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富山県および大阪府に生息するイタセンパラ集団の遺伝的構造

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タセンパラ Acheilognathus longipinnis は,コ イ科タナゴ亜科タナゴ属に属する純淡水魚 であり,文化庁により国指定天然記念物に指定さ れ,また環境省により国内希少野生動植物種に指 定されるとともに,レッドリストにおいて絶滅危 惧 IA 類に分類されている(長田,2001; 環境省, 2003など).本種の分布は,富山県平野部,大阪 淀川流域,そして濃尾平野の日本国内 3 地域のみ に限られている(長田,2001). このうち富山県においては,西部の氷見地域の 河川において継続的な生息が確認されている.そ の一方で,生息地周辺の整備や開発に加えて,外 来生物の影響が懸念されている(田中,1993; 氷 見市教育委員会,2008; 山崎ほか,2009).その ため氷見市において,生息状況調査や外来生物駆 除に加えて,地域個体群の保存と将来の野生復帰 を目指した保存池における飼育繁殖が行われてい る(氷見市教育委員会,2008 ほか).大阪淀川流 域においては,かつては淀川のワンド群を中心に 本種の生息が継続的に確認されていたが,最近数 年間にその生息は確認されていない(河合,2008; 小川,2008).その一方で,淀川ワンド群で過去 に捕獲された個体に由来する飼育繁殖集団が系統 保存されている(宮下,2005).これら2 地域に対 して,濃尾平野においては,近年における本種の 生息はほとんど確認されておらず,また飼育繁殖 集団の維持もなされていない(小川,2008).以 上の状況のために,各生息地域におけるイタセン

富山県および大阪府に生息するイタセンパラ集団の

遺伝的構造

山崎裕治

1

・中村友美

1

・西尾正輝

2

・上原一彦

3 1 〒 930–8555 富山市五福 3190 富山大学大学院理工学研究部 2〒 935–0016 氷見市本町 4–9 氷見市教育委員会 3〒 572–0088 寝屋川市木屋元町 10–4 大阪府環境農林水産総合研究所水生生物センター (2009 年 11 月 25 日受付; 2010 年 3 月 17 日改訂; 2010 年 3 月 17 日受理) キーワード:絶滅危惧種,保護,飼育繁殖,集団サイズ,マイクロサテライトDNA

Yuji Yamazaki*, Tomomi Nakamura, Masaki Nishio and Kazuhiko Uehara. 2010. Genetic population structures of the Itasenpara bitterling, Acheilognathus longipinnis, in the Toyama and Osaka regions. Japan. J. Ichthyol., 57(2): 143–148.

Abstract In order to establish a feasible conservation program for the Itasenpara bittering (Acheilognathus longipinnis), the genetic population structure was deter-mined on the basis of five microsatellite loci for wild and captive populations from Himi City, Toyama Prefecture, and the Yodo River system, Osaka Prefecture. An endemic genetic feature was found in each of the Toyama and Osaka regional pop-ulations, indicating that each should be treated as a separate unit in any future con-servation program. The degree of genetic diversity in the Toyama populations tended to be lower than that in the Osaka population, being related to the popula-tion size and/or populapopula-tion demography. In the Toyama region, captive populapopula-tions showed an equal degree of genetic diversity as the wild populations, probably due to a relatively short period of captive breeding as well as continuing introductions of wild individuals.

* Corresponding author: Graduate School of Science and Engineering for Re-search, University of Toyama, 3190 Gofuku, Toyama 930–8555, Japan (e-mail: [email protected])

Japanese Journal of Ichthyology

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パラの緊急な保護の必要性が指摘されている(氷 見市教育委員会,2008; 小川,2008 など). 絶滅の恐れのある生物の保護にあたり,対象生 物集団がもつ遺伝的多様性を正確に把握し,その 維持を考慮した対策の構築と実施が必要とされて いる(Frankham et al., 2002).また飼育繁殖集団 においては,将来の野生絶滅やそれに類する状況 に至った際の再導入を前提として,地域集団の固 有性および集団内の遺伝的多様性の双方を維持す ることが求められている(Frankham et al., 2002 な ど).イタセンパラにおける遺伝的解析として,ミ トコンドリアDNA(mtDNA)を指標として地域集 団間の遺伝的類縁関係が調べられ,3 つの地域集 団それぞれを特徴づける遺伝的変異が存在するこ とが報告されている(岡崎ほか,2006).しかし, 岡崎ほか(2006)においては,扱った遺伝的マー カーの多型性の低さ,集団数および個体数の少な さから,それぞれの地域集団内における遺伝的多 様性は十分には解明されていない. 近年,遺伝的多様性評価のために,高い遺伝的 多型検出力を有するマイクロサテライト分析が用 いられることが多く,これまでもいくつかの希少 淡水魚類に対して用いられてきた( 三宅ほか, 2007; Ohara and Takagi, 2007; Yokoyama et al.,

2009など).そこで本研究では,イタセンパラにお ける効果的な保全・保存施策の構築のために,現 在も継続的な生息が確認されている富山県氷見市 の野生集団およびそれに由来する飼育繁殖集団に 加え,大阪府淀川水系産個体に由来する飼育繁殖 集団について,各地域集団の遺伝的固有性と集団 内の遺伝的多様性を把握することを目的として, マイクロサテライト分析を行った. 材 料 と 方 法 材料 イタセンパラの標本として,富山県氷見 市の仏生寺川野生集団(Himi-W1)と万尾川野生 集団(Himi-W2),および仏生寺川に由来する 2 つ の飼育繁殖集団(Himi-C1, 2),また大阪府淀川水 系において採集され,大阪府の水生生物センター に お い て 継 代 飼 育 さ れ て い る 飼 育 繁 殖 集 団 (Osaka-C)から,2006 年および 2008 年に採集し た合計 341 個体を用いた.尾鰭の一部を切除して 99%エタノールで固定し,DNA 分析に供した.こ の際,日本魚類学会の「研究材料として魚類を使 用する際のガイドライン」に基づき,採集による イタセンパラ集団に与える影響を抑えるため,尾 鰭を切除された個体は活魚状態にて採集地点に放 流された.なお,本研究はイタセンパラの現状変 更を伴うため,「文化財保護法」および「絶滅の おそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」 の規定に基づき,文化庁,環境省および氷見市か ら許可を得て実施した. マイクロサテライト分析 Dawson et al.(2003) によりヨーロッパタナゴRhodeus sericeus を対象と し て 作 成 さ れ た 1 2 種 類 の プ ラ イ マ ー セ ッ ト ( Rser01–Rser12) を 対 象 に Dawson et al.( 2003)

に従い PCR を行った.DNA の抽出および PCR 増 幅断片の検出は,Yokoyama et al.(2009)にした がって行われた. データ解析 検出された多型的遺伝子座につい て,遺伝子型出現頻度におけるハーディ・ワイン ベルグ平衡からの逸脱の有無について,GENEPOP (Raymond and Rousset, 1995)を用いて検定を行っ た.またMicro-checker(van Oosterhout et al., 2004) を用いて,遺伝子型検出に影響を与えるヌルアリ ルの存在を推定した. さらに最近生じたボトル ネックの有無を検出するために,ヘテロ接合度過 剰が示されるか否かを Bottleneck ver 1.2.02(Piry et al., 1999)を用いて推定した.そして遺伝子座 間 に お け る 連 鎖 不 平 衡 の 存 否 に つ い て , GENEPOP(Raymond and Rousset, 1995)を用いて 検証した.以上に加えて,各集団について,ヘテ

ロ接合度の期待値(HE)および観察値(HO)を

GENETIX(Belkhir et al., 1996–2004)を用いて求 め,さらに有効アリル数(ne)をKimura and Crow

(1964)に基づき算出した. それぞれの集団間について遺伝的差異の検定 (Fisher の正確確率検定)を GENEPOP(Raymond and Rousset, 1995)を用いて,また遺伝的分化の 指標である FST統計量を用いた検定を Arelquin2.000 (Schneider et al., 2000)を用いて,それぞれ行っ た. 結     果 集団内の遺伝的変異 調査した 12 プライマー セットのうち,5 つのプライマーセット(Rser02, Rser05, Rser08, Rser09, Rser11)において,再現性 ある増幅が確認された.このうち3 つのプライマー セ ッ ト に お い て は , い ず れ も 単 一 の ア リ ル (Rser05–199, Rser08–96, Rser11–80)のみが認めら れたことから,それぞれを単型的遺伝子座とみな した.残り 2 つのプライマーセットにおいて,3 つ (Rser02)あるいは 4 つ(Rser09)のアリルが認め られたため, それぞれを多型的遺伝子座として

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扱った.これら多型的遺伝子座について,いずれ の集団においても遺伝子型出現頻度にハーディ・ ワインベルグ平衡からの逸脱は認められなかった ことから,それぞれの集団を任意交配集団として 扱った(Table 1). Micro-checkerを用いてヌルアリルの存否を推定 した結果,いずれの遺伝子座においてもヌルアリ ルの存在は推定されなかった.また,最近生じた ボトルネックの有無を推定した結果,いずれの集 団においても有意なヘテロ接合体過剰は示されな かった.さらに,遺伝子座間における連鎖不平衡 は,いずれの組合せにおいても認められなかった. 5つの遺伝子座を用いて算出されたヘテロ接合度 の期待値(HE),観察値(HO)および有効アリル 数(ne)をTable 1 に示す.大阪淀川水系集団の値 は,富山県氷見地域集団のそれに比べて高い値を 示す傾向が認められた. 遺伝的集団構造 各遺伝子座において推定され たアリルのうち,大阪淀川水系集団に固有なアリ ル(Rser02–180, Rser09–123, –127)が複数出現し た(Table 1).集団間における遺伝的差異の検定 を行い,シーケンシャル・ボンフェローニの方法 (Rice, 1989)により有意水準を補正した結果,い くつかの富山県氷見地域と大阪淀川水系との集団 間において有意な遺伝的差異が認められた(Table 2). 考     察 地域集団間における遺伝的な差異として,大阪 淀川水系集団において,固有なアリルの存在が示 された.また正確確率検定の結果,富山県氷見地 域集団と大阪淀川水系集団との間には,有意な遺 伝的差異が認められた.一方,遺伝的分化の指標 として用いられるFST値においては,両地域集団間 の遺伝的差異は必ずしも大きいものではなかった. 岡崎ほか(2006)は,ミトコンドリアDNA 分析に より,これら地域集団のそれぞれが固有の遺伝的 組成を有することを指摘している.一般に,長期 間に渡って遺伝子流動が存在しない集団間におい ては,その期間にそれぞれが個別に遺伝的変異の

Table 1. Allele frequencies, sample size (N ), expected heterozygosity (HE), observed heterozygosity (HO),

proba-bility of departure from the Hardy-Weinberg equilibrium (P ) and effective number of alleles (ne) for two

polymor-phic loci in Acheilognathus longipinnis populations. Number in parenthesis indicates year sampled. No significant deviation from Hardy-Weinberg equilibrium observed after sequential bonferroni correction.

Toyama, Himi City Osaka, Yodo River Locus Allele

Himi-W1 Himi-W2 Himi-W2 Himi-C1 Himi-C2 Osaka-C Osaka-C (2006) (2006) (2008) (2008) (2008) (2006) (2008) Rser02 150 0.103 0.046 0.085 0.031 0.022 0.044 0.052 158 0.897 0.954 0.915 0.969 0.978 0.856 0.828 180 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.100 0.120 N 39 54 41 49 45 45 58 HE 0.184 0.088 0.156 0.059 0.044 0.256 0.298 HO 0.103 0.093 0.171 0.061 0.044 0.267 0.207 P 0.034 1.000 1.000 1.000 1.000 0.636 0.003 ne 1.226 1.097 1.185 1.063 1.045 1.344 1.423 Rser09 121 0.372 0.519 0.524 0.286 0.568 0.523 0.491 123 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.023 0.035 125 0.628 0.481 0.476 0.714 0.432 0.330 0.336 127 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.125 0.138 N 43 52 41 49 44 44 58 HE 0.467 0.499 0.499 0.408 0.491 0.602 0.625 HO 0.419 0.462 0.512 0.490 0.455 0.523 0.569 P 0.520 0.586 1.000 0.292 0.758 0.314 0.740 ne 1.877 1.997 1.995 1.690 1.963 2.513 2.669 overall* HE 0.130 0.118 0.131 0.094 0.107 0.172 0.185 HO 0.104 0.111 0.137 0.110 0.100 0.158 0.155 ne 1.221 1.219 1.236 1.151 1.202 1.371 1.418

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蓄積,淘汰,そして遺伝的浮動を受け,現在の遺 伝的組成を獲得するに至ると考えられている(根 井,1990 など).イタセンパラにおいても富山県氷 見地域と大阪淀川水系は地理的に離れているた め,それぞれの地域集団は,異なる集団履歴の上 に成立した遺伝的な固有性を保持していると推察 される. 近年,希少生物の保護において,種内における 管 理 単 位 の 設 定 と 保 護 が 求 め ら れ て い る (Frankham et al., 2002 など).イタセンパラにおい ても,少なくとも今回調べた富山県氷見地域と大 阪淀川水系のそれぞれの地域集団を個別の管理単 位として保護していくことが必要であると考えら れる.また岡崎ほか(2006)は,濃尾平野の集団 についても遺伝的固有性が存在することを指摘し ており,今後詳細な遺伝子解析が必要である. 集団内における遺伝的多様性を地域間で比較す ると,大阪淀川水系集団の遺伝的多様性に比べて 富山県氷見地域集団のそれは低い傾向を示した. 一般に,遺伝的多様性は集団サイズに相関するこ とが知られている(根井,1990; Frankham et al., 2002など).希少種スナヤツメ南方種の遺伝的多 様性において,この種が広い範囲(約 20 km 四方 の範囲内の本川・支川; Yokoyama et al., 2009)に 生息する富山県神通川の複数地点から採集された 集 団 の 平 均 へ テ ロ 接 合 度 ( HE0.259–0.436; Yokoyama et al., 2009)は,狭い生息範囲(本川の 約 4 km の範囲; Yamazaki et al., 2006)しかもたな い富山県余川川集団のそれ(HE0.100; 山崎ほ か,未発表データ)と比べて,大きな値を示して いる.今回解析に供したイタセンパラ集団が採集 された富山県氷見市の仏生寺川および万尾川のい ずれにおいても本種の生息範囲(それぞれ本川の 約 3 km の範囲; 氷見市教育委員会,2008 など)は 狭く,集団サイズが小さいことはこれまでも指摘 されてきた(田中,1993; 氷見市教育委員会, 2008). また,低い遺伝的多様性は,集団形成時に保有 していた遺伝的組成(創始者効果)や過去におけ る個体数の極端な減少(ボトルネック効果)に起 因 す る こ と も 指 摘 さ れ て い る ( 根 井 , 1 9 9 0 ; Frankham et al., 2002など).本研究においては, 最近の数世代の間に生じたボトルネック効果は検 出されなかった.しかし,本研究で用いた Piry et al.(1999)の方法は,過去に経験したボトルネッ クを検出できない場合があることが指摘されてい る(Whitehouse and Harley, 2001).そのため,創 始者効果やボトルネック効果がイタセンパラ集団 の遺伝的多様性に与える影響について,今後更な る詳細な分析が必要である. 一方, 淀川水系における本種の生息範囲は, 1940年代以前は, 淀川の三川( 桂川, 宇治川, 木津川)合流部付近に存在した巨椋池を中心とし て,またその後も淀川河岸に形成されたワンドや たまりを利用して,流程約 30 km の範囲に広がっ ていたと考えられている(宮下,2005; 河合, 2008).加えて,この範囲内でイタセンパラは淀川 本流ではなく,主にワンドやたまりを利用し,増 水時にそれらの水域間を移動していたと考えられ ており(宮下,2005 など),これにより島モデルあ

Table 2. P-values for the genotypic test of homogeneity (above diagonal) and pairwise FSTestimates (below

diagonal) of seven populations based on microsatellite allele frequencies at five loci.

Toyama, Himi City Osaka, Yodo River Himi-W1 Himi-W2 Himi-W2 Himi-C1 Himi-C2 Osaka-C Osaka-C

(2006) (2006) (2008) (2008) (2008) (2006) (2008) Toyama, Himi City

Himi-W1 — 0.072 0.195 0.086 0.004 0.001* 0.001*

Himi-W2 (2006) 0.036 — 0.736 0.006 0.607 0.001* 0.001*

Himi-W2 (2008) 0.023 0.012 — 0.002 0.220 0.001* 0.001*

Himi-C1 0.026 0.089 0.088 — 0.001 0.001* 0.001*

Himi-C2 0.072 0.004 0.005 0.130 — 0.001* 0.001*

Osaka, Yodo River

Osaka-C (2006) 0.067 0.021 0.023 0.150* 0.022 — 0.984

Osaka-C (2008) 0.060 0.029 0.031 0.140* 0.034 0.008 — Results found to be significant after Bonferroni correction indicated by an asterisk.

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るいはメタ集団を呈する集団構造を維持してきた と推察される.以上のことから,本研究で用いた 大阪淀川集団は,長年にわたり飼育繁殖されてき た集団であるため,次に述べる継代飼育に伴う遺 伝的多様性の低下が懸念されるが,野生集団が有 していたと推察される比較的大きな集団サイズと それによる高い遺伝的多様性が,飼育繁殖集団に おいても維持されてきたと考えられる. 一般に,継代飼育されている集団においては, 飼育集団確立時における創始者効果とその後の遺 伝的浮動,あるいは近親交配の進行が懸念され, 積極的な対策を講じなければ,しだいに遺伝的多 様性が消失することが指摘されている(Frankham et al., 2002).本研究の富山県氷見地域において, 飼育繁殖集団 Himi-C1 および C2 の遺伝的多様性 は,その由来となった野生集団 Himi-W1 のそれと 同程度であった.富山県氷見地方における保存池 を用いたイタセンパラの継代飼育は,2004 年から 本格的に始まり,その後は保存池内における自然 繁殖と,毎年野生集団の一部を保存池に放流する ことによって,各飼育繁殖集団が維持されてきた (氷見市教育委員会,2008).このように保存池に おける短い飼育繁殖期間と新規野生個体の継続的 な導入により,これまでのところ野生集団と同等 の遺伝的多様性が飼育繁殖集団において維持され ていると推察される.一方,大阪淀川水系集団に ついては,本研究では保存池における飼育繁殖集 団のみを対象としたため,継代飼育に伴う遺伝的 多様性の消失の程度を明らかにすることはできな かった.しかし,本飼育繁殖集団においては,数 回の野生個体の新規導入はあったが,30 年以上に 渡り保存池内で継代繁殖を繰り返していることか ら(宮下,2005 など),今後の遺伝的多様性の変 化を注視する必要がある. 今後,イタセンパラ野生集団の保全および生息 地への再導入を想定した飼育繁殖集団の保存を効 果的に行うために,イタセンパラ集団における遺 伝的集団構造をより詳細に把握すると同時に,飼 育繁殖集団における遺伝的多様性の維持を前提と した飼育繁殖方法の確立を目指す必要がある. 謝     辞 本研究は,富山大学と氷見市教育委員会との平 成 18 年度共同研究, および水産庁と独立行政法 人水産総合研究センターからの平成 20 年度および 平成 21 年度生物多様性保全総合対策委託事業 (希少水生生物保全事業)の一環として行われた. 本研究の遂行にあたっては,富山大学の田中 晋 名誉教授ならびに魚津水族館の稲村 修氏にご協 力いただいた.ここに記して厚く御礼申し上げる. 引 用 文 献

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