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講演録

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Academic year: 2021

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(1)第2回 認知症高齢者と介護家族のための. 電話相談サミット 講 演 録. 開催日:平成 25 年 11 月2日 (土) 主 催:社会福祉法人 浴風会 共 催:公益財団法人 在宅医療助成勇美記念財団 (公益財団法人 在宅医療助成勇美記念財団の助成による).

(2) 目 次. 「電話相談サミット」実施データ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 2. プログラム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3. 主催者挨拶・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4. 共催者挨拶・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5. 講演「認知症の介護と電話相談」. ・・・・・・・・・・・・・・・ 6. パネルディスカッション      「どう支えますか∼人間関係に悩む介護家族∼」 ・・・・・・ 14 閉会挨拶・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 アンケート集計結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 電話相談サミットを終えて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43. --.

(3) 第2回 認知症高齢者と介護家族のための「電話相談サミット」 実施データ 《概要》.    日 時:平成25年11月 2 日(土)13:00∼15:50    会 場:社会福祉法人 浴風会        認知症介護研究・研修東京センター 2 階大会議室    参加費:無料    主 催:社会福祉法人 浴風会    共 催:公益財団法人 在宅医療助成勇美記念財団    後 援:杉並区        社会福祉法人 東京都社会福祉協議会        社会福祉法人 杉並区社会福祉協議会 《参加者》.    参加申込数:76名    実参加者数:92名(77名+スタッフ関係者15名).  (撮影/萩原義弘). --.

(4) プログラム. 13:00. 主催者挨拶  露口 長 (社会福祉法人 浴風会 専務理事). 共催者挨拶  中山 純彦(公益財団法人 在宅医療助成勇美記念財団 常務理事). 13:10. 講演「認知症の介護と電話相談」  本間 昭 (社会福祉法人 浴風会 認知症介護研究・研修東京センター長). 14:00. パネルディスカッション    「どう支えますか∼人間関係に悩む介護家族∼」  パネリスト  大野 教子「認知症てれほん相談」     (公益社団法人 認知症の人と家族の会東京都支部 代表)  恩田 興一「高齢者のための夜間安心電話」     (公益社団法人 東京社会福祉士会 電話相談事業研究開発委員会 委員)  中田 京子「認知症110番」     (公益財団法人 認知症予防財団 電話相談員)  野辺 由郎  「介護支え合い電話相談」     (社会福祉法人 浴風会 電話相談員)  コーディネーター  角田とよ子(社会福祉法人 浴風会 介護支え合い電話相談室長). 15:50. 閉会挨拶  京極 髙宣(社会福祉法人 浴風会 理事長)  司会  田中奈那子(社会福祉法人 浴風会 電話相談員).          注)敬称は略させていただきます。. --.

(5) 主催者挨拶. 露口 長 社会福祉法人 浴風会 専務理事 皆さんこんにちは。本日は、北は北海道から南は熊本まで、遠いところからおいでいただ き、ありがとうございました。昨年の第 1 回が大変好評でして、第 2 回もやりたいと理事長と も相談しておりましたところ、勇美記念財団から今年もまた助成金をいただけることになりま して、第 2 回を迎えることができました。心より御礼申し上げます。 浴風会は今年が88年目ですが、この杉並の二万平米の敷地の中に、老人福祉施設・病院、認 知症介護研究・研修東京センター、在宅事業等を展開し、一日の利用者約2200名、スタッフ約. 820名で運営しております。現在、新病院・老人保健施設を建設中で、来年第 3 回が開かれれ ば、6 階建ての建物を皆様にご覧いただけると思います。電話相談事業も14年目を迎え、相談 の 7 割が認知症で、認知症研究センターや認知症疾患医療センターをもつ当会が、このような 電話相談の集まりをするのは使命ではないかと考えております。  今、全国に介護・施設サービスが網の目のように広がって展開しておりますが、まだまだそ ういったサービスには乗れない方もいらっしゃいます。そのような方の悩みを聞くことは行政 ではなかなかできませんので、電話相談の一つの役割ではないかと思います。 本日は、パネリストの方々に、人間関係に悩む相談者をどう支えるかというテーマで、真剣 に、そして本音のところをお話しいただくことになっております。それから、セミナーのあと 交流会も計画しておりますので、皆様と一緒に盛り上げていただければ、主催者として大変う れしく思います。本日はよろしくお願いいたします。. --.

(6) 共催者挨拶. 中山 純彦 公益財団法人 在宅医療助成勇美記念財団 常務理事 よろしくお願いいたします。本来なら裏方ですが、財団の PR ということでお話させていた だきます。 勇美(ゆうみ)というのは、住野勇と奥様の美代子のお二人のお名前で、夫妻も私も医療と は関係が無いのですが、社会に貢献したいということで、2000年に在宅医療を推進する財団を 設立しました。 お手もとの『暮らしの健康手帳』は、昨年 6 月に一般市民向けにつくりました。あっという 『在宅医療テキスト』 『訪問看護活用ガイド』 『病院から家に帰りたい』 間に13万部配布しました。 という冊子も、どちらも15万部以上無料配布しています。今は在宅医療に関して、新聞も含め ていろいろご案内されていますが、当時からほとんどなかったので、私どもの冊子が皆さんに 希望されていたのだと思います。 財団は、基本的に国からのお金が届かない、現場で働いている方、NPO の方、個人で一生 懸命在宅医療あるいは在宅介護を推進されている方に、お金を少しでも出す方針でやっており ます。住野の50億円ほどの寄付を基に、年間約 1 億8000万円を全国いろいろなところに細かく 分けて、ネットワーク作りやいろいろな研究会・研修会に助成しております。11月から後期の 分を募集しておりますので、ぜひ私どものホームページをご覧いただき、申請をお願いいたし ます。 本日の電話相談サミット、非常に期待しておりますので、楽しみに聞かせていただければと 思います。ありがとうございました。. --.

(7) 講 演. 「認知症の介護と電話相談」 講師:本間 昭(社会福祉法人 浴風会 認知症介護研究・研修東京センター長) 1973年慈恵会医大卒業。デンマークオーフス州立細胞遺伝・疫学研究所研究 員、聖マリアンナ医大大学院、同神経精神科講師、東京都老人総合研究所精神 医学研究部長などを経て2009年より現職。専門は老年精神医学。日本老年精 神医学会理事、日本認知症学会理事、日本認知症ケア学会理事長、成年後見法 学会理事、厚生労働省社会保障審議会介護保険部会委員などを務める。. --.

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(11) ◎介護イコール認知症の時代に 日本にどのくらい認知症の人がいるかという 3 年前の推計値ですが、介護保険を利用してい る人が280万人、介護保険をまだ利用していない人が160万人で、合計440万人になります。こ れは、65歳以上の人口の約15%です。認知症の予備軍の人は380万人で、毎年 1 割くらい(約. 40万人)の人が認知症に移行していきます。2025年には、280万人が470万人になり、かなり の勢いで増えていきます。 今まで日本で介護と結び付けて考えられる病気は脳血管障害でしたが、 5 年後ぐらいには、 脳血管障害の割合と認知症の割合はほぼ一緒になり、それ以降は介護イコール認知症という時 代となるだろうと思います。 ◎認知症の定義と症状 認知症の一番基本的な定義は、「脳や体の病気によって記憶力や判断力、計画力などが障害 されて、ふだんの社会生活に支障を来した状態」です。 認知症の人に見られる症状を、アルツハイマー型認知症をモデルにして示すと、記憶障害や 遂行機能障害等です。その人の顔を見ただけでは記憶障害の有無はわかりませんが、同じこと を何回も確認したり、大事なものをしまい込んでいつも探し物をしていたりするのは、基本的 に記憶障害があるからで、言動に反映されてくるわけです。 二次的に起きてくる症状は、どの人にでも100%見られるとは限りません。1995年、東京都 の65歳以上の人口が147万人という時代に、5000人を無作為抽出して調べた結果、一番多いの は自発性の低下で、43%とおよそ 2 人に 1 人でした。徘徊は6.0%、攻撃的行動は4.3%で、在 宅で暮らす認知症の人の20人に 1 人ぐらいにしか見られないということがわかりました。です から、認知症=徘徊、認知症=暴力というイメージは明らかに間違いです。「うちのおばあちゃ ん、あと何年ぐらいすると徘徊するようになるのでしょうか」というのは、家族の不安はわか りますが、ピントが合った質問ではないと思います。 ◎症状を修飾する要因 脳の組織の障害と、実際に日常生活上で見られる言動が 1 対 1 に対応しない場合もしばしば あります。一つは、本人の身体の具合です。便秘が続いたり、心不全でむくんでいたり、風邪 で熱発しているだけでも、言動は変わってきます。血糖や血圧が不安定になっても影響がでま す。 二つ目は、本人の心理的状態。一番典型的なのは独居の不安感がもとになって自分の身体の 変化に過度に敏感になったりすることがあります。夜中に目を覚まし、少し心臓がどきどきす ると、それを非常に心配して救急車を呼んでしまうわけです。 三つ目は、その人が置かれている環境やケアによって状態が変わります。身体的な虐待を受 けているような場合は当然ですが、普段の何気ない介護者の関わり方によっても、最終的に見 られる言動は変わってきます。例えば、お嫁さんとおばあちゃんが 2 階で洗濯物を干そうとし た時に宅配便が来て、お嫁さんが「洗濯物を干していて下さいね」と言って玄関に降りて行っ たとします。2 、3 分経って、お嫁さんが戻ったときに、まだ洗濯物が籠の中にあった時、そ のお嫁さんがなんと言うかです。アルツハイマー病の一番大きな特徴の一つは、さっきのこと を忘れてしまうことですが、この特徴を知らないお嫁さんが、「まだ洗濯物を干してくれてな かったのですか」と言ったとします。おばあちゃんは「干しておいて」と言われたことを忘れ ていますから、「誰が干せって言ったんだい」と売り言葉に買い言葉的な応答になって、けん - 0 -.

(12) かになることもあるでしょう。そして、 お嫁さんがおばあちゃんに付き添って外 来に行った時に、「うちのおばあちゃん は最近怒りっぽくなってきたんです。こ の間もこういうことがありました」と医 師に訴え、それを聞いた医師がそういう 状況が起こった時のことをきちんと確認 してくれればいいのですが、「少し病気 が進んで怒りっぽくなってきたのかな」 というふうに受け取られてしまうことも あり得ます。お嫁さんが病気の特徴を理解して、改めて「おばあちゃん、これから洗濯物干し たいので手伝ってくれますか」と言えば、「ああいいよ」となって、けんかしないで流れてい くというふうになるわけです。頭ではわかっていてもなかなかできないという場面は多いだろ うと思いますが、介護者の理解度・対応によってこれだけ違ってくるのです。 ◎三大原因疾患とその特徴 認知症は、いろいろな原因によって起こる症状の総称です。お腹が痛くて病院に行き、医師 から「腹痛症です」としか言われなければおかしいと思うのと同様、どうも物忘れがひどいと いうことで病院に行って、ただ「認知症」としか言われなかったら、腹痛の例と一緒です。 認知症の原因によって特徴は違ってきます。一番多いアルツハイマー病の場合、さっきの出 来事に関する記憶を忘れてしまうという特徴があります。そして、それを忘れたとしても、 場 合わせ という言葉もありますが、うまくそれを取り繕います。取り繕いは立派な症状です。 二番目に多いのは、レビー小体型認知症です。実際にないものが見える 幻視 が特徴です。 また、午前中はその日の予定を把握できていた人が、夕方になると自分の配偶者のこともわか らなくなってしまうくらい混乱してしまうというように、朝夕で状態がすごく違ったりしま す。手が震えたり、歩く時に腕を振らなくなったり、歩行が小刻みになったりというパーキン ソン症状はレビー小体型認知症の特徴の一つです。アルツハイマー病に比べると自律神経の障 害が非常に重く、起立性低血圧を起こしやすくなるので、転倒に気を付けなければいけません。 それから、抗精神病薬を使わざるを得ない時もありますが、アルツハイマー病よりも非常に効 きやすいという特徴もあります。 三つ目は、脳梗塞や脳出血の後に認知症が起こってくるタイプです。一番共通した症状は、 自発性の低下です。家の中をあちこち動き回ったり、少し目を離すとぱっと外に出て行ってし まうようなことはほとんどなく、声をかけなければ一日中こたつに入っている人もいますか ら、家族にとっては手間がかからないということになります。血管性認知症の場合、脳血管障 害の治療と再発を防ぐことと、なんとか工夫して外に連れ出して廃用性の変化を少しでも防ぐ ような手だてがとても大切になります。 ◎早期に受診する意義 認知症を早く見つける意義は三つあります。一つは、内科的・外科的な治療が可能な原因(頭 の中に腫瘍がある、血腫がある、貧血の一種がある、甲状腺の働きが悪い等)の場合、認知症 が起こって 3 年を過ぎると、治療効果が不十分になりやすいといわれていますので、早く見つ けるに越したことはありません。二番目が、アルツハイマー病であれば薬物療法で進行速度を -  -.

(13) 遅くすることができ、できるだけ早い時期に治療を始めた方が効果があります。三番目は、家 族は、自分の親が認知症であるというのをなかなか受け入れにくく、きちんと認知症がある親 に向き合えないということがあります。できるだけ早い時期からデイサービスなどの介護サー ビスを利用したり、主治医やケアマネジャーから説明を受けたりすると、だんだん頭での理解 だけではなく、体験として介護者の対応による影響ということを理解できますので、行動心理 症状が表れにくくなります。 ◎安心して在宅介護するために 認知症の人の医療とケアの目標の一つは、住み慣れた家で一日でも長く生活する ことです。 医療もケアも手段は違いますが、目標は同じはずです。厚生労働省は、2013年から 5 か年の認 知症対策としてオレンジプランを整備しました。認知症の人を在宅で介護していこうと考えた 時に、①肺炎や骨折等で入院が必要な時に入院して治療を受けることができること、②認知症 の症状のために介護保険サービスを利用できないことがないことという二つがきちんと保障さ れていないと、安心して家で看ていくことはできません。 家族が自分の家族が認知症であることを受け入れるには段階があります。最初は、とまどい 否定的なケアをする段階です。この時はおそらく受診前で、家族の言動が病気によるものであ るということを理解できない段階です。次に、病院を受診して、診断と病気の説明を受けたあ と、頭では家族が認知症であることを認めて否定から脱しようとするのですが、体験として自 分の家族が認知症であると受け入れることができない段階です。親が間違った言動をしたとき に、子どもは一生懸命何回も説得や説明をします。その時の子どもの表情は、笑いながらそう いう説明を普通はしないと思いますから、どうしても真剣な表情になります。すると、説明を される親の側からすると、叱られているということになり、決していい印象にはなりません。 そのことがまた新たな症状を生み出すことにもなります。そして、何回言ってもだめだと諦め て放棄する段階に行く場合もあるし、またしばらくすると、一生懸命10説明すれば 1 つはわ かってくれるのではないかと期待をつなぐ段階になったりします。こういうことを何度も繰り 返して、介護者自身も、自分の応対が本人の症状に反映されるのだなということが、体験とし て理解できるようになっていくわけです。そういう段階に至る介護者は20人に 1 人くらいかも 知れませんが、そうなるとかなり余裕をもって世話ができるようにもなります。そのためにも、 できるだけ早く受診して時間をかせいだほうがいいということです。 ◎電話相談の意義 一生懸命やろうとしているけれどうまくいかない、でも希望を持ちたいとぐるぐる回ってい る段階の家族に、電話相談が果たすことができる役割があります。長期間在宅で介護を続けて いこうとするときに一番大切なことは、介護者が悩んだり困ったりした時にすぐ相談できる 相手がいるかどうかです。自分が困った時にすぐ話ができる、それが愚痴であってもいいので す。あるいは自分の気持ちに対して共感してもらえるかです。主治医でもいいし、ケアマネで もいいし、隣りのおばさん、友達、誰でもいいのです。認知症の介護を考えた時に、必要な時 に必要なだけ、長期にわたる介護を続けるために一番必要とされるサポートとして電話相談が あり、そこが一番大きな意義ではないかというふうに思います。 理屈通りに、家族が世話をしていくということはできません。怒ることも嘆くことも放って おくこともあると思います。なかなか受け入れられないということがあっても、やはり家族は がんばってしまうだろうと思います。そういう家族の人たちに、あなたは一人ではありません、 -  -.

(14) もう一人で背負わないで、私たちもいますから、見ていますから、地域がありますからという ことを、電話相談でもメッセージとして伝えていただければと思います。 ご静聴ありがとうございました。. -  -.

(15) パネルディスカッション パネリスト: 大野 教子(公益社団法人 認知症の人と家族の会東京都支部 代表) 恩田 興一(公益社団法人 東京社会福祉士会. 電話相談事業研究開発委員会委員). 中田 京子(公益社団法人 認知症予防財団 電話相談員) 野辺 由郎(社会福祉法人 浴風会 電話相談員). コーディネーター:角田とよ子(社会福祉法人 浴風会 介護支え合い電話相談室長). 司会(田中) ただ今よりパネルディスカッションを始めさせていただきます。コーディネーターは当会介 護支え合い電話相談室長の角田でございます。それでは、角田さんよろしくお願いいたします。 角田 皆さんこんにちは。パネルディスカッションのコーディネーターを務めさせていただきます 角田でございます。今日はすごくいいお天気かと思っていたら少しどんよりしていますが、台 風でもなく、これだけたくさんの方に全国からお集まりいただきまして本当にありがとうござ います。 昨年、電話相談サミットを初めて開催させていただきました時に、チラシのサミットの文字 を緑色にしたため、サミットストアのチラシかと思ったなんて言われました。たくさんの方か ら「またやってほしい」というご要望と勇美記念財団の助成をいただきまして、2 回目を開催 させていただくことになり、前回の好評な会を引き継ぎたいと思いまして、また緑にいたしま した。おかげさまで、今日また集えることを本当にうれしく思っております。どうぞよろしく お願いいたします。  認知症に限らず高齢者の介護では、高齢者あるいは介護家族はたくさんの人間関係の中で毎 日暮らしていらっしゃいます。医療や介護の専門家との関係も新たに生まれますし、それまで 疎遠だった親戚とも付き合わなければならない、あるいは毎日のように井戸端会議をしていた ご近所の方が、 「うちのおばあちゃん認知症なのよ」と言った途端にだんだん疎遠になっていっ たという例もありますから、人間関係がある意味クローズアップされて複雑になってくるとい うのを実感しております。 私どもの電話相談で一番多いお悩みは、介護する方の心身疲労の悩みに分類されるものです。 二番目が認知症の方をどのように介護したらよいかという介護方法の悩み、三番目が家族間の 人間関係のトラブルの悩みです。他の団体でも人間関係にお悩みのご家族や高齢者が多いとい うことで、今回は「どう支えますか∼人間関係に悩む介護家族∼」というテーマにしました。 パネルディスカッションの進め方ですが、最初にこちらにお並びの 4 名の方に、私どもの電 話相談にはこのような相談が寄せられており、それに対してこのように対応しています…のよ うな問題提起的なお話をそれぞれ10分間ずついただきます。そのあとにその内容をコーディ ネーター役の私が拾いましてディスカッションに移らせていただきます。後半の15分から20分 ぐらいは、ここにお集まりの方は全国で電話相談に関わっていらっしゃる方とお見受けしてお りますので、ぜひご意見あるいは質問を寄せていただいて、会場と檀上が一体になったパネル ディスカッションにさせていただければと思っております。 -  -.

(16) ではトップバッターの大野さん、よろしくお願いします。 大野 認知症の人と家族の会東京都支部の大野でございます。 よろしくお願いいたします。 私どもの電話相談は31年前に立ち上がりまして、ずっと 続けてまいりました。相談内容は、複数回答ですが、受診 希望と認知症でしょうかというのが10%くらいで、介護方 法と精神的な援助が85%以上を占めています。どういうこ とが介護を困難にしているかというと、角田さんのところ と同じように心身の疲労が多く80%以上を占めています。 心身の疲労がどこから来ているかというと、ご本人の BPSD からきているものが約半分です。あとは家族間トラブルが. 20%近くを占めていて、その時はお話なさらなくても、毎 日の生活の中にそういったものを抱えていらっしゃる方はもっとたくさんいらっしゃるのでは ないかと思います。. 30年の間に介護状況が変化しまして、ご本人の家族構成がとても大きく変わっています。一 人暮らしの方、ご夫婦二人暮らし、それから親と独身のお子さんが生活なさっているご家族が それぞれ30%ずつを占めるようになりました。これは電話相談から見える数字ですが、現在の 社会の状況を示していると思います。 また、私どもの電話相談にかけてきてくださる相談者の方は、昔はお嫁さんが40%近くを占 めていたのですが、今は半分近くが娘さんです。親御さんと一緒に住んでいらっしゃる方もい ますし、結婚してご家庭を持って離れているが親御さんのことが心配で電話をくださる方もい ます。介護者とご本人の続き柄では、奥様とご主人様、要するに老老介護が増えてきていて、 独身の娘さんや息子さんによる介護も増えています。また、ご主人様や息子さんの男性介護者 による介護が増えていることも、この30年間の大きな変化として私どもの電話相談から見える ことです。 それでは、どのような人間関係に悩んでいらっしゃるかをお話したいと思います。まず一人 暮らしの認知症のご本人のことで娘さんや息子さんからくる相談で一番大きなのは、ご近所と のトラブルです。症状が進んでくると、いろんなサービスを使って家族が配慮していてもなか なかご本人の不安が消えないものですから、頻繁にご近所に電話したり、朝早く夜明けととも にお隣のドアを叩いたり、そういう不安から出てくる行動でご近所の方が悩まされます。それ を離れている息子さんや娘さんに苦情として訴えるという相談です。あとは介護職の方との関 係で、同居できないので一人暮らしをなんとか続けさせたいが、ケアマネさんに相談してもピ タッとくるような安心できるようなサービスを得ることができないという悩みを相談してくる 方もいらっしゃいます。 老老介護の場合、ごきょうだいが介護なさる場合もありますが、ほとんどが配偶者である奥 様かご主人様が介護なさっています。奥様が介護者の場合、想像ですが、ご自分のパートナー であった立派な夫が衰えてきていて、ましてや治ることがないといわれている認知症にかかっ てしまったことを隠したい、恥を見せたくないという思いがおありになるのか、なかなかご自 分から外に発信することができない奥様が結構いらっしゃいます。そういったことでご近所と 意志疎通ができないというか、発信なさったとしてもご近所の理解が得られなくて、「お宅の -  -.

(17) ご主人困ったわ。またうちの庭に入り込んできた」というような、些細なことかもしれません がご本人たちにとってはとても傷つく状況が結構多いということです。 あとは医療従事者の方や介護職の方に自分が困っていることをうまく伝えられないというご 相談もあります。 それから老老介護の場合、ご主人様からの相談では、子どもさんとの関係で悩んでいらっ しゃいます。中にはお母さんのことで大変だと、みんなでそれぞれの役割分担を果たしている ご家族もあります。しかしどちらかというと、ご主人様には奥様に対するいろいろな思いが あって、それがなかなか子どもたちに伝わらなくて子どもたちとの間にギャップがあるんです ね。子どもたちは「お父さん一人で抱え込んじゃって。もっと僕たちにいろんなことを頼んで くれればいいのに。何でも自分でやろうとしている」という悩みを抱えています。あとは、認 知症である奥様のごきょうだいとなかなかうまくいかなくて、結局理解が得られないまま、こ れは奥様が介護者の場合もそうですけれど、きょうだいなのになにかこう距離感があって、古 い家族で愛情でつながっていたはずなのに、配偶者が認知症になったことでそのつながりが切 れてしまったという相談も寄せられます。 独身の娘さんからの相談で多いのが、認知症の母親との確執、. 藤です。母親が病気になる. 前から親子関係がぎくしゃくしていたり、小さいころから自分は本当に母親に愛されて育って きたのだろうかという思いを持ちつつも、自分が一人娘であるために介護せざるを得ない。親 戚からも「あんたしか面倒見る人がいないでしょ」と言われる。でも自分の中でなんか納得で きないふっきれないものがある。 あとはご兄弟との確執ですね。独身でお家に入られて親御さんの介護をされていると、どう しても頼りにされます。頼りにされるというのはいい表現ですが、逆に悪い表現でいうと、家 にいる妹に親のことをすべて任せてしまって、お兄さんたちは放りっぱなしであまり構わない という確執の相談もあります。あと、息子さんよりも娘さんの方がご親戚からいろいろと言わ れますね。先ほど言ったように「あんた一人娘なんだからあんたが看るしかないでしょ」と言 われたり、お母さんが愚痴を言ったりすると、「お母さんがあんなふうに言ってるけど、もう 少し大事にしてあげなきゃ」と言われる。些細なことだったり親戚の皆さんが心配して下さっ ているとしても、介護している娘さんにとってはとても傷つく言葉です。 あとご近所とか友人もだんだん離れて行く。ぎくしゃくとした争い事はないのですが、話し てもわかってもらえないという思いで、結局離れていってしまう感じですね。独身の息子さん の場合、仕事している時に職場の理解がなかなか得られないということで、どうしても介護離 職につながってしまう例も多く寄せられています。 それから、最近お嫁さんからの相談は少ないのですが、お嫁さんがつらい思いをしていると いう相談だけではなく、嫁の立場で何とかして介護しているお嬢さんの手助けをしたい。お舅 さんがお姑さんの認知症に理解がなくて、認知症を治そうと思っていろいろなことを要求して お姑さんが小さくなっておどおどしている、そういう姿を見ているとなんとかしてお姑さんが 居心地いいようにしてあげたい、自分が何かやれることはないだろうか、でもお舅さんにその 気持ちを受け止めてもらえないのでどうしたらいいでしょうというご相談も増えています。 私たちには、電話のこちら側と向こう側がつながっている15分間とか 1 時間の間に、ご本 人だけではなく介護者が何を大事にして生きてきたのか、そして大事にしてきたことが介護に よって実現・継続できなくなったという言葉にならない思いみたいなものが、電話の向こう側 から伝わってきます。ですから、今現在どんなことを一番悩んでらっしゃるのか、抱えてらっ しゃるのか、私たちに訴えたいのかということを、一生懸命私たちの浅い人生経験の中で自分 -  -.

(18) なりに判断しながら受け止めて、周りの人に理解してもら えないもどかしさに同調するという姿勢でやっています。 そして、少し客観的な立場になって、電話の向こうでそ の方が少し明るい気持ちになったなと察したら、「もしかし たらお姉さまたちもこういうことを言ってるかもしれない けど、もしかしたらこういう気持ちがおありになるのかも しれませんね」というふうに、ちょっと違った角度で周り の方のお話もしてみると、「ああそうかも知れませんね」と 気が付くことも結構あります。「なんとかまた家族の中で頑 張ってみます」という言葉を頂けるととてもありがたく思 います。すみません、長くなりました。 角田 はい、大野さんには全体的な傾向からお話しいただいた ので少し長くなったと思います。恩田さん以降の方には、人間関係に悩むというポイントでお 話いただけますでしょうか。 恩田 安心電話の恩田でございます、よろしくお願いいたします。 私たちの電話相談の売りというか特徴は、夜間やっているということです。東京都の事業と して始まり、20時から24時まで365日やってきました。その後紆余曲折がありまして、現状は. 19時半から22時半まで、年末年始も休むことなく365日やっています。また、9 月末に新しい 事務所に引っ越しまして、電話番号が変わりました。それから組織名も、 公益 社団法人東 京社会福祉士会となりました。 今回のテーマは介護家族ということですが、私どもの電話相談には、例えば「デイサービス どこに行ったらいいでしょうか?」というような具体的な相談もないことはないのですが、夜 の時間帯の中で、今自分の心をどういうふうに安定させたらいいのかという相談のほうが多く なっています。年代も、昔は60代70代の方が多かったのですが、この24年間のデータを見たら. 40代から80代ぐらいまで平均化してきているかなという状態です。 私たちの電話相談の特色から考えると、どうしてもご本人のところに焦点を合わせていくこ とのほうが多いです。ご家族、周囲、職場、ヘルパーさんとの人間関係に苦しんでいらっしゃ ることもあるのですが、そういうことをご本人がどう受け止めるかというところに最終的には 焦点を合わすほうが、より私たちの相談機関としての役割を果たせるかなと受け止めて対応さ せていただいています。 そういう困難な状況の中で、ご自分自身の中に安心感・安定感というものがないと、将来に 対して不安になっていく。いろいろなことを想定した時にすべてをマイナスに捉えてしまっ て、そしてそのマイナスが続いてしまった時どうなっていくのかというところに迷い込まれ て、そこから抜け出られなくなってしまう方が多いのではないかと感じています。そういう方 にどんなふうに寄り添ったらよいのか。お一人お一人の状況に合わせて日々対応させていただ く中から私たちが有効だと思って導いてきた手法が、 対話型電話相談 という形です。これ は全員の方に対応しているということではないのですが、基本的にはそういう方向性を常に見 ながらやってきています。 -  -.

(19) 特に繰り返しかけていらっしゃるリピーター、私たちは再来者と呼んでいますが、不安や将 来自分がどうなるかといったことが、その一回の電話相談で解決するという方は、まずありえ ない。長い方は、平成10年からやっていますが、その当時からずっとかけ続けている方もい らっしゃいます。そのご本人の状況は、過去の時間と現在の時間が不思議に混じり合ってくる ので、私たちも不思議な体験をさせていただいています。 このような相談を受けていますというところに移らせていただきます。ご家族はいらっしゃ るけれど実質的には独居の方の事例です。奥様と非常に親しくされていて、奥様との時間がも のすごく充実していたという70代の男性です。うちの電話相談にかけてからおそらく10年程度 過ぎていると思います。電話相談を利用される前に奥様を亡くされて、その時突如として、仕 事や子どもさんのことなど様々なことが重なってきまして、日常性というものが全く失われて しまった。そして、ご本人がおっしゃるには、夢遊病者のように空間、時間が味気なく、人と 交わるのも苦痛だという日々で、死にたい気持ちも持って生活していらっしゃった時に、私た ちの電話相談にたどり着かれました。 この方が最初に電話相談にかけて来た10何年前のことが、今もその方とお話すると鮮明に 思い出せます。最初のころは短い電話のやりとりでした。「妻を亡くしましてね」、「寂しくて」 ということで 1 分とつながらない電話を繰り返し繰り返しかけてきました。私たち相談員は、 どうやって会話をつなげたらいいんだろう、どんなふうに対話ができるんだろうと悩み、しば らくこの状態が続きました。そのうちに、かけてきて下さる、毎日短い言葉でもかけて下さる というところに私たちは役割を果たしているというふうに解釈していこうではないかと考える ようになりました。その時その時言葉をピンポンできるように工夫しながら電話を受け続け、 少しずつお話できるようになった時には、障害者制度の問題や様々なご相談もありました。し かしベースはそれらの具体的な解決ではなくて、ご本人の気持ち、安心感をどう導くかという ところが大きなポイントだったかなと思っております。その後少しずつ状況が変わってきまし て、今では日常的な話題を相談員と楽しんでいくところまで至っています。 私たちは、ずっと話をお聴きしてきましたし、対話型というその枠の中に入る方法でお話を させていただいてきました。その長い経過を見た時に、私たちの実践がよかった悪かったとい うことは別にしまして、その方の変化は明らかで、前のあの方がどうして今の状態になるのだ ろうとびっくりしています。私もこの方とお話するのを非常に楽しみにしています。どちらか というと私の方が依存的になったのではないか、逆にそんなふうに感じています。 この方は夏バテで急激に体力を落とされてほとんど家に閉じこもり状態になってしまい、一 番具合が悪かった時にも電話相談されていたそうです。そんなにひどい状態だったというのは つい最近お聞きしました。ご本人の表現で言いますと、「この年齢になってから自分の心の状 態が一夜にして変わってしまうんだというのを本当に体験的に感じた」そうです。 今はまた元通りに外に出られて、私たちとやっているのと同じように、他の人と対話すると いうことをやられていると聞きました。その方の人生にとって私たちが横にいさせていただい たんだなということを感謝している状況でございます。 角田 ありがとうございます。続いて、認知症予防財団の中田京子さんお願いいたします。 中田 認知症予防財団の中田と申します。よろしくお願いします。 -  -.

(20) 認知症予防財団は、認知症110番という電話相談を週 2 回、 月曜日と木曜日に行っています。認知症110番は、毎日新聞 創刊110周年記念事業ということで始まりまして、電話相談 自体はちょうど21年という時間が経っております。今件数 は 2 万件を超えまして、私もときどき相談に行かせていた だいています。 うちの電話相談の中で統計を取っていますが、一番多い のが福祉サービス等の情報提供と介護対応方法についての 助言です。次に多いのが、人間関係の調整、特に家族関係 の調整、まさしく今日のテーマです。認知症についての説 明が次にきています。時間は、最初の情報提供では 5 分ぐ らいで終わる方も多いですが、人間関係の調整だと非常に 時間がかかって人によっては60分を超える方もいらっしゃ います。件数は情報提供が多く、濃厚さでは人間関係の調 整だと思います。 本間先生のお話にもあったように、認知症の薬も出てきたので早く病院にかけたいという方 が年々多くなってきています。家族の物忘れがひどくなって認知症かもしれないけれど本人に 全く自覚がなくて病院に連れて行けない。問題はどんどん起きてくる。例えば車を運転してい る人であれば事故を起こし始めているし、お金の使い方もかなり怪しいし、鍋も焦がしている ので「どうしたらいいんでしょう?」という相談が入ります。そしてそこに家族の問題も乗っ かってくるケースがあります。身近に見ている方はこれは怪しいので病院に連れていきたい、 本人をどうやって説得するかというところにいるのですが、離れている家族の方は受け入れら れなくて、まだ大丈夫だからいいんじゃないかと反対する。こういう家族同士の意見の不一 致・. 藤が、相談として入ってきます。運転の話では、もう危ないから止めさせたいという家. 族の思いと、最後の生き甲斐なんだから運転させておいてあげていいんじゃないかという思い の戦いです。それと、家族の誰が主導権をとるのか、リードしていくのか、誰が病院に積極的 に連れていくのかというところも、家族間の問題としてあがってきます。. 50歳代の女性から、お子さん 2 人は成人して手が離れており、舅さんと姑さん両方の介護を しているという相談がきました。5 年間の経過の中で舅さんが亡くなり、姑さんは最初のころ は介護度が 1 か 2 ぐらいでしたが、5 年のうちには要介護 5 になり、すべてのプロセスを電話 相談の中でお聞きしていた事例です。 この方の相談は、実のお子さんが 3 人いるのに、「嫁が看ればいいじゃないか」「嫁が看て当 然」と言われ、 承認 がない孤独感やら怒りやらそんな話を聞いてほしいというものでした。 だんだんストレスが強まったり家族の問題が高まっていきますと必ず月曜日か木曜日に電話が かかってくるようになりました。電話相談を自分の日々の感情のはけ口にすることでやっと介 護が続けられているという方で、私たち相談員もすごく大事に、どの方も大事ですが、この方 も丁寧にやろうねと言いながら、対応していったと思います。 長い期間なのでこの方のその時のバージョンがいろいろ違うんですね。誰も介護のことを理 解してくれない、この症状について誰も理解してくれない。それからこの方は長男のお嫁さん ですが、他の方がお母様の様子を見にたま∼にいらっしゃっていろんなことを口出ししてい く。日曜日に来ましたということだと月曜日に電話が入って、「こんなふうに介護してくれっ て言われたんだけど自分は精一杯でこれ以上介護できない、すごく怒りを感じる、自分の力不 -  -.

(21) 足を感じる」というような相談がきます。介護にはいろいろ費用がかかるのでお金の問題も出 てきまして、「仕事ができないのでお金が苦しいんだけど、他の実子の方は出してくれない」。 どうやって出してもらうかというよりも、出してくれない怒りを話されていました。あとは、 舅さんの時代から始まっている介護なので、「この姑をいったいいつまで看ればいいのか」。子 どもであれば発達段階があるので、1 年経ったらこうなって 2 年経ったらこうなってという楽 しみがあるけれど、姑は年々老いていって認知症もひどくなっていって、自分もどうなってい くのかという前が見えないつらさ。それと、すごく丁寧に看ていらっしゃる方なので、認知症 が進んできますと、姑を置いて出かけられないという状況も起きてきました。美容院に行く時 間もないというのが非常にストレスになっていて、息がつけないと話された時もあります。確 かに、家に安心して置いておけないと買い物にも行けず自分の時間も持てないんだなというこ とをつくづく感じました。サービスを紹介するとサービスを使ったりもするのですが、非常に 細やかな方なのでデイサービスに行ったら行ったで「おばあちゃんが不安定になってきてどう しましょう」とか、「サービスを使うのは良くないんでしょうか」という. 藤もありました。. とにかく月曜日木曜日の定期便なのですが、相談内容・バージョンは様々で、私たちの電話の 中で吐き出すことで、この方は 5 年間介護を続けられたのだと思います。この姑さんも最後は お亡くなりになりましたが、亡くなった時、「相談のおかげで介護が続けられました」とお礼 の電話がありました。 電話は出かけないでもすぐかけられるところが、ほんとに有効だと思いました。おばあちゃ んがいて出かけられない方でも電話の時間は取れるので、さっき本間先生のお話にも出てきた ようにサポートという意味では電話はとても重要だと思います。それと、匿名性が高く相手の 顔を見られないため、話す方にとっては家族のいろいろな愚痴を自由に言えるところが非常に いいなと私は電話相談をしながら感じております。 この方に一番多くした支援は 承認 です。おばあちゃんは姑ですが、愚痴を言いながらも とっても細かくケアをしていました。冬場でインフルエンザが流行れば「インフルエンザが流 行る中に連れ出していいんだろうか」、食事についても「これ大丈夫なんだろうか」と、本当 に細やかに配慮されている方という部分をくみ取っていたので、「ほんとにいい介護をしてい ますね、おばあちゃま幸せですね」ということを私たちが後半でお話しますと、「誰も言って くれないんですよ」と安心されて、自分の介護がいいんだっていうところに落ち着いて電話を 終えられていました。介護の承認っていうことをしながら 5 年間が過ぎたと思います。以上事 例の紹介として、こんなところでよろしいでしょうか。 角田 はい、ありがとうございます。では最後に当電話相談室の野辺のほうから発表します。 野辺 介護支え合い電話相談の野辺といいます、よろしくお願いいたします。正直なところ、今ま で 3 人の方がお話になりましたので、「もう話すことありません、どうしましょう」と思って おります。私たちの相談の中身については勝手に宣伝してしまいますが、室長の角田さんが中 央法規から本を出しまして、この本の前半、最初の 4 分の 1 ぐらいに、私たちの電話相談を含 めた電話相談というものがどういう意味を持つのかという話が出ておりますので、もしよかっ たらお帰りにお買い求めいただきたいと思います。 さて、事例を二つ。まず一つ目の相談者は、経済的に自立している娘さんで一人でお住まい - 0 -.

(22) です。要支援 2 のお母さん、がんを患うお父さん、今仕事についていないお兄さんが三人でお 住まいです。そして、お母さんやお兄さんと感情的なもつれから別居してしまったけれどまた 一緒に住みたいという相談でした。40分から50分ぐらい、相槌をうちながら僕自身の意見をさ しはさむことなく聞いていたでしょうか。ず∼っと長い間お母さんやお兄さんといろいろあっ た所謂彼女の物語、歴史物語を淡々と聴いていました。そして、ある時、ふっと、「離れてい るからやさしくなれるんですね」と彼女がつぶやいたんです。僕は「離れているからやさしく なれるとお思いなんですね」と反復しました。で、この電話は終わりです。彼女は彼女なりに この電話の中で、一つの結論です。しかし明日になればわかりません。でもその電話の時に一 つの落ち着き方を見せたんだなあと思っています。 事例の二つ目。離婚して実家に帰った娘さんです。もう子どもは家にいませんから娘さんと アルツハイマー病のお母さんの二人暮らしです。本間先生のお話にもありましたが、母娘二人 暮らしで、母親が認知症であると大変な煮詰まり方をして娘さんはつらい思いをすることがあ ります。相談事は、大声を上げるお母さんに「介護放棄よね」と隣近所が言っている、世間の 声が介護者に聞こえてくるんです。はっきり言って、介護者にとって世間は敵です。お母さん は、あんなにしてもらってもアルツハイマー病ですから「お前は何もしてくれないのね」。お 姉さんも近くに住んでいるのに嫁いでいるので、「私は介護しないよ。お前が家に帰っている んだからお前の家なんだろ」。家から出た人間はこういう時に都合がいいですよね。 これも傾聴です、お話を丹念に伺います。こういう結論がいいかどうかわかりませんが、彼 女が最後に出した結論は、「でも介護者は私しかいない。後悔したくないので在宅で頑張りた い。つらい気持ちを聴いてもらい元気になりました。ありがとうございました」で、終わりで す。つらい状況が変わったわけではありません。しかし心の持ち方は、電話相談を通して少し ゆったりしたかな、というふうなことでした。 僕は電話相談っていうのは劇的にその人の環境が変わって、その人が元気になるというとこ ろにはなかなかいかない、その日のその時のつらい気持ちがふっと消えたかな?というふうな 形でいいのではないかと思っております。 聞き方について、少しだけ話をします。相談が成り立つ根拠は、 人は薬 という言葉があ りますが、人は薬だから相談が成り立つ。人は薬であることを信じられない人は相談員にはな れない、相談事業が成り立たないと思っています。 誰もが自分の歴史物語を持っていて、それが安定している時には心も安心です。しかし、と んでもない出来事が目の前に起こった時に、自分の今までの安定していた歴史物語は崩れる、 私が崩れてしまうんですね。そこで不安の中に取り残されていくことになります。その時にど うすれば人はそこから抜け出すことができるのか。それは、他人を介して自分が見えるという 方法です。他人を通して自分と出会うという方法です。実は電話相談というのはそういうもの だと思っています。 電話相談では、電話をかけてくれた人にとっては他人である私に話をしてくれます。傾聴が 基本で、よく反復っていいますが、私はその人の言葉をできるだけ正確に返します。そうして 今まで混乱していた歴史物語が落ち着きを取り戻すことになればシメタもんだと思います。傾 聴活動を続けていればそうなっていくだろうという思いが私にはあります。混乱すると人に話 を聞いてもらいたいですよね、皆さんもそうです、僕もそうです。混乱するとなぜ人に話を聞 いてもらいたいかっていうと、話を聞いてくれた人を通して自分が見えるからです。そうやっ て自分を客観視することができるからではないでしょうか。 先程大野さんから、周りの人たちが介護者を苦しめているというお話がありました。世間の -  -.

(23) 目、厳しいですね。「お嫁さんがいるのにど うして施設に入れるの?お母さんがかわい そうよ」、世間の目です、世間の口に戸は 立てられません。「おむつ替えが乱暴なん だって。あの子がお母さんを認知症にした のよね」、親戚のおばさんの言葉です。きょ うだいでは「長男の嫁が介護するのが当然 よ」。介護してもらっている認知症の親も、 一番介護している人を財布どろぼうと言っ. 「認知症110番」中田京子氏. て傷つけますよね。夫、僕は男ですけれど、. 夫が悪い。仕事仕事で「俺が稼いでくるからお前の暮らしが成り立つんだろ」。今の日本の夫 婦社会は妻が自立する経済力を持てない状況があります。 真面目な娘さんほどお母さんとの人間関係に苦しみます。娘さんは認知症のお母さんに良か れと思って「デイサービスに行きませんか」と言います。お母さんは、「とんでもない。お前 から離れたくないんだよ。お前は私を捨てるのかい」と怒ります。一生懸命デイサービスのい いところを説明しますが、お母さんには説明の中身がわかりません。娘さんの表情はおっかな くなりますから、「お前なんか娘じゃないよ」と言われます。そうして、手が出るのです。そ ういう話を電話でする方っていうのは、自分が手を出すことを恥じています。自分が手を出す ことを恥じているから電話をしてくるのです。そういうときに、電話相談員は「お母さんを叩 いちゃいけませんよ」って返事できますか?できませんよね。役所の人は高齢者虐待防止法が あるから違うかもしれません。しかし、電話相談ではそれはしない。では電話相談は何をする のかというと、「よく電話してくれましたね、そうですか、あなたは手を出してしまうのです ね」 。彼女は「私はこんな人間ではなかった」「母に手を出すような人間ではなかった」と語り ます。それは先程の言葉を使えば、娘さんの歴史物語が混乱して孤立したわけですね。でその 時に、 「私はこんな人間ではないとお思いなんですね。わかっていてもわかっていても手を出 してしまわれるんですね」。電話相談員は手を出した行為を否定しません。では、手を出した 行為を肯定していいのか、手を出した行為を肯定することはできません。では、誰を肯定する のか、何を肯定するのか。恥じているその人を肯定するわけです。電話相談員がそういうふう にしていけば、だんだんとその方は落ち着いていってまた新たな自分ともしかしたら出会える かも知れない、そう思って日々電話相談をしている次第です。 角田 野辺さんありがとうございました。. 4 人の方のお話を聞いて私が感じましたのは、大野さんの 子どもとのギャップ 。子ども さんが、認知症のお母さんを一人で一生懸命介護しているお父さんに対して、「もっと自分た ちに頼んでくれればいいのに」。認知症に理解が足りなくてお母さんを叱咤激励して介護して いるお父さんに、「認知症の対応はこうだよ」と教えたいのに、「おまえはそんなこと言うな。 おれはやりたいようにやる」。お互いに理解し合えない部分をお話されたと思います。認知症 の症状がそういうことを生んでいる場合もあるでしょうし、もともとの関係、確執もあるで しょう。中田さんも 家族同士の意見の不一致 。家族っていろんな思いがあって、それぞれ が真剣に取り組んでいるんですね。それぞれが良かれと思ってやっているのに、家族全体でみ るとうまくいかない。 -  -.

(24) 私たちは相談してくる一人の方からのご相談を受け止めます。地域の支援だと家族全体に 入っていくことが可能ですが、電話相談では電話をしてきた方にしか実は寄り添えないですよ ね。そのときに、私たちはその家族の大きな問題を解決するために電話を受けようとするの か、それとも電話をしてきた今困っている、野辺さんがおっしゃったように手を出して恥じて いるその人をどう支えるのかというのが、いつも迷うところではないかと思います。この家族 にはこうしてああして、こういうケアプランでこうやったらきっといい介護にいくというのが わかっていても…というジレンマを感じながらご相談を受けています。 恩田さんからは、孤立して、電話相談にしかお話できなくてずっと引きこもっていた方が、 電話相談という人間関係が生まれたところで外に出ていった、そういう経過があったその方に どんなふうに寄り添ったかということをお聞きしました。 家族の問題を解決・調整することと、電話相談に相談してきたその人に寄り添うこと、そこ に皆さんもいつも悩まれると思うので、その辺のことについて意見交換しませんか。 恩田 私は最終的に、一人の人間が話すことってすごく大きいことができると思うんです。電話相 談の特質というのは、ある意味限定的かも知れませんが、電話相談にしかできないことがある と思っていますし、電話相談の価値はとてつもなく大きいと思うんです。その人が変化するこ とによって周囲に波及効果が出てくる可能性はあると思っています。その方に「家族にこうい うようにしてみたら」と仕向ける方法もあるかもしれませんが、そのへんのところは結果が見 えないですし危険性がありますので、その方が今の状況をどう受け止めていらっしゃるのか、 そしてそのご本人が他者に対してもっと違った対応ができないのかというあたりのところを、 私たちがいろんなお話をしながらご自分の中から見出していただくほうがいいのかなというふ うに感じました。 大野 今、地域包括では、いろんな現実的なもの特に困難事例には、何か月何年かかっても家族全 体の解決に結び付けている。そういうことを考えると私たちの電話相談って無力かしらってと きどきジレンマに陥ります。電話相談で、例えば、相談者が精神的にうつ状態になっていてお 母様を介護している、ご主人様との関係も介護していることであまりうまくいっていない、そ して頼りにしていたお兄様が一人いるけれど、そのお兄様も精神障害を抱えていて介護に手出 し口出しをしてくるのでお母様をサービスに結び付けることもできないというような場合、私 たちはその方のお話を聴くことはできますが、解決ということになると無力感を感じます。落 ち着かれた時にお話をお聞きして、本当ににっちもさっちもいかなくてどうしようと思って も、私たちの守備範囲を超えるところなので、解決のすべは地域包括のほうに結び付けて、そ こでじっくりみていただくというようにお任せしたほうがいいんですよね。 ただ、その方から何度も何度もお電話がかかってきますから、そのたびにその方が今思って いらっしゃることをこちらがまず理解するということです。何を言いたいのか、どんなふうに 困っているのか、今何がつらいのか。先ほど野辺さんがおっしゃったように、「こういう状態 なんですね」っていうことをお聞きして、こちらからもまたお話すると、「気持ちが吐き出せ て楽になりました」「すこし兄と立ち向かう勇気が出てきました」というふうになります。私 たちのできることは些細なことだと思いますが、介護している人には自分自身を見つめるとい う作業が必要ですし突きつけられているので、そういう時に自分を客観視できる、そして家族 -  -.

(25) の中で自分が一番つらい思いをしているかもしれないけれ ど、この家族の中で何ができるかっていうふうな、少し元 気を持ってもらえるといいなと思っています。 角田 そうですよね。問題解決を前提にしてお電話してきた方 にとって、少し元気が出るというのはすごく大きなパワー になりますし、それが何かのきっかけになりますものね。 中田さんいかがですか。 中田 電話相談というのは、私は受容的なもの、相手を受け入 れていくという… 角田 受容、ですね。 中田 はい受容。受け入れるっていうところが中心だと思っています。電話相談の中でどうしたら いいだろうという時に、サービスを使ったほうがいいかなとか、介護認定受けてないという方 に受けたほうがいいかなと思った時は、電話では関わりようもないので「地域包括や役所に 行ってくださいね」とフォロー、投げるというと変な言い方ですけれど、「地域包括に行って くださいね」って投げるということをします。 あとはその方自身に寄り添って、その方がどんな思いなのかという心の整理みたいなところ のお手伝いができればいいかなと思います。自分自身で整理していっていただくというのが電 話相談の役割だと思っています。 その時のつらさみたいなものは、例えば外の相談やカウンセリングに行く場合は何月何日何 時ですという具合なので、 旬 の気持ちがなくなっていることがあります。電話相談はその 旬 の時間にかけてこられますのでそこに寄り添うことができ、その方がパワーを取り戻す ことができると思います。 電話相談のなかで確かにうつの方、介護者がうつだとか他の病気をお持ちだったりいろんな 事例が出てくるのですが、当相談では少し絞り込みをしていまして、うつの相談はできません。 うつの方は他の相談に行ってくださいというところで、話を伺いながら少し整理させていただ くこともしています。そうすることで相談内容の焦点化をしていかなければならないので、そ ういう整理をしながらということは相談員全員で意思統一をしてやっております。 角田 ありがとうございます。今中田さんのお話でその時のつらさ、旬の気持ちという言葉が私の 中に響いてきました。野辺さんが言う物語で、相談者の旬の気持ち、相談者の今の状況がどう いうふうに物語になるかということを話してもらえるとうれしいのですが。. -  -.

(26) 野辺 僕は歴史物語という言葉を使ったと思います。物語っていうのは要するに自分自身のアイデ ンティティ、自分自身の存在証明というものを自分の物語を作ることによって確認していく。 そしてそれは長い長いその人の大きな歴史物語です。さっき話したように、深い信頼を持って いたお母さんから「おまえは娘じゃないよ」って言われたりすると、自分の物語が崩れていく 訳です。そういう中で電話相談が役に立つ。物語っていうのは、その時のその人のその都度の 物語ですから、同じ人が明日また同じ話を繰り返しても、それは同じ話ではないわけです。別 の話としてまた聞くということだろうと思います。 先程の角田さんの問いかけでいえば、家族の調整、家族間の調整は僕らの主たる仕事ではな いと思っています。これは地域包括、地域、ケアマネがやればよろしい。ただケアマネは介護 者の心に寄り添うことはあまりしませんよね。高齢者の心に寄り添うことが仕事だからという ふうに思っています。家族間の調整のために意見を求められたら、「こういうふうにしたら」 と言うこともあると思います。しかし、僕らの相談の主たる対応というのは、相談してきた人 の電話線の向こうにその人の世界があって、その世界に電話を受けている人がちょっと訪ねて 行っているという関係だと思います。ですから寄り添うことが基本的な態度だと思っていま す。家族調整は二の次三の次ですよね。もし家族調整をして欲しいということであれば、家裁 の調停もあるしいろいろなところがあるということをお話して終わりにしてもらっています。 角田 電話相談にできることには限りがある、しかし素晴らしい役割を担っていると思います。先 程中田さんが地域包括に投げるとおっしゃいました。私たちは橋渡しと言っていますが、それ ぞれの持ち場持ち場というのがありますものね。電話相談という支援の形があれば、地域包 括・ケアマネ、とにかくいろいろな形の支援があって、困った時にどこにかけこんで行ったら 今の自分の苦しさから少しでも軽くなれるかというように、支援がたくさん用意されていて選 択できる社会が本当に安心だと思います。皆さんもそういう思いで活動していると思います。 苦しんでいた人から「苦しみが軽くなりました」って言われたらものすごくうれしいですよ ね。パネリストの皆さんは、自分の発したこんな言葉が相談してきた人の胸に響いたようで、 その方がちょっと変わったんじゃないかなといううれしい体験をきっと一杯お持ちだと思いま す。ここにお集まりの皆さんが、あの言葉をメモして引き出しにしまっておこうと思うような いい言葉があったら、お土産にいいのではないかと思います。特に、ねぎらわれていないとか、 全然承認されない自分がつらい、こんなにやってるのに当のご本人から「娘には全く介護され てない」と言われてしまう人たちに、電話相談員がどんな言葉を投げかけたら喜ばれるのかと 思います。思いつく言葉はありますか?なかったら逆にこんな言葉で怒られてしまったでもい いですし、電話相談の今までのご経験を教えていただきたいと思います。 大野 「よくやっていますね」という言葉をおかけするのは、その時に本当によくやっていらっしゃ るなと思っておかけしますよね。一つ苦い経験があります。数年前の話ですが、娘さんがとっ てもお母さんのことを思っていて、私たちから見ればできる限りのサービスを使ってできる限 りの至れり尽くせりの介護をなさっていたので、「ほんとにいい介護をなさってますね」って 一言お声掛けしたら、「私はもっといい介護ができると思って今日はこの電話相談を利用した のに」と言ってぷつんと切られてしまったんです。心の底からいい介護しているなと思って発 -  -.

(27) した言葉なのですが、電話の向こうではもっといい介護をしたいと思ってアドバイスはないか と思ってかけてきて下さった。その娘さんは、私の言葉を聞いて傷ついてしまったということ ですよね。だからほんとに言葉というのは難しい。私の気持ちは彼女には伝わらなかったわけ です。それ以上に彼女の本当の気持ちを理解できなかったからこそそういう言葉が出てきてし まったという…苦い思い出。 角田 苦い思い出だそうでございます。恩田さんはいかがですか。 恩田 言葉っていうのは大事だなと日頃から思っているのですが、残念ながらいい言葉は思いつか ない…。 先程お話したあの方の場合、会話がなかったわけですが、そういう時間を随分長く過ごした あとに、あの時の状況を思い出して下さった。私の会話を受け止めてくれて、「旧知の間柄の ように感じて対話があった」と言って下さったんです。すなわち会話がないけれども 対話 があった。私たちは無言電話というものも大事にしています。言葉は非常に大事ですし言葉の 価値というか重みというかそれがどんな働きをするかを感じてはいますが、もっと究極の人間 と人間の関係は言葉を超えたところにあるというところを目指すことも必要かなと思っていま す。その方は、最初の場面ではほとんど言葉はありませんでした。そこに呼吸があって沈黙が あってという短い感じの積み重ねにかなりの月日を費やしたと思うのですが、それはその方に とっては存在のメッセージを伝え合っていた、お互いの存在を認識して伝え合っていたという ことなのかなというふうに思っています。 角田 会話がなくても対話があった、なんかすごいですね。 恩田 かっこよく言い過ぎたかもしれませんが。 角田 中田さんはいかがでございますか。 中田 参考にならないかもしれませんが、一番ヒットしたなと思うのが「逃げていいですよ」って 言った時ですね。ちょっと過激な言葉ですが、「休憩していいんですよ」という意味で言いま した。介護を担いすぎていると最初にお話した方は、自分のお母さんも姑さんも両者介護して いて、本当にいろいろなことを細かに介護していて、介護すればするほど自分で背負い込まな ければいけない状態になって、自分も体調が悪くなっているという話をされた時に、もうサー ビスに任せてしばらく休憩をという意味で「逃げちゃいなさい」と話しました。「ケアマネさ んにも同じことを言われました、やっぱり休憩していいんですね」と、自分の中で許可が得ら れたようです。そのあとこの方がどうしたかというと、多分ショートステイだと思うのですが、 両者を預けて自分の行先をサービス関係者には告げず、ご主人に任せてホテルに泊まって過ご -  -.

参照

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