々完成する予定である。

これは判例の収集,要約,コメントという形 式において,中国知財判例データベース構築 プロジェクトと同一である。また,中国人民 大学では判例を自ら峻別して編集し,判例集 を出版している。現在,判例集は民事,刑事,

行政・経済の3冊に分冊化しているが,数年 前から判例集の英語版がイギリスの出版社に よって発行されるようになった。英語版の翻 訳は,香港のシティ大学と中国人民大学の教 員とが関わっている。

8 復旦大学の知識産権研究センターは 1995 年前に設立され,張乃根教授はその主任を務 めてている。

9 清華大学の知識産権法学研究センターは 1999年に設立され,王兵教授はその主任を務 めている。同センターは知識産権局や科学技 術部からの依頼を受けて各プロジェクトの研 究,調査を行っているそうである。

10 CCHは「China Laws for Foreign Business- Business Regulations」という加除式の法律 書を出版しており,費寧弁護士によると評価 が高く,英語の質もよいそうである。

― 58 ―

参照