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Microsoft Word - 【事業研究会 論文】河川管理施設における遠隔監視制御システムの有効性について

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Academic year: 2021

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河川管理施設における遠隔監視制御システムの

有効性について

阿部 英明

1

・笠原 邦昭

2

・畑山 啓

1 1信濃川河川事務所 施設管理課 (〒940-0098新潟県長岡市信濃1丁目5番地30) 2信濃川河川事務所 (〒940-0098新潟県長岡市信濃1丁目5番地30). 河川管理施設である水門や樋門,排水機場などは,流域に暮らす人々を洪水の危機から守る ために不可欠な施設である.河川管理施設は,適切に維持管理して初めてその機能が発揮でき るため,日頃より監視し常に万全の状態に保つ必要がある. しかしながら,施設は老朽化,操作員も高齢化し,職員数は削減されており,対応に苦慮し ているところである.そのため,操作員の負担軽減や河川管理施設の効率的な状態監視などを 目的に,遠隔監視制御システムを構築し有効性の確認を行い,今後の活用を検討したので報告 する. キーワード 河川管理施設,遠隔監視制御,水門,樋門,排水機場

1. はじめに

信濃川は,長野県・新潟県の両県を貫流する幹線流路 延長及び年間総流出量が日本一の大河川である.信濃川 河川事務所は,その中流域と支川である魚野川の一部を 管理しています. 図-1 信濃川 流域図 信濃川下流域の越後平野は,内湾であったところが河 川の土砂堆積等により形成された歴史を持ち,0メート ル地帯が広範囲にある氾濫被害が発生しやすい地形であ り,日本海側最大の政令指定都市である新潟市をはじめ, 長岡市・三条市等の地方中心都市がある. 流域に暮らす人々の歴史は洪水との闘いの歴史であり, 安全・安心に生活するためには,堰や水門・樋門,排水 機場などの河川管理施設が適切に管理・運用されている 必要があり,日頃より監視し常に万全の状態に保ち,災 害発生時には迅速・確実に操作できる体制の確保は,絶 対的な命題である. 写真-1 大河津洗堰 しかし,河川管理施設の老朽化は進展し,操作員の高 齢化や職員数の削減などの課題もある中,河川管理施設 の常時監視や操作員の安全確保,非常時の確実な操作な どを目的に遠隔監視制御システムを構築し,その有効性 を確認するとともに,今後の活用について報告する.

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2. 現状と課題

信濃川河川事務所では,大規模施設である大河津洗堰 や大河津可動堰,妙見堰をはじめ,表-1のとおり水門 や樋門・樋管,揚排水機場等の68箇所,164施設を維持 管理している. 写真-2 水門 写真-3 排水機場 表-1 河川管理施設一覧 (1) 施設の老朽化 施設の維持管理(点検・整備)については,操作員等 の日常点検の他,専門の業者による定期点検,不具合発 生時には臨時の点検整備を行い復旧させている. 信濃川河川事務所が管理する河川管理施設は,図-2 に示すとおり,一番古い施設で設置後62年が経過してお り,既に40年以上を経過した設備数が30を超えている. 特に電気設備である機側操作盤関係は,経過年数に比 例して不具合が顕著となる傾向にあり,機側操作盤が故 障した場合は,手動ハンドルにより扉体の開閉操作を行 う必要があり時間も労力もかかる. 更に,機側操作盤は突発的に故障する場合が多く,早 期復旧には故障箇所の速やかな特定が必要不可欠であり, 常に状態が監視できれば速やかな対応につながる. 図-2 経過年数と設備数(門数・ポンプ台数) (2) 施設の操作員 河川管理施設のうち,流量調節を伴う大規模施設につ いては,堰等管理員が配置され24時間監視・運用してい るが,通常の水門や樋門・樋管,揚・排水機場などにつ いては,操作要領に基づき予め決められた水位に達した 場合,水門等操作員が非常参集し,運転操作を行い地域 の安全確保を図っている. 水門等操作員は,直接国土交通省から委嘱されている ものと地方自治体等に委託されているものがあり,図- 3は信濃川河川事務所が委嘱している操作員数と施設数, 操作員の平均年齢を示す. 図-3 水門等操作員数と施設数と平均年齢 水門等操作員の委嘱については,近年の社会的状況か ら核家族化や共働きが多く,なかなか委嘱を承諾してく れる人が少なくなってきており,確保に苦慮している. このため,地域に密接する河川管理施設については, 地方自治体への委託が増加し,信濃川河川事務所が直接 委嘱している施設数・全体人数は減少している. 委嘱に承諾していただける方は,日中在宅している高 齢者が多くなっており,平均年齢が上昇している. 委嘱している水門等操作員の年齢構成を図-4に示す. 20代・30代の若い人が平成10年度には約15%であったが, 平成27年度には約2%と大幅に減り,50代・60代が増え 28台 164施設 施設数 43門 21門 18門 37門 17門 揚・排水 機場 計 箇所数 3箇所 9箇所 10箇所 26箇所 7箇所 13箇所 68箇所 区分 大規模施設 水門設備 樋門設備 樋管設備 その他

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50代以上が全体の約90%となっている状況である.その ため平均年齢も非常に高く,操作員の高齢化が急速に進 んでいる. 図-4 水門等操作員 年齢構成状況 一般的には,高齢化すると老化による体力低下や体調 不良等となるリスクが高まる不安があること.また, 正・副の2名体制を確保しているものの2名とも70才を超 えている箇所もあり,高齢化は大きな課題である. さらに,事務所・出張所の職員も削減され,水門等操 作員のバックアップをできる状況ではない. (3) 水門等操作員の安全確保 平成25年4月5日付で「水門・閘門等の整備・管理のあ り方に関する提言」がまとめられ,提言においては,現 場操作員の危険時における安全最優先の待避ルールの明 確化,水門・閘門等の自動化・遠隔操縦化の促進,管理 委託のあり方等について,現状・課題と今後の取組の方 向性が示されている. 特に東日本大震災の教訓を踏まえ,現場操作員の安全 確保を最優先とした水門等の操作を確実にできる管理体 制の構築と運用が重要であり,河川管理施設巡視要領に も「命の危険が予測されそうな場合は,すぐに避難,又 は操作にいかない.」と明示されている. また,提言にはソフト対策として「退避ルールの明確 化し周知徹底すべき」と示され,ハード対策の一つとし て,「自動化・遠隔操作等を積極的に検討すべき」と方 向性が示されいる.

3. 遠隔監視制御システム

提言のハード対策の一つとして掲げている「遠隔操作 化」として,信濃川河川事務所では河川水位や各設備の 運転状況・故障発生を常時監視し,遠隔で樋門や排水機 場を操作することを目的に「遠隔監視制御システム」を 構築し,施設数が多い堀之内出張所管内に導入した. (1) システムの概要 図-5に示すとおり,各河川管理施設の機側操作盤内 に装備する機側監視制御装置は,運転維持管理情報を事 務所・出張所に送信する機能を有する.また,事務所・ 出張所に設置した遠隔監視操作設備は,各河川管理施設 からの受信データに基づき,各施設の状態監視・遠隔操 作を含む遠隔監視制御を行う機能を有する. 図-5 遠隔監視制御システムの監視データと操作制御信号の流れ 機側監視制御装置

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(2) システムの機能と特徴 今回のシステム構築あたっては,施設の状態監視・操 作に特化したシンプルで最低限な機能と操作に必要な現 地情報の表示ができるものとし,事務所も含めたネット ワーク化をするものとした.以下にシステムの主な機能 と特徴を示す. a) 各設備の運転・故障状況の監視 現地施設の運転状況,又は故障等の発生状況を監視 画面に表示する. 執務室や事務所長室のモニターに表示可能. 写真-4 監視モニター 写真-5 遠隔監視制御端末(事務所・出張所) 写真-6 遠隔監視制御装置を配備した河川管理施設 写真-7 機側監視制御装置(構成機器) b) 水位の変化表示(トレンドグラフ) 各施設(設備)毎に水位のデータを定期的に取得・ 蓄積し,トレンドデータとしてグラフ化. 図-6 水位グラフ画面 c) 故障発生時の表示 各施設(設備)毎に故障発生時は,重故障の場合は 発生項目まで,軽故障の場合は一括で異常を表示. 図-7 設備一覧表示画面 d) 運転・故障履歴 各施設(設備)毎に運転時間及び故障時は故障内容 (重故障・軽故障等)を時間毎で記録し,履歴とし て一覧表示. スピーカ マイク 広域管理サーバ

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図-8 運転・故障履歴画面 e) 帳票自動作成(運転記録等) 運転記録等の所定様式で帳票をプリンター出力. f) 音声通話 マイクとスピーカにより,事務所及び出張所と現 地の間で音声の送受信が可能.マイクにより施設 周辺の状況を確認するとともに,施設の作業者へ 音声による指示ができる.(写真-8) 写真-8 警告灯・マイク・スピーカ g) 河川管理施設の遠隔操作 事務所・出張所から遠隔操作により,水門等は開閉 操作を,揚・排水ポンプは運転・停止操作を行うこ とができる. 図-9 各施設毎の操作画面 h) Webカメラ 操作室の室内を撮影できる.機側操作盤・水門等操 作員の状況を確認する. 写真-9 Webカメラ i) 監視カメラ 河川管理施設の周辺状況(水位等)を監視するため 施設の上流側・下流側に設置.画角で変えられ旋回 し遠隔操作可能な超高感度カメラと画角が固定タイ プのカメラの2種類が設置されている. 写真-10 監視カメラ(固定タイプ) 写真-11 監視カメラ(旋回タイプ) スピーカ 警告灯 マイク

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4. 遠隔監視制御システムによる緊急対応

平成27年4月信濃川の支川において,油流出事故が発 生し,水門等操作員が現地到着するまでに油が水門を通 過し本川に流れ出る恐れがあった. 緊急対応として,水門のゲートを事務所にて遠隔操作 で半分だけ閉めるようにし,表面に浮いている流出油を 滞留させ,油回収作業班の現地到着まで本川への流出を 遅らせ,流出油を吸着マットで回収し対処した. 突発的に発生した油流出事故に対して,油処理を行う までの時間確保と,流出油の拡散防止に対しゲートの遠 隔監視制御システムが有効であることが立証された. 写真-12 油回収作業状況

5. 遠隔監視制御システムの有効性と活用

(1) 河川管理施設の常時監視 通常の河川巡視時では確認が難しかった河川管理施設 の故障や異常について,遠隔監視制御システムにより河 川管理施設の状態が事務所・出張所でも常に監視するこ とが可能になった. 事務所・出張所で施設の状態情報を共有化することで、 より多くの職員が監視を行えることになり,河川管理施 設の異常の早期発見が容易となるとともに,故障や異常 内容も把握できるようになった. また,事務所・出張所で故障・異常等の状況が共有化 できることで,対応方法が早期に決定できるようになり, 復旧の迅速化を図ることができる. (2) 水門等操作員の負担軽減 水門等操作員の不在やゲリラ豪雨による水害発生,突 発的な水質事故対応等の場合には,本システムの遠隔操 作により迅速な対応が可能となる. また,急激な水位上昇等水門操作員の命の危険が予測 されるような場合は,水門操作員に代わり本システムで 施設を操作することが可能となる.

6. 今後の課題と対応

(1) 施設の遠隔操作 河川管理施設の操作は,各施設毎の操作要領及び地域 あるいは施設の条件(状況)を熟知しないと適切な操作 はできない. 遠隔操作する場合であっても,操作要領に基づく手順 を一つ一つ確認して,操作する必要があることから,今 後システムに手順の確認行為を組み込むことの検討も必 要と考える. (2) 現地の安全確認 遠隔操作時は,施設周囲の安全確認が重要である. 監視カメラの映像や音声案内のガイド,警告灯はある が,固定タイプの監視カメラでは死角ができてしまい, 確実な安全確認は困難である. 監視カメラを死角が少ない旋回タイプへ更新すること や施設周辺の住民等に対して,遠隔操作で施設を動かす 場合があることを予め周知しておく必要がある. (3) 水門操作時の開度計と水位計 遠隔操作時に特に注意が必要なことは,開度計と水位 計であるが,古い固定カメラの映像では解像度が粗く水 位計や開度計の値を目視できない.今後は計画的に高感 度カメラに更新していく必要がある.

7. まとめ

本システムが,河川管理施設の維持管理における様々 な課題に対して,有効な手段の一つであることが確認で きた.今後も本システムの適用性を十分考慮しながら河 川管理施設に設置し,一層適切な維持管理が迅速に行わ れるよう努めていく.

参照

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