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AC Modeling and Control of AC Motors Seiji Kondo, Member 1. q q (1) PM (a) N d q Dept. of E&E, Nagaoka Unive

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Academic year: 2021

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全文

(1)

AC

モータのモデリングと制御

正 員

近藤

正示

Modeling and Control of AC Motors

Seiji Kondo∗, Member

1. はじめに モータをながめる座標を変換すると,その挙動を理解し やすくなったり,制御系を考案しやすくなることがある。二 軸理論や回転座標変換は,まさに,このためにある。回転 機の二軸理論をマスターするつもりなら,名著「基礎電気 機器学」(1)を薦める。 本文は,誘導機とPMモータのモデリング,および,その 制御に関する要点をまとめたものである。次の事項が,目 新しいと思われる。 •複素平面では正回転を左回り(反時計回り)とする習 慣に合わせて,座標系の図でも左回り(反時計回り) を正回転とした。 •線間電圧から直交二相電圧を計算する式を,〈3・3〉項で 導出した。 •突極機でも使える複素数表記による回転座標変換を 〈5・4〉項に示した。 •いわゆるすべり周波数形ベクトル制御の安定性に関す る簡単な証明を〈6・4〉項に示した。 なお,本文では,座標変換を適用するためにモータの起 磁力は正弦波状に分布しているものと仮定する。実際,多 くのモータでは正弦波分布巻線が施されており,この仮定 は満たされる。この仮定により,モータの電圧・電流・磁 束鎖交数などの空間的な加法を定義できて,それらをベク トルとして表現し,座標変換することが可能となる。ただ し,起磁力分布が正弦波状でも,磁気抵抗が正弦波状でな ければ磁束は正弦波状に分布しない。ここでは,磁気抵抗 のことは不問にする。 2. 回転機のインダクタンス 〈2・1〉 突極性を考慮したインダクタンスの計算式 〈2・11〉 自己インダクタンスの計算式 図1(a)に示 した突極機において,巻数Nのコイルの自己インダクタン スを計算してみよう。突極性のためにd軸方向とq軸方向 ∗長岡技術科学大学 電気系 〒 940–2188 新潟県長岡市上富岡町 1603–1

Dept. of E&E, Nagaoka University of Technology 1603–1, Kamitomioka-cho, Nagaoka, Niigata 940–2188

(a) 巻数 N のコイル (b) コイル巻数の分解 d q I Ncosθ Nsinθ d q θ I 図1 自己インダクタンスの計算モデル ではパーミアンスが異なることを考慮する必要がある。そ こで,図1(a)の巻数Nのコイルは,図1(b)のようにd軸 およびq軸に沿って分解した二つのコイルを直列接続した ものと考えてよいことに着目する。図1(b)の二つのコイル の等価な巻数は Nd0= N cos θ , Nq0= N sin θ· · · (1) となる。ここで,d軸方向とq軸方向のそれぞれの鉄心を通 る磁路のパーミアンスをPd,Pqとする。パーミアンスと 巻数の二乗の積が有効な自己インダクタンスである。よっ て,二つのコイルの自己インダクタンスは,それぞれ, L0ed= Pd(Nd0)2, L0eq= Pq(Nq0)2· · · (2) となる。d軸とq軸は直交しているから二つのコイルの間 に相互誘導はなく,これらを直列接続したものの合成イン ダクタンスは単純に和をとればよい。したがって,図1(a) の巻数Nのコイルの自己インダクタンスは

L(θ) = L0ed+ L0eq= Ledcos2θ + Leqsin2θ · · · ·(3a) Led= PdN2, Leq= PqN2· · · (3b) となる。 ところで,自己インダクタンスの計算には鉄心以外の空 隙を通る漏れ磁束も考慮しなければならない。そこで,鉄 心以外の磁路のパーミアンスPlによる自己インダクタン スの増加分を加算すると,(3a)と(3b)式は

(2)

(a) 巻数 N のコイル (b) コイル巻数の分解 d q θ θ' α N β N d q I θ αcos N θ αsin N θ βcos ′ N θ βsin ′ N 図2 相互インダクタンスの計算モデル

L(θ) = Ldcos2θ + Lqsin2θ· · · ·(4a)

Ld= (Pl+ Pd)N2, Lq= (Pl+ Pq)N2 · · · (4b) ように修正される。自己インダクタンスL(θ)はコイルの回 転角θによって変化する。 しかし,突極性がない円筒形の回転機ではPd= Pqであ るから,それを上式に代入して L(θ) = Ld(= Lq)· · · (5) のように,回転角θに関わらず一定となる。 〈2・12〉 相互インダクタンスの計算式 図2(a)のよ うに配置された二つのコイル間の相互インダクタンスを計 算してみよう。上記と同じように,まず,巻数Nα のコイ ルをd軸とq軸に分解すると Nd0α= Nαcosθ , Nq0α= Nαsinθ· · · ·(6) となる。同じく,巻数Nβのコイルを分解すると Nd0β= Nβcosθ0, Nq0β= Nβsinθ0· · · (7) となる。d軸上にあるNd0αNd0βのコイル同士の相互イン ダクタンスは Md = PdNαNβcosθ cos θ0· · · (8) となる。q軸上にあるNq0αNq0βのコイル同士の相互イン ダクタンスは Mq= PqNαNβsinθ sin θ0· · · (9) で表される。また,d軸上のコイルとq軸上のコイルは互い に直交しているから相互インダクタンスはない。したがっ て,以上を合わせた全体の相互インダクタンスは M(θ) = Md+ Mq = PdNαNβcosθ cos θ0+ PqNαNβsinθ sin θ0 · · · (10) のように求められた。 とくに,Nα= Nβ= Nかつθ0= θ + π/2の場合は M(θ) = −1 2(Pd− Pq)N 2sin 2θ = −1 2(Ld− Lq) sin 2θ · · · (11) d q θ α N Nd 図3 異なる鉄心上の巻線の相互インダクタンス d q α β θ isq vsq vsd isd i v i v 図4 二相回転機のインダクタンスの計算モデル となる。ただし,(4b)式を使った†。 一方,円筒形のときはPd= Pqであるから, M(θ) = 0· · · ·(12) である。 〈2・13〉 異なる鉄心上の巻線の相互インダクタンス 図3のように配置されたコイル間の相互インダクタンス は上の〈2・1・2〉項を応用して計算できる。図2(a)において θ0= 0とすれば同図のN βが,図3のNdに対応する。した がって,(10)式にθ0= 0とNβ= Ndを代入して Mdα(θ) = PdNdNαcosθ· · · ·(13) のように求められた。 〈2・2〉 二相回転機のインダクタンス行列 前項に示 した計算式を利用して,図4の二相回転機のインダクタン ス行列を求めると次のようになる。 [ L]= sd sq sd sq ra rb      (Pl+ Pd)N2 d 0 0 (Pl+ Pq)N2 q PdNdNαcosθ PqNqNαsinθ −PdNdNβsinθ PqNqNβcosθ †正確には (3b) 式を使ったが,漏れインダクタンスは差 Ld− Lq はキャンセルされるから (4b) 式でもよい。

(3)

rα PdNdNαcosθ PqNqNαsinθ (P0l+ Pdcos2θ + Pqsin2θ)Nα2 −1 2(Pd− Pq)NαNβsin 2θ rβ −PdNdNβsinθ PqNqNβcosθ −1 2(Pd− Pq)NαNβsin 2θ (P0l+ Pdsin2θ + Pqcos2θ)Nβ2      · · · (14) なお,(14)式において,たとえば,sdsd列要素はsdコ イルの自己インダクタンス,sdrα列要素はrαコイルか らsdコイルへの相互インダクタンスである。また,(14)式 から分かるようにこの行列は対称である。 一般的な(14)式を使って,後で使用するため特別な場合 について計算しておこう。 まず,固定子および回転子のコイルの巻数がそれぞれ等 しい,すなわち,Nd= Nq = NsおよびNα= Nβ= Nrのと きは Lsd= PdNs2 , Lsq= PqNs2 Lrd= PdNr2 , Lrq= PqNr2 Md= PdNsNr , Mq= PqNsNr ls= PlN2s , lr= P0lN 2 r    · · · (15) とおくことにより(14)式のインダクタンス行列は次のよう になる。 [ L]= sd sq sd sq rα rβ      ls+ Lsd 0 0 ls+ Lsq Mdcosθ Mqsinθ −Mdsinθ Mqcosθ rα Mdcosθ Mqsinθ lr+ Lrd+ Lrq 2 + Lrd− Lrq 2 cos 2θ −Lrd− Lrq 2 sin 2θ rβ −Mdsinθ Mqcosθ −Lrd− Lrq 2 sin 2θ lr+ Lrd+ Lrq 2 − Lrd− Lrq 2 cos 2θ       · · · (16) (15)式に加えて,ギャップが一様でPd = Pqの場合は M= Md = Mq, Ls= Lsd = Lsq, Lr = Lrd= Lrq(17) とおける。これらを(16)式の代入すると,さらに簡単な次 式が得られる。 [ L]= sd sq rα rβ sd sq rα rβ      ls+ Ls 0 M cosθ −M sin θ 0 ls+ Ls M sinθ M cosθ M cosθ M sinθ lr+ Lr 0 −M sin θ M cos θ 0 lr+ Lr      (18) =   (lM[C(s+ Lsθ)])[IT2] (lM[C(θ)] r+ Lr)[I2]    · · · (19) ただし [C(θ)] =  

cossinθθ − sin θcosθ    , [I2]=   10 01   · · · (20) である。 〈2・3〉 回転子に突極性がある場合 前項では,図4の ように,突極性を持つdq軸が固定子にある回転機のイン ダクタンス行列を求めた。これを利用して突極性を持つdq 軸が回転子にある(したがって,後で示す図6(b)のように αβ軸が固定子にある)回転機のインダクタンス行列を求め ておこう。その手順は次のようになる†。 (1) インダクタンス行列の固定子添字sと回転子添字 rを入れ換える。 (2) α軸からd軸へ測った回転角をθ0とすれば,上記 で使った回転角θとは逆回りだから θ = −θ0· · · ·(21) である。これを,インダクタンス行列に代入してθ を消去する。 (3) 行と列の順番をsα, sβ, rd, rqの順に入れ換える。 この手順を(16)式のインダクタンス行列に適用して,dq 軸が回転子にある回転機のインダクタンス行列を求めると 次のようになる。 [ L]= sα sα sβ rd rq        `s+Lsd+ Lsq 2 + Lsd− Lsq 2 cos 2θ 0 Lsd− Lsq 2 sin 2θ 0 Mdcosθ0 −Mqsinθ0 †注意:ここは,近藤のオリジナルである。よくある間違いは,手 順 (1) と (2) の代わりに,添字 d,q と添字α,β をそれぞれ入換えて しまうことである。こんなことをすると,元は突極性が dq 軸にあっ たのに,変更後は突極性がαβ 軸にあることになってしまう。つまり, 間違いである。一方,手順 (1) と (2) のようにすれば,変更後も突極 性が dq 軸にあるから正しい。

(4)

sβ Lsd− Lsq 2 sin 2θ 0 `s+Lsd+ Lsq 2 − Lsd− Lsq 2 cos 2θ 0 Mdsinθ0 Mqcosθ0 rd rq Mdcosθ0 −Mqsinθ0 Mdsinθ0 Mqcosθ0 `r+ Lrd 0 0 `r+ Lrq      · · · (22) このインダクタンス行列は回転界磁形の同期電動機などの 解析に使われる。 なお,元になったインダクタンス行列(14)式が対称行列 であったから,ここで求めたインダクタンス行列(16), (18), (22)式はすべて対称行列であることに注意しておく。 〈2・4〉 三 相 回 転 機 の イ ン ダ ク タ ン ス 行 列 ***図 4.14†***に示した三相回転機のインダクタンス行列も,同 様に求められる。ただし,簡単のためギャップ長が等しく Pd= Pqである場合を示すと,次のようになる。 [ L]= sa sb sc sa sb sc ra rb rc        ls+ Ls Lscos(2π/3) Lscos(2π/3) Lscos(2π/3) ls+ Ls Lscos(2π/3) Lscos(2π/3) Lscos(2π/3) ls+ Ls

M cosθ M cos(θ −23π) M cos(θ +23π) M cos(θ +23π) M cosθ M cos(θ −23π) M cos(θ −23π) M cos(θ +23π) M cosθ

ra rb rc

M cosθ M cos(θ +23π) M cos(θ −23π) M cos(θ −23π) M cosθ M cos(θ +23π) M cos(θ +23π) M cos(θ −23π) M cosθ

lr+ Lr Lrcos(2π/3) Lrcos(2π/3) Lrcos(2π/3) lr+ Lr Lrcos(2π/3) Lrcos(2π/3) Lrcos(2π/3) lr+ Lr        (23) =   ls[I3]+ Ls[C 0(0)] M[C0(θ)] M[C0(θ)]T l r[I3]+ Lr[C0(0)]    (24) ただし [C0(θ)] =    

cosθ cos(θ +23π) cos(θ −23π) cos(θ −23π) cosθ cos(θ +23π) cos(θ +23π) cos(θ −23π) cosθ

   · (25) である。 †難波江ほか(1)p.81参照 iu vu vv iv vw iw (a) vβ iα vα iβ (b) 図5 三相二相相変換 3. 三相−二相変換 〈3・1〉 三相−二相変換とその必要性 図5に三相巻 線(u, v, w)と直交2巻線(α, β)を示す。同図のように,u 相方向とα相方向を一致させ,さらに,二相巻線に0相成 分を追加すると,次式のように三相量(u, v, w)は,二相量 (α, β)と0相成分に等価変換できる。     u v w    = √ 2 3     1/√2 1 0 1/√2 −1/2 √3/2 1/√2 −1/2 −√3/2         0 α β    · · · (26a)     0 α β    = √ 2 3     1/√2 1/√2 1/√2 1 −1/2 −1/2 0 √3/2 −√3/2         u v w     · · · (26b) なお,三相3線式では0相電流が流れないからこれを省略 することができる。 ここで注意しておくが,三相3線式の回路方程式を三つ 立てても解けないことがある。なぜならば,三相星形結線 で中性点非接地のときは三つの線電流の和は0であるから, 独立な線電流は二つしかない。したがって,三つの線電流 を使った回路方程式を単純に三つ立ててもそのうちの一つ が他の二つに従属してしまえば,連立方程式の係数の行列 式が0となり,解けなくなる††。あらかじめ三相を二相に 変換しておけば,この問題は起きない。 〈3・2〉 三相巻線と二相巻線の定数の対応 実際の交 流モータは三相巻線であるから,測定して得られる定数は 三相巻線のものである。それを,等価な二相巻線の定数に 変換する計算式を以下に示す†††。なお,三相巻線の定数は, 星形結線に換算したものであると仮定する。 三相巻線の巻線抵抗をステータRs,ロータRrとして,イ ンダクタンス行列(24)式とファラデーの法則から,三相交 流モータの電圧・電流方程式は次式となる。 ††特別な工夫をすれば,三つの線電流を使った回路方程式でも解け るようにすることはできる。 †††難波江ほか(1)の第 4.2.3 項,および,研究ノート D-8 p.73, D-16 p.18-20参照

(5)

       vsu vsv vsw vru vrv vrw        =[Z3 ]        isu isv isw iru irv irw        (27a) [ Z3 ] =   Rs[I03] R0 r[I3]    + d dt   `s[I3]+ Ls[C 0(0)] M[C0(θ)] M[C0(θ)]T `r[I 3]+ Lr[C0(0)]    (27b) ただし,[C0(θ)]は,(25)式で与えられる。 上の三相モータの回路方程式を,等価な二相モータの回 路方程式に変換する。このため,(26a)式を参照して,     v∗u v∗v v∗w    = [C32]     v∗0 v∗α v∗β     (28a)     i∗u i∗v i∗w    = [C32]     i∗0 i∗α i∗β     (28b) ただし,上式の下添字∗は,ステータではs,ロータではr である。また,変換行列[C32]は,(26a)式から, [C32]= √ 2 3     1/√2 1 0 1/√2 −1/2 √3/2 1/√2 −1/2 −√3/2    · · · (29) である。(28a),(28b)式を(27a)式に代入すれば,        vs0 vsd vsq vr0 vrα vrβ        = [Z2]        is0 isd isq ir0 irα irβ        · · · (30) となる†。ただし,[Z2]は6行6列の行列であり, [Z2]=   [C032] [C0 32]    −1 [Z3]   [C032] [C0 32]    =   Rs[I03] R 0 r[I3]    +dtd   `s[I03] `r[I0 3]    + d dt 3 2      Ls   00 [I0 2]    M   00 [C(0θ)]    M   00 [CT0(θ)]    Lr   00 [I0 2]         (31) †ただし,2 行目と 3 行目の添字は,sα と sβ ではなく sd と sq で ある。これは,後で (18) 式と比較できるようにするためである。この ようにしても,三相ステータの a 相軸を二相ステータの d 軸に合わ せれば,矛盾はない。 となる††。なお,[C(θ)]は(20)式で与えられた2行2列の 行列である。 ここで,(31)式を(18)式の対応する部分と比較すれば, 三相巻線定数と二相巻線定数の対応が得られる。以下では, 二相巻線および三相巻線の定数を,それぞれ上添字で区別 して,L<2>,L<3>などと書くことにする。各定数の対応式 は次のようになる。すなわち,二相巻線定数が三相巻線定 数の3/2倍になるもの, L<2>s =3 2L <3> s (32a) L<2>r =3 2L <3> r (32b) M<2>=3 2M <3> (32c) および,次のように二相巻線定数と三相巻線定数が同じに なるもの, `<2> s = `<3>s , `<2>r = `<3>r (32d) R<2>s = R<3>s , R<2>r = R<3>r (32e) のように分かれる†††。 〈3・3〉 三相−二相変換の実装 中性点が非接地の三 相モータでは,三相の電流の和が0であるから,三相のう ちの二相の電流を検出すれば十分である。つまり,(26b)式 を利用して,   iiα β    = √ 2 3   10 −1/2√3/2 −−1/2√3/2        iu iv −(iu+ iv)     =     √ 3 2 0 1 √ 2 √ 2       iiu v    (33) のように計算する。なお,ivを消去して次のようにしても よい。   iiα β    =     √ 3 2 0 −√1 2 − √ 2       iiu w   · · · (34) 三相線間電圧から二相電圧への変換は,(26a)式を利用し て次のようにする††††。 ††(31)の右辺最後の項の 1 行目と 4 行目はすべて 0 である。したがっ て,零相電圧が印加されても有効インダクタンスは零相電流を制限し てくれないことが分かる。 †††ああ面倒くさい!全部 3/2 倍になればいいのに,そうではない。 ††††研究ノート D-8 p.74

(6)

(a) (b) d q α β θ isq vsq vsd isd irα vrα irβ vrβ d q α β i sβ vsβ vsα isα ird vrd irq vrq θ −'= θ 図6 一般二相モータ     vuv vvw vwu    =     vu vv vw    −     vv vw vu     = √ 2 3     1/√2 1 0 1/√2 −1/2 √3/2 1/√2 −1/2 −√3/2         v0 vα vβ    − √ 2 3     1/√2 −1/2 √3/2 1/√2 −1/2 −√3/2 1/√2 1 0         v0 vα vβ     = √ 2 3     0 3/2 −√3/2 0 0 √3 0 −3/2 −√3/2         v0 vα vβ     · · · (35) 線間電圧だけから中性点電圧が決まらないから,上式は [ v0 vα vβ ]T については解けない。しかし,[vα vβ]T に ついてだけなら解くことができて,   vvα β    =    √ 2/3 1/√6 0 1/√2      vvuv vw   · · · (36) のように計算できる。 4. 一般二相モータ 〈4・1〉 一般二相モータの回路方程式 ここでは,図6 に示した一般二相モータの回路方程式を示す。以下では,習 慣に従いd軸を主磁束の方向とし,dq座標系で突極性を 考慮する。dq軸の2巻線の巻数は等しく,またαβ軸の2 巻線の巻数も等しいとする。また,添字sで固定子を表し, 添字rで回転子を表す。図6(a)は固定界磁形モータであり, 図6(b)は固定電機子形モータである。 〈4・11〉 固定界磁形モータ まず,図6(a)の固定界 磁形モータのインダクタンス行列[L]を示す。ベクトルの 転置を右肩のT で表すとき,磁束鎖交数が, [ ψsd ψsq ψrα ψrβ ]T = [L][isd isq irα irβ ]T (37) となるようにインダクタンス行列[L]の要素を配置すれば, (16)式より, [L]=   [L[L11] [L12] 12]T [L22]   · · · ·(38a) [L11]=   `s+ Lsd0 `s+ Lsq0   · · · (38b) [L12]=   MMdcosθ −Mdsinθ qsinθ Mqcosθ   · · · (38c) [L22]=  

Lr0−Lr1+ Lr1sin 2cos 2θ θ L −Lr1sin 2θ r0− Lr1cos 2θ   · · · ·(38d) Lr0≡ `r+ Lrd+ Lrq 2 , Lr1Lrd− Lrq 2 · · · (38e) である†。このインダクタンス行列(38a)-(38e)式とファラ デーの法則から誘導起電力を求め,さらに,巻線抵抗によ る電圧を考慮すれば,      vsd vsq vrα vrβ     =      Rs 0 0 0 0 Rs 0 0 0 0 Rr 0 0 0 0 Rr           isd isq irα irβ     + d dt      [L]      isd isq irα irβ          · (39) のように,図6(a)の固定界磁形モータの回路方程式が得ら れる。 〈4・12〉 固定電機子形モータ 図6(b)の固定電機子 形モータの回路方程式は次のようにして求められる。図6(a) と(b)の違いを考慮して,(38a)-(38e)式の[L]に対して以 下の変更を加える。 (1) 固定子添字sと回転子添字rを入れ換える。 (2) θ = −θ0とする。 (3) インダクタンス行列の要素を,磁束鎖交数が次式 となるように入れ換える。[ ψsα ψsβ ψrd ψrq ]T = [L0][i sα isβ ird irq ]T · · · ·(40) その結果,図6(b)のインダクタンス行列[L0]は,(22)式 より, [L0]=   [L 0 22] [L012] T [L012] [L011]   · · · (41a) [L022]=   Ls0+ Ls1cos 2θ 0 Ls1sin 2θ0 Ls1sin 2θ0 Ls0− Ls1cos 2θ0   · · (41b) [L012]T =   Mdcosθ 0 −Mqsinθ0 Mdsinθ0 Mqcosθ0   · · · (41c) [L011]=   `r+ Lrd0 `r+ Lrq0   · · · ·(41d) Ls0≡ `s+ Lsd+ Lsq 2 , Ls1Lsd− Lsq 2 · · · (41e) †文献(1)p.80の (4.22) 式を見やすく直した。

(7)

となる。ただし,(41a)式の要素の並びは,(38a)式と対応 づけやすいように,通常の添字のつけ方と変えてあるから 注意されたい。このインダクタンス行列(41a)-(41e)式と巻 線抵抗を考慮すると,      vsα vsβ vrd vrq     =      Rs 0 0 0 0 Rs 0 0 0 0 Rr 0 0 0 0 Rr           isα isβ ird irq     + d dt      [L0]      isα isβ ird irq           (42) のように,図6(b)の固定電機子形モータの回路方程式が得 られる。 〈4・2〉 一般二相モータの発生トルク モータへの入力 電力は,モータ内部の抵抗損失,内部磁気エネルギーを増 減するもの,そして残りは機械出力となるものに分けられ る。この機械出力を回転速度で除算すれば,一般二相モー タの発生トルクを求めることができる。 まず,(39)式を,電圧・電流・抵抗・インダクタンスのベ クトルまたは行列をまとめて書き直すと次のようになる。 [v]= [R][i] + d dt[[L][i]] = [R][i] + [L]d[i] dt + ˙θ ∂[L] ∂θ [i]· · · (43) 上式に左から[i]Tを乗じて回転機の入力電力P iを求めれば, Pi= [i]T[v] = [i]T

[R][i]+ [i]T[L]d[i] dt + ˙θ[i] T∂[L] ∂θ [i] · · · · ·(44) となる。上式を変形する準備のため,インダクタンスに蓄 えられる磁気エネルギーの時間微分を計算する。 d dt ( 1 2[i] T[L][i] ) = 1 2 ( d[i]T dt [L][i]+ [i] Td[L] dt [i]+ [i] T[L]d[i] dt ) = [i]T[L]d[i] dt + 1 2[i] Tθ˙∂[L] ∂θ [i] · · · (45) ただし,上式2行目右辺の第1, 3項は互いに等しい。なぜ ならば,それらはスカラーであり,(38a)式に示したように [L]は対称行列だからである。よって,3行目が得られる。 (45)式を(44)式に代入して,[i]T[L]d[i]/dtを消去すれば, Pi= [i]T[v] = [i]T [R][i]+ d dt ( 1 2[i] T [L][i] ) + ˙ θ1 2[i] T∂[L] ∂θ [i] · · · ·(46) となる。(46)式右辺において,第1項は抵抗による電力損 失,第2項はインダクタンスに蓄えられる磁気エネルギー の時間微分であり,残りの第3項が機械出力である。その 機械出力を回転速度θ˙で割れば,発生トルクTが求まる。 つまり,回路方程式に左から[i]T を乗じて電力P iを計算 し,その中でθ˙のつく項だけを合計して機械出力を求め, それからθ˙を除けば発生トルクT が求まる†。 T =1 2[i] T∂[L] ∂θ [i]· · · (47) ここで,回転機の極対数がpのときは,機械的な角速度 ˙ θMおよびトルクTMは,次式で与えられる。 ˙ θM= ˙θ/p , TM= pT · · · (48) (42)式の場合も,[L]⇒ [L0],θ ⇒ θ0とすれば上記と同 様にして同じ結果になる。 〈4・3〉 円筒機と突極機の発生トルク計算例 前項で 求めた発生トルク(47)式を具体例で計算してみよう。 まず,円筒機の場合は,インダクタンス行列が(18)式で あるから,それを回転角度θで偏微分すれば ∂[L] ∂θ = M      0 0 − sin θ − cos θ 0 0 cosθ − sin θ − sin θ cosθ 0 0 − cos θ − sin θ 0 0     · ·(49) これを(47)式に代入すれば,円筒機の発生トルクTqTq= 1 2[i] T∂[L] ∂θ [i] = 1 2 [ isd isq irα irβ ] M      0 0 − sin θ − cos θ 0 0 cosθ − sin θ − sin θ cosθ 0 0 − cos θ − sin θ 0 0           isd isq irα irβ      = irα(−Misdsinθ + Misqcosθ) −

irβ(Misdcosθ + Misqsinθ)

= irαψrβ− irβψrα· · · (50) ただし,

ψrβ= −Mdisdsinθ + Mqisqcosθ · · · (51a) ψrα= Mdisdcosθ + Mqisqsinθ · · · (51b) である。ここで,ψrβは固定子S 巻線の電流が作る磁束鎖 交数の回転子rβ軸方向成分,ψrαは固定子S 巻線の電流が 作る磁束鎖交数の回転子rα軸方向成分である††。 同じことを突極機の場合にやってみよう。突極機のイン ダクタンス行列は(16)式で与えられているから,それをθ で偏微分すれば †(46)式右辺第 3 項の 1/2 に関しては,研究ノート D-13 pp.43-45 を 参照のこと。 ††ただし,このことは次章の回転座標変換を勉強しないと分かり難 い!

(8)

∂[L] ∂θ = sd sq rα sd sq rα rβ      0 0 −Mdsinθ 0 0 Mqcosθ

−Mdsinθ Mqcosθ −(Lrd− Lrq) sin 2θ −Mdcosθ −Mqsinθ −(Lrd− Lrq) sin 2θ

rβ −Mdcosθ −Mqsinθ −(Lrd− Lrq) cos 2θ (Lrd− Lrq) sin 2θ      · · · (52) となる。これを(47)式に代入すれば突極機の発生トルクTqTq= irα ( −Mdisdsinθ + Mqisqcosθ ) − irβ ( Mdisdcosθ + Mqisqsinθ ) − (Lrd− Lrq)irαirβcos 2θ − Lrd− Lrq 2 ( i2rα− i2rβ)sin 2θ · · · (53) となる。上式右辺第1,2項に,(51a)と(51b)を適用すれば, Tq= irαψrβ− irβψrα −(Lrd− Lrq)irαirβcos 2θ −Lrd− Lrq 2 ( i2rα− i2rβ)sin 2θ · · · (54) となる。上式右辺の第1,2項はフレミングの左手則に相当 し,第3,4項は***3.1.3項†***に示されたリラクタンス トルクである。 5. 回転座標変換 〈5・1〉 二次元ベクトルの回転座標変換 ベクトルを観 測する座標系を図7に示すように回転すると座標値が変わ る。このような場合に,回転座標変換が用いられる。図 7(a) においてθ = ω˙ ならば,αβ座標系からベクトルが止まって みえても,dq座標系からみればωでくるくる回ってみえ る。言い換えると,dq座標系からみたときωでくるくる 回ってみえるベクトルがあったなら,αβ座標系に乗り換え れば止まってみえる。回転座標変換とは,このことを数学 的に表現したものである。 図7(a)のようにd軸からα軸へ角度θを測るときは,二 相量(d, q)と(α, β)との変換は,次式となる。   dq    = C(θ)   αβ    · · · (55a)   αβ    = C(−θ)   dq    · · · (55b) C(θ) =  

cossinθθ − sin θcosθ    · · · (55c) †難波江ほか(1)p.56 d q α β θ (a) d d q α β θ' =− θ (b)α 図7 回転座標変換 図7(b)のように角度の測り方を変えたほうがよいことも ある。電機子巻線が固定子αβ軸にある回転機では,図7(b) のようにすれば電気的回転方向と機械的回転方向が一致す る。このときは,(55a)-(55c)式においてθ = −θ0とすれば よい。 〈5・2〉 複素数による表記 二相の電圧・電流は二次元 実数ベクトルで表せるが,複素数で表すこともできる。複 素数と二次元実数ベクトルとの対応は,あとで表1に示す。 回転座標変換は,複素数の極座標表現を使ったほうが位 相角を加算できるから簡略になる。すなわち,図7(a)の座 標系の回転座標変換は,複素数を使ってxdq= d + jqおよ びxαβ= α + jβとすれば,

xdq= exp(jθ)xαβ= (cos θ + j sin θ)(α + jβ)· · · (56)

である。この式は,複素平面でexp(jθ)を乗じれば位相がθ だけ増えるという,あたりまえのことを示してる††。この ことは,表1のNo.3に示したように,回転座標変換(55a) 式に対応している。つまり,位相を増やすという意味が,複 素数表現(56)式のほうが二次元実数ベクトル表現(55a)式 よりも鮮明に分かる。 ここで,(56)式を時間で微分すると, dxdq dt = d dt ( exp(jθ)xαβ)= exp(jθ)(d dt+ j˙θ)xαβ· · · (57) となる。この式は,回路方程式を回転座標変換するときに 出てくる時間微分項を処理するため頻繁に使用される。 〈5・3〉 複素数と二次元ベクトル 二相回転機の回転座 標変換を,二次元ベクトルでやるとcos,sin,および,加 法定理がいやになるほど出てくる。それに比べて,複素数 表記を用いればcosとsinを追放できる。ここでは,「複素数 の世界」と「二次元ベクトルの世界」を行き来するときに 必要となる知識を整理しておく。特に大切なのは,〈5・3・4〉 項である。 以下,★★★★までは退屈だから,忙しい人は★★★★ へ直行! 〈5・31〉 複素数の復習 よく見かける複素数の定義 は,次のようになっている。 実数xr, xiと虚数単位j2= -1を用いて, x= xr+ jxi· · · (58) ††図 7(a) をみよ。同じベクトルをみても d 軸からの位相角のほうが θ だけ大きい。

(9)

と書かれる数xを「複素数」と呼び,複素数が等しいこと と四則演算を次のように定義する。

xr+ jxi= yr+ jyi⇔ xr= yrかつxi= yi· · · (59a)

(xr+ jxi)± (yr+ jyi)≡ (xr± yr)+ j(xi± yi)· · · (59b)

(xr+ jxi)× (yr+ jyi)

≡ (xryr− xiyi)+ j(xryi+ xiyr) · · · (59c)

(xr+ jxi)÷ (yr+ jyi)

≡ (xryr+ xiyi)/Y + j(xiyr− xryi)/Y · · · (59d) ただし,Y≡ y2 r+ y2i , 0である。単なる実数はxr+ j0 = xr のように書くことが多い。 しかし,上の定義は虚数単位jが天下り的に導入されて おり,jが本当に存在するのかと考えると,不満足である。 これを避けるには次のようにする。 まず,二つの実数の組を(xr, xi)と書くことにする。ここ で,上の定義をそっくりまねして,次のように定義する。

(xr, xi)= (yr, yi)⇔ xr = yrかつxi= yi· · · (60a)

(xr, xi)± (yr, yi)≡ (xr± yr, xi± yi)· · · (60b) (xr, xi)× (yr, yi)≡ (xryr− xiyi, xryi+ xiyr)· · · · (60c) (xr, xi)÷ (yr, yi)≡ (xryr+ xiyi Y , xiyr− xryi Y )· · · (60d) ただし,Y≡ y2 r+ y2i , 0である。 こうすれば,実数の組(xr, xi)が「普通の複素数」に対応 する。単なる実数はxr= (xr, 0)である。実数の組(0, 1)は 確かに存在するし,それが虚数単位jに相当する。なぜな ら,上の積の定義(60c)式から(0, 1)×(0, 1) = (-1, 0)だか らである。したがって,虚数単位jも確かに存在すること になる。よって,ちょっと気味の悪いj2= -1を避けること ができた。けれども退屈だね! ★★★★ 忙しい人はここからスタート ★★★★ そこで,頭のいい人†は,次のようにピンときたでしょう! 『二つの実数の組は,二次元数ベクトルだ。したがって, 複素数と二次元数ベクトルを同一視できそうだ。』 しかし,複素数と二次元ベクトルは完全には一対一に対 応しない。たとえば,複素数同士の積は複素数になるが,二 次元数ベクトル同士の積は二次元数ベクトルにならない。 つまり,下のようにはできない††。   xxr i    ×   yyr i    ????????· · · (61) そこで,複素数の積に対応づけるために,次のようにす る。二次元数ベクトルは,2行1列の行列のことだ。行列 の積では左と右を入換えられない。左の掛けるもの(加害 者,作用するもの)と右の掛けられるもの(被害者,作用 †そうあなたのことです! ††左の二次元ベクトルを転置してもダメ。結果がスカラーになっちゃ うから。右を・・・ウフ!! されるもの)を区別する†††。 複素数の積と二次元数ベクトルの対応を次のようにする。

(xr+ jxi)× (yr+ jyi)= xryr− xiyi+ j(xryi+ xiyr) ⇔   xxr −xi i xr      yyr i    =   xxryr− xiyi ryi+ xiyr    · · · (62) 二次元数ベクトルの1行目が実部に,2行目が虚部に対応 していることが分かる。複素数なら積の左も右も同じ複素 数であるが,二次元数ベクトルでは積の左と右が,それぞ れ,行列(加害者)とベクトル(被害者)というように顔 が変わる。面倒だけど,仕方がない††††。 ところで,上の2× 2 行列は,たった二つの要素で決 まっている(対角要素がxrで,非対角要素がxi。これを シュワルツ形行列という。)。よって,上の2× 2行列を 二次元数ベクトルもどき としよう。この「2×2行列」の性 質を調べておこう。ただし,xrxiが0でないときだけ。   xxr −xi i xr    = X  

cossinθθ − sin θcosθ    · · · (63a) ただし, X≡ √ x2 r+ x2i , θ ≡ tan−1 ( xi xr ) · · · (63b) 上式から,加害者「2× 2行列」は,(被害者)ベクトルに 襲い掛かかりそれを複素平面の原点を中心にしてX倍に引 き伸ばして,正の角度θだけくるっと回してしまうだけで ある。なお,xr= xi= 0のときは,被害者を抹殺する殺人 鬼(作用すると結果が0になる)になるから除いておいた わけだ。 〈5・32〉 オイラーの公式 虚数jθを右肩にもつ指数 関数,つまり,

ejθ≡ exp(jθ) = cos(θ) + j sin(θ)· · · ·(64)

をオイラーの公式という。前項(63a)式の正の角度θだけ

くるっと回してまう行列は,複素数ではこのexp(jθ)に対応

する。つまり, 



cossinθθ − sin θcosθ    ⇔ exp(jθ)· · · (65) というふうに,「二次元ベクトルの世界」と「複素数の世界」 が対応する。 二つの指数関数の積は, exey= ex+y· · · (66) となる。そこで,上式の指数部が虚数のときを考えてみよ †††加害者と被害者がそろったから,種明かし。ジャンジャ∼ン!(参 考文献 杉浦(3) ††††ところで,n 次元数ベクトル空間に加法と乗法を定義して,しか も,積を可換にできるのは,n= 1, 2 の二つだけである。その二つと は,実数体と複素数体のこと。積が可換でなくてもよければ,n=4 の ときは非可換体となりハミルトンの4元数体という・・・。なんて,え らそうに杉浦(3)p.42の受け売り。

(10)

う。つまり,

ee±jβ= ej(α±β)= cos(α ± β) + j sin(α ± β) · · · · (67a) = (cos α + j sin a)(cos β ± j sin β) · · · (67b) = (cos α cos β ∓ sin α sin β) +

j (sinα cos β ± cos α sin β) · · · (67c)

上の(67a)式と(67c)式を,それぞれ,実部と虚部に分けて 比較してみれば,毎度おなじみの三角関数の加法定理が出 てきてしまった。実は,このことが,回転座標変換を複素 数表記でやると加法定理を一切使わなくてもよい仕掛けに なっている。 〈5・33〉 複素数の実部と虚部を分ける ところで,上 で「実部と虚部に分けて・・・」といったけど,二つの方法 がある。まず,次のようにすればよい。

xr= Re(xr+ jxi), xi= Im(xr+ jxi)· · · ·(68)

実部と虚部をそれぞれ取り出すために,二つの関数Re(), Im()が必要です。こんな簡単な仕事に関数を二つも使うな んて,ちょっともったいない。 実部と虚部に分ける,もう一つの方法は共役†を使う。つ まり, xr= x+ x∗ 2 = (xr+ jxi)+ (xr− jxi) 2 = 2xr 2 · · · ·(69a) xi= (−j) x− x∗ 2 = (−j) (xr+ jxi)− (xr− jxi) 2 = (−j)2jxi 2 · · · (69b) 上式は,分母を2jにしておけば,カッコいい。しかし,こ うしておいたほうが後で行列との対応を考えるときに便利 である。 共役のほうが,Re(), Im()よりも便利なことを説明して おこう。Re(), Im()は,複素数があらかじめ直角座標表現に なっていて実部と虚部に分かれているときはいいけど,極 座標表現のときには不便だ(実部を取り出すのに絶対値に cosを掛ける!)。それに比べると,共役は,直角座標表現 でも極座標表現でもどちらも虚部の符号を反転するだけで いい。そもそも複素数表現を導入した背景には,回転座標 変換のcosとsinの加法定理を追放したかったことがある。 Re()を使うとcosが顔を出しかねないから,複素数表記の 計算ではRe()を使わずに共役を使ったほうがよい。 共役を使った公式をまとめておこう。 (x± y)= x± y∗· · · (70a) (xy)= xy∗ · · · (70b) ( x y )∗ = xy∗ · · · (70c) x x= |x|2⇐こいつは本当に役に立つ· · · (70d) Im(xx∗)≡ 0 · · · (70e) †実部と虚部を取り出す二つの仕事に共に役に立つから,「共役」な んちゃって。(これ,シャレだからね!「共役」の本当の意味は違うか らね。) おまけ: (1) 複素平面で考えると,共役複素数は,元の複素数 を実軸に対して折り返したものだ。 (2) 正方向にくるくる回る複素数の共役を作ると,負 方向にくるくる回り出す。 (3) 二相回転機の一相だけに交流をくわえると交番磁 界ができる。二回転磁界理論によれば,交番磁界は 正方向と負方向にくるくる回る二つの成分に分けて 考えることができる。このようなときには,共役を 導入すると便利だ。 (4) ::::::::::::::::::::::::::二相回転機に突極性があると,d軸インダクタン スとq軸インダクタンスがそれぞれに単相交流的に 変化するから,このときも::::::::::::::::::::共役複素数が出てくる。 〈5・34〉 任意の2×2行列を複素数で表現する 振 り返ってみると,複素数の話から始めて,二次元ベクトル の世界に入りこんでしまった。ここでは,逆に,「二次元ベク トルの世界」を「複素数の世界」に翻訳する方法を考える。 前に出てきた,加害者の「2× 2行列」は   xxr −xi i xr    と,たった二つの実数xrxiだけで表せる。だけど,世 の中はそんなに甘くない。すくなくとも,二軸理論では突 極形回転機のインダクタンス行列は非対称で,おまけに対 角要素まで異なる††。 一般の2× 2行列は,   ac bd   · · · (71) というふうに,四つの要素が全部異なっていたりする。こ の行列を複素数で表す方法を示しておこう。 以下に示す方法は,上の行列(71)式を複素数で表す方法 として,エレガントではない。しかし,なんとかできる。 (もっとエレガントな方法があれば,私は知りたい。) まず,次の四つの行列 A1=   10 01   , A2=   01 −10   , · · · (72a) A3=   10 −10   , A4=   01 10   · · · (72b) を考える。この四つから,次のように2×2行列で一つの要 素だけが1になるもの A1+ A3 2 =   10 00   , A1− A2 3 =   00 01    (73a) A2+ A4 2 =   01 00   , −A22+ A4 =   00 10    (73b) を作ることができる。そこで,上の各式にそれぞれa, d, c, ††(38c), (38d), (41b), (41c)式を見よ。

(11)

表1 複素数と実数ベクトルの対応

No. 複素数 二次元実数ベクトル

1 (A+ jB)(x + jy) = (Ax − By) + j(Bx + Ay)

  AB −BA      yx    =   AxBx− By+ Ay    2  × exp(jθ)        ×   cossinθθ    3 exp(jθ) ×   

cossinθθ − sin θcosθ    ×       4 j×    01 −10    ×       5 複素共役 conj()   10 −10    ×       6 j× conj()   01 10    ×       (注 1)  は複素数, は実数である。 (注 2) 複素数の実部がベクトル 1 行目に,虚部がベクトル 2 行目に対応 する。 (注 3) A1 =   10 01   , A2 =   01 −10   , A3 =   10 −10   , A4 =   01 10    の とき,A1+ A3 2 =   10 00   , A1− A32 =   00 01   , A2+ A42 =   01 00   , −A2+ A4 2 =   00 10    である。 bを掛けていって全部足したら,前に出てきた行列(71)式 になる。つまり,A1,A2,A3,A4をそれぞれ複素数で表 すことができれば,行列(71)式を複素数に対応づけること ができる。 上の四つの行列(72a),(72b)式は,それぞれ,次のよう に(加害者モードの)複素数で表現できる。 A1 =   10 01    ⇔複素数なら1を掛ければよい。· · · (74a) A2 =   01 −10    ⇔複素数ならexp(jπ/2) = jを掛ける。· · · · (74b) A3 =   10 −10    ⇔複素数なら共役作用素,conj()です。· · (74c) A4 =   01 10    =   01 −10      10 −10    ⇔複素数ならj× conj()です。· · · (74d) 以上に述べたことをまとめたものが,表1である。 〈5・4〉 二相回転機の複素数表記の例 固定子に電機子 巻線がある二相回転機のインダクタンス行列は,(41a)-(41e) 式に示したが,それをもう一度書いておく。 [ L0]=    [ L022] [L012]T [ L012] [L011]   ··· (75a) ただし,上式の要素の並びは,(38a)式と対応づけやすいよ うに,通常の添字のつけ方と変えてあるから注意されたい。 [ L022]=   Ls0+ Ls1cos 2θ 0 L s1sin 2θ0 Ls1sin 2θ0 Ls0− Ls1cos 2θ0   · · (75b) [ L012]T =   Mdcosθ 0 −Mqsinθ0 Mdsinθ0 Mqcosθ0   · · · (75c) [ L011]=   `r+ Lrd0 `r+ Lrq0   · · · ·(75d) Ls0≡ `s+ Lsd+ Lsq 2 , Ls1Lsd− Lsq 2 · · · (75e) さらに,巻線抵抗を考慮すると,固定電機子形の二相回転 機の回路方程式は次式となる。      vsα vsβ vrd vrq      =      Rs 0 0 0 0 Rs 0 0 0 0 Rr 0 0 0 0 Rr           isα isβ ird irq      + d dt      [ L0]      isα isβ ird irq           · (76) 上に示した固定子に電機子巻線がある二相回転機のイン ダクタンス行列[L0]の複素数表現を求めよう。 (75b)式に(74a)-(74d)式を適用して複素数表現を求め ると,

[L022]= Ls0A1+ Ls1(cos 2θ0A3+ sin 2θ0A4) (77a) ⇔ Ls0+ Ls1(cos 2θ0conj()+ sin 2θ0· j · conj())

= Ls0+ Ls1exp(j2θ0)conj() (77b) (75c)式に(73b),(74a)-(74d)式を適用して複素数表現を 求めると, [L012]T = Mdcosθ0A1+ A3 2 + Mqcosθ 0A1− A3 2 + Mdsinθ0 A2+ A4 2 + Mqsinθ 0A2− A4 2 = Md+ Mq 2 ( cosθ0A1+ sin θ0A2)+ Md− Mq 2 (cosθ 0A 3+ sin θ0A4) (78a) ⇔ Md+ Mq 2 ( cosθ0+ sin θ0· j)+ Md− Mq 2 (cosθ 0+ sin θ0· j)conj() = Md+ Mq 2 exp(jθ 0)+ Md− Mq 2 exp(jθ 0)conj()

(12)

[L012]= Mdcosθ0A1+ A3 2 + Mqcosθ 0A1− A3 2 + Mqsinθ0−A 2− A4 2 + Mdsinθ 0−A2+ A4 2 = Md+ Mq 2 ( cosθ0A1− sin θ0A2)+ Md− Mq 2 (cosθ 0A 3+ sin θ0A4) (78c) ⇔ Md+ Mq 2 ( cosθ0− sin θ0· j)+ Md− Mq 2 (cosθ 0+ sin θ0· j)conj() = Md+ Mq 2 exp(−jθ 0)+ Md− Mq 2 exp(jθ 0)conj()

= M0exp(−jθ0)+ M1exp(jθ0)conj() (78d) ただし, M0≡ Md+ Mq 2 , M1≡ Md− Mq 2 · · · (78e) (75d) 式に(74a)-(74d)式を適用して複素数表現を求め ると, [L011]= (`r+ Lrd)A1+ A3 2 + (`r− Lrq) A1− A3 2 = (`r+Lrd+ Lrq 2 )A1+ Lrd− Lrq 2 A3 (79a) ⇔ Lr0+ Lr1conj() (79b) 以上をまとめると,固定電機子形二相回転機のインダク タンス行列の複素数表現は, [L0]=    Ls0+ Ls1exp(j2θ 0)conj()

M0exp(−jθ0)+ M1exp(jθ0)conj()

M0exp(jθ0)+ M1exp(jθ0)conj()

Lr0+ Lr1conj()    · · · (80) のように求められた。ただし,conj()は複素共役を作る演 算子で,右側に何かくるとそいつに襲い掛かる(微分演算 子と同じ)。 6. 誘導電動機とベクトル制御 ここでは,誘導機の回路方程式と発生トルク式から出発 して,直接形および間接形ベクトル制御の制御式を導出す る†。 〈6・1〉 かご形誘導モータの回路方程式 かご形誘導 モータの回路方程式は,次のようにして求められる。 (1) 電機子巻線が固定子にあるから,図6(b)が適し, (42)式を用いる。 (2) 非突極機であるからインダクタンス行列 (41a)-(41e)式で次のようにおく。 †研究ノート D-14 pp.2-5 参照 M≡ Md= Mq Lss≡ `s+ Lsd = `s+ Lsq Lrr≡ `r+ Lrd= `r+ Lrq (3) 回転子の巻線は短絡されているから,vrd= vrq= 0 である。 (4) 図 6(b)のdq軸上の回転子巻線は界磁巻線では なく,dq軸を後で別の意味に用いるから,添字を d⇒ γ , q ⇒ δのように置き換える。 以上を(42)式に適用すれば,かご形誘導モータの回路方程 式は,      vsα vsβ 0 0     =      Rs+ DLss 0 0 Rs+ DLss DM cosθ0 DM sinθ0 −DM sin θ0 DM cosθ0 DM cosθ0 −DM sin θ0 DM sinθ0 DM cosθ0 Rr+ DLrr 0 0 Rr+ DLrr           isα isβ irγ irδ      · · · (81) となる。ただし,微分演算子D≡ d/dtである。 上式は,実際の誘導モータのように固定子巻線と回転子 巻線がそれぞれ別の座標系になっているが,使いにくい。 その理由は,微分演算子に角度θ0依存項がつくため,(81) 式を用いたシミュレーションでは微分方程式を数値計算す るときの時間刻み幅を小さくする必要があり,計算時間が 長くなるからである。 座標系を統一するため,回転座標変換を以下のように適 用する。準備として(81)式を複素数で表記すると,   vs0αβ    =    Rs+ DLss DM exp(jθ 0) DM exp(−jθ0) Rr+ DLrr      iisαβ rγδ   · · · (82) となる。上式の固定子と回転子を新dq座標系に統一する。 ただし,新d軸は,図6(b)のα軸から正の角度θ0の位置 にあるものとする。(82)式に回転座標変換,   iisαβ rγδ    =   exp(j0θ0) exp(j(θ0 0− θ0) )      iisdq rdq   · · · (83) を適用する(上式は電流の変換式であるが,電圧の変換式 はi⇒ vとすればよい)。その結果,新dq座標系に統一し たかご形誘導機の回路方程式は,   vsdq0    =   (RDs+ j(˙θ+ (D + j˙θ0)Lss 0− ˙θ0) ) M (D+ j˙θ0)M Rr+ ( D+ j(˙θ0− ˙θ0) ) Lrr      iisdq rdq    · · · (84) となる。ただし,θ˙0はステータからみたロータの機械的な 回転角速度である。また,θ0はステータのα軸から新d軸 への角度であり,用途に応じて任意に定めてよい。高速トル ク制御系などでは,上式の新d軸を磁束鎖交数ベクトルの

(13)

方向に一致させることが多い。このとき,上式では微分演 算子に角度θ0依存項がつかず,シミュレーションの積分時 間刻み幅を大きくしても誤差が少ない。(84)式の複素数表 現を,dq座標系の実数ベクトルで表すと次のようになる。      vsd vsq 0 0     =      Rs+ DLss −˙θ0Lss ˙ θ0Lss Rs+ DLss DM −(˙θ0− ˙θ0)M (˙θ0− ˙θ0)M DM DM −˙θ0M ˙ θ0M DM Rr+ DLrr −(˙θ0− ˙θ0)Lrr (˙θ0− ˙θ0)Lrr Rr+ DLrr           isd isq ird irq     · · · (85) 発生トルク式は,(46)式の下に述べた方法を(84)式に適 用して求めると,

T = M(isqird− isdirq)= MIm(irdqisdq)· · · (86)

となる。ただし,Imは虚数部,*は複素共役を表す。 〈6・2〉 ロータ磁束鎖交数の導入 (84)式の2行目を見 やすい形にまとめるために,ロータ巻線の磁束鎖交数を導 入する。まず,ロータ巻線の磁束鎖交数を次式で定義する。 λrdq≡ Misdq+ Lrrirdq· · · (87) (87)式を使って,(84)式の2行目を変形すると 0= (D + j(˙θ0− ˙θ0))Misdq+ Rrirdq+ (D + j(˙θ0− ˙θ0))Lrrirdq = Rrirdq+ (D + j(˙θ0− ˙θ0))λrdq· · · (88) = −RrM Lrr isdq+ Rr Lrrλrdq+ (D + j(˙θ 0− ˙θ0))λrdq (89) となる。ただし,(88)式から(89)式の変形に再び(87)式 を使って,irdqを消去してisdqを残していることに注意す る†。(89)式を変形して,実数表記すると次式を得る。 d dt   λrdλrq    =     −Rr Lrr ˙ θ0− ˙θ0 −(˙θ0− ˙θ0) − Rr Lrr       λrdλrq    +RLrM rr   iisd sq   (90) 次項では,(90)式を基にトルク制御法を検討する。 一方,トルク(86)式を磁束鎖交数(87)式を使って変形 すると, T = MIm ( 1 Lrr (λ∗rdq− Misdq)isdq ) = M Lrr Im(λ∗rdqisdq ) = M Lrr (λrdisq− λrqisd) · · · (91) ただし,上式の1行目から2行目の変形には,恒等式 Im(ii)≡ 0を使った。 †ロータ電流は,所詮,観ることも触ることができないから。 INV IM PS α-β uvw α-β uvw α-β d-q α-β d-q Current CTL ref sd i ref sq i + -+ -0 θ w v u i,, ref w v u v,, sd i sq i ref sq sd v , flux position calc. r λ 図8 磁束センサつき直接形ベクトル制御系 INV IM PS α-β uvw α-β uvw α-β d-q α-β d-q Current CTL ref sd i ref sq i + -+ -0 ˆ θ w v u i,, w v u v,, sd i sq i ref sq sd v , flux observer phase calc. r λˆ w v u v,, 図9 磁束オブザーバ使用の直接形ベクトル制 御系 INV

ω1dt IM PS α-β uvw α-β uvw α-β d-q α-β d-q Current CTL ref sd i ref sq i + -+ -+ + 1 ω sl ω ωr 0 θ ref sd ref sq i i       + P 1 1 2 2 τ τ w v u i,, w v u v,, sd i sq i ref sq sd v , r rr R L / 2≡ τ 図10 間接形ベクトル制御系 〈6・3〉 直接形ベクトル制御 いわゆる直接形ベクトル 制御では,ロータ磁束鎖交数ベクトルλrが何らかの方法で 検出できるものと仮定する。このため,直接形ベクトル制 御は,磁束フィードバック形ベクトル制御とも呼ばれる。 直接形ベクトル制御系のブロック図を図8,9に示す。図8 は磁束センサを用いる場合で,図9は磁束オブザーバを用 いる場合である。 検出されたロータ磁束鎖交数ベクトルλrに基づいて,そ の方向をd軸と定めれば,そのq軸成分は0となる。つ まり, λrd= |λr|· · · (92a) λrq= 0· · · (92b)

表 1 複素数と実数ベクトルの対応

参照

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