第21巻 通巻第48号(1970) 67
アカマツおよびクロマツのノ耐塩性に閲す−る研究
一海岸林地の土壌改良について−吉 田 重 幸
1は じ め に わが国に.ほ古くから防風,防潮,防砂,防務,そのほかいろいろの目的で多くの樹種が海岸地帯に.植栽されて.いる・ しかし海岸という特異な環境条件,なかでも気温と水分と土壌の物理的,化学的性質および海からもちこまれる塩分に よって,そこ紅生育する植物体に何らかの影響をあたえていることは明らかである.(1)このような特異環境条件下でも 比較的多く利用され,初期の目的を長期間にわたって.保持しているのがクロマツであり今後もクロマツに依存すること は大きいものと考える申 しかし現在防風,防潮,防砂,防霧などの目的をある程度はたしているものも少なくないが, 全般的にはいろいろの悪条件が重なりあって,はなはだしい場合にほ桔損とか,−・時生育が停止したいわゆる不良林分, また成林はしている林分においてもまったく後継樹の生育がみられない林分も各地でみうけられるのが現状である・ 今後いろいろな目的で植栽される沿海地帯の植栽討画上十分に研究されなけれぼならない問題として.,まず沿海地の 塩害発生があげられようい一般に.海岸林地では異常なまでに土壌中の微細粒子が少いことが指摘されている・(2)海岸林 地では海塩の侵入により土壌中の置換性石灰が少くなる反面,ソー・ダが自然多くなってくる・その結果土壌中の微細粒 子およぴコロイドは単粒イヒして,・それが雨水などにより次発紅下層部に押しながされる結果として,これらが土壌間隙 をうずめるため土壌ほ鎮圧されたと同様になり土壌の通気,通水など土壌の理学性が著しく悪化して,とく紅乾燥に蔓 って土壌の固化が急速紅進められるように.なる.このようなことがすなわち土壌の老化といわれる現象であろうと考え. る、 そこで,これらの沿海林地土壌を改良し,土壌の若返りを行う手段として,まず良質土魔の客人が考えられる・しか し理イヒ学性のよい比較的良質土壌といえ.ども,ただ単なる客土では海からもら込まれる悔塩紅より再び急速に劣感化し てしまう.そこでこの劣悪化防止の一方策として−土壌の団粒化を促進するといわれている土壌改良剤を混用して,良質 土壌中の微細種子を比較的安定した状態で長期間土壌紅留保し,養水分の保持と流亡防止を行なって,植栽木の生育と, 後継樹の発生に良好な環境をつくりだすことが重要であろう. 今回ほ塩害発生の機作を調べる目的で行なっているもののうら,主として沿海地土壌の改良を主体と1した実験の結果 を報告するり Ⅱ 実 験 材 料 海岸林地土壌ほ蘭報のとおり,(3,4)兵庫県明石公園事務所管理,表舞子公園林分で採集してきたものを使用した・ま た客土用土壌濫ついても実際林地に客人する予定の土壌を供試した“一方土壌改良剤としてはゴ−セノール(日本合成 化学工業)およびEB−a(林化学産業)を使用した‖ なお,調査地近くの同公園内で比較的樹木の生育がよく,かつ後継樹の発珪状況のよい飛地林分の土壌中の塩分鼠と コロイド鼠についでも調べた… Ⅲ 実 験 方 法 1)実験土屑の作成 土壌容水盈測定用ガラス円筒として日本農学会で定められているものを11個積み重ね,個々のガラス円筒はピニ・−ル タープでしっかりとはり合せて漏水現象がないようにし,下端にガ−ゼを二重にあてて供試土壌の脱落を防いだ・・その 上瑞より供試土壌が均等に.なるょうにして租状態に充填したものを大形レヤー・レの上にガラス棒を渡し,その上紅土壌 をつめた円筒を置き,流下水が停滞しないよう紅して実験をおこなった… 2)試 験1真 分 A区 海岸林地と同じ土壌を50cm充填して上部より純水500mβを流下するもの・ B区 海岸林地と同じ土壌を45Cm充填してその上に5emの厚さに.客土用土.壊を充填して,上部より純水500mβを流下す るもの1.香川大学農学部学術報告 68 C区 B区と同様匿充填して上部から海水500mβを流下するもの. D区 海岸林地土壌を45C㈹充填し,その上に.土壌改良剤を10α当り約20柳昆入して2日間放置した土壌を苧C偶の厚さに 充填し,上部から海水500m絶・流下するもの. E区 D区と同様に充填して上部から純水500mβを流下するもの・ なお,D区,E区についてこほ改良剤をそれぞれ2種類使用した・ 3)土壌中の塩分豊の測定法
2)で述べた各区の処理円柱を溶液流下終了後2瞬間そのままの状態で放置後,各円柱の継ぎ目でそれぞれ分割し,
その分割した円筒の上部より約100ダの土壌を採取し,これを乾煉皿に入れ1050Cの乾燥馴コで24時間乾燥したのちデリ
ケーダー・中で放冷したい この乾土20ダを正確に秤盟して・≡舟フラスコロコに入れ,純水200mβを加えて,よく振とうした のち静置して,その上澄み液20血βを採りモ−ル法で土壌10タ申の塩分盈を求めた・ 4)土壌コロイドの測定法3)で述べた各区の各々の円筒よりとりだした乾土から25ダ正確に押収して沈降分析用シリンダーに入れた・・予持として,
まず約100机βの純水を注ぎ込み充分紅振とう捜拝したのち,再び純水を加えて正確に1Ⅰノとして上下によく放とうした・ 静忍後にスト・クスの法則(5)に従い0.01御以下の野分をピぺット法(5)によって液面下10C皿のところから懸濁紋50机緒 正確にピペットにてとりだし,この液を蒸発J】1耽.移して:105◇Cの乾燥剃]で乾燥後,デレケ一夕−[卜で放冷しこれな棺 押し.て土壌中のコロイドの盈とした。 5)電子顕微鏡によるコロイドの観察含塩盈と土壌コロイドの消長との関係が,土壌改良剤の施用によってどのように変化するかについて,さらに検討を
おこなう意味でコロイドの定鼠紅用いた懸濁液巾,海岸林地土壌に純水を流下したA区,海岸林地土壌に客土用土壌を
充敬して純水を流下したB区,海岸林地土壌に改良剤を洞入した土を充填しで海水を流下したD区,海岸林地土壌に改
良剤を混入した土を充填して純水を流下したE区,以上の各区について一円柱」二恥中恥下部について,それぞれ電子
顕微鏡観察用の試料として懸濁液を採取し被検体とした. ⅠⅤ 実験結果および考察 1)土壌中の塩分盈と土壌コロイド鼠紅ついて測定した結果は図−1,2,3,4,5,6のとおりである A区 図−2のとおり海岸林地土壌[糎は一般に多景の塩分が含まれているが純水を流下したため軋除塩効果があら われ,塩分量は減少し全層を通してあまり含量に差は認められなかった・一方土壌中のコロイドの鼠も非常に少いこと が明らかとなった B区 図−3のとおり表層に5C鵜の厚さに客土用土壊を充填した場合,A区紅比較して客人により表層部にコロイド の盈が増加すると同時に,下層部にまで増加の傾向が認められたぃ C区 図−4のとおり表層部のコロイド塁が急激に増加している一方,B区に比較して,とくに下層部に・コロイド量 の増加の傾向が認められた.このことほ梅塩により,土壌コロイドが解膠された結果と考えられる・なお,下層にも流 下された傾向がみられる。 D【ヌ 図】5のとおり表層部紅多畳・のコロイドが認められたがC区に比較して表層の粘土扇がやや少いのとともに中 層部にややコロイド景が増加していることが認められる,これほ改良剤の施用にもかかわらずその効果が−t一分発揮され ていないためであろう. 引云 図−6のとおり表層部のコロイド盈がD区に比較してなお少くなっているのは改良剤の施用効果があらわれた ものと考えられる…一方10〇m以下に.は純水の流下でほはとんどコロイドの流下が認められない 以上の結果からみて−,とくに砂質土壌では塩水の作用により土壌コロイドは単粒北されるためにはなはだ簡単に洗い 流されることが予想される.海岸林地および沿海埋立地などの土壌改良手段としての客土を行なう場合単なる良質土壌 の客人に終ることなく,土壌改良剤の混入によりより土壌の若返りを促すことが必要である 2)電子顕微鏡に.よる土壌コロイドの観察1Alヌーの観察結果として,海岸林地ではすでに長期間にわたって梅塩の作用が自然に.行なわれておるため,表層部で
ははとんど土壌コロイドがなく下層部叱移動していることが図−7−1,図−7−2,図−7−3で明らかである… 2 B区では林地ニヒ壌に客土を行った結果として,表層部匿おける土塊コロイドは図−8−1のとおりでAl真に比して69 第21巻 通巻第48号(1970) 感濁液中のコロイド束喝/50m亀 懸濁液中のコロ イトト最叫/50m色 40 50 60 70 80 90 コ00 ● ● ● ● ● ● ● 0 5 10 15 20 25 30 35 40 一生5 Cm50 5 0 5 0 5 ︵U .1 1 2 リ︼ 3 土 塊 の 深 さ ▲丁−−11−−⋮1▼1−1・◆−−−−●==−−−●−−i−−◆−ムー・l−⋮−†−−I ・土 壌 の 探 さ __._●.一塩 分 鼠 ●−−・・・・一・・・・・● コUイt.量 35 10 15 Cm50 10 2 0 30 40 土壌10g中の塩分鼠Cl川g/10gsoil 図−2 砂土佐純水を流下したものの塩分患および土壌 コロイド量 懸濁液中のコ ロ ート鼓mg/50mゼ 土塊10g中の塩分孟CI喝/ユOgsoil 図−1飛地林分土壌中の塩分壷および土壌コロイド畳 0 5 10 15 20 25 ラ0 35 40 45 Cm 50 5 0 5 0 5 0 1 1▲ 2 2 3 土 壌 の 深 さ 土 壌 の 深 さ 35 40 45 Cm 50 4 0 5 0 10 2 0 3 0 ユ0 20 30 40 50 土壌10g中の塩分鼠Clmg/10gsoil 図−4 砂土に客土して海水を流下したものの塩分盈お よび土壌コロイド鼠 懸濁液中のコロイド墓喝/50肌色 土壌10g中の塩分晃Clmg/10gsoil 図−3 砂土に客土して純水を流下したものの塩分壷と土 壌コロイド畳 懸濁淑中のコロイト畳mg/50皿¢ ﹂ 壌 の 深 さ 10 2 0 3 0 l0 50 土壌10g 巾の塩分量Clmg/10gSoil 図−6 砂土に改良剤を混入した土を客土して純水を流 下したものの塩分鼻と土壌コロイド崖 た壊10g中の塩分晃Clmg/10gSoil 図一5 砂土に改良剤を混入した土を客土して海水を流下 したものの塩分鼠および土壌コロイド塁
香川大学農学部学術報嘗 70 図−8−1砂土に客土して純水を流下したものの懸濁液中の コロイドの電顕写真 ×3,000 円柱上部 図−7−1砂土匿純水を流下したものの懸淘液中の コロイドの電鋳写真 ×3,000 円柱上部 図−8−2 同 上 円柱中部 図−7−2 同 上 円柱中部 図−8−3 同 上 円柱下部 図−7−3 同 上 円柱下部
第21巻 通巻籍48号(1970) 71 図−10−1砂土に改良剤を混入した土を客土して純水 を流下したものの懸濁液中のコロイドの電 報写真 ×3,000 円柱上部 図−9−1砂土に改良剤を混入した土を客土しで海水を流 下したものの懸濁液中のコロイドの電顕写真 円柱上部 ×3,000 図−10−2 同 上 円柱中部 図−9−2 同 上 円柱中部 図−10−3 同 上 円柱下部 図一9−3 同 上 円柱下部
香川大学農学部学術報告 72 コロイド粒子が多く残留する状態が認められ,さら紅中層部,下層部と次発に土壌コロイドの増加が認められる 3 D区の土壌コロイドの状態を観察すると図−9−1のとおり土壌改良剤を混入して客土した土壌中にほ単粒化され た土壌コ汐イドは非常に少いことが認められるが,一方中層部および下層部では図−9−2,および図−9−3のと おり単粒北した土壌コロイドがA区,B区のそれぞれの層に比べて増加していることがうかがわれる 4 E区の士慮コロイドの状態を観察すると表層部の土塊コロイドの形態ほ図−10−1のとおり非常に団粒化した様子 が見られる一斉,中層払下屑部では比較的土壌コロイドの増加が認められない 以上のような結果から海岸林地および沿海埋立地でほ過剰の塩分により,客土された土壌のもつ団粒北した状態の土 壌コロイドといえども比較的早い時期に解愕されて簡単に瀧い流されるといえよう・このことほ林地土壌の悪化が再び 促進される原因になると考えられる‖一方土壌改良剤の施用に・よって悪条件下紅おいても土壌の構造を安定した状態に 保ち沿海林地土壌の養水分の保持能力を増し植物の正博な生育をうながしうるものと考える Ⅴ 摘 要 海岸林地および沿海埋立地などにおいては海塩の作用紅よって土壌中の粘土は分散され土壌の理学性がいちじるしく 劣悪化してくる.これを改良する自的で良質土壌の客土および土壌改良剤の混入が土壌塩分および土壌コロイド量にお よぼす影響叱ついて調べた・ 1)海岸林地土壌に・純水を流下した場合微細粘土の移行は少ないため紅はとんどみられなかつた 2)客土した海岸林地土壌に.純水および海水を流下すると表層の粘土が単粒化されたためか,土壌コロイド遠の増加 とともに粘土が下層に移行している 3)海岸林地土壌紅改良剤を加えた客土を行ない純水を流下すると,改良剤の効果があらわれたためか,表層中の土 壌コロイド盈がやや減少するが,下層への移行ほあまりみられなかった・・一・方海水を流下した場合でも改良剤の土 壌コロイドの団粒化を促進する効果は認められるが,なれ 土壌コロイドの単粒イヒのためか下層への移行がみられ た 文 献 (1)沼田 異:植物生態学1,1−588,東京,竜今書院(1959) (2)奥田 東:土壌肥料綜説,49−63,東京,養贋堂(1959) (3)ま田議事,浅野二郎,四手井綱英:アカマツおよびクロマツの耐塩性紅関する研究,海岸林地にもちこまれる塩 分量について.,日林会講演集,(76),188∼190(1965) (4)ま田義幸,浅野二部:アカマツおよびクロマツの耐塩性に関する研究,海岸林地土壌の改良とくに土壌改良剤と 微細粒子の関係について(予報),日林会講演集,仰,299∼302(1967) (51船引良書,育峰壷範‥土壌実験法,186∼195,東京,養賢堂,(1966)
寛21巻通巻籍48号(1970) 73
A STUDY OF SALT RESISTANCE OF PlnuSdensif肋a SIEB.et Zucc. (AKAMATSU)AND Pmus77bunbeYIgiiPARL.(KUROMATSU)
−The soilimprovement of seaside forest area− ShigeyukiYos‡壬IDA
Sllmmary
In seagide forest area orin reclaimed offshorelar)d,etC.,the clayisdispered throughoutthe soiland
the physical condition of the soil is remarkably deteIiotated becauce of the action of sea salt For the
puropose ofimproving the soilweadded fine soilas a soilconditior)er by mixing,andinvestigated the
effect on the saltin the soilas we11as the quantity of the soilcolloids
1)The clayin the soilof the seaside forest area hardly moved by pouring pure water onit
2)As result of either’pure Or Sea Water being poured on the soilof the seaside forest aIea Whichwas
improved by adding another soil,the quantity of the soilcolloidsincreased and at the same time clay
moved towaIds thelowerlayer.It seemed to be due to the dispersion of the clayinto the surface
layer
3)When pure wateI・WaS pOured on the soilof seaside forest area to which was added the mixture of
another soiland a$Oilconditioner,the quantity of soilco1loidsin the surfacelayer decreased alittle,
and the clay hardly moved at allto thelowerlayer,prObably because of the effect ofsoilconditioner
On the other hand,in the case of sea water being poured on as well,the effect of theincrease of aggregation of the solid colloids was found.In this case,however,the movement towards thelower, 1ayer,Which may be attributed to theisolation of the soilcolloids,WaS Stillobserved