P17002 平成 30 年度実施方針 IoT 推進部 1.件 名:(大項目)次世代型産業用3Dプリンタの造形技術開発・実用化事業 2.根拠法 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法 第 15 条第 2 号、第 3 号及び 第 9 号 3.背景及び目的・目標 (1)研究開発の背景 金属加工に於いて、切削加工、塑性加工等に次ぐ第三の加工法とされる3Dプリンタに代表 される三次元積層造形技術の進歩は、軽量でこれまでにない機能や複雑構造を有する等の高機 能製品の開発を加速するだけでなく、商品企画、設計、製造プロセスのデジタル化の進展等も 伴い、地域の中小企業、個人の知恵や感性を活かした新たな付加価値を持つ製品の創製、商品 企画から設計・生産までの時間を大幅短縮、地理的、空間的制約からの開放など、ものづくり に“革命”を起こす潜在力を秘めているとされ、欧米では製造業の再生の柱として3Dプリン タを用いた三次元積層造形技術の開発が活発化している。 また三次元積層造形技術は、従来の金属加工等のものづくり工程を大幅に短縮し、製造プロ セスにおける消費エネルギーの削減による省エネルギー効果が期待されている。 我が国の製造業が国際競争力を維持し、次世代のものづくりをリードするためには3Dプリ ンタを用いた三次元積層造形技術の開発・実用化が喫緊の課題である。 三次元積層造形技術の研究開発は、製造業の再生の柱として、新たな成長戦略である「日本 再興戦略」改訂 2016(平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)において国家プロジェクトとして推進す ると位置づけられている。「科学技術イノベーション総合戦略 2016」(平成 28 年 5 月 24 日閣議 決定)においても、3Dプリンタ等の革新的な生産技術の開発に取り組むことを明記されてい る。 (2)本事業のねらい 我が国ものづくり産業がグローバル市場において持続的かつ発展的な競争力を維持するた めに、地域の中小企業等の持つ技術や資源を活用し、少量多品種で高付加価値の製品・部品の 製造に適した3Dプリンタや金属等の粉末材料の多様化・高機能複合化等の技術開発及びその 周辺技術の開発を行い、次世代のものづくり産業を支える3Dプリンタを核とした我が国の新 たなものづくり産業の創出を目指す。また3Dプリンタの普及を進めることで、従来の金属加 工等のものづくり工程を大幅に短縮したエネルギー効率の改善につながる省エネルギー型製造 プロセスの創出を目指す。 (3)開発目標 現在の3Dプリンタでは、金属粉末を焼結・溶融するためのエネルギーを局所的に与えるため のビーム源として、電子ビームとレーザービームの 2 つの方式がある。両者の長所と短所は相補 的であり、それぞれが得意とする材料、加工品質、生産性によって応用分野を分ける傾向にある。
本事業では、世界最高水準の三次元積層造形システムを構築するため、両方の方式について技術 開発を行い、それぞれの特徴を最大限に発揮できる三次元積層造形技術の開発を推進する。両方 式の技術開発における最終の目標を以下に示す。 [委託事業] 研究開発項目① 「基盤技術の研究開発」 最終目標(平成 30 年度末) 1)造形・材料データベースの構築とシミュレーション技術による最適な加工条件の導出 [委託事業、助成事業(助成率:1/2)] 研究開発項目②-1 「電子ビーム方式の3Dプリンタ技術開発」 最終目標(平成 30 年度末) 1)高速高精度電子銃、電子ビーム照射機構、スキャン機構の開発(委託) 2)異種材料の複層造形技術実用化(委託) 3)以下性能の装置開発(助成) ・積層造形速度:500cc/h 以上 ・造形物の精度:±50μm 以下 ・最大造形サイズ:1,000 ㎜×1,000 ㎜×600 ㎜以上 ・装置本体の販売価格:5,000 万円以下 [委託事業、助成事業(助成率:1/2)] 研究開発項目②-2 「レーザービーム方式の3Dプリンタ技術開発」 最終目標(平成 30 年度末) 1)高速化(レーザー2kW 化)、品質安定化改良(委託) 2)異種材料の複層造形技術実用化(委託) 3)以下性能の装置開発(助成) ・積層造形速度:500cc/h 以上 ・造形物の精度:±20μm 以下 ・最大造形サイズ:1,000 ㎜×1,000 ㎜×600 ㎜以上 ・装置本体の販売価格:5,000 万円以下 [助成事業(助成率:1/2)] 研究開発項目③ 「金属等粉末製造技術及び粉末修飾技術の開発」 最終目標(平成 30 年度末)
1)真球形状で、高流動性と耐酸化性を有する、Ti 系、Ni 系、Al 系、Cu 系、Fe 系の 合金粉末。低コスト化試作 [委託事業、助成事業(助成率:1/2)] 研究開発項目④ 「鋳造用砂型3Dプリンタの技術開発」 最終目標(平成 29 年度末) 1)無機バインダーヘッドユニットの開発(委託) 2)高冷却性能を有する有機バインダーおよび鋳型砂の開発(委託) 3)以下性能の装置開発(助成) ・積層造型速度:10 万 cc/h 以上 ・最大造形サイズ:1,000 ㎜×1,000 ㎜×600 ㎜以上 ・装置本体の販売価格:2,000 万円以下 ・鋳型の製造コスト:1,000 円/㎏以下
[助成事業(助成率:1/2)] 研究開発項目⑤ 「金属積層造形技術の実用化に向けた実証」 最終目標(平成 30 年度末) 1)製品の特性と品質の安定性を評価することで量産技術として確立する 4.実施内容及び進捗(達成)状況 4.1 事業の実施状況 平成 29 年における実施状況は、 研究開発項目①「基盤技術の研究開発」においては 電子ビーム基盤技術は、 ・溶融凝固状態のモニタリング技術開発として、メルトプールの温度・形態のモニタリン グ技術を確立した。 ・スモーク現象解明のための粉末の熱伝導率・電気抵抗率評価の基礎技術を確立した。 ・電子ビーム方式のミクロシミュレーションモデルを構築し、プロセスマップを作成した。 レーザービーム基盤技術は ・熱変形予測シミュレーションのための計測法を確立した。 ・IN718、Al 合金(3 種)の造形試験、レシピ開発を行い、造形条件をデータベース化し た。また機能材料の、高強度 Al 合金、銅合金、NiTi 合金のレシピ開発を行った。 ・ミクロシミュレーションモデルを精緻化し、予測精度を向上した。 研究開発項目②-1「電子ビーム方式の3Dプリンタ技術開発」においては、 高速高精度電子銃・電子ビーム照射機構、および高速スキャン機構を開発し、 以下の試作機を開発した。 複層電子ビーム機 ・積層造形速度:214cc/h (最終目標:500cc/h 以上) ・造形物の精度:±27μm (最終目標:±20μm 以下) ・最大造形サイズ:300 ㎜×300 ㎜×600 ㎜(最終目標:300 ㎜×300 ㎜×600 ㎜) 大型高速電子ビーム機 ・積層造形速度:100cc/h (最終目標:500cc/h 以上) ・造形物の精度:-2~+78μm (最終目標:±50μm 以下) ・最大造形サイズ:500 ㎜×500 ㎜×600 ㎜(最終目標:1000 ㎜×1000 ㎜×1000 ㎜) 研究開発項目②-2「レーザービーム方式の3Dプリンタ技術開発」においては、 高出力ファイバレーザー(2kW)等を開発し、以下の試作機を開発した。 レーザートリミング方式複層レーザー機 ・積層造形速度:508cc/h (最終目標:500cc/h 以上) ・造形物の精度:±19μm (最終目標:±20μm 以下) ・最大造形サイズ:300 ㎜×300 ㎜×300 ㎜(最終目標:300 ㎜×300 ㎜×300 ㎜) マシニング方式複層レーザー機 ・積層造形速度:501.3cc/h (最終目標:500cc/h 以上) ・造形物の精度:±12μm (最終目標:±20μm 以下) ・最大造形サイズ:300 ㎜×300 ㎜×300 ㎜(最終目標:300 ㎜×300 ㎜×300 ㎜) 大型高速レーザー機 ・積層造形速度:68cc/h (最終目標:500cc/h 以上)
・造形物の精度:±50μm (最終目標:±20μm 以下) ・最大造形サイズ:600 ㎜×600 ㎜×400 ㎜(最終目標:1000 ㎜×1000 ㎜×1000 ㎜) また、装置化の共通技術開発においては、 3Dプリンタ用制御ソフトウエア開発 ・STL・AMF データ変換ソフトウエアの開発完了 ・加工条件設定・編集、配置支援、サポート設定および加工前評価ソフトウエアの 開発完了 モニタリング機能の開発 ・メルトプールモニタリング部の構想設計完了 ・レイヤー表面モニタリング部の基本機能設計完了 研究開発項目③「金属等粉末製造技術及び粉末修飾技術の開発」においては、 新アトマイズ法による高融点・高活性金属粉末製造技術の開発 ・可視化技術活用による噴霧現象解析技術確立 ・微細チタン合金粉末製造技術開発:粒径 53μm粉末製造技術確立 (最終目標:45μm以下) 気体流による遠心分離方式金属粉末分級機構の開発 ・分級精度として、累積 95%での粒度 35μm(粉末粒径 45μm 以下) (最終目標:40μm以下) ・分級歩留として、篩分級に対する歩留り 45% (最終目標:40%以上) 高性能化粉末製造のための粉末修飾技術の開発 ・平均粒径 15μmの微細銅系粉末への修飾技術の確立(最終目標:平均 10μm) ・銅系粉末積層造形による造形密度:99%達成 (最終目標:99.5%以上) アルミニウム合金粉末の製造技術開発 ・レーザービーム方式に対応したアルミニウム合金粉末の製造技術の確立 (最終目標:レーザービーム方式、電子ビーム方式の製造技術確立と標準仕様確定) 研究開発項目④「鋳造用砂型3Dプリンタの技術開発」においては、 無機バインダーヘッドユニットの開発完了、 高冷却性能を有する有機バインダーおよび鋳型砂の開発完了、 以下の性能を有する試作機の開発完了。 ・積層造型速度:10 万 cc/h (最終目標 10 万 cc/h 以上) ・最大造形サイズ:1,800mm×1,000mm×750mm (最終目標 1,000 ㎜×1,000 ㎜×600 ㎜以上) ・鋳型の製造コスト: 1,000 円/kg(最終目標 1,000 円/kg 以下) 研究開発項目⑤「金属積層造形技術の実用化に向けた実証」においては、 宇宙/航空機、エネルギー、産業機械、医療、自動車の分野で、21件の実証試験を 実施し、評価中。 4.2 予算、事業規模 26 年度 委託事業 助成事業(助成率 1/2) 事業規模 一般勘定 3,750 百万円 0 百万円 3,750 百万円 27 年度 委託事業 助成事業(助成率 1/2)
一般勘定 1,820 百万円 0 百万円 1,820 百万円 28 年度 委託事業 助成事業(助成率 1/2) 一般勘定 700 百万円 0 百万円 1,900 百万円 需給勘定 0 百万円 1,200 百万円 29 年度 委託事業 助成事業(助成率 1/2) 一般勘定 300 百万円 0 百万円 2,100 百万円 需給勘定 0 百万円 1,800 百万円 4.3 知財、学会発表 特許 特許等件数(出願を含む) 66件(補助事業分 6 件を含む) 特許権の実施件数 7件 ライセンス供与数 7件 学会発表(口頭発表を含む) 30件(国内24件、海外6件) 学会以外の発表 51件 5.事業内容 プロジェクトマネージャーに NEDO IoT 推進部 川端紳一郎を任命して、プロジェクトの進行 全体の企画・管理や、そのプロジェクトに求められる技術的成果及び政策的効果を最大化させ る。実施体制については、別紙を参照のこと。 5.1 平成 30 年度(委託)事業内容 【一般勘定事業】 研究開発項目①-1「基盤技術の研究開発(プロセス開発)」 においては 溶融・凝固状態のモニタリング・分析技術を開発し、各種金属でのデータ収集を行い、 溶融・凝固プロセス等のシミュレーション結果と比較検討することにより、最適な条件の 導出と、積層造形条件・材料と造形物特性とのデータベースを構築する。 【需給勘定事業】 研究開発項目①-2「基盤技術の研究開発(データ活用)」 においては 世界最高の品質と再現性を目指した高度インプロセスモニタリング技術の研究開発を 行うと共に、これらのデータを活用した3Dプリンティング用デジタルプラットホーム構 築の予備的研究を行う。 5.2 平成 30 年度(助成)事業内容 研究開発項目②-1「電子ビーム方式の3Dプリンタ技術開発」においては 以下性能の装置開発を行う。 ・積層造形速度:500cc/h 以上 ・造形物の精度:±50μm 以下 ・最大造形サイズ:1,000 ㎜×1,000 ㎜×600 ㎜以上 ・装置本体の販売価格:5,000 万円以下
また、2種以上の異種材料の複層造形技術を実用化する。 研究開発項目②-2「レーザービーム方式の3Dプリンタ技術開発」においては 以下性能の装置開発を行う。 ・積層造形速度:500cc/h 以上 ・造形物の精度:±20μm 以下 ・最大造形サイズ:1,000 ㎜×1,000 ㎜×600 ㎜以上 ・装置本体の販売価格:5,000 万円以下 また、2種以上の異種材料の複層造形技術を実用化する。 研究開発項目③「金属等粉末製造技術及び粉末修飾技術の開発」においては
高品質な造形を実現する高性能(真球化等)な Ti 系、Ni 系、Al 系、Cu 系、Fe 系の合金 粉末の製造技術を確立する。 研究開発項目⑤ 金属積層造形技術の実用化に向けた実証においては 組合員ユーザーの試作部品の実証評価から、金属積層造形技術の実用性を実証する。 標準化活動として、得られた研究開発成果については、ISO/TC261(国際標準化機構 積層造形 技術 専門委員会)国内審議委員会を通して、提案及び評価データ等の提供を行い、国際標準 化に向けて積極的に役割を果たしていく。 5.3 平成 30 年度事業規模 委託事業 助成事業(助成率 1/2) ①一般勘定 300 百万円 0 百万円 ②需給勘定 300 百万円 1,400 百万円 計 600 百万円 1,400 百万円 事業規模については、変動があり得る。 6.その他重要事項 (1)運営・管理 研究開発全体の管理・執行に責任と決定権を有する NEDO は、経済産業省と密接な関係 を維持しつつ、当該研究開発の目的及び目標に照らして適切な運営管理を実施する。また、 必要に応じて、外部有識者の意見を運営管理に反映させる。 (2)複数年度契約の実施 平成 29~30 年度の複数年度契約を行う。 (3)知財マネジメントにかかる運用 「NEDO プロジェクトにおける知財マネジメント基本方針」に従ってプロジェクトを 実施する。(研究開発項目①および②④の委託事業のみ) 7.スケジュール 平成 30 年 6 月 ・・・ 後継プロジェクト事前評価 平成 30 年 11 月 ・・・ 前倒し事後評価
8.実施方針の改訂履歴 (1)平成 30 年 2 月、制定 (別紙) 事業実施体制の全体図