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基礎講座 標準計測法 12 への移行による X 線の校正深吸収線量計測 福井大学医学部附属病院木下尚紀 1. 目的 2012 年 9 月, 水中での電離箱校正および線質変換係数の見直しに対応した水吸収線量計測プロトコルである標準計測法 12 が発刊された 1). 従来の標準計測プロトコルである標準測

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(1)

1. 目的 2012 年 9 月, 水 中 での電 離 箱 校 正 および線 質 変 換 係 数 の見 直 しに対 応 した水 吸 収 線 量 計 測 プロト コルである標 準 計 測 法 12 が発 刊 された 1).従 来 の標 準 計 測 プロトコルである標 準 測 定 法 01 と標 準 計 測 法 12 では電 離 箱 校 正 の手 法 の違 いや線 質 変 換 係 数 の違 いにより校 正 深 吸 収 線 量 に差 が生 じること が予 想 される2,3) 今 回, 従 来 の標 準 計 測 プロトコルである標 準 測 定 法 01 からの変 更 点 である水 吸 収 線 量 校 正 定 数 お よび線 質 変 換 係 数 を中 心 に説 明 し, 最 終 的 に標 準 計 測 法 12 に準 じた校 正 深 吸 収 線 量 が標 準 測 定 法 01 と比 較 し,どの程 度 変 化 したかを解 説 した. 2. 標準計測法 12 による X 線の校正深吸収線量計測 標 準 計 測 法 12 の使 用 機 器 および校 正 深 吸 収 線 量 計 測 方 法 は, 標 準 測 定 法 01 に準 じた方 法 と同 様 であり変 更 点 はない.校正深10 cm にファーマ形電離箱の幾何学的中心を合わせ, 気温気圧補正係数, イオン再結 合補 正 係 数, 極性効果補正係数を補正した後の表示値に水吸収線量校正定数および線質変 換係数を乗ずることで校正深吸収線量を得る基 本 的 な式 は標 準 測 定 法 01 同 様 である. また標 準 測 定 法 01 で X 線 の線 質 指 標 であったTPR20,10も変 更 はなく, TPR2 0,10に即 して線 質 変 換 係 数 を求 める方 法 も従 来 同 様 である. しかし目 的 で述 べたように電 離 箱 線 量 計 の校 正 方 法 の変 更 による水 吸 収 線 量 校 正 定 数

N

D,w,Q 0

(

)

の変 化 や線 質 変 換 係 数

k

Q,Q 0

( )

の見 直 しにより,その 2 つの値 は, 標 準 測 定 法 01 と異 なることが考 えられる. したがって標 準 計 測 法12 における校 正 深 吸 収 線 量 計 測 は従 来 の計 測 方 法 や校 正 深 算 出 式 に変 更 点 はないが,

N

D,w,Q0および

k

Q,Q0自 体 の値 が異 なるので注 意 が必 要 である. 3. 水吸収線量校正定数

N

D,w,Q 0

N

D,w,Q 0は, 校正深吸収線量計測における校正深で計測した電離箱の表示値に乗ずることで基準線質 (Q0) における水 吸 収 線 量 に変 換する定 数である . 既知の基準線質における水吸収線量場に電離箱線量 計 を 設置し, その表示値M(rdg:読み取り値)に校正定数Xを乗ずることで既知の水吸収線量 Dw(Gy)となる.

D

w,

=

M X

・・・・・・・・・・・・・・(1) ここでXが標準計測法12 の水吸収線量校正定数

N

D,w,Q 0(Gy/rdg)となる. したがって

N

D,w,Q0は次のように 定義される.

N

D,w,Q0

=

D

w

M

・・・・・・・・・・・・・・(2)

標準計測法 12 への移行による X 線の校正深吸収線量計測

福 井 大 学 医 学 部 附 属 病 院 木 下 尚 紀

基 礎 講 座

(2)

では既知の水吸収線量はどこに存在するのか. 各国の国家標準線量の体系の模式図を Fig. 1 に示す. 各国の大本となる既知の線量場が一次 線量 標 準機 関(PSDL)に存在する. その下にあるのが二次線量標 準機関(SSDL)となる.そして我々, ユーザは SSDL の下に存在する. PSDL と SSDL および SSDL とユー ザそれぞれを結びつけるために, 下位の所有する電離箱線量計は上位の線量場によって校正される.電離 箱 線 量 計の校 正で得られる校正 定 数が

N

D,w,Q 0となる. ユーザは電離箱線量計の校正によって得た

N

D,w,Q0 を用いて吸収線量を計測することでユーザ間同士の線量の同等性が計られる. PSDL が全てのユーザの線 量計を校正することは現実的に難しい.したがって PSDL とユーザ間の仲介として SSDL が必要となる. し たがってユーザの電離箱線量計の校正は, SSDL における水吸収線量場において行われる. 本邦における PSDL および SSDL は, 産業技術総合研究所(産総研), 医用原子力研究振興財団にあたる. PSDL は定 期的に水吸収線量場の確認のため国際度量衡局(BIPM)と線量の比較をすることで BIPM および間接的に 各国との線量比較を行うことで水吸収線量の正確さを確認している.またユーザおよびSSDL は定期的に電 離箱線量計を上位の機関で校正することで正確な水吸収線量を担保する. 標準測定法01 においては Fig. 1 の PSDL, SSDL およびユーザの関係は標準計測法 12 と同様である が既知の線量場は照射線量場であり, その照射線量場において電離箱線量計の校正が行われ Ncを得る. 標準測定法01 における

N

D,w,Q 0はコバルト校正定数Ncと校正定数比kD,Xの積から求まる.水中での電離箱 線量計の校正で得た

N

D,w,Q 0とNc kD,Xの差については水中での電離箱線量計の校正が始まってからの6 ヵ 月間のデータから公表された.種々の電離箱線量計 において公表されており, 一例として多くのユーザが使 用するファーマ形電離箱線量計 PTW 30013 ではNc kD,Xに対する

N

D,w,Q 0の差が-0.64%であった 4) Fig. 1 国家標準線量の体系の模式図

(3)

4. 線質変換係数

k

Q,Q 0

k

Q,Q 0 は基 準 線 質(6 0Coγ 線 )の吸 収 線 量 からユーザ線 質 の吸 収 線 量 に変 換 する係 数 である. 標 準 測 定 法 01 から標 準 計 測 法 12 で

k

Q,Q 0は以 下 のように変 化 した.  擾乱補正 係数の値を更新した結果,

k

Q,Q 0の値が変化した.  防浸鞘の有無に関わらず同じの

k

Q,Q 0から導出するようになった. Fig. 2 に PTW 30013 における標準測定法 01 および標準計測法 12 の線質変換係数を示 す. 標準測 定法01 および標準計測法 12 における平均制限質量衝突阻止能比は同じとなる. 一方,線 質 変 換 係 数 に おける基 準 線 質 の擾 乱 補 正 係 数 と X 線 における擾 乱 補 正 係 数 の算 出 方 法 が更 新 した結 果

k

Q,Q 0が変 化 した.主 に標 準 測 定 法01 から標 準 計 測 法 12 で変 位 補 正 係 数 (Pdis)の違いが大 きく, Johanson らの 式 からWang らの式 で算 出 することですべての電 離 箱 で

k

Q,Q 0が変 化 した.その結 果, X 線のエネルギー が大 きいほど標 準 測 定 法 01 の線 質 変 換 係 数 に対 して標 準 計 測 法 12 の線 質 変 換 係 数 は, 小 さい値 を 示 すこととなる.当 院 においても標 準 測 定 法 01 に対 する標 準 計 測 法 12 の線 質 変 換 係 数 の差 は 6 MVX 線では約 −0.15%, 10 MVX 線では約 −0.30%となった. 標 準 測 定 法 01 における

k

Q,Q 0の値が防 浸 鞘 1 ㎜, 0.5 ㎜, 無 しでそれぞれに対 して値が与 えられていた. 一 方, 標 準 計 測 法 12 では各 電 離 箱 に対 して防 浸 鞘 の有 無 に関 わらず同 一 の値 を与 えるようになった. 標 準 計 測 法 12 では防 浸 鞘 の使 用 の有 無 両 方 に対 応 するために, ユーザ線 質 においてポリメタクリル酸 メチル樹 脂(polymethyl methacrylate: PMMA) の防 浸 鞘 0.3 mm 相 当 の壁 補 正 係 数 (Pwall)を採 用 した値 となった.そこでPTW 30013 における防 浸 鞘 の有 無 に即 したPwallおよび防 浸 鞘0.3 ㎜のPwall

を 標 準 計 測 法 12 に 準 じてそれぞれ算 出 し, 防 浸 鞘 の有 無 による Pwall の差 を比 較 した.その結 果

(4)

6 MV および 10 MV X 線 における防 浸 鞘 1 ㎜の Pwa ll に対 する防 浸 鞘 0.3 ㎜の Pwa ll の差 は −0.027,−0.061%となった. また 6 MV および 10 MV X 線 における防 浸 鞘 無 しの Pwallに対 する防 浸 鞘 0.3 ㎜の Pwallの差 は 0.022%, 0.043%と変 化 はするが小 さな差 となり標 準 計 測 法 12 における防 浸 鞘 の有 無 に関 わらず

k

Q,Q 0を統 一 したことは実 務 上 問 題 とならないと結 果 からも妥 当 と考 える 5) 標準測定法01 および標準計測法 12 における平均制限質量衝突阻止能比は同じとなる. 標準計測法 12 における線質変換係数の変化は擾乱補正係数の中のPdisの見 直 しが主 たる要 因 である. 5. 標準計測法 12 への移行による校正深水吸収線量の変化 Fig. 3 に当 院 における標 準 計 測 法 12 への移 行 による校 正 深 水 吸 収 線 量 の変 化 を示 す3).標 準 測 定 法 01 に準じた校 正 深 吸 収 線 量 に対 する標 準 計 測 法 12 に準じた校 正 深 吸 収 線 量 の差 は,6 MVX 線では 約 −0.80%,10 MVX 線では約 −1.0%となった.標 準 測 定 法 01 と標 準 計 測 法 12 で異 なる 校 正 深 吸 収 線 量 と な っ た の は ,

N

D,w,Q 0および

k

Q,Q0の値に差が生じたためであり, また 10 MVX 線に おける校正深吸収線量でより大 きな差 を示 したのは標 準 計 測 法 12 での

k

Q,Q 0が高いエネルギーほど標 準 測 定 法 01 の

k

Q,Q 0 と大きな差がみられたためである.標 準 計 測 法12 は, X 線 における校 正 深 水吸収線 量計測の各過程の不確かさを合成した相対合成標準不確かさが, 標 準 測 定 法 01 から標 準 計 測 法 12 で 2.0%から 1.5%へ減 少 すると報 告 している.したがってユーザは標 準 計 測 法 12 へ移 行 することで計 測 に よって 得 ら れた 校 正 深 吸 収 線 量 の 値 の 信 頼 性 が 上 昇 す るこ とになる . そ の要 因 とし て 標 準 計 測 法 12 では,水中にて直接電離箱の水吸収線量校正定数を得られるためである1).ここで不 確 かさとは得 られ た値 に対 してどの程 度 ばらつきの範 囲 内 に真 の値 があるかを示 すものである .すなわち 標 準 計 測 法 12 における校 正 深 吸 収 線 量 は相 対 合 成 標 準 不 確 かさ 1.5%と見 積 もられるので, 計 測 して得 た校 正 深 吸 収 線 量 はその値 から±1.5%の幅 の範 囲 内 で真 の値 が 68%の確 率 で存 在 する. Fig. 3 当院における標準計測法 12 への移行による校正深吸収線量

(5)

6. 標準計測の最近の話題 標準計測法 12 が発刊されて以降 X 線におけるいくつかの標準計測に関する話題を以下に示す.  産総研において医療用直線加速器を用いた高エネルギーX 線の水吸収線量標準の開発 6) これは不確かさの大きい線質変換係数を用いずに計測を行い校正深 吸収線量 の不確かさの低減をはかる ねらいがある. すなわちユーザ線質 Q に対する水吸収線量校正定数(

N

D,w,Q)を医療用直線加速器上で電 離 箱 線量 計 の校 正を行う.しかしながら, 現在産総研において国内の校正をすべて処理することができな い.  電位計と電離箱の分離校正 現在はまだ行われていないが, 準備が進められており近い将来電位計単独での校正が行われる予定であ る.このことで電離箱と電位計の自由な組み合わせで計測ができるメリットがある.  米国医学物理学会(AAPM)における線質変換係数の見直し 7) AAPM においては 1999 年に発行されたタスクグループレポート(TG)51 が標準計測に関するプロトコルの 報 告 であった.AAPM TG-51 における線質変 換係 数は半経 験 式であったが, AAPM では 2014 年 に Muir らの直接にモンテカルロ計算により求めた線質変換係数 8)に更新した. AAPM の標準計測は世 界を代表するプロトコルであり今後各国における線質変換係数に影響を与えると予想ができる . 7. まとめ 標準計測法 12 への移行による校正深吸収線量計測について解説した.基本的にユーザは標準測定法 01 からの計測手順に変化はない.ユーザは医用原子力研究振興財団にて水中校正にて得た

N

D,w,Q 0および 標 準 計 測 法 12 の

k

Q,Q0を取 り入 れて標 準 計 測 法 12 を実 践 するだけで得 られた校 正 深 吸 収 線 量 の信 頼 性 が上 昇 する.しかし標 準 計 測 法 12 を移 行 することで校 正 深 吸 収 線 量 の値 の変 化 が現 在 までの報 告 で予 想 されるので, 各 施 設 で校 正 深 吸 収 線 量 の変 化 を把 握 することが大 事 である.そして

N

D,w,Q 0および

k

Q,Q 0が変 化 するため計 測 シートの確 認 やスタッフ間 でよく協 議 を行 い 標準計測法 12 へ移行するとが大事 であると考えられる. 謝辞 今 回,かたろう会で発 表する機会を与えて頂きました太 田 代 表をはじめ世 話 人 の皆様ありが とうございまし た.また本発表のアドバイスを頂きました都島放射線科クリニックの辰己様ありがとうございました.そして発表 スライドの一部にわかば会のスライドを使用しました.資料を提供して頂いたわかば会スタッフの皆様ありがとう ございました.

(6)

参考文献 1) 日 本 医 学 物 理 学 会 編. 外部放射線治療における水吸収線量の標準計測法 (標準計測法 12). 東 京 : 通商産業研究社, 2012. 2) 日本医学物理学会 編. 外部放射線治療における吸収線量の標準測定法(標準測定法 01). 東京 : 通商産業研究社, 2002. 3) 木下尚紀,武村哲浩,西本康宏,他:標 準 測 定 法 01 から標 準 計 測 法 12 への移 行 による X 線 における水 吸 収 線 量 の比 較 検 討 .日本放射線技術学会誌,69(3),284,(2013). 4) 齋藤秀 敏:外 部 放 射 線 治 療 のための 水 吸 収 線 量 標 準 計 測 法 の 概 略 .日 本医学 物理 学会 誌 ,33 (4),284,(2013). 5) 木下尚紀,武村哲浩,北章延,他:標 準 計 測 法 12 の線 質 変 換 係 数 と防 浸 鞘 の有 無 に即 した線 質 変 換 係 数 による X 線 の校 正 深 水 吸 収 線 量 の比 較 検 討 .日本放射線技術学会誌,69(10),1161, (2013). 6) 森下雄一郎:グラファイトカロリーメータによる水 吸 収 線 量 線 量 率 の一 次 標 準 .日本医学物理学会誌, 33(4),179,(2014).

7) McEwen M, Dewerd L, Ibbot G et al. Addendum to the AAPM's TG-51 protocol for clinical reference dosimetry of high-energy photon beams. Med Phys, 41, 041501, (2014).

8) Muir BR, Rogers DWO. The determination of beam quality correction factors: Monte Carlo simulations and measurements. Med Phys 2010; 37(11): 5939-5950.

参照

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