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(1)

平成271127

文化庁メディア芸術祭実行委員会

平成

27

年度

[第

19

回]

文化庁メディア芸術祭

(2)

アート部門

エンター

テインメント部門

アニメーション

部門

マンガ部門

功労賞

賞名 大賞 優秀賞 新人賞 大賞 優秀賞 新人賞 大賞 優秀賞 新人賞 大賞 優秀賞 新人賞

19

文化庁メディア芸術祭

受賞一覧

作品名 作品形態 作者名[国籍] ページ

50 . Shades of Grey グラフィックアート CHUNG Waiching Bryan [英国] 03

The sound of empty space メディアインスタレーション Adam BASANTA [カナダ] 04

Ultraorbism メディアパフォーマンス Marcel·lí ANTÚNEZ ROCA [スペイン] 04

Wutbürger 映像インスタレーション KASUGA 05

(Andreas LUTZ / Christoph GRÜNBERGER)[ドイツ]

(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合 長谷川愛[日本] 05

写真、ウェブ、映像、書籍

算道 計算手法、パフォーマンス 山本一彰[日本] 06

Communication with the Future Lorenz POTTHAST [ドイツ] 06

– The Petroglyphomat インタラクティブアート

Gill & Gill 映像作品 Louis-Jack HORTON-STEPHENS [英国] 06

正しい数の数え方 音楽劇 岸野雄一[日本] 07

Dark Echo ゲーム Jesse RINGROSE / Jason ENNIS [カナダ] 08

Drawing Operations Unit: Sougwen CHUNG [カナダ] 08

Generation 1 インタラクティブインスタレーション

Solar Pink Pong Assocreation / Daylight Media Lab 09

インタラクティブインスタレーション、デジタルデバイス [オーストリア]

Thumper ゲーム Marc FLURY / Brian GIBSON [米国] 09

ほったまるびより 映画 吉開菜央[日本] 10

Black Death ウェブ、ルポルタージュ Christian WERNER / Isabelle BUCKOW [ドイツ]10

group_inou 「EYE」 ミュージックビデオ 橋本麦/ノガミカツキ [日本] 10

Rhizome 短編アニメーション Boris LABBÉ [フランス] 11

花とアリス殺人事件 劇場アニメーション 岩井俊二[日本] 12

Isand (The Master) 短編アニメーション Riho UNT [エストニア] 12

My Home 短編アニメーション NGUYEN Phuong Mai [フランス] 13

Yùl and the Snake 短編アニメーション Gabriel HAREL [フランス] 13

台風のノルダ 劇場アニメーション 新井陽次郎[日本] 14

Chulyen, a Crows tale 短編アニメーション Agnès PATRON / Cerise LOPEZ [フランス] 14

Deux Amis ( Two Friends) 短編アニメーション Natalia CHERNYSHEVA [ロシア] 14

かくかくしかじか 東村アキコ[日本] 15

淡島百景 志村貴子[日本] 16

弟の夫 田亀源五郎[日本] 16

機械仕掛けの愛 業田良家[日本] 17

Non-working City HO Tingfung[ポルトガル] 17

エソラゴト 同人誌 ネルノダイスキ[日本] 18 たましいいっぱい おくやまゆか[日本] 18 町田くんの世界 安藤ゆき[日本] 18 飯村隆彦 映像作家/批評家 19 上村雅之 ハードウェア開発者/ビデオゲーム研究者 19 小田部羊一 アニメーター/作画監督/キャラクター・デザイナー 19 清水勲 漫画・諷刺画研究家 19

(3)

アート部門

大賞

50

. S

シェイズ

hades o

オブ

f G

グレイ

rey

グラフィックアート

CHUNG Waiching Bryan[英国]

チュン・ワイチン・ブライアン 作品概要 本作は、プログラミング言語を使用した、コンセ プチュアルであると同時に視覚的な作品で、額 装した6枚のシートで構成される。作者は、過 去30年間に学んださまざまなプログラミングの 言語やソフトウェアを用いて、50段階の灰色の グラデーションでできたまったく同じ画像を制作 した。タイトルはオンライン小説として発表され、 後にベストセラーとなった『Fifty Shades of Grey』という大衆小説を参照している。かつて広 く普及していた数々のソフトウェア・ツールは、現 在ではそのほとんどが使用されなくなっている。 コンピュータ産業においてもデジタルアートにお いても、前時代的になることへの恐れはつねに つきまとう。作者は、それらのプログラミング言 語の一つひとつと旧友のように接し、それを最新 の機械のなかに取り込み、新しい外貌やエネル ギーをもたせて再活性化した。これまでに開発 された異なるテクノロジーが盛衰してきたさまを 可視化する作品である。 贈賞理由 物質的存在感を持つアナログメディアに対して、 デジタルメディアは、基本的には物質性を有さ ない。その代わり、その背後にはハードウェア =機械と演算という不可視な世界が控えてい る。そして、その両者をつなぐのがプログラミ ング言語である。『50 . Shades of Grey』で は、黒から白への50階調のグラデーションを 表示させるための6種類のソース・コードのみが 展示される。それぞれまったく異なった視覚的 特徴を持つ文字列は、ハードウェアでの演算を 経てディスプレイ上で同一のイメージを導きだ すだろうが、観者にその結果は示されない。印 字されたコードは、多くの観者にとっては解読 不能な、いわばデジタル・イメージの無意識とし て提示されるだけである。作者によれば、6種 の言語は、コンピュータ技術の進化と陳腐化の 歴史を表象する。一方で作者と同年生まれの BASICから2000年のActionScriptまでの言 語が、それぞれ作者の人生と重ね合わされて語 られる。作品の見た目は、素っ気なくさえ見え る簡素なものであるが、そこに異質な層が徐々 に見えてくる豊かさが評価された。(佐藤守弘) [受賞者コメント] 『50 . Shades of Grey』を評価してくださった審査 委員には本当に感謝したいと思います。本作は、デジ タルメディアアーティストとして、いかなる新しい技術も コンピュータをも使用せずに展示する、初めての作品 です。 すべてのプログミング言語とソフトウェア・ツールはすぐ に古い技術になってしまいます。私は、詩的なテキスト のようにコードを書きました。この作品の制作過程は、 古い友人に再会したり、すでに消滅してしまった古い 場所を訪ねていくようでした。どんどん短縮されるIT関 連の製品の活用サイクルは、私たちに内省させる余裕 と時間を残してくれます。 私は、この作品と今回の受賞が、すこし落ち着いて、周 りを見回し、足元を確認して、そしてこれからの未来を 再考する機会を私たちに与えてくれることを望みます。

CHUNG Waiching Bryan

CHUNG Waiching Bryan

チュン・ワイチン・ブライアン 1964年、香港生まれ。メディアアーティストであり、 現在、香港浸会大学の視覚芸術アカデミーで、インタ ラクティブアートおよびマルチメディアを教える。 ●参考URL http://www.magicandlove.com/blog/artworks/50-shades-of-grey

(4)

Photo: Emily Gan © Adam Basanta

優秀賞

T

he s

サウンド

ound o

オブ

f

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エンプティー

mpty s

スペース

pace

メディアインスタレーション

Adam BASANTA

アダム・バサンタ [カナダ]

U

ウルトラオービズム

ltraorbism

メディアパフォーマンス

Marcel·lí ANTÚNEZ ROCA

マルセリ・アントゥネス・ロカ

[スペイン]

贈賞理由

空気は目に見えない。だからその存在につい てつい見過ごしがちだが、聴覚にとっては最 大のメディアである。『The sound of empty space』においてアーティストはこの「空っぽ の空間」が音にとっていかに表現豊かであるか を、視覚的に知覚できるかたちで私たちに提示 している。音が空気中を伝わる速度は1秒間 に約330m、光の速度に比べあまりにも遅いた め、空間の状態によって聞こえ方が変わる。つ まり、私たちの耳は、「音を聞いている」ばか りでなく「空間を聞いている」のである。音を 使用した作品が比較的多かった今回の応募作 品のなかで、音を伝える空間に着目している点 で、独自の視点を持ち、改めて音とは何かを私 たちに考えさせる表現が、聴覚を超え、メディ アとは何か?を考えさせる作品にもなっている。 (藤本由紀夫) 作品概要 制御されたマイクロフォンによって発生するハウ リングを通じて、マイクロフォン、スピーカー、 周囲の環境音の相関関係を探る作品。この作 品でマイクロフォンが増幅させるのは、人間の 身体では耳と口に相当する、インプットとアウト プットの機器のあいだにある静音である。この とき、スピーカーとは音を発する装置であると いう概念は成り立たず、いったい何がマイクロ フォンによって増幅されているのか、という疑問 が生まれる。欠陥のあるシステムを構築して機 器間の伝達能力を無効にすることにより、耳は そのあいだの「空っぽの空間」に注意を傾けさ せられる。つまり、増幅機器の位置関係を聞い ていることになる。 陳腐だが発明的、そして不条理でもあるこの寄 せ集められた機器類を通じて、音は明確な存 在や自律的な現象ではなく、物理的・文化的・ 経済的な相互依存的ネットワークのなかで生 まれる、変化しやすい産物であることが明らか になっていく。

© Marcel·lí Antúnez Roca

優秀賞

贈賞理由 『Ultraorbism』は、サモサタのルキアノスの 『本当の話』を、作者の独創的な世界観によっ て展開させたメディアパフォーマンス作品。作 者は、自身の身体と機械を融合させるパフォー マンスやユニークなアニメーションによる作品 で国際的に知られているが、本作ではi2CAT 財団(次世代インターネット等の研究財団)や ダンサーが参加し、より劇場的な作品となって いる。スペインのバルセロナと英国のファルマ スの2つの会場で別々のパフォーマンスを同時 進行で行ない、音楽や照明もネットワーク上 の映像とインタラクティブに進行する。彼の舞 台上でのドローイング行為や、何枚にも重ねら れた巨大な絵画を物語とともにめくり続ける際 の、そのアクチュアルで原初的なパフォーマン スは見応えがあり、それが異なる場所にいるダ ンサーや観客と高度な視覚環境のもとで融合 していくさまは、祝祭的であり新たな実験とし て魅力的である。(石田尚志) 作品概要 スペインのバルセロナと英国のファルマスの2つ の都市をネットワークでつなぎ、インタラクティ ブにパフォーマンスを行なう作品である。どちら の都市の会場でもドローイングのための床面、 中央に大きなメインのスクリーン、脇に小スク リーンを設置している。メインのスクリーンでは 物語が進行し、もう一方の都市でのパフォーマ ンスを反映しながら展開する。小スクリーンは、 パフォーマンスの詳細を映しだす。パフォーマン スはサモサタ(現・トルコ)のルキアノス(紀元2 世紀のシリア人作家)が書いた最古のSFのひ とつといわれる『本当の話』(全2巻)のうちの 第1巻に基づいており、神話や当時の文学を参 照しつつも、すべてがつくり話の荒唐無稽なス トーリーである。この物語は、階層の異なるイ メージによって展開していく。一部はリアルタイ ムのパフォーマンス映像であり、そのほかはあら かじめ蓄積されたイメージである。それらが重 ね合わされた映像によって物語が紡ぎだされ、 音楽や照明もインタラクティブに、物語のイメー ジに即応している。 ●参考URL http://marceliantunez.com/work/ultraorbism

アート部門

(5)

© Andreas Lutz, Christoph Grünberger

優秀賞

W

ヴートビュルガー

utbürger

映像インスタレーション

KASUGA

(Andreas LUTZ /

Christoph GRÜNBERGER)

カスガ(アンドレアス・ルッツ/クリストフ・グリューネベルガー) [ドイツ]

(不)可能な子供、

01

:朝子と

モリガの場合

写真、ウェブ、映像、書籍

長谷川

HASEGAWA Ai [日本] 贈賞理由 Wutbürgerとは、「怒れる市民」という意味 で、さまざまな政治問題に対して市民が抗議の 声を挙げた状況を示す言葉として、2010年に はドイツの「今年の言葉」に選ばれたという。た だし箱のなかの主人公が13幕に及ぶ一人芝 居で怒っているのは、きわめて個人的な事柄に 対してなのである。ここでは政治的なことが個 人的なことに回収されるように一旦は思える。 ところが Isolation episodeというプロジェク トでは、この箱は原子力発電所や欧州中央銀 行などの抗議運動─すなわち「怒り」─が 起こりそうな場所へと連れだされる。そのことで 再び、個人的な怒りと社会的/政治的な怒り が交差するのである。ここでフェミニズムにおけ る「個人的なことは政治的」というフレーズを引 き合いに出すのは牽強付会に過ぎるかもしれな いが、現代における個人と社会/政治の関係 を問いなおすという点で、優れて今日的な主題 をユーモラスに描いた作品となっているのでは ないだろうか。(佐藤守弘) 作品概要 本作は、あるドイツ人男性の個人的な怒りや 失敗を題材としている。ごく普通の人間である 主人公シュテファン・Wは、人生のさまざまな 段階を振り返り、最後に現在の困った状況に たどりつくが、そこは脱出できない監禁部屋で ある。特製の木箱の中で行なわれた5時間に わたるパフォーマンスの録画が、背面からのプ ロジェクションによって同じ木箱に映しだされ る。 Isolation episode(孤 独 な出 来 事) と題されたドイツの国内ツアーでは、この箱は いかにも「市民が怒りそうな」場所、例えば原 子力発電所、ヨーロッパ中央銀行、集団監視 施設などの前にゲリラ的に設置された。しかし シュテファンは、快楽主義、退屈な郊外、育 児放棄についてなどの私的な怒りを叫んでい る。この箱は、あらゆる人のデモ行為や抗議 行動を代行しながら、ごく私的な怒りがその人 自身に向かったときに何が起きるのかを表現し ている。 ●参考URL http://wutbuerger.in © Ai Hasegawa

優秀賞

贈賞理由 審査会で議論になった作品である。ヒト遺伝 子操作の是非と、愛と、アートの役割という題 材の強さ並びに現実との接続や論文参照の努 力は、いかにも優等生的で、ポリティカル・コレ クトネス(社会正義)的な手法をとった芸術の 一例だ。家族写真としてのセンスは最大公約 数的で、同性婚問題としてはここのみが解決点 ではないだろう。本作を取り上げたテレビ番組 には多大な訴求力があり、出演タレント自身も 含めSNSで多くの人々が感涙した事実が確認 できるが、構図としては、ゴーストライター騒動 で話題になった人物が、嘘をつきながらも人々 に感銘を与えたことと似る。つまり本作では、 遺伝情報の解釈は作者の言うとおり占い程度、 すなわちフィクションだが、SFを美術に仕立て 問題提起を装いつつ、虚実ないまぜに人々を 感動させるプロジェクトだとすれば、美術として は嫌悪感を抱かれかねない前述の指摘はすべ て、むしろ称揚されるべき諸点へと反転する。 この構造を評価した。(中ザワヒデキ) 作品概要 実在する同性カップルの一部の遺伝情報から できうる子どもの遺伝データをランダムに生成 し、それをもとに「家族写真」を制作した作品。 現在の科学技術ではまだ同性間の子どもを誕 生させることは不可能だが、遺伝データを用い た推測ならば可能である。遺伝子解析サービ ス「23andMe」から得ることができるカップル の遺伝データをウェブの簡易版シミュレーター へアップロードすると、できうる子どもの遺伝情 報が、外見や性格、病気のかかりやすさなどの 情報リストになって出力される。遺伝子研究が 進み、もはや同性間の子どもの誕生は夢物語 ではなくなろうとしている。しかし、技術的には 可能でも倫理的に許されるのか、という議論を 通過しなければ実現は難しい。一体誰がどの ように、その是非を決定するのか、科学技術に 関する意思決定の機会を多くの人に解放する ために、アートにはどのようなことができるのか 模索する試みでもある。 ●作品URL http://aihasegawa.info/?works=impossible-baby-case-01-asako-moriga

アート部門

(6)

新人賞

Photo: ITO Daisaku ©2015 Takaaki Yamamoto ●参考URLhttp://sando.monophile.net

さんどう

計算手法、パフォーマンス

山本

一彰

YAMAMOTO Takaaki [日本] 贈賞理由 価値ある仕事である。精神活動の根幹である 「情報とは何か」「情報を処理するとは何か」 に肉薄しようとすれば、ライプニッツならずとも 哲学は数学を介しコンピュータの発明に至る。 作者はその行程を、人から計算を見えなくする 既存の電算機を参照しながら辿り、ついに人 が計算を見ながら行為する「非電気的算盤」と その用法として再発明した。ところでこうした探 求は、なぜ真善美の真のみならず美としても積 極的に有価値なのか。知覚や身体に関わるか らだけではないだろう。これは鑑賞者が自問す べきであるが、作者山本の伸び代でもある。 (中ザワヒデキ) 作品概要 「算さんどう道」とは、計算の宇宙を探求する道を指す 造語。作者は、人間の認識の拡張を目指し、身 体を用いた計算方法「論ろ ん り し ゅ ざ ん理珠算」を独自に開発 した。「論理珠算」とは四則演算はもちろんのこ と、条件分岐や繰り返しなどの処理も行なうこと ができる計算完備な珠算であり、理論的な計算 能力は日常的に使用されるノイマン型コンピュー タと同等である。論理珠算を行なうための計算器 「論ろ ん り そ ろ ば ん理算盤」は、その上の「珠」という記号性と 物質性を兼ね備えた存在により、計算という概念 と身体の一体化を試みている。情報技術によりあ らゆる物体が記号へと置き換え可能となった現代 において、記号は実体として認識されうる。情報 の操作方法を知ることは、記号化される自分たち の世界を見直す新たな視点を生みだすだろう。 ©2014 Lorenz Potthast ●参考URL http://www.lorenzpotthast.de/petroglyphomat

C

コミュニケーション

ommunication

w

ウィズ

ith t

he F

フューチャー

uture –

T

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ペトログライフォマート

etroglyphomat

インタラクティブアート

Lorenz POTTHAST

ローレンツ・ポットハスト [ドイツ] 贈賞理由 情報が電子化され、便利になったと思ってい たら、それらの情報を記録したフロッピーディ スクやCD-ROMといったメディアが、あっとい うまに市場から消え、機能しなくなるという現 実に私たちは戸惑っている。そのような現実に 対して、古代の人々が石に刻むことによって記 録された情報が現在まで残っていることに注目 し、コンピュータ制御の切削機を身にまとい、 街に直接メッセージを刻む行為によって、未来 との通信を行なおうという壮大なアイデアが、 メディアに対しての積極的な態度として評価さ れ、今後の活動が注目される。(藤本由紀夫) 作品概要 本作は、可動式のデジタル切削機であり、「前 向きな破壊行為」を行なう機械である。この機械 を使って古いモニュメントにメッセージを彫り、遠 い未来に伝えることができる。人間は古来、自ら が死んだ後も意思を伝えたいという欲求をもつ。 現在、私たちが文化として理解しているものはみ な、未来の世代にそれを伝えうる能力に支えられ ている。本作は、すでに固定化された力関係に 対する戦略的な態度を示し、さらに歴史を書き 込む強大な権力者という伝統的な考え方を問う ている。私たちが、伝統的であること、一時的で あること、そして過去・現在・未来の関係を実体 的に思索するうえで必要な、理論的背景や実験 的アプローチを提示する作品である。 ©2015 Louis-Jack Horton-Stephens ●参考URL http://www.gillandgillfilm.com

G

ジル

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アンド

G

ジル

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映像作品(16分21秒)

Louis-Jack HORTON-STEPHENS

ルイス・ジャック・ホートン・スティヴェンス [英国] 贈賞理由 例年にまして「映画」作品の応募が目立ち、メ ディア芸術祭がまるで映画祭のような性格を有 することへの審査委員のとまどいを見事に吹き 飛ばす秀作として評価されたのが本作であり、 681点の応募があった映像作品のなかから唯 一の受賞となったショート・フィルムである。レ ター・カーバーと呼ばれる世界的に有名な文字 の彫刻師と女性ロッククライマーという優れた 技術を有する2人を主人公に据え、われわれ 人類に非常に近しい存在である「石」をテーマ に、「ビジュアル・エッセイ」としてつづってみせ る。練られたアングルで捉えられたこれらのイ メージが、効果的な編集でつながれ、そして心 に響くナレーションによって深度の強い作品と して成立している。(植松由佳) 作品概要 碑文彫刻家とロック・クライマー、ともに岩石に 関わる専門家の姿から、人間と岩石との深い関 係性を讃え探求する、映像によるエッセイであ り、直感的な詩的作品である。タイトルは、近 代碑文彫刻の祖エリック・ジルと近代ボルダリン グ(岩壁を登るスポーツ)の祖ジョン・ジルへの 敬意を表わしている。2人のジルについての語り とともに、カメラは21世紀の後継者たちを捉え る。彫刻家は清閑な工房で彫り、研磨し、クラ イマーは荒々しい風景のなか孤独に岩を登る。 対称的に見えるが、じつは驚くほどよく似た熟練 の技を見出すことができる。鑿のみは岩を刻み、手 は岩肌を摑む。独特なこの対比から、同じ素材 に向き合いながら創造性を共有し、問いを解決 していくさまが記録されている。

アート部門

(7)

エンターテインメント部門

大賞

正しい数の数え方

音楽劇

岸野

雄一

[日本] KISHINO Yuichi 作品概要 本作は、子どもたちのための音楽劇であり、人 形劇+演劇+アニメーション+演奏といった複 数の表現で構成される、観客参加型の作品で ある。2015年6月、フランス、パリのデジタル・ アートセンター「ラ・ゲーテ・リリック」の委嘱作品 として上演された本作は、1900年のパリ万国 博覧会が舞台となっている。公演のため日本か らパリを訪れた「川かわかみ上音お と じ ろ う二郎一座」が、万博の パビリオン「電気宮」に現われた「電気神」が観 客にかけた呪いを解くため、「正しい数の数え 方」を求めて旅へ出る冒険物語である。 古来から存在する人形劇というアナログな手法 と、インタラクティブなテクノロジーが随所で融 合し、物語は展開していく。同年に東京で行な われた公演では、作者率いるバンド「ワッツタ ワーズ」の生演奏も加わり、より挑戦的な試みが 行なわれた。舞台芸術の可能性の拡張に挑ん だ意欲的なエンターテインメント・ショーである。 贈賞理由 これまでに数限りない地下文化貢献活動に取 り組んできた勉強家=岸野雄一は、この作品 で新派劇の父=川上音二郎をモチーフに、子ど もたちとのインタラクティブな交流を写しだす演 劇装置を生みだした! 岸野の「演芸/演劇」 の魂には、批評性と実験性が染み込んでおり、 これまではハイコンテクストとして捉えられてい た節もあるが、本作では見事に幼年層を巻き 込んで大衆性を帯びたのだ。「つくって遊び、数 えて学ぶ」これらエデュケーショナルな精神は、 実験を超越したシミュレーショニズムとして、昭 和の子ども番組から受け継いだ正統な系譜で もある。また、これまでのメディア芸術祭受賞者 も紛れ込んだ6人のアニメーターとのコラボ動 画が舞台の背景を固め、これら舞台装置その ものが映像史をも飲み込んだ、文字通りの「メ ディア」と化している。この全身勉強家の複合芸 術を メディア芸術 と呼ばずに何を メディア 、 そして 芸術 と呼ぶのか? 本作は、昭和でも 平成でも、そして未来でもなく、お手軽なテクノ ロジーに埋没しない原初的なアニマが脈打って いるのだ!(宇川直宏) [受賞者コメント] この度はみんなで作り上げたステージに対して栄誉あ る賞をいただき、とても光栄に思います。私は学問とし て芸術を学生に教えている立場にありますが、自分自 身の表現のスタンスは、大衆芸能、見せ物、といった ものです。道端(ストリート)という市井にこそもっとも メディアとしての可能性を感じており、アートのフレー ムのなかに安住する事を避けてきました。というのも、 歌舞伎でも浮世絵でもそうですが、当初は芸術ならざ るものであった表現を、100年以上かけて芸術として 評価するに至る目利き、見立ての良さを、市井は持っ ていると信じているからです。例えば鶴屋南北や歌川 国芳が現代のテクノロジーを使ったらどんな愉快な表 現をするだろうか? そんな事を考えながら大勢の人 たちを楽しませる表現をしていきたいと考えています。 岸野雄一 岸野雄一 KISHINO Yuichi 1963年、東京都生まれ。東京藝術大学大学院映 像研究科、美学校等で教鞭をとる。「ヒゲの未亡人」、 「ワッツタワーズ」などの音 楽ユニットをはじめとし た多岐に渡る活動を包括する名称としてスタディスト (勉強家)を名乗る。

(8)

エンターテインメント部門

© RAC7 Games Inc.

優秀賞

D

ダーク

ark E

エコー

cho

ゲーム

Jesse RINGROSE /

Jason ENNIS

ジェッシー・リングローズ/ジェソン・エンニス [カナダ]

D

ドローイング

rawing

O

オペレーションズ

perations U

ユニット

nit:

G

ジェネレーション

eneration

1

インタラクティブインスタレーション

Sougwen CHUNG

ソウゲン・チュン [カナダ] 贈賞理由 画面は闇。足跡しか見えない。足跡と音と反 響する線を頼りに暗闇から脱出するゲームだ。 音楽は流れずに環境音だけが響く。放射する 線と自分の移動で、地形がわかる。水を散らす 足音と狭い通路であることを感知し、ここが地 下水路だと想像する。反射する線が赤くなる。 ヤバいと思いながら進むと鈍い音、悲鳴、吹き だす音。死だ。敵も、景色も、自分も、何も表 示されない。ただの闇の中で、シンプルでアブ ストラクトな表現が物語を生みだす。赤い線が 移動してくる。唸り声。こいつ生きてやがる。 明るい部屋で、スマートフォンを覗きこんでプレ イしているにもかかわらず、暗闇に迷い込んで いる感覚に襲われる。ステージ構成も恐怖を 増幅させることに集中している。ゲーム性を追 求することで、最果ての抽象芸術と原初的な 恐怖を生みだした。想像力を刺激するために何 をすべきか。それを考え抜いてつくられた力強 いエンターテインメント作品だ。(米光一成) 作品概要 想像力を拠り所に最小限の要素でプレイする、 パズル/ホラーゲーム。暗闇のなかで視覚を 奪われたプレイヤーは、危険に満ちた世界を音 をたよりに進まなければならない。プレイヤー の発する足音は、画面上で線となって視覚化 され、障害物に反射し跳ね返ることで、周囲と 自分の位置関係が明らかになっていく。しかし、 この作品世界を把握する唯一の手段である足 音は、音と魂をむさぼる恐ろしい魔物を呼び寄 せ、一歩踏みだすたびに魔物が忍び寄り、気が つけばもう手遅れになる。魔物のたてる音を示 す赤い線への恐怖心と闘いながら、80ものス テージを切り抜けなければならない。ゲーム内 の不吉なサウンドは、サバイバルの緊迫感を効 果的に高めており、ヘッドフォンを使うともっと もその世界観を体感できる。暗闇のなかを探索 し、パズルを解きながら生き残ることが要求さ れる、新感覚のゲームである。 ●参考URL http://www.darkechogame.com

Photo: Courtesy of Drew Gurian / Red Bull Content Pool

© Created on the occasion of the exhibition: NEW INC Showcase at Red Bull Studios New York July 2015.

優秀賞

贈賞理由 本作は、アーティスト本人とロボットアームとの コラボレーションによって成立している。この ロボットアームは、天井のマウントからスキャニ ングされた作者の描画スタイルを対照的に模 倣するようにプログラムされており、人間的な アプローチを身に付ける為に、自身の自律的な スタイルを学ぶ。クレメント・グリーンバーグの メディウム論の文脈として読み解かれた、コン ティンジェンシーなる偶発性を美意識として受 け入れる、最前衛の抽象絵画運動の最果てに この作品は位置するのではないか? いや、寧 ろこの、身体とロボットアームとの共演は音楽 的だ。2人のボーカリストデュオによる即興的 な輪唱パフォーマンスのように模写する相方 は、グリッチもエラーもバグも何もかもを受け 入れられるAIなのだ。この予定調和なきドロー イングセッションは、あらゆる審美的束縛から の自由を謳歌し、同時に、美の本質、美の現 象に問題を投げ掛けているのだ。 (宇川直宏) 作品概要 作者と作者が開発したロボットアームが協働し て同時にドローイングを行なう作品である。ロ ボットアームは、天井に設置されたカメラとコ ンピュータの映像から得られる情報をもとに、 人の動きを模倣するように設定されている。そ の結果、人とロボットが同時に相互の動きを解 釈しあうかのようなパフォーマンスが生みださ れる。 この作品で作者は、ロボットが人間の振る舞 いに同期する訓練をすることで、ロボットの自 動化、自律性、人間とロボットの共同制作につ いてのアイデアを探求している。それと同時に、 作者とロボットアームは、このシンプルなドロー イング・パフォーマンスを通じて、人間の動きを 模倣し、手順どおりに動くロボットによる、偶 発性を伴う作画(マーク・メイキング)の可能性 を追求している。 ●参考URL http://sougwen.com/Drawing-Operations-D-O-U-G

(9)

エンターテインメント部門

Photo: Assocreation

©2015 Assocreation and Daylight Media Lab Partly funded by the University of Michigan Office of Research (UMOR)

and the Penny W. Stamps School of Art & Design.

優秀賞

S

ソーラー

olar P

ピン

ink P

ポン

ong

インタラクティブインスタレーション、 デジタルデバイス

Assocreation /

Daylight Media Lab

アッソクリエーション/デイライトメディアラボ [オーストリア]

T

サンパー

humper

ゲーム

Marc FLURY / Brian GIBSON

マーク・フルーリー/ブライアン・ギブソン [米国] 贈賞理由 子どもの頃、太陽の光を手鏡で反射させ動か し、時には相手の頬を光でくすぐり遊んだ記憶 を持っている人は多いだろう。これは、そのテク ノロジー版の子孫だ。 ここには、人と仕組み、人と自然現象、人と 人、の3つのインタラクションがある。そして、 人の行き交うどんな場所でもハプニング的に 共同作業=コミュニケーションを発生させる 触媒になる。映像プロジェクションに頼らない フィジカルな装置。どこでも持っていって設置 できるパッケージング。太陽光さえあれば成 立する、装置の自立性。人に手順を強いるこ とのない、いつのまにか光のほうから戯れてく る敷居の低さ。シンプルだけれど、目から鱗の ような遊びの装置だ。陽の光と影、人のジェス チャー、ロケーションごとの表情の変化……、 それらの要素の一つひとつが、CGワールドの プレイバックにはない、フィジカルとライブの魅 力だ。二度と同じ状況は現われない、一期一 会なところが楽しい。(東泉一郎) 作品概要 ストリートとゲームの融合によってつくられた作 品である。このゲームのプレイヤーは自らの身体 と影を使って、路上を動くピンク色の太陽の反 射光と遊ぶことができる。電柱や建物の外壁に 取り付けられた装置は自動で機能するため、プ レイヤーに意識されることはない。 この作品は、ゲーム文化と現実の境界をリビン グ・ルームの外へと拡張し、テクノロジーのレン ズを通じて太陽光の見方を変えることを狙いと している。史上初めて大流行したゲームのひと つである卓球ゲームPongと、五感で感知でき る人工現実(アーティフィシャル・リアリティ)と いう概念を確立したアーティストのマイロン・ク ルーガーによる作 品『Videoplace』を参 照、 発展させている。だがそれらと異なるのは、太 陽光を、コンピュータ制御された色付きの鏡に よって、スクリーン上を動くピクセルのように色 鮮やかな球として、現実の路上に魔法のごとく 出現させたことである。 ●参考URL http://www.solarpinkpong.com ©2015 Drool LLC

優秀賞

贈賞理由 私たちは鋼鉄の虫として『Thumper』の世界 に降り立ち、湾曲するレールを疾走する。目覚 めると虫になっていた人間。カフカや日野日出 志が描いてきた、この世の不条理に対する内 省的な葛藤は、問答無用のスピードによって置 き去りとなる。そこから無限のサイケデリアへ 突入していく感覚は、80年代初頭のアニメー ション映 画 の怪 作『Heavy Metal』(1981) と通底する。虫のギラついた質感が「ヘビー・ メタル」の本来的な意味、自由を求める鋼の精 神を体現している。また「リズム・バイオレンス・ ゲーム」と銘打たれた本作は、トラックメーカー の生理から生じるグルーヴに同期することが要 求される。明示された符丁を狙い打つ従来の 音楽ゲームとは明らかに異なる生々しい感触が ある。同期はこの世界における通過儀礼であ り、成功の対価として過剰なエフェクトが発生 する。知覚の歪みの反復の果て、到達した世 界の深奥に何者かの「顔」が浮遊している。そ れは、私たちが彼方に置き去った葛藤の化身 であろう。(飯田和敏) 作品概要 この作品は、従来のリズム・アクション・ゲーム にスピード感と身体感覚を結合させた「リズ ム・バイオレンス・ゲーム」である。「宇宙甲虫」 となったプレイヤーは、轟くドラム音と不気味 なシンセサイザーの爆発音とともに、曲がりく ねったレールをひたすら疾走する。そして、シン プルな操作で障害物をよけ、サイケデリックな 怪物を倒していく。ゲームの動作とビートを合 わせる仕組み自体は目新しいものではないが、 映像と音響効果がぴったりと一体化しているた め、一挙一動が猛スピードにさらわれる感覚と 荒々しい身体感覚を呼び起こす、まったく新し い「リズム・バイオレンス」の興奮を生みだして いる。 ゲームの世界に属する音とその外側の音(効 果音)という従来の関係を打破しながら、自動 生成やアルゴリズムによる作曲法から発想を得 て、「異界のミュージック・コンクレート」ともい うべき音が奏でられている。

(10)

新人賞

© NaoYoshigai

ほったまるびより

映画(

37

11

秒)

吉開

菜央

YOSHIGAI Nao [日本] 贈賞理由 清々しいエロティシズムとフェティシズム。生々し い皮膚感覚によって貫かれた透明な詩性。緩慢 なワンカットすら拒む徹底した美意識。過激さ と穏やかさ、衝突と均衡がもたらすその快楽は、 ダンサーでもある監督の吉開菜央とパフォーマ ンスも行なうミュージシャンの柴田聡子の「個」 の交わりによる成果か。「メディアとしての身体」 という現代的なテーマを扱いながらも、超言語 コードでつづられる映像からは、時間や空間を 超越してさまざまな物語や思考が喚起させられ る。2015年版ガーリー・ポップの「象徴」とし て記憶にとどめておきたい作品である。 (工藤健志) 作品概要 「おどりとはなにか」をテーマに、言語表現を極限 まで削り「女の子のからだ」とその「動きから生 まれる音」で表現された映像作品。小さな木造 平屋一軒家のなかには、人間であるさと子(歌 手)のほかに、4人の踊り子が住みついている。 心地の良い日々を過ごす踊り子たちだったが、あ る日、家のなかにもうひとり少女がいたことを発 見する。タイトルにある「ほったまる」とは「ほうっ ておくとたまるもの」の略語であり、髪の毛や爪、 足の裏の皮など身体から出る落としもの、あるい は日々の生活で蓄積されるさまざまなにおいを指 す造語。ダンサーでもある作者が、腹の底から 湧き上がってくる得体のしれない感情・感覚をか らだでつづった「おどる映画」である。

© Christian Werner & Isabelle Buckow

●作品URL http://werner.rudler-rocks.de/black-death

B

ブラック

lack D

デス

eath

ウェブ、ルポルタージュ

Christian WERNER /

Isabelle BUCKOW

クリスティアン・ヴェルナー/イザベル・ブッコー [ドイツ] 贈賞理由 シリアスな問題に真正面から向き合い、自ら 赴き、パーソナルな生と死に立ち会い、普遍的 メッセージに仕立てた。情緒的にならず、一見 淡々と、演出的編集もなく提示され、それでい て、それらは意図的であって、ゆえに切実なも のとして迫ってくる。見るにもエネルギーを要 するこの作品の、制作に注がれたエネルギーと 葛藤はいかばかりだろう。その行動と視線、ク オリティに対して敬意を表したい。それが、非 常に若い作者によってなされているということ に、今の時代の風を感じるし、テーマは重い が、その重さを直視する人の存在に、希望が見 出される。(東泉一郎) 作品概要 テキスト、映像、写真、音声、地図、アニメーショ ンなどさまざまなメディアを用いて、ウェブサイト 上でスクロールしながら読む、新しい形式のルポ タージュである。エルシニア感染症、あるいは「黒 死病(Black Death)」と呼ばれるペストは、歴史 上の病として知られる。中世ヨーロッパにおける ペストの流行は人口を大きく減少させた。近年、 ペストは衛生状態の改善や医療技術の向上によ り、地球上の大部分ではおおむね根絶された。 それでもアフリカ、ロシア、アジア、そして米国で さえも、依然としてペストは発症しており、2009 年以降、年間平均500件の症例が記録されてい る。複数の表現方法を用いたこの作品は、物語 や情報の伝達について、シンプルながらも新しい 方法を指し示している。 ©2015 GAL.

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グループ

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イノウ

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E

アイ

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ミュージックビデオ(3分32秒)

橋本

麦/ノガミ

カツキ

HASHIMOTO Baku / NOGAMI Katsuki [日本]

贈賞理由

Google Street View™における画像の縫い 合わせの「裂け目」に着目し、虚実の感覚が麻 痺する視覚世界を構築。Googleのシステムに 依拠するのではなく、その「眺め」のバグを引き だすというコンセプトは、プラットフォームから の解放という意味からも大きな可能性を持つも ののように思う。先端のテクノロジーを駆使し ながらも、人物の合成は一コマずつ手作業で 行なわれており、その新旧技術のミキシングに は作者の卓越したセンスが認められる。視覚と しての意外性、映像ギミックのおもしろさのな かに、現代の視覚文化に対する批評性も感じ られる佳作である。(工藤健志) 作品概要

Google Street View™上の画像を繋ぎあわ せ、その上をgroup_inouの2人が駆け抜ける ミュージックビデオ。世界中で撮影された膨大 な量の画像をもとに、インターネット上に再構 築された「視点」の連続をキャプチャーして映 像化している。本曲が収められたgroup_inou のアルバム「MAP」にちなんだこの作 品は、 数々のデジタル・ツールを駆使して徹底的に効 率化する過程と、一コマずつ緻密につくりこむ 過程の両方によって制作されている。また、制 作方法やそのツールはすべてオープンソース化 し公開している。シンプルなアイデアながら、テ クノロジーの流行や時代性に依存しない、作者 の熱量の感じられる映像作品となっている。

エンターテインメント部門

(11)

アニメーション部門

大賞

R

リゾーム

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短編アニメーション(11分25秒)

Boris LABBÉ[フランス]

ボリス・ラベ 作品概要 圧倒的な緻密さと極端な構図で展開される短 編アニメーション作品。最小単位から無限に 生成される世界は宇宙そのものであり、変容 を続けるすべての要素が相関し、影響しあって いる。 タイトルは、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズ と精神科医フェリックス・ガタリの共著『千の プラトー』(1980)で複雑に展開されるリゾーム (Rhizome)の概念からつけられている。本作 では、そのリゾームの原則を網羅しながら、生 物学的な意義と哲学観の考察が試みられてい る。作者によれば、スティーヴ・ライヒの音楽の コンセプトとエッシャーの数学的な作品、そし てボッシュやブリューゲルの絵画と、遺伝学の ような生物の進化に関する理論やミクロとマク ロの関係などの要素の間に生まれてくるような 何かをつくりたいと考えるなかで、このドゥルー ズ=ガタリの概念が頭に浮かび創作につながっ たという。若い作者の興味と欲求を具現化し た独創的な作品である。 贈賞理由 もともとアニメーション上では、物のスケールは 擬似的なもので、相対的でしかない。この作 品は、仮想のスケール空間のなかで、生物とも 無機物ともつかない抽象的な形態がつねに変 化し、個々の動きが全体の動きへと連なってい く。ミクロからマクロまでをワンカットで見渡す 作品は『コズミック・ズーム』や『パワーズオブ テン』(ともに1968)といった古典的科学アニ メーション作品の先行事例があるが、この作品 は科学的な視点ではなく、ボッシュのような主 観的な世界の認識の様相を、圧倒的なドロー イングとデジタル合成の物量で見せきった。こ こには未知の生態系を覗き見る喜びがあり、 絵に擬似的な生命感を与えるアニメーション の原始的なおもしろさがある。またミクロの世 界からズームアウトしてマクロな世界へ行きつ いた世界がまるで苔のようで、マクロに達した はずの最後に小さな世界を見せられているとい う、マクロからミクロへの逆転の感覚を覚える 点もユニークだ。(山村浩二) [受賞者コメント] アートとアニメーションの世界でプロとして活動を始め た数年前から、文化庁メディア芸術祭に大きな興味を 持ちながら羨望のまなざしで見てきました。国際的に も有名ですし、あらゆる形態の芸術にオープンで、革 新的なテクノロジーを歓迎するフェスティバルとして、 いつも魅了されていました。 私の作品『Rhizome』が、今回アニメーション部門 の大賞を受賞するという名誉をあたえてくださった審 査委員の皆様に心からの感謝の気持ちを表わすととも に、誇りに感じています。『Rhizome』は、私にとって 重要かつ基本的にポジティブな作品であり、鑑賞者に これまでにないような映画的経験をしてもらえればと 願っています。 Boris LABBÉ Boris LABBÉ ボリス・ラベ 1987年、フランス、ラヌムザン生まれ。現在はマドリッ ドに居を構えて活動中。グラフィック・アーティストとし て活動を始めたが、最近は、既存映画の時間・空間 形式を離れた映像インスタレーション的アニメーショ ンを発表している。 © Sacrebleu Productions

(12)

アニメーション部門

©2015 the case of hana&alice Film Partners

優秀賞

花とアリス殺人事件

劇場アニメーション(1時間39分)

岩井

俊二

IWAI Shunji [日本]

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イーサント

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(T

he M

マスター

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短編アニメーション(18分00秒)

Riho UNT

リホ・ウント [エストニア] 贈賞理由 実写映画の方法論を直に絵の画面へ置き換 えてアニメーション化することで、「作品のカテ ゴリーとは何か?」を深く考えさせられる作品 である。昔、ラルフ・バクシ監督の『指輪物語』 (1978)で、ロトスコープの技術を用いて絵に したときに生まれる、妙なリアリティにワクワク したのをこの作品でも思い出した。膨大な実写 素材の撮影技術も素晴らしく、実写撮影監督 を務めた神戸千木さんの才能があますことなく 感じられる。また、キャラクター・デザインの処 理作業が魅力的になされているのもこの作品の よさである。ロトスコープ・アニメーション・ディ レクターを務めた久野遥子さんは、相変わらず センスがよい。動きが巧い。シナリオのアプロー チもよい。アニメーションならではのよさを、鮮 やかな清涼感とともに浮き彫りにしている。キャ ラクターのどこを簡略化するかによってセンスが 問われるので、スタッフが今回の経験で学んだ ことを次の作品づくりにどう生かせるのかが楽し みである。音が少し小さめな点が気になったが、 心地よい作品であった。(森本晃司) 作品概要 実写映画のつくり手として広く知られる作者の 初の劇場用長編アニメーション作品である。 作者が監督を務めた実写映画『花とアリス』 (2004)制作直後から構想が立てられた本作 は、当時と同じキャストが集められ、プロローグ となる荒あ ら い は な井花(通称:ハナ)と有あ り す が わ て つ こ栖川徹子(通 称:アリス)の2人の出会いのエピソードが語ら れる。転校してきた中学3年生のアリスは、「1 年前、3年2組の教室でユダが4人のユダに 殺された」という噂を聞く。さらに、アリスの家 の隣が「花屋敷」と呼ばれて恐れられているこ とを知る。花屋敷に住む引きこもりの同級生ハ ナとアリスの、「ユダ」をめぐる「世界で一番小 さい殺人事件」の謎を解く冒険が始まる。実写 で撮影した動画をもとにアニメーションとして 描き起こす制作技法「ロトスコープ」と、セル 画で制作されたアニメの質感を追求する「セル ルック3DCG」の手法を組み合わせた映像に よって、小さな出来事の瞬間瞬間を真剣に受 け止め、悩み、そして笑う少女たちの心情をコ ミカルに描きだしている。 ●参考URL http://hana-alice.jp/ ©2015 OÜ Nukufilm

優秀賞

贈賞理由 きわめて完成度の高い作品である。登場する のは犬と猿(チンパンジー)。アニメーターの力 量を感じさせるそれぞれのパペットのリアルな 動きと巧みな演技、物語の導入から悲劇のエ ンディングまでの脚色と演出は、まさに完璧な プロフェッショナルの仕事といえるであろう。画 面構成におけるライティングとカメラワーク、加 えて音響効果は、すべてが実空間の出来事だ と思わせ、その表現力は見事である。犬Pポ ピ ーopi は猿Hフ フ ーuhuuに対して恐怖から従順そして服従 を、猿は凶暴さ、みだらさ、おろかさを象徴し ている。この犬と猿は擬人化されてはいない。 しかしそれぞれの、特に犬の感情の表現は人 情細やかである。ただ、猿においては限りなく 人間に近い演技をするシーンもあって、物語の 展開を際立たせるためであろうが、この部分の み作り物めいて少し疑問符が残ったところでは ある。悲しいまでのひたすらな従順と、おろか なる凶暴の果てのあっけない終焉は、はかなく もむなしい。これは犬と猿に置き換えられた世 の無常の話だとこじつけるのは野暮というべき だろうか。(大井文雄) 作品概要 一軒の家で、ある日を境に戻らなくなった主 人(Master)の帰 宅を待つ犬のPポ ピ ーopiと猿の Hフ フ ーuhuuを描いた短編アニメーション。Huhuu は最初、檻に入れられていたが、そこから出 ることに成功すると2匹の共同生活が始まる。 Popiは、実際はHuhuu以上に賢く強いのだ が、従順かつ恭順な性格の持ち主であることか ら、Huhuuの気まぐれの前に屈服してしまう。 そのHuhuuは愚かなまでに自由奔放な性格 で、部屋の中を好き放題に散らかしてしまう。 本作の原作は、エストニアの作家フリーデベル ト・トゥクラスの短編小説『Popi and Huhuu』

(1914)である。コマ撮りによるリアルなパ ペット・アニメーションである本作によって、作 者は権力の恐ろしさと愚かさを問いかけ、権力 とは何かを究明しようと試みている。われわれ の主人とはどのような者か。もしその主人の性 質や行動がHuhuuと似ているとしたら、その 結果はどのようになるだろうか。動物らしい「動 き」が巧みに表現されているだけでなく、強い コンセプトが描かれた作品。

(13)

アニメーション部門

© Papy3D Productions

優秀賞

M

マイ

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ホーム

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短編アニメーション(11分54秒)

NGUYEN Phuong Mai

グエン・フン・マイ [フランス]

Y

ユル

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アンド

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スネーク

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短編アニメーション(13分11秒)

Gabriel HAREL

ガブリエル・アレル [フランス] 贈賞理由 人生における哀しさのひとつを、こんな絵で、 こんなアイデアで、しかもこんなにもシンプルに 表現できることに驚きを感じる。物語はセピア 色の色調のなか、淡々と進む。しかし、意外に 思われるかもしれないが、このアニメーション 作品の表現で一番優れているところはセクシー さではないだろうか。ホワイトシャツを着ている 鳥、そしてその肩幅の広さが表わす大人の男の 色気、ちらりと見せる母親の肉体のさり気ない 豊かさ、柔らかさ。折々に見せる坊やの母親へ の直接的甘え……。これらすべてが人生ののっ ぴきならなさを表現している。坊やは自分だけ の専有物と思っていた母親の心にほかのもの が入り込んでしまったことを知り、母親は坊や がそのことを許さないのを知り、鳥は自分が鳥 でしかないことを知り、それぞれがその現実は どうにもならないことを知る。そしてそのどれも がやがてはいやおうなく過去のものとなってい く、その哀しさをこの作品のセピア色が表わし ているような気がする。(髙橋良輔) 作品概要 物語は、片田舎で7歳の少年Hユ ー ゴugoと母親の 2人が暮らしているところに、ある日、鳥の頭を 持つミステリアスな男が家族に加わることから 始まる。Hugoは、母親との2人だけの世界に 突然現われたこの見慣れない鳥男のふるまい や習性に戸惑いを覚えるが、母親は違和感な く接しており、Hugoの不安や憤りは募ってい く。そしてHugoは鳥男に対する探究心から行 動を起こし、そこで現実と夢のあいだ、人間性 と動物性のあいだを目のあたりにすることにな り、幼年期から大人の世界へと一歩を踏みだ す。本作はHugoの視点で描かれているため、 鑑賞者は彼の目を通して物事を経験し、彼に 感情移入しながら、この突然の変化に巻き込 まれていくことになる。美しさと醜さのあいだと いう独特な観点から、鑑賞者にも馴染み深い イメージや感情を用いながら、家族の再構成 が描かれた作品。また、全編を通じてセリフは 用いられず、静謐さを持った作品に仕上がって いる。 ©2015 Kazak Productions

優秀賞

贈賞理由 削ぎ落としたシンプルなイラストレーションで、 3人の登場人物の感情の流れをここまで深く、 的確に現実味をもって表現できていることに驚 きを覚える。暴力による力関係が支配する殺伐 とした世界でしか生きられない若者のヒリヒリ とした感覚は、現在のヨーロッパが抱える問題 に、直接的ではないが接続していて、今この作 品をつくる切実さと意味が理解できる。蛇と少 年の交流は、トーテミズム(動植物との特別な 関係が社会的規範となる宗教形態)も連想さ せ、自分には持ちえない悪の力の願望の象徴と して魅惑的に描かれている。最後に弱き物が怒 りの感情を爆発させる展開は、日本の任侠映 画も思い出させる。力関係を逆転させた後の少 年の兄へのリアクションにより、単なるヒロイズ ムや復讐劇で終わっていない点も素晴らしい。 物語は短編として完結しているが、しかし前後 に3人それぞれの人生の大きな物語を想像さ せる膨らみを持っている点も、この作品の豊か さを示している。繊細でいて力強い。 (山村浩二) 作品概要 作者が南フランスで過ごした少年時代の体験 をもとに発想された成長物語。13歳の少年 Yユ ルùlは、兄Dデ ィ ノinoに連れられて、兄が取引をす る大きな番犬を連れた地元の暴君のMマ イ クikeの もとへと行くが、そこで暴力と屈辱に直面する。 そして、Yùlが追いつめられたとき、不思議な ヘビが現われる─。作者の短編アニメーショ ン監督第1作目となる本作は、まず俳優の演 技による実写映画として撮影され、そのうえで 2次元コンピュータ・アニメーションとして制作 されている。このようなプロセスによって、構図 および登場人物の会話は現実味を獲得するこ とに成功している。モノクロの映像がリアリズム とファンタジーの間を往復しながら、カラーで 描かれた物語の核となる部分がこのバランスを 強調しており、短編ながら特徴的な作風が作 品に広がりを与えている。

(14)

新人賞

台風のノルダ

劇場アニメーション(26分13秒)

新井

陽次郎

ARAI Yojiro [日本] 贈賞理由 今後に期待する! 全審査委員の心の内はこ の一点で統一されていると思う。この作品を見 た人々は、これほどまでに好感の持てるキャラ クターたちを、もっともっと切なく、時に激しく、 健気に、心の底から応援したくなるような物語 のなかで見てみたい、と思ったはずである。 あえて言えば、絵も動きもこれでよしである。今 後このスタッフが汗を流すべきはシナリオだと思 う。15秒のCMにも物語は要求される。30 秒であってもしかり。ぜひこの絵、このアニメー ションで観客を新鮮な物語の感動に誘ってほ しいと願ってやまない。(高橋良輔) 作品概要 離島の中学校で文化祭の準備を進める生徒た ち。幼い頃からずっと続けていた野球を辞めた ことをきっかけにして親友の西さいじょう条ケンタとの関 係が悪くなっていた東あずまシュウイチは、突如現わ れた赤い目をした不思議な少女ノルダと出会 う。時を同じくしてやってきた観測史上最大級 の台風の影響により、学校から出られなくなっ た彼らは校内で一夜を過ごすことになる。ノル ダとの出会いと別れを通じ、東は、自分と、そ して親友と、改めて深く向き合っていく。 どこかノスタルジックな風景と躍動感のある演 出によって、登場人物たちが鮮やかに描かれて いる。制作環境のデジタル化に積極的に取り 組んで効率化を図る一方で、手描きの質感を 表現することも試みられている。 ©2015 Ikki Films

C

チューリェン

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クロウズ

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テイル

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短編アニメーション(20分00秒)

Agnès PATRON / Cerise LOPEZ

アニエス・パトロン/セリーズ・ロペス [フランス] 贈賞理由 執拗なドローイングと実写の合成を使い、北 極の近く、邪悪なカラスの精霊Chulyenを追 う3人のシャーマンの不条理な物語は、悪夢の ようで、謎を秘めながら、禍々しいパワーを発 している。悪意に満ちていたり、純粋さのなか に不気味さを湛えていたり、複雑怪奇なキャラ クターの表情が、潜在意識に働きかけ印象に 残る。アニメーション創作によって、北米の神 話を題材に湖と森の生態系のダークな内側の 世界を創造しようという試みは、新鮮で興味深 く、まだ荒削りな印象のなかにも未知の可能性 を感じる。(山村浩二) 作品概要 Cチ ュ ー リ ェ ンhulyenは、半分は人間、半分はカラスの姿 をした生物で、その慈悲を欠いた目からもわか るように、傍若無人な性格の持ち主である。舞 台となるのは、遠く北の大地の森と海で、広が る夜空にはオーロラが描かれる。Chulyenは、 巨人の乗っているカヤックを欲しいと思えば、そ れを奪い取ってしまうなど、興味の赴くままに 行動するが、精霊たちに跡をつけられて─。 Chulyenとは、北方のネイティブ・アメリカンの 伝承に登場する、架空の生物で、本作もその物 語を原作にして制作されている。シンプルだが時 に荒々しいドローイングと実写が入り混じるモノ トーンの描写で、独特のサウンドも携えており、 強烈な世界観を醸しだしている。 ©La poudriere

D

ドゥ

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アミ

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トゥー

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フレンズ

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短編アニメーション(4分4秒)

Natalia CHERNYSHEVA

ナタリア・チェルヌショーヴァ [ロシア] 贈賞理由 監督デビュー作『Snowflake』からラ・プード リエールの卒業制作である本作まで、作者は 見事なアニメーション作品をつくりあげている。 特に本作は、卓抜したグラフィックセンスと洒 脱なキャラクター・デザインに支えられ、アニ メーションの一画面が優れた絵本の一ページ のようでもある。加えてそのストーリーテリング は、この若さに似つかわしくないとさえいわれる ほど巧みである。ビジュアルとナラティブと、動 きや演出のすべてが作品として絶妙に織りなさ れ、若くして匠の極みに至っているかのようで もある。真に地力のある新人といえるだろう。 (小出正志) 作品概要 たとえ親友であっても異なる世界の出身者同士 であれば、時には相手について大きな誤解をし ていることがある。本作において、イモムシは、 池に落ちたところを危機一髪でオタマジャクシ に助けられる。突然の出会いから友だちとなっ た2匹だが、オタマジャクシはカエルへと、イモ ムシは蝶へと変態して―。2匹には予想もで きない結末が待っていた。セリフのない簡潔な ストーリーを最小限の色彩で描く手法は、作 者によるこれまでのアニメーションと共通して いるが、短編アニメーション第3作目となる本 作では、より明快でシンプルな作画を試みてい る。手書き風の背景と組み合わされた素朴な 点と線による表現は、日本の葛飾北斎や歌川 広重から影響を受けたものだという。

アニメーション部門

©2015 Typhoon Noruda Committee ●参考URLhttp://typhoon-noruda.com

(15)

マンガ部門

大賞

かくかくしかじか

東村

アキコ

[日本] HIGASHIMURA Akiko 作品概要 少女マンガ家を夢見ていた頃から、夢を叶え てマンガ家になるまでとその後の半生を題材に した自伝的作品。「自分は絵がうまい」とうぬ ぼれていた高校3年生の林はやしあきこ明子は、美術大学 入学を志し、海の近くにある美術教室に通うこ ととなる。そこで出会った絵画教師・日ひ だ か け ん ぞ う高健三 は、初対面で絵画教師とは思えない強烈なイ ンパクトを放ち、明子が描いたデッサン作品を 見るなり、竹刀を振りかざして「下手くそ」と 言い切った。そこから日高先生と明子、2人の 物語が始まっていく─。作者の人生に大き な影響を与えた恩師との数々の思い出ととも に、自らの高校生活から大学での生活、そし てマンガ家デビューへの道のりを描く。マンガ を「描く」ことへの愛が、個性的なキャラクター たちとさまざまなエピソードを通して表現され、 笑いと涙の要素が随所に盛り込まれた作品。 『Cocohana』(集英社) 連載開始:2012年1月号 連載終了:2015年3月号 贈賞理由 東村アキコは「自分のこと」を題材に描く作家 である。周囲の人をキャラとして「どう」描くの か、経験をマンガとして「どう」おもしろく描く のかに心を砕き、膨大な作品を生みだしてき た。だが本作における(そして作者の半生に おける)最重要人物である恩師・日高は、これ まで一度も描かれていない。長い間作者の奥 底で大切に寝かされてきたことで、また冒頭で 述べた作家活動の蓄積によって、「個人的な 経験」は、誰もが同じ痛みを覚える「普遍的な 物語」へと昇華された。日高が幾度も口にする 「描け」というセリフは、創作者はもちろん、す べての働く人への「手を動かさなければ何も生 みだせないのだ」という、作者の実感を伴った エールである。「マンガ大賞2015」受賞などす でに評価を受けているが、完結巻が審査委員 一同の胸を打ち、大賞贈賞に至った。完結後、 初の歴史ものや探偵ものに着手するなど攻め の姿勢を崩さない東村アキコ。本作はその作 家人生の節目となるはずだ。(門倉紫麻) 東村アキコ HIGASHIMURA Akiko 1975年、宮崎県生まれ。マンガ家。金沢美術工芸大 学で油絵を学ぶ。1999年に『フルーツこうもり』(集 英社)でデビュー。代表作に『ママはテンパリスト』(集 英社)『海月姫』(講談社)など。現在『Cocohana』 (集英社)にて『美食探偵明智五郎』を連載中。

© Akiko HIGASHIMURA / SHUEISHA

[受賞者コメント] 「絵を描くこととは何か」、体当たりで教えてくれた私の 恩師というか師匠との思い出を、ただ、思い出すまま 何も考えずに描いたこのマンガでこのような大きな賞 をいただけて本当に驚いています。 ただ、「描くしか」ない。この賞に恥じないようこれから も私にしか描けないマンガを描き続けていきたいと思 います。 東村アキコ

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