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熊本地震「被害甚大地域」の現地確認調査

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Academic year: 2021

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はじめに

2016 年 4 月 14 日、16 日の 2 度にわたって最大震度 7 の激震が発生した「平成28年熊本地震」。 建物被害は、住宅が 16 万戸を超え(全壊、半壊、一部破損の合計)、住宅を除く建物被害も 2 千 棟を超えている。総務省によれば、被害総額は 2.4~4.6 兆円と試算され、中越地震(1.7~3 兆 円)を上回った。 国は、被災地域の中小企業等の設備復旧費を補助する「グループ補助金」事業や信用保証協会 を通じた「セーフティネット保証 4 号」の実施で、金融機関は各種復興支援ファンドの創設、返 済猶予への柔軟な対応などで、企業の事業立て直しを支援している。 帝国データバンク福岡支店は、熊本地震の被害甚大地域の営業状況について、電話・訪問取材 による確認調査を実施した。調査対象は、特に地震被害が大きかった熊本県の 2 市 2 町 2 村(宇 城市、宇土市、益城町、高森町、南阿蘇村、西原村)に本社を置く 1,602 社。そのうち集計可能 (7 月 20 日までに調査実施済み)な 1,380 社について、市町村別、業種別、売上規模別、従業員 数別に集計、分析した。調査期間は 7 月 6 日~20 日。

調査結果(要旨)

1. 集計可能な 1,380 社のうち、地震後も「通常営業中」の企業が 1,062 社(構成比 77.0%)を 占めた。「一部営業中」の企業 48 社(構成比 3.5%)を加えると、調査企業の約 8 割が営業中。 他方、「営業停止」は 20 社(同 1.4%)、「実態判明せず」は 250 社(同 18.1%) 2. 市町村別では、益城町、南阿蘇村、西原村で営業中の企業の割合がいずれも 8 割を下回る。 西原村では、「実態判明せず」と「営業停止」の構成比が 3 割を超える 3. 業種別では、製造業、卸売業、サービス業で「営業中」の構成比が 9 割超え。他方、建設業 は 7 割を下回り、「実態判明せず」が唯一 3 割超え 4. 売上規模別では、年商 5000 万円未満で「営業停止」「実態判明せず」が全体の 3 割超 5. 従業員規模別では、従業員数 10 名未満の企業で「営業停止」「実態判明せず」の割合が高く なり、従業員数ゼロ(代表・役員のみ)の企業では 36.8%にのぼる

被害甚大地域の 8 割が営業中

~西原村では3 割超の企業が営業停止または実態判明せず~

特別企画 : 熊本地震「被害甚大地域」の現地確認調査

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2 ©TEIKOKU DATABANK, LTD.

1.熊本地震後の営業状況

~約 8 割が通常または一部営業中~

被害甚大地域に本社を置く 1,602 社のうち、集計可能な 1,380 社について熊本地震発生後の営 業状況を確認したところ、地震後も「通常営業中」(ほぼ通常通り営業している)の企業が 1,062 社で全体の 77.0%を占めた。これに「一部営業中」(通常どおりとはいかないが部分的に営業して いる)の企業 48 社(構成比 3.5%)を加えると、調査企業の約 8 割が営業中であることが判明し た。 他方、「営業停止」(営業停止状態にあることを確認)の企業は 20 社(同 1.4%)となった。こ の中には、すでに廃業した企業 2 社、廃業を予定している企業 3 社が含まれている。また、代表 または会社関係者と連絡が取れないケースなどで営業実態が判明しなかった企業は 250 社(同 18.1%)にのぼった。

熊本地震後の営業状況

企業数 構成比 1,062 77.0% 48 3.5% 20 1.4% 再開見通しあり 8 (0.6%) 再開見通しなし 7 (0.5%) 廃業予定3 (0.2%) 廃業 2 (0.1%) 250 18.1% 1,380 100.0% 実態判明せず 合計 営業停止 状況 通常営業中 一部営業中 通常営業中 77.0% (1,062社) 実態判明せず 18.1% (250社) 営業停止 1.4% (20社) 一部営業中 3.5% (48社)

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2. 市町村別

~西原村では 3 割超の企業が営業停止または実態判明せず~

市町村別に営業状況をみると、4 月 14 日に発生した前震、16 日に発生した本震ともに震度 7 の強震に見舞われた益城町と、大規模な土砂崩れの被害により阿蘇大橋の崩落、国道 57 号線の通 行止めが続き、依然として道路網が寸断されている南阿蘇村、西原村で営業中(「通常営業中」と 「一部営業中」の合計)の企業の割合がいずれも 8 割を下回っている。 特に、南阿蘇村および西原村は、「通常営業中」の割合がいずれも 60%台にとどまっている。 南阿蘇村では、「営業停止」が 7 社(構成比 7.4%)にのぼり、「実態判明せず」を加えると、29.5% にのぼる。西原村では、「実態判明せず」が 28.8%と、全体を 10.7 ポイントも上回り、「営業停 止」を合わせると 31.3%と唯一市町村別で 3 割を超えている。 宇城市 79.4% 2.4% 1.3% 16.9% 宇土市 84.3% 1.3% 0.3%14.0% 益城町 72.7% 5.1% 1.0% 21.2% 高森町 82.4% 2.7% 0.0% 14.9% 西原村 61.3% 7.5% 2.5% 28.8% 南阿蘇村 62.1% 8.4% 7.4% 22.1%

熊本地震後の営業状況(市町村別)

熊本地震後の営業状況(市町村別)構成比

再開見通し あり 再開見通しなし 廃業予定 廃業 宇城市 428 13 7 1 3 2 1 91 539 宇土市 252 4 1 0 1 0 0 42 299 益城町 213 15 3 0 1 1 1 62 293 高森町 61 2 0 0 0 0 0 11 74 西原村 49 6 2 2 0 0 0 23 80 南阿蘇村 59 8 7 5 2 0 0 21 95 総計 1,062 48 20 8 7 3 2 250 1,380 営業 停止 通常営業中 一部営業中 合計 市町村名 判明せず実態

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4 ©TEIKOKU DATABANK, LTD.

3. 業種別

~建設業の 3 割超が実態判明せず~

業種別にみると、製造業、卸売業、サービス業の 3 業種で、「営業中」(「通常営業中」と「一部 営業中」の合計)の構成比がそれぞれ 91.0%、90.3%、91.2%と 9 割を超えている。 他方、建設業は、「営業中」が 68.9%と、7 割を下回っている。「実態判明せず」(155 社、構 成比 30.3%)が唯一 3 割を超えている。この 155 社中 152 社は、従業員数 10 名未満の企業であ る。建設業は、代表以下従業員全員が現場に出ており、日中は電話に出ないケースも考えられ、 この中には営業中の企業も一定数含まれている可能性がある。

4. 売上規模別

~年商 5000 万円未満では、3 割超が営業停止または実態判明せず~

売上規模別にみると、売上規模が小さくなるにしたがい、「営業停止」または「実態判明せず」 の割合が増加していることがわかった。特に年商 5000 万円未満の小規模企業では 3 割超が「営業 停止」または「実態判明せず」であることが分かった。

熊本地震後の営業状況(業種別)

熊本地震後の営業状況(業種別)構成比

再開見通し あり 再開見通しなし 廃業予定 廃業 建設業 66.8% 2.1% 0.8% 0.0% 0.6% 0.0% 0.2% 30.3% 100.0% 製造業 85.5% 5.5% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 9.1% 100.0% 卸売業 89.4% 0.9% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 9.7% 100.0% 小売業 78.7% 6.9% 3.7% 1.6% 1.1% 1.1% 0.0% 10.6% 100.0% 運輸・通信業 82.1% 3.6% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 14.3% 100.0% サービス業 88.2% 3.0% 2.3% 1.3% 0.7% 0.3% 0.0% 6.6% 100.0% 不動産業 67.3% 3.8% 3.8% 1.9% 0.0% 0.0% 1.9% 25.0% 100.0% その他 62.2% 8.9% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 28.9% 100.0% 総計 77.0% 3.5% 1.4% 0.6% 0.5% 0.2% 0.1% 18.1% 100.0% 営業停止 合計 通常営業中 一部営業中 業種名 判明せず実態 再開見通し あり 再開見通しなし 廃業予定 廃業 建設業 342 11 4 0 3 0 1 155 512 製造業 94 6 0 0 0 0 0 10 110 卸売業 101 1 0 0 0 0 0 11 113 小 売業 148 13 7 3 2 2 0 20 188 運輸・通信業 46 2 0 0 0 0 0 8 56 サービス業 268 9 7 4 2 1 0 20 304 不動産業 35 2 2 1 0 0 1 13 52 その他 28 4 0 0 0 0 0 13 45 総計 1,062 48 20 8 7 3 2 250 1,380 営業停止 通常営業中 一部営業中 合計 業種名 判明せず実態

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5. 従業員規模別

~従業員数ゼロ企業では「営業停止」「実態判明せず」が 36.8%に~

従業員数別で見ても、従業員規模が小さくなるにしたがい「営業停止」または「実態判明せず」 の割合が増加している。特に、従業員数 10 名未満になるとその割合は急激に高まる。従業員数 1 ~10 名未満の企業は 20.0%に、従業員数ゼロ(代表・役員のみ)の企業では 36.8%にものぼる。 ただし、前述の建設業の場合のように、代表以下全員現場に出向いるため、連絡が取れない企業 も一部含んでいる可能性はある。

熊本地震後の営業状況(売上規模別)

熊本地震後の営業状況(売上規模別)構成比

熊本地震後の営業状況(従業員数別)

熊本地震後の営業状況(従業員数別)構成比

再開見通し あり 再開見通しなし 廃業予定 廃業 5千万円未満 409 27 11 0 6 3 2 181 628 5千万~1億円未満 207 3 3 3 0 0 0 43 256 1~10億円未満 390 16 5 4 1 0 0 24 435 10~100億円未満 47 2 1 1 0 0 0 1 51 100~1000億円未満 5 0 0 0 0 0 0 0 5 未詳 4 0 0 0 0 0 0 1 5 総計 1,058 48 20 8 7 3 2 250 1,380 営業停止 売上規模 通常営業中 一部営業中 判明せず実態 合計 再開見通し あり 再開見通しなし 廃業予定 廃業 5千万円未満 65.1% 4.3% 1.8% 0.0% 1.0% 0.5% 0.3% 28.8% 100.0% 5千万~1億円未満 80.9% 1.2% 1.2% 1.2% 0.0% 0.0% 0.0% 16.8% 100.0% 1~10億円未満 89.7% 3.7% 1.1% 0.9% 0.2% 0.0% 0.0% 5.5% 100.0% 10~100億円未満 92.2% 3.9% 2.0% 2.0% 0.0% 0.0% 0.0% 2.0% 100.0% 100~1000億円未満 100.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 100.0% 未詳 80.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 20.0% 100.0% 総計 76.7% 3.5% 1.4% 0.6% 0.5% 0.2% 0.1% 18.1% 100.0% 営業停止 一部営業中 売上規模 通常営業中 判明せず実態 合計 再開見通し あり 再開見通しなし 廃業予定 廃業 ゼロ 60.5% 2.7% 2.7% 0.5% 0.9% 0.9% 0.5% 34.1% 100.0% 1~10人未満 76.3% 3.8% 1.4% 0.6% 0.6% 0.1% 0.1% 18.6% 100.0% 10~100人未満 91.7% 3.1% 0.4% 0.4% 0.0% 0.0% 0.0% 4.7% 100.0% 100~1000人未満 92.6% 3.7% 3.7% 3.7% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 100.0% 1000人以上 100.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 100.0% 総計 77.0% 3.5% 1.4% 0.6% 0.5% 0.2% 0.1% 18.1% 100.0% 合計 営業停止 従業員規模 通常営業中 一部営業中 判明せず実態 再開見通し あり 再開見通しなし 廃業予定 廃業 ゼロ 133 6 6 1 2 2 1 75 220 1~10人未満 669 33 12 5 5 1 1 163 877 10~100人未満 233 8 1 1 0 0 0 12 254 100~1000人未満 25 1 1 1 0 0 0 0 27 1000人以 上 2 0 0 0 0 0 0 0 2 総計 1,062 48 20 8 7 3 2 250 1,380 通常営業中 営業停止 合計 従業員規模 一部営業中 判明せず実態

(6)

6 ©TEIKOKU DATABANK, LTD.

6.

企業からのコメント

○通常営業中 ・ 建物は一部損壊。仕事は、緊急工事のため震災当日から出ている。現在も、県や町からの緊 急工事が忙しく、自社の復旧に手が回らない(益城町、土木工事業) ・ 地震の被害はなかった。震災直後から仕事が入り、多忙にしている(宇土市、はつり・解体 工事) ・ 家屋は半壊、営業は継続中(南阿蘇村、土木工事業) ・ 被害はあまりなかったので仕事に支障はなかったが、受注していた防犯カメラの設置工事が、 建物自体の崩壊でキャンセルになり、困っている(益城町、信号装置工事業)。 ・ 工場は全壊状態にあり、製品の生産ができない。ただ製品在庫があるので、注文には対応で きており、営業は通常どおりである(宇城市、生薬・漢方薬製造販売) ・ 被害はなく震災後から営業しているが、農家・農地に被害あり。肥料の需要がなく、物が動 かない。営業はしているが、売上はない状況(益城町、配合飼料製造) ・ 建物等に被害はなかったが、長時間停電したため冷凍商品が全滅。道路が寸断しているため、 観光客の見込みがなく、売上が上がらない(高森町、アイスクリーム卸) ・ 事務所に被害はなく営業は通常どおりだったが、被災した農家からの代金回収が困難なため、 銀行からの融資で対応している(宇城市、肥料・飼料卸) ○一部営業中 ・ それなりに被害はあった。高齢な上、後継者もいないため、先行きは見通せない(益城町、 土木工事業) ・ 本店店舗はほぼ全壊。倉庫は何とか使えるので、一部営業を続けている(西原村、農薬・肥 料卸) ・ 店舗に被害があり、電話などによる通信販売で営業している(南阿蘇村、一般食堂) ・ 事務所が傾いて修復できていない。何とか営業している状態(宇城市、舗装工事) ・ 砕石場が土砂崩れの危険地域の指定を受け作業ができないため、他の場所で砕石を行ってい る(南阿蘇村、砕石製造) ○営業停止 ・ 家の倒壊により営業停止。まだ片付けが終わらず、再開のメドも立たない(宇城市、一般電 気工事業) ・ 代表は、震災による怪我で入院中。建物の被害は特にない。再開は、怪我の回復時期次第(宇 土市、木造建築工事) ・ 店舗全壊。8月から近隣の仮店舗へ移転予定(宇城市、呉服小売) ・ 代表が昨年死去し、今回の地震で再開不能(益城町、コンビニ店)

(7)

7.

まとめ

熊本地震から 3 カ月が経過した中、被害甚大地域に本社を置く企業の約 8 割が営業中であるこ とが、今回の調査で判明した。しかし、所在する市町村によって営業状況に違いがあらわれてい るなど、地域格差も明らかになった。 特に、大規模な土砂崩れから道路網が寸断された南阿蘇村、西原村と、建物被害が特にひどか った益城町では営業中の企業の割合が 8 割を下回った。特に西原村では、10 社に 3 社が営業停止 または営業実態が判明しないことが明らかとなった。 また、売上規模が小さくなるほど、営業停止あるいは営業実態が判明しない企業の割合が高く なることがわかり、小規模企業ほど熊本地震の影響を受けて、営業活動に何らかの支障をきたし ている可能性が示唆される。 しかし、通常営業中の企業でも、販売先が被災したために売上が急減した、販売しても代金の 回収が滞っているために銀行融資で対応している、といったケースが見られる。営業中の企業で も、取引先の動向などに影響され、今後、業績が低下する企業が出てくる可能性も否定できない。 【内容に関する問い合わせ先】 株式会社帝国データバンク福岡支店情報部 担当:昌木 裕司 TEL 092-738-7779 FAX 092-738-8687 当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。 当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的以外の利用につきましては、著作権法 の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。

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